JP2003222216A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

トロイダル型無段変速機

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JP2003222216A JP2002020028A JP2002020028A JP2003222216A JP 2003222216 A JP2003222216 A JP 2003222216A JP 2002020028 A JP2002020028 A JP 2002020028A JP 2002020028 A JP2002020028 A JP 2002020028A JP 2003222216 A JP2003222216 A JP 2003222216A
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disks
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高出力エンジンと組み合わせた場合でも優れ
た耐久性を有するトロイダル型無段変速機を実現する。 【解決手段】 入力側、出力側各ディスク2、4と各パ
ワーローラ9、9とを、Sの含有量が0.013重量%
以下の鋼製とする。且つ、当該鋼製の部材中に存在する
硫化物系介在物の長さを、上記各ディスク2、4の内側
面2a、4aと上記各パワーローラ9、9の周面9a、
9aとの当接部に形成される最大接触楕円の長径の1/
5以下とする。この構成により、上記各面2a、4a、
9aの転がり疲れ寿命を向上させて、上記課題を解決す
る。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明に係るトロイダル型無段
変速機は、例えば自動車の自動変速機用の変速ユニット
として、或は各種産業機械用の変速機として、それぞれ
利用する。 【0002】 【従来の技術】自動車用自動変速機として、図1〜2に
略示する様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研
究され、一部で実施されている。このトロイダル型無段
変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示
されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク2を
支持し、この入力軸1と同心に配置された出力軸3の端
部に出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無
段変速機を納めたケーシング5(後述する図4参照)の
内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対し捻れの位
置にある枢軸6、6を中心として揺動するトラニオン
7、7を設けている。 【0003】これら各トラニオン7、7は、長さ方向
(図1〜2の表裏方向)両端面に上記枢軸6、6を、各
トラニオン7、7毎に互いに同心に、各トラニオン7、
7毎に1対ずつ設けている。これら各枢軸6、6の中心
軸は、上記各ディスク2、4の中心軸と交差する事はな
いが、これら各ディスク2、4の中心軸の方向に対し直
角若しくはほぼ直角方向である、捩れの位置に存在す
る。又、上記各トラニオン7、7の中心部には変位軸
8、8の基半部を支持し、上記枢軸6、6を中心として
各トラニオン7、7を揺動させる事により、上記各変位
軸8、8の傾斜角度の調節を自在としている。各トラニ
オン7、7に支持された変位軸8、8の先半部周囲に
は、それぞれパワーローラ9、9を回転自在に支持して
いる。そして、これら各パワーローラ9、9を、上記入
力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4a同士
の間に挟持している。 【0004】上記入力側、出力側両ディスク2、4の互
いに対向する内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上
記枢軸6を中心とする円弧若しくはこの様な円弧に近い
曲線を回転させて得られる、断面円弧状の凹面をなして
いる。そして、球状凸面に形成された各パワーローラ
9、9の周面9a、9aを、上記内側面2a、4aに当
接させている。又、上記入力軸1と入力側ディスク2と
の間には、ローディングカム装置10を設け、このロー
ディングカム装置10によって上記入力側ディスク2
を、出力側ディスク4に向け弾性的に押圧しつつ、回転
駆動自在としている。 【0005】上述の様に構成されるトロイダル型無段変
速機の使用時、入力軸1の回転に伴って上記ローディン
グカム装置10が上記入力側ディスク2を、上記複数の
パワーローラ9、9に押圧しつつ回転させる。そして、
この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーロー
ラ9、9を介して出力側ディスク4に伝達され、この出
力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。 【0006】入力軸1と出力軸3との回転速度を変える
場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう
場合には、枢軸6、6を中心として前記各トラニオン
7、7を揺動させ、上記各パワーローラ9、9の周面9
a、9aが図1に示す様に、入力側ディスク2の内側面
2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの
外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、前記各変位軸
8、8を傾斜させる。反対に、増速を行なう場合には、
上記各トラニオン7、7を揺動させ、上記各パワーロー
ラ9、9の周面9a、9aが図2に示す様に、入力側デ
ィスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク
4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する
様に、上記各変位軸8、8を傾斜させる。これら各変位
軸8、8の傾斜角度を図1と図2との中間にすれば、入
力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。 【0007】更に、図3〜4は、実願昭63−6929
3号(実開平1−173552号)のマイクロフィルム
に記載された、より具体化されたトロイダル型無段変速
機を示している。入力側ディスク2と出力側ディスク4
とは円管状の入力軸11の周囲に、それぞれ回転自在に
支持している。又、この入力軸11の端部と上記入力側
ディスク2との間に、ローディングカム装置10を設け
ている。一方、上記出力側ディスク4には、出力歯車1
2を結合し、これら出力側ディスク4と出力歯車12と
が同期して回転する様にしている。 【0008】1対のトラニオン7、7の長さ方向(図3
の表裏方向、図4の左右方向)両端部に互いに同心に設
けた枢軸6、6は、支持部材である1対の支持板13、
13に、揺動並びに軸方向(図3の表裏方向、図4の左
右方向)の変位自在に支持している。そして、上記各ト
ラニオン7、7の中間部に、変位軸8、8の基半部を支
持している。これら各変位軸8、8は、基半部と先半部
とを互いに偏心させている。そして、このうちの基半部
を上記各トラニオン7、7の中間部に回転自在に支持
し、それぞれの先半部にパワーローラ9、9を、ラジア
ルニードル軸受等の転がり軸受を介して、回転自在に支
持している。 【0009】尚、上記1対の変位軸8、8は、上記入力
軸11に対して180度反対側位置に設けている。又、
これら各変位軸8、8の基半部と先半部とが偏心してい
る方向は、上記入力側、出力側両ディスク2、4の回転
方向に関して同方向(図4で左右逆方向)としている。
又、偏心方向は、上記入力軸11の配設方向に対してほ
ぼ直交する方向としている。従って上記各パワーローラ
9、9は、上記入力軸11の配設方向に関して若干の変
位自在に支持される。 【0010】又、上記各パワーローラ9、9の外側面と
上記各トラニオン7、7の中間部内側面との間には、こ
れら各パワーローラ9、9の外側面の側から順に、スラ
スト玉軸受14、14とスラストニードル軸受15、1
5とを設けている。このうちのスラスト玉軸受14、1
4は、上記各パワーローラ9、9に加わるスラスト方向
の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ9、9の回
転を許容する。又、上記各スラストニードル軸受15、
15は、上記各パワーローラ9、9から上記各スラスト
玉軸受14、14を構成する外輪16、16に加わるス
ラスト荷重を支承しつつ、上記各変位軸8、8の先半部
及び上記外輪16、16が、これら各変位軸8、8の基
半部を中心として揺動する事を許容する。更に、上記各
トラニオン7、7は、油圧式のアクチュエータ17、1
7により、前記各枢軸6、6の軸方向の変位自在として
いる。 【0011】上述の様に構成されるトロイダル型無段変
速機の場合、入力軸11の回転はローディングカム装置
10を介して入力側ディスク2に伝えられる。そして、
この入力側ディスク2の回転が、1対のパワーローラ
9、9を介して出力側ディスク4に伝えられ、更にこの
出力側ディスク4の回転が、出力歯車12より取り出さ
れる。 【0012】入力軸11と出力歯車12との間の回転速
度比を変える場合には、上記各アクチュエータ17、1
7により上記1対のトラニオン7、7を、それぞれ逆方
向に、例えば、図4の下側のパワーローラ9を同図の右
側に、同図の上側のパワーローラ9を同図の左側に、そ
れぞれ変位させる。この結果、これら各パワーローラ
9、9の周面9a、9aと上記入力側ディスク2及び出
力側ディスク4の内側面2a、4aとの当接部に作用す
る、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の
向きの変化に伴って上記各トラニオン7、7が、支持板
13、13に枢支された枢軸6、6を中心として、互い
に逆方向に揺動する。この結果、前述の図1〜2に示し
た様に、上記各パワーローラ9、9の周面9a、9aと
上記各内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入
力軸11と出力歯車12との間の回転速度比が変化す
る。 【0013】トロイダル型無段変速機による動力伝達時
には、構成各部の弾性変形に基づいて、上記各パワーロ
ーラ9、9が上記入力軸11の軸方向に変位する。そし
て、これら各パワーローラ9、9を支持した前記各変位
軸8、8が、それぞれの基半部を中心として僅かに回動
する。この回動の結果、上記各スラスト玉軸受14、1
4の外輪16、16の外側面と上記各トラニオン7、7
の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との
間には、前記各スラストニードル軸受15、15が存在
する為、この相対変位に要する力は小さい。 【0014】上述した様なトロイダル型無段変速機の運
転時には、入力側、出力側各ディスク2、4の内側面2
a、4aと各パワーローラ9、9の周面9a、9aとの
当接部(トラクション面)に、高い接触圧が生じる。こ
れら各当接部に挟持されたトラクションオイルは、この
高い接触圧によりガラス状に遷移(液体状から固体状に
変化)し、回転力を伝達する事になる。この回転伝達時
に上記各面2a、4a、9aには、それぞれの接線方向
に向いた大きな力(接線力)が加わる。又、上述の様に
トラクションオイルが高い圧力を受けて状態変化する際
に、上記各当接部で発熱し、温度上昇が起こる。この様
にして、トロイダル型無段変速機の運転時に上記各面2
a、4a、9aに加わる大きな接線力並びに温度上昇
は、これら各面2a、4a、9aに、転がり疲労を引き
起こす事になる。 【0015】この様に厳しい条件下で運転されるトロイ
ダル型無段変速機を構成する、上記入力側、出力側各デ
ィスク2、4の内側面2a、4aと上記各パワーローラ
9、9の周面9a、9aとの転がり疲れ寿命を確保する
為に従来から、例えば特開平9−79336に記載され
ている様に、Crを含有する機械構造用鋼であるSCM4
20(JIS G4052)により上記入力側、出力側
各ディスク2、4又は上記各パワローラ9、9を造り、
これに浸炭窒化処理を施す技術が知られている。この従
来技術の場合には、上記入力側、出力側各ディスク2、
4又は上記各パワーローラ9、9の表面硬度と残留圧縮
応力とを高くして、これら入力側、出力側各ディスク
2、4又は各パワーローラ9、9の耐久性確保を図って
いる。 【0016】 【発明が解決しようとする課題】上述の様な従来技術に
対して、近年に於けるエンジンの高出力化に対応すべ
く、より一層優れた疲労強度を有する入力側、出力側各
ディスク2、4及びパワーローラ9、9の実現が望まれ
る様になっている。この様な事情に鑑みて本発明者が、
トロイダル型無段変速機に組み込む、上記入力側、出力
側各ディスク2、4の内側面2a、4a及び上記各パワ
ーローラ9、9の周面9a、9aの疲労機構に就いて研
究を行なったところ、次の様な事が分かった。即ち、ト
ロイダル型無段変速機の動力伝達部の様に、極めて高面
圧でしかも大きな剪断応力が加わる部分では、従来は転
がり接触面の疲労に関して特に有害でないと考えられて
いた硫化物系の介在物の存在がこの疲労に影響を及ぼす
事、具体的には、この様な介在物を起点として、疲労割
れ、転がり疲労による剥離が発生する事を見出した。即
ち、500MPa以上の曲げ応力、3.5GPa以上の接触
面圧が加わる様な、厳しい条件下では、鋼中に含まれる
硫化物系の介在物が応力集中部となって、この介在物部
分から亀裂が発生し、当該部分に破断或は剥離等の損傷
が発生する事が分かった。 【0017】この様な事情に鑑みて本発明者は、含有す
る硫化物系の介在物の性状が互いに異なる、複数種類の
鋼により、それぞれ入力側、出力側各ディスク2、4及
びパワーローラ9、9を造った。そして、これら入力
側、出力側各ディスク2、4及びパワーローラ9、9を
組み込んだ複数種類のトロイダル型無段変速機に就いて
多くの試験を行ない、各試験で破損した部品に就いてそ
の性状を調査した。そして、これら多くの試験及びそれ
に続く調査の結果、上記硫化物系の介在物を起因とする
破損に就いての知見を得た。そして、この知見に基づい
て、上記入力側、出力側各ディスク2、4の内側面2
a、4a及び上記各パワーローラ9、9の周面9a、9
aの疲労強度を向上させる為の適切な条件を求め、優れ
た疲労強度を有するトロイダル型無段変速機を実現でき
る本発明をなすに至った。 【0018】 【課題を解決するための手段】本発明のトロイダル型無
段変速機は、前述の図1〜4に示した従来から知られて
いるトロイダル型無段変速機と同様に、第一ディスク及
び第二ディスクと、複数のパワーローラとを備える。こ
のうちの第一ディスク及び第二ディスクは、それぞれが
断面円弧形の凹面である互いの内側面同士を対向させた
状態で、互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に
支持されている。又、上記パワーローラは、上記両ディ
スク同士の間に挟持された状態で回転自在に支持された
もので、その周面を球状凸面としている。 【0019】特に、本発明のトロイダル型無段変速機に
於いては、上記第一、第二のディスクと上記各パワーロ
ーラとのうちの少なくとも一方(好ましくは両方)の部
材が、Sの含有量が0.013重量%以下の鋼製であ
る。且つ、当該鋼製の部材(Sの含有量が0.013重
量%以下の鋼製の部材)中に存在する硫化物系介在物の
長さが、上記各ディスクの内側面と上記各パワーローラ
の周面との当接部に最大トルク伝達時に形成される最大
接触楕円の長径の1/5以下である。 【0020】 【作用】上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段
変速機によれば、硫化物系の介在物を起因とする破損を
防止できる。この為に本発明の場合には、第一、第二の
ディスクと各パワーローラとのうちの少なくとも一方の
部材、即ち、疲労強度を向上させる必要がある部材を構
成する鋼材中のSの含有量を0.013重量%以下に抑
えている。 【0021】尚、Sは、鋼材中のMnと結合する事によ
り、MnSを形成するが、このMnSが適量含まれると、当
該鋼の切削加工性が向上する。この為、JIS(G40
52)に規定するSCr420やSCM420等の浸炭鋼
では、切削加工性を確保する為に、Sの含有量を0.0
20重量%程度とし、鋼材中に一定量のMnSを含ませて
いる。これに対して、トロイダル型無段変速機を構成す
る第一、第二各ディスク及びパワーローラの様に、極め
て高荷重且つ高トルクで相手部材と係合しつつ運転され
る部品の場合には、上述の様なMnSは、鋼材中の欠陥と
なって当該部品の疲労強度を著しく低下させる事が、前
述した様に本発明者の研究により分かった。 【0022】本発明のトロイダル型無段変速機の場合に
は、特に高荷重を受けつつ高トルクを伝達する、上記第
一、第二のディスクと各パワーローラとのうちの少なく
とも一方の部材を構成する鋼材は、Sの含有量を0.0
13重量%以下に抑えている。この為、この鋼材中のMn
Sの存在量を低く抑えると共に、このMnSの長さを、上
記第一、第二各ディスクの内側面と上記各パワーローラ
の周面との当接部に最大トルク伝達時に形成される最大
接触楕円の長径の1/5以下に抑えられる。この結果、
上記鋼材により構成する上記第一、第二のディスクと各
パワーローラとのうちの少なくとも一方の部材の疲労強
度が、上記MnSの存在に基づいて低下する程度を低く抑
える事ができる。 【0023】尚、上記鋼材中のSの含有量が0.013
重量%を超えると、粗大なMnSを形成し易くなり、この
MnSの長さを、上記最大接触楕円の長径の1/5以下に
抑えられなくなって、上記鋼材により造った部品の疲労
割れ強度を十分に確保できなくなる。従って本発明の場
合には、上記鋼材中へのSの含有量を、0.013重量
%以下に規制した。尚、この鋼材中へのSの含有量を更
に低く、0.006重量%以下に抑えれば、この鋼材に
より造った部品の疲労強度をより一層向上させる事がで
きる。 【0024】又、上記鋼材中のMnSの長さを、上記最大
接触楕円の長径の1/5以下の大きさとした理由は、上
記鋼材により造られた上記第一、第二のディスクの内側
面或は上記各パワーローラの周面に剥離が生じるのを防
止する為である。即ち、転がり接触面であるこれら第
一、第二のディスクの内側面と上記各パワーローラの周
面との接触部は、接触面圧が3.5GPa以上になる場合
がある。この様に大きな面圧が作用する接触面の直下に
大きなMnSが存在すると、当該接触面が短時間で剥離す
る。そこで本発明は、上記鋼材中のMnSの長さを上記最
大接触楕円の長径の1/5以下に抑えて、このMnSの存
在に基づく早期剥離を防止している。尚、このMnSの長
さを抑える為に、上記鋼材中に、微量のCa、Te、或はZr
等の元素を加え、当該鋼材中に、Ca−MnS、Te−MnS、
Zr−MnSを生成する事もできる。これらCa−MnS、Te−
MnS、Zr−MnSは、圧延、鍛造によって変形しにくく、
球形に近い状態のままとなる為、MnSの長さを上記最大
接触楕円の長径の1/5以下に抑える事が容易になる。 【0025】 【発明の実施の形態】本発明の特徴は、例えば図3〜4
に示す様なトロイダル型無段変速機を構成する入力側、
出力側各ディスク2、4と各パワーローラ9、9との性
状を工夫する点にある。即ち、これら各部材2、4、9
のうちの少なくとも1個の部品(好ましくは全部の部
品)をSの含有量が0.013重量%以下の鋼製とし、
且つ、当該鋼製の部材中に存在する硫化物系介在物の長
さを、最大トルク伝達時に形成される最大接触楕円の長
径の1/5以下に抑える事により、トロイダル型無段変
速機の耐久性向上を図る点にある。図面に現れるトロイ
ダル型無段変速機の具体的構造に就いては、上記図3〜
4に示した構造の他、従来から広く知られている各種ト
ロイダル型無段変速機が、何れも対象となる。この場合
に、図示の様なハーフトロイダル型のものに限らず、フ
ルトロイダル型のものも対象になる。 【0026】例えば、上記図3〜4に示したトロイダル
型無段変速機に本発明を適用する場合には、上記入力
側、出力側各ディスク2、4と上記各パワーローラ9、
9とをSの含有量が0.013重量%以下の鋼製とす
る。そして、これら入力側、出力側各ディスク2、4と
上記各パワーローラ9、9とを構成する鋼材中に存在す
る硫化物系介在物の長さを、最大トルク伝達時に形成さ
れる最大接触楕円の長径の1/5以下に抑える。 【0027】 【実施例】上述の様な鋼材を使用する事により、トロイ
ダル型無段変速機を構成する入力側、出力側各ディスク
2、4と各パワーローラ9、9との耐久性向上を図れる
事を確認する為に、本発明者が行なった実験に就いて説
明する。実験では、後述する表1に示す様に、JISに
規定する鋼材である、SCr420及びSCM435の溶
製を行なった。 この際、Sの含有量に関しては、0.
003〜0.020重量%の範囲で、表1に示す様に種
々変えたものを溶製して素材とした。この様にして得ら
れた素材から、上記入力側、出力側各ディスク2、4と
上記各パワーローラ9、9とを製作し、これら各部品
2、4、9により、トロイダル型無段変速機の変速部
(バリエータ)を組み立てた。 【0028】尚、上記入力側、出力側各ディスク2、4
と上記各パワーローラ9、9とには、上記バリエータを
組み立てるのに先立って、図5に示す様な熱処理を施し
た。この熱処理は、先ず、温度が900〜960℃のRx
ガス、エンリッチガス及びアンモニアガス雰囲気中で1
0〜30時間熱処理(浸炭窒化処理)した後、放冷を行
なう。次に、温度が820〜860℃で1時間熱処理
(油焼き入れ)した後、更に、温度が180℃の大気中
で2時間加熱してから冷却する(焼き戻す)。この様な
熱処理を施した鋼材(SCr420又はSCM435)に
より造った上記入力側、出力側各ディスク2、4及び上
記各パワーローラ9、9と、他の量産部品とを組み合わ
せて、トロイダル型無段変速機の変速部(バリエータ)
を造り、この変速部に、下記の条件で耐久試験を施し
た。 【0029】 入力軸の回転数 : 4000min-1 入力トルク : 380Nm 使用オイル : トラクションオイル オイル温度 : 120℃ この試験条件は、図3〜4に示す様な、1個ずつの入力
側ディスク2と出力側ディスク4との間に2個のパワー
ローラ9、9を挟持した、シングルキャビティ型のトロ
イダル型無段変速機にとって、相当に過酷な条件であ
る。例えば、この試験条件では、上記入力側、出力側各
ディスク2、4の内側面2a、4aと上記各パワーロー
ラ9、9の周面9a、9aとの転がり接触部の最大接触
面圧Pmaxは、3.7GPaとなる。 【0030】上述の様な条件で行なう耐久試験は、上記
入力側、出力側各ディスク2、4と上記各パワーローラ
9、9との少なくとも一方が破損するか、破損しないま
ま200時間経過するまで行なった。200時間経過時
に何れの部品も損傷していない場合には、その時点で試
験を打ち切った。そして、耐久試験後に、上記入力側、
出力側各ディスク2、4の内側面2a、4a及び上記各
パワーローラ9、9の周面9a、9aに関して、30,
000mm2 の範囲でミクロ組織を光学顕微鏡にて観察
し、この範囲に存在するMnSの最大長と、最大接触楕円
の長径との比を求めた。最大接触楕円の長径は、周知の
Hertz の接触理論により求めた。この様にして行なった
耐久試験及び観察の結果を、次の表1に示す。 【0031】 【表1】【0032】この表1に記載した20通りの試料のう
ち、実施例1〜10として示した10種類の試料は、何
れも本発明の技術的範囲に属するものである。これら実
施例1〜10に関しては、鋼材の種類がSCr420、S
CM435、何れの場合も、148時間以上の耐久寿命
を得られた。そのうちでも、Sの含有量が少なくなるほ
ど、破損までの時間(寿命時間)は長くなった。 【0033】これに対して、比較例1〜10として示し
た10種類の試料は、何れも、本発明の技術的範囲から
は外れるものである。この様な比較例1〜10に関する
耐久試験の結果から分かる様に、鋼材中のSの含有量が
0.013重量%を超えたり、この鋼材中のMnSの最大
長の最大接触楕円の長径に対する比が0.20(1/
5)よりも大きい場合には、105時間以下で、上記入
力側、出力側各ディスク2、4の内側面2a、4a(デ
ィスクトラクション面)又は上記各パワーローラ9、9
の周面9a、9a(パワーローラトラクション面)に剥
離が発生した。 【0034】 【発明の効果】本発明は、以上に述べた通り構成され作
用するので、高出力エンジンと組み合わせた場合でも優
れた耐久性を有するトロイダル型無段変速機を実現し
て、トロイダル型無段変速機の普及に寄与できる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の対象となるトロイダル型無段変速機の
基本的構成を、最大減速時の状態で示す側面図。 【図2】同じく最大増速時の状態で示す側面図。 【図3】従来の具体的構造の1例を示す断面図。 【図4】図3のA−A断面図。 【図5】熱処理を示す工程図。 【符号の説明】 1 入力軸 2 入力側ディスク 2a 内側面 3 出力軸 4 出力側ディスク 4a 内側面 5 ケーシング 6 枢軸 7 トラニオン 8 変位軸 9 パワーローラ 9a 周面 10 ローディングカム装置 11 入力軸 12 出力歯車 13 支持板 14 スラスト玉軸受 15 スラストニードル軸受 16 外輪 17 アクチュエータ

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 それぞれが断面円弧形の凹面である互い
    の内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ
    互いに独立した回転自在に支持された第一ディスク及び
    第二ディスクと、これら両ディスク同士の間に挟持され
    た状態で回転自在に支持された、その周面を球状凸面と
    したパワーローラとを備えたトロイダル型無段変速機に
    於いて、上記第一、第二のディスクと上記各パワーロー
    ラとのうちの少なくとも一方の部材が、Sの含有量が
    0.013重量%以下の鋼製であり、且つ、当該鋼製の
    部材中に存在する硫化物系介在物の長さが、上記各ディ
    スクの内側面と上記各パワーローラの周面との当接部に
    最大トルク伝達時に形成される最大接触楕円の長径の1
    /5以下である事を特徴とするトロイダル型無段変速
    機。
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