JP2003266602A - 硬化被膜を有する透明基材 - Google Patents

硬化被膜を有する透明基材

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JP2003266602A
JP2003266602A JP2002068264A JP2002068264A JP2003266602A JP 2003266602 A JP2003266602 A JP 2003266602A JP 2002068264 A JP2002068264 A JP 2002068264A JP 2002068264 A JP2002068264 A JP 2002068264A JP 2003266602 A JP2003266602 A JP 2003266602A
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compound
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silica
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JP2002068264A
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English (en)
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Shinsuke Ochiai
伸介 落合
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 単層の反射防止膜だけで十分な反射防止性能
を有し、かつメチルメタクリレート−スチレン共重合体
樹脂やポリメチルメタクリレート樹脂からなる基材に対
して、十分な密着性を有する材料を提供する。 【解決手段】 基材表面に、多官能ラジカル重合性化合
物と、カチオン重合性化合物と、多孔質微粒子とを含む
組成物からの硬化被膜が形成されている透明基材が提供
される。多官能ラジカル重合性化合物としては、分子中
に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有
する化合物又はそのオリゴマーを挙げることができる。
また、カチオン重合性化合物としては、オキセタン化合
物やエポキシ化合物を挙げることができる。多孔質微粒
子は、シリカ微粒子であるのが好ましく、また、表面が
被覆された二重構造を有するシリカ又はシリカを含む複
合酸化物であるのも有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面に反射防止性
の硬化被膜が形成された透明基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ディスプレイ用のガラスや樹脂等
の透明基材の表面には、反射防止膜などの機能性被膜が
形成され、利用されてきた。特にコストの面から、蒸着
法やスパッタリング法ではなく、反射防止材料を塗料に
して塗布することにより得られる被膜を形成した基材が
多く開発されている。例えば、特開平 8-100136 号公報
には、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの
共重合体に、エチレン性不飽和基を有する重合性化合物
を配合した、反射防止膜を形成するのに用いられるフッ
素系塗料が記載されている。
【0003】しかしながら、従来用いられている反射防
止膜は、その反射防止性能が不十分であり、例えば上記
特開平 8-100136号公報に記載のものは、屈折率が1.4
3程度であり、十分な反射防止性能が得られなかった。
また、反射防止性能を高めるために反射防止層を高屈折
率層と低屈折率層からなる二層構成にすることが、特開
2001-315242号公報に示されているが、この場合、反射
率が低くなるのは特定の波長を中心とする100〜20
0nmの波長範囲だけであり、他の波長では反射率が逆に
高くなるために、反射光が干渉により強く着色する問題
があった。
【0004】さらに、従来用いられているアクリル系樹
脂等の硬化被膜は、基材となる樹脂によって、その密着
性が異なり、特に基材としてメチルメタクリレート−ス
チレン共重合体樹脂を用いた場合には、その密着性が大
きく低下する。特に、反射防止膜を形成する場合には、
その被膜の膜厚が1μm 以下と薄いことから、通常の紫
外線による硬化では、酸素による重合阻害のため、十分
に硬化させることができず、硬度も不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者は、単
層の反射防止膜だけで十分な反射防止性能を有し、かつ
基材、特にメチルメタクリレート−スチレン共重合体樹
脂やポリメチルメタクリレート樹脂に対して、十分な密
着性を有する材料を開発すべく、鋭意研究を行った結
果、特定の組成物を硬化して得られる被膜が、十分な反
射防性能を有することを見出し、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、基材
表面に、多官能ラジカル重合性化合物と、カチオン重合
性化合物と、多孔質微粒子とを含む組成物からの硬化被
膜が形成されている透明基材を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の透明基材は、表面に硬化
被膜が形成されたものであり、この硬化被膜は、多官能
ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物と多孔質
微粒子を含む組成物から形成される。したがってこの硬
化被膜は、多官能ラジカル重合性化合物とカチオン重合
性化合物の硬化物中に多孔質微粒子が分散されたものと
なる。この硬化被膜が、適当な厚みと屈折率を有するよ
うにすれば、反射防止層として作用する。この硬化被膜
は、多官能ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合
物との混合物中に多孔質微粒子を分散させた組成物から
なる被膜を基材上に形成し、その被膜を硬化させること
によって、得ることができる。
【0008】多官能ラジカル重合性化合物は、分子中に
少なくとも2個の重合性官能基を有し、ラジカル重合に
よって硬化する化合物である。具体的には例えば、分子
中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を
有する化合物又はそのオリゴマー(以下、多官能(メ
タ)アクリロイルオキシ化合物と呼ぶことがある)であ
るのが好ましい。ここで、(メタ)アクリロイルオキシ
基とは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキ
シ基をいい、その他本明細書において、(メタ)アクリ
ル酸、(メタ)アクリレートなどというときの「(メ
タ)」も同様の意味である。
【0009】上に示した多官能(メタ)アクリロイルオ
キシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メ
タ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)
アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)ア
クリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリ
レート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタ
グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリス
リトールトリ−又はテトラ−(メタ)アクリレート、ジ
ペンタエリスリトールトリ−、テトラ−、ペンタ−又は
ヘキサ−(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリ
ロイルオキシエチルイソシアヌレートのような、多価ア
ルコールのポリ(メタ)アクリル酸エステル;環状ホス
ファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイ
ルオキシ基が導入されたホスファゼン系(メタ)アクリ
レート化合物;分子中に少なくとも2個のイソシアナト
基を有するポリイソシアネート化合物と、ポリオールの
一部の水酸基が(メタ)アクリル酸エステル化された化
合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレ
ート化合物;分子中に少なくとも2個のカルボニル基を
有するカルボン酸ハロゲン化物と、ポリオールの一部の
水酸基が(メタ)アクリル酸エステル化された化合物と
を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレー
ト化合物などが挙げられる。これらの化合物は、それぞ
れ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
また、これらの各化合物が2量体、3量体などとなった
オリゴマーであってもよい。
【0010】多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物
には、市販されているものもあるので、それを用いるこ
ともできる。かかる市販品としては、例えば、“NKエ
ステル A-TMM-3L ”(新中村化学工業(株)製、ペンタ
エリスリトールトリアクリレート)、“NKエステル A
-9530 ”(新中村化学工業(株)製、ジペンタエリスリ
トールヘキサアクリレート)、“KAYARAD DPCA”(日本
化薬(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレ
ート)、“アロニックス M-8560 ”(東亞合成(株)
製、ポリエステルアクリレート化合物)、“ニューフロ
ンティア TEICA”(第一工業製薬(株)製、トリスアクリ
ロイルオキシエチルイソシアヌレート)、“PPZ ”(共
栄社化学(株)製、ホスファゼン系メタクリレート化合
物)などが例示される。また、溶剤と混合された状態で
市販されているものを用いることもでき、かかる溶剤混
合型の市販品としては、例えば、“アロニックス UV370
1 ”(東亞合成(株)製)、“ユニディック 17-813”
(大日本インキ化学工業(株)製)、“NKハード M-10
1”(新中村化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0011】一方、カチオン重合性化合物は、カチオン
重合により硬化する化合物である。具体例としては、オ
キセタン化合物やエポキシ化合物を挙げることができ、
これらの混合物を用いることもできる。
【0012】オキセタン化合物は、分子中に少なくとも
1個のオキセタン環を有する化合物である。このような
オキセタン化合物としては、種々のものが使用できる
が、好ましい化合物として、下記式(I)〜(III) で示
されるものを挙げることができる。
【0013】
【0014】式中、R1 は、水素、フッ素、アルキル
基、フルオロアルキル基、アリル基、アリール基又はフ
リル基を表し、mは1〜4の整数を表し、Zは酸素又は
硫黄を表し、R2 はmの値に応じて1〜4価の有機基を
表し、nは1〜5の整数を表し、pは0〜2の整数を表
し、R3 は水素又は不活性な1価の有機基を表し、R4
は加水分解可能な官能基を表す。
【0015】式(I)〜(III) において、R1 がアルキ
ル基の場合、その炭素数は1〜6程度であることがで
き、具体的には、メチル、エチル、プロキル、ブチルな
どが挙げられる。またフルオロアルキル基も、炭素数1
〜6程度であることができる。さらにアリール基は、典
型的にはフェニル又はナフチルであり、これらは他の基
で置換されていてもよい。
【0016】また、式(I)においてR2 で表される有
機基は、特に限定されないが、例えば、mが1の場合
は、アルキル基、フェニル基などが、mが2の場合は、
炭素数1〜12の直鎖又は分枝状アルキレン基、直鎖又
は分枝状のポリ(アルキレンオキシ)基などが、mが3
又は4の場合は、類似の多価官能基が挙げられる。
【0017】式(III) においてR3 で表される不活性な
1価の有機基として、典型的には炭素数1〜4のアルキ
ル基が挙げられ、またR4 で表される加水分解可能な官
能基としては、例えば、メトキシやエトキシなどを包含
する炭素数1〜5のアルコキシ基、塩素原子や臭素原子
のようなハロゲン原子などが挙げられる。
【0018】オキセタン化合物の中でも、分子中にシリ
ル基を有する化合物又はその加水分解縮合物が好ましく
用いられる。特に、前記式(III) の化合物をアルカリと
水の存在下で加水分解縮合させることによって得られ
る、オキセタニル基を複数有するシルセスキオキサン化
合物(ネットワーク状ポリシロキサン化合物)は、硬い
被膜を与えるため、本発明に用いる材料として好適であ
る。
【0019】エポキシ化合物は、分子中にエポキシ基を
少なくとも1個有する単量体であって、カチオン重合を
起こして硬化するものであれば、いずれも使用すること
ができる。例えば、フェニルグリシジルエーテル、エチ
レングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグ
リシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイ
ド、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、3,4−エ
ポキシシクロヘキシルメチル 3′,4′−エポキシシ
クロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキ
シシクロヘキシル)アジペートなどが挙げられる。
【0020】カチオン重合性化合物としては、特に、オ
キセタン化合物を単独で、又はエポキシ化合物と組み合
わせて用いるのが好ましい。この場合、エポキシ化合物
は、オキセタン化合物100重量部に対し、通常0〜3
0重量部程度、好ましくは1〜20重量部程度の割合で
添加される。
【0021】多孔質微粒子は特に限定されないが、平均
粒径が5nm〜10μm の範囲にあるものが好ましく用い
られる。特に反射防止膜として被膜を形成する場合に
は、平均粒径が5nm〜100nmの範囲にある微粒子がよ
り好ましい。粒径があまり小さいものは工業的に製造す
ることが困難であり、また粒径があまり大きくなると、
被膜の透明性などの光学性能が低下するため、好ましく
ない。
【0022】多孔質微粒子としては、材料そのものの屈
折率が低く、かつ強度を有することから、シリカ微粒子
が好ましい。多孔質シリカは、屈折率が1.2〜1.4程
度であり、通常のシリカ微粒子の屈折率1.46 に比べ
て屈折率が低く、反射防止材料を形成するうえで好まし
い。多孔質シリカとしては、例えば、特開平 7-48527号
公報に示されるように、アルコキシシランをアルカリの
存在下で加水分解することにより得られる、高度に絡み
合って枝分かれし、ポリマー状に生成したシリカが挙げ
られる。
【0023】また多孔質微粒子として、表面が被覆され
た二重構造を有するシリカ又はシリカを含む複合酸化物
を用いることもできる。このような表面が被覆された二
重構造を有するシリカ又はシリカを含む複合酸化物は、
例えば、特開平 7-133105 号公報に記載される方法など
によって製造することができる。特に、表面が被覆され
て二重構造になっている多孔質シリカ微粒子は、粒子の
細孔入口が閉塞されて粒子内部の多孔性が保持されるこ
とから、好ましく用いられる。
【0024】硬化被膜を形成するために用いる組成物に
おいて、各成分の量は特に限定されないが、多官能ラジ
カル重合性化合物とカチオン重合性化合物と多孔質微粒
子との合計量を基準に、多官能ラジカル重合性化合物が
通常10〜70重量%、カチオン重合性化合物が通常1
0〜70重量%、多孔質微粒子が通常20〜80重量%
の範囲である。また、多官能ラジカル重合性化合物とカ
チオン重合性化合物の合計量を基準にすると、カチオン
重合性化合物は通常20〜80重量%である。カチオン
重合性化合物の量があまり少ないか、又はあまり多い
と、硬化被膜と基材との十分な密着性が得られなくな
る。また、多孔質微粒子の量があまり少ないと、硬化被
膜の屈折率が低下せず、十分な反射防止機能が得られな
くなることがあり、その量があまり多いと、膜としての
強度が低下する。反射防止膜として被膜を形成する場合
には、被膜の屈折率が、好ましくは1.20〜1.45、
より好ましくは1.25〜1.41となるよう、多孔質微
粒子の添加量を選択するのが好ましい。その際の添加量
は、多孔質微粒子の屈折率によっても異なるが、通常は
先述した範囲内であり、より好ましくは、15〜70重
量%である。
【0025】本発明に用いる基材は、透明なものであれ
ば特に限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレ
ート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、メチ
ルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂、アクリロニ
トリル−スチレン共重合体樹脂、トリアセチルセルロー
ス樹脂のような樹脂基材、また無機ガラスのような無機
基材などが挙げられる。特に、メチルメタクリレート−
スチレン共重合体は、吸湿による伸縮が小さく、反射防
止板の基材として適している。
【0026】基材は、板(シート)やフィルムなどのよ
うに、表面が平らなものであってもよいし、凸レンズや
凹レンズなどのように、表面が曲率を有する基材であっ
てもよい。また、表面に細かな凹凸が設けられていても
よい。樹脂基材である場合には、その表面にハードコー
ト層などの他の被膜が形成されていてもよい。
【0027】多官能ラジカル重合性化合物とカチオン重
合性化合物と多孔質微粒子とを含む組成物を基材上に塗
布するためには、これらの各成分を含有する塗料として
構成する必要がある。塗料には通常、多官能ラジカル重
合性化合物とカチオン重合性化合物と多孔質微粒子の他
に、重合開始剤や溶剤、また必要により各種添加剤が含
まれる。
【0028】重合開始剤は、硬化被膜を形成するために
必要である。特に、多官能ラジカル重合性化合物とカチ
オン重合性化合物とは、重合機構が異なるため、それぞ
れ別個に重合開始剤の添加が必要である。
【0029】多官能ラジカル重合性化合物のための重合
開始剤には、紫外線を照射することでラジカルを発生す
る化合物が好ましく用いられる。かかるラジカル重合開
始剤としては、ベンジル、ベンゾフェノンやその誘導
体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、
α−ヒドロキシアルキルフェノン類、ヒドロキシケトン
類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキ
サイド類などが好適に使用される。
【0030】これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用
いることができるほか、多くは二種類以上混合して用い
ることもできる。また、これらの各種重合開始剤は市販
されているので、そのような市販品を用いることができ
る。市販されている重合開始剤としては、例えば、チバ
・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から販売されてい
る“IRGACURE 651”、“IRUGACURE 184”、“IRUGACURE
907”、“IRUGACURE500”、“DAROCURE 1173”など、
日本化薬(株)から販売されている“KAYACUREBP-10
0”、“KAYACURE DETX-S”など、川口薬品(株)から販
売されている“ハイキュア OBM”など、シェル化学
(株)から販売されている“QUANTACURE ITX”など、B
ASF社から販売されている“LUCIRIN TPO ”など、日
本シイベルヘグナー(株)から販売されている“ESACUR
E EB3”などを挙げることができる。
【0031】ラジカル重合開始剤は、多官能ラジカル重
合性化合物100重量部に対して、通常0.1〜20重
量部程度、好ましくは0.5〜10重量部程度の割合で
添加される。開始剤の量があまり少ないと、多官能ラジ
カル重合性化合物の紫外線重合性が十分に発揮されず、
またその量があまり多くなっても、増量効果が認められ
ず、経済的に不利であるとともに、被膜の光学特性の低
下をきたす可能性があるので、好ましくない。
【0032】また、カチオン重合性化合物のための重合
開始剤としては、紫外線を照射することでカチオンを発
生する化合物が用いられる。かかるカチオン重合開始剤
としては、例えば、次の各式で示されるジアゾニウム
塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩
が好適に使用される。
【0033】ArN2 +- 、 (R)3+- 、 (R)2+-
【0034】式中、Arはアリール基を表し、Rはアリ
ール基又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、一分子
内にRが複数回現れる場合は、それぞれ同一でも異なっ
ていてもよく、Z- は非塩基性でかつ非求核性の陰イオ
ンを表す。
【0035】上記各式において、Ar又はRで表される
アリール基も、典型的にはフェニルやナフチルであり、
これらは適当な基で置換されていてもよい。また、Z-
で表される陰イオンとして具体的には、テトラフルオロ
ボレートイオン(BF4 -)、テトラキス(ペンタフルオ
ロフェニル)ボレートイオン(B(C65)4 -)、ヘキサ
フルオロホスフェートイオン(PF6 -)、ヘキサフルオ
ロアーセネートイオン(AsF6 -)、ヘキサフルオロア
ンチモネートイオン(SbF6 -)、ヘキサクロロアンチ
モネートイオン(SbCl6 -)、硫酸水素イオン(HS
4 -)、過塩素酸イオン(ClO4 -)などが挙げられ
る。
【0036】これらのカチオン重合開始剤の多くは市販
されているので、そのような市販品を用いることができ
る。市販のカチオン重合開始剤としては、例えば、ダウ
ケミカル日本(株)から販売されている“サイラキュア
UVI-6990 ”、それぞれ旭電化工業(株)から販売され
ている“アデカオプトマー SP-150”及び “アデカオプ
トマー SP-170”、ローディアジャパン(株)から販売
されている“RHODORSILPHOTOINITIATOR 2074 ”などを
挙げることができる。
【0037】これらのカチオン重合開始剤は、カチオン
重合性化合物100重量部に対し、通常0.1〜20重
量部程度、好ましくは0.5〜10重量部程度の割合で
添加される。開始剤の量があまり少ないと、カチオン重
合性化合物の紫外線重合性が十分に発揮されず、またそ
の量があまり多くなっても、増量効果が認められず、経
済的に不利であるとともに、被膜の光学特性の低下をき
たす可能性があるので、好ましくない。
【0038】溶剤は、塗料の濃度や粘度、硬化後の膜厚
などを調整するために使用される。用いる溶剤は、適宜
選択すればよいが、例えば、メタノール、エタノール、
プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2
−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールのよ
うなアルコール類、2−エトキシエタノール、2−ブト
キシエタノール、3−メトキシプロパノール、1−メト
キシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノ
ールのようなアルコキシアルコール類、ジアセトンアル
コールのようなケトール類、アセトン、メチルエチルケ
トン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、トル
エン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチ
ル、酢酸ブチルのようなエステル類などが挙げられる。
【0039】溶剤の使用量は、基材の材質、形状、塗布
方法、目的とする被膜の膜厚などに応じて適宜選択され
るが、通常は、多官能ラジカル重合性化合物、カチオン
重合性化合物及び多孔質微粒子の合計100重量部あた
り、 20〜10,000重量部程度の範囲である。
【0040】また、塗料中には、安定化剤、酸化防止
剤、着色剤、レベリング剤などの添加剤が含有されてい
てもよい。特にシリコーンオイルは、レベリング性を向
上させるだけでなく、硬化被膜の表面の滑り性も向上さ
せ、表面硬度も向上させる効果があるので、添加するの
が好ましい。
【0041】シリコーンオイルとしては、通常のものが
使用でき、具体的には、ジメチルシリコーンオイル、フ
ェニルメチルシリコーンオイル、アルキル・アラルキル
変性シリコーオイル、フルオロシリコーンオイル、ポリ
エーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シ
リコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、シラノ
ール基含有シリコーンオイル、アルコキシ基含有シリコ
ーンオイル、フェノール基含有シリコーンオイル、メタ
クリル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオ
イル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール
変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイ
ル、メルカプト変性シリコーンオイル、フッ素変性シリ
コーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイルなど
が例示される。これらシリコーンオイルは、それぞれ単
独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】シリコーンオイルの添加量は通常、多官能
ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物及び多孔
質微粒子の合計100重量部に対して、0〜20重量部
程度である。その量が20重量部より多いと、光学性能
や膜強度が低下するため、好ましくない。
【0043】以上説明したような塗料を基材の表面に塗
布することにより、多官能ラジカル重合性化合物、カチ
オン重合性化合物及び多孔質微粒子からなる被膜が形成
される。基材の表面に塗料を塗布するにあたっては、通
常と同様の方法、例えば、マイクログラビアコート法、
ロールコート法、ディッピングコート法、フローコート
法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、
スプレーコート法などの方法により塗布すればよい。
【0044】次いで、この被膜に紫外線を照射する。紫
外線の照射時間は特に限定されないが、通常は 0.1〜
60秒程度の範囲である。紫外線は通常、10〜40℃
程度の雰囲気下で照射することができる。照射する紫外
線の照射エネルギーは、通常50〜3,000mJ/cm2
度である。紫外線の照射量があまり少ないと、硬化が不
十分となり、膜の強度が低下する。また紫外線の照射量
があまり多くなると、被膜や基材が劣化し、光学特性や
機械物性の低下をきたす可能性があるので、好ましくな
い。
【0045】塗料が溶剤を含有する場合、紫外線は、被
膜が溶剤を含有した状態のまま照射してもよいし、溶剤
を揮発させた後に照射してもよい。溶剤を揮発させる場
合には、室温で放置してもよいし、30〜100℃程度
で加熱乾燥してもよい。乾燥時間は、基材の材質、形
状、塗布方法、目的とする被膜の膜厚などに応じて適宜
選択される。紫外線照射によって硬化被膜を形成した
後、硬化被膜をより強固なものとするために、さらに加
熱処理を施してもよい。加熱温度と時間は適宜選択され
るが、通常50〜120℃で30分〜24時間程度であ
る。
【0046】形成された硬化被膜は、膜厚が通常0.0
1〜1μmの範囲となるようにするのが好ましい。膜厚
が0.01μmに満たなくても1μm を超えても、反射防
止膜としての機能が低下しやすい。
【0047】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの実施例によって限定される
ものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び
部は、特記ないかぎり重量基準である。また、実施例で
得た基材は、以下の方法で評価した。
【0048】(1)反射率 基材の測定面側とは反対側の面をスチールウールで粗面
化し、黒色ペンキを塗って乾燥し、次いで測定面の入射
角度5°における絶対鏡面反射スペクトルを紫外線可視
分光光度計〔“UV-3100 ”、(株)島津製作所製〕を用
いて測定し、反射率が最小値を示す波長とその反射率の
最小値を求めた。
【0049】(2)密着性 JIS K 5400 に規定される「碁盤目テープ法」に従っ
て、反射防止層側の表面に設けた碁盤目100個あたり
の剥離数で評価した。
【0050】実施例1 表面がエチルシリケートの加水分解物で被覆された粒径
20〜70nmの多孔質シリカ微粒子がイソプロピルアル
コール中に20%濃度で分散されたゾルを80部、多官
能ラジカル重合性化合物としてジペンタエリスリトール
ヘキサアクリレートを3.6部、光ラジカル重合開始剤
“IRGACURE 907 ”〔化学名:2−メチル−1−〔4−
(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−
1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から
入手〕を 0.2部、オキセタン化合物として3−エチル
−3−〔{3−(トリエトキシシリル)プロポキシ}メチ
ル〕オキセタン〔式(III) において、R1=エチル、R4
=エトキシ、n=3、p=0の化合物〕の加水分解縮合
物であるオキセタニルシルセスキオキサンを 19.4
部、エポキシ化合物として3,4−エポキシシクロヘキ
シルメチル 3′,4′−エポキシシクロヘキサンカル
ボキシレートを 1.0部、光カチオン重合開始剤“RHOD
ORSIL PHOTOINITIATOR 2074 ”〔化学名:p−クミル−
p−トリルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロ
フェニル)ボレート、ローディアジャパン(株)から入
手〕を 1.0部、メチルハイドロジェンシリコーンオイ
ル“KF99”(信越化学工業(株)から入手)を1.0
部、イソプロピルアルコールを1,694.8部、及び2
−ブトキシエタノールを200部混合し、分散させて塗
料を得た。
【0051】この塗料に、スチレン単位を約40%含む
メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂板〔日本
アクリエース(株)製の“アクリエースMS”〕を浸漬
し、引上速度24cm/min でディップ塗布して、室温で
1分以上乾燥させた後、60℃で10分間乾燥させた。
乾燥後、高圧水銀ランプ〔ウシオ電機(株)製の“UVC-35
33”〕により約1,000mJ/cm2のエネルギーで紫外線
を照射して、反射防止性能を有する透明基材を得た。こ
の透明基材の評価結果を表1に示した。この基材の被膜
について、反射スペクトルから屈折率を計算すると1.
39 であり、同じく反射スペクトルから計算した膜厚
は110nmであった。この基材は、干渉色による反射光
の着色が少なかった。
【0052】実施例2 塗料の組成を次のように変えた以外は、実施例1と同様
にして、反射防止性能を有する透明基材を作製した。
【0053】 実施例1と同じ多孔質シリカ微粒子の20%ゾル 100部 多官能ラジカル重合性化合物“NKハード M-101”(*) 7.5部 実施例1と同じオキセタン化合物 13.3部 実施例1と同じエポキシ化合物 0.7部 実施例1と同じ光カチオン重合開始剤 0.7部 実施例1と同じシリコーンオイル 1.0部 イソプロピルアルコール 1,676.8部 2−ブトキシエタノール 200部 (*)“NKハード M-101” :多官能ウレタンアクリレートオリゴマーを80%と 光ラジカル重合開始剤を含む溶液、新中村化学工業(株)製。
【0054】得られた透明基材の評価結果を表1に示し
た。この基材の被膜について、反射スペクトルから屈折
率を計算すると1.38 であり、同じく反射スペクトル
から計算した膜厚は106nmであった。この基材も、干
渉色による反射光の着色が少なかった。
【0055】比較例1 塗料の組成を次のように変えた以外は、実施例1と同様
にして、反射防止性能を有する透明基材を作製した。
【0056】 実施例1と同じ多孔質シリカ微粒子の20%ゾル 100部 実施例2で用いたのと同じ“NKハード M-101” 25部 実施例1と同じシリコーンオイル 1.0部 イソプロピルアルコール 1,674部 2−ブトキシエタノール 200部
【0057】得られた透明基材の評価結果を表1に示し
た。この基材の被膜について、反射スペクトルから屈折
率を計算すると1.40 であり、同じく反射スペクトル
から計算した膜厚は112nmであった。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】本発明の硬化被膜を有する透明基材は、
反射防止性能に優れ、かつ反射光の干渉による着色も少
なく、さらに基材との密着性も高いので、ディスプレイ
等の保護板として有用である。
フロントページの続き Fターム(参考) 2K009 AA04 BB14 CC09 CC23 CC24 CC42 4F073 AA14 BA03 BA18 BA19 BA26 BA52 BB01 BB02 CA45 FA03 FA07 FA13 4F100 AA20B AH06B AK12 AK25 AK25B AK52B AK53B AK54B AL01 AL05B AT00A BA02 BA07 CA23B CA30B DE01B EH46 EJ54 EJ86 GB41 HB00 JB12B JL10 JN06 JN18B YY00B

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材表面に、多官能ラジカル重合性化合物
    と、カチオン重合性化合物と、多孔質微粒子とを含む組
    成物からの硬化被膜が形成されていることを特徴とする
    透明基材。
  2. 【請求項2】多官能ラジカル重合性化合物が、分子中に
    少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有す
    る化合物又はそのオリゴマーである請求項1に記載の透
    明基材。
  3. 【請求項3】カチオン重合性化合物が、オキセタン化合
    物及びエポキシ化合物から選ばれる請求項1又は2に記
    載の透明基材。
  4. 【請求項4】カチオン重合性化合物が、分子中にシリル
    基を有するオキセタン化合物又はその加水分解縮合物を
    主成分とする請求項3に記載の透明基材。
  5. 【請求項5】多孔質微粒子が、シリカ微粒子である請求
    項1〜4のいずれかに記載の透明基材。
  6. 【請求項6】多孔質微粒子が、表面を被覆された二重構
    造を有するシリカ又はシリカを含む複合酸化物である請
    求項1〜4のいずれかに記載の透明基材。
  7. 【請求項7】硬化被膜が、1.20〜1.45の屈折率及
    び0.01〜1μmの膜厚を有し、反射防止機能を有する
    被膜である請求項1〜6のいずれかに記載の透明基材。
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KR1020020069028A KR20030040065A (ko) 2001-11-13 2002-11-08 양이온성 중합 화합물을 함유하는 조성물 및 이로부터수득되는 코팅재
TW91132941A TWI319420B (en) 2001-11-13 2002-11-08 Composition comprising a cationic polymerization compound and coating obtained from the same
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CNB021506388A CN1249166C (zh) 2001-11-13 2002-11-11 含阳离子聚合化合物的组合物和由该组合物得到的涂层

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