JP2003239025A - 高融点金属溶解方法 - Google Patents

高融点金属溶解方法

Info

Publication number
JP2003239025A
JP2003239025A JP2002309492A JP2002309492A JP2003239025A JP 2003239025 A JP2003239025 A JP 2003239025A JP 2002309492 A JP2002309492 A JP 2002309492A JP 2002309492 A JP2002309492 A JP 2002309492A JP 2003239025 A JP2003239025 A JP 2003239025A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
melting
tio
ingot
metal
coating material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002309492A
Other languages
English (en)
Inventor
Jun Nanjo
潤 南條
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka Titanium Technologies Co Ltd
Original Assignee
Osaka Titanium Technologies Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Osaka Titanium Technologies Co Ltd filed Critical Osaka Titanium Technologies Co Ltd
Priority to JP2002309492A priority Critical patent/JP2003239025A/ja
Publication of JP2003239025A publication Critical patent/JP2003239025A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 消耗電極式真空アーク溶解法により製造され
る高融点金属インゴットの表面欠陥を経済的に、且つ、
安定的に防止する。 【解決手段】 消耗電極式真空アーク溶解に使用される
水冷銅モールドの内面に、TiO2 を30%以上含有す
るコーティング材を0.1〜1mmの厚みに塗布する。
好ましくはTiO2 を主成分とし、CaOを30%以下
含有するコーティング材、より好ましくはTiO2 を5
0%以上含有し、CaOを15%以下含有するコーティ
ング材を0.1〜1mmの厚みに被覆する。高純度金属
を溶解する場合は、水冷銅モールドの内面に、溶解する
金属の酸化物を0.1〜1mmの厚みに溶射する。強固
な被覆膜が形成されると共に、塗布で使用されるバイン
ダー中の金属不純物による汚染が防止される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタン、ジルコニ
ウム、ハフニウム又はこれらの合金といった高融点金属
のインゴット製造に使用される高融点金属溶解方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来より、金属チタンは工業的には主に
次の方法により製造されている。クロール法によりスポ
ンジチタンを製造する。製造されたスポンジチタンをコ
ンパクトと呼ばれる圧縮成形物に形成し、これを棒状に
繋ぎ合わせる。棒状コンパクトを溶解し、インゴットと
なす。棒状コンパクトの溶解法としては、例えば消耗電
極式真空アーク溶解法があり、その溶解操作が必要に応
じて複数回繰り返される。
【0003】消耗電極式真空アーク溶解法による金属チ
タンインゴットの溶製では、水冷銅モールド内に予め形
成された溶湯と、消耗電極として当該モールド内に挿入
された棒状コンパクトとの間にアークを発生させ、その
アーク熱により棒状コンパクトを下から順次溶融させて
当該モールド内に鋳込むことにより、チタンインゴット
が製造される。
【0004】このような消耗電極式真空アーク溶解法で
は、製造されるチタンインゴットに表面欠陥の少ないこ
と、Mg汚染の少ないことなどが要求される。2回の溶
解を行う場合は、二次溶解においてこのことが要求され
る。ここで問題となる表面欠陥は、モールド内面との接
触によって急冷された部分がしわやかさぶた状になった
り、ガス成分が抜ける間なくインゴットの表層部にトラ
ップされる現象であり、モールド内面の温度が低いほど
多発する。
【0005】Mg汚染は、消耗電極(コンパクト)を作
製するスポンジチタンがクロール法で製造されることに
伴い、消耗電極(コンパクト)にMgCl2 及びMgが
残留していることに起因する。即ち、消耗電極(コンパ
クト)の溶解に伴ってMgCl2 及びMgが揮発し、こ
れが湯面よりやや上の冷やされたモールド内面に付着
し、チタンインゴットに取り込まれる場合があるのであ
る。
【0006】表面欠陥の防止策としては、モールド内面
の温度を高めることが考えられる。モールド内面の昇温
は、MgCl2 及びMgの付着を抑制し、金属汚染の防
止にも有効である。
【0007】しかしながら、モールド温度の上昇は、モ
ールドの寿命短縮やモールドの損傷による爆発事故を招
く危険性がある。したがって、モールド温度を低下させ
ることなく、インゴットの表面欠陥を防止する対策が求
められており、その対策の一つとして、流し込みや吹き
付けによってモールド内面にカルシア(CaO)を主成
分とする内張り材を10mm程度の厚みにライニングす
る技術が特許文献1により提示されている。
【0008】また別の防止策として、モールド内面に沿
って円筒状の純チタン板を配置する方法が特許文献2に
開示されている
【0009】更に、目的は異なるが、モールド内面にM
oを溶射したりCrを電解メッキする方法は、特許文献
3に記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開昭58−132345号公報
【0011】
【特許文献2】特開平8−67921号公報
【0012】
【特許文献3】特開平7−174470号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、10m
mもの厚みにカルシアライニングを行おうとすると、施
工に要する費用及び工期が著しく嵩み、一般の純チタン
では、インゴットの表面品質向上に対するコストメリッ
トが見合わないという問題がある。内張り材を薄くした
場合は、溶解前及び溶解中に剥離が進行し、剥離部分で
所定の効果が得られなくなる。
【0014】また、カルシアライニングの場合、厚みに
関係なく、カルシア(CaO)の吸湿が問題になる。即
ち、CaO層は大気からの吸湿によりCa(OH)2
なって脆くなるため、厚みに関係なく溶解中に崩壊する
部分が生じ、鋳肌改善効果が減少すると共に、CaOが
溶湯に多量に混入することによりインゴットの酸素濃度
も上昇する。この酸素濃度の上昇は、酸素濃度低減が重
要課題である高純度チタンの溶製では大きな問題にな
る。
【0015】このような吸湿を防止するには、工場全体
を極低湿度環境に維持すればよいが、多大な設備投資が
必要になり、現実的な対策とは言えない。また仮に吸湿
が防止されてもCaOの混入は避けられず、酸素濃度上
昇とカルシウム濃度上昇の問題が残る。従って、カルシ
アライニングは、高純度チタンの溶解には採用できな
い。
【0016】一方、モールド内面に沿って円筒状の純チ
タン板を配置する方法の場合は、溶解中の熱によってそ
のチタン板が変形し、消耗電極と接触するなどの問題が
ある。
【0017】他方、特許文献3に記載されたMo溶射や
Crメッキは、消耗電極式真空アーク溶解法に使用され
る水冷銅モールドの内面損傷を防止するものであり、イ
ンゴットの表面性状の改善に対しては有効とはいえな
い。なぜなら、MoもCrも熱伝導性が良好な金属であ
り、このような金属がモールド内面に被覆されてもモー
ルド温度を上げることができないからである。加えて、
モールド内の溶融金属が重金属であるMoやCrに接触
し、その汚染が避けられないため、重金属の濃度低減が
必須である高純度チタンの溶解等には適用することがで
きない制約がある。
【0018】本発明の目的は、消耗電極式真空アーク溶
解法などにより製造される高融点金属インゴットの表面
欠陥を経済的に、且つ、安定的に防止でき、重金属汚染
などの二次弊害のおそれも少ない高融点金属溶解方法を
提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者らはカルシアに代わる効果的なセラミック
系コーティング材の開発を企画し、実験を繰り返した。
その結果、チタニアと呼ばれるTiO2 を主成分とする
コーティング材をモールド内面に塗布すると、0.5m
m程度の塗布厚でも10mm程度のカルシアライニング
に匹敵乃至はこれを凌ぐ表面欠陥防止効果を挙げうるこ
とが判明した。
【0020】また、TiO2 は吸湿性を有しておらず、
吸湿による脆化剥落の問題は生じないが、その一方、高
純度チタンの溶解においては、TiO2 を主成分とする
コーティング材といえども、その塗布は金属汚染の問題
のあることが判明した。
【0021】即ち、半導体製造用ターゲット材に使用さ
れるチタンの場合、5N以上の高純度が要求されるよう
になり、これに伴いCu濃度は1ppm以下、Mg濃度
は0.1ppm以下に制限する必要性が生じてきた。こ
のような高純度チタンの溶解において、TiO2 を主成
分とするコーティング材をモールド内面に塗布した場
合、インゴットの表面欠陥、モールド材質に起因するC
u汚染、被溶解材に起因するMg汚染については、効果
的に防止できるが、インゴット中のSi濃度及びAl濃
度についてはこれらが顕著に上昇するという、これまで
とは別種の金属汚染の問題のあることが明らかになっ
た。これは、塗布されるコーティング材中にバインダー
としてSiO2 やAl2 3 が配合されていることが原
因と考えられる。
【0022】即ち、バインダーの使用に伴うインゴット
中のSi濃度の上昇及びAl濃度の上昇は、展伸材用チ
タン材としては殆ど問題がないレベルであるが、半導体
製造用ターゲット材に使用されるチタンの場合は、高純
度のものが要求されるために、僅かの上昇でも問題にな
るのである。
【0023】そこで本発明者らは、溶解する高融点金属
と同じ元素の酸化物で純度の高いものを塗布すればよい
と考え、純度が99%以上の高純度TiO2 (粉末)を
塗布した。その結果は、SiO2 やAl2 3 といった
バインダー成分が排除されるため、バインダー成分によ
る金属汚染は発生しないものの塗布層の剥離が顕著とな
り、インゴットの鋳肌を十分に保護できないとか、モー
ルドに起因するCu汚染が生じるというものであった。
この結果から、本発明者らは高純度TiO2 (粉末)の
被覆法に問題があると考え、その被覆法として溶射を採
用した。その結果、被覆材自体に起因する汚染が無視で
きる程度に小さくなることに加え、塗布法と比べて耐剥
離性が良好であり、インゴットの鋳肌を効果的に保護で
きると共にCu汚染を効果的に防止できることが判明し
た。
【0024】本発明はかかる知見を基礎として開発され
たものであり、その第1の高融点金属溶解方法は、不活
性雰囲気中の銅製水冷容器内で高融点金属を溶解してイ
ンゴットを製造する際に、高融点金属の酸化物を30%
以上含有するコーティング材が内面に被覆された銅製水
冷容器を使用するものである。
【0025】また、第2の高融点金属溶解方法は、不活
性雰囲気中の銅製水冷容器内で高融点金属を溶解してイ
ンゴットを製造する際に、溶解する高融点金属の酸化物
が内面に溶射された銅製水冷容器を使用するものであ
る。
【0026】第1の高融点金属溶解方法は、展伸材に使
用される比較的低純度の高融点金属全般(チタン、ジル
コニウム又はハフニウム)に有効である。第2の高融点
金属溶解方法は、半導体製造用ターゲット材等に使用さ
れる高純度(特に5N以上)の高融点金属全般(チタ
ン、ジルコニウム又はハフニウム)に有効である。両方
法とも複数回行う場合は最終の溶解に有効である。
【0027】いずれの方法でも、溶解法は消耗電極式真
空アーク溶解法(VAR法)、EB溶解法、プラズマア
ークアーク溶解法など、高融点金属を銅製水冷容器内で
溶解する一般的な溶解法を指すが、特に有効なのは消耗
電極式真空アーク溶解法である。
【0028】銅製水冷容器とは水冷銅モールド或いは水
冷銅ハースであり、消耗電極式真空アーク溶解法ではモ
ールドが使用されるが、EB溶解法やプラズマアークア
ーク溶解法ではモールドのみが使用される場合と両者が
併用される場合とがある。
【0029】第1の方法におけるコーティング材は、高
融点金属の酸化物を30%以上含むが、その酸化物は、
溶解する高融点金属の酸化物である必要はなく、例えば
チタン溶解に酸化チタンだけでなく酸化ジルコニウム又
は酸化ハフニウムを使用することができるが、これらの
酸化物のなかでは酸化チタン(TiO2 )の汎用性が高
く、チタン溶解、ジルコニウム溶解又はハフニウム溶解
のいずれにも好適に使用することができる。
【0030】TiO2 を30%以上含むコーティング材
としては、TiO2 を主成分とし、且つ、CaOの含有
量を30%以下に抑制したものが好ましく、TiO2
含有量が50%以上で、CaOの含有量が15%以下の
ものが特に好ましい。
【0031】ここで、%は固形分の質量比であり、溶剤
は含まない。また、主成分とは固形分の質量比が最大の
含有成分を意味する。
【0032】TiO2 の含有量が30%未満であると、
インゴットの表面欠陥を抑制する効果が不十分となる。
TiO2 量の上限については100%も可能であるので
特に限定しないが、通常は使用性(塗布性等)、被膜の
硬さ等、各種の性質の調整のために他の成分が含有され
ることから60%程度となる。
【0033】コーティング材中のCaO量については、
多くなると、TiO2 による表面欠陥抑制効果を阻害す
る。なぜなら、CaOは一応、表面欠陥の抑制に有効で
あるが、その一方でコーティング被膜を脆弱化し、被膜
の剥離を招く原因になる場合があるからである。この観
点から、CaO量はTiO2 量より少ないことが好まし
く、具体的には30%以下が好ましいのである。
【0034】CaO以外では、コーティングの被膜を強
固にするためにアルミナ、マグネシア、シリカ等を含ん
でもよい。これらの被膜強化成分は、高純度のインゴッ
トを要求されない場合に特に有効である。その他の成分
としてはリン、クロム、マンガン、ジルコニウム、鉄等
の酸化物を微量に含有してもよい。
【0035】また、本コーティング材は、使用性、特に
塗布作業の容易さから、エマルジョン塗料として使用す
るのが好ましい。
【0036】コーティング材の被覆厚は、乾燥膜状態で
0.1〜1mmが好ましい。0.1mm未満であると、
断熱作用が小さいので、インゴットの表面欠陥を抑制す
る効果が不十分となる。この被膜厚は大きいほど好まし
いと考えがちであるが、実際は1mmを超える場合も
又、インゴットの表面欠陥を抑制する効果が不十分とな
る。なぜなら乾燥中や乾燥後に剥離しやくなるからであ
る。また、被覆厚が厚いと、乾燥時間も長くなる。
【0037】コーティング材中のTiO2 の特徴は次の
とおりである。CaOより安定で、剥離しにくく、この
点から表面欠陥を抑制する効果を高めると共に、被膜の
薄厚化を可能にする。インゴット、特にチタンインゴッ
トを汚染しない。即ち、TiO2 がインゴットに混入す
ることによる酸素量の増加は無視できるほど小さい。溶
湯、特に溶融チタンとの親和性を高め、濡れ性を向上さ
せる点からも、表面欠陥を抑制する効果を高める。
【0038】第1の方法におけるコーティング材を、高
純度の高融点金属用として追求すると、主成分は溶解す
る高融点金属と同じ金属の酸化物となり、且つその酸化
物の含有比は高いもの(バインダーが排除されたもの)
になる。つまり、高純度チタンの溶解には高純度の酸化
チタンが使用され、ジルコニウム溶解、ハフニウム溶解
には高純度の酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムがそれ
ぞれ使用される。このようなコーティング材を容器内面
にバインダーなしで強固に被覆させたのが、第2の方法
における酸化物の溶射層である。この機能は以下のとお
りである。
【0039】溶解する高融点金属の酸化物を銅製水冷容
器の内面に溶射法により被覆することにより、緻密な酸
化物皮膜が形成でき、はげ落ち難いために、インゴット
の表面欠陥、Cu汚染、他の金属汚染を安定的に低減す
ることができる。
【0040】詳しく説明すると、酸化物皮膜は容器内面
と溶湯との間の熱伝達を緩和し、溶湯の急冷を防ぐ作用
がある。これにより、溶湯が急冷することによって生じ
ていた表面欠陥を抑制できると共に、容器内面温度が上
昇し、揮発したMgCl2 及びMgの容器内面への付着
を抑制できることと、先の溶湯の急冷防止とにより、イ
ンゴットへのMgCl2 及びMgの巻き込みを抑制で
き、Mg汚染を低減できる。溶解する高融点金属の酸化
物は、溶解する高融点金属との親和性が高く、濡れ性が
向上して表面欠陥を低減できているとも考えられる。
【0041】また、溶射法によれば100%に近い高純
度の酸化物を用いることができ、塗布などによる場合に
必要なバインダー(Al2 3 、Si2 など)が不要と
なり、バインダーからの金属汚染を防止できる。
【0042】消耗電極式真空アーク溶解法では、溶解中
にモールド内を液面が上昇していくため、他の溶解法よ
りも、インゴットへのMgCl2 及びMgの巻き込み抑
制効果が大きい。
【0043】酸化物の溶射層は、厚いほど断熱効果が高
く、インゴットの表面欠陥を低減できるが、過剰な厚さ
はコストアップとなり、インゴットの表面欠陥が低減し
たコストメリットを相殺する。逆に薄すぎる場合は所期
の効果が得られない。このような観点から、溶射層の層
厚は0.1〜1mmが好ましく、0.3〜1mmが特に
好ましい。酸化物の純度は、不純物元素をできるだけ排
除する点から95%以上が好ましく、99%以上が特に
好ましい。
【0044】溶射層は、塗布層や流し込み層、吹き付け
層より強固であるが、それでも溶解に1回使用した後に
は剥離部分が生じることがある。その場合には1回使用
後、残った溶射層を剥離し、新たに溶射層を形成すれば
よいが、残った溶射層の上から消耗した分を追加で溶射
しても構わない。剥離が生じない場合は続けて複数回使
用することもできる。溶射はある程度費用が嵩むが、高
純度チタンなどの高純度高融点金属は高価であるため、
インゴット1本の価格が非常に高い。従って、本発明に
よる汚染防止効果等で高純度高融点金属の歩留りが向上
する便益と比較すれば、溶射費用の占める割合は小さ
く、毎回照射を行っても十分に対費用効果が得られる。
また、これまで得られなかった超低Cu濃度の高融点金
属を得ることができる。
【0045】インゴットを製造するために溶解を複数回
繰り返す場合は、そのうちの1回にだけ被覆容器を使用
しても1回分の汚染防止効果が得られ、複数回用いれば
複数回分の汚染防止効果が得られる。このため、要求さ
れる不純物スペックに応じて被覆容器の使用回数を決め
ればよい。また、複数回の溶解を行う場合の最終溶解に
被覆容器を用いれば汚染防止効果に加え手入れ面積の低
減効果も得られ、一次溶解に被覆容器を用いれば汚染防
止効果が得られる。このため、被覆容器をどの段階で使
用するかは目的に応じて適宜決定すればよい。
【0046】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態を説明す
る。
【0047】第1実施形態では、消耗電極式真空アーク
溶解により展伸材に使用される通常純度(99〜99.
9%)のチタンインゴットが製造される。
【0048】具体的に説明すると、クロール法によって
製造されたスポンジチタンから棒状コンパクトを作製す
る。エネルギービームの照射等により、水冷銅モールド
内に予め通常純度チタンの溶湯を少量形成する。その溶
湯と、消耗電極として当該モールド内に挿入された棒状
コンパクトとの間にアークを発生させ、そのアーク熱に
より棒状コンパクトを下から順次溶融させて当該モール
ド内に鋳込む。
【0049】このようにしてチタンインゴットを製造す
る際に、本実施形態では、予め水冷銅モールドの内面
に、TiO2 を30%以上含有するコーティング材、好
ましくはTiO2 を主成分とし、CaOを30%以下含
有するコーティング材、より好ましくはTiO2 を50
%以上含有し、CaOを15%以下含有するコーティン
グ材を0.1〜1mmの厚みに塗布しておく。
【0050】上述したコーティング材を水冷銅モールド
の内面に予め薄く塗布しておくことにより、チタンイン
ゴットにおける表面欠陥の発生が効果的に抑制される。
製造されたチタンインゴットは、表面欠陥が生じた部分
を手入れすることにより製品とされる。
【0051】上述したコーティング材の有効性を確認す
るために、種々の組成のコーティング材をエマルジョン
塗料にして水冷銅モールドの内面に被覆し、塗料の乾燥
後、溶解を行った。被覆厚は乾燥後の平均厚みで0.4
mmである。溶解条件は以下のとおりである。
【0052】溶解重量7000kg 消耗電極径(スポンジチタンからなる棒状コンパクトの
直径)850mm モールド内径1000mm 溶解電流30kA
【0053】コーティング材の評価は、製造されたチタ
ンインゴットの手入れ面積率(インゴット外周面の全面
積に占める手入れ面積の割合)を調査することにより行
った。
【0054】使用したコーティング材の組成を表1に示
す。また、製造されたチタンインゴットの手入れ面積率
を、使用したコーティング材の組成についての条件と共
に表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】水冷銅モールドの内面にコーティング材を
被覆しない場合の手入れ面積率は30%程度である。G
はカルシアコーティング材である。0.4mmの被覆厚
では手入れ面積率は25%に達する。また、Hはカルシ
アコーティング材の場合で、且つ、流し込みや吹き付け
によって10mm程度の厚みに内張りした場合である。
手入れ面積率は15%程度に低下する。しかし、この方
法ではコストメリットが見合わないことは前述のとおり
である。
【0058】一方、Fはシリカ(SiO2 )を主成分と
するコーティング材である。手入れ面積率は19%と大
きい。
【0059】これらに対し、A,B,CはTiO2 を主
成分とするコーティング材である。TiO2 量が50%
以上、CaO量が15%以下のA,Bでは、手入れ面積
率は0%である。TiO2 量が30%以上、CaO量が
15%以下のCでは、手入れ面積率は3%である。
【0060】また、D,Eは30%のTiO2 を含む
が、同時にこれと同等以上のCaOを含むコーティング
材である。TiO2 量が30%未満のFより手入れ面積
率は小さいが、30%のTiO2 が確保されてもCaO
量が多くなるほど手入れ面積率が増大し、CaO量が3
0%の場合で4%、45%の場合で8%である。
【0061】SiO2 はCaOのように水蒸気や二酸化
炭素で変化することはないが、TiO2 ほどの表面欠陥
抑制効果は得られない。換言すれば、TiO2 はCaO
はもとより、安定性の高いSiO2 よりも高い表面欠陥
抑制効果を得ることができる。これは、TiO2 が溶融
チタンとコーティング材の濡れ性などの親和力を高める
機能を兼備しているためと考えられる。
【0062】表3は、コーティング材Aの被覆厚を変化
させたときの結果を示している。被覆厚は薄すぎても厚
すぎても良くなく、0.1〜1mmが好適である。
【0063】
【表3】
【0064】次に、本発明の第2実施形態を説明する。
本実施形態では、消耗電極式真空アーク溶解により、半
導体製造用ターゲット材に使用される高純度(4N以
上)のチタンインゴットが製造される。高純度チタンの
溶製に伴い、水冷銅モールド内面に、TiO2 を30%
以上含有するコーティング材の塗布に代えて、純度が9
9%以上の高純度TiO2 の溶射を行う。溶解の手順
は、前述した通常純度チタンの溶製の場合と実質同一で
ある。
【0065】TiO2 を30%以上含有するコーティン
グ材の塗布と比べ、高純度TiO2の溶射によると、C
u汚染及びMg汚染がより効果的に抑制される上に、コ
ーティング材の塗布で問題となる、バインダー使用に起
因するAl汚染及びSi汚染が防止される。
【0066】高純度TiO2 溶射層の有効性を確認する
ために、水冷銅モールドの内面に高純度(99%)のT
iO2 を種々の厚みに溶射した。それらのモールドを使
用して、前述した条件で消耗電極式真空アーク溶解によ
り高純度チタンインゴットを製造した。製造されたチタ
ンインゴットにおける手入れ面積率、Cu濃度、Mg濃
度、Al濃度及びSi濃度を調査した結果を、被覆な
し、前述したコーティング材の塗布の場合と共に表4に
示す。コーティング材は表1中のAである。
【0067】
【表4】
【0068】溶射なしの場合、インゴット表面の手入れ
面積率は約30%である。Cu濃度は0.9ppmであ
り、Mg濃度は0.14ppmである。但し、Al濃度
及びSi濃度は0.2ppmと極低位である。
【0069】表1中のAの組成のコーティング材の塗布
により、インゴット表面の手入れは不要になる。Cu濃
度及びMg濃度も大幅に低くなる。しかし、Al濃度及
びSi濃度は1ppm以上となる。
【0070】これらに対し、TiO2 の溶射によると、
厚みが薄すぎない限り、インゴット表面の手入れは不要
であり、Cu濃度及びMg濃度は更に低下する。その
上、Al濃度及びSi濃度は0.2〜0.3ppmと極
低位のままである。溶射厚が薄いと、効果が低減する。
好ましい溶射厚は0.1mm以上であり、特に好ましく
は0.3mm以上である。
【0071】
【発明の効果】以上に説明したとおり、本発明の高融点
金属溶解方法は、不活性雰囲気中の銅製水冷容器内で高
融点金属を溶解してインゴットを製造する際に、高融点
金属の酸化物を30%以上含有するコーティング材が内
面に被覆された銅製水冷容器を使用することにより、高
く安定な表面欠陥抑制効果を得ることができ、しかも、
その効果を僅かの被覆厚で得ることができる。従って、
施工に要する費用及び工期を節減でき、コストメリット
に著しく優れる。
【0072】また、不活性雰囲気中の銅製水冷容器内で
高融点金属を溶解してインゴットを製造する際に、溶解
する高融点金属の酸化物が内面に溶射された銅製水冷容
器を使用することにより、コーティング材の塗布による
効果を一層高めることができ、且つ、コーティング材の
塗布で問題となる金属汚染を効果的に防止できる。従っ
て、高純度高融点金属の溶製に特に適した溶解方法とい
うことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C22B 34/10 C22B 34/10 Fターム(参考) 4K001 AA13 AA27 AA31 BA23 EA02 FA10 FA12 GA16 GB12 4K031 AA03 AB02 CB42 4K044 AA06 AB10 BA12 BB01 CA11 CA53 4K046 AA03 BA03 CB12 CC01

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不活性雰囲気中の銅製水冷容器内で高融
    点金属を溶解してインゴットを製造する際に、高融点金
    属の酸化物を30%以上含有するコーティング材が内面
    に被覆された銅製水冷容器を使用することを特徴とする
    高融点金属溶解方法。
  2. 【請求項2】 消耗電極式真空アーク溶解法によりチタ
    ン、ジルコニウム又はハフニウムのインゴットを製造す
    る際に、前記銅製水冷容器として、前記コーティング材
    が内面に塗布された水冷銅モールドを用いることを特徴
    とする請求項1に記載の高融点金属溶解方法。
  3. 【請求項3】 前記酸化物はTiO2 である請求項1に
    記載の高融点金属溶解方法。
  4. 【請求項4】 前記コーティング材は、TiO2 を主成
    分とし、且つCaOを30%以下含有する請求項3に記
    載の高融点金属溶解方法。
  5. 【請求項5】 前記コーティング材の被覆厚が0.1〜
    1mmである請求項3に記載の高融点金属溶解方法。
  6. 【請求項6】 不活性雰囲気中の銅製水冷容器内で高融
    点金属を溶解してインゴットを製造する際に、溶解する
    高融点金属の酸化物が内面に溶射された銅製水冷容器を
    使用することを特徴とする高融点金属溶解方法。
  7. 【請求項7】 銅製水冷容器として水冷銅モールドを用
    いる消耗電極式真空アーク溶解法により高純度のチタ
    ン、ジルコニウム又はハフニウムを製造することを特徴
    とする請求項6に記載の高融点金属溶解方法。
  8. 【請求項8】 高融点金属は高純度チタンであり、前記
    酸化物は高純度TiO2 である請求項6に記載の高融点
    金属溶解方法。
  9. 【請求項9】 前記酸化物の溶射層厚が0.1〜1mm
    である請求項6に記載の高融点金属溶解方法。
  10. 【請求項10】 高純度TiO2 が内面に溶射された高
    融点金属溶解用銅製水冷容器。
JP2002309492A 2001-12-10 2002-10-24 高融点金属溶解方法 Pending JP2003239025A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002309492A JP2003239025A (ja) 2001-12-10 2002-10-24 高融点金属溶解方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001-375529 2001-12-10
JP2001375529 2001-12-10
JP2002309492A JP2003239025A (ja) 2001-12-10 2002-10-24 高融点金属溶解方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003239025A true JP2003239025A (ja) 2003-08-27

Family

ID=27790647

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002309492A Pending JP2003239025A (ja) 2001-12-10 2002-10-24 高融点金属溶解方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003239025A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011097084A1 (en) * 2010-02-05 2011-08-11 Ati Properties, Inc. Systems and methods for forming and processing alloy ingots
US8789254B2 (en) 2011-01-17 2014-07-29 Ati Properties, Inc. Modifying hot workability of metal alloys via surface coating
US9027374B2 (en) 2013-03-15 2015-05-12 Ati Properties, Inc. Methods to improve hot workability of metal alloys
US9267184B2 (en) 2010-02-05 2016-02-23 Ati Properties, Inc. Systems and methods for processing alloy ingots
JP2016046513A (ja) * 2014-08-22 2016-04-04 中美▲せき▼晶製品股▲ふん▼有限公司 ウエハ製造方法
US9327342B2 (en) 2010-06-14 2016-05-03 Ati Properties, Inc. Lubrication processes for enhanced forgeability
US9539636B2 (en) 2013-03-15 2017-01-10 Ati Properties Llc Articles, systems, and methods for forging alloys

Cited By (17)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9533346B2 (en) 2010-02-05 2017-01-03 Ati Properties Llc Systems and methods for forming and processing alloy ingots
US8230899B2 (en) 2010-02-05 2012-07-31 Ati Properties, Inc. Systems and methods for forming and processing alloy ingots
CN103468966A (zh) * 2010-02-05 2013-12-25 Ati资产公司 用于形成和处理合金锭的系统和方法
US8757244B2 (en) 2010-02-05 2014-06-24 Ati Properties, Inc. Systems and methods for forming and processing alloy ingots
WO2011097084A1 (en) * 2010-02-05 2011-08-11 Ati Properties, Inc. Systems and methods for forming and processing alloy ingots
AU2011213195B2 (en) * 2010-02-05 2014-10-09 Ati Properties, Inc. Systems and methods for forming and processing alloy ingots
US11059089B2 (en) 2010-02-05 2021-07-13 Ati Properties Llc Systems and methods for processing alloy ingots
RU2573456C2 (ru) * 2010-02-05 2016-01-20 ЭйТиАй ПРОПЕРТИЗ, ИНК. Системы и способы изготовления и обработки слитков сплавов
US11059088B2 (en) 2010-02-05 2021-07-13 Ati Properties Llc Systems and methods for processing alloy ingots
US9267184B2 (en) 2010-02-05 2016-02-23 Ati Properties, Inc. Systems and methods for processing alloy ingots
US10207312B2 (en) 2010-06-14 2019-02-19 Ati Properties Llc Lubrication processes for enhanced forgeability
US9327342B2 (en) 2010-06-14 2016-05-03 Ati Properties, Inc. Lubrication processes for enhanced forgeability
US8789254B2 (en) 2011-01-17 2014-07-29 Ati Properties, Inc. Modifying hot workability of metal alloys via surface coating
US9242291B2 (en) 2011-01-17 2016-01-26 Ati Properties, Inc. Hot workability of metal alloys via surface coating
US9539636B2 (en) 2013-03-15 2017-01-10 Ati Properties Llc Articles, systems, and methods for forging alloys
US9027374B2 (en) 2013-03-15 2015-05-12 Ati Properties, Inc. Methods to improve hot workability of metal alloys
JP2016046513A (ja) * 2014-08-22 2016-04-04 中美▲せき▼晶製品股▲ふん▼有限公司 ウエハ製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4812372A (en) Refractory metal substrate and coatings therefor
TWI511926B (zh) High purity lanthanum, a high purity lanthanum, a sputtering target composed of high purity lanthanum, and a metal gate film having a high purity lanthanum as a main component
JP5001323B2 (ja) 白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法および酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材
JP5632343B2 (ja) エレクトロスラグ肉盛溶接用フラックス
CN110819817B (zh) 用于含铝钛镍基高温合金的基础渣系及电渣重熔方法
KR100706026B1 (ko) 고속용접성이 우수한 서브머지드 아크 용접용 소결형플럭스
JP2007154214A (ja) 超高純度Fe基、Ni基、Co基合金材料の溶製法
JP2003239025A (ja) 高融点金属溶解方法
US6607787B2 (en) Process for producing a coating on a refractory structural member
EA036436B1 (ru) Металлокерамический электродный материал
JPWO2006098199A1 (ja) 高融点金属の分離回収方法
JP5869748B2 (ja) Alキルド鋼の連続鋳造方法
Szkliniarz et al. Assessment of quality of Ti alloys melted in induction furnace with ceramic crucible
US3950163A (en) Quaternary fluxes for electroslag remelting ferrous alloys and superalloys
JP2012136782A (ja) 白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法および酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材
JPH05271815A (ja) Ni−Fe基超耐熱合金鋳塊の製造方法
JP5066018B2 (ja) 鋳造方法
EP4343016A1 (en) Coating material for in-furnace structure, surface coating method, and in-furnace structure
JP6734539B2 (ja) 超高マンガン鋼の連続鋳造方法
KR100566895B1 (ko) 동합금 용탕에서의 불순물 제거방법
JPH05271814A (ja) Ni−Fe基超耐熱合金鋳塊の製造方法
JP2023176305A (ja) インゴットの製造方法
JP3856650B2 (ja) ステンレス鋼被覆アーク溶接棒
KR101167155B1 (ko) 마그네슘 용해용 도가니의 내식성 향상방법
JP2000288779A (ja) サブマージアーク溶接用焼成型フラックス

Legal Events

Date Code Title Description
RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20040217

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20041222

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050215

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20050621