JP2003214944A - 異音による不良検査装置 - Google Patents

異音による不良検査装置

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JP2003214944A JP2002020281A JP2002020281A JP2003214944A JP 2003214944 A JP2003214944 A JP 2003214944A JP 2002020281 A JP2002020281 A JP 2002020281A JP 2002020281 A JP2002020281 A JP 2002020281A JP 2003214944 A JP2003214944 A JP 2003214944A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 回転部品の特定の不良原因に対応する周波数
成分から不良を検査する装置と、全周波数成分を用いて
不良品を検査する装置において、適正なしきい値を設定
でき、良品と不良品を明確に識別できるようにする。 【解決手段】 異音を検出するセンサ8の出力から、特
定の不良原因によって検査対象物6に発生する異音の周
波数成分をウェーブレット変換手段等の信号分離手段1
2によって抽出し、この周波数成分の最大値と平均値の
比、最大値と実効値の比、最大値と実効値の比の2乗値
等を判定信号として用い、統計的に決定され、しきい値
設定手段14に設定されたしきい値と比較して、前記特
定の不良原因の有無を判定する。また、全周波数成分を
用いて不良品を検査する場合は、センサ8の出力を微分
して判定信号を作成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両生産工程におい
て、エンジン、ミッション、モータ等の回転部品に対し
て性能検査を行なう際に使用される異音による不良検査
装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】 組付けられたエンジンは車体に組み込
む前に、試運転により各種検査を行って異常があれば手
直している。この検査項目の1つに異音検査がある。こ
れは、回転するエンジンが発生する異音を人間の聴覚に
よって識別し良否を判定する、いわゆる官能検査で、こ
の異音の種類を識別することにより手直しの必要な箇所
を特定して、手直しを迅速に行なうことができる。
【0003】この異音の発生原因の代表的なものを図6
に示す。図6(a)のボア内異物は、ボア内にクリップ
等の異物が混入している状態で、異物がピストン1に弾
かれて音が発生する。図6(b)のバルブクリアランス
大は、カム2とバルブリフタの3間のクリアランス(隙
間)が規格値より大きい状態で、バルブが着座する際の
衝撃力(速度)が上がり、着座音が正常品に比べ大きく
なる。図6(c)のコンロッドメタル欠品は、コンロッ
ド4とクランクの間に埋められたメタル5が外れている
状態で、クランク回転に同期して音が発生する。
【0004】このような異音の識別を官能検査によって
行なうと、検査員毎の個人差、体調によるばらつきによ
り、エンジンの良否誤判定が生じるという問題があり、
また検査員に対して音の聞き分け訓練も必要である。こ
のため、定量的な評価方法の確立が必要とされている。
【0005】従来、定量的なエンジン異音検査の方法と
して、ピーク値を所定のしきい値と比較して異常を検出
するピーク値解析、フーリエ演算により周波数成分毎の
解析を行なうFFT解析、周波数、大きさ、及び時間の
3要素で解析を行なうウェーブレット解析等が知られて
いる。これらは、エンジンに向けて設置した指向性マイ
クにより検出した音圧、又はエンジンに取り付けた加速
度ピックアップにより検出した振動について解析を行な
う。
【0006】ピーク値解析は、検出した異音の全周波数
成分をしきい値と比較するので、不良を検出しても、そ
の不良箇所を特定できないという問題がある。
【0007】FFT解析及びウェーブレット解析は、周
波数毎の解析ができるので、官能検査で行っている音色
による異音の原因の識別ができるという特徴を有する。
但し、FFT解析は窓関数により断続的にサンプリング
してフーリエ演算するので時間の要素を加えた分析がで
きず、不定期に発生する異音の検出ができない。これに
対して、ウェーブレット解析は、ブロック歪みが目立た
なくモスキート雑音が比較的小さいといわれ、検出した
全期間のデータについて時間の要素を加えて解析するの
で、不定期に発生する異音の解析も行なえる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ボア内異物のように不
定期に発生する不良の検出もできるという点で優れてい
るウェーブレット解析による不良検出は、不良の原因別
に検出に用いる周波数を選定し、その周波数成分が、所
定のしきい値を超えるか否かによって良不良の判定を行
っている。
【0009】従来、このしきい値は、例えば、所定数の
不良品についてセンサの出力の対応周波数の抽出値を調
べ、これより小さい値に設定するようにしている。
【0010】しかし、上記しきい値の設定方法では、良
品と不良品の抽出値が、夫々一定の分布を持ってばらつ
いているので、しきい値を適切に設定することが困難で
ある。すなわち、良品と判定した中に不良品が含まれた
り、不良品と判定した中に良品が含まれてしまうことが
ある。
【0011】そこで、統計的にしきい値を決定して良品
と不良品を適正に判別する次のような方法を試みた。
【0012】図7に示すように、不良品の異音項目とし
て、ボア内異物、規格値よりも0.05mm大きいバル
ブクリアランス大、規格値よりも0.10mm大きいバ
ルブクリアランス大、コンロッドメタル欠品の4種の不
良品を所定数ずつ用意した。エンジン回転時のセンサの
出力から、ウェーブレット解析の抽出周波数を徐々に変
更して、各異音項目について抽出値が最大となる周波数
を決定した。この周波数は、ボア内異物が2.5kHZ、
バルブクリアランス大が12.5kHZ、コンロッドメタ
ル欠品が3.15kHZであった。
【0013】さらに、不良品と正常品について、決定し
た各周波数成分の抽出値の最大値の分布を求め、図8に
示すように、各分布について平均値μ1,μ2から標準偏
差σの3倍だけ離れるまでの区間を、統計的に良品又は
不良品とみなすことができる範囲と決めた。さらに、不
良品の範囲の下限値(μ1−3σ)と良品の範囲の上限
値(μ2+3σ)の中間値を、しきい値とすることにし
た。
【0014】この方法は、統計的に一定の信頼度で良品
又は不良品でないと判断できる条件を確保しながら、し
きい値が良品側又は不良品側に偏ることをなくしたもの
で、不良品又は良品の一方の計測値のみでしきい値を決
定したときの前記問題を解決しようとするものである。
【0015】これらの周波数による抽出値で、しきい値
の設定の可否を検討すると、図7に示すように、ボア内
異物、規格値+0.10mmのバルブクリアランス大、
コンロッドメタル欠品については、不良品とみなせる範
囲と良品とみなせる範囲が上下に分離し、しきい値を適
正に決められることがわかった。
【0016】しかし、規格値+0.05mmのバルブク
リアランス大については、良品とみなせる範囲と不良品
とみなせる範囲が重なって、しきい値を設定できず、ウ
ェーブレット解析を用いても判別できない不良があるこ
とが明らかになった。
【0017】また、ピーク値解析は全周波数成分を用い
るので不良の原因を特定できないが、ウェーブレット解
析のように周波数分離手段を必要としないので、設備費
が低額であるという利点を有する。しかし、このピーク
値解析は、波形の相違を識別の要素として用いていない
ので、図5(a)の不良品の波形と図5(b)の正常品
の波形を識別することができない。
【0018】そこで、本発明は、回転部品の特定の不良
原因に対応する周波数成分から不良を検査する装置と、
全周波数成分を用いて不良品を検査する装置において、
適正なしきい値を設定でき、良品と不良品を明確に識別
できるようにすることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明が提供する異音に
よる不良検査装置は、検査対象物の回転に伴って発生す
る音又は振動を検出するセンサと、センサの出力から特
定の不良原因によって検査対象物に発生する異音の周波
数成分を抽出する信号分離手段と、信号分離手段により
抽出した前記周波数成分の最大値と平均値の比を判定信
号として求める判定信号演算手段と、この判定信号を所
定のしきい値と比較し、前記特定の不良原因の有無を判
定する判定手段とを具備したことを特徴とする。
【0020】上記構成の判定信号は、特定の不良原因に
よって発生する周波数成分の最大値と実効値の比、その
最大値と平均値の差、その最大値と実効値の差、その最
大値と実効値の比の2乗値、又はその最大値と実効値の
差の2乗値を用いることができる。
【0021】上記信号分離手段は、例えばウェーブレッ
ト解析手段を用いることができる。
【0022】さらに、本発明は全周波数成分を用いる異
音による不良検査装置として、検査対象物の回転に伴っ
て発生する音又は振動を検出するセンサと、センサの出
力の微分値から判定信号を作成する判定信号演算手段
と、この判定信号を所定のしきい値と比較し、不良原因
の有無を判定する判定手段とを具備したものを提供す
る。
【0023】上記しきい値は、所定数ずつ用意された前
記特定の不良原因を持つ不良品と良品の検査対象物の夫
々について、判定信号の分布を求め、不良品の分布範囲
と良品の分布範囲の間にあって、統計的に不良品の分布
範囲内に属さないとみなせ、かつ、良品の分布範囲内に
属さないとみなせる判定信号の値を用いることができ
る。
【0024】上述した統計的に不良品又は良品の分布範
囲に属さない範囲は、夫々の分布について、各分布の平
均値μ1,μ2から標準偏差σのn倍を超えて離隔した範
囲とすることができる。
【0025】上記異音による不良検査装置は、検査対象
物の回転位置を検出し、音又は振動を検出するセンサの
出力から、特定の不良原因によって発生する異音の発生
期間の出力のみを取り出して検査するものとすることが
できる。
【0026】上記異音による不良検査装置は、検出した
検査対象物の回転位置の情報と、検査対象物の回転に伴
って発生する音又は振動を検出するセンサの出力から、
特定の不良原因によって発生する異音の発生期間の出力
のみを取り出して検査することにより、検査精度を高め
ることができる。
【0027】上記特定の不良原因は、例えば、エンジン
のバルブクリアランス大である。
【0028】
【発明の実施の形態】初めに、信号分離手段としてウェ
ーブレット解析手段を用い、回転部品であるエンジンの
不良検査を行なう本発明の装置を図1により説明する。
【0029】図1において、6は試運転ベンチの上に載
置されたエンジンで、その回転軸は連結装置7を介して
図示しないインバータモータの回転軸に連結されてい
る。このエンジン6からはカム角センサ及びクランク角
センサによって、検査対象物の回転位置を表わすカム角
信号とクランク角信号が検出される。8はセンサである
指向性マイクで、エンジン6の上部に吊設されてエンジ
ン音を検出する。このセンサは、エンジン6に取り付け
られて、その振動を検出する加速度センサを用いること
もできる。9は試運転の指令を行なう試運転ベンチの計
測盤である。この計測盤9は、エンジン6で検出された
カム角信号とクランク角信号を計測タイミングとして計
測制御信号と共に出力する。
【0030】10は解析処理部で、例えばウェーブレッ
ト解析プログラム等がインストールされたパーソナルコ
ンピュータによって構成され、計測盤9から出力された
計測制御信号と、計測タイミングを表わすカム角信号及
びクランク角信号に従って、計測、ウェーブレット解析
による周波数別の信号分離、良不良判定、並びに判定結
果の出力を行なう。
【0031】この計測処理部10は、指向性マイク8か
ら入力された音圧信号をA/D変換して記録する計測手
段11、信号分離手段であるウェーブレット解析手段1
2、判定信号演算手段13、しきい値設定手段14、判
定手段15、及び出力手段16を持つ。17は判定結果
を出力するモニターである。上記判定信号演算手段13
は、ウェーブレット解析により抽出された所定の周波数
成分の最大値、平均値、実効値等から判定信号を演算し
て求める。
【0032】上記図1の構成において、バルブクリアラ
ンス大についての異音による不良検査は次のように行わ
れる。
【0033】試運転ベンチの制御盤9で、計測開始のス
イッチを投入すると、制御盤9はインバータモータによ
り回転するエンジン6が所定の回転速度になったとき、
解析処理部10に計測制御信号を与えて、計測を開始さ
せる。解析処理部10は、指向性マイク8で検出した音
圧信号をA/D変換器を通して受け、計測手段11で記
録する。
【0034】バルブクリアランス大は、バルブの開閉タ
イミングにおける音圧信号を解析することにより検出さ
れる。そこで、ウェーブレット解析手段12は、カム角
信号によって得たバルブの開閉タイミング期間に記録し
た音圧信号から、バルブクリアランス大に対応する周波
数である12.5kHZの周波数成分を抽出する。
【0035】次に、判定信号演算手段13によって、抽
出された周波数成分の最大値と平均値の比を判定信号と
して求める。この判定信号は、判定手段15により、し
きい値設定手段14に設定された所定のしきい値と比較
されて良不良判定が行なわれ、出力手段16から判定結
果が出力されて、モニター17に表示される。
【0036】判定信号として、最大値と平均値の比を用
いるのは、図2に示すような関係があることが分かった
からである。クリアランス大の場合、着座速度が大きく
なり良品と比べて着座音が大きくなる(最大値大)。ま
た、着座速度が大きいので音発生時間は短いものとなる
(平均値小)。良品の場合、着座速度が小さいので着座
音が小さく(最小値小)、音発生時間が長くなる(平均
値大)。したがって、最大値と平均値の比を判定に用い
ると不良品と良品の音圧の特徴の差が明確になるのであ
る。
【0037】この場合のしきい値は、次のように定めら
れて、解析処理部10のしきい値設定手段14に設定さ
れている。
【0038】まず、同一形式のエンジンについて不良品
と良品を所定数ずつ用意する。不良品のテストピース
(TP)は、従来の方法ではしきい値が定められない規
格値+0.05mmのバルブクリアランス大のエンジン
である。これらの不良品と良品に対し、カム角信号によ
って検出したバルブの開閉タイミングにおける音圧を測
定し、ウェーブレット解析により上記周波数12.5k
HZの周波数成分を抽出する。さらに音圧変化の最大値
と平均値の比を求め、良品と不良品の分布を求める。
【0039】次に、統計的に不良品の分布範囲内に属さ
ないとみなせる比の値の範囲と、良品の分布範囲内に属
さないとみなせる比の値の範囲の中間に、しきい値を定
めることができるか検討する。各分布について、統計的
に分布範囲内に属さないとみなす範囲を、図8に示すよ
うに平均値μ1,μ2から標準偏差σの3倍だけ離れるま
での区間とすると、不良品(TP)と良品の範囲は図4
に示すように上下に明瞭に分かれるものとなった。そこ
で、不良品の範囲の下限値(μ1−3σ)と、良品の範
囲の上限値(μ2+3σ)の中間値を、しきい値として
決定することができた。
【0040】このようにして、従来方法では、しきい値
が定められなかった規格値+0.05mmのバルブクリ
アランス大という不良原因についても、統計的に一定の
信頼性をもって良品又は不良品でないと判断できる条件
の下に、適切なしきい値を設定することができた。
【0041】なお、バルブクリアランスが、規格値+
0.10mmというように、さらに大きい場合は、不良
品における上記最大値と平均値の比の分布が、良品の分
布からさらに離れて行くので、規格値+0.05mmの
バルブクリアランス大を検出するために設定した上記し
きい値で同時に検査できる。
【0042】また、上記説明では、判定信号として最大
値と平均値の比を用いて良不良を判定しているが、最大
値と実効値の比(波高率)、その最大値と平均値の差、
その最大値と実効値の差、最大値と実効値の比(波高
率)の2乗値、又は最大値と実効値の比(波高率)の2
乗値を用いることができる。これらの判定信号は、上記
判定信号演算手段13で求められる。また、各判定信号
についてのしきい値は、その判定信号について良品と不
良品の分布を求め、前記統計的手法により決定すること
ができる。但し、これらの判定信号を用いることによ
り、不良品と良品が明確に区別できるようになっている
場合は、前記統計的手法を必ずしも用いる必要はない。
【0043】なお、前記実施形態において、判定信号が
統計的に不良品又は良品の分布範囲に属さないとみなす
条件を、平均値μ1,μ2から標準偏差σの3倍を超えて
離隔することとしたが、この条件の標準偏差σによる平
均値μ1,μ2からの離隔の程度nσは、不良品と良品の
分布に応じて任意に設定することができる。例えば、不
良品と良品の分布が、標準偏差σをほとんど変えずに大
きく離れている場合は、nを3.5あるいは4とするこ
とができる。
【0044】また、上記実施形態は、信号分離手段12
としてウェーブレット解析手段を用いているが、これは
複数の帯域フィルタ等の他の周波数分離手段を用いるこ
とも可能である。
【0045】なお、解析処理部10は、前記ボア内異
物、コンロッドメタル欠品等の他の不良原因についても
検査を行っている。これらの検査において、ボア内異物
のように不定期に発生する異音は、センサの出力を、周
波数分離手段12であるウェーブレット解析手段に連続
的に入力して判定を行なう。コンロッドメタル欠品はク
ランクの回転に同期して異音が発生するので、クランク
角信号によって検出した発生タイミング期間のセンサの
出力について判定を行なう。
【0046】以上に述べた実施形態は、センサの出力か
ら特定の周波数成分を抽出して良不良判定を行なうもの
であったが、周波数分離手段を用いず、センサの出力の
全周波数成分を用いて異音による不良検査を行なうこと
もできる。
【0047】これは、図5に示すような不良品のセンサ
の出力波形(a)と良品のセンサの出力波形(b)を微
分すると、微分前には良品と識別することができなかっ
た不良品の微分波形(c)のピーク値が、良品の微分波
形(d)のピーク値より大きくなることに着目したもの
である。このように、不良品の微分波形のピーク値が大
きくなるのは、波形が急激に立ち上がる衝撃振動が発生
しているからである。
【0048】そこで、センサの出力の微分値を求め、こ
の微分値の最大値と実効値の比(波高率)を判定信号と
して用い、所定のしきい値と比較して、良不良を判定す
る。
【0049】この判定法は、例えば図1の構成におい
て、解析処理部10のウェーブレット解析手段12を用
いず、判定信号演算手段13に、計測手段11に記録さ
れた所定期間のセンサの出力を微分して、この微分値の
最大値と実効値の比(波高率)を求める機能を持たせる
ことによって可能になる。
【0050】上記判定は、異音が周期的に発生している
場合は、前記カム角信号のような検査対象部位の回転位
置を示す信号を用いて、その異音の発生期間のセンサの
出力のみを取り出して検査を行い、不定期に発生する異
音に対してはセンサの出力に対して連続的に検査を行な
う。
【0051】なお、微分値を用いる判定信号について
も、最大値と平均値の比、最大値と実効値の差、最大値
と平均値の差、最大値と実効値の比(波高率)の2乗
値、又は最大値と平均値の比の2乗値を用いることもで
きる。
【0052】この場合の各判定信号についてのしきい値
は、その判定信号について良品と不良品の分布を求め、
前記統計的手法により決定することができる。但し、不
良品と良品を明確に区別できる場合は、前記統計的手法
を必ずしも用いる必要はない。
【0053】このように全周波数成分を微分して所定の
しきい値と比較する方法は、上記ウェーブレット解析の
ように周波数分離手段を必要としないので、設備費が低
額になるという利点を有する。
【0054】以上に述べた特定の異音の周波数成分を抽
出して判定を行なう不良検査装置、及び全周波数成分の
微分値により判定を行なう不良検査装置は、エンジンの
他に、トランスミッションやモータ等の回転部品の検査
にも、同様に実施可能である。
【0055】
【発明の効果】本発明の請求項1にかかる発明は、特定
の不良原因によって検査対象物に発生する異音の周波数
成分の最大値と平均値の比を判定信号として用い、これ
を所定のしきい値と比較して、特定の不良原因の有無を
判定するので、官能検査でしか識別できなかった良品と
不良品の発生音の微妙な相異を定量的に識別して不良検
出を行なうことができる。
【0056】本発明の請求項2〜6にかかる発明は、夫
々、判定信号として、前記周波数成分の最大値と実効値
の比、最大値と平均値の差、最大値と実効値の差、最大
値と実効値の比の2乗値、最大値と実効値の差の2乗値
を用いることにより、請求項1の発明と同様に、不良品
の異音の特徴である衝撃音を効果的に取り出して、不良
検出を行なうことができる。
【0057】本発明の請求項7にかかる発明は、信号分
離手段としてウェーブレット解析手段を用いるので、任
意の周波数成分を大きさと時間について解析でき、発生
する雑音も小さいので、不定期に発生する異音と周期的
に発生する異音の両者に対して、精度高く不良検査が行
なえる。
【0058】本発明の請求項8にかかる発明は、センサ
の出力の全周波数成分の微分値から判定信号を作成する
ことにより、衝撃によって発生する急峻な波形を効果的
に抽出するので、ウェーブレット解析手段のような信号
分離手段を不用にして設備費を低減しながら、従来検出
できなかった不良検出が可能になる。
【0059】本発明の請求項9にかかる発明は、請求項
1から8の発明に用いるしきい値を統計的に最適化する
ので検査の信頼性を向上させることができる。
【0060】本発明の請求項10にかかる発明は、請求
項9の発明のしきい値の決定方法を具体的に提供したも
のである。
【0061】本発明の請求項11にかかる発明は、周期
的に発生する異音に対して不良検査を行なう場合に、そ
の異音発生期間のセンサの出力のみを解析することによ
り判定精度を向上させることができる。
【0062】本発明の請求項12にかかる発明は、検出
すべき特定の不良原因をエンジンのバルブクリアランス
大としたもので、この構成によって、例えば規格値+
0.05mmのバルブクリアランス大という不良を検査
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である異音による不良検査
装置の構成図である。
【図2】バルブクリアランス大の不良品と良品のバルブ
開閉時の音圧変動を比較して示す図である。
【図3】バルブ開閉時に発生する音圧の原因を説明する
図で、(a)はカムとバルブリフタとの位置関係、
(b)はバルブと吸排気孔との位置関係を示す図であ
る。
【図4】規格値+0.05mmのバルブクリアランス大
の不良品と良品の判定信号について統計的な分布範囲を
表した図である。
【図5】不良品(a)と良品(b)のセンサの出力波形
と、これらの微分波形(c)(d)を示す図である。
【図6】エンジン異音の代表的な発生原因を示す図で、
(a)はボア内異物、(b)はバルブクリアランス大、
(c)はコンロッドメタル欠品を夫々表わす。
【図7】図6の不良品の異音項目について、これを検出
できる周波数と、その周波数で抽出した音圧の不良品と
良品の分布と、しきい値の設定の可否を示した図であ
る。
【図8】平均値μと標準偏差σによって決められる統計
的に良品又は不良品とみなすことができる範囲を表わす
図である。 6 エンジン(検査対象物) 8 センサ(指向性マイク) 9 試運転ベンチの計測盤 10 解析処理部 11 計測手段 12 ウェーブレット解析手段(信号分離手段) 13 判定信号演算手段 14 しきい値設定手段 15 判定手段 16 出力手段 17 モニタ

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 検査対象物の回転に伴って発生する音又
    は振動を検出するセンサと、センサの出力から特定の不
    良原因によって検査対象物に発生する異音の周波数成分
    を抽出する信号分離手段と、信号分離手段により抽出し
    た前記周波数成分の最大値と平均値の比を判定信号とし
    て求める判定信号演算手段と、この判定信号を所定のし
    きい値と比較し、前記特定の不良原因の有無を判定する
    判定手段とを具備したことを特徴とする異音による不良
    検査装置。
  2. 【請求項2】 検査対象物の回転に伴って発生する音又
    は振動を検出するセンサと、センサの出力から特定の不
    良原因によって検査対象物に発生する異音の周波数成分
    を抽出する信号分離手段と、信号分離手段により抽出し
    た前記周波数成分の最大値と実効値の比を判定信号とし
    て求める判定信号演算手段と、この判定信号を所定のし
    きい値と比較し、前記特定の不良原因の有無を判定する
    判定手段とを具備したことを特徴とする異音による不良
    検査装置。
  3. 【請求項3】 検査対象物の回転に伴って発生する音又
    は振動を検出するセンサと、センサの出力から特定の不
    良原因によって検査対象物に発生する異音の周波数成分
    を抽出する信号分離手段と、信号分離手段により抽出し
    た前記周波数成分の最大値と平均値の差を判定信号とし
    て求める判定信号演算手段と、この判定信号を所定のし
    きい値と比較し、前記特定の不良原因の有無を判定する
    判定手段とを具備したことを特徴とする異音による不良
    検査装置。
  4. 【請求項4】 検査対象物の回転に伴って発生する音又
    は振動を検出するセンサと、センサの出力から特定の不
    良原因によって検査対象物に発生する異音の周波数成分
    を抽出する信号分離手段と、信号分離手段により抽出し
    た前記周波数成分の最大値と実効値の差を判定信号とし
    て求める判定信号演算手段と、この判定信号を所定のし
    きい値と比較し、前記特定の不良原因の有無を判定する
    判定手段とを具備したことを特徴とする異音による不良
    検査装置。
  5. 【請求項5】 検査対象物の回転に伴って発生する音又
    は振動を検出するセンサと、センサの出力から特定の不
    良原因によって検査対象物に発生する異音の周波数成分
    を抽出する信号分離手段と、信号分離手段により抽出し
    た前記周波数成分の最大値と実効値の比の2乗値を判定
    信号として求める判定信号演算手段と、この判定信号を
    所定のしきい値と比較し、前記特定の不良原因の有無を
    判定する判定手段とを具備したことを特徴とする異音に
    よる不良検査装置。
  6. 【請求項6】 検査対象物の回転に伴って発生する音又
    は振動を検出するセンサと、センサの出力から特定の不
    良原因によって検査対象物に発生する異音の周波数成分
    を抽出する信号分離手段と、信号分離手段により抽出し
    た前記周波数成分の最大値と実効値の差の2乗値を判定
    信号として求める判定信号演算手段と、この判定信号を
    所定のしきい値と比較し、前記特定の不良原因の有無を
    判定する判定手段とを具備したことを特徴とする異音に
    よる不良検査装置。
  7. 【請求項7】 信号分離手段として、ウェーブレット解
    析手段を用いたことを特徴とする請求項1〜6のいずれ
    か1項に記載した異音による不良検査装置。
  8. 【請求項8】 検査対象物の回転に伴って発生する音又
    は振動を検出するセンサと、センサの出力の微分値から
    判定信号を作成する判定信号演算手段と、この判定信号
    を所定のしきい値と比較し、不良原因の有無を判定する
    判定手段とを具備したことを特徴とする異音による不良
    検査装置。
  9. 【請求項9】 所定数ずつ用意された特定の不良原因を
    持つ不良品と良品の検査対象物の夫々について判定信号
    の分布を求め、不良品の分布範囲と良品の分布範囲の間
    にあって、統計的に不良品の分布範囲内に属さないとみ
    なせ、かつ、良品の分布範囲内に属さないとみなせる判
    定信号の値を、しきい値として用いることを特徴とする
    請求項1〜8のいずれか1項に記載した異音による不良
    検査装置。
  10. 【請求項10】 判定信号が統計的に不良品又は良品の
    分布範囲に属さない範囲を、夫々の分布について、各分
    布の平均値μ1,μ2から標準偏差σのn倍を超えて離隔
    した範囲としたことを特徴とする請求項8に記載した異
    音による不良検査装置。
  11. 【請求項11】 検出した検査対象物の回転位置の情報
    と、検査対象物の回転に伴って発生する音又は振動を検
    出するセンサの出力から、特定の不良原因によって発生
    する異音の発生期間の出力のみを取り出して検査するこ
    とを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載し
    た異音による不良検査装置。
  12. 【請求項12】 検出する特定の不良原因が、検査対象
    物のバルブクリアランス大であることを特徴とする請求
    項1〜11のいずれか1項に記載した異音による不良検
    査装置。
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