JP2003272531A - ガス放電パネルおよびその製造方法 - Google Patents

ガス放電パネルおよびその製造方法

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JP2003272531A JP2002073615A JP2002073615A JP2003272531A JP 2003272531 A JP2003272531 A JP 2003272531A JP 2002073615 A JP2002073615 A JP 2002073615A JP 2002073615 A JP2002073615 A JP 2002073615A JP 2003272531 A JP2003272531 A JP 2003272531A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 放電開始電圧を低減し高輝度を実現するとと
もに、かつ経時劣化の生じ難い高信頼性のPDP用ガス
放電パネルおよびその製造方法を提供する。 【解決手段】 前面側基板101上に表示電極対104
とそれを覆う誘電体層105と保護層106とが形成さ
れた前面板100と、もう一方の背面側基板111上に
は少なくとも蛍光体層115と隔壁114が形成された
背面板110とを放電空間120を介して対向させてな
る構成において、上述の保護層106が周期表第II族
および第VI族の元素を主成分とし、かつ周期表第II
I族の元素を少なくとも1つ含有し、誘電体層105側
から放電空間120側に向かう膜厚方向において放電空
間120側の周期表第III族の元素の濃度が誘電体層
105側に比べて大きくなるようにした構成を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプラズマディスプレ
イパネル(以下、PDPと略称する)に代表されるガス
放電パネルおよびその製造方法に係わり、特に対向3電
極面放電型とよばれる交流駆動のPDP用ガス放電パネ
ルに関する。
【0002】
【従来の技術】PDP用ガス放電パネルは、ガス放電に
よって発生した紫外線で蛍光体を励起発光させ、画像表
示する平面型ディスプレイである。その放電の形成手法
から交流(AC)型と直流(DC)型とに分類される。
AC型は、輝度、発光効率、寿命の各特性でDC型より
優れ、特に、AC型の中でも、反射型面放電タイプは輝
度、発光効率の点で際立っているため、このタイプのも
のは広く利用されている。
【0003】面放電形ACガス放電パネルは、前面板と
背面板とを放電空間を有して貼り合わせた構成であり、
前面板には一対の表示電極対が複数個配列され、その上
に誘電体層と保護層とが形成されている。また、背面板
には複数のアドレス電極と、このアドレス電極に平行に
隔壁が形成され、さらに隔壁間には蛍光体層が形成され
ている。なお、前面板に形成された表示電極対と背面板
に形成されたアドレス電極とは直交するように貼り合わ
される。
【0004】AC駆動型のPDPでは、表示電極対上に
形成する誘電体層が特有の電流制限機能を示すので、D
C駆動型のPDPに比べて長寿命にできる。この誘電体
層は表示電極対とブラックマトリクスとの形成後で、し
かも、これらを確実に覆うように形成することが必要と
されるために、一般的には低融点ガラスを印刷・焼成方
式で形成している。また、保護層はプラズマ放電により
誘電体層がスパッタリングされないようにするために設
けるもので、耐スパッタリング性に優れた材料であるこ
とが要求される。このために、酸化マグネシウム(Mg
O)が多く用いられている。なお、このMgOは大きな
二次電子放出係数(γ)を有しているので、放電開始電
圧を低減する効果もある。
【0005】前面板と背面板とを対向させると、前面板
と背面板との間で、かつそれぞれ2本の隔壁で囲まれた
ストライプ状の放電空間が生じる。この空間にネオン
(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスを約66.5k
Paの圧力となるように充填し、それぞれの表示電極対
間に数10kHz〜数100kHzの交流電圧を印加し
て放電させると、励起されたXe原子が基底状態に戻る
際に発生する紫外線により蛍光体層を励起することがで
きる。この励起により蛍光体層は、塗布された材料に応
じて赤(R光)、緑(G光)、または青(B光)の発光
をするので、アドレス電極により発光させる画素および
色の選択を行えば、所定の画素部で必要な色を発光させ
ることができ、カラー画像を表示することが可能とな
る。
【0006】このようなガス放電パネルにおいては、よ
り低電圧で駆動でき、かつ高輝度とすることが要求され
ている。これに対して、一般的に使用されているXeと
Neとからなる放電ガスにかえて、さらにアルゴン(A
r)を添加した放電ガスを用いることで放電開始電圧を
低減する方法が提案されている。これは、Arガスのペ
ニング効果によって放電開始電圧を下げ、発光輝度を向
上させる方法である(特開2000−156164号公
報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】画像表示においては、
VGA(640×480)以上の解像度を有しておれ
ば、画面輝度が高いほど表示画像が美しく見える。ま
た、画面輝度を高くできれば、前面板の光の透過率を若
干落として外光の反射を抑えることで明所コントラスト
を高めることができ、明所でも美しい画像を表示でき
る。PDPにおいて発光輝度を上げるには、駆動電圧を
上げて投入する電力を大きくすることが考えられる。し
かし、PDPではもともと駆動電圧そのものが高いの
で、さらに電圧を上げると誤放電が生じたり、ドライバ
回路素子の高耐圧化が必要となりコスト高になる等の課
題が生じる。したがって、単純に駆動電圧を上げること
はできず、このためカラー陰極線管(CRT)の画像表
示に比べて明所コントラストが低い。
【0008】上記の例は、放電ガスにArを添加するこ
とによりペニング効果によって放電開始電圧を低減し、
同じ駆動電圧でも放電電流を増加させて高輝度を実現す
るものである。つまり、放電開始電圧を低くすること
で、その分放電電流を増加でき、したがって投入電力を
増加することが可能となり、より高輝度の画像表示が得
られる。しかし、Arを添加すると、周知のようにAr
は固体物質の表面をスパッタし易い性質を有しているの
で、MgO保護層がスパッタされて表面は損傷を受け
る。このような損傷が生じると、MgO保護層の二次電
子放出係数(γ)が低下する。この結果、経時劣化が生
じる。例えば、数千時間の駆動動作によって、放電開始
電圧が上昇し、輝度が低下してしまう。
【0009】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたものであって、放電開始電圧を低減し高輝度を実
現するとともに、かつ経時劣化の生じ難い高信頼性のP
DP用ガス放電パネルおよびその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明のガス放電パネルは、透明絶縁性基板上に複数の
表示電極対とそれを覆う誘電体層と保護層とが形成され
た前面板と、もう一方の基板上には少なくとも蛍光体層
と隔壁が形成された背面板とを放電空間を介して対向さ
せてなる構成において、上述の保護層が周期表第II族
および第VI族の元素を主成分とし、かつ周期表第II
I族の元素を少なくとも1つ含有し、誘電体層側から放
電空間側に向かう膜厚方向において放電空間側の周期表
第III族の元素の濃度が誘電体層側に比べて少なくと
も大きくなるようにした構成を有する。
【0011】この構成により、保護層の放電空間側に電
子が存在する割合を増加させることができ、保護層の二
次電子放出係数(γ)を大きくすることができる。この
結果、放電開始電圧を低減し、高輝度のガス放電パネル
が実現される。さらに、保護層の放電空間側に従来構成
に比べて電子の存在する割合を増加できるので、保護層
が長時間の使用により表面の変質が生じてもγの変動が
生じ難く、信頼性の大きなガス放電パネルが得られる。
【0012】また、本発明のガス放電パネルは、保護層
内の周期表第III族元素の濃度が誘電体層側から放電
空間側の膜厚方向にむけて連続的に増大するような構成
を有する。
【0013】また、本発明のガス放電パネルは、保護層
内の周期表第III族元素の濃度が誘電体層側から放電
空間側の膜厚方向にむけてステップ状に増大するような
構成を有する。
【0014】また、本発明のガス放電パネルは、保護層
内の周期表第III族元素の濃度が誘電体層側から放電
空間側の膜厚方向にむけて連続的に増大している領域と
ステップ状に増大している領域とを有する構成である。
【0015】また、本発明のガス放電パネルは、保護層
内の周期表第III族の元素の濃度分布における濃度の
最小領域が誘電体層側から放電空間側に向かう膜厚方向
において誘電体層近傍に存在するような構成を有する。
【0016】また、本発明のガス放電パネルは、保護層
内の周期表第III族の添加元素の濃度が誘電体層側か
ら放電空間側の膜厚方向にむけて大きく変化する点を有
し、この変化する点が保護層の膜厚比に対して0.5よ
り大きい放電空間側の位置に設けられている構成を有す
る。
【0017】また、本発明のガス放電パネルは、誘電体
層内に周期表第III族の元素の少なくとも1つが含ま
れている構成を有する。
【0018】また、本発明のガス放電パネルの製造方法
は、透明絶縁性基板上に複数の表示電極対とそれを覆う
誘電体層と保護層とが形成された前面板と、背面側基板
上に少なくとも蛍光体層と隔壁が形成された背面板とを
放電空間を介して対向させてなるガス放電パネルであっ
て、周期表第II族および第VI族の元素を主成分とす
る固体状の成膜材料と、周期表第III族の元素を少な
くとも1つ含む固体状の成膜材料とを複数個の成膜源に
配置して、第III族の元素の濃度が誘電体層側から放
電空間側に向かう膜厚方向において誘電体層側に比べて
放電空間側が大きくなるように複数個の成膜源から蒸発
またはスパッタリングにより形成する方法である。この
製造法により、保護層の膜厚方向の第III族元素の濃
度分布を自由に設定することができるだけでなく、量産
性のよい装置構成が実現される。
【0019】また、本発明のガス放電パネルの製造方法
は、複数個の成膜源がそれぞれ異なる量の周期表第II
I族の元素を含む成膜材料から成膜する方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】(第1の実施の形態)図1は本第1の実施
の形態のPDP用ガス放電パネルの要部斜視図であり、
図2はアドレス電極に沿って切断した断面図である。
【0022】透明で絶縁性の前面側基板101上に、表
示電極対104とブラックマトリクス107と、これら
を覆うように誘電体層105とが形成され、さらにこの
誘電体層105上に保護層106が形成されて、前面板
100が構成される。この表示電極対104は、サステ
ィン電極102とスキャン電極103とで構成されてお
り、これらは透明導電膜102a、103aと、さらに
配線抵抗を小さくするためのバス電極102b、103
bとにより構成されている。なお、このバス電極102
b、103bは、それぞれ透明導電膜102a、103
a上に平行で、かつこの透明導電膜102a、103a
よりも細幅に形成されている。このような表示電極対1
04が前面側基板101上に一定のピッチを有して必要
な表示本数形成されている。
【0023】透明導電膜102a、103aは、インジ
ウム錫酸化物(ITO)、酸化錫(SnO2)等の透明
導電性材料を印刷・焼成あるいはスパッタリング等の方
式で形成する。この透明導電性材料単独では電極として
の抵抗を低くできないために、特に大画面のPDPにお
いては、この導電膜による電力のロスが無視し得ない値
となる。これを防止するために透明導電膜102a、1
03a上にバス電極102b、103bとして、抵抗の
低い銀やアルミニウムや銅等の単層構成膜、あるいはク
ロムと銅の2層構成、クロムと銅とクロムの3層構成等
の積層構成膜を、印刷・焼成方式やスパッタリング等の
薄膜形成技術で形成する。
【0024】例えば、透明導電膜102a、103aと
してITOをスパッタリングで約0.2μm〜0.5μ
m形成した場合、この膜のシート抵抗は約10Ω/□〜
25Ω/□となる。一方、バス電極102b、103b
として銀を印刷方式で約2μm〜10μm形成すると、
シート抵抗は約1mΩ/□〜3mΩ/□となる。透明導
電膜102a、103aとバス電極102b、103b
とが並列に形成されているので、表示電極対104のシ
ート抵抗は、このバス電極102b、103bでほぼ決
まり十分に低い抵抗とすることができる。
【0025】AC駆動型のPDPでは、表示電極対10
4上に形成する誘電体層105が特有の電流制限機能を
示すので、DC駆動型のPDPに比べて長寿命にでき
る。この誘電体層105は表示電極対104とブラック
マトリクス107との形成後で、しかも、これらを確実
に覆うように形成することが必要とされるために、一般
的には低融点ガラスを印刷・焼成方式で形成している。
ガラスペースト材料としては、例えば酸化鉛(Pb
O)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化ホウ素(B
23)、酸化亜鉛(ZnO)、および酸化バリウム(B
aO)等を含む、いわゆる(PbO−SiO2−B23
−ZnO−BaO)系ガラス組成を有する低融点ガラス
ペーストを用いることができる。このガラスペーストを
用いて、例えばスクリーン印刷と焼成とを繰り返すこと
で、所定の膜厚の誘電体層105を容易に得ることがで
きる。なお、この膜厚は表示電極対104の厚さや、目
標とする静電容量値等に応じて設定すればよい。本第1
の実施の形態では約40μmの膜厚とした。この誘電体
層105としては、さらにPbO、酸化ビスマス(Bi
23)および酸化リン(PO4)の少なくとも1つを主
成分とするガラスペーストを用いることもできる。
【0026】また、保護層106は先述したように、プ
ラズマ放電により誘電体層105がスパッタリングされ
ないようにするために設けるもので、耐スパッタリング
性に優れた材料であることが要求される。このために、
MgOが多く用いられている。このMgO膜の形成につ
いては、後にさらに詳しく述べる。
【0027】一方、同様に透明で絶縁性を有する背面側
基板111上に、画像データを書き込むためのアドレス
電極112が前面板100の表示電極対104に対して
直交する方向に形成される。このアドレス電極112を
覆うように背面側基板111面上に下地誘電体層113
を形成した後、このアドレス電極112と平行で、かつ
アドレス電極112、112間のほぼ中央部に隔壁11
4を形成し、さらに2つの隔壁114、114で挟まれ
た領域に、隔壁114、114の上部まで含めて蛍光体
層115が形成されて、背面板110が構成される。な
お、この蛍光体層115は、図1に示すように、R光、
G光およびB光に発光する蛍光体層115a、115
b、115cが隣接して形成され、これらで画素を構成
している。
【0028】なお、アドレス電極112は前面板100
のバス電極102b、103bと同様な材料と成膜法で
形成することができる。また、下地誘電体層113は誘
電体層105と同一の材料と成膜方式で形成することも
できるし、さらにPbO、Bi23およびPO4の少な
くとも1つを主成分とするガラスペーストを用いてもよ
い。隔壁114はガラスペーストを複数回スクリーン印
刷して約120μmの厚さに形成すれば、この隔壁11
4、114で囲まれ120μm程度の高さを有する空間
が放電空間120となる。また、蛍光体層115は、そ
れぞれR光、G光、およびB光に発光する蛍光体を例え
ばインクジェット法で隔壁114部分に形成することが
できる。
【0029】前面板100と背面板110とを対向させ
ると、それぞれ2本の隔壁114、114、前面側基板
101上の保護層106、および背面側基板111上の
蛍光体層115で囲まれたストライプ状の放電空間12
0が生じる。この空間120に先述したNeとXeの混
合ガスを約66.5kPaの圧力となるように充填し、
それぞれのバス電極102b、103bを介してサステ
ィン電極102とスキャン電極103間に数10kHz
〜数100kHzの交流電圧を印加して放電させると、
励起されたXe原子が基底状態に戻る際に発生する紫外
線により蛍光体層115を励起することができる。この
励起により蛍光体層115は、塗布された材料に応じて
R光、G光、またはB光の発光をするので、アドレス電
極112により発光させる画素および色の選択を行え
ば、所定の画素部で必要な色を発光させることができ、
カラー画像を表示することが可能となる。
【0030】なお、前面板100と背面板110とを対
向させた状態では、隔壁114により隣接する放電空間
120同士は遮蔽されるようにしてあり、誤放電や光学
的クロストークを防ぐような設計がされている。また、
図示しないが、背面板110には可視光(400nm〜
800nm)に対し高反射率を呈するように、反射鏡を
設けることもある。
【0031】次に、本発明の保護層106の作製方法に
ついて説明する。図3は、本第1の実施の形態の保護層
106を形成するために用いた電子ビーム蒸着装置の概
略説明図である。ベルジャ310の内部はバルブ312
を介して真空ポンプ311に接続されており、基板ホル
ダー301に誘電体層105までを形成した前面板10
0を取り付けた後、バルブ312を開にしてベルジャ3
10の内部を真空ポンプ311で所定の真空度まで排気
する。ベルジャ310の下部には、第1の電子ビーム蒸
発源304、第2の電子ビーム蒸発源307および第3
の電子ビーム蒸発源309が前面板100に対して均一
な膜厚を確保するように所定角度に傾けて配置されてい
る。それぞれの電子ビーム蒸発源は、電子銃302、3
05、314と、この電子銃からの電子を受けて加熱蒸
発させる蒸発物質を保持するハース303、306、3
08から構成されている。それぞれのハース303、3
06および308には、第II族および第VI族元素で
あるMgOのペレットが置かれ、しかもそれぞれのハー
スに設置するMgOのペレットは第III族元素である
ホウ素(B)量を各々異ならせている。例えば、第1の
電子ビーム蒸発源304にはBを全く添加していないM
gOのペレット321、第2の電子ビーム蒸発源307
には最大の濃度を添加したMgOペレット322、およ
び第3の電子ビーム蒸発源309には両者の中間の量の
Bを添加したMgOペレット323をそれぞれのハース
に配置する。添加するB原子としては、例えばH3
3、B4C、LaB6、TiB2、CaB6、MgB2,C
aB22、BNあるいはB23等のホウ素化合物を用い
てもよいし、ホウ素自体を添加してもよい。
【0032】このような蒸着法により、保護層106中
のBの濃度分布を図4に示すようにした。なお、図4で
は、横軸は保護層の厚さ方向の深さを示し、縦軸はその
深さにおけるBの濃度を示している。具体的な成膜方法
は以下のようである。最初に、第1の電子ビーム蒸発源
304と第3の電子ビーム蒸発源309とを同時に用い
て、これらの投入電力を調節しながら成膜する。その
後、第3の電子ビーム蒸発源309からの蒸発を止め、
第2の電子ビーム蒸発源307と第1の電子ビーム蒸発
源304とを同時に用い、かつこれらへの投入電力を調
節していき、MgO膜の厚さが厚くなるにつれてB量が
多くなるように成膜する。このような成膜方法により図
4に示す濃度分布を有するMgO膜が得られる。このよ
うな濃度分布のMgO膜からなる保護層106を有する
ガス放電パネルを実施例1とする。なお、この濃度分布
を得るための成膜方法としては上述した方法のみでな
く、3個の電子ビーム蒸発源を同時に使用して、これら
に投入する電力とシャッタを調節しながら蒸着してもよ
い。
【0033】さらに、比較のために図5に示すように、
一定のB濃度を有するMgO膜、およびBを添加してい
ないMgO膜も形成して、ガス放電パネルとしての比較
評価を行った。一定のB濃度を有する保護層からなるガ
ス放電パネルを比較例1、Bを添加していない保護層か
らなるガス放電パネルを比較例2とする。なお、Bの濃
度分布については、前面板100と同一距離の位置に配
置したSiウェーハ315上に形成されたMgO膜につ
いて二次イオン質量分析(SIMS)を行って確認し
た。
【0034】実施例1、比較例1および比較例2につい
て、同じ駆動電圧波形を印加して放電開始電圧を調べ
た。この結果、実施例1では160V、比較例1では1
72V、さらに比較例2では175Vが得られた。一
方、比較例2の放電開始電圧である175Vを印加し
て、全白表示での輝度を評価したところ、実施例1では
530cd/m2、比較例1では480cd/m2、比較
例2では470cd/m2であった。この結果からわか
るように、本発明の構成の保護層では、放電開始電圧を
小さくできることが見出された。また、従来と同じ電圧
を印加すれば輝度を向上できることが判明した。
【0035】第II族と第VI族の元素とからなる保護
層中に第III族の元素を添加し、しかも放電空間側の
第III族の元素の濃度を大きくすることで、放電開始
電圧を低下することができたことについては、以下のよ
うに本発明者らは考えている。すなわち、MgOからな
る保護層106中で、B原子はMg原子の格子位置、あ
るいはMg原子とO原子の格子間に入り込むことで、ド
ナーとしての働きをする。図4に示すように、B原子の
濃度が連続的に増大するような濃度分布を設けることに
より、MgOからなる保護層106内には図6に示すよ
うなバンド構造が得られ、これにより保護層106内部
に生じる拡散電位によって保護層106表面にはより多
くの電子が存在できるようになる。その結果、保護層1
06であるMgO表面からの電子放出がより促進される
ので放電開始電圧を低下することができたものと考え
る。
【0036】一方、比較例1および比較例2では、ドナ
ーが保護層106の表面側に片寄って存在しないか、あ
るいは全く存在しないために、図6に示すような拡散電
位が形成されず、保護層106の表面側に電子をより多
く存在させることができない。このため、上記のような
作用が得られず、放電開始電圧を低減できない。ただ
し、比較例1の方が比較例2に比べて放電開始電圧がや
や低くなったのは、B原子がドナーとして作用してお
り、B原子を添加していない比較例2よりは保護層10
6であるMgO膜表面に電子が多く存在するようになっ
たためと推定している。
【0037】次に、上述した実施例1と比較例1のガス
放電パネルを分解して、保護層106の深さ方向のSI
MS分析を行った。この結果を、図7(A)、(B)に
それぞれ示す。測定条件は、一次イオン種:セシウム
(Cs+)、二次イオン種:負イオン、一次イオンエネ
ルギ:5keV、一次イオン入射角度:30度、一次イ
オン電流量:20nA、ラスター領域:180μm角、
分析領域:56μm角である。縦軸はそれぞれの元素の
量に応じて検出された二次イオン強度で、対数表示であ
る。横軸は放電空間側を表面として、保護層の深さを示
す。
【0038】図7によると、表面側の近傍(深さ:0n
m〜50nm)でややBイオンおよびMgOイオン量が
減少しているが、これはSIMSの感度が計測初期に低
下することによる。また、実施例1では、図4に示した
ような成膜条件にもかかわらず、誘電体層105側でB
濃度が大きくなっているのは、誘電体層105中に含ま
れるB原子が保護層106中に拡散することにより生じ
たものである。これは、前面板100と背面板110と
を貼り合わせて、封着、排気、ガス封入の各工程におけ
る加熱プロセスによって生じるものである。図7(A)
からわかるように、実施例1では誘電体層105からの
B原子の拡散があっても、B原子の濃度分布の最小領域
は誘電体層105側に存在している。したがって、誘電
体層105中にB原子を含むガラス材料を用いても、図
6で説明したようなバンド構造が維持される。
【0039】一方、比較例1では図7(B)からわかる
ように、B原子の濃度が表面側でやや減少する傾向がみ
られ、このため図6で説明したようなバンド構造による
電子の閉じこめ効果を期待できないことが判明した。
【0040】また、実施例1のガス放電パネルを通常使
用で5万時間に相当する加速寿命試験を行ったが、放電
開始電圧および発光輝度は無視できる程度の変動しか生
じず、非常に安定に動作できることが確認された。さら
に、このパネルを分解してMgO膜を観察したが、放電
ガスによるスパッタで膜厚が減少していないことが確認
された。
【0041】なお、本実施の形態では放電ガスとしてN
eとXeの混合ガスを用いたが、本発明はこれに限定さ
れるものではなくArより質量数が少なく、MgO膜に
対するスパッタリング効果が小さいHeを混合して使用
してもよい。
【0042】(第2の実施の形態)本発明の第2の実施
の形態のガス放電パネルは、第1の実施の形態と同様な
構成としたが、膜厚方向における第III族元素の添加
量をそれぞれ変化させた保護層を形成した。これは、図
3に示したような蒸着装置でハース中に設置する保護層
材料となるMgOペレットのB原子の添加量をかえれば
所望の構成が作製できる。保護層としてMgO膜を用い
たが、そのMgO膜中の第III族元素であるB原子の
濃度分布を図8(A)から(F)に示すように変化させ
たガス放電パネルを作製した。図8(A)に示す分布を
有する保護層は以下のような方法で容易に得られる。す
なわち、電子ビーム蒸発源を2個用いて、それぞれのハ
ースにセットするMgOペレット中のB原子の添加量が
異なるようにした。最初に、B原子を添加していない第
1の電子ビーム蒸発源304を用いて最終膜厚比の0.
5より大きい膜厚となるまで成膜し、次にB原子を最も
多く添加した第2の電子ビーム蒸発源307を用いて目
標とする膜厚まで成膜すれば、図に示す濃度分布のMg
O膜を得ることができる。
【0043】また、図8(B)に示す分布を有する保護
層106は、第1の電子ビーム蒸発源304、第2の電
子ビーム蒸発源307および第3の電子ビーム蒸発源3
09のそれぞれのハースでB原子の添加量が異なるよう
にしておき、これらの蒸発源を3個同時に用い、かつ電
子ビーム投入電力を膜厚に合わせて調整することで、図
に示すようなほぼ線形の濃度分布を有する保護層106
を得た。図8(C)から(F)に示す分布を有する保護
層106も、上記の方法を組み合わせることで容易に得
ることができる。
【0044】このようにして作成した6種類の保護層分
布を有するガス放電パネルについて、第1の実施の形態
と同様な評価を行ったところ、放電開始電圧は6種類の
パネルともに156V〜162Vで、発光輝度は520
cd/m2〜550cd/m2が得られた。したがって、
これらのガス放電パネルのいずれも、第1の実施の形態
で述べたのと同様の作用および効果のあることが確認さ
れた。これは、第1の実施の形態で説明したバンド構造
により保護層表面にはより多くの電子が存在できるため
であることを補強するものといえる。特に、図8(A)
に示すような濃度分布を有する保護層106を用いたガ
ス放電パネルの場合には、放電開始電圧が156Vとな
り最も低い値が得られた。これは、濃度分布が大きく変
化する点(図8において、Aで示す。)の位置を膜厚比
に対して0.5より大きくし、放電空間側に位置するよ
うにしたことで、電子が閉じ込められる領域が狭くなり
実質的により多くの電子が放電空間側に存在するように
できたことによると推定される。
【0045】なお、第1および第2の実施の形態におい
て、保護層106としてはMgO膜により説明したが、
本発明はこれに限定されるものではなく、プラズマダメ
ージを受け難く、イオン入射に対する二次電子放出係数
の値が十分に大きな材料、例えばCaO、BaOあるい
はCeO2等の周期表第II族と第VI族とからなる元
素間化合物であれば同様の効果が得られる。また、保護
層106中に添加する周期表第III族の元素としても
B原子に限定されることはなく、さらにAl、Gaある
いはInを使用してもB原子の場合と同様な効果を得る
ことができる。
【0046】さらに、第1および第2の実施の形態にお
いては、保護層の形成をバッチ方式の電子ビーム蒸着装
置としたが、本発明はこの蒸着方式に限定されるもので
はない。すなわち、基板が蒸発源に対して平行に移動す
る構成で、かつ複数の電子ビーム蒸発源を移動方向に対
して並行に配置した構成であってもよい。基板を平行に
移動させながら、所定の電子ビーム蒸発源から成膜して
いけば必要な濃度分布を有する保護層を生産性よく得る
ことができる。また、第1の実施の形態で説明したよう
にBの添加量の異なるMgOのペレットを複数個配置し
て蒸着するだけでなく、Bを添加していないMgOペレ
ットとMgB2のようにB源となる材料のみとをそれぞ
れのハースに入れて、これらの電子ビーム蒸発源の投入
電力をかえて膜厚方向にB原子の濃度を変化させるよう
な成膜方式でもよい。
【0047】さらに、MgターゲットやMgOターゲッ
トを用いてスパッタリングにより形成してもよい。この
場合は、ターゲットを複数配列し、それぞれに混入させ
るB量を変え、このターゲット上を前面板が移動しなが
ら成膜するインライン方式のスパッタリング装置で容易
に成膜ができる。この装置構成を図9に示す。この装置
はローディングストッカー905、906、アンローデ
ィングストッカー907、908、スパッタ室910お
よび真空ポンプ901、902、903、904から構
成されている。さらに、スパッタ室910には、保護層
が形成される前面板100を所定の温度に加熱するヒー
タ909と、第II族元素と第VI族元素であるMgO
に第III族元素であるBをそれぞれ異なる添加量とし
た第1のターゲット912、第2のターゲット914、
第3のターゲット916および第4のターゲット918
が配置されている。ローディングストッカー906に保
管されている前面板100がローディングストッカー9
06の昇降機構によりスパッタ室910に連続的に送り
込まれる。第1のターゲット912はBが添加されてい
ないMgOターゲット、第2のターゲット914から第
4のターゲット918までは所定の割合にBを添加した
ターゲットが配置されており、前面板100はこれらの
ターゲット上に位置するときに所定のB原子濃度を有す
る膜が形成される。第4のターゲット918を通過する
と、4段階のステップ状の濃度分布を有する保護層が形
成される。保護層が形成された前面板100は、アンロ
ーディングストッカー907、908を経て、大気中に
取出される。
【0048】また、イオンプレーティングや化学気相成
長(CVD)方式により作製することもできる。
【0049】また、保護層中に添加するB原子量につい
ては、添加量により膜の結晶性が影響されることもある
が、これらを考慮して0.0001原子%以上、20原
子%以下の範囲が望ましい範囲である。
【0050】
【発明の効果】本発明のガス放電パネルおよびその製造
方法によれば、ガス放電パネルの保護層として、周期表
第II族および第VI族の元素を主成分とし、かつ周期
表第III族の元素を少なくとも1つ含有し、周期表第
III族の元素の濃度分布が誘電体層側から放電空間側
(表面)に向かう膜厚方向で、少なくとも放電空間側の
濃度が増大しているように形成したことにより、保護層
内の電子が放電空間側の表面部で存在する割合をより多
くして、保護層表面の二次電子放出係数(γ)を実質上
大きくできる。この結果、放電開始電圧を小さく、か
つ、経時劣化を低減することができるガス放電パネルを
実現できるという大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるガス放電パ
ネル要部斜視図
【図2】同実施の形態のガス放電パネルの要部断面図
【図3】同実施の形態で保護層を形成するための電子ビ
ーム蒸着装置の概略説明図
【図4】同実施の形態の保護層中の第III族元素の膜
厚方向の分布を示す図
【図5】比較例1の保護層中の第III族元素の膜厚方
向の分布を示す図
【図6】同実施の形態の保護層についてのバンド構造を
説明するための摸式図
【図7】実施例1の保護層と比較例1の保護層を二次イ
オン質量分析した結果を示す図
【図8】本発明の第2の実施の形態による保護層中の第
III族元素の膜厚方向の分布を示す図
【図9】本発明の保護層を形成するためのスパッタ装置
の概略構成図
【符号の説明】
100 前面板 101 前面側基板 102 サスティン電極 102a,103a 透明導電膜 102b,103b バス電極 103 スキャン電極 104 表示電極対 105 誘電体層 106 保護層 107 ブラックマトリクス 110 背面板 111 背面側基板 112 アドレス電極 113 下地誘電体層 114 隔壁 115 蛍光体層 115a 蛍光体層(R光) 115b 蛍光体層(G光) 115c 蛍光体層(B光) 120 放電空間 301 基板ホルダー 302,305,314 電子銃 303,306,308 ハース 304 第1の電子ビーム蒸発源 307 第2の電子ビーム蒸発源 309 第3の電子ビーム蒸発源 310 ベルジャ 311 真空ポンプ 312 バルブ 315 Siウェーハ 321,322,323 ペレット 901,902,903,904 真空ポンプ 905,906 ローディングストッカー 907,908 アンローディングストッカー 909 ヒータ 910 スパッタ室 912 第1のターゲット 914 第2のターゲット 916 第3のターゲット 918 第4のターゲット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 東野 秀隆 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5C027 AA05 AA10 5C040 FA01 GB03 GB14 GD07 GE07 JA07 MA03 MA10

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明で絶縁性の前面側基板上に複数の表
    示電極対とそれを覆う誘電体層と保護層とが形成された
    前面板と、背面側基板上に少なくとも蛍光体層と隔壁が
    形成された背面板とを放電空間を介して対向させてなる
    ガス放電パネルであって、 前記保護層が周期表第II族および第VI族の元素を主
    成分とし、かつ周期表第III族の元素を少なくとも1
    つ含有し、前記誘電体層側から前記放電空間側に向かう
    膜厚方向において前記放電空間側の前記周期表第III
    族の元素の濃度が前記誘電体層側に比べて大きいことを
    特徴とするガス放電パネル。
  2. 【請求項2】 前記保護層内の周期表第III族の元素
    の濃度が、誘電体層側から放電空間側の膜厚方向にむけ
    て連続的に増大していることを特徴とする請求項1に記
    載のガス放電パネル。
  3. 【請求項3】 前記保護層内の周期表第III族の元素
    の濃度が、誘電体層側から放電空間側の膜厚方向にむけ
    てステップ状に増大していることを特徴とする請求項1
    に記載のガス放電パネル。
  4. 【請求項4】 前記保護層内の周期表第III族の元素
    の濃度が、誘電体層側から放電空間側の膜厚方向にむけ
    て連続的に増大している領域とステップ状に増大してい
    る領域とを有することを特徴とする請求項1に記載のガ
    ス放電パネル。
  5. 【請求項5】 前記保護層内の周期表第III族の元素
    の濃度分布における濃度の最小領域が、誘電体層側から
    放電空間側に向かう膜厚方向において前記誘電体層近傍
    に存在することを特徴とする請求項1から請求項4まで
    のいずれかに記載のガス放電パネル。
  6. 【請求項6】 前記保護層内の周期表第III族の添加
    元素の濃度が誘電体層側から放電空間側の膜厚方向にむ
    けて大きく変化する点を有し、前記変化する点が前記保
    護層の膜厚比に対して0.5より大きい前記放電空間側
    の位置に設けられていることを特徴とする請求項1から
    請求項5のいずれかに記載のガス放電パネル。
  7. 【請求項7】 前記誘電体層内に周期表第III族の元
    素の少なくとも1つが含まれていることを特徴とする請
    求項1から請求項6までのいずれかに記載のガス放電パ
    ネル。
  8. 【請求項8】 透明絶縁性基板上に複数の表示電極対と
    それを覆う誘電体層と保護層とが形成された前面板と、
    背面側基板上に少なくとも蛍光体層と隔壁が形成された
    背面板とを放電空間を介して対向させてなるガス放電パ
    ネルの製造方法であって、 周期表第II族および第VI族の元素を主成分とする固
    体状の成膜材料と、周期表第III族の元素を少なくと
    も1つ含む固体状の成膜材料とを複数個の成膜源に配置
    して、前記第III族の元素の濃度が前記誘電体層側か
    ら前記放電空間側に向かう膜厚方向において前記誘電体
    層側に比べて前記放電空間側が大きくなるように前記複
    数個の成膜源から蒸発またはスパッタリングにより形成
    することを特徴とするガス放電パネルの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記複数個の成膜源はそれぞれ異なる量
    の周期表第III族の元素を含む成膜材料からなること
    を特徴とする請求項8に記載のガス放電パネルの製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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