JP2003253378A - 常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板 - Google Patents

常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板

Info

Publication number
JP2003253378A
JP2003253378A JP2002050900A JP2002050900A JP2003253378A JP 2003253378 A JP2003253378 A JP 2003253378A JP 2002050900 A JP2002050900 A JP 2002050900A JP 2002050900 A JP2002050900 A JP 2002050900A JP 2003253378 A JP2003253378 A JP 2003253378A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
steel
aging
ultrafine
precipitates
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2002050900A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3921100B2 (ja
Inventor
Atsushi Takahashi
淳 高橋
Masaaki Sugiyama
昌章 杉山
Yuichi Taniguchi
裕一 谷口
Masaaki Mizutani
政昭 水谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2002050900A priority Critical patent/JP3921100B2/ja
Publication of JP2003253378A publication Critical patent/JP2003253378A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3921100B2 publication Critical patent/JP3921100B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄冷延鋼板
を提供する。 【解決手段】質量%で、C:0.001〜0.2%、
N:0.0001〜0.2%、C+N:0.002〜
0.3%、Si:0.001〜0.1%、Mn:0.0
1〜1%、P:0.001〜0.1%、S:0.05%
以下、Al:0.001〜0.1%、Ti:0.001
〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%を含有し、残
部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、鋼中に直
径1〜10nmの超微細析出物を1×1017個/cm3
上の密度で含むことを特徴とする常温遅時効性と焼付硬
化性に優れた薄鋼板。さらに、該薄鋼板が質量%で、M
o:0.005〜0.25%、Cr:0.005〜1.
0%、W:0.005〜1.0%の1種または2種以上
を含有することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、常温遅時効性と焼
付硬化性に優れた薄鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の車体軽量化のため、使用する鋼
板板厚の減少が要望され、自動車用鋼板の高強度化が検
討されてきた。しかし、鋼板の高強度化は鋼板のプレス
成形性を劣化させる傾向があり、プレス成形性に優れた
高張力鋼板が要望されていた。このようなプレス成形性
と高強度化を両立させた鋼板として、塗装焼付硬化型自
動車用鋼板が開発されている。この鋼板はプレス成形後
に、通常150℃〜200℃の高温保持を含む塗装焼付
処理を施すことにより、降伏応力が上昇する鋼板であ
る。鋼中に固溶Cまたは固溶Nを存在させることによっ
て、塗装焼付け処理時の高温加熱でCまたはNがプレス
成形時に導入された転位に固着して転位の移動を妨げ、
降伏応力が上昇する。この上昇分が焼付硬化量(BH
量)である。
【0003】BH量は一般に固溶C量または固溶N量を
増やすことによって増加する。このような硬化機構の問
題点は次の点にある。BH量を上げるために、固溶C量
または固溶N量を増加すると成形前に既に一部の転位が
固溶Cまたは固溶Nにより固着され(常温時効)、プレ
ス成形時に降伏点伸びによるストレッチャーストレイン
と呼ばれる波状の表面欠陥を生じる。これは製品特性を
著しく劣化させることになる。この常温時効の問題を解
決し、耐時効性に優れた高い塗装焼付硬化性を有する薄
鋼板を実現することは長年の課題であった。
【0004】特開平5−331553号公報、特開平7
−300623号公報はNbおよびAl添加量を制御
し、焼付硬化性および耐時効性を実現する方法が開示さ
れている。この方法では固溶N量、固溶C量を適量にし
て耐時効性を得ようとする方法であり、BH量を上げる
ために固溶C量を増やすと時効劣化が生じることにな
り、高い焼付硬化特性を有する鋼を製造することはでき
ない。特開2000−17386号公報にはMoを適量
添加することで、鋼中に室温で安定なMo−Cダイポー
ルを形成し、常温時効性と焼付硬化性を同時に得る方法
が開示されている。しかし、これらの特性発現に寄与す
るCおよびNの挙動についてはモデルが提案されている
に留まっており、十分な材料設計指針がなく、更なる高
いBH特性の実現や、焼付温度の低下などの課題に十分
に対応できていないのが現状である。
【0005】また、特開平11−229085号公報に
はNb/C比を最適にすることで、耐時効性に優れた冷
延鋼板を製造する方法が開示されている。NbCを微細
分散することで結晶粒を微細化し、粒界C量を増やすこ
とを述べているが、この方法では焼付硬化量を上げた場
合(BH量>60MPa)、降伏点伸びが現われ常温時
効性が保たれなくなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
現状に鑑み、常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板
を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らはCまたはN
を超微細析出物として鋼中に固定しておくことにより、
常温遅時効性と焼付硬化性のいずれにおいても優れた薄
鋼板とすることができることを見出し、この超微細析出
物の満たすべき要件を特定することによって、本発明を
完成させたもので、その要旨とするところは以下の通り
である。 (1)質量%で、C:0.001〜0.2%、N:0.
0001〜0.2%、C+N:0.002〜0.3%、
Si:0.001〜0.1%、Mn:0.01〜1%、
P:0.001〜0.1%、S:0.05%以下、A
l:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1
%、Nb:0.001〜0.1%を含有し、残部が鉄お
よび不可避的不純物からなり、かつ、鋼中に直径1〜1
0nmの超微細析出物を1×1017個/cm3以上の密度
で含むことを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優
れた薄鋼板。
【0008】(2)質量%で、Mo:0.005〜0.
25%、Cr:0.005〜1.0%、W:0.005
〜1.0%の一種または2種以上を、さらに含有するこ
とを特徴とする前記(1)に記載の常温遅時効性と焼付
硬化性に優れた薄鋼板。 (3)前記超微細析出物が炭化物、窒化物、炭窒化物の
いずれか1種または2種以上からなることを特徴とする
前記(1)または(2)に記載の常温遅時効性と焼付硬
化性に優れた薄鋼板。 (4)前記炭化物、窒化物、炭窒化物がTiの炭化物、
窒化物、炭窒化物であることを特徴とする前記(3)に
記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明が対象とする析出物は直径
1〜10nmと非常に小さいため、通常の析出物と区別
して超微細析出物と記載する。なお、超微細析出物は、
炭化物、窒化物、炭窒化物またはこれらの集合体である
と考えられ、炭化物、窒化物、炭窒化物として、結晶質
であるか非晶質であるか、また、定比であるか不定比で
あるかは問わない。そのため、例えばTiの炭化物、窒
化物、炭窒化物またはこれらの集合体としてTi(N,
C)のように記載し、これはTiおよびCとNの組成比
を示しているものではない。
【0010】本発明の特徴は、高密度に分散したこのよ
うな超微細析出物に格子間原子であるCまたはNを固定
(トラップ)させることで、室温での常温時効を防い
で、焼付硬化型鋼板における常温遅時効性を向上させる
一方、150〜200℃の塗装焼付温度においてトラッ
プから脱離し拡散によって転位位置に移動し転位を固着
させることで、高い焼付硬化性をも同時に実現させたこ
とである。フェライト鉄中のCおよびNは室温での固溶
度が小さく、エネルギー的に安定な位置に偏析濃化する
傾向がある。この偏析サイトとして、粒界部、転位部な
どの結晶欠陥部が挙げられる。本発明者は、アトムプロ
ーブ電界イオン顕微鏡(Atom Probe Fie
ld Ion Microscope、以下AP−FI
Mと表記する)を使用し、この偏析サイトの詳細な研究
を行った。その結果、超微細析出物にC、Nが偏析濃化
することを突き止めた。超微細析出物のどの部分に偏析
濃化するかは明らかではないが、一つにはマトリックス
鉄との界面近傍と考えられる。
【0011】超微細析出物に偏析濃化するC量またはN
量は、析出物サイズに依存する。この偏析CまたはNを
転位固着に利用するためには、室温ではCまたはNが析
出物にトラップされ、焼付硬化温度でトラップサイトか
らCまたはNを脱離させなければならない。そのために
析出物サイズは最適なトラップエネルギーを有する超微
細析出物が有効となる。さらに焼付中にプレス成形によ
って導入された多量の転位にトラップサイトからCまた
はNを拡散供給するためには、これらのトラップサイト
が鋼中に高密度に存在し、かつ、分散していることが必
要となる。従ってトラップサイトとなる鋼中の超微細析
出物の数密度としては、少なくとも1×1017個/cm3
が必要であり、5×1017個/cm3以上の数密度が好ま
しく、さらに、1×1018個/cm3以上の数密度がより
好ましい。1×1017個/cm3未満であると、焼付温度
において偏析したCまたはNがプレス成形により導入さ
れた多量の転位にむらなく固着することができなくなる
ため、耐時効性または焼付硬化性は低下する。ここでは
数密度の上限を定めていないが、一般に1×1020個/
cm3を超える高密度の析出物の分散化は鋼強度を高め
ることになるため、成形性が問題となる場合がある。
【0012】このような超微細析出物のサイズとしては
直径1〜10nmが好ましい。ここで1nmより小さい
と、CまたはNの有効なトラップサイトとはならない。
一方で10nmより大きいと、CまたはNのトラップサ
イトとはなるが、1×1017個/cm3以上の数密度を実
現するためにはそれだけ多くの成分を鋼に添加しなけれ
ばならず、固溶強化、分散強化によって鋼の成形性を著
しく低下させる要因となってしまう。本発明では超微細
析出物の種類を限定するものではないが、CまたはNの
トラップサイトとして利用する超微細析出物としては炭
化物、窒化物、炭窒化物またはこれらの混合物が好まし
い。これはCとNは拡散係数が大きいためその炭化物、
窒化物、炭窒化物は微細分散させやすく、CまたはNの
トラップサイトとして有効に利用しやすいためである。
【0013】また、炭化物、窒化物、炭窒化物は、Ti
の炭化物、窒化物、炭窒化物が最も好ましい。その理由
は、Tiは適当なトラップエネルギーを有する1〜10
nmの超微細析出物を形成しやすくするためである。本
発明における成分限定理由は以下の通りである。なお、
%は質量%を表す。CおよびNは焼付硬化性を発現させ
る上で重要な元素であり、C+N量0.002%以上含
有することが必須である。しかしC+N量が多すぎると
固溶量が増し、常温時効性を確保することが困難になる
ため上限を0.3%とした。
【0014】C:0.001%以上、N:0.0001
%以上としたのは、これ未満への低減は製鋼での多大な
コストアップになるばかりでなく、高い焼付硬化性を得
られないからである。さらに炭素物、窒化物からなる超
微細析出物を高密度で作ることができなくなるためであ
る。一方、C:0.2%以下、N:0.2%以下とした
のは、これらの値を超えると強度が高くなり過ぎ加工性
を損なうためである。Mn、Si、Pは薄鋼板として必
要とされる強度を得るためにかかせない基本成分であ
る。Mn:0.01%、Si:0.001%、P:0.
001%を下回ると強度が不足する。Mn:1%、S
i:0.1%、P:0.1%を超えると強度が高くなり
すぎ加工性を損なうため、これらを上限値とする。
【0015】Sは、0.05%を超えると熱間圧延時に
赤熱脆化を起こし表面で割れる、いわゆる熱間脆化をお
こすことがあるため、0.05%以下とする必要があ
る。Alは脱酸剤として必要な元素であり0.001%
以上必要であり、0.1%以下としたのはそれを超えて
添加すると強度が高くなり加工性を損なうためである。
Tiは本発明の超微細析出物の形成に用いることのでき
る元素の一つであり、過剰なC、NやSを固定して時効
性を確保するために0.001%以上必要である。上限
を0.1%としたのは、それを超えて添加すると再結晶
温度が上昇しまた加工性の劣化を招くためである。
【0016】NbもTi同様、本発明の超微細析出物の
形成に用いることのできる元素の一つである。その下限
を0.001%としたのはそれ未満では時効性を確保す
ることが困難になるためであり、上限を0.1%とした
のはそれを超えて添加すると再結晶温度が上昇しまた加
工性の劣化を招くためである。Mo、Cr、Wは、その
メカニズムの詳細は明らかでないが、鋼中の析出物を微
細分散させる効果がある。すなわち、これらの1種また
は2種以上を添加することによって本発明の超微細析出
物を形成するための条件を緩和できる。各元素の添加量
の下限を0.005%としたのはそれ未満ではこの効果
が得られないからであり、上限をMoについては0.2
5%、CrとWについては1.0%としたのはそれを超
えると強度が高くなって加工性を損なうばかりでなく、
高価なため合金コストが上がるためである。
【0017】鋼中に直径1〜10nmの超微細析出物を
1×1017個/cm3以上の数密度に分散させるために
は、例えば焼鈍を特定の条件で行うことにより実現でき
る。一般に焼鈍の冷却速度を遅くすると析出する炭化物
または窒化物のサイズが大きくなり数密度は小さくな
る。反対に冷却速度を大きくすると析出する炭化物また
は窒化物のサイズが小さくなり数密度は大きくなる。し
かしこの場合CまたはNの固溶量が増加するため、適当
な過時効処理(OA)が有効となる。超微細析出物を高
密度に分散させるためには、鋼中の成分とその濃度によ
って焼鈍条件を選び出す必要がある。
【0018】例えば、好ましい製造方法としては、鋳造
圧延後、焼鈍条件を限定することによって可能である。
焼鈍は800℃以上Ac3温度以下で保持した後、10
〜100℃/sの冷却速度で冷却する。800℃以上の
温度に保持するのは、一旦C、Nを固溶させるためであ
り、この温度未満では、通常の析出物の形で残存してし
まう。また、変態を避けるためAc3温度以下とする。
保持時間は、十分な効果を得るため1分以上が好まし
い。冷却速度は10℃/sを下回ると析出物の大きさが
10nmを上回り易くなり、一方100℃/sを超える
と固溶したままとなり、析出物を生じにくくなる。
【0019】以上、一般的な好ましい製造方法ついて説
明したが、上記の通りMoにはこの条件を緩和する効果
があるなど、鋼成分によって、本発明の鋼板を製造する
条件は異なるため、AP−FIMで解析した結果に基づ
いて、製造方法を確定することが望ましい。AP−FI
Mを用いた原子存在状態の解析は以下のように行う。こ
の装置は透過電子顕微鏡(TEM)では観察不可能な原
子存在形態を結晶格子レベルの分解能で調べることがで
きる。針状研磨加工した試料に高電圧を印加し電界蒸発
したイオンの飛行時間を測定することにより質量電荷比
を求め、構成原子を決定する。これにより鋼中の析出物
の組成、偏析原子などを正確に調べることができる。さ
らに測定データの取り込み順から鋼中の存在位置も同時
に決定することができる。
【0020】図1に本発明によって製造した冷延鋼板に
おける粒内マトリックス測定の結果の一例をラダーチャ
ートによって示した。ラダーチャートでは、横軸は検出
原子総数、縦軸は目的の原子の積算数を表わしている。
従ってグラフの傾きは目的の原子の濃度に相当し、偏析
濃化した部分では傾きが大きくなる(図中矢印)。横軸
は検出イオン取り込み順に相当するため、試料の深さ位
置(空間座標)を表わすことになる。C原子はTiNお
よびTiと共に超微細析出物を形成していることがわか
る。優れた耐時効性が発現した鋼板において、粒内に1
×1017個/cm3以上の分散した超微細析出物が観察さ
れた。
【0021】超微細析出物の平均数密度は、任意方向の
マトリックス測定を多数回行いその中に観察された超微
細析出物数から求めた。AP−FIMでは一度の測定に
おける測定領域が小さく、超微細析出物が観察されない
場合はその数密度が小さいことを意味する。1回の測定
で測定できる原子数は1×105個とすると、超微細析
出物密度が1×1017個/cm3未満の場合、AP−FI
M数回の測定では自然確率的に超微細析出物を観察する
ことは困難になる。従って、AP−FIMによる任意方
向のマトリックス測定によって超微細析出物が観察され
ない場合は、平均密度は1×1017個/cm3未満と判断
する。またTEMでは観察領域が大きいため、もっと低
密度の析出物を調べることはできるが、10nm以下の
超微細析出物は分解能の点から観察困難になる場合が多
い。
【0022】析出部サイズは析出物を構成している原子
数から見積もることができる。電界蒸発によって原子は
原子層ごとに蒸発し、測定される1原子層はプローブホ
ールサイズ、結晶面方位、針試料先端曲率半径等に依存
するが、一般に50〜200原子に相当する(軽金属(1
992)P236-247)。析出物が何原子層に及んでいるかを調
べることによって、析出物サイズを見積もることができ
る。例えば図1においては、約10原子層に及んでお
り、2nm程度の析出物とみなせる。
【0023】時効性と焼付硬化性の評価は次のように行
う。常温時効性は40℃の雰囲気に70日保持し引張試
験を行い、この時の降伏点伸び(YP−El)を測定す
ることによって調べることができるが、ここでは代わり
に100℃×1時間の人工加速試験によって耐時効性を
評価した。このYP−El値が0.4%以下を良好とし
た。また、焼付硬化性の測定は、薄鋼板を2%引張り1
70℃にて20分保持した後の降伏応力(YP)を測定
し、先に2%引張試験を行った時の強度の差すなわちB
H量として評価した。本発明の薄鋼板は熱延鋼板、冷延
鋼板のどちらでもかまわない。さらに熱間圧延工程、冷
間圧延工程は特に限定されるものではない。次に実施例
によって本発明の作用効果をさらに具体的に説明する
が、それらは単に例示のためであって、それによって本
発明は不当に制限されることはない。
【0024】
【実施例】表1に記載した化学組成を有する供試材を溶
製した。なお、化学成分の%は質量%を表す。
【0025】
【表1】
【0026】表2に記載した条件で、熱間圧延、冷間圧
延を行い、その後焼鈍を行い冷延鋼板とした。
【0027】
【表2】
【0028】表3に機械的試験の結果を示す。ここでe
x.Cとは添加C量からTiとNbによって析出させた
量を差し引いた値で、表に示した式によって見積もっ
た。
【0029】
【表3】
【0030】(実施例1)表1の鋼種c、eを使用し、
表2に記載した各製造条件で冷延鋼板を製造した。熱間
圧延の仕上温度は900℃、巻き取り温度は600〜7
00℃とした。また冷間圧延率は70〜80%とし、
0.8mm厚に冷間圧延した。冷間圧延後、800〜8
20℃で3分の焼鈍処理を行い、種々の冷却速度で冷却
させた。さらにいくつかのものについては過時効処理
(OA)を施した。焼鈍済みの鋼板に1%の調質圧延を
行い冷延鋼板とした。表3に製造した鋼板(鋼板1〜
9)の機械的特性の結果と、AP−FIMによって調べ
た超微細析出物の平均数密度を示す。鋼種cにおいては
Eの製造条件(鋼板5)において、5×1017個/cm
3の超微細析出物が観察され、良好なBH特性、耐時効
性を同時に示した。また鋼種eにおいても、Eの製造条
件において、超微細析出物が観察され良好な耐時効性を
示した。それ以外の条件では、析出物密度が小さくまた
はサイズが10nm超と大きくなっており、BH量は良
好であったが耐時効性は良くなかった。BH特性および
耐時効特性は、高い密度の超微細析出物が観察されたE
の製造条件において最も優れていた。
【0031】これにより、高い数密度の超微細析出物を
分散させた鋼を製造することによって、高いBH特性と
優れた耐時効性を同時に実現できている。 (実施例2)表1のように成分調整された鋼(鋼種a〜
h)を表2の製造条件Bによって冷延鋼板とする(鋼板
10〜17)。熱間圧延の仕上温度は900℃、巻き取
り温度は650℃とした。また冷間圧延率は70%と
し、0.8mm厚に冷間圧延した。冷間圧延後、800
℃で1分の焼鈍処理を行った。焼鈍済みの鋼板に1%の
調質圧延を行い冷延鋼板とした。
【0032】表3において耐時効性評価のためのYP−
El値は100℃×1時間の促進時効によって調べた。
ex.C量が多い鋼ほど、BH値が高く現われており、
ex.Cが0.003%以上の鋼では60MPa以上の
高いBH値が得られている。これらの鋼の耐時効性を降
伏点伸びにより評価すると、Moを十分な量添加した鋼
板10、15については優れた耐時効性を示している。
また、Moを微量添加した鋼板11、13、さらにCr
とWを添加した鋼板17においても、耐時効性を示して
いる。一方、Moを無添加とした鋼板12、14、16
では大きな降伏点伸びが現われており耐時効性が得られ
ていない。遅時効性を示した鋼板には鋼中に超微細析出
物がAP−FIMによって観察できたことから、これが
遅時効性に影響したものと考えられる。
【0033】またさらに、Moを0.134%、Cを
0.0037%添加し、製造条件Bで製造した鋼板10
と、同じC量を有しMo無添加の鋼板12について、詳
細な比較を行った。鋼板10の場合、超微細析出物数密
度は1×1018個/cm3で、BH量は60MPaを超
えているが、降伏点伸びは0.1%以下と極めて良好な
常温遅時効性を示した。一方、鋼板12では、超微細析
出物数密度は観察されず(1×1017個/cm3未満と
判断される)、BH量は60MPaを超えているが、Y
P−El値は1.0%以上で、常温遅時効性はみられな
かった。またこの鋼ではプレス加工時にストレッチャー
ストレインが現われた。
【0034】表4には、良好な焼付硬化性および常温遅
時効性を示した鋼板10においてAP−FIMにより観
察された超微細析出物の原子組成の例を示す。
【0035】
【表4】
【0036】超微細析出物は数原子から数十原子のCお
よびTi、Nの複合体からなりそのサイズは数nm以下
であった。その組成を調べると、C原子数が{(Ti原
子数)−(N原子数)}より多くなり、余剰Cの存在を
示した。すなわちこの超微細析出物はTiNまたはTi
Cの超微細析出物にCが偏析濃化したものである。偏析
したC量はTi(N,C)のサイズに依存し、十数原子
以上からなる超微細析出物においては余剰Cが数十原子
以上余分に存在していることがわかった。AP−FIM
ではイオンの検出率が60%程度であるため、実際の原
子数はこれよりも多くなる。さらにTiC析出物は一般
にTiCx(x≦1)の組成をもつため、ここでは余剰
C量を過小評価していることになる。
【0037】一方、AP−FIM測定により固溶C量を
調べたところ、平均濃度で0.0005質量%以下とな
り、鋼中に含まれるCの多くは超微細析出物に偏析濃化
していることがわかった。次に、この鋼板10に2%引
張予歪を印加して170℃×20分焼付硬化させた試料
について同じ観察を行った。しかし、超微細析出物に化
学量論的に余分なCは測定されなかった。すなわち超微
細析出物に偏析濃化したCは焼付硬化過程で、転位に拡
散し、転位固着(コットレル雰囲気形成)の供給元とな
ったと考えられる。
【0038】一方で、Moを添加しない供試材(鋼板1
2)についても同様の観察を試みたが、AP−FIMに
よるマトリックス測定によって鋼中に超微細析出物が観
察されなかった。これは析出物の数密度が1×1017
/cm3未満であることを意味する。TEM観察を行った
ところ50nm以上の比較的大型のTi(N,C)析出
物が観察されたが、平均数密度では1×1012個/cm3
以下であった。次に、Moを十分添加した鋼種aについ
て、製造条件Dで製造した鋼板18と、製造条件Gで製
造した鋼板19について、詳細な比較を行った。条件D
により製造した鋼板18においては、優れたBH特性を
示したものの耐時効性は劣っており、超微細析出物は観
察されなかった。一方で同じ鋼種の条件Gにより製造し
た鋼板19においてはBH特性、耐時効性共に良好であ
り、超微細析出物数密度は2×1017個/cm3であっ
た。これらの結果は、Mo添加は優れたBH特性、優れ
た耐時効性を有する鋼板の製造条件の範囲を広げること
を示すものである。
【0039】以上の実験から、超微細析出物を鋼中に高
密度に分散させ、それらにCまたはNを偏析濃化させる
ことで、常温時効を防ぎ、焼付硬化温度でトラップから
離脱したCまたはNにより転位を固着し鋼を強化したこ
とが示された。これにより、高い数密度の超微細析出物
を分散させた鋼を製造することによって、高いBH特性
と優れた耐時効性を同時に実現できている。
【0040】
【発明の効果】本発明により常温遅時効と焼付硬化性に
優れた薄鋼板が提供され、その産業上の価値は極めて高
いといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によって製造した冷延鋼板における粒
内マトリックスのAP−FIM測定のラダーチャートを
示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷口 裕一 愛知県東海市東海町5−3 新日本製鐵株 式会社名古屋製鐵所内 (72)発明者 水谷 政昭 愛知県東海市東海町5−3 新日本製鐵株 式会社名古屋製鐵所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C: 0.001〜0.2%、 N: 0.0001〜0.2%、 C+N:0.002〜0.3%、 Si:0.001〜0.1%、 Mn:0.01〜1%、 P :0.001〜0.1%、 S :0.05%以下、 Al:0.001〜0.1%、 Ti:0.001〜0.1%、 Nb:0.001〜0.1%を含有し、残部が鉄および
    不可避的不純物からなり、かつ、鋼中に直径1〜10n
    mの超微細析出物を1×1017個/cm3以上の密度で含
    むことを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優れた
    薄鋼板。
  2. 【請求項2】 質量%で、 Mo:0.005〜0.25%、Cr:0.005〜
    1.0%、W:0.005〜1.0%の1種または2種
    以上を、さらに含有することを特徴とする請求項1に記
    載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板。
  3. 【請求項3】 前記超微細析出物が炭化物、窒化物、炭
    窒化物のいずれか1種または2種以上からなることを特
    徴とする請求項1または2に記載の常温遅時効性と焼付
    硬化性に優れた薄鋼板。
  4. 【請求項4】 前記炭化物、窒化物、炭窒化物がTiの
    炭化物、窒化物、炭窒化物であることを特徴とする請求
    項3に記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼
    板。
JP2002050900A 2002-02-27 2002-02-27 常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板 Expired - Fee Related JP3921100B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002050900A JP3921100B2 (ja) 2002-02-27 2002-02-27 常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002050900A JP3921100B2 (ja) 2002-02-27 2002-02-27 常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003253378A true JP2003253378A (ja) 2003-09-10
JP3921100B2 JP3921100B2 (ja) 2007-05-30

Family

ID=28663012

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002050900A Expired - Fee Related JP3921100B2 (ja) 2002-02-27 2002-02-27 常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3921100B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006001583A1 (en) * 2004-03-25 2006-01-05 Posco Cold rolled steel sheet and hot dipped steel sheet with superior strength and bake hardenability and method for manufacturing the steel sheets
EP1937853A1 (en) * 2005-09-23 2008-07-02 Posco Bake-hardenable cold rolled steel sheet with superior strength and aging resistance, gal- vannealed steel sheet using the cold rolled steel sheet and method for manufacturing the cold rolled steel sheet
WO2016195456A1 (ko) * 2015-06-05 2016-12-08 주식회사 포스코 드로잉성 및 소부경화성이 우수한 고강도 박강판 및 그 제조방법
US10704116B2 (en) 2015-06-05 2020-07-07 Posco High-strength thin steel sheet with excellent drawability and bake hardenability, and method for manufacturing same

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006001583A1 (en) * 2004-03-25 2006-01-05 Posco Cold rolled steel sheet and hot dipped steel sheet with superior strength and bake hardenability and method for manufacturing the steel sheets
EP1937853A1 (en) * 2005-09-23 2008-07-02 Posco Bake-hardenable cold rolled steel sheet with superior strength and aging resistance, gal- vannealed steel sheet using the cold rolled steel sheet and method for manufacturing the cold rolled steel sheet
EP1937853A4 (en) * 2005-09-23 2011-10-19 Posco BY BAKE-HARDENING, HARDENED COLD-ROLLED STEEL PLATE WITH SUPERIOR STRENGTH AND AGING RESISTANCE, AFTER ZINCING, HEAT-TREATED STEEL PLATE USING COLD-ROLLED STEEL PLATE AND METHOD FOR PRODUCING COLD-ROLLED STEEL PLATE
WO2016195456A1 (ko) * 2015-06-05 2016-12-08 주식회사 포스코 드로잉성 및 소부경화성이 우수한 고강도 박강판 및 그 제조방법
US10704116B2 (en) 2015-06-05 2020-07-07 Posco High-strength thin steel sheet with excellent drawability and bake hardenability, and method for manufacturing same

Also Published As

Publication number Publication date
JP3921100B2 (ja) 2007-05-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6760524B1 (ja) 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
WO2016133222A1 (ja) 熱延鋼板
CN109072371B (zh) 温加工用高强度钢板及其制造方法
WO2009110607A1 (ja) 冷延鋼板
WO2017179372A1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
WO2008072600A1 (ja) 高強度薄鋼板
EP2765211B1 (en) High-tensile-strength hot-rolled steel sheet and method for producing same
JP7243854B2 (ja) 熱延鋼板およびその製造方法
JP2010037652A (ja) 耐水素脆化特性および加工性に優れた高強度冷延鋼板
EP2759613A1 (en) High-tensile-strength hot-rolled steel sheet and method for producing same
JP7260073B1 (ja) 高強度鋼板,高強度めっき鋼板及びそれらの製造方法,並びに部材
WO2022180954A1 (ja) 鋼板およびその製造方法
KR20240042470A (ko) 열간 압연 강판
JP3887236B2 (ja) 形状凍結性と耐衝突特性に優れた高強度鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板及び高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法
WO2016186033A1 (ja) ばね鋼
JP6809648B1 (ja) 高強度鋼板及びその製造方法
RU2511000C2 (ru) Холоднокатаный стальной лист, обладающий превосходной формуемостью, и способ его производства
JP2003253378A (ja) 常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板
JP7348573B2 (ja) 熱延鋼板
JP6042265B2 (ja) 降伏強度と成形性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP3674502B2 (ja) 焼付け硬化型冷延鋼板およびその製造方法
JP2010018863A (ja) 耐水素脆化特性および加工性に優れた高強度冷延鋼板
JP4616568B2 (ja) 常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板およびその製造方法
JP2004169180A (ja) 高張力冷延鋼板およびその製造方法
JP7444096B2 (ja) 熱延鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040902

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060418

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060614

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20061010

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061120

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070213

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070216

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 3921100

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100223

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110223

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110223

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120223

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120223

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130223

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130223

Year of fee payment: 6

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130223

Year of fee payment: 6

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130223

Year of fee payment: 6

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130223

Year of fee payment: 6

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140223

Year of fee payment: 7

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees