JP2003214296A - 燃料噴射弁 - Google Patents

燃料噴射弁

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JP2003214296A JP2003028779A JP2003028779A JP2003214296A JP 2003214296 A JP2003214296 A JP 2003214296A JP 2003028779 A JP2003028779 A JP 2003028779A JP 2003028779 A JP2003028779 A JP 2003028779A JP 2003214296 A JP2003214296 A JP 2003214296A
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祐一 佐々木
Toru Ishikawa
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Abstract

(57)【要約】 【課題】一つの燃料噴射弁により成層燃焼モード、均質
燃焼モードのそれぞれの合った燃料噴霧形態を作り出
し、燃費向上,出力向上を図り、広範囲の回転域で安定
したエンジン性能が得られる筒内噴射式の燃料噴射弁を
提供する。 【解決手段】弁体13の周囲を通過する燃料に弁座部7
の上流で旋回力を与える燃料旋回手段15と、旋回燃料
を噴射するノズル16とを備える。ノズル16の噴射口
17から噴射される燃料噴霧47は、燃料噴射弁本体軸
線Cを基準にして一方向に偏向し、偏向する側の噴霧到
達距離L1が大きく、偏向する側と反対側の噴霧到達距
離L2が小さくなる噴霧形状に設定されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエンジンの気筒内に
直接ガソリンを噴射する筒内噴射式エンジン用の燃料噴
射弁(インジェクタ)に関する。
【0002】
【従来の技術】高出力、低燃費、低公害という社会的要
求を満たすガソリンエンジンとして、筒内噴射式の燃料
噴射弁を用いたもの(筒内噴射式ガソリンエンジン)が
注目されている。発想自体はかなり以前からあったが、
燃焼室に直接燃料を噴射するため、実施化するためには
従前は高圧噴射技術,耐圧性,耐熱性等のクリアすべき
課題が残されていたが、現代における制御技術や生産技
術のめざましい進歩によって、量産が可能な技術水準と
なり、自動車メーカ各社が市販または開発試作段階にあ
る。
【0003】筒内噴射式の燃料噴射弁は、噴射弁本体を
エンジンに取付けた状態において燃焼室(気筒内)に直
接臨む燃料噴射口を有するノズル、燃料通路の開閉を行
なう弁体、弁体を開弁(吸引)させるための電磁コイ
ル、閉弁させるためのスプリング、磁気回路を形成する
ヨーク、コア等からなる。また、弁座上流で燃料に旋回
力を与えるスワラー(燃料旋回手段)、動的噴射量の調
整を行なうスプリングアジャスタ等を備えている。
【0004】このような筒内噴射式の燃料噴射弁の構造
上の特徴は、噴霧液滴の微粒化(気化時間の短縮)、高
噴射率化(噴射時間の短縮)のために3〜10MPaと
燃料圧力が高圧になるため、0.3MPa程度である従
来の筒外噴射式の燃料噴射弁と比較して耐圧性,油密性
が強化されていることと、ノズルが燃焼ガスにさらされ
るため耐熱性、気密性が強化されている。
【0005】筒内噴射式ガソリンエンジンの燃焼におい
ては、燃料噴射弁より噴射される噴霧の特性・形状は非
常に重要である。エンジンの燃焼モードには、均質燃焼
と成層燃焼とがあり、これらの燃焼モードを図8に示
す。
【0006】均質燃焼はエンジンサイクルの吸気行程の
間に燃料を噴射し、圧縮行程を経て点火・燃焼するまで
に燃焼室内の混合気をほぼ理論空燃比(A/F≒15)
に均質化するような燃焼であり、ガソリンが気化熱を奪
って吸入空気を冷却するために、体積効率が向上し、ま
た燃焼ガス温度がさがるため従来のポート噴射エンジン
より高出力化できる。均質燃焼での噴霧は燃焼室全体に
燃料を拡散させる必要があるため、広く均一な噴霧(混
合気)が必要であり、シリンダ壁面に燃料が付着して液
膜とならないよう噴霧速度は低いことが望ましい。均質
燃焼モードは、加速運転や高負荷運転のように出力重視
のときに行なわれる。
【0007】成層燃焼は圧縮行程中に燃料を噴射し、ス
ワール,タンブルといった気流やピストン冠面のキャビ
ティ等を利用して点火プラグ周りに燃えやすい混合気を
集中させ、その周りには空気層を形成して、シリンダ内
全体でみれば超希薄燃焼となるような燃焼で、燃費を大
幅に向上できる。成層燃焼モードは、燃費重視であり、
低負荷、アイドル運転時等に行なわれる。成層燃焼にお
ける噴霧は、点火プラグ周辺に集中させるためコンパク
トな噴霧が望ましいが、背圧が高くなると噴霧の広がり
は小さくなる性質があるので、高圧縮時に噴射した場
合、噴霧は大気噴射に比べて広がらない。
【0008】従来より、燃料噴射弁には、霧化性能(燃
料微粒化)やスワール性能を高めるために、種々の提案
がなされている。
【0009】例えば、特開平8−296531号公報で
は、バルブボディ内の下部に筒状のスワラーを設け、こ
のスワラーの内径にニードルバルブを摺動可能に貫通さ
せ、ニードルバルブが当接する弁座部の下流側に内面が
テーパ状で底面が球状凹面をなす燃料噴射室を形成し、
この燃料噴射室の底面中心から噴射孔(燃料噴射口=オ
リフィス)を外部に貫通するように形成し、また、この
噴射孔にはバルブボディ(燃料噴射弁本体)の軸線(中
心線)に対して傾きを与えており、噴射孔の出口側に、
該噴射孔に対して直角に平面部を形成している。
【0010】特開平7−119584号公報では、スワ
ールノズル(ノズルボディ)に弁座上流に位置するよう
にしてスワールカラー(燃料旋回手段)を設け、弁座下
流に逆円錐形のサックホールを設け、このサックホール
の延長線上に噴射孔(燃料噴射口=オリフィス)を設
け、また、サックホールと噴射孔との中心線が一致し
て、この中心線がスワールノズル(燃料噴射弁本体)の
軸線に対して傾きを与えてある。この従来例では、噴射
孔に傾きを与えた場合であっても、スワール旋回中心線
に対し直交する平面上で回転するスワールの回転中心
が、噴射孔の中心線に沿う直線上の軌跡をほぼ描きなが
ら、スワールが噴射孔に至る。このようにして、サック
ホール内でのスワール損失が小さくなって回転力の強い
スワールが噴射孔に送られ、燃料の微粒化が促進される
とともに、噴霧角度が大きくなって燃焼室内の噴霧の広
がりが良くなることで、燃焼効率が高められるとしてい
る。
【0011】上記した従来公知例の燃料噴射弁の本体
は、筒内噴射方式の場合、一般に気筒上部に取り付けら
れるが、燃料噴射口を燃料噴射弁本体軸線を基準にし
て、それよりもピストン冠面のキャビティ側(反点火プ
ラグ側)に偏向させ、キャビティに向けての偏向噴霧を
行なって、成層燃焼時にキャビティの形状を利用して点
火プラグ側に燃料噴霧の向きを変えるようにしてある。
【0012】特開平5−33739号公報には、噴霧ノ
ズルとカバーとの間にエア室を形成し、エア室からのア
シストエアを各エア噴出孔を介してスワールチャンバー
内に接線方向に噴出させ、噴出孔からの噴射燃料を旋回
させつつ、噴出穴からエンジン気筒内に直接噴射させる
ことが記載されている。
【0013】特開平6−221249号公報には、1つ
の燃焼室内に設けた2本のインジェクタのうち、一方の
インジェクタの噴霧角を他方のインジェクタの噴霧角に
比較し広角側に設定するとともに、その狭角側インジェ
クタを広角側インジェクタに比較して点火プラグに近づ
けて配置し、狭角側インジェクタは少なくとも軽負荷域
で、広角側インジェクタは高負荷域で使用することが記
載されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記した成層燃焼モー
ドでは、点火プラグ周辺に燃料噴霧を集中させることが
ポイントであり、均質燃焼モードでは、気筒内に広く均
一に燃料噴霧を行なうことがポイントであり、また、均
質燃焼、成層燃焼に共通して噴霧粒径は気化時間短縮の
ため小さいほど良い。さらに、燃料噴射量のばらつきを
なくすことが必要である。
【0015】気筒内(燃焼室内)に直接燃料を噴射する
内燃機関においては、燃料噴射弁により噴射される噴霧
の方向、形状、流量、流速(噴霧到達距離)が点火時に
おける燃焼室内の混合気の濃度分布に大きな影響を与
え、結果的にエンジン性能を左右する。
【0016】以上からすれば、筒内噴射式ガソリンエン
ジンの燃焼においては、燃料噴射弁より噴射される噴霧
の特性(噴霧の方向、形状、流量・流速分布等)を、上
記要求に応えて作り出す必要がある。
【0017】本発明の目的は、上記の要求に応えて、一
つの燃料噴射弁により成層燃焼モード、均質燃焼モード
のそれぞれに合った燃料噴霧形態を作り出し、燃費向
上,出力向上を図り、広範囲の回転域で安定したエンジ
ン性能が得られる筒内噴射式エンジン用の燃料噴射弁を
提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に今回提案する基本発明は次の通りである。
【0019】すなわち、弁体の周囲を通過する燃料に弁
座部の上流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料
を噴射するノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃
料噴射弁において、前記ノズルの噴射口から噴射される
燃料噴霧は、燃料噴射弁本体軸線を基準にして一方向に
偏向し、偏向する側の噴霧到達距離が大きく、偏向する
側と反対側の噴霧到達距離が小さくなる噴霧形状に設定
されていることを特徴とする(請求項1記載発明)。
【0020】上記構成によれば、図6に示すように燃料
噴射弁1を、気筒40の上部位置に燃料噴射弁本体軸線
Cが気筒軸線Aに交差(この交差は立体的,平面的いず
れの交差も含む)する角度を有して取付けた場合(換言
すれば燃料噴射弁1を気筒軸線Aに垂直な面Bに対して
斜め角度に取り付けた場合)であっても、気筒内40に
直接噴射される燃料噴霧を、燃料噴射弁本体軸線Cを基
準にして点火プラグ41側に偏向させることが可能にな
る。また、上記の点火プラグ側の偏向噴霧に加えて、点
火プラグ側に偏向する噴霧到達距離L1を大きく、偏向
する側と反対側の噴霧到達距離L2を小さくすることが
可能になる。
【0021】このような偏向噴霧によれば、成層燃焼モ
ード時に直接的に点火プラグ周辺に燃料噴霧を集中させ
る度合いを高める。また、成層燃焼モードによる燃料噴
射は、エンジン燃焼室(気筒内)が高圧下の圧縮行程時
に行われるため、燃料噴霧の広がりが小さくなる傾向に
ある。この燃料噴霧が小さくなる傾向は、成層燃焼モー
ドで要求されるコンパクトな混合気形成領域を作る上で
必要であるが、あまり燃料噴霧の広がりが小さすぎる
と、良好な混合気形成領域が得られなくなる。本発明で
は噴霧方向を点火プラグ側に偏向させた分だけ燃料噴霧
エリアを拡げて噴霧角を拡げることが可能なので、燃料
噴霧広がりが要求以上に小さくなるのを防いで、適度に
燃料噴霧を点火プラグ周辺に集中させるためのコンパク
トな噴霧が得られる。均質燃焼モード時には、圧力の低
い吸入行程時に燃料噴射が行われ、広がりのある燃料噴
霧を得られるが、本発明では、噴霧方向を点火プラグ側
に偏向させた分だけ今まで以上に燃料噴霧エリア(燃料
噴霧角)をより広げることが可能になり気筒内の燃料の
均質化を高める。
【0022】また、要求噴霧方向の角度β1(β1は図7
に示すように気筒軸線Aに垂直な面Bと燃料噴霧中心線
Dとのなす角度である)を、燃料噴射弁1のエンジン取
付角β2(β2は図7に示すように気筒軸線Aに垂直な面
Bと燃料噴射弁本体軸線Cとのなす角度である)だけで
はエンジン取付角の制約から実現できない場合であって
も、本発明では、燃料噴霧を燃料噴射弁本体軸線Cを基
準に点火プラグ側に偏向させるので、この噴霧偏向角β
3と燃料噴射弁取付角β2とを利用することで、要求噴霧
方向の角度β1を得ることができる。
【0023】上記の点火プラグ側の偏向噴霧に加えて、
点火プラグ側に偏向する噴霧到達距離L1を大きく、偏
向する側と反対側の噴霧到達距離L2を小さくした場合
には、到達距離の長いL1の方は着火性を確保する高速
成分となり、また、到達距離の短いL2の方は、短い分
だけピストン冠面に付着するのが防止されて、未燃成分
を抑制し煤排出を低減する低速成分となる。
【0024】以上の作用により、成層燃焼モードに要求
される超希薄燃焼を実現し、また、均質燃料モードに要
求される出力向上,低スモークを実現することができ
る。
【0025】なお、燃料噴射弁の要求噴霧方向と取付角
度が適合する場合には、偏向噴霧を必要とせず、この場
合には、ノズルの噴射口を偏向させず、噴射される燃料
噴霧について、点火プラグ寄りの方の噴霧到達距離が大
きく、反点火プラグ寄りの噴霧到達距離が小さくなるよ
うに設定すればよい。
【0026】(2)さらに、筒内噴射式ガソリンエンジ
ンに好適な燃料噴射弁の具体的態様として、請求項2以
降に記載の燃料噴射弁を提案する。これについては、発
明の実施の形態の項で実施例を用いて説明する。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面により
説明する。
【0028】図1は、本発明の一実施例に係り、筒内噴
射式エンジン(ガソリンエンジン)に使用する燃料噴射
弁の縦断面図、図2はそのノズル部を拡大して燃料噴霧
の噴射状態を示す説明図、図3(a)は図1の燃料噴射
弁に用いるノズルボディの縦断面図、図3(b)はその
下面図、図4は図3(a)の弁座部及び燃料噴射口付近
を示す部分拡大図、図5はノズルボディに内装したスワ
ールオリフィスを図2のX−X´線矢視方向からみた横
断面図である。
【0029】図1に示す燃料噴射弁1は、アクチュエー
タとして電磁コイルを用いた燃料噴射弁の一例である。
アクチュエータの磁気回路要素として固定コア2,ヨー
ク(ケース)3,可動コア(プランジャ)4を備える。
【0030】固定コア2は細長の中空筒体で軸方向にフ
ランジ2Aを備え、このフランジ2Aよりも下半部がヨ
ーク3に内装される。フランジ2Aはヨーク3の上部開
口に嵌まり込み、ヨーク3の上部開口内周縁を加圧して
符号50に示すように塑性流動させることで、固定コア
2とヨーク3とを塑性結合している。なお、この結合は
その他、加締めなどを用いても良い。フランジ2Aに
は、電磁コイル10のターミナル9が設けてある。
【0031】固定コア2は、内部に燃料通路5が軸方向
に貫通して形成され、燃料通路5の一端(燃料流入側と
反対側の端部)には、可動コア4のリターンスプリング
6が挿入され、このリターンスプリング6によって可動
コア4が弁閉方向(弁座7方向)に付勢される。固定コ
ア2の内部には、リターンスプリング6のばね力を調整
するための中空のスプリングアジャスタ8が設けてあ
り、このアジャスタ8の内部が燃料通路5の一部を形成
している。
【0032】電磁コイル10は、モールド樹脂11で覆
われ、そのコイルのボビン10A内に固定コア2の一部
が挿入固定され、この固定コア2の一部と共に筒形のヨ
ーク3内に内装されている。モールド樹脂11は、電磁
コイル10を保護し及びリーク電流を防止する。18は
燃料がコイル組立体側に流入するのを防止するシールリ
ングである。
【0033】電磁コイル10には、ターミナル9を介し
て駆動用の電気信号が印加される。ターミナル9は、ヨ
ーク3の上方に配置したモールド樹脂成形体20内部に
埋設され、その一端がコネクタ部20Aに位置してコネ
クタ端子を構成している。
【0034】ヨーク3の下部には、有底筒状のノズル
(ノズルボディ)15が固着してある。ノズル15の底
部には、弁座7、燃料噴射口となるオリフィス17が設
けられ、ノズル15内に該ノズル内底に支持される燃料
旋回子(以下、スワラーと称することもある)16が配
置される。スワラー16は弁座7の上流に位置する。
【0035】スワラー16は、その中央に球弁(弁体)
13のガイド孔(中央孔)16Aが設けられ、スワラー
16の外周及び底部にノズル15内の燃料通路14とガ
イド孔16Aとを連通させる燃料通路16B,16B′
が形成してある。
【0036】図5にスワラー16を図2のX−X′線矢
視図により底部側から見た図を示しており、スワラー1
6は、その外周が90°間隔で配置した4つ円弧部16
Cと、円弧部間の溝部(燃料通路)16Bよりなり、円
弧部16Cはノズル内周に密着し、溝部16Bはその開
口側面がノズル15内周に被われて燃料通路を構成す
る。スワラー底部に形成された溝16B′は、ノズル内
周に覆われて燃料通路を構成し、スワラー中心に対して
通路方向が偏心することで、燃料通路溝16B,16
B′を通過する過程で燃料に旋回力を付与する。このよ
うにして、燃料通路16B´から流出して弁体13の周
囲を通過する燃料に弁座部7上流で旋回力を与える。
【0037】可動コア4は、先端に球弁13を固着した
中空のプランジャロッド4Aと結合されている。プラン
ジャロッド4Aの側壁に燃料通孔41が配設してある。
21は可動コア4の開方向のストロークを規制するスト
ッパである。
【0038】固定コア2,ヨーク3,可動コア4は、磁
性材で構成され、ロッド部4A,球弁13,ストッパ2
1,スプリングアジャスタ8は非磁性材で成形される。
【0039】球弁13は、電磁コイル10の非通電時に
は、リターンスプリング6のばね力及び燃圧を受けて弁
座7に接して閉弁状態を保持している。
【0040】電磁コイル10に電気信号が印加され通電
状態になると、固定コア2,ヨーク3,可動コア4で磁
気回路が形成され、可動コア4が固定コア2側に磁気吸
引される。また、球弁13も可動コア4と共にスワラー
16内周にガイドされて移動し、弁座7から離れ、開弁
する。
【0041】開弁状態になると、燃料は、図示しない燃
料ポンプ、燃圧レギュレータ及びアキュームレータ等の
配管機器を経由して、固定コア2に設けた燃料通路5,
フィルタ22,可動コア4内部,ロッド部4Aに設けた
内部通路,燃料通孔41,ノズル(ノズルボディ)15
内の通路14,スワラー16を通り、スワラー16で旋
回力を付与されて弁座部7を有するテーパ状のホールで
旋回しながらオリフィス17を介してエンジンの気筒内
に直接噴射される。
【0042】図2〜図4によりノズル15の構造につい
て説明する。
【0043】有底筒状のノズル15の底壁15Aの中央
部には、燃料の噴射口17となるオリフィスと、噴射口
17の入口17Aの位置から上流に向けて径が拡がって
球弁13の一部を受入れ且つ弁座部7を有する拡径ホー
ル31とが形成される。本例では、拡径ホール31は逆
円錐形で構成されるが、その一部を曲面としてもよい。
【0044】噴射口17を構成するオリフィスは、燃料
噴射弁本体軸線Cに対して傾きを有し、この傾き角(偏
向角)αは燃料噴射弁本体軸線Cを基準にして5〜10
°の範囲(ここでは、8.5°)で設定してある。
【0045】噴射口17に偏向角αを与えることで、燃
料噴射弁1から噴射される燃料噴霧47(換言すれば燃
料噴霧中心線)は、燃料噴射弁本体軸線Cを基準にして
一方向(弁座部7側から噴射口17をみて噴射口17が
偏向する方向)に偏向する。燃料噴霧17の中心線と噴
射口軸線Eとは、燃料噴射弁本体Cを基準にして偏向角
がほぼ一致し5〜10°である。
【0046】ノズル15の噴射口17の出口周縁は、本
例では後述する小突起30により形成されているが、こ
の出口周縁30及び噴射口出口17Bは、燃料噴射弁本
体軸線Cに非垂直な斜面をなす。ここでは、図4に示す
ように、出口周縁30のうち噴射口出口17B面より噴
射側に出る斜面部30″を斜面上り側、噴射口出口17
Bより反噴射側に後退する斜面部30´を斜面下り側と
定義する。噴射口出口17Bを斜面にカットすることに
よって、少なくとも噴射口17の長さは非軸対称とな
る。なお、本例では、噴射口出口17Bの斜面と噴射口
中心線Eとのなす角度を90°としているので、噴射口
出口17Bの形状は真円となり、また。その出口17B
のエッジ角も軸対称である。噴射口出口17Bの斜面と
噴射口中心線Eとのなす角度が非垂直(≠90°)であ
れば、出口17Bの形状及びエッジ角は非軸対称とな
り、その出口17Bの斜面角度を変えることにで、所望
の噴射口出口形状が得られる。
【0047】このように噴射口出口17Bを斜面にカッ
トすると、旋回燃料の燃料噴霧は、図2に示すように、
コーン形状を呈しつつ出口周縁30の斜面下り側30´
の方の噴霧到達距離L1及び噴霧量が大きく、斜面上り
側30″の方の噴霧到達距離L2が小さくなる噴霧パタ
ーンが得られた(L1>L2)。また燃料噴霧量も分布も
1側の多く、L2側が少ないことが確認された。
【0048】その理由の一つとして次のようなことが考
えられる。図4に示すように、噴射口17の出口17B
及び出口周縁30端面を斜面にすることで、噴射口17
の長さは非軸対称となり、その結果、噴射口17のオリ
フィス長lのうち出口周縁30の斜面上り側30″の方
のオリフィス壁面長l2と斜面下り側30′の方のオリ
フィス壁面長l1とはl2>l1となり、弁座7の弁体3
1の接触位置から噴射口出口17Bまでの流路長Mも、
出口周縁30の斜面上り側30″の方の長さM 2と斜面
下り側30′の方の長さM1とがM2>M1となり、旋回
流の経路長Mが位置に応じて異なるため、圧力損失など
流路壁面の影響に差が生じることである。この場合、経
路長(流路長)Mの長い側(M2側)の損失が大きく、
2側の噴霧到達距離(貫通力,流速)も小さくなり
(噴霧到達距離L2)、逆に経路長Mの短い側(M1側)
の損失が小さく、M1側の噴霧到達距離が大きくなる
(噴霧到達距離L1)。また、噴霧到達距離(噴霧速
度)のほかに、燃料噴霧の流量分布に方向性をもたせる
ことができる(M1側の燃料噴霧をM2側の燃料噴霧量よ
りも多い流量分布にすることができる)。なお、噴霧到
達距離(流速分布)や噴霧流量分布に方向性を与える要
素としては、そのほかに、噴射口17の出口周縁の斜面
の傾き度合いにより噴霧出口形状を変えたり、噴射口出
口エッジ角度を噴射口周方向の位置に応じて異ならせた
り(出口エッジ角度の非軸対称)、噴射口に傾斜角度を
与えたことによる噴射口入口17Aのエッジ角度や形状
を変化させることが考えられる。
【0049】すなわち本実施例の燃料噴射弁は、ノズル
15の噴射口17から噴射される燃料噴霧47が、燃料
噴射弁本体軸線Cを基準にして一方向に偏向し、偏向す
る側の噴霧到達距離L1が大きく、偏向する側と反対側
の噴霧到達距離L2が小さくなる噴霧形状(L1>L2
に設定されている(請求項1対応)。
【0050】本実施例では、上記の出口周縁30を次の
ようにして確保している。
【0051】噴射口17を有するノズル15の底部外面
の中央に、高さが噴射口17のオリフィス長lよりも短
い小突起30を形成し、噴射口17は、燃料噴射弁本体
軸線Cに対して傾きを有し出口17Bを小突起30の位
置に形成する。このようにすることで、小突起30が噴
射口17の出口周縁の壁部となる。小突起(出口周縁)
30の先端面は、弁座部7側から噴射口の出口17Bを
みて、該噴射口の偏向方向側を低く、反偏向側を高くし
た斜面にしてある(請求項7対応)。
【0052】球弁13、弁座径(弁体が接触する位置の
径)、弁座角、オリフィス(噴射口)17、小突起30
等の仕様は次の通りである。例えば、球弁の直径2m
m、弁座径(弁体が接する位置のシート径)1.4m
m、弁座角90°、オリフィス径0.6〜0.9mm、
オリフィス長(オリフィス中心軸上のオリフィス長)は
オリフィス径の0.3〜1.3倍、小突起30の直径2
〜3mm、オリフィス出口周縁の斜面上り壁部の高さH
2=0.43〜0.8mm、斜面下り壁部の高さH1
0.1〜0.46mmである。また、斜面の傾きγ=5
〜10°(ここでは8.5°)である。
【0053】本例の小突起30は、図3(b)のノズル
ボディ底面図に示すように、小突起の中心線Oに垂直な
面が半円周よりも大きい円弧と該円弧の両端を結ぶ弦に
より囲まれる輪郭よりなる。小突起30の高さは、弦側
の方を高く、弦側と反対側の方を低くして小突起先端面
を斜面にしてある。噴射口17は小突起の中心線Oを基
準にして噴射口入口17A側が弦側に偏り噴射口出口1
7B側が弦側と反対側に偏る傾斜にしてある(請求項8
対応)。
【0054】上記のように小突起30の輪郭を円弧と弦
により構成し、この円弧と弦に噴射口17の傾き及び小
突起先端面の斜面の方向性を合わせることで、円弧と弦
を目印にして、燃料噴射弁の燃料噴霧の偏向方向を知る
ことができるようにしてある。
【0055】図2,図4に示すように、本例の噴射口1
7(噴射口中心線E)は燃料噴射弁本体軸線Cに対して
傾きを持って形成されているが、燃料噴射弁本体軸線C
と噴射口17の中心線Eとの交点Gが噴射口17を構成
するオリフィス内に位置する(請求項9対応)。
【0056】このように交点Gを噴射口17内に位置さ
せると、図4に示すように、燃料噴射口17の入口17
Aのエッジ角が弁座7径の中心線(弁座径中心線は燃料
噴射弁本体軸線Cに一致する)対して非軸対称となる。
この噴射口入口17Aの非軸対称も燃料噴霧形態に影響
を及ぼすものと考えられる。
【0057】弁座部7に閉弁時に接する弁体13は球形
をなし、閉弁時に弁体13の球面先端が噴射口の入口1
7Aより下の位置にあって噴射口17内に入り込むよう
設定してある(請求項16対応)。閉弁時の弁体先端は
噴射口入口17Aと同レベル位置にあってもよい。
【0058】このようにすれば、開弁時の弁体13先端
面と噴射口入口17A間のデッドボリューム(遊び空
間)を小さくし、旋回燃料の旋回力の減衰を極力なくし
て燃料を噴射することができる。燃料噴霧の旋回力を高
める結果、燃料噴霧も旋回エネルギーの大きい外側が密
で旋回エネルギーの小さい内側が粗な傾向のコーン形状
の噴霧となり、このような形状にすることで、旋回エネ
ルギーを有効に利用して燃料噴霧の微粒化を図ることが
できる。また閉弁時には残留燃料が付着しやすいデッド
ボリューム壁面を極力小さくすることで、残留燃料を溜
りにくくし、その結果、空燃比精度を向上させる。
【0059】上記のデッドボリュームの低減による効果
及び旋回エネルギーの向上は、球弁13の先端面を燃料
噴射口入口17Aと同レベル或いは燃料噴射口に入り込
ませなくとも、実験の結果、次の関係式を満足させるこ
とで得られることが判明した。
【0060】すなわち、図9に示すように、弁座部7に
閉弁時に接する弁体13の先端が弁座部7下流の噴射口
17の入口17Aに臨み、弁体13が弁座部7に接する
位置から噴射口入口17Aまでの距離をy、弁体13が
弁座部7に接する位置から弁体先端までの距離をzとし
た場合、y≦2zである条件を満足すること(請求項1
5対応)。
【0061】噴射口17の長さをl(この長さlは、噴
射口中心軸上のオリフィス長である)、噴射口の直径を
dとした場合、0.3<l/d<1.3に設定してある
(請求項14対応)。ここで、l/dの下限値を0.3
としたのは、これ以上小さくなると、燃料噴霧に意図す
る偏向角が得られず、また、1.3以上だと圧力損失が
大きく噴霧粒径が大きくなり、要求噴霧粒径(100μ
m)を確保できなくなるためである。
【0062】なお、本実施例のおける燃料の旋回方向
は、図5の矢印に示すように、弁座下流側からみれば反
時計方向であるが、弁座上流からみれば時計方向であ
る。このようにしたのは、噴射口17の出口17B及び
周縁30の先端面に斜面を設け、弁座中心軸Cを基準に
噴射口17の入口17Aを出口周縁の斜面上り側30″
に偏らせ、出口17Bを出口周縁の斜面下り側30´に
偏るように噴射口17に傾きを設けた場合には、上記の
ように旋回燃料に方向づけした方がそれと逆回りの旋回
方向よりも良好な偏向噴霧形態が得られたためである。
【0063】既述したように、有底円筒形のノズル15
は、図2に示すように、スワラー16となるチップを内
装し、このチップ16は、中央に球弁(弁体)13のガ
イド孔16Aを有し外周及び下面に偏心した燃料通路1
6B,16B´を有するが、ノズル15の内周面のうち
ノズルの内底面15Bと交わるコーナー15Cからチッ
プ16高さの中途位置でのチップ軸垂直面Qに交わる内
周位置15Dにかけての内径を拡げ、この内径を拡げた
内周部15Fのうちノズル15の内底面と交わるコーナ
15Cをノズル内底のチップを受ける面15Bより下方
に位置する窪み60にして設けた(請求項17対応)。
【0064】このような構成によれば、ノズル15の内
周面のうちチップ16を内装する箇所は、内径の異なる
内周面により構成され、そのうち内径の小さい方の内周
面15Gが内径の大きい方の内周面15Fの上流に位置
してチップ16外側面の非燃料通路面(図5に示す円弧
面16C)に密着し、一方、内径の大きい方の内周面1
5Fはノズルの内底面と交わるコーナー15Cからチッ
プ高さの中途位置でのチップ軸垂直面Qに交わる内周位
置15Dにかけて形成される。また、コーナー15Cが
位置する窪み60は、内底面の周縁に形成したテーパ6
1がこの内径の大きい内周面15Fと交わることで形成
される。径の異なる内周面15Gと15Fとの間の境界
部15Dもテーパで形成される。なお、本例では、一例
として、図3に示すように、内径の小さい方のノズル内
周面15Gの内径DSをΦ5.9mm、内径の大きい方
のノズル内周面15Fの内径DLをΦ6.2mm、内径
差境界位置15Dのテーパ角Tθ 1をノズル内周面を基
準にして30°、窪み60を形成するテーパ角Tθ 2
ノズル内周面を基準にして60°、窪み60の深さHD
をノズル内底面を基準にして0.26mm、拡径内周溝
15Fの幅Wを3mmとした。スワラー16の燃料通路
16B´の溝幅は0.4m、溝高さは0.19mmであ
る。
【0065】このような径を拡げた内周部(内周溝)1
5Fを形成し、かつコーナー15Cを窪み16に設ける
ことで、次のような作用,効果が得られる。
【0066】従来例の場合には、図19に示すように本
願発明のような拡径内周面15Fを有さないために、ス
ワラーの燃料通路が単純なエルボ形に曲がる形状であ
り、このような通路構造のコーナー部では強い燃料剥離
が起きて流路の圧力損失を大きくしている。これに対し
て、本実施例品の場合には、図18に示すように拡径内
周面15Fがコーナ部15C付近の燃料流路の拡張にも
たらして流速を落して剥離による圧力損失を減らすこと
ができる。なお、燃料はコーナー部15Cを通過した通
路が再び絞られるので流速は回復する。また、ノズルの
拡径内周部15Fの入口,出口にテーパ15D,61を
設けることにより、流路の広がり損失と細まり損失の発
生を極力抑えている。
【0067】したがって、上記のノズル内周構造によ
り、燃料噴霧の旋回エネルギーの向上、ひいては燃料微
粒化を促進させることができる。
【0068】ノズル15のうち底部外面は研磨加工し、
また、燃料噴射弁本体軸線Cに対して非垂直面とするこ
とで、煤付着及び燃料が付着しにくいように配慮してあ
る。
【0069】図6,7は上記した本発明に係る燃料噴射
弁1を筒内噴射式ガソリンエンジンの燃焼システムに適
用した例を、気筒の一部を縦断面して示す説明図であ
る。
【0070】図6において、40は気筒(シリンダ)、
41は点火プラグ、42はピストン、43は吸気通路、
44は排気通路、45は吸気弁、46は排気弁である。
【0071】点火プラグ41は一般に気筒40の上部
(シリンダヘッド)中心に気筒軸線Aと一致させて取り
付けてあり、この軸線Aを挾んで、一方に吸気弁45
が、他方に排気弁46が設けてある。
【0072】燃料噴射弁1は、気筒40の上部位置で、
吸気弁45寄りの気筒周縁近くに、気筒軸線Aに垂直な
面Bに対して斜めになる適宜角度で取り付けられてい
る。このようにして、燃料噴射弁1は燃料噴射弁本体軸
線Cが気筒軸線Aに斜めに交差する角度で取り付けられ
る。
【0073】燃料噴射弁1の気筒40への取り付けは、
噴射口17のうち噴射方向に向いてみたときに偏向する
側となる方(例えば、図2の図面では噴射口17におけ
る図面に向かって右側の側壁30a)を点火プラグ41
側に向け(上向き)、反偏向側となる方(図2の図面で
は噴射口17における図面に向かって左側の側壁30
b)を反点火プラグ側に向けて(下向き)設置される。
【0074】このような燃料噴射弁取り付けにより、燃
料噴射弁1は、気筒40内に臨む噴射口17が上記の噴
射口傾き角αを利用して燃料噴射弁本体軸線Cを基準に
して角度αだけ点火プラグ側に偏向角を有するように設
定される(請求項3,4対応)。噴射口17に偏向角α
を与えることで、図7に示すように燃料噴射弁1から噴
射される燃料噴霧47(換言すれば燃料噴霧中心線D)
は、燃料噴射弁本体軸線Cを基準にして点火プラグ41
側に偏向する。燃料噴霧の中心線Dと噴射口軸線Eと
は、燃料噴射弁本体Cにを基準にして偏向角がほぼ一致
し5〜10°である。
【0075】ここで、燃料噴射口17の燃料噴射弁本体
軸線Cに対する偏向角αを5〜10°の範囲に設定する
理由は、5°以下では燃料噴射弁1のエンジン取付角の
制約から図7に示すような要求噴霧方向の角度β1(偏
向噴霧の偏向角β3)を確保することができず、また、
10°以上だと噴射弁の流路損失(圧力損失)が大きく
なり、要求噴霧到達距離を確保し難くなるためである。
【0076】本例によれば、燃料噴射口17を点火プラ
グ41側に偏向させることで、噴射される燃料噴霧47
も、燃料噴射弁本体軸線Cを基準にして点火プラグ41
側に図7に示すようにβ3だけ偏向させることが可能に
なる。偏向角β3は燃料噴射弁本体軸線Cと燃料噴霧4
7の中心線Dとのなす角度である。
【0077】図7おける、β1は要求される目標噴霧方
向の角度で、気筒軸線Aに垂直な面Bと燃料噴霧中心線
Dとのなす角度で表わされる。要求噴霧方向β1は、エ
ンジンの形状,寸法等により決まり、必ずしも一様では
ない。β2は燃料噴射弁1のエンジンへの取り付け角度
であり、上記の基準面Bと燃料噴射弁本体軸線Cとのな
す角度で表わされる。
【0078】要求噴霧方向の角度β1と燃料噴射弁取付
角度β2とに角度差がある場合には、燃料噴霧の偏向角
β3をβ3=β2−β1になるように設定すれば、β1を確
保することができる。
【0079】また、本例の燃料噴射弁1によれば、燃料
噴霧47はコーン形状を呈するが、噴霧中心線Dを基準
にして軸対称にならず、点火プラグ41側に偏向する側
の噴霧到達距離(貫通力)L1が大きく、偏向する側と
反対側(ピストン42のキャビティ42a側)の噴霧到
達距離L2が小さくなる噴霧形状を得ることができる。
【0080】燃料噴霧を点火プラグ側に偏向させること
によって、成層燃焼モード時に直接的に点火プラグ41
周辺に燃料噴霧を集中させる度合いを高める。特に、図
6に示すように、燃料噴射弁1の噴射口のある位置での
点火プラグ軸線(点火プラグ軸線は気筒軸線に一致す
る)Aの垂直面Bを基準にして、燃料噴射弁1から噴射
される燃料噴霧47のうち点火プラグ寄りの方の燃料噴
霧側47´の方角が垂直面Bよりも点火プラグ41側に
向くように設定すれば、燃料噴霧47のうち点火プラグ
寄りの方の燃料噴霧側47´が直接点火プラグ41に指
向して、点火プラグ41の周りの集中的な混合気形成を
促進させ、燃費節約を図りつつ混合気の着火性を確保で
きる。
【0081】また、成層燃焼モードによる燃料噴射は、
エンジン燃焼室(気筒内)が高圧下の圧縮行程時に行わ
れるため、燃料噴霧の広がりが小さくなる傾向にある
が、本実施例では燃料噴霧47の噴霧方向を点火プラグ
41側に偏向させた分だけ燃料噴霧エリアを拡げて噴霧
角θを拡げることが可能なので、燃料噴霧広がりが要求
以上に小さくなるのを防いで、適度に燃料噴霧を点火プ
ラグ周辺に集中させるためのコンパクトな噴霧が得られ
る。噴霧角θは、燃料噴霧47をその中心線Dを通るよ
うに断面したときの断面(平面)上の噴霧広がり角であ
る。均質燃焼モード時には、圧力の低い吸入行程時に燃
料噴射が行われ、広がりのある燃料噴霧を得られるが、
本発明では、噴霧方向を点火プラグ側に偏向させた分だ
け今まで以上に燃料噴霧エリア(燃料噴霧角θ)をより
広げることが可能になり気筒内の燃料の均質化を高め
る。
【0082】上記の点火プラグ側の偏向噴霧に加えて、
図6に示すように点火プラグ側に偏向する噴霧到達距離
1を大きく、偏向する側と反対側の噴霧到達距離L2
小さくすると、到達距離の長いL1の方は着火性を確保
する高速成分となり、また、到達距離の短いL2の方
は、ピストンのキャビティ42a側に向かうが短い分だ
けピストン冠面に付着するのが防止されて、未燃成分を
抑制し煤排出を低減する低速成分となる。
【0083】この燃料噴霧形状は、燃焼サイクルにより
圧力が大きく変化する気筒内(燃焼室内)での実測が困
難であるために、種々の燃料噴霧形状のパターンと作り
出し、この噴霧形状を大気圧下のもとであらかじめ測定
して、これをエンジンに取り付け燃焼試験を行なったと
ころ、燃圧5〜9MPa場合には、大気圧下で、噴霧偏
向角(燃料噴射弁本体の中心線Cに対する偏向角)が点
火プラグ側に5〜10°(最適値は7°)、燃料噴霧の
偏向する側の噴霧到達距離L1と偏向する側と反対側の
噴霧到達距離L2との比がL1/L2=1.1〜1.4、
燃料噴霧角が70〜90°(最適値85°)である場合
に(請求項2対応)、成層燃焼モード及び均質燃焼モー
ドの性能安定性が高く、また、アイドリング時(550
rpm)の成層燃焼モードにおいて、偏向噴霧なしでは
平均A/F=40で燃焼が成立しなかったのが偏向させ
ることにより平均A/F=40でも燃焼可能で、目標で
あるCPi(燃焼圧変動率)<5%、スモーク(BS
U)<0.3の両立も可能になった。ここで、成層燃焼
モード時の平均A/Fとは、図8に示すように、点火プ
ラグ周辺に集中する混合気層イとその周辺の空気層ロの
双方のA/Fを平均したもので、本例では混合気層イは
A/F=15、空気層=50、平均A/F=40といっ
た超希薄空燃比でも良好な燃焼を実現することができ
た。
【0084】均質燃焼モードにおいても出力向上を保持
しつつ、スモークを従来の1/2〜1/4と大幅に低減
させることができた。
【0085】従って、従来に比べてより広範囲の回転域
で安定したエンジン性能を得られる結果となった。
【0086】なお、燃料噴射弁の要求噴霧方向と取付角
度が燃料噴霧の偏向なしに適合する場合には、偏向噴霧
を必要とせず、この場合には、上記燃料噴霧の到達距離
1,L2の関係(L1>L2)に重点をおいて設定すれば
よい。すなわち、この場合には、要求噴霧方向の角度β
1と噴射弁取付角度β2とがβ1=β2であるので、燃料噴
霧の偏向設定を行わず、燃料噴霧形状は、コーン形状で
あるが点火プラグ寄りの方の噴霧到達距離L1が大き
く、反点火プラグ寄りの噴霧到達距離L2が小さくなる
よう設定する。
【0087】図10に上記した燃料噴射弁1におけるノ
ズル15の他の態様例を示す。
【0088】本例では、ノズル15の噴射口17の出口
17B平面が噴射口の中心線Eの垂直面Rに対して傾斜
している(請求項10対応)。例えば、垂直面Rに対す
る噴射口出口17B平面のなす角度は1.5°である
(すなわち、噴射口の中心線Eと噴射口出口平面17B
のなす角度は例えば88.5°であり、噴射口の中心線
Eと垂直面Rとのなす角度より1.5°小さくしてあ
る)。このような角度差1.5°を確保するため、噴射
口軸線Eと噴射弁本体軸線Cとのなす角度αが8.5°
にしてある場合には、噴射口出口平面17B平面と噴射
弁本体軸線Cの垂直面とのなす角度γは10°である。
【0089】また、突起30の斜面上り側30″の高さ
2は、例えば、0.43mm、斜面下り側30′の高
さH1は0.1mmである。
【0090】本例によれば、第1実施例よりも噴射口1
7の経路長M1,M2の長さの差を大きくすることができ
(M2>M1)、また、噴射口17の出口形状の任意の楕
円形状及び出口エッジ角度を非軸対称とすることがで
き、これらの要素により、燃料噴霧到達距離L1,L2
差(L1>L2)を与えることが可能になる。すなわち、
旋回流の経路長Mが噴射口周方向で不等長となり、それ
により圧力損失など壁面の差が生じ、加えて出口エッジ
角度の差も生じるために噴射口周方向に位置で噴霧速度
が異なり、経路長の長い方M2の噴霧速度が遅く、経路
長の短い方M1の噴霧速度が速くなる。この傾向は噴射
口出口平面17Bの傾斜角度を大きくすることで強ま
る。噴射口出口平面17Bの噴射口中心線Eの垂直面R
に対する傾斜角度を大きくするほど、噴霧量分布を流速
分布(噴霧到達距離)同様に経路長の短いM1側を大き
くすることもできる。すなわち、経路長Mの不等長を利
用することで、噴霧速度・噴霧量分布に方向性を持たせ
ることができ、このことを利用して、噴霧の形状、流量
・流速分布を任意に変化させることができる。
【0091】図11の例では、図10の例同様に、ノズ
ル15の噴射口17の出口17B平面が噴射口中心線E
の垂直面Rに対して傾斜しているが、噴射口17の軸線
Eは燃料噴射弁本体C軸線に対して傾きを有さない態様
のものである。
【0092】本例でも、噴射口17の経路長M1,M2
長さの差を大きくすることができ(M2>M1)、また、
噴射口17の出口形状を変化させ及び出口エッジ角度を
非軸対称とすることができ、これらの要素により、燃料
噴霧到達距離L1,L2や噴霧分布に差(L1>L2)を与
えることが可能になる。ただし、偏向噴霧ではないの
で、燃料噴射弁1の取付角度だけで要求噴霧方向の角度
が得られる場合に好適である。
【0093】図12の例では、ノズル15には、既述し
た各実施例と同じく噴射口17となるオリフィスと、該
噴射口17の入口17Aの位置から上流に向けて径が拡
がって弁体(球弁)13の一部を受入れ且つ弁座部7を
有する逆円錐形ホール(燃料旋回空間)31とが形成さ
れているが、次の点で異なる。
【0094】噴射口出口17Bの平面と噴射口中心線E
の垂直面Rに角度差を与えず、また、噴射口17は噴射
弁本体軸線Cに対して傾きを有さず、噴射口周縁となる
突起30の先端面(噴射口出口平面)も噴射弁本体軸線
C及び噴射口17の中心線EBに対して垂直面であり、
斜面とはしていない。
【0095】また、噴射口17が噴射弁本体軸線Cに対
してオフセットしている(請求項11対応)。このオフ
セットにより、噴射口17は、逆円錐形ホール31の中
心線及び球弁13の軸線に対してもオフセットすること
になる。
【0096】このような構成によれば、噴射口17の入
口17Aは、オフセットする側(図面12では、紙面に
向かって噴射弁本体軸線Cを基準にして右側)から反オ
フセット側(紙面に向かって噴射弁本体軸線Cを基準に
して左側)に向けて下り勾配となる。
【0097】スワラー16の燃料通路溝16B´から流
出する旋回燃料は、スワラー16の燃料通路溝16B´
の出口から噴射口入口17Aの斜面頂点エッジまでの経
路Y 1までは、軸対称の逆円錐ホールにて燃料噴射弁本
体軸線Cを中心に旋回するため、流速が周方向に一様と
考えられる。上記の噴射口入口17Aの斜面頂点エッジ
から噴射口出口17Bまでの経路Y2では、噴射口17
が噴射弁本体軸線Cに対してオフセットすることで、旋
回燃料は噴射弁本体軸線Cを基準にして非軸対称の経路
を通る。このような旋回燃料の経路によれば、経路Y2
では、旋回燃料の軸線Cを基準にしてオフセット側の燃
料通路壁面までの距離が大で反オフセット側の燃料通路
壁面までの距離が小となるが、旋回燃料は旋回軸線Cを
基準にして半径方向に外側の流速が速くなる関係から、
旋回燃料は、オフセット側の燃料通路壁面に沿った流速
が大で反オフセット側の燃料通路壁面の流速が小となる
流速差の生じた流速分布が発生する。すなわち、旋回燃
料経路Y2は、旋回燃料中心Cに対してオフセットする
ことで上記のような流速差の生じる流速分布が生じる。
その結果、噴射口17から噴射される旋回燃料噴霧(コ
ーン形噴霧)は、オフセット側の方が反オフセット側よ
りも流速(噴霧到達距離)・流量を大きくすることがで
きる。
【0098】したがって、旋回燃料の旋回力に合わせて
上記のオフセット量を設定し、且つ、適切な噴射口長
さ、噴射口径を設定すれば、所望の噴霧形状、流速・流
量分布を得られる。
【0099】図13は、図12の噴射口オフセットを偏
向角を有する噴射口に適用した例である。
【0100】すなわち、ノズル15には、弁座部7と、
該弁座部7の下流に位置する噴射口17と、該噴射口1
7と弁座部7との間に位置する燃料旋回空間S(逆円錐
形ホール31)とが形成される。噴射口17は燃料噴射
弁本体軸線Cに対して傾きを有し、燃料旋回空間Sが燃
料噴射弁本体軸線Cを中心に軸対称に設定され、噴射口
の入口17A中心が燃料噴射弁本体軸線Cに対してオフ
セットしている(請求項12対応)。噴射口17の偏向
方向は、弁座部7から噴射口出口17Bをみてオフセッ
ト方向である。
【0101】本例では、燃料噴霧を偏向させながら、偏
向方向の噴霧流速(噴霧到達距離)や流量を反偏向方向
よりも大きくすることができる。
【0102】上記のように噴射口17が偏向している場
合、偏向度合いに応じて噴射口入口17Aの形状を種々
変えることができ噴霧分布は偏る傾向を持っているが、
噴射口入口17Aを旋回中心Cに対してオフセットする
ことによりその傾向を強めたり弱めたりして所望の噴霧
形状、流速・流量分布を得ることができる。
【0103】図14は燃料噴射弁1は、その内部構造を
図示していないが、今までに述べた偏向噴射口を有する
燃料噴射弁の変形例で、例えば、図2に示すようなスワ
ラー16の燃料通路16B´の出口を通路16B´より
も間口を大きくして、この拡大した空間により燃料溜り
空間を確保したものである。このようにすれば、燃料噴
射の噴射初期に燃料溜りに存在する燃料もあわせて噴射
されるが、この燃料溜りの燃料は旋回力を有さないた
め、その後に続く旋回燃料の内部で噴射される噴霧形態
となる。このような噴霧形態を望む場合に利用されるも
ので、図15にその噴霧形態を利用した筒内噴射式ガソ
リンエンジンの燃焼システムを示す。
【0104】図16は、本発明の他の例を示す燃料噴射
弁の全体構成図、図17の(a)は、該燃料噴射弁に用
いるノズルの全体を示す縦断面図、(b)はその噴射口
付近を示す部分拡大断面図である。
【0105】本例の燃料噴射弁も図3同様の偏向噴霧及
び噴霧到達距離をL1>L2の関係に設定することを意図
するものである。ここでは、図3の燃料噴射弁の構造と
異なる点について述べる。
【0106】本例は、図17に示すように、ノズル15
のボディ先端中央部の内面にプレス加工により逆円錐形
でその逆円錐先端にアールをつけた凹部31´を形成
し、この凹部面31´に弁座部7が形成される。ノズル
15のボディ先端外面の中央部は、上記プレス加工によ
り突出して半球状の小突起30−1が形成され、この小
突起30−1の肉厚に燃料噴射口17が燃料噴射弁本体
軸線(ノズル軸線)Cに対して傾きを有して形成されて
いることを特徴とする(請求項13対応)。
【0107】本例でも、弁座の弁体接触位置から噴射口
17の出口17Bまでの距離(旋回燃料経路長)は、弁
座側から噴射口をみて偏向側の方が短く反偏向側の方を
長くすることができ、また、噴射口17の入口17A及
び出口17Bのエッジ角を非軸対称にすることにより、
燃料噴霧の到達距離を偏向側を大きく反偏向側を大きく
することができ、また、その噴射口の偏向角を任意に変
えることで、燃料噴霧の所望の形状、流速・噴霧分布を
得ることができる。
【0108】また、本願は、プレス加工と噴射口の穿孔
加工により小突起30−1中に燃料噴射口を容易に形成
する利点がある。
【0109】
【発明の効果】本発明によれば、筒内噴射式ガソリンエ
ンジンに適用することで、一つの燃料噴射弁により成層
燃焼モード、均質燃焼モードのそれぞれの合った燃料噴
霧形態を作り出し、燃費向上,出力向上を図り、広範囲
の回転域で安定したエンジン性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料噴射弁の一例を示す縦断面
図。
【図2】図1に示す燃料噴射弁のノズル部付近を示す説
明図。
【図3】(a)は上記燃料噴射弁に用いるノズルのボデ
ィ単体を示す縦断面図、(b)はその底面図。
【図4】図3の要部拡大断面図。
【図5】図2のX−X´線矢視図。
【図6】(a)は本発明の燃料噴射弁を筒内噴射式ガソ
リンエンジンに適用した例を示す説明図、(b)はその
噴射弁のノズル部付近を示す図。
【図7】上記燃焼システムに用いる燃料噴霧の目標噴霧
方向と燃料噴射弁の取付け角度の関係を示す説明図。
【図8】成層燃焼モードと均質燃焼モードの説明図。
【図9】図3(a)の要部を拡大して弁座径から燃料噴
射口入口までの距離yと弁座から弁体先端までの距離z
の関係を示す説明図。
【図10】上記ノズルの別の例をしめす部分断面図。
【図11】上記ノズルの別の例をしめす部分断面図。
【図12】上記ノズルの別の例をしめす部分断面図。
【図13】上記ノズルの別の例をしめす部分断面図。
【図14】ノズルの噴霧形態の他の例を示す説明図。
【図15】筒内噴射式ガソリンエンジンの別の例を示す
説明図。
【図16】燃料噴射弁の他の実施例を示す縦断面図。
【図17】(a)は図16の燃料噴射弁に用いるノズル
単品の縦断面図、(b)はその拡大断面図。
【図18】本発明に係るスワール付きノズルの燃料の流
れの挙動を示す説明図。
【図19】従来のスワール付きノズルの燃料の流れの挙
動を示す説明図。
【符号の説明】
1…燃料噴射弁、7…弁座、13…弁体、15…ノズ
ル、15F…ノズルの拡径内周面、16…燃料旋回素子
(スワラー)、17…噴射口、30…小突起、40…気
筒、41…点火プラグ、42…ピストン。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 生井沢 保夫 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器事業部内 (72)発明者 関根 篤 茨城県ひたちなか市高場2477番地 株式会 社日立カーエンジニアリング内 (72)発明者 佐々木 祐一 茨城県ひたちなか市高場2477番地 株式会 社日立カーエンジニアリング内 (72)発明者 石川 亨 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器事業部内 Fターム(参考) 3G066 AA01 AA02 AA05 AB02 AD12 BA02 BA04 CC01 CC06U CC10 CC11 CC15 CC32 CC43 CC48 CD30 CE22

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の上
    流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射す
    るノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射弁
    において、 前記ノズルの噴射口から噴射される燃料噴霧は、燃料噴
    射弁本体軸線を基準にして一方向に偏向し、偏向する側
    の噴霧到達距離が大きく、偏向する側と反対側の噴霧到
    達距離が小さくなる噴霧形状に設定されていることを特
    徴とする燃料噴射弁。
  2. 【請求項2】 前記燃料噴霧は、大気圧下の測定で、噴
    霧偏向角が前記燃料噴射弁本体軸線を基準にして5〜1
    0°、偏向する側の噴霧到達距離L1と偏向する側と反
    対側の噴霧到達距離L2との比がL1/L2=1.1〜
    1.4、燃料噴霧角が70〜90°である請求項1記載
    の燃料噴射弁。
  3. 【請求項3】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の上
    流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射す
    るノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射弁
    において、 燃料噴射弁本体の軸線が気筒軸線に斜めに交差する角度
    を有して該燃料噴射弁本体が気筒の上部位置に取付けら
    れ、前記気筒内に臨む前記ノズルの噴射口は、前記燃料
    噴射弁本体軸線を基準にして前記気筒に設けた点火プラ
    グ側に偏向角を有することを特徴とする燃料噴射弁。
  4. 【請求項4】 前記噴射口の偏向角が前記燃料噴射弁本
    体軸線を基準にして5〜10°である請求項3記載の燃
    料噴射弁。
  5. 【請求項5】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の上
    流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射す
    るノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射弁
    において、 前記燃料噴射弁は気筒の上部位置に燃料噴射弁本体軸線
    が気筒軸線に斜めに交差する角度を有して取付けられ、
    前記気筒内に臨む前記ノズルの噴射口は、前記燃料噴射
    弁本体軸線を基準にして前記気筒に設けた点火プラグ側
    に偏向角を有し、前記弁座部における閉弁時の弁体接触
    位置から前記ノズルの噴射口の出口までの距離は、噴射
    口の偏向側の方を長く、反偏向側の方を短くしたことを
    特徴とする燃料噴射弁。
  6. 【請求項6】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の上
    流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射す
    るノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射弁
    において、 燃料噴射弁本体の軸線が気筒軸線に斜めに交差する角度
    を有して該燃料噴射弁本体が気筒の上部位置に取付けら
    れ、前記ノズルの噴射口の出口周縁が燃料噴射弁本体軸
    線に非垂直な斜面をなし、この出口周縁のうち噴射口出
    口より噴射側に出る斜面部を斜面上り側、噴射口出口よ
    り反噴射側に後退する斜面部を斜面下り側とすると、噴
    射口出口周縁の斜面下り側を前記気筒に設けた点火プラ
    グ側に向け、斜面上り側を反点火プラグ側に向けたこと
    を特徴とする燃料噴射弁。
  7. 【請求項7】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の上
    流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射す
    るノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射弁
    において、 噴射口を有する前記ノズルの底部外面の中央に、高さが
    噴射口のオリフィス長よりも短い小突起が形成され、前
    記噴射口は、燃料噴射弁本体軸線に対して傾きを有し出
    口が前記小突起の位置に形成されて該小突起が前記噴射
    口の出口周縁壁となり、この小突起の先端面は前記弁座
    部側から前記噴射口の出口をみて該噴射口の傾き方向側
    を低く、傾き方向と反対方向側を高くした斜面にしてあ
    ることを特徴とする燃料噴射弁。
  8. 【請求項8】 前記小突起は、該小突起の中心線に垂直
    な面が半円周よりも大きい円弧と該円弧の両端を結ぶ弦
    により囲まれる輪郭よりなり、該小突起の高さは、前記
    弦側の方を高く、該弦側と反対側の方を低くして該小突
    起先端面を斜面にしてあり、前記噴射口は前記小突起の
    中心線を基準にして噴射口入口側が前記弦側に偏り噴射
    口出口側が弦側と反対側に偏る傾斜にしてある請求項7
    記載の燃料噴射弁。
  9. 【請求項9】 前記燃料噴射弁本体軸線と前記噴射口の
    中心線との交点が該噴射口を構成するオリフィス内に位
    置する請求項1ないし請求項8のいずれか1項記載の燃
    料噴射弁。
  10. 【請求項10】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の
    上流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射
    するノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射
    弁において、 前記ノズルの噴射口の出口平面が該噴射口の中心線の垂
    直面に対して傾斜していることを特徴とする燃料噴射
    弁。
  11. 【請求項11】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の
    上流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射
    するノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射
    弁において、 前記ノズルには、噴射口が燃料噴射弁本体軸線に対して
    オフセットして設けられていることを特徴とする燃料噴
    射弁。
  12. 【請求項12】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の
    上流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射
    するノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射
    弁において、 前記ノズルには、前記弁座部と、該弁座部の下流に位置
    する噴射口と、該噴射口と前記弁座部との間に位置する
    燃料旋回空間とが形成され、前記噴射口は燃料噴射弁本
    体軸線に対して傾きを有し、前記燃料旋回空間が前記燃
    料噴射弁本体軸線を中心に軸対称に設定され、前記噴射
    口の入口中心が前記燃料噴射弁本体軸線に対してオフセ
    ットしていることを特徴とする燃料噴射弁。
  13. 【請求項13】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の
    上流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射
    するノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射
    弁において、 前記ノズルのボディ先端中央部の内面にプレス加工によ
    り逆円錐形でその逆円錐先端にアールをつけた凹部が形
    成され、この凹部面に弁座部が形成され、前記ノズルの
    ボディ先端外面の中央部が前記プレス加工により突出し
    て半球状の小突起が形成され、この小突起の肉厚に燃料
    噴射口が燃料噴射弁本体軸線に対して傾きを有して形成
    されていることを特徴とする燃料噴射弁。
  14. 【請求項14】 前記噴射口の長さをl、直径をdとし
    た場合、0.3<l/d<1.3である請求項1ないし
    請求項13のいずれか1項記載の燃料噴射弁。
  15. 【請求項15】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の
    上流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射
    するノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射
    弁において、 前記弁座部に閉弁時に接する前記弁体の先端が弁座部下
    流の前記噴射口の入口に臨み、該弁体が前記弁座部に接
    する位置から前記噴射口の入口までの距離をy、前記弁
    体が前記弁座部に接する位置から弁体先端までの距離を
    zとした場合、y≦2zであることを特徴とする燃料噴
    射弁。
  16. 【請求項16】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の
    上流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射
    するノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射
    弁において、 前記弁座部に閉弁時に接する弁体が球形をなし、閉弁時
    に前記弁体の球面先端が前記噴射口の入口と同位置或い
    は噴射口内に入り込むよう設定したことを特徴とする燃
    料噴射弁。
  17. 【請求項17】 弁体の周囲を通過する燃料に弁座部の
    上流で旋回力を与える燃料旋回手段と、旋回燃料を噴射
    するノズルとを備えた筒内噴射式エンジン用の燃料噴射
    弁において、 前記ノズルは有底円筒形のボディの底部中央に噴射口と
    なるオリフィス及び該オリフィス上流に位置する弁座部
    を形成して成り、前記燃料旋回手段は中央に前記弁体の
    ガイド孔を有し外周及び下面に偏心した燃料通路を有す
    るチップより成り、このチップが前記ノズルの内底に支
    持されてノズルに内装され、 前記ノズルの内周面のうちノズルの内底面と交わるコー
    ナーから前記チップ高さの中途位置でのチップ軸垂直面
    に交わる内周位置にかけての内径を拡げ、この内径を拡
    げた内周部のうち前記ノズルの内底面と交わるコーナを
    ノズル内底のチップを受ける面より下方に位置する窪み
    にしたことを特徴とする燃料噴射弁。
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