JP2003235581A - ヒトアデノウイルス5型e1aおよびe1b遺伝子検出用オリゴヌクレオチド - Google Patents
ヒトアデノウイルス5型e1aおよびe1b遺伝子検出用オリゴヌクレオチドInfo
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Abstract
有用である組み換えアデノウイルスの自律増殖性アデノ
ウイルス(RCA)混入に関する品質管理に用いるPC
R(polymerase chain reaction)法での検出用オリゴヌ
クレオチド化合物を提供すること。 【解決手段】特定の塩基配列またはそれらと実質的に同
一の塩基配列を有する、ヒトアデノウイルス5型のE1
AおよびE1B遺伝子検出用オリゴヌクレオチド。
Description
ス5型E1A又はE1B遺伝子と相同性を有し、ヒトア
デノウイルス5型E1A又はE1B遺伝子を検出するの
に有用なオリゴヌクレオチドに関する。本発明のオリゴ
ヌクレオチドは、ウイルス感染診断薬および研究用試薬
として有用である。
スの自律増殖性を司るE1遺伝子領域を欠失した遺伝子
導入ベクターであり、遺伝子治療や基礎研究の分野で有
用である。この組み換えウイルスを調製する段階で宿主
細胞である293細胞のE1遺伝子と組み換えアデノウ
イルスとの間で相同組み換えがおこり、自律増殖性アデ
ノウイルス(replication-competent adenovirus ; RC
A)が生じることが報告されている(Lochmuller, H.ら
「Human Gene Therapy」 5巻1485-1491頁 (1994))。遺
伝子治療や基礎研究に用いられる組み換えアデノウイル
スに混入したRCAを検出するために、従来ではE1遺
伝子を持たないHeLa細胞に組み換えウイルスを感染
させて、その細胞毒性を顕微鏡下で観察する方法やその
感染HeLa細胞から抽出した全DNAをサザンブロッ
ト分析やPCR法で検出する方法などが行われてきた
(Lochmuller, H.ら「Human Gene Therapy」 5巻1485-1
491頁(1994);佐藤友美ら 「別冊 実験医学 遺伝子
導入&発現解析実験法」27-42頁 (1997))。
は検出感度が低く、サザンブロット分析は放射活性物質
を用いるので操作手順が繁雑になる。PCRによる検出
法は感度が高く比較的簡便な操作手順で行えるものであ
るが、検出用オリゴヌクレオチドプライマーの設計の仕
方によっては、それら同士が結合したり、HeLa細胞
のゲノムDNAに結合したりして正確な検出結果が得ら
れない場合が考えられる。
解決するため、検出方法としてPCR法を用いる場合、
そのオリゴヌクレオチドプライマーは、自身の結合によ
る副生成物を生じず、HeLa細胞のゲノムDNAにも
結合せず、ヒトアデノウイルス5型E1A又はE1B遺
伝子の該当部分に特異的に結合するように設計する必要
がある。ここで、E1A及びE1B遺伝子とはE1遺伝
子を構成する遺伝子である。従って、本発明は、PCR
法を用いて簡便にしかも感度の高いRCA検出を行うこ
とができるオリゴヌクレオチドを提供することを解決す
べき課題とした。
を解決するために鋭意検討し、ヒトアデノウイルス5型
E1A又はE1B遺伝子を検出するのに適したオリゴヌ
クレオチドプライマーを検索し、該遺伝子の混入をPC
R法を用いて効率的に検出できる塩基配列を設定し、こ
の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを作製し、それ
を用いた検出効果をin vitro実験系において確かめるこ
とに成功し、本発明を完成するに至った。
1〜4の何れかに記載の塩基配列またはそれらと実質的
に同一の塩基配列を有する、ヒトアデノウイルス5型E
1A又はE1B遺伝子検出用オリゴヌクレオチドが提供
される。
は、下記の何れかに記載の塩基配列を有する。 (1)配列表の配列番号1〜4の何れかに記載の塩基配
列; (2)配列表の配列番号1〜4の何れかの塩基配列にお
いてTをUに置換した塩基配列; (3)上記(1)又は(2)に記載の塩基配列と少なく
とも70%以上の相同性を有する塩基配列であって、ヒ
トアデノウイルス5型E1A又はE1B遺伝子を特異的
に検出できる塩基配列;又は、 (4)配列表の配列番号1〜4の何れかの塩基配列にお
いて1〜数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された
塩基配列であって、ヒトアデノウイルス5型E1A又は
E1B遺伝子を特異的に検出できる塩基配列;
番号1に記載の塩基配列またはそれと実質的に同一の塩
基配列を有するオリゴヌクレオチド、及び配列表の配列
番号2に記載の塩基配列またはそれと実質的に同一の塩
基配列を有するオリゴヌクレオチドから成るヒトアデノ
ウイルス5型E1A遺伝子検出用プライマーセットが提
供される。
の配列番号3に記載の塩基配列またはそれと実質的に同
一の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド、及び配列表
の配列番号4に記載の塩基配列またはそれと実質的に同
一の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドから成るヒト
アデノウイルス5型E1B遺伝子検出用プライマーセッ
トが提供される。
は、下記の何れかに記載の塩基配列である。 (1)当該塩基配列においてTをUに置換した塩基配
列; (2)当該塩基配列と少なくとも70%以上の相同性を
有する塩基配列であって、ヒトアデノウイルス5型E1
A又はE1B遺伝子を特異的に検出できる塩基配列;又
は、 (3)当該塩基配列において1〜数個の塩基が欠失、置
換及び/又は付加された塩基配列であって、ヒトアデノ
ウイルス5型E1A又はE1B遺伝子を特異的に検出で
きる塩基配列;
のオリゴヌクレオチドあるいはプライマーセットを用い
て試料中のヒトアデノウイルス5型E1A又はE1B遺
伝子を検出することを含む、ヒトアデノウイルス5型E
1A又はE1B遺伝子の検出方法が提供される。本発明
のさらに別の側面によれば、試料中の核酸を鋳型とし
て、本発明のプライマーセットを用いてPCRを行うこ
とにより、試料中のヒトアデノウイルス5型E1A又は
E1B遺伝子を検出することを含む、ヒトアデノウイル
ス5型E1A又はE1B遺伝子の検出方法が提供され
る。
のオリゴヌクレオチドあるいはプライマーセットを含
む、ヒトアデノウイルス5型E1A又はE1B遺伝子検
出用試薬が提供される。本発明のさらに別の側面によれ
ば、本発明のオリゴヌクレオチドあるいはプライマーセ
ットを含む、ヒトアデノウイルス5型E1A又はE1B
遺伝子検出用キットが提供される。
て詳細に説明する。 (I)本発明のオリゴヌクレオチドの設計 本発明のオリゴヌクレオチドは、配列表の配列番号1〜
4の何れかに記載の塩基配列またはそれらと実質的に同
一の塩基配列を有するものであり、ヒトアデノウイルス
5型E1A又はE1B遺伝子検出のために使用すること
ができる。ヒトアデノウイルス5型E1A又はE1B遺
伝子とは、ヒトアデノウイルス5型のE1A又はE1B
タンパク質のアミノ酸配列を規定している構造遺伝子を
意味する。本発明のオリゴヌクレオチド化合物は、高力
価の組み換えウイルス液中に混入したRCAをPCR法
で高感度に検出するものである。
にしてPCR法の考えに基づいて設計し、それをもとに
調製し、その効果を検出されるアデノウイルスのE1A
とE1B遺伝子の検出限界をもとに評価して得られたも
のである。すなわち、まず、ヒトアデノウイルス5型の
E1AとE1Bの遺伝子の塩基配列情報を入手する。次
に該遺伝子の部分塩基配列に対して相補的な核酸化合物
のうち、オリゴヌクレオチドとして効果が期待される核
酸化合物を選択し、選択されたオリゴヌクレオチドを合
成した。このようにして得られた該オリゴヌクレオチド
が高力価の組み換えウイルス液中に混入したRCAをP
CR法で高感度に検出するかどうかを、in vitro実験系
を用いて試験した。そして、高力価の組み換えウイルス
液中に混入したRCAをPCR法でE1AまたはE1B
遺伝子をそれぞれ単独、さらにE1AとE1B遺伝子を
同時に高感度に検出するような塩基配列を含むオリゴヌ
クレオチドを取得し、これらを本発明のオリゴヌクレオ
チドとしたものである。
めには、先ず、ヒトアデノウイルス5型E1AまたはE
1B遺伝子の塩基配列を入手する。これは論文に記載さ
れている情報として、GenBankなどの遺伝子データベー
スに蓄積されている情報として、さらには、直接的に塩
基配列を解析した結果として入手することができる。次
に該遺伝子の部分塩基配列に対して相補的な核酸化合物
のうち、オリゴヌクレオチド化合物として効果が期待さ
れる核酸化合物を選択する。この方法としては、オリゴ
ヌクレオチドの長さ、GC含量、Tm値、オリゴヌクレ
オチド間の相補性、オリゴヌクレオチド内の二次構造な
どを考慮する方法(井上順子ら、別冊「実験医学PCR法
の最新技術」18-24頁(1995);向井博之ら、「蛋白質核
酸酵素 PCR法最前線」41巻 437-452頁 (1996))など
がある。
法により検出するにあたっては、その塩基配列のいかな
る部分に対応するプライマーセットを選択するかが重要
である。プライマーセットの結合位置によってPCR法
による増幅効率が変化することが知られているからであ
る。そして、この予測は一般に困難である。
ヒトアデノウイルス5型E1AまたはE1B遺伝子をコ
ードする領域の一部を増幅し得るプライマーセットを選
択した。 (1)プライマー末端がグアニンもしくはシトシンであ
る26塩基以上50塩基以下、特に好ましくは30塩基
以上40塩基以下からなるプライマーセット; (2)プライマー中のグアニン、シトシン含量が30%
〜70%程度でプライマーの全範囲を通じてその偏りが
ないプライマーセット; (3)そのプライマーセットを用いたPCR法による増
幅産物が100bp以上であるようなプライマーセッ
ト; (4)ヒトアデノウイルス5型E1A及びE1B遺伝子
の増幅産物を電気泳動した場合にそれらの泳動距離の差
が明確になる程度に、増幅産物の大きさが異なるプライ
マーセット:及び (5)プライマーの5’側はヒトアデノウイルス5型E
1A及びE1B遺伝子配列と70%以下の相同性しか有
さなくてもよいが、3’側は完全に相同の配列を有する
ように設定されたプライマーセット:
例 本発明のオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の
オリゴヌクレオチドが挙げられる。本発明の第1のオリ
ゴヌクレオチドは、野生型ヒトアデノウイルス5型のE
1A遺伝子検出用のフォワード側プライマーであり、配
列番号1に記載の塩基配列を有する。本発明の第2のオ
リゴヌクレオチドは、野生型ヒトアデノウイルス5型の
E1A遺伝子検出用のリバース側プライマーであり、配
列番号2に記載の塩基配列を有する。上記した第1及び
第2のオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして使
用してPCRを行うことにより、上記2種のプライマー
で挟まれる領域を増幅することができ、これにより野生
型ヒトアデノウイルス5型のE1A遺伝子を検出するこ
とができる。この場合の増幅産物の大きさは919bp
である。
生型ヒトアデノウイルス5型のE1B遺伝子検出用のフ
ォワード側プライマーであり、配列番号3に記載の塩基
配列を有する。本発明の第4のオリゴヌクレオチドは、
野生型ヒトアデノウイルス5型のE1B遺伝子検出用の
リバース側プライマーであり、配列番号4に記載の塩基
配列を有する。上記した第3及び第4のオリゴヌクレオ
チドをプライマーセットとして使用してPCRを行うこ
とにより、上記2種のプライマーで挟まれる領域を増幅
することができ、これにより野生型ヒトアデノウイルス
5型のE1B遺伝子を検出することができる。この場合
の増幅産物の大きさは493bp程度である。
れかに記載の塩基配列だけでなく、それらと実質的に同
一の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを使用するこ
とができる。配列番号1〜4の何れかに記載の塩基配列
またはそれらと実質的に同一の塩基配列は、アデノウイ
ルスのE1AまたはE1B遺伝子の塩基配列に対して相
補的な、もしくは実質的に相補的な塩基配列であり、か
つPCR法においてアデノウイルスのE1AまたはE1
B遺伝子を検出するのに適したオリゴヌクレオチド化合
物の塩基配列である。
それらと実質的に同一の塩基配列としては、具体的に
は、以下の塩基配列の全てを包含する。 (1)配列表の配列番号1〜4の何れかに記載の塩基配
列; (2)配列表の配列番号1〜4の何れかの塩基配列にお
いてTをUに置換した塩基配列; (3)上記(1)又は(2)に記載の塩基配列と少なく
とも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましく
は90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有
する塩基配列であって、ヒトアデノウイルス5型のE1
A又はE1B遺伝子を特異的に検出できる塩基配列;又
は、 (4)配列表の配列番号1〜4の何れかの塩基配列にお
いて1〜数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された
塩基配列であって、ヒトアデノウイルス5型のE1A又
はE1B遺伝子を特異的に検出できる塩基配列;
長さは特に限定されるものではないが、好ましくは26
塩基以上50塩基以下、特に好ましくは30塩基以上4
0塩基以下である。
リボ核酸(DNA)でもリボ核酸(RNA)でもよい。
リボ核酸の場合はチミジン残基(T)をウリジン残基
(U)と読み替えればよい。また合成の際に、任意の位
置のTをUに変えて合成を行い、ウリジン残基を含むD
NAであってもよい。同様に任意のUをTに変えたチミ
ジン残基を含むRNAであってもよい。また、オリゴヌ
クレオチド中に修飾ヌクレオチドがあってもよい。本発
明のオリゴヌクレオチドは、ホスホアミダイト法等で合
成することができる。合成にあっては、DNA/RNA
合成機を利用すれば便利である。
系を用いて行うことができる。すなわち、組み換えアデ
ノウイルスに混入するRCAをPCR法で検出するのに
有効と予想される塩基配列を持つオリゴヌクレオチド化
合物の適性をinvitro実験系において調べることができ
る。すなわち、in vitro実験系では密度勾配超遠心法で
精製されRCAの検出されない野生型ヒトアデノウイル
ス5型DNA、もしくは野生型ヒトアデノウイルス5型
DNAと組み換えアデノウイルスDNAをあらかじめ試
験管内で任意の比率で混合したものを該オリゴヌクレオ
チドを用いてPCRを行い、得られた反応産物をアガロ
ースゲル電気泳動により調べることが可能である。
〜4に記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプ
ライマーとして用いたPCR法にて増幅された増幅産物
は、1%アガロースゲル電気泳動後にエチジウムブロマ
イド染色で解析することが可能なほど大量に得られてい
ることが明らかになった。
さ、末端の塩基、グアニン及びシトシンの分布、増幅産
物の大きさ等に関する選定基準に基づき好適なオリゴヌ
クレオチドを設計し、これを用いることによって上記し
た顕著な結果が達成されたのである。これは、増幅され
る領域の塩基配列特有の性質によるものである。なお、
本発明においては、エチジウムブロマイドやサイバーグ
リーン染色によらずに、ラジオアイソトープや蛍光プロ
ーブを使ったドットブロット法等でも解析は可能である
が、この場合についても増幅産物の量が多いことは解析
の容易性の観点から見て有利である。このような解析を
行う場合、本発明のオリゴヌクレオチドは標識して使用
することもできる。
チドは標識して使用することもできる。このような標識
されたオリゴヌクレオチドは全て本発明の範囲内に属す
る。
表の配列番号1〜4の何れかに記載の塩基配列またはそ
れらと実質的に同一の塩基配列を有するオリゴヌクレオ
チドに標識を結合したものである。標識物としては放射
性物質や酵素、蛍光物質、発光物質、抗原、ハプテン、
酵素基質、不溶性担体、ビオチン・アビジン系標識など
の公知の標識を用いることができる。標識の仕方は末端
標識でも、配列の途中に標識してもよい。また、糖、リ
ン酸基、塩基部分への標識であってもよい。
ス5型E1AおよびE1B遺伝子を検出する場合、
(1)本発明のオリゴヌクレオチドをプローブとして検
出する方法、(2)本発明のオリゴヌクレオチドをプラ
イマーとしてDNAポリメラーゼ等により伸長反応を行
うことにより検出する方法がある。上記(2)の中の好
ましい態様によれば、本発明のオリゴヌクレオチドをプ
ライマーとして使用してPCRを行うことにより、目的
遺伝子を検出することができる。
オチドを標識化した標識核酸プローブを試料と混合し、
該プローブとヒトアデノウイルス5型E1A又はE1B
遺伝子とをハイブリダイズさせ、ハイブリッド体の標識
を適当な検出法で検出することにより、ヒトアデノウイ
ルス5型E1A又はE1B遺伝子を検出することができ
る。一方、上記(2)の場合、本発明のオリゴヌクレオ
チドをそのまま核酸プライマーとするか、または該オリ
ゴヌクレオチドを標識化した標識核酸プライマーを試料
と混合し、DNAポリメラーゼ等によりプライマーを伸
長させ(好ましくは、PCRにより標的配列を増幅させ
る)、得られたプライマー伸長物(PCRの場合には、
増幅産物)を直接測定するか、標識プローブを用いて測
定する。
オリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行うこ
とにより、ヒトアデノウイルス5型E1A又はE1B遺
伝子を特異的に増幅することができる。増幅反応に際し
ては反応時に放射性物質などの標識の結合したヌクレオ
チドを取り込ませる方法や、増幅産物を電気泳動により
分画して特異なバンドを検出することにより、ヒトアデ
ノウイルス5型E1A又はE1B遺伝子を容易に検出す
ることができる。特に、本発明のオリゴヌクレオチドを
用いた場合、ヒトアデノウイルス5型E1A遺伝子の増
幅産物と、E1B遺伝子の増幅産物とのサイズの相違に
より、電気泳動後に泳動距離の差異に基づいて、これら
2種の増幅産物を容易に判別することが可能である。ま
た、前述の標識オリゴヌクレオチドをプライマーとして
用いれば増幅産物を直接検出することも可能である。
イマーとして用いたPCRによるヒトアデノウイルス5
型E1A又はE1B遺伝子の検出方法について詳細に説
明する。目的のヒトアデノウイルス5型E1A又はE1
B遺伝子の存在の有無を検知しようとする試料として
は、遺伝子治療や基礎研究の分野で使用するための組み
換えアデノウイルス調製物が挙げられる。この組み換え
ウイルスを調製する段階で宿主細胞である293細胞の
E1遺伝子と組み換えアデノウイルスとの間で相同組み
換えがおこり、自律増殖性アデノウイルス(RCA)が
生じる場合があることから、本発明の検出方法によって
組み換えアデノウイルスの品質管理を行うことができ
る。あるいはまた、ヒトアデノウイルスを感染させた動
物細胞、感染動物より得られる臓器、血液等、患者より
得られる血液、唾液、尿等の生体試料を使用することも
できる。この中でも血液を使用すれば感染動物、患者の
連続診断を簡便に行うことができる。血液成分中のヒト
アデノウイルスの検出には、核酸成分を抽出することが
好ましい。血液成分等からの核酸成分の調製法は当業者
に公知である。
10mMTris―HCl、3mMMgCl2 、0.4
5%Tween20、0.45%NP40、1mg/m
lProteinase K)に細胞を懸濁し、65℃
で1晩インキュベートし、その後、98℃で10分間イ
ンキュベートすることによりProteinaseKの
失活およびDNAの変性を行う。その溶液をフェノール
処理3回、クロロホルム処理2回を行った後、エタノー
ル沈殿法によりDNAを回収することができる。このよ
うにして得られるヒトアデノウイルス5型E1A又はE
1B遺伝子のDNAを含む試料、及び本発明のプライマ
ーセットを用いてPCR法を行うことができる。
ドから成るプライマーセットを加えることによって、試
料中の目的とするヒトアデノウイルス5型E1A又はE
1B遺伝子が存在すれば、該プライマーで挟まれた領域
を増幅することができる。PCRの条件は適宜設定する
ことができ、例えば、TOYOBO KOD Dash DNAポリメラー
ゼを用いれば、94℃で30秒(変性)、62℃で2秒
(アニーリング)、74℃で30秒(伸長)を1サイク
ルとし、全部で30サイクルとすることも可能である。
但し、ここに示した条件は一例に過ぎず、用いる酵素、
反応温度、反応時間、サイクル数などは適宜変更するこ
とも可能である。
動法、あるいは標識プローブを用いるドットブロットハ
イブリダイゼーション等により検出することができる。
プローブとしては増幅領域内でプローブDNAを設計、
作製することができる。
ーセットはキットとして供給することにより、ヒトアデ
ノウイルス5型E1A又はE1B遺伝子の検出を簡便に
行うことができる。本発明のヒトアデノウイルス5型E
1A又はE1B遺伝子検出用キットは、本発明のオリゴ
ヌクレオチド又はその標識オリゴヌクレオチドを含むも
のである。また、本発明のキット中には、PCR用試
薬、電気泳動試薬、DNA抽出用試薬などを含めておく
ことにより、試料中のヒトアデノウイルス5型E1A又
はE1B遺伝子の検出をより迅速・簡便・高感度に行う
ことができる。なおキット中の試薬は溶液でも凍結乾燥
物でも良い。
l、KCl、MgCl2、各種dNTP、TaqDNAポリメラーゼ、
水等が挙げられる。電気泳動用試薬としては、例えば、
アガロース又はポリアクリルアミドゲル、ローディング
緩衝液、エチジウムブロマイド染色用試薬等が挙げられ
る。DNA抽出用試薬としては、Proteinase
Kなどが挙げられる。以下の実施例により本発明をさ
らに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定
されることはない。
列を公開の遺伝子データベースであるGenBankから入手
した。次にE1AおよびE1Bの遺伝子の領域を特定
し、それらの領域を特異的に検出し得る領域に対しての
相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチド化合物
を、先に提案した方法を用いて選択した(井上順子ら、
別冊「実験医学PCR法の最新技術」18-24頁(1995);向井
博之ら、「蛋白質核酸酵素 PCR法最前線」41巻 437-45
2頁 (1996))。すなわち、野生型ヒトアデノウイルス
5型のE1A遺伝子に対しては配列番号5で表される塩
基配列について検索した結果、次の2種の核酸化合物が
オリゴヌクレオチド化合物候補として選出された。 E1AF2:CTGATCGAAGAGGTACTGGCTGATAATCTTCCACC (配列番号1) E1AR2:TTATGGCCTGGGGCGTTTACAGCTCAAGTCCAAAG (配列番号2)
1B遺伝子に対しては配列番号6で表される塩基配列に
ついて検索した結果、次の2種の核酸化合物がオリゴヌ
クレオチド化合物候補として選出された。 E1BF1:AGTTTTATAAAGGATAAATGGAGCGAAGAAACCC (配列番号3) E1BR1:AGTGGTCAGCTGCTCTATGGAATACTTCTGCGCC (配列番号4)
ェン(株)にてオリゴヌクレオチド化合物を受託合成し
作製した。
ス5型DNA(5.3×10 0〜5.3×106copies)を鋳型とし、
該オリゴヌクレオチドをプライマーとしてKODDash DNA
ポリメラーゼ(東洋紡績(株))でPCR反応(94℃
30秒、62℃2秒、74℃30秒、30サイクル)を
行った。さらにin vitroの再構成実験として、密度勾配
超遠心法で精製された野生型ヒトアデノウイルス5型D
NA(5.3×100〜5.3×106copies)と密度勾配超遠心法で
精製されRCAの検出されない組み換えアデノウイルス
AxCAEGFPのDNA(1×10 8copies)をあらかじめ混合した
ものを鋳型として上記と同様にPCR反応を行った。
で電気泳動し、0.5%エチジウムブロマイドで染色
し、UVイルミネーターで検出した。結果を図1及び図
2に示す。図1及び図2の結果から分かるように、組み
換えアデノウイルスDNAの混入の有無に関わらず、5.
3×102copiesの野生型ヒトアデノウイルス5型DNAの
鋳型条件でE1AまたはE1B遺伝子の検出ができた。
これは対照実験に用いたプライマーの結果とほぼ同等の
効果を示した。ここで、1f、1rは対照実験用プライ
マーである(Dion, L.D.ら「Journal of Virological M
ethods」 56巻99-107頁 (1996))。さらに、配列番号1
〜4を同時にPCR反応に用いてアデノウイルスのE1A
とE1B遺伝子を同時に検出することができた。
マーとして用いたPCR法によれば、ヒトアデノウイル
ス5型E1AおよびE1B遺伝子を特異的に検出でき
る。更にラジオアイソトープを使わずに、アガロースゲ
ル電気泳動によるエチジウムブロマイド染色のみで、高
感度にヒトアデノウイルス5型E1AおよびE1B遺伝
子を検出することができる。従って、簡便にかつ短時間
にヒトアデノウイルス5型E1AおよびE1B遺伝子の
高感度検出が可能である。
ることにより、高力価組み換えアデノウイルスに混入す
るRCAをPCR法で簡便にしかも高感度に検出するこ
とができる。従って、本発明のオリゴヌクレオチドは、
信頼性がある正確なタンパク質発現実験の結果を得るた
めに、感染実験に用いられる組み換えアデノウイルス液
のRCAの混入を検査することに利用できる。また、組
み換えウイルス作製において多数の組み換え体ウイルス
候補のクローンをスクリーニングする場合において実施
されるRCA混入検査に利用することができる。
(5.3×100〜5.3×106copies)を鋳型として、それぞれの
プライマーでPCR反応を行いE1AまたはE1B遺伝
子を検出した結果を示す。
(5.3×100〜5.3×106copies)と組み換えアデノウイルス
AxCAEGFP DNA(1×108copies)をあらかじめ混合したもの
を鋳型として、それぞれのプライマーでPCR反応を行
いE1AまたはE1B遺伝子を検出した結果を示す。最
左レーンに挿入遺伝子検出用のプライマーを用いた結果
を示す。
Claims (9)
- 【請求項1】 配列表の配列番号1〜4の何れかに記載
の塩基配列またはそれらと実質的に同一の塩基配列を有
する、ヒトアデノウイルス5型E1A又はE1B遺伝子
検出用オリゴヌクレオチド。 - 【請求項2】 下記の何れかに記載の塩基配列を有す
る、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。 (1)配列表の配列番号1〜4の何れかに記載の塩基配
列; (2)配列表の配列番号1〜4の何れかの塩基配列にお
いてTをUに置換した塩基配列; (3)上記(1)又は(2)に記載の塩基配列と少なく
とも70%以上の相同性を有する塩基配列であって、ヒ
トアデノウイルス5型E1A又はE1B遺伝子を特異的
に検出できる塩基配列;又は、 (4)配列表の配列番号1〜4の何れかの塩基配列にお
いて1〜数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された
塩基配列であって、ヒトアデノウイルス5型E1A又は
E1B遺伝子を特異的に検出できる塩基配列; - 【請求項3】 配列表の配列番号1に記載の塩基配列ま
たはそれと実質的に同一の塩基配列を有するオリゴヌク
レオチド、及び配列表の配列番号2に記載の塩基配列ま
たはそれと実質的に同一の塩基配列を有するオリゴヌク
レオチドから成るヒトアデノウイルス5型E1A遺伝子
検出用プライマーセット。 - 【請求項4】 配列表の配列番号3に記載の塩基配列ま
たはそれと実質的に同一の塩基配列を有するオリゴヌク
レオチド、及び配列表の配列番号4に記載の塩基配列ま
たはそれと実質的に同一の塩基配列を有するオリゴヌク
レオチドから成るヒトアデノウイルス5型E1B遺伝子
検出用プライマーセット。 - 【請求項5】 実質的に同一の塩基配列が、下記の何れ
かに記載の塩基配列である、請求項3又は4に記載のプ
ライマーセット。 (1)当該塩基配列においてTをUに置換した塩基配
列; (2)当該塩基配列と少なくとも70%以上の相同性を
有する塩基配列であって、ヒトアデノウイルス5型E1
A又はE1B遺伝子を特異的に検出できる塩基配列;又
は、 (3)当該塩基配列において1〜数個の塩基が欠失、置
換及び/又は付加された塩基配列であって、ヒトアデノ
ウイルス5型E1A又はE1B遺伝子を特異的に検出で
きる塩基配列; - 【請求項6】 請求項1又は2に記載のオリゴヌクレオ
チドあるいは請求項3から5の何れかに記載のプライマ
ーセットを用いて試料中のヒトアデノウイルス5型E1
A又はE1B遺伝子を検出することを含む、ヒトアデノ
ウイルス5型E1A又はE1B遺伝子の検出方法。 - 【請求項7】 試料中の核酸を鋳型として、請求項3か
ら5の何れかに記載のプライマーセットを用いてPCR
を行うことにより、試料中のヒトアデノウイルス5型E
1A又はE1B遺伝子を検出することを含む、ヒトアデ
ノウイルス5型E1A又はE1B遺伝子の検出方法。 - 【請求項8】 請求項1又は2に記載のオリゴヌクレオ
チド、又は請求項3から5の何れかにプライマーセット
を含む、ヒトアデノウイルス5型E1A又はE1B遺伝
子検出用試薬。 - 【請求項9】 請求項1又は2に記載のオリゴヌクレオ
チド、又は請求項3から5の何れかにプライマーセット
を含む、ヒトアデノウイルス5型E1A又はE1B遺伝
子検出用キット。
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JP2002042829A JP3650797B2 (ja) | 2002-02-20 | 2002-02-20 | ヒトアデノウイルス5型e1aおよびe1b遺伝子検出用オリゴヌクレオチド |
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CN114277185A (zh) * | 2021-11-06 | 2022-04-05 | 江汉大学 | 一种腺病毒的mnp标记组合、引物对组合、试剂盒及其应用 |
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- 2002-02-20 JP JP2002042829A patent/JP3650797B2/ja not_active Expired - Fee Related
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CN114231663A (zh) * | 2021-11-24 | 2022-03-25 | 和元生物技术(上海)股份有限公司 | 一种快速定量腺病毒的E1A基因拷贝数的qPCR方法 |
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