JP2003231799A - ポリ乳酸系樹脂組成物、成形品及びその製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂組成物、成形品及びその製造方法

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JP2003231799A
JP2003231799A JP2002032195A JP2002032195A JP2003231799A JP 2003231799 A JP2003231799 A JP 2003231799A JP 2002032195 A JP2002032195 A JP 2002032195A JP 2002032195 A JP2002032195 A JP 2002032195A JP 2003231799 A JP2003231799 A JP 2003231799A
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polylactic acid
whiskers
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temperature
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Yuji Urayama
裕司 浦山
Yasuhiro Fujii
康宏 藤井
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた引張強度、引張弾性率、曲げ強度、曲
げ弾性率及び耐熱性を有する成形品が、成形性良く高い
生産効率で得られるポリ乳酸系樹脂組成物、前記組成物
からの耐熱性ポリ乳酸系樹脂成形品及びその製造方法を
提供する。 【解決手段】 乳酸系ポリマー(A)100重量部と、
ウィスカー(B)5〜100重量部とを含むポリ乳酸系
樹脂組成物。ウィスカー(B)は、好ましくは、炭酸カ
ルシウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、珪
酸カルシウムウィスカー及びホウ酸アルミニウムウィス
カーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。ポ
リ乳酸系樹脂組成物を溶融し、DSCにおけるガラス転
移温度以上融解開始温度以下の範囲に温度設定された成
形機の金型に充填し、結晶化させながら成形する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた引張強度、
引張弾性率、曲げ強度、曲げ弾性率及び耐熱性を有する
成形品が、成形性良く高い生産効率で得られるポリ乳酸
系樹脂組成物及び該樹脂から得られる耐熱性成形品に関
する。さらに本発明は、耐熱性ポリ乳酸系樹脂成形品の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自然環境保護の見地から、自然環
境中で分解する生分解性ポリマー及びその成形品が求め
られ、脂肪族ポリエステルなどの自然分解性樹脂の研究
が活発に行われている。特に、乳酸系ポリマーは融点が
130〜180℃と十分に高く、しかも透明性に優れる
ため、包装材料や透明性を生かした成形品等としての用
途に使用されている。また、乳酸系ポリマーの主な原料
となる乳酸は、植物等の再生可能資源から得られ、石油
等の枯渇資源を使用しない点からも大いに期待されてい
る。
【0003】しかしながら、乳酸系ポリマーの射出成形
等による成形品は、剛性に優れているが、耐熱性が低
く、あるいは耐熱性と耐衝撃性が共に低く、例えば包装
容器では熱湯又は電子レンジを使用することができず、
用途が限定されている。また、CDケースやカセットケ
ース等の収納物品等では高温になると熱変形を起こし、
自動車内等で使用することができない。
【0004】乳酸系ポリマー成形品に耐熱性を付与する
ためには成形加工時に金型内固化を長時間にするか、ま
た、成形後に成形品をアニール処理して高度に結晶化す
る必要があった。しかし、成形時における長時間の固化
工程は実用的でなく、かつ結晶化が不十分になり易く、
また、アニールによる後結晶化は成形品が結晶化する過
程で変形しやすい欠点が有る。
【0005】結晶化速度を上げる方法として、例えば、
特開昭60−86156号公報には、ポリエチレンテレ
フタレート(PET)の結晶化を促進するため、結晶核
剤としてテレフタル酸とレゾルシンを主な構成単位とす
る全芳香族ポリエステル微粉末を添加することが記載さ
れている。このように、結晶化を促進させるための核剤
を添加する方法が知られている。
【0006】一方、生分解性を有するポリマーにこのよ
うな添加剤を加える例として、特開平5−70696号
公報、特表平4−504731号公報(WO 90/0
1521号公報)、米国特許5180765号明細書、
特表平6−504799号公報、特開平4−22045
6号公報が挙げられる。
【0007】特開平5−70696号公報には、プラス
チック製容器の材料として、ポリ−3−ヒドロキシブチ
レート/ポリ−3−ヒドロキシバリレート共重合体、ポ
リカプロラクトンあるいはポリ乳酸のような生分解性プ
ラスチックに、平均粒径20μm以下の炭酸カルシウ
ム、タルクを重量比で10〜40%混合することが開示
されている。しかし、この技術は多量の無機充填剤の添
加により廃棄後の生分解性プラスチックの分解を促進す
るものであり、ポリマーを結晶化させて耐熱性を向上さ
せるものではない。
【0008】特表平4−504731号公報(WO 9
0/01521号公報)には、ラクチド熱可塑性プラス
チックへの、シリカ、カオリナイトのような無機化合物
の充填剤の添加により、硬度、強度、温度抵抗性の性質
を変えることが記載されており、その実施例には、L、
DL−ラクチド共重合体に核剤として乳酸カルシウム5
重量%を温度170℃の加熱ロールで5分間ブレンドし
たところ、そのシートは剛性、強度がありかつ曇ってい
て、結晶化度が増加したことが記載されている。
【0009】特表平6−504799号公報には、核剤
として乳酸塩、安息香酸塩が記載されており、その実施
例には、ポリラクチドコポリマーに1%の乳酸カルシウ
ムを配合し、2分間の滞留時間で約85℃に保持した型
で射出成形したが、結晶化が不十分のため、更に型中に
おいて約110〜135℃でアニーリングした例が記載
されている。
【0010】特開平8−193165号公報には、実際
に乳酸系ポリマーに核剤として通常のタルク、シリカ、
乳酸カルシウム等を使用して射出成形を試みたが、結晶
化速度が遅く、また成形物が脆いため、実用に耐えうる
成形物を得ることができない。従って、このような乳酸
系ポリマーは、通常のタルク、シリカ等を用いて一般の
射出成形、ブロー成形、圧縮成形に使用しても、結晶化
速度が遅く、得られる成形物の実用耐熱性が100℃以
下と低く耐衝撃性も強くないために用途面に制約がある
と記載されている。
【0011】特開平4−220456号公報には、核剤
としてポリグリコール酸及びその誘導体をポリL−ラク
チド等に加え、結晶化速度を上昇させることにより、射
出成形サイクル時間を短縮させ、かつ、優れた力学的性
質を有することが記載されている。射出成形の例とし
て、核剤なしの場合の結晶化温度は、冷却時間60秒で
22.6%、核剤添加で45.5%が例示されている。
しかし、特開平8−193165号公報によると、実際
に乳酸系ポリマーに核剤を入れないで射出成形を試みた
ところ、特開平4−220456号公報に記載されてい
るような、金型温度がガラス転移温度以上の条件では、
成形することができなかったと記載されている。
【0012】特開平11−106628号公報には、乳
酸系ポリマーに植物系ワックスを混合溶融し、結晶化さ
せながら成形する技術が開示されている。この技術は、
耐熱性を付与した成形品を提供するものであり、極めて
有意義な技術である。しかし、この技術においては、結
晶化しても成形品の剛性が低く、成形品を脱型すること
が容易ではなく、成形サイクルを長くする必要があっ
た。成形サイクルが長くなると生産性が落ちるため、実
用に適さない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の従来技術の問題を解決し、優れた引張強度、引張弾性
率、曲げ強度、曲げ弾性率及び耐熱性を有する成形品
が、成形性良く高い生産効率で得られるポリ乳酸系樹脂
組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、
耐熱性に優れ、引張強度、引張弾性率、曲げ強度及び曲
げ弾性率にも優れるポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形
品を提供することにある。さらに、本発明の目的は、ポ
リ乳酸樹脂組成物から、耐熱性に優れ、引張強度、引張
弾性率、曲げ強度及び曲げ弾性率にも優れるポリ乳酸系
樹脂成形品を、成形性良く高い生産効率で製造する方法
を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討し
た結果、ポリ乳酸系樹脂組成物にウィスカーを配合する
ことにより、上記目的を達成し得ることを見いだし、本
発明を完成するに至った。
【0015】すなわち本発明は、乳酸系ポリマー(A)
100重量部と、ウィスカー(B)5〜100重量部と
を含むポリ乳酸系樹脂組成物である。
【0016】本発明は、ウィスカー(B)が、炭酸カル
シウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、珪酸
カルシウムウィスカー及びホウ酸アルミニウムウィスカ
ーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、前記
のポリ乳酸系樹脂組成物である。
【0017】本発明は、ウィスカー(B)の平均繊維径
が5.0μm以下で、平均繊維長が50μm以下であ
る、前記のポリ乳酸系樹脂組成物である。
【0018】本発明には、乳酸系ポリマー(A)100
重量部と、ウィスカー(B)として、炭酸カルシウムウ
ィスカー5〜100重量部とを含むポリ乳酸系樹脂組成
物が含まれ、前記炭酸カルシウムウィスカーの平均繊維
径が5μm以下、平均繊維長が1〜50μmである前記
ポリ乳酸系樹脂組成物が含まれる。
【0019】本発明には、乳酸系ポリマー(A)100
重量部と、ウィスカー(B)として、チタン酸カリウム
ウィスカー5〜100重量部とを含むポリ乳酸系樹脂組
成物が含まれ、前記チタン酸カリウムウィスカーの平均
繊維径が5μm以下、平均繊維長が1〜50μmである
前記ポリ乳酸系樹脂組成物が含まれる。
【0020】本発明には、乳酸系ポリマー(A)100
重量部と、ウィスカー(B)として、珪酸カルシウムウ
ィスカー5〜100重量部とを含むポリ乳酸系樹脂組成
物が含まれ、前記珪酸カルシウムウィスカーの平均繊維
径が5μm以下、平均繊維長が1〜50μmである前記
ポリ乳酸系樹脂組成物が含まれる。
【0021】本発明には、乳酸系ポリマー(A)100
重量部と、ウィスカー(B)として、ホウ酸アルミニウ
ムウィスカー5〜100重量部とを含むポリ乳酸系樹脂
組成物が含まれ、前記ホウ酸アルミニウムウィスカーの
平均繊維径が5μm以下、平均繊維長が1〜50μmで
ある前記ポリ乳酸系樹脂組成物が含まれる。
【0022】本発明は、引張弾性率が4GPa以上、及
び/又は曲げ弾性率が5GPa以上である、前記のポリ
乳酸系樹脂組成物である。
【0023】本発明は、前記のいずれかのポリ乳酸系樹
脂組成物からなるポリ乳酸系樹脂成形品である。成形品
としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、真
空成形品、圧縮成形品等が挙げられる。これらには、各
種容器や各種部品、その他の成形品が含まれる。
【0024】本発明は、前記のいずれかのポリ乳酸系樹
脂組成物を溶融し、走査型示差熱量計(DSC)におけ
るガラス転移温度以上融解開始温度以下の範囲に温度設
定された成形機の金型に充填し、結晶化させながら成形
することを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂成形品の製造方
法である。本発明において、走査型示差熱量計(DS
C)における温度値は、昇温過程で測定されたものであ
る。
【0025】本発明は、金型温度が、走査型示差熱量計
(DSC)における結晶化開始温度以上結晶化終了温度
以下の範囲に温度設定されている、前記のポリ乳酸系樹
脂成形品の製造方法である。
【0026】
【発明の実施の形態】まず、本発明のポリ乳酸系樹脂組
成物に含まれる乳酸系ポリマー(A)について説明し、
次に、ウィスカー(B)について説明する。
【0027】本発明において乳酸系ポリマー(A)と
は、ポリ乳酸ホモポリマーの他、ポリ乳酸コポリマーを
含む。また、ポリ乳酸ホモポリマー及び/又はポリ乳酸
コポリマーを主体とするブレンドポリマーであっても良
い。
【0028】乳酸系ポリマー(A)の重量平均分子量
は、一般に5万〜50万、好ましくは10万〜25万で
ある。重量平均分子量が5万未満では、実用上必要な物
性が得られず、一方、重量平均分子量が50万を超える
と、成形性が悪くなり易い。
【0029】また、乳酸系ポリマー(A)におけるL−
乳酸単位及びD−乳酸単位の構成モル比L/Dは、10
0/0〜0/100のいずれであっても良いが、高い融
点を得るにはL−乳酸あるいはD−乳酸のいずれかの単
位を75モル%以上、更に高い融点を得るにはL−乳酸
あるいはD−乳酸のいずれかの単位を90モル%以上含
むことが好ましい。
【0030】乳酸コポリマーは、乳酸モノマー又はラク
チドと共重合可能な他の成分とが共重合されたものであ
る。このような他の成分としては、2個以上のエステル
結合形成性の官能基を持つジカルボン酸、多価アルコー
ル、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等、及びこれら種
々の構成成分より成る各種ポリエステル、各種ポリエー
テル、各種ポリカーボネート等が挙げられる。
【0031】ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピ
ン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソ
フタル酸等が挙げられる。
【0032】多価アルコールの例としては、ビスフェノ
ールにエチレンオキサイドを付加反応させたものなどの
芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレ
ングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オ
クタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロ
ールプロパン、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族多
価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレング
リコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレング
リコール等のエーテルグリコール等が挙げられる。
【0033】ヒドロキシカルボン酸の例としては、グリ
コール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸、その他特開平
6−184417号公報に記載されているもの等が挙げ
られる。
【0034】ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプ
ロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロ
ピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチ
ロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が
挙げられる。
【0035】乳酸系ポリマーは、従来公知の方法で合成
されるものである。すなわち、特開平7−33861号
公報、特開昭59−96123号公報、高分子討論会予
稿集第44巻、3198−3199頁に記載のような乳
酸モノマーからの直接脱水縮合、又は乳酸環状二量体ラ
クチドの開環重合によって合成することができる。
【0036】直接脱水縮合を行う場合、L−乳酸、D−
乳酸、DL−乳酸、又はこれらの混合物のいずれの乳酸
を用いても良い。また、開環重合を行う場合において
も、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、m
eso−ラクチド、又はこれらの混合物のいずれのラク
チドを用いても良い。
【0037】ラクチドの合成、精製及び重合操作は、例
えば米国特許4057537号明細書、公開欧州特許出
願第261572号明細書、Polymer Bulletin, 14, 49
1-495 (1985)、及び Makromol Chem., 187, 1611-1628
(1986)等の文献に様々に記載されている。
【0038】この重合反応に用いる触媒は、特に限定さ
れるものではないが、公知の乳酸重合用触媒を用いるこ
とができる。例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリ
ル酸スズ、ジラウリル酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジ
ステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α−ナフトエ酸
スズ、β−ナフトエ酸スズ、オクチル酸スズ等のスズ系
化合物、粉末スズ、酸化スズ; 亜鉛末、ハロゲン化亜
鉛、酸化亜鉛、有機亜鉛系化合物; テトラプロピルチ
タネート等のチタン系化合物; ジルコニウムイソプロ
ポキシド等のジルコニウム系化合物; 三酸化アンチモ
ン等のアンチモン系化合物; 酸化ビスマス(III) 等の
ビスマス系化合物; 酸化アルミニウム、アルミニウム
イソプロポキシド等のアルミニウム系化合物等を挙げる
ことができる。
【0039】これらの中でも、スズ又はスズ化合物から
なる触媒が活性の点から特に好ましい。これらの触媒の
使用量は、例えば開環重合を行う場合、ラクチドに対し
て0.001〜5重量%程度である。
【0040】重合反応は、上記触媒の存在下、触媒種に
よって異なるが、通常100〜220℃の温度で行うこ
とができる。また、特開平7−247345号公報に記
載のような2段階重合を行うことも好ましい。
【0041】ブレンドポリマーとは、ポリ乳酸ホモポリ
マー及び/又は乳酸コポリマーとポリ乳酸以外の脂肪族
ポリエステルとを混合、溶融して得られた混合物であ
り、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルのブレンドによ
り成形品に柔軟性、耐衝撃性を付与することができる。
ブレンドの重量割合は、通常、ポリ乳酸ホモポリマー及
び/又は乳酸コポリマー100重量部に対して、ポリ乳
酸以外の脂肪族ポリエステル10〜100重量部程度で
ある。
【0042】本発明において、ポリ乳酸以外の脂肪族ポ
リエステル(以下、単に「脂肪族ポリエステル」とい
う)は、1種のポリマー又は2種以上のポリマーの複合
でも良く、例えばポリマーとしては、脂肪族カルボン酸
成分と脂肪族アルコール成分とからなるポリマーや、ε
−カプロラクトンなど環状無水物を開環重合して得られ
た脂肪族ヒドロキシカルボン酸ポリマーなどが挙げられ
る。これらを得るには、直接重合して高分子量物を得る
方法と、オリゴマー程度に重合した後、鎖延長剤等で高
分子量物を得る間接的な方法がある。また脂肪族ポリエ
ステルは、主として上記脂肪族モノマー成分を含んで構
成されるポリマーであれば、共重合体であってもよく、
あるいは他樹脂との混合物であってもよい。
【0043】本発明に使用される脂肪族ポリエステル
は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるこ
とが好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク
酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸
などの化合物、又はこれらの無水物や誘導体が挙げられ
る。一方、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコー
ル、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオ
ール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール系
化合物、及びこれらの誘導体が一般的である。これらの
脂肪族ジカルボン酸や脂肪族ジオールはいずれも、炭素
数2〜10のアルキレン基、シクロ環基又はシクロアル
キレン基をもつモノマー化合物である。これら脂肪族ジ
カルボン酸及び脂肪族ジオールの中から選択されたモノ
マー化合物の縮重合により脂肪族ポリエステルが製造さ
れる。カルボン酸成分或いはアルコール成分のいずれに
おいても、2種以上用いても構わない。
【0044】また、溶融粘度の向上のためにポリマー中
に分岐を設ける目的で、脂肪族ポリエステルの成分とし
て、3官能以上の多官能のカルボン酸、アルコール或い
はヒドロキシカルボン酸を用いても構わない。これらの
成分は、多量に用いると得られるポリマーが架橋構造を
持ち、熱可塑性でなくなったり、熱可塑性であっても部
分的に高度に架橋構造をもったミクロゲルを生じる場合
がある。従って、これら3官能以上の成分は、ポリマー
中に含まれる割合はごくわずかで、ポリマーの化学的性
質、物理的性質を大きく左右するものではない程度に含
まれる。多官能成分としては、リンゴ酸、酒石酸、クエ
ン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸或いはペンタエ
リスリットやトリメチロールプロパンなどを用いること
ができる。
【0045】脂肪族ポリエステルの製造方法のうち、直
接重合法は、上記の化合物を選択して化合物中に含まれ
る、あるいは重合中に発生する水分を除去しながら高分
子量物を得る方法である。また、間接重合法は、上記化
合物を選択してオリゴマー程度に重合した後、分子量増
大を目的として、少量の鎖延長剤、例えばヘキサメチレ
ンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キ
シリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシ
アネートなどのジイソシアネート化合物を使用して高分
子量化する方法である。あるいはカーボネート化合物を
用いて脂肪族ポリエステルカーボネートを得る方法があ
る。
【0046】本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、上記乳
酸系ポリマー(A)100重量部に、ウィスカー(B)
5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部を含
む。
【0047】本発明で用いるウィスカー(B)として
は、金属(Al3 Ni、Ni3 Alなど)、金属酸化
物、硫化物、窒化物(Si3 4 、AlNなど)、炭化
物(SiCなど)等からなるウィスカーが挙げられる。
これらのうち、金属酸化物ウィスカーが好ましい。
【0048】本発明で用いるウィスカー(B)として
は、特に限定されることなく、炭酸カルシウムウィスカ
ー、チタン酸カリウムウィスカー、珪酸カルシウムウィ
スカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が好ましく挙
げられる。
【0049】これらのウィスカーのうち、1種を単独で
用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を
併用する場合には、それらの合計量が乳酸系ポリマー
(A)100重量部に対して、5〜100重量部、好ま
しくは10〜80重量部となるようにする。上記配合量
で乳酸系ポリマー(A)中にウィスカー(B)を配合す
ることにより、ポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化後の剛性
が高くなり、成形時における成形品の脱型が容易となり
高い生産効率での成形が可能となると共に、高い強度及
び耐熱性を有する成形品が得られる。
【0050】炭酸カルシウムウィスカーは、化学式Ca
CO3 で表わされる炭酸カルシウムの針状結晶体であ
る。その形状としては、平均繊維径が5μm以下、好ま
しくは3μm以下、さらに好ましくは0.5〜1.0μ
mであり、乳酸系ポリマー(A)への配合前の平均繊維
長が1〜50μm、好ましくは10〜40μm、さらに
好ましくは20〜30μmである。平均繊維径が5μm
を超えると、アスペクト比が小さくなり、必要な物性が
得られにくくなる傾向があり、一方、平均繊維径が0.
5μmに満たないと、樹脂組成物の結晶化後の剛性を高
める効果が得られにくい。平均繊維長が50μmを超え
ると、成形時の樹脂組成物の流動性が低下して成形加工
性が低下する傾向があり、一方、平均繊維長が1μmに
満たないと、結晶化後の剛性を高める効果が得られにく
い。
【0051】ポリ乳酸系樹脂組成物における炭酸カルシ
ウムウィスカーの配合量は、乳酸系ポリマー(A)10
0重量部当たり5〜100重量部、好ましくは10〜8
0重量部、さらに好ましくは20〜60重量部である。
この配合量が5重量部より少ないと、樹脂組成物の結晶
化後の剛性を高める効果が不十分であり、一方、100
重量部より多くなると、樹脂組成物の流動性が低下して
成形加工性が劣り、さらには成形品の強度が低下する。
【0052】本発明において、炭酸カルシウムウィスカ
ーとして、乳酸系ポリマー(A)との親和性を高め、補
強効果をより向上させるために、シランカップリング剤
等で表面処理を施したものを用いてもよい。
【0053】チタン酸カリウムウィスカーは、一般式K
2 O・nTiO2 で表わされるチタン酸カリウムの針状
結晶体である。チタン酸カリウムとして例えば、K2
・6TiO2 、K2 O・8TiO2 等の化学式で表され
るものが挙げられ、化学式K 2 O・8TiO2 で表わさ
れるものがより好ましい。
【0054】チタン酸カリウムウィスカーの形状として
は、平均繊維径が5μm以下、好ましくは3μm以下、
さらに好ましくは0.1〜1.0μmであり、乳酸系ポ
リマー(A)への配合前の平均繊維長が1〜50μm、
好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは10〜20
μmである。平均繊維径が5μmを超えると、アスペク
ト比が小さくなり、必要な物性が得られにくくなる傾向
があり、一方、平均繊維径が0.1μmに満たないと、
樹脂組成物の結晶化後の剛性を高める効果が得られにく
い。平均繊維長が50μmを超えると、成形時の樹脂組
成物の流動性が低下して成形加工性が低下する傾向があ
り、一方、平均繊維長が1μmに満たないと、結晶化後
の剛性を高める効果が得られにくい。
【0055】ポリ乳酸系樹脂組成物におけるチタン酸カ
リウムウィスカーの配合量は、乳酸系ポリマー(A)1
00重量部当たり5〜100重量部、好ましくは10〜
80重量部、さらに好ましくは20〜50重量部であ
る。この配合量が5重量部より少ないと、樹脂組成物の
結晶化後の剛性を高める効果が不十分であり、一方、1
00重量部より多くなると、樹脂組成物の流動性が低下
して成形加工性が劣り、さらには成形品の強度が低下す
る。
【0056】本発明において、チタン酸カリウムウィス
カーとして、乳酸系ポリマー(A)との親和性を高め、
補強効果をより向上させるために、シランカップリング
剤等で表面処理を施したものを用いてもよい。
【0057】珪酸カルシウムウィスカーは、化学式Ca
SiO3 で表される珪酸カルシウムの針状結晶体であ
る。その形状としては、平均繊維径が5μm以下、好ま
しくは好ましくは2〜5μmであり、乳酸系ポリマー
(A)への配合前の平均繊維長が1〜50μm、好まし
くは5〜40μm、さらに好ましくは20〜30μmで
ある。平均繊維径が5μmを超えると、アスペクト比が
小さくなり、必要な物性が得られにくくなる傾向があ
り、一方、平均繊維径が2μmに満たないと、樹脂組成
物の結晶化後の剛性を高める効果が得られにくい。平均
繊維長が50μmを超えると、成形時の樹脂組成物の流
動性が低下して成形加工性が低下する傾向があり、一
方、平均繊維長が1μmに満たないと、結晶化後の剛性
を高める効果が得られにくい。
【0058】ポリ乳酸系樹脂組成物における珪酸カルシ
ウムウィスカーの配合量は、乳酸系ポリマー(A)10
0重量部当たり5〜100重量部、好ましくは10〜8
0重量部、さらに好ましくは20〜60重量部である。
この配合量が5重量部より少ないと、樹脂組成物の結晶
化後の剛性を高める効果が不十分であり、一方、100
重量部より多くなると樹脂組成物の流動性が低下して成
形加工性が劣り、さらには成形品の強度が低下する。
【0059】本発明において、珪酸カルシウムウィスカ
ーとして、乳酸系ポリマー(A)との親和性を高め、補
強効果をより向上させるために、シランカップリング剤
等で表面処理を施したものを用いてもよい。
【0060】ホウ酸アルミニウムウィスカーは、一般式
nAl2 3 ・mB2 3 で表されるホウ酸アルミニウ
ムの針状結晶体である。ホウ酸アルミニウムウィスカー
として例えば、9Al2 3 ・2B2 3 、2Al2
3 ・B2 3 、Al2 3 ・B2 3 等の化学式で表わ
されるものが挙げられ、化学式9Al2 3 ・2B2
3 で表わされるものがより好ましい。
【0061】ホウ酸アルミニウムウィスカーの形状とし
ては、平均繊維径が5μm以下、好ましくは3μm以
下、さらに好ましくは0.5〜1.0μmであり、乳酸
系ポリマー(A)への配合前の平均繊維長が1〜50μ
m、好ましくは5〜40μm、さらに好ましくは10〜
30μmである。平均繊維径が5μmを超えると、アス
ペクト比が小さくなり、必要な物性が得られにくくなる
傾向があり、一方、平均繊維径が0.5μmに満たない
と、樹脂組成物の結晶化後の剛性を高める効果が得られ
にくい。平均繊維長が50μmを超えると、成形時の樹
脂組成物の流動性が低下して成形加工性が低下する傾向
があり、一方、平均繊維長が1μmに満たないと、結晶
化後の剛性を高める効果が得られにくい。
【0062】ポリ乳酸系樹脂組成物におけるホウ酸アル
ミニウムウィスカーの配合量は、乳酸系ポリマー(A)
100重量部当たり5〜100重量部、好ましくは10
〜80重量部、さらに好ましくは20〜40重量部であ
る。この配合量が5重量部より少ないと、樹脂組成物の
結晶化後の剛性を高める効果が不十分であり、一方、1
00重量部より多くなると、樹脂組成物の流動性が低下
して成形加工性が劣り、さらには成形品の強度が低下す
る。
【0063】本発明において、ホウ酸アルミニウムウィ
スカーとして、乳酸系ポリマー(A)との親和性を高
め、補強効果をより向上させるために、シランカップリ
ング剤等で表面処理を施したものを用いてもよい。
【0064】このように、本発明において、ウィスカー
(B)の平均繊維径が5.0μm以下で、平均繊維長が
50μm以下であることが好ましく、ウィスカー(B)
の種類に応じて、それぞれ最適な平均繊維径及び平均繊
維長があるので適宜選択するとよい。また、ウィスカー
(B)の種類に応じて、それぞれ最適な配合量があるの
で適宜選択するとよい。2種以上のウィスカー(B)を
併用する場合には、それらの合計量が乳酸系ポリマー
(A)100重量部に対して、5〜100重量部、好ま
しくは10〜80重量部の範囲となるように、樹脂組成
物の結晶化後の剛性向上効果、成形加工性、成形品の強
度等を考慮して、各ウィスカーの配合量を適宜決定する
とよい。
【0065】本発明において、乳酸系ポリマー(A)に
ウィスカー(B)を配合する方法は、特に制限されるも
のではなく、樹脂組成物の製造において従来公知の方法
によって行うことができる。例えば、乳酸系ポリマー
(A)の粉末あるいはペレットとウィスカー(B)とを
それぞれドライブレンドで混合してもよく、ウィスカー
(B)の一部をプリブレンドして残部を後でドライブレ
ンドしても構わない。例えば、ミルロール、バンバリー
ミキサー、スーパーミキサー等を用いて混合し、単軸あ
るいは二軸押出機等を用いて混練すれば良い。さらに
は、サイドフィーダー等を用いてウィスカー(B)を単
軸あるいは二軸押出機等に供給する方法がより好まし
い。この混合混練は、通常120〜220℃程度の温度
で行われる。また、乳酸系ポリマーの重合段階で、ウィ
スカー(B)を添加しても構わない。また、ウィスカー
(B)を高濃度で含有するマスターバッチを生成し、こ
れを乳酸系ポリマーに添加する方法などを用いることが
できる。
【0066】本発明において、結晶化を促進させるため
に、ポリ乳酸系樹脂組成物に結晶核剤、結晶化促進剤等
を配合することも好ましい。結晶核剤、結晶化促進剤と
して特に限定されるものではないが、タルク、シリカ、
芳香族有機リン酸エステル金属塩化合物、ジベンジリデ
ンソルビトール化合物、脂肪酸アミド、植物系ワックス
等が好ましい。
【0067】さらに本発明におけるポリ乳酸系樹脂組成
物には、必要に応じて、従来公知の可塑剤、酸化防止
剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色
剤、各種フィラー、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、
難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤等の各種添加
剤が配合されていても良い。
【0068】本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、良好な
脱型性(成形時の金型からの取り出し易さ)を得るため
に、引張弾性率が4GPa以上であることが好ましく、
引張弾性率が5GPa以上であることがより好ましく、
及び/又は曲げ弾性率が5GPa以上であることが好ま
しく、曲げ弾性率が6GPa以上であることがより好ま
しい。これらの上限値は、特に定められないが、例え
ば、引張弾性率:8GPa、曲げ弾性率:10GPa程
度である。
【0069】本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、走査型
示差熱量計(DSC)における結晶化ピーク温度が90
〜120℃であることが好ましく、95〜115℃であ
ることがより好ましい。また、その結晶化熱量が20J
/g以上であることが好ましく、21J/g以上である
ことがより好ましい。結晶化熱量の上限値は特に定めら
れないが、60J/g程度である。この結晶化ピーク温
度が90℃未満であると、成形加工時の冷却時間が長く
なり、一方、結晶化ピーク温度が120℃を超えると、
金型温度が高く冷却時間が長くなり、いずれも成形サイ
クルが長くなる。また、この結晶化熱量が20J/g未
満であると、結晶化可能温度での成形性が悪くなり、ま
た得られる成形品の耐熱性が劣り、引張強度、衝撃強度
も劣る傾向にある。
【0070】本発明は、上記ポリ乳酸系樹脂組成物から
得られる耐熱性成形品及びその製造方法にも関する。
【0071】ポリ乳酸系樹脂組成物を結晶化するには、
成形品を結晶化可能な温度でアニーリングする方法があ
るが、アニーリングの結晶化過程で成形品が変形しやす
い欠点がある。そこで、ポリ乳酸系樹脂組成物を成形す
るときに、成形金型を結晶化可能な温度に設定し、一定
時間保持する方法が考えられる。
【0072】本発明においては、ポリ乳酸系樹脂組成物
を溶融し、結晶化可能な温度すなわち走査型示差熱量計
(DSC)におけるガラス転移温度以上融解開始温度以
下の温度範囲、好ましくは結晶化開始温度以上結晶化終
了温度以下の温度範囲に設定された成形機の金型に充填
し一定時間保持することにより、結晶化させながら成形
する。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、金型内にて結
晶化が完了し、耐熱性に優れたポリ乳酸系樹脂成形品が
得られる。
【0073】金型温度の設定は、成形するポリ乳酸系樹
脂組成物の種類により異なるので、あらかじめDSC法
により結晶化温度(結晶化ピーク温度、結晶化開始温
度、結晶化終了温度)を測定し、ガラス転移温度以上融
解開始温度以下の温度範囲、好ましくは結晶化開始温度
以上結晶化終了温度以下の温度範囲とする。この温度範
囲であれば、容易に結晶化し、さらには寸法精度の良い
成形品を得ることができる。この範囲をはずれると、結
晶化が遅くなり、成形時の固化時間も長くなるため実用
上適さない。
【0074】本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を成形する
に際しては、一般のプラスチックと同様の射出成形、押
出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形等の成形を行
うことができ、棒、ビン、容器等の各種成形品を容易に
得ることができる。
【0075】本発明及び以下の実施例において、乳酸系
ポリマーの重量平均分子量(Mw)はGPC分析による
ポリスチレン換算値、結晶化温度及び結晶化熱量は走査
型示差熱量計(島津製作所製、DSC−60)により、
ペレットサンプル10mgを10℃/minで室温から
200℃まで昇温し乳酸系ポリマーを一旦融解させた
後、室温まで急冷し非晶質(アモルファス)状態とし
て、その後再度10℃/minの昇温速度で測定した。
また引張試験は、JIS K 7113(1号試験片)
に、曲げ試験は、JIS K 7171に、アイゾット
衝撃試験は、JISK 7110(ノッチ付き2号試験
片)にそれぞれ準じた。
【0076】本発明において、耐熱性の指標は、JIS
K 7207Aの高重たわみ温度を用いた。高重たわ
み温度とは、加熱浴槽中の試験片に1.8MPaの曲げ
応力を加えながら、一定速度で伝熱媒体を昇温させ、試
験片が規定のたわみ量に達した時の伝熱媒体の温度をい
う。本発明の耐熱性ポリ乳酸系樹脂成形品の高荷重たわ
み温度は、ウィスカーの種類や添加量によって異なる
が、例えば家電用品の比較的高温にさらされないような
部品においても、実用上80℃以上であり、90℃以上
が好ましく、100℃以上がより好ましい。上限は定め
られないが、140℃程度である。
【0077】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるも
のではない。
【0078】[実施例1]ポリ−L−乳酸(島津製作所
製「ラクティ」:Mw=150,000)100重量部
と炭酸カルシウムウィスカー(丸尾カルシスム製「ウィ
スカルAS−3」、平均繊維径:0.5〜1.0μm、
平均繊維長:20〜30μm)60重量部とをドライブ
レンドし、180℃の二軸混練押出機にて平均4分間溶
融混合し、口金よりストランド状に押出し、水冷後、切
断し、ウィスカーを含む乳酸系ポリマー組成物のペレッ
トを得た。得られたペレットのDSCを測定した結果、
結晶化ピーク温度は106℃、結晶化開始温度は96
℃、結晶化終了温度は115℃、結晶化熱量は34J/
gであった。
【0079】得られたペレットを80℃で真空乾燥し、
絶乾状態にした後、金型温度を100℃、固化時間を4
5secに保ち、射出成形によりJIS物性評価用試験
片を得た。これら試験片の評価結果を表1に示す。
【0080】[実施例2]炭酸カルシウムウィスカー
(丸尾カルシスム製「ウィスカルAS−3」、平均繊維
径:0.5〜1.0μm、平均繊維長:20〜30μ
m)の配合量を10重量部とした以外は実施例1と同様
にして、ウィスカーを含む乳酸系ポリマー組成物のペレ
ットを得た。得られたペレットのDSCを測定した結
果、結晶化ピーク温度は106℃、結晶化開始温度は9
6℃、結晶化終了温度は115℃、結晶化熱量は31J
/gであった。得られたペレットから、実施例1と同様
にして、JIS物性評価用試験片を得た。これら試験片
の評価結果を表1に示す。
【0081】[実施例3]ポリ−L−乳酸(島津製作所
製「ラクティ」:Mw=150,000)100重量部
とチタン酸カリウムウィスカー(大塚化学製「ティスモ
N」、平均繊維径:0.3〜0.6μm、平均繊維長:
10〜20μm)50重量部とをドライブレンドし、1
80℃の二軸混練押出機にて平均4分間溶融混合し、口
金よりストランド状に押出し、水冷後、切断し、ウィス
カーを含む乳酸系ポリマー組成物のペレットを得た。得
られたペレットのDSCを測定した結果、結晶化ピーク
温度は100℃、結晶化開始温度は88℃、結晶化終了
温度は108℃、結晶化熱量は38J/gであった。
【0082】得られたペレットを80℃で真空乾燥し、
絶乾状態にした後、金型温度を100℃、固化時間を4
5secに保ち、射出成形によりJIS物性評価用試験
片を得た。これら試験片の評価結果を表1に示す。
【0083】[実施例4]チタン酸カリウムウィスカー
(大塚化学製「ティスモN」、平均繊維径:0.3〜
0.6μm、平均繊維長:10〜20μm)の配合量を
10重量部とした以外は実施例3と同様にして、ウィス
カーを含む乳酸系ポリマー組成物のペレットを得た。得
られたペレットのDSCを測定した結果、結晶化ピーク
温度は100℃、結晶化開始温度は88℃、結晶化終了
温度は108℃、結晶化熱量は26J/gであった。得
られたペレットから、実施例3と同様にして、JIS物
性評価用試験片を得た。これら試験片の評価結果を表1
に示す。
【0084】[実施例5]ポリ−L−乳酸(島津製作所
製「ラクティ」:Mw=150,000)100重量部
と珪酸カルシウムウィスカー(大塚化学製「バイスタル
W」、平均繊維径:2〜5μm、平均繊維長:20〜3
0μm)60重量部をドライブレンドし、180℃の二
軸混練押出機にて平均4分間溶融混合し、口金よりスト
ランド状に押出し、水冷後、切断し、ウィスカーを含む
乳酸系ポリマー組成物のペレットを得た。得られたペレ
ットのDSCを測定した結果、結晶化ピーク温度は10
6℃、結晶化開始温度は98℃、結晶化終了温度は11
3℃、結晶化熱量は35J/gであった。
【0085】得られたペレットを80℃で真空乾燥し、
絶乾状態にした後、金型温度を100℃、固化時間を4
5secに保ち、射出成形によりJIS物性評価用試験
片を得た。これら試験片の評価結果を表1に示す。
【0086】[実施例6]珪酸カルシウムウィスカー
(大塚化学製「バイスタルW」、平均繊維径:2〜5μ
m、平均繊維長:20〜30μm)の配合量を10重量
部とした以外は実施例5と同様にして、ウィスカーを含
む乳酸系ポリマー組成物のペレットを得た。得られたペ
レットのDSCを測定した結果、結晶化ピーク温度は1
06℃、結晶化開始温度は98℃、結晶化終了温度は1
13℃、結晶化熱量は32J/gであった。得られたペ
レットから、実施例5と同様にして、JIS物性評価用
試験片を得た。これら試験片の評価結果を表1に示す。
【0087】[実施例7]ポリ−L−乳酸(島津製作所
製「ラクティ」:Mw=150,000)100重量部
とホウ酸アルミニウムウィスカー(四国化成工業製「ア
ルボレックスY」、平均繊維径:0.5〜1.0μm、
平均繊維長:10〜30μm)40重量部とをドライブ
レンドし、180℃の二軸混練押出機にて平均4分間溶
融混合し、口金よりストランド状に押出し、水冷後、切
断し、ウィスカーを含む乳酸系ポリマー組成物のペレッ
トを得た。得られたペレットのDSCを測定した結果、
結晶化ピーク温度は106℃、結晶化開始温度は97
℃、結晶化終了温度は116℃、結晶化熱量は35J/
gであった。
【0088】得られたペレットを80℃で真空乾燥し、
絶乾状態にした後、金型温度を100℃、固化時間を4
5secに保ち、射出成形によりJIS物性評価用試験
片を得た。これら試験片の評価結果を表1に示す。
【0089】[実施例8]ホウ酸アルミニウムウィスカ
ー(四国化成工業製「アルボレックスY」、平均繊維
径:0.5〜1.0μm、平均繊維長:10〜30μ
m)の配合量を10重量部とした以外は実施例7と同様
にして、ウィスカーを含む乳酸系ポリマー組成物のペレ
ットを得た。得られたペレットのDSCを測定した結
果、結晶化ピーク温度は106℃、結晶化開始温度は9
7℃、結晶化終了温度は116℃、結晶化熱量は32J
/gであった。得られたペレットから、実施例7と同様
にして、JIS物性評価用試験片を得た。これら試験片
の評価結果を表1に示す。
【0090】[比較例1]ポリ−L−乳酸(島津製作所
製「ラクティ」:Mw=150,000)を180℃の
二軸混練押出機にて平均4分間溶融混合し、口金よりス
トランド状に押出し、水冷後、切断し、乳酸系ポリマー
組成物のペレットを得た。得られたペレットのDSCを
測定した結果、結晶化ピーク温度は135℃、結晶化開
始温度は109℃、結晶化終了温度は162℃、結晶化
熱量は35J/gであった。
【0091】得られたペレットを80℃で真空乾燥し、
絶乾状態にした後、金型温度を100℃、固化時間を4
5secに保ち射出成形したが成形品を脱型することは
できなかった。そこで、金型温度を30℃、固化時間3
0secに保ち、射出成形によりJIS物性評価用試験
片を得た。これら試験片の評価結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】表1から、実施例1〜8では本発明に合致
した乳酸系ポリマー組成物を用いて射出成形品を得たの
で、いずれの成形品も耐熱性(高重たわみ温度)、引張
強度、引張弾性率、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット
衝撃強度に優れていた。実施例1〜8のうち、実施例
1、3、5、7においては、特に良い結果が得られた。
一方、比較例1では、ウィスカーが配合されておらず、
成形性が悪く、成形品の耐熱性が劣り強度も劣ってい
た。
【0094】
【発明の効果】本発明によれば、乳酸系ポリマーにウィ
スカーをブレンドすることにより、引張弾性率や曲げ弾
性率を向上させた成形性に優れた乳酸系ポリマー組成物
が得られる。さらに、この乳酸系ポリマー組成物を金型
内にて結晶化処理することにより、耐熱性に優れた成形
品が得られる。
【0095】本発明によれば、優れた引張強度、引張弾
性率、曲げ強度、曲げ弾性率及び衝撃強度を有する成形
品が、成形性良く得られるポリ乳酸系樹脂組成物が提供
され、引張強度、引張弾性率、曲げ強度、曲げ弾性率及
び衝撃強度に優れる耐熱性ポリ乳酸系樹脂成形品、及び
耐熱性ポリ乳酸系樹脂成形品の簡便な生産効率の高い製
造方法が提供される。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B29K 105:12 B29K 105:12 Fターム(参考) 4F072 AA03 AB08 AB14 AB15 AD37 AD54 AK15 AK16 AL01 4F202 AA24A AB25 AR06 CA11 CB01 CN01 4J002 CF032 CF042 CF052 CF092 CF102 CF181 CF191 DE186 DE236 DJ006 DK006 FA066 FD016 GG01

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乳酸系ポリマー(A)100重量部と、
    ウィスカー(B)5〜100重量部とを含むポリ乳酸系
    樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 ウィスカー(B)が、炭酸カルシウムウ
    ィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、珪酸カルシウ
    ムウィスカー及びホウ酸アルミニウムウィスカーからな
    る群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記
    載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 ウィスカー(B)の平均繊維径が5.0
    μm以下で、平均繊維長が50μm以下である、請求項
    1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のうちのいずれか1項に記
    載のポリ乳酸系樹脂組成物からなるポリ乳酸系樹脂成形
    品。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のうちのいずれか1項に記
    載のポリ乳酸系樹脂組成物を溶融し、走査型示差熱量計
    (DSC)におけるガラス転移温度以上融解開始温度以
    下の範囲に温度設定された成形機の金型に充填し、結晶
    化させながら成形することを特徴とする、ポリ乳酸系樹
    脂成形品の製造方法。
  6. 【請求項6】 金型温度が、走査型示差熱量計(DS
    C)における結晶化開始温度以上結晶化終了温度以下の
    範囲に温度設定されている、請求項5に記載のポリ乳酸
    系樹脂成形品の製造方法。
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