JP2003266246A - 電解複合研磨装置及び電解複合研磨用工具並びに電解複合研磨方法 - Google Patents

電解複合研磨装置及び電解複合研磨用工具並びに電解複合研磨方法

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JP2003266246A
JP2003266246A JP2002066319A JP2002066319A JP2003266246A JP 2003266246 A JP2003266246 A JP 2003266246A JP 2002066319 A JP2002066319 A JP 2002066319A JP 2002066319 A JP2002066319 A JP 2002066319A JP 2003266246 A JP2003266246 A JP 2003266246A
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hollow body
electrolytic solution
polishing
electrolytic
internal electrode
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English (en)
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Minoru Suzuki
実 鈴木
Hideki Kono
秀樹 河野
Yuukifu Shimoda
祐紀夫 下田
Fumihito Sakurai
文仁 櫻井
Yoshiyasu Saito
喜泰 斉藤
Kazuhisa Orimo
和久 折茂
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GUNMA NATIONAL COLLEGE OF TECHNOLOGY
KANSAN CORP
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GUNMA NAT COLLEGE OF TECHNOLOG
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KANSAN CORP
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  • Electrical Discharge Machining, Electrochemical Machining, And Combined Machining (AREA)
  • Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 容量が大きく開口部の小さい圧力容器などで
もその内周面を効率よく精密に研磨する。 【構成】 内周面が円形状を成す導電性の中空体1内に
粒状研磨材Gsと電解液ELとを入れ、その電解液EL
に内部電極8を浸漬させ、中空体1の外面には外部電極
7を接触させる。そして、外部電極7により中空体1を
陽極として内部電極8との間に通電しながら中空体1を
回転させる。又、給液系3から中空体1内に電解液EL
を順次供給しながら、これを排液系4より排出して循環
させる。これにより、中空体1内で流動する粒状研磨材
Gsの擦過作用と電解作用とで中空体1の内周面を研磨
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電解作用と物理的擦
過作用とを併用する高度な研磨技術に係わり、詳細には
半導体製造に用いられる高純度ガスを封入した圧力容器
など内周面が円形状を成す中空体を研磨対象とし、その
内周面を短時間で精密に研磨することのできる装置及び
工具並びに方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、金属材料などの表面を研磨する方
法として、フェルトなどの不織布に砥粒を固定せしめた
バフを用いるバフ研磨ほか、バレル研磨や電解研磨など
種々の加工法が知られる。
【0003】バフ研磨は研磨対象の表面をバフによって
擦過する方法であるが、この方法では研磨対象にバフに
よる適度の押圧力を加え続ける必要があるばかりでな
く、バフの接触面だけしか研磨できないので大きな面積
の加工には不向きであり、しかも表面粗さをミクロンレ
ベルに仕上げるには多くの時間が必要である。
【0004】尚、一般に表面粗さは算術平均粗さをR
a、十点平均粗さをRz、最大高さをRy、又はRmax
で表すが、近年では表面粗さの小さい超精密な研磨の必
要性が高まっている。例えば、液晶や半導体の製造に使
用される高純度ガス(3フッ化窒素ガスなど)を封入し
ておく圧力容器では、内面の表面粗さが大きいと凹凸部
分に塵埃などの微粒子(パーティクル)が詰まってガス
の純度が低下してしまうため、その種の容器には内面の
表面粗さに0.25μmRa以下を要求される。
【0005】この点、バレル研磨や電解研磨は、バフ研
磨に対して比較的短時間で精密な研磨をすることが可能
である。前者のバレル研磨とはバレル内に研磨対象ほ
か、研磨石や砥粒といった粒状研磨材、並びに研磨対象
同士の衝突を防ぐガラスボールなどのメディアを入れ、
その状態でバレルを回転させることにより内部の研磨対
象を研磨するというものであるが、この方法は小型な部
品の研磨には有用であるも研磨対象が大型なものではバ
レルに入らず研磨を行えない。
【0006】尚、バレル研磨には図9に示すような回転
バレル法ほか、図10に示すような遠心バレル法などが
あるが、図9及び図10に示される例では何れもバレル
自体を研磨対象とし、そのバレルS内に研磨材の分散液
GLを入れ、その研磨材によってバレルSの内周面を研
磨する。ここに、図9の回転バレル法はバレルを回転
(自転)させるだけであるのに対し、図10の遠心バレ
ル法ではバレルを自転させつつ回転運動(公転)させ
る。これらの方法は大きな面積を一度に研磨できるとい
う利点を有するものの、回転バレル法では研磨対象に対
する研磨材の擦過作用が小さいため、所定の表面粗さを
得るのに数日以上といった相当な時間を要する。
【0007】又、遠心バレル法では、研磨対象に対する
研磨材の擦過作用が遠心力により増大されるため、回転
バレルで数日以上を要す表面粗さ精度を数時間足らずで
得られるものの、数百リットルを越えるような大型の容
器を高速で自転/公転させるには装置が大型化するた
め、その種の大型容器は現実的な研磨対象にはなり得な
い。
【0008】一方、電解研磨は、図11に示すよう研磨
対象Wを陽極として電解液ELに浸し、これを陰極Cと
の間で電解するというものである。これによれば、研磨
対象の表面凸部が電解作用により集中的に溶解されるた
めに、機械的な研磨に比べて加工面の平滑性が上がると
されている。しかし、電解研磨それ自体では加工面に電
気絶縁性の酸化膜(不働態化皮膜)が生成されるために
加工面は鏡面に至らず、その表面粗さは0.5μmRy
程度が限界である。しかも、図11のような電解研磨に
よれば、研磨対象の表面積が大きくなると電流密度分布
が不均一となるため、大きな研磨対象に適用するのは困
難である。
【0009】このため、表面粗さに0.5μmRy以下
を要求されるような場合には、電解複合研磨といって、
電解研磨に物理的な研磨を複合させた方法が採用され
る。図12にその概念図を示して説明すれば、Dは回転
板、Gは回転板に固定される砥石又はバフといった研磨
材であり、回転板Dの中心には研磨材Gの外周に向けて
電解液を供給するための流路hが形成される。そして、
これによれば、回転板Dを陰極、研磨対象Wを陽極とし
て、その相互間に流れる電解液を通じて研磨対象Wに電
解作用を生じさせつつ、研磨対象Wの表面を研磨材Gに
て擦過することにより、その表面を超精密に研磨するこ
とができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、従来の電解
複合研磨によれば、加工面に生成される酸化膜を研磨材
で除去しながら電解研磨を行うので、電解研磨のみの加
工に比べて表面粗さの小さい超精密研磨を効率的に行え
るという利点を有する反面、バフ研磨のように大きな面
積を研磨加工するには時間が掛かるという難点がある。
しかも、研磨対象が圧力容器のように開口部の小さいも
のでは、その内部に回転板Dや研磨材Gを導入すること
すら困難であり、これを導入できたとしても研磨材Gを
容器の内面に適圧で接触させ続けることは容易でない。
よって、従来の電解複合研磨は、研磨対象が加工面積の
小さい比較的小型なものに限られ、しかも板材表面や容
器の外表面のように砥石や研磨布といった研磨材を好適
に接触させ得るものでなければ研磨加工を施せないとい
う問題があった。
【0011】本発明は以上のような事情に鑑みて成され
たものであり、その目的は容量が大きく開口部の小さい
圧力容器などでもその内周面を効率よく精密に研磨でき
るようにすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するため、内周面が円形状を成す導電性の中空体内に粒
状研磨材と電解液とを入れて当該中空体の内周面を研磨
する装置であって、前記中空体を回転させる装置本体
と、前記中空体内に電解液を供給する給液系と、前記中
空体内で電解液に浸漬される内部電極と、前記中空体の
外面部に摺接する外部電極とを具備して成る電解複合研
磨装置を提供する。
【0013】特に、上記の装置において、中空体内に供
給すべき電解液が蓄えられる貯液槽と、電解液を中空体
内から排出する排液系とを有し、その排液系を前記貯液
槽に接続して電解液の循環系を形成することを特徴とす
る。
【0014】又、軸方向両端に内径を狭めた開口部が形
成される中空体を研磨対象とし、内部電極が前記開口部
の双方から別々に出し入れ可能とされる一対の屈曲杆か
ら成り、その両屈曲杆がそれぞれ中空体の軸方向片側面
に沿って延びるベース部と該ベース部の一端から前記開
口部に向かって傾斜状に延びるアーム部とを有し、しか
もベース部の部位に中空体との間隙を一定に保つ電気絶
縁性のスペーサが取り付けられることを特徴とする。
【0015】更に、本発明は内周面が円形状を成す導電
性中空体の内周面を研磨するのに用いる工具であって、
前記中空体内に電解液を供給する給液管と、中空体内の
電解液を外部に排出するための排液管とを備え、その給
液管と排液管とが軸方向に相対移動可能な一体の二重管
とされ、その先端部に給液管と排液管との相対移動によ
って開閉する一対のヘッドが設けられ、そのヘッドは閉
時において前記二重管の軸線に沿って互いに近接するよ
う二重管の先端部にリンクを介して接続されると共に、
前記ヘッドの少なくとも一方が開時において中空体の内
面部に近接する導電性の内部電極とされて成ることを特
徴とする。ここに、好ましくはヘッドの少なくとも一方
が開時において中空体の内面部に近接する導電性の内部
電極とされ、前記ヘッドの少なくとも一方には開時にお
いて中空体の内面部に摺接する研磨材が取り付けられ
る。
【0016】一方、本発明は、内周面が円形状を成す導
電性の中空体内に粒状研磨材と電解液とを入れ、その電
解液に陰極と成す内部電極を浸らしめ、その状態で中空
体を陽極として内部電極との間に電解液を介して電解電
流を流しつつ、前記中空体を所定方向に回転させてその
内部で粒状研磨材を流動させることにより中空体の内周
面を研磨することを特徴とする電解複合研磨方法を提供
する。ここで、好ましくは電解液を中空体内に供給しな
がら、その電解液を中空体内から排出し、排出した電解
液から研磨屑を除去した後、これを中空体内に再供給し
て循環させると共に、循環中の電解液の電解質濃度を測
定し、その濃度が所定値以下になったときに硝酸ナトリ
ウムなどの電解質を補充する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の適用例を図面に基
づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施形態を示し
た概念図である。図1において、1は高純度ガスを封入
する圧力容器などとして用いられる導電性の中空体(研
磨対象)であり、その内外両周面は円形状を成し、軸方
向両端には内径を狭めた開口部1A,1Bが形成され
る。尚、その開口部1A,1Bは高純度ガスその他の内
容物を出し入れするためのものであり、通常は図示せぬ
バルブによって密閉される。そして、この中空体1内に
は後述の如く電解液ELと粒状研磨材Gsとが入れられ
る。
【0018】2は上記のような中空体1の内周面を研磨
するための装置本体であり、これは中空体1を水平状に
して回転自在に支持する摩擦ローラ2A、中空体1の軸
方向の移動を規制するガイドローラ2B、並びに摩擦ロ
ーラ2Aを回転駆動させる駆動源2Cなどから構成され
る。
【0019】3は中空体1内に電解液を供給する給液
系、4は中空体1内から電解液を排出する排液系であ
り、それら給液系3と排液系4は貯液槽5を介して電解
液の循環系を形成する。給液系3は貯液槽5内に蓄えら
れた電解液を取り出すためのポンプ3Aと、このポンプ
3Aを介して中空体1内に電解液を誘導するための往路
管3Bなどから成り、その往路管3Bは一方の開口部1
Aから中空体1内に挿入され、その先端には中空体1の
内部上方に向けて電解液を噴出する図示せぬノズルが取
り付けられる。
【0020】一方、排液系4は中空体1の底部に溜まっ
た電解液を取り出すためのポンプ4Aと、このポンプ4
Aを介して貯液槽5に電解液を戻すための復路管4Bな
どから成り、その復路管4Bの一端側は開口部1Bから
中空体1内に挿入され、その端部は可撓性を有して中空
体1内の電解液中に垂らし込まれる。
【0021】又、貯液槽5は、排液系4からの電解液に
含まれる研磨屑を除去するための沈殿地として、内部が
仕切板5Aを介して連なる複数の部屋Q〜Qに区分
される。尚、最下流の部屋Qには往路管3Bの一端が
接続され、最上流の部屋Qには復路管4Bの一端が接
続される。因に、貯液槽5に濾材を収納したり、給液系
3や排液系4にフィルタを装置するなどして、それら循
環系に研磨屑を除去するための濾過機能をもたせてもよ
い。そして、本例によれば、中空体1と貯液槽5との間
で循環される電解液を媒介して、中空体1の内周面の電
解研磨が行われる。
【0022】6は、中空体1の内周面を電解研磨するた
めの電気回路であり、これは電源部E、可変抵抗器R、
電圧計V、及び電流計Aなどを含んで構成され、中空体
1の外面には該中空体1を陽極(アノード)と成すブラ
シとして黒鉛質の外部電極7が摺接されると共に、中空
体1内には陰極(カソード)と成す棒状の内部電極8が
配置される。このうち、外部電極7は一定の接触圧が保
たれるよう図示せぬバネを介して中空体1の外周面に押
し付けられる。尚、外部電極7は中空体の外周面に直に
接触させても良いが、好ましくは中空体1の外周に銅板
など表面が平滑な導電性の帯を巻き付け、その帯に外部
電極7を摺接させると良い。これによれば、中空体1の
外周面が摩耗したり変色したりすることがなく、外部電
極7の摩耗も防止できる。一方、内部電極8はその一部
が中空体1の内面部に近接する状態で電解液に浸漬され
る。特に、本例において、内部電極8は開口部1A,1
Bの双方から別々に出し入れ可能とされる左右対称な一
対の屈曲杆8A,8Bから構成される。
【0023】図2で明らかなように、それら屈曲杆8
A,8Bは中空体1の軸方向片側面に沿うベース部9
と、このベース部9の一端から開口部1A,1Bに向か
って傾斜状に延びるアーム部10とを具備して成り、そ
のベース部9及びアーム部10は導電性の棒材(本例に
おいて直径20mmの黄銅の丸棒)を塑性加工して一連に
形成される。尚、このような内部電極8によれば抵抗損
失が少なく、大電流を流すことが可能である。又、内部
電極8の両端は中空体1の軸線に平行して開口部1A,
1Bから外部に突き出されるほか、ベース部9の一端側
は中空体1の端部曲面に臨む曲線部11を形成する。こ
こで、内部電極8の両端は装置本体のフレームに電気絶
縁体を介して固定してもよいが、好ましくは電気絶縁物
12に内部電極8の両端部や上記の往路管3B及び復路
管4Bを水密的に貫通せしめ、その電気絶縁物12を開
口部1A,1Bに取り付けて電解液の流出を防ぐ栓と成
す。尚、その電気絶縁物12はスリップリング内に填め
込むなどして開口部1A,1Bに回転自在にして取り付
けられる。ここで、その種の電気絶縁物12にて開口部
1A,1Bを密閉せず、開口部1A,1Bから流出した
電解液を排液系と別の管路で貯液槽5に回収するように
してもよい。
【0024】又、図3から明らかなように、ベース部9
の部位には中空体1との接触を避けるべく電気絶縁性の
スペーサ13が取り付けられる。本例において、スペー
サ13はベース部9の外周に回転自在に嵌められるリン
グにして中空体1に内接される。そして、そのスペーサ
13によれば、中空体1と内部電極8との接触を防いで
その間隙を一定に保つことができる。尚、内部電極8の
ベース部9と中空体1との間隙は0.5〜1mmに設定さ
れる。ここで、図2に示した電気絶縁物12にゴム状弾
性体を用いるか、又はゴムやコイルバネなどの弾性体で
内部電極8を中空体1の内周面側に付勢することによ
り、中空体1と内部電極8との間に粒状研磨材が挟まり
込むなどした場合の衝撃を緩和して、内部電極8が損傷
することを防止できるほか、中空体1の偏心などに起因
して内部電極8と中空体1との間隙が変動することも防
ぎ得る。
【0025】次に、図4で明らかなように、中空体1内
には電解液ELほか、その電解液中に沈む適量の粒状研
磨材Gsが収容される。粒状研磨材Gsとしては、アル
ミナ(Al2O3)、エメリ(Al2O3FeO4)、ボラゾン(CB
N)、カーボンランダム(SiC)、又はダイヤモンド
(C)などの粒子(砥粒)、あるいは其れらの粒子を焼
結するなどした研磨石が好適に用いられる。特に、本例
において、粒状研磨材Gsは三角錐状を成す研磨石であ
り、その粒度は1〜20mmとされ、特に電解液中に浮遊
せぬよう高密度のものが選ばれる。そして、この粒状研
磨材Gsは中空体1の容積に対して5〜60%、好まし
くは20〜30%投入される。尚、粒状研磨材としての
研磨石の大きさ(粒度)や硬度、並びにこれを構成する
砥粒粒度などは、中空体1の材質によって適宜好ましい
ものを選択し、しかも研磨加工の最終段階では初期段階
よりも砥粒粒度の小さい研磨石を選択してその入れ替え
を行う。一方、電解液ELは硝酸、リン酸、クロム酸、
蓚酸などの電解質を含むが、本例では硝酸ナトリウム2
0%の中性塩水溶液が用いられる。
【0026】そして、以上のような研磨装置によれば、
中空体1の内周面を短時間で高精度に研磨することがで
きる。以下、その具体的方法を説明すれば、先ず研磨対
象としての中空体1を横臥してこれを装置本体の摩擦ロ
ーラ2A上に水平状に設置する。そして、その中空体1
内に開口部1A,1Bから適量の粒状研磨材Gsを導入
するほか、双方の開口部1A,1Bから中空体1内に内
部電極を成す屈曲杆8A,8Bを挿入して交差させ、そ
の各ベース部9を中空体1の軸方向に沿って左右半分ず
つその片側面に近接させる。特に、図4のように、それ
ら屈曲杆8A,8Bは粒状研磨材Gsが衝突せぬよう、
中空体1の中心を通る垂線を基準に、中空体1の回転方
向と逆向きにして下方に45度程度傾斜させた状態で固
定する。
【0027】一方、中空体1の外周面には内部電極8と
隔てた位置で外部電極7を直接、又は銅板などの導電性
帯を介して接触させる。又、図1のように、一方の開口
部1Aには往路管3Bの一端を差し込み、他方の開口部
1Bには復路管4Bの一端を差し込む。この状態で、往
路管3Bより中空体1内に電解液ELを供給し、この電
解液に粒状研磨材Gsおよび内部電極のベース部9を浸
漬させ、その液面が中空体1の半分程度に達した段階で
中空体1内への電解液の供給を続けたまま、その電解液
を復路管4Bを通じて貯液槽5内に排出して中空体1内
の電解液を一定量に保つ。そして、電解液を循環させな
がら、中空体1を所定方向に回転(50〜150rpm)
させるほか、電源Eから外部電極7に電解電圧を印加
し、これが摺接する中空体1を陽極として内部電極8と
の間に電解液を介して電解電流(10〜1000A)を
流す。すると、陽極側の中空体1は電解作用により内周
面の微小凸部が集中的に溶解され、しかもその微小凸部
が中空体1内で流動する粒状研磨材Gsによる擦過作用
により除去される。
【0028】特に、粒状研磨材Gsは中空体1の内周面
に生成される酸化皮膜を物理的に除去する役割を果た
す。このため、電解作用が促され、中空体1の内周面は
電解、擦過の相乗作用で効率的に研磨される。尚、これ
によって発生する研磨屑は電解液に分散して加工面の仕
上げ精度に悪影響を及ぼすが、本例によれば、研磨屑は
電解液に分散したまま貯液槽5に運ばれ、ここで沈殿又
は濾過され、その除去済み電解液が貯液槽5から往路管
3Bを通じて中空体1内に再供給されるのであり、この
ため研磨精度は格段と向上する。又、電解液を繰り返し
て使用すると、これに含まれる電解質が電気化学反応に
より失われ、研磨効率が低下する。このため、電解質濃
度を測定し、これが所定値以下になったときにはその補
充を行うが、補充する電解質は貯液槽5内に投入すれば
よい。因に、電解質として硝酸ナトリウムを用いた場
合、その分解によってアンモニアが生成され、これによ
って電解液がアルカリ化する。よって、電解質が低下し
たか否かは電解液のペーハを測定することにより検知す
ることができるが、本例では電流計Aの値から電解質濃
度を検知し、その指示値が低下したときに電解質を貯液
槽5内に投入して電解電流を所定レベルまで回復させ
る。尚、中空体1の回転数や電解電流密度などの関係か
ら電解質の経時的低下傾向を事前に調べ上げ、これに基
づいて電解質の補充を時間単位で行うようにしても良
い。
【0029】ここで、研磨加工を開始してから一定時間
経過後には、中空体1内の粒状研磨材を砥粒粒度が相対
的に小さいものに入れ替えて仕上げ研磨を行うが、仕上
げ研磨終了後には中空体1内から電解液や粒状研磨材を
取り出し、その内部を純水や窒素ガスなどにて洗浄し、
好ましくは超音波による洗浄を併用する。これによっ
て、中空体1内の微粒子は完全に除去されることにな
る。
【0030】以上、本発明の一例を説明したが、研磨対
象は以上のような形態の中空体に限らず、図5のように
口径が全長に亙って同一な中空体21でもその円形内周
面を好適に研磨することができる。尚、以下の説明にお
いて、上記例と共通する部分には同一符号を付して詳細
な説明を省略する。
【0031】ここで、図5に示すような中空体21で
は、その内部に適量の電解液を蓄え得るよう両端開口部
が電気絶縁性の仕切板22(本例において内部を視認で
きる透明なアクリル板)で水密的に閉鎖される。但し、
その中心部にはそれぞれ開口23A,23Bを施し、そ
の開口23A,23Bを通じて中空体21内への往路管
3Bおよび復路管4Bの挿入を可能とし、且つ内部電極
24の両端を外部へ突き出し可能とする。尚、内部電極
24は予め中空体21内に収納され、その後で仕切板2
2の取り付けが行われる。
【0032】特に、本例において、内部電極24はクラ
ンク状に屈曲され、その中央部分が中空体21の軸方向
に沿うベース部25として中空体21の全長に亙ってそ
の内面部に近接される。そして、本例においても中空体
21内に研磨石をはじめとする粒状研磨材と電解液とを
入れ、その電解液に粒状研磨材Gsと内部電極24とを
浸らしめ、その状態で電解液を循環させつつ中空体21
を回転させるほか、外部電極7により中空体21を陽極
として内部電極24との間に通電することにより、中空
体21の内周面を効率よく研磨することができる。
【0033】次に、図6は軸方向一端のみに内径が狭ま
る開口部31Aを有する中空体31を研磨対象とした例
を示す。ここで、本例では特に開口部31Aから出し入
れ可能な工具32が用いられる。この工具32は、所定
の長さを有して電解液の給排を行う直線状の二重管33
と、その先端部に設けられる一対の棒状のヘッド34
A,34Bなどから構成される。本例において、二重管
33は中空体31内に電解液を供給するための給液管3
3Aを外管として、その内部に該給液管の内径よりも外
径の小さい排液管33Bを通して構成される。排液管3
3Bは一端側が電気絶縁性のパイプ35とされると共
に、他端側が導電性のパイプ36とされ、そのパイプ3
6には電源Eに通じるマイナスの端子eが接続される。
又、給液管33Aと排液管33Bはそれぞれホース3
7,38を介して貯液槽5に接続され、ホース37,3
8にはそれぞれポンプ3A,4Aが介在される。そし
て、その給液管33Aと排液管33Bとは給液管33A
の両端に設けられる図示せぬシールリングを介して軸方
向に相対移動可能とされ、その相対移動により先端部の
ヘッド34A,34Bが開閉するようにしてある。
【0034】図7で明らかなように、ヘッド34A,3
4Bは二重管33(給液管33Aおよび排液管33B)
の先端部に導電性のリンク39を介して接続される。リ
ンク39は、排液管33Bとヘッド34A,34Bとを
結ぶ節39A、および給液管33Aと節39Aとを結ぶ
節39Bから成り、給液管33Aを図示矢印方向に移動
させたときにはヘッド34A,34Bが想像線に示すよ
う二重管33の軸線に沿って近接する状態に閉じるよう
になっている。一方、給液管33Aを逆向きに移動させ
たときにはヘッド34A,34Bが二重管33の軸線を
中心として放射状に開き、それらが中空体31の内面部
に近接するようになっている。
【0035】ここで、一方のヘッド34Aは陰極を成す
導電性の内部電極として、その部位に中空体31との接
触を防ぐ電気絶縁性のスペーサ13が回転自在に取り付
けられると共に、他方のヘッド34B(電気絶縁体)に
は中空体31の内面部に接触する研磨材40が取り付け
られる。本例において、研磨材40は砥粒を固着した不
織布などの研磨布で成るが、これを砥石としてもよい。
【0036】又、図7から明らかなように、給液管33
Aの先端部外周にはその半径方向に電解液を噴出するた
めの噴口41が穿設されると共に、排液管33Bの先端
には下方に垂れ下げられるチューブ42(図6参照)が
接続される。
【0037】そして、本例によれば、図8に示すよう中
空体31内に粒状研磨材Gsを入れた後、中空体31の
開口部31Aに工具32を差し込んで一対のヘッド34
A,34Bを開き、その状態で給液管33Aから中空体
31内に電解液ELを供給しつつ、中空体31内の電解
液ELを排液管33Bより排出して循環させる一方、外
部電極7により中空体31を陽極として、中空体31内
の電解液ELに浸漬される内部電極としてのヘッド34
Aとの間に通電しながら、中空体31を所定方向に回転
させることにより、該中空体31の内周面を研磨するこ
とができる。尚、工具32は中空体31の外部に突き出
される末端(排液管のパイプ35の部分)を図6のよう
にベルトコンベヤなどの送り装置43に取り付けてヘッ
ド34A,34Bを開いたまま中空体31の軸方向に順
次移動される。
【0038】ここで、ヘッド34A,34Bの構成とし
て、(1)上記例のように一方を内部電極として他方に研
磨材を取り付ける構成、(2)双方を内部電極として双方
に研磨材を取り付ける構成、(3)双方を内部電極として
一方にのみ研磨材を取り付ける構成、(4)双方を内部電
極のみとする構成とがあるが、(1)〜(3)の構成では研磨
材40により中空体31の内周面を擦過するため、中空
体31内への粒状研磨材Gsの導入は必ずしも必要とし
ない。尚、(2)〜(4)の構成では一方のヘッド34Bが電
解液ELの液面上で中空体31内の内面部に摺接される
ものの、ここに噴口41から噴射される電解液ELが浴
びせられるため、そのヘッド34Bに内部電極としての
機能を発揮させることができる。
【0039】次に、本発明に係る実験結果を下表1に太
線で示す。ここに、本実験には図5の装置を用い、研磨
対象として内径600mm、長さ300mmの鋼円筒(試料
A)を製作し、その両端をアクリル板にて閉鎖した。
又、本実験では開始から16時間までを粗研磨、16時
間経過後を仕上げ研磨とし、粗研磨には粒状研磨材とし
て8×8mmの三角柱形をした研磨石(粒度#150の
MA砥粒)25Kg、仕上げ研磨にはアルミナ焼結球(直
径6mm)20Kgを使用した。尚、粗研磨、仕上げ研磨に
おける設定条件を表2に示す。
【0040】又、表1には比較例として、現行の回転バ
レルによる実験結果を細線で示す。尚、比較例では上記
と同じ鋼円筒(試料B)を製作し、その両端をアクリル
板にて閉鎖した。又、比較例では開始から128時間ま
でを粗研磨、128時間経過後を仕上げ研磨とし、粗研
磨時には試料B内に8×8mmの三角柱形をした研磨石
(粒度#150のMA砥粒)25Kg、粒度#120のW
A砥粒500g、コンパウンド(弱酸性液状添加剤)6
00g、純水19.5lを入れ、仕上げ研磨時にはアル
ミナ焼結球(直径6mm)20Kg、コンパウンド(中性粉
末添加剤)700g、純水21.7lを入れた。尚、試
料Bの回転数は粗研磨、仕上げ研磨共に24rpmとし
た。
【0041】
【表1】
【表2】 表1から明らかなように、現行のバレル研磨では表面粗
さ0.25μmRaを得るのに140時間程度を要して
いるのに対し、本発明によれば僅か20時間程度で表面
粗さ0.25μmRaを達成していることが判る。尚、
本発明では現行の回転バレルに比べ加工時間が1/7程
度と短いが、設定条件の工夫により、より短時間で表面
粗さ0.25μmRaを達成できると考えられる。
【0042】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、遠心バレル研磨を適用できない大型の圧力容
器などでも、その内周面を電解作用と物理的擦過作用の
相乗効果によって短時間で高精度に研磨することが可能
となる。特に、大型の圧力容器でも、その内部に収容さ
れる粒状研磨材により内周面全体を一度に擦過できる
上、その擦過作用による酸化皮膜の除去効果によって電
解作用が促されるため、研磨効率が飛躍的に向上する。
【0043】又、研磨対象としての中空体の内外で電解
液を循環させるようにしていることから、研磨加工中に
発生する研磨屑を電解液中から容易に取り除け、しかも
電解質が不足したときにはこれを容易に補充することが
できる。
【0044】更に、軸方向両端に内径を狭めた開口部が
形成される中空体を研磨対象として、その開口部双方か
ら別々に出し入れ可能とされる一対の屈曲杆を内部電極
とし、それら両屈曲杆がそれぞれ中空体の軸方向片側面
に沿って延びるベース部と該ベース部の一端から開口部
に向かって傾斜状に延びるアーム部とを有して成ること
から、中空体の全長に亙って電解電流密度を均一に保つ
ことができ、しかもベース部に中空体との間隙を一定に
保つ電気絶縁性のスペーサが取り付けられるためショー
トの虞れがない。
【0045】又、本発明に係る工具によれば、一端に内
径の狭まる開口部が形成される圧力容器などの中空体で
も、一対のヘッドを開口部から中空体内に挿入した後、
そのヘッドの少なくとも一方を内部電極として中空体内
周面の研磨を好適に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示した概念図
【図2】両端開口型の中空体内に内部電極を配置した状
態を示す断面図
【図3】図2の部分拡大図
【図4】両端開口型の中空体内を概略的に示した横断面
【図5】本発明の他の実施態様を示した概念図
【図6】本発明の他の実施態様を示した概念図
【図7】本発明に係る工具の先端部を示した部分断面図
【図8】同工具の使用状態を示す概略図
【図9】従来の研磨法(回転バレル研磨)を示す概念図
【図10】従来の研磨法(遠心バレル研磨)を示す概念
【図11】従来の研磨法(電解研磨)を示す概念図
【図12】従来の研磨法(電解複合研磨)を示す概念図
【符号の説明】
1,21,31 中空体(研磨対象) 2 装置本体 3 給液系 4 排液系 5 貯液槽 6 電気回路 7 外部電極 8,24 内部電極 8A,8B 屈曲杆 9 ベース部 10 アーム部 13 スペーサ 32 工具 33 二重管 33A 給液管 33B 排液管 34A,34B ヘッド 39 リンク 40 研磨材 41 噴口 EL 電解液 Gs 粒状研磨材
フロントページの続き (72)発明者 河野 秀樹 群馬県渋川市中村1118番地 カンサン株式 会社内 (72)発明者 下田 祐紀夫 群馬県前橋市鳥羽町580番地 群馬工業高 等専門学校内 (72)発明者 櫻井 文仁 群馬県前橋市鳥羽町580番地 群馬工業高 等専門学校内 (72)発明者 斉藤 喜泰 群馬県前橋市鳥羽町580番地 群馬工業高 等専門学校内 (72)発明者 折茂 和久 群馬県前橋市鳥羽町580番地 群馬工業高 等専門学校内 Fターム(参考) 3C058 AA01 AA11 CB01 CB03 DA13 3C059 AA02 AB01 GA02 GA07 GA08 GC01 HA11

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内周面が円形状を成す導電性の中空体内
    に粒状研磨材と電解液とを入れて当該中空体の内周面を
    研磨する装置であって、前記中空体を回転させる装置本
    体と、前記中空体内に電解液を供給する給液系と、前記
    中空体内で電解液に浸漬される内部電極と、前記中空体
    の外面部に摺接する外部電極とを具備して成る電解複合
    研磨装置。
  2. 【請求項2】 中空体内に供給すべき電解液が蓄えられ
    る貯液槽と、電解液を中空体内から排出する排液系とを
    有し、その排液系を前記貯液槽に接続して電解液の循環
    系を形成した請求項1記載の電解複合研磨装置。
  3. 【請求項3】 軸方向両端に内径を狭めた開口部が形成
    される中空体を研磨対象とし、内部電極が前記開口部の
    双方から別々に出し入れ可能とされる一対の屈曲杆から
    成り、その両屈曲杆がそれぞれ中空体の軸方向片側面に
    沿って延びるベース部と該ベース部の一端から前記開口
    部に向かって傾斜状に延びるアーム部とを有して成る請
    求項1記載の電解複合研磨装置。
  4. 【請求項4】 ベース部の部位に中空体との間隙を一定
    に保つ電気絶縁性のスペーサが取り付けられる請求項3
    記載の電解複合研磨装置。
  5. 【請求項5】 内周面が円形状を成す導電性中空体の内
    周面を研磨するのに用いる工具であって、前記中空体内
    に電解液を供給する給液管と、中空体内の電解液を外部
    に排出するための排液管とを備え、その給液管と排液管
    とが軸方向に相対移動可能な一体の二重管とされ、その
    先端部に給液管と排液管との相対移動によって開閉する
    一対のヘッドが設けられ、そのヘッドは閉時において前
    記二重管の軸線に沿って互いに近接するよう二重管の先
    端部にリンクを介して接続されると共に、前記ヘッドの
    少なくとも一方が開時において中空体の内面部に近接す
    る導電性の内部電極とされて成ることを特徴とする電解
    複合研磨用工具。
  6. 【請求項6】 ヘッドの少なくとも一方が開時において
    中空体の内面部に近接する導電性の内部電極とされ、前
    記ヘッドの少なくとも一方には開時において中空体の内
    面部に摺接する研磨材が取り付けられることを特徴とす
    る請求項5記載の電解複合研磨用工具。
  7. 【請求項7】 内周面が円形状を成す導電性の中空体内
    に粒状研磨材と電解液とを入れ、その電解液に陰極と成
    す内部電極を浸らしめ、その状態で中空体を陽極として
    内部電極との間に電解液を介して電解電流を流しつつ、
    前記中空体を所定方向に回転させてその内部で粒状研磨
    材を流動させることにより中空体の内周面を研磨するこ
    とを特徴とする電解複合研磨方法。
  8. 【請求項8】 電解液を中空体内に供給しながら、その
    電解液を中空体内から排出し、排出した電解液から研磨
    屑を除去した後、これを中空体内に再供給して循環させ
    ると共に、循環中の電解液の電解質濃度を測定し、その
    濃度が所定値以下になったときに硝酸ナトリウムなどの
    電解質を補充することを特徴とする請求項7記載の電解
    複合研磨方法。
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