JP2003212921A - 含フッ素乳化剤を回収する方法 - Google Patents

含フッ素乳化剤を回収する方法

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JP2003212921A JP2002017541A JP2002017541A JP2003212921A JP 2003212921 A JP2003212921 A JP 2003212921A JP 2002017541 A JP2002017541 A JP 2002017541A JP 2002017541 A JP2002017541 A JP 2002017541A JP 2003212921 A JP2003212921 A JP 2003212921A
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Masataka Eda
昌隆 江田
Chu Funaki
宙 舟木
Hiroki Kamiya
浩樹 神谷
Kota Omori
浩太 大森
Takeshi Kamiya
武志 神谷
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Mitsubishi Materials Electronic Chemicals Co Ltd
AGC Inc
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 含フッ素ポリマーの重合後の排水から含フッ
素乳化剤を簡便に回収する方法の提供。 【解決手段】 2価金属イオンと3価金属イオンからな
る金属水酸化物層と炭酸イオンの中間層とを持つ層状複
水酸化物を該層状複水酸化物が形成されるpHの水溶液
中で生成し、これを焼成して得られる層状複水酸化物焼
成物と、含フッ素乳化剤を含み、かつSS成分の含有量
が1質量%以下である含フッ素ポリマーの重合後の排水
とを、該排水のpHを前記層状複水酸化物の形成時と同
様のpHに調整したあと混合し、前記含フッ素乳化剤を
該層状複水酸化物焼成物が水和して生成する層状複水酸
化物の層間に内包させ、該含フッ素ポリマーの重合後の
排水から該層状複水酸化物を分離し、該含フッ素乳化剤
を回収する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、層状複水酸化物を
焼成して得られる層状複水酸化物焼成物を使用して含フ
ッ素乳化剤を回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、含フッ素ポリマーの乳化重合に使
用される含フッ素乳化剤の回収方法として、陰イオン交
換樹脂(以下、IERという。)を用いる技術が知られ
ている。特公昭47−51233には、乳化重合のラテ
ックスを凝集・洗浄し、乳化剤を水溶液として捕集、濃
縮後有機溶剤で該含フッ素乳化剤を回収する方法が記載
されており、本文中にはIERを用いた該含フッ素乳化
剤の回収方法も記載されている。US4282162に
は、希薄乳化剤水溶液をpH0〜7の範囲で弱塩基性I
ERに接触させ、該乳化剤を吸着させ、アンモニア水で
脱着させる方法が記載されている。WO99/6283
0には、含フッ素ポリマーの凝集排水にノニオン又はカ
チオン性界面活性剤を添加し、凝集排水中のポリ四フッ
化エチレン(以下、PTFEという。)微粒子を安定化
し、IERの充填塔の閉塞を防止する方法が記載されて
いる。特開昭55−120630号、US531293
5及びDE2908001には、PTFEの凝集排水を
限外ろ過法で濃縮するとともにPTFE製造に用いた含
フッ素乳化剤の一部を回収した後、IERで含フッ素乳
化剤を吸着・回収する方法が記載されている。特開昭5
5−104651号、US4282162及びDE29
03981には、含フッ素乳化剤をIERに吸着させ、
ついで酸と有機溶剤との混合物を用いてペルフルオロオ
クタン酸を脱着し回収する方法が開示されている。WO
99/62858には、あらかじめ四フッ化エチレン/
ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以
下、PFAという。)の凝集排水に、予め石灰水を添加
してpHを6〜7.5に調整後、塩化アルミニウム、塩
化鉄等の金属塩を添加して未凝集のPFAを凝集させ、
ついで機械的に凝集物を分離・除去した後に、得られた
排水のpHを硫酸で7以下に調整し、強塩基性IERを
用いて該含フッ素乳化剤を吸着・回収する方法が記載さ
れている。特開2001−62313には、イオン交換
樹脂に吸着した含フッ素乳化剤を水、アルカリ、有機溶
剤の混合溶液を用いて脱着する方法が記載されている。
また、日本化学会第76春季年会および日本化学会第8
0秋季年会では、アルミニウムと亜鉛の層状複水酸化物
を用いて、パーフルオロオクタン酸およびそのアンモニ
ウム塩を挿入固定する技術が報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらIERを
用いる方法では、IERとの接触の前に未凝集の含フッ
素ポリマーを含む、浮遊固形成分(以下、SS分と記
す)を高度に除去する必要があり、このSS分の除去が
該含フッ素乳化剤の回収効率に多大な影響を与えるだけ
でなく、SS分を高度に除去するための簡便且つ高効率
の方法が見つかっていないなど、実際の操作上での課題
が多く残されている。
【0004】また、日本化学会第76春季年会および日
本化学会第80秋季年会で報告された層状複水酸化物を
用いた挿入固定方法では、あくまでパーフルオロオクタ
ン酸およびそのアンモニウム塩のみが溶解した水溶液で
の挿入固定が示されただけで、他の夾雑物が含まれてい
る実際の含フッ素ポリマーの凝集排水を用いて実際に挿
入固定を示した報告は知られていない。
【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、含フッ素乳化剤を含有する含フッ素ポリマーの凝集
排水などから層状複水酸化物を用いて含フッ素乳化剤を
簡便に回収する方法の提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、2価金属イオンと3価金属イオンからな
る金属水酸化物層と炭酸イオンの中間層とを持つ層状複
水酸化物を該層状複水酸化物が形成されるpHの水溶液
中で生成し、これを焼成して得られる層状複水酸化物焼
成物と、含フッ素乳化剤を含み、かつ浮遊固形分および
浮遊固形分になりうる物質の含有量が1質量%以下であ
る含フッ素ポリマーの重合後の排水とを、該排水のpH
を前記層状複水酸化物の形成時と同様のpHに調整した
あと混合し、前記含フッ素乳化剤を該層状複水酸化物焼
成物が水和して生成する層状複水酸化物の層間に内包さ
せ、該含フッ素ポリマーの重合後の排水から該層状複水
酸化物を分離し、該含フッ素乳化剤を回収することを特
徴とする含フッ素乳化剤を回収する方法を提供する。
【0007】本発明においては、前記2価金属イオンが
マグネシウムイオンおよび亜鉛イオンから選ばれる1種
または2種であり、前記3価金属イオンがアルミニウム
イオンであることが好ましい。本発明方法において、前
記含フッ素ポリマーは、ポリ四フッ化エチレン、四フッ
化エチレン/エチレン共重合体、四フッ化エチレン/プ
ロピレン共重合体、四フッ化エチレン/プロピレン/フ
ッ化ビニリデン共重合体、四フッ化エチレン/六フッ化
プロピレン共重合体、四フッ化エチレン/CF2=CF
O(CF22CF3共重合体、ポリフッ化ビニリデンか
ら選ばれる一種または二種以上であり、乳化重合もしく
は水性分散重合で得られるポリマーであることが好まし
い。さらに、前記含フッ素乳化剤は、炭素原子数5〜1
3の、ペルフルオロアルカン酸、ペルフルオロアルカン
スルホン酸及びこれらの化合物中のフッ素の一部が塩素
もしくは水素で置換された酸の塩の群から選ばれる1種
または2種以上および/または、分子中にエーテル性の
酸素原子を含有するペルフルオロアルカン酸、ペルフル
オロアルカンスルホン酸及びこれらの化合物中のフッ素
の一部が塩素もしくは水素で置換された酸の塩の群から
選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。さ
らに、前記含フッ素乳化剤は、アルカリ金属塩またはア
ンモニウム塩であることが好ましい。また、前記含フッ
素ポリマーの重合後の排水中の浮遊固形分および浮遊固
形分になりうる物質の含有量が0.3質量%以下、好ま
しくは0.05質量%以下であり、かつ該含フッ素乳化
剤の濃度が1ppm以上10%以下、好ましくは50p
pm以上0.5質量%以下であることが好ましい。さら
に、前記含フッ素乳化剤は、ペルフルオロオクタン酸ア
ンモニウムであることが好ましい。また、前記含フッ素
ポリマーの重合後の排水に含まれる含フッ素乳化剤のモ
ル数に対し、層状複水酸化物焼成物をこれに含まれる3
価金属イオンのモル数で1倍以上30倍以下の量を、ま
た2価金属イオンのモル数で1倍以上90倍以下の量を
添加することによって含フッ素乳化剤を回収することが
好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】一般に層状複水酸化物によるアニ
オンの吸着の方法としては、共沈法、イオン交換法、再
構築法の3種類が知られている。共沈法は回収目的アニ
オンが溶解している液中に、金属イオンを添加して、層
状複水酸化物を形成させると同時にアニオンを該層状複
水酸化物の層間に内包させる方法である。イオン交換法
は目的回収物以外(例:塩化物イオン、水酸化物イオ
ン、炭酸イオンなど)が層状複水酸化物の層間に内包さ
れた構造の層状複水酸化物を予め用意しておき、該層状
複水酸化物を目的アニオンが溶解している液中に添加
し、既に内包されているアニオンと入れ替わる形で目的
アニオンを層間に内包させる方法である。再構築法は層
間に炭酸イオンを内包した層状複水酸化物を合成し、そ
れを400〜500℃の高温で内部の炭酸イオンを除去
した固体である層状複水酸化物焼成物を、アニオン吸着
物質として、目的アニオンが溶解している液中に添加す
ることにより、該層状複水酸化物焼成物が水和して生成
する層状複水酸化物に目的のアニオンを内包させる方法
である。
【0009】本発明において、含フッ素乳化剤として
は、炭素原子数5〜13の、ペルフルオロアルカン酸、
ω−ヒドロペルフルオロアルカン酸、ω−クロロペルフ
ルオロアルカン酸、ペルフルオロアルカンスルホン酸等
の塩が好ましく、これらは直鎖構造でも分岐構造でもよ
く、それらの混合物でも良い。また、分子中にエーテル
性の酸素原子を含有してもよい。この炭素原子数の範囲
にあると乳化剤としての作用効果に優れる。前記酸の塩
としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の
アルカリ金属塩又はアンモニウム塩が好ましく、アンモ
ニウム塩又はナトリウム塩がより好ましく、アンモニウ
ム塩が最も好ましい。
【0010】前記酸の具体例としては、ペルフルオロペ
ンタン酸、ペルフルオロヘキサン酸、ペルフルオロヘプ
タン酸、ペルフルオロオクタン酸、ペルフルオロノナン
酸、ペルフルオロデカン酸、ペルフルオロドデカン酸、
ω−ヒドロペルフルオロヘプタン酸、ω−ヒドロペルフ
ルオロオクタン酸、ω−ヒドロペルフルオロノナン酸、
ω−クロロペルフルオロヘプタン酸、ω−クロロペルフ
ルオロオクタン酸、ω−クロロペルフルオロノナン酸
等、CF3CF2CF2OCF(CF3)COOH、CF3
CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CO
OH、CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]2
F(CF3)COOH、CF3CF2CF2O[CF(CF
3)CF2O]3CF(CF3)COOH、CF3CF2CF
2CF2CF2OCF(CF3)COOH等、ペルフルオロ
ヘキサンスルホン酸、ペルフルオロヘプタンスルホン
酸、ペルフルオロオクタンスルホン酸、ペルフルオロノ
ナンスルホン酸、ペルフルオロデカンスルホン酸等、が
挙げられる。
【0011】アンモニウム塩の具体例としては、ペルフ
ルオロペンタン酸アンモニウム、ペルフルオロヘキサン
酸アンモニウム、ペルフルオロヘプタン酸アンモニウ
ム、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム(以下、AP
FOと記す。)、ペルフルオロノナン酸アンモニウム、
ペルフルオロデカン酸アンモニウム、ペルフルオロドデ
カン酸アンモニウム、ω−ヒドロペルフルオロヘプタン
酸アンモニウム、ω−ヒドロペルフルオロオクタン酸ア
ンモニウム、ω−ヒドロペルフルオロノナン酸アンモニ
ウム、ω−クロロペルフルオロヘプタン酸アンモニウ
ム、ω−クロロペルフルオロオクタン酸アンモニウム、
ω−クロロペルフルオロノナン酸アンモニウム等、CF
3CF2CF2OCF(CF3)COONH4、CF3CF2
CF2OCF(CF 3)CF2OCF(CF3)COONH
4、CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF 2O]2CF
(CF3)COONH4、CF3CF2CF2O[CF(C
3)CF2O]3CF(CF3)COONH4、CF3CF
2CF2CF2CF2OCF(CF3)COONH4等、ペル
フルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、ペルフルオ
ロヘプタンスルホン酸アンモニウム、ペルフルオロオク
タンスルホン酸アンモニウム、ペルフルオロノナンスル
ホン酸アンモニウム、ペルフルオロデカンスルホン酸ア
ンモニウム等、が挙げられる。
【0012】リチウム塩の具体例としては、ペルフルオ
ロペンタン酸リチウム、ペルフルオロヘキサン酸リチウ
ム、ペルフルオロヘプタン酸リチウム、ペルフルオロオ
クタン酸リチウム、ペルフルオロノナン酸リチウム、ペ
ルフルオロデカン酸リチウム、ペルフルオロドデカン酸
リチウム、ω−ヒドロペルフルオロヘプタン酸リチウ
ム、ω−ヒドロペルフルオロオクタン酸リチウム、ω−
ヒドロペルフルオロノナン酸リチウム、ω−クロロペル
フルオロヘプタン酸リチウム、ω−クロロペルフルオロ
オクタン酸リチウム、ω−クロロペルフルオロノナン酸
リチウム等、CF3CF2CF2OCF(CF3)COOL
i、CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(C
3)COOLi、CF3CF2CF2O[CF(CF3
CF2O]2CF(CF3)COOLi、CF3CF2CF2
O[CF(CF3)CF2O]3CF(CF3)COOL
i、CF3CF2CF2CF2CF2OCF(CF3)COO
Li等、ペルフルオロヘキサンスルホン酸リチウム、ペ
ルフルオロヘプタンスルホン酸リチウム、ペルフルオロ
オクタンスルホン酸リチウム、ペルフルオロノナンスル
ホン酸リチウム、ペルフルオロデカンスルホン酸リチウ
ム等、が挙げられる。
【0013】ナトリウム塩の具体例としては、ペルフル
オロペンタン酸ナトリウム、ペルフルオロヘキサン酸ナ
トリウム、ペルフルオロヘプタン酸ナトリウム、ペルフ
ルオロオクタン酸ナトリウム、ペルフルオロノナン酸ナ
トリウム、ペルフルオロデカン酸ナトリウム、ペルフル
オロドデカン酸ナトリウム、ω−ヒドロペルフルオロヘ
プタン酸ナトリウム、ω−ヒドロペルフルオロオクタン
酸ナトリウム、ω−ヒドロペルフルオロノナン酸ナトリ
ウム、ω−クロロペルフルオロヘプタン酸ナトリウム、
ω−クロロペルフルオロオクタン酸ナトリウム、ω−ク
ロロペルフルオロノナン酸ナトリウム等、CF3CF2
2OCF(CF3)COONa、CF3CF2CF2OC
F(CF3)CF2OCF(CF3)COONa、CF3
2CF2O[CF(CF3)CF2O]2CF(CF3)C
OONa、CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF
2O]3CF(CF3)COONa、CF3CF2CF2CF
2CF2OCF(CF3)COONa等、ペルフルオロヘ
キサンスルホン酸ナトリウム、ペルフルオロヘプタンス
ルホン酸ナトリウム、ペルフルオロオクタンスルホン酸
ナトリウム、ペルフルオロノナンスルホン酸ナトリウ
ム、ペルフルオロデカンスルホン酸ナトリウム等、が挙
げられる。
【0014】カリウム塩の具体例としては、ペルフルオ
ロペンタン酸カリウム、ペルフルオロヘキサン酸カリウ
ム、ペルフルオロヘプタン酸カリウム、ペルフルオロオ
クタン酸カリウム、ペルフルオロノナン酸カリウム、ペ
ルフルオロデカン酸カリウム、ペルフルオロドデカン酸
カリウム、ω−ヒドロペルフルオロヘプタン酸カリウ
ム、ω−ヒドロペルフルオロオクタン酸カリウム、ω−
ヒドロペルフルオロノナン酸カリウム、ω−クロロペル
フルオロヘプタン酸カリウム、ω−クロロペルフルオロ
オクタン酸カリウム、ω−クロロペルフルオロノナン酸
カリウム等、CF3CF2CF2OCF(CF3)COO
K、CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(C
3)COOK、CF3CF2CF2O[CF(CF3)C
2O]2CF(CF3)COOK、CF3CF2CF2
[CF(CF3)CF2O]3CF(CF3)COOK、C
3CF2CF2CF2CF2OCF(CF3)COOK等、
ペルフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、ペルフルオ
ロヘプタンスルホン酸カリウム、ペルフルオロオクタン
スルホン酸カリウム、ペルフルオロノナンスルホン酸カ
リウム、ペルフルオロデカンスルホン酸カリウム等、が
挙げられる。
【0015】本発明における含フッ素乳化剤としては、
特に、炭素原子数6〜12のペルフルオロアルカン酸の
アンモニウム塩が好ましく、ペルフルオロヘプタン酸ア
ンモニウム、APFO、ペルフルオロノナン酸アンモニ
ウム又はペルフルオロデカン酸アンモニウムがより好ま
しく、APFOが最も好ましい。
【0016】本発明において、含フッ素ポリマーの重合
後の排水とは、含フッ素乳化剤を含む水性媒体中で少な
くとも1種の含フッ素モノマーを重合させて得られる含
フッ素ポリマーを分離した後の排水であり、通常は乳化
重合後含フッ素ポリマーの凝集排水が好ましく、特に含
フッ素モノマーの重合体又は含フッ素モノマーと含フッ
素モノマー以外のモノマーとの共重合体の製造工程から
の凝集排水が好ましい。具体的に、前記製造工程からの
凝集排水とは、含フッ素モノマー又は含フッ素モノマー
と含フッ素モノマー以外のモノマーとを、含フッ素乳化
剤を含む水性媒体中で乳化重合又は水性分散重合して得
られた含フッ素ポリマー水分散液から、含フッ素ポリマ
ーを塩析等で凝集して、該含フッ素ポリマーを分離した
後の排水をいう。該排水には、含フッ素モノマーの重合
時に使用された含フッ素乳化剤が含有されるほか、未凝
集の含フッ素ポリマーなどのSS成分も含まれる。以
下、該凝集排水を典型例として説明する。
【0017】含フッ素モノマーとしては、四フッ化エチ
レン(以下、TFEという。)、CF2=CFCl、C
FH=CF2、CFH=CH2、CF2=CH2(以下、V
dFという。)等のフルオロエチレン、ヘキサフルオロ
プロピレン(以下、HEPという。)、CF2=CHC
3等のフルオロプロピレン、CF2=CFOCF3、C
2=CFO(CF22CF3(以下、PPVEとい
う。)、CF2=CFO(CF24CF3等の炭素原子数
3〜10のペルフルオロビニルエーテル、CH2=CH
(CF23CF3等の炭素原子数4〜10の(ペルフル
オロアルキル)エチレン等が挙げられる。これらの含フ
ッ素モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併
用してもよい。
【0018】含フッ素モノマー以外のモノマーとして
は、酢酸ビニル等のビニルエステル、エチルビニルエー
テル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチ
ルビニルエーテル等のビニルエーテル、ノルボルネン、
ノルボナジエン等の環状構造を有する単量体、メチルア
リルエーテル等のアリルエーテル、エチレン(以下、E
という。)、プロピレン(以下、Pという。)、イソブ
チレン等のオレフィン等が挙げられる。含フッ素モノマ
ーの以外のモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上
を併用してもよい。
【0019】本発明において、含フッ素ポリマーとして
は、PTFE、TFE/P共重合体、TFE/P/Vd
F共重合体、TFE/HFP共重合体、TFE/PPV
E共重合体、E/TFE共重合体、ポリフッ化ビニリデ
ン等が挙げられる。より好ましくは、PTFE、TFE
/P共重合体、TFE/P/VdF共重合体又はTFE
/PPVE共重合体であり、最も好ましくは、PTFE
である。
【0020】本発明において、含フッ素ポリマーの凝集
排水には、アルカリ性の場合はあらかじめ塩酸および/
または硫酸および/または硝酸を添加して該排水のpH
を、アルミニウムイオンと亜鉛イオンを用いる場合は6
以上9以下、アルミニウムイオンとマグネシウムイオン
を用いる場合は9以上11以下に調整する。酸性の場合
は水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムを添
加して該排水のpHをアルミニウムイオンと亜鉛イオン
を用いる場合は6以上9以下、アルミニウムイオンとマ
グネシウムイオンを用いる場合は9以上11以下に調整
する。pHが上記の範囲を外れるとアルミニウムイオン
と亜鉛イオン、またはアルミニウムイオンとマグネシウ
ムイオンがそれぞれ独立して水酸化物を形成し、水酸化
アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウムを形成
するため、層状複水酸化物を形成しにくくなり、結果と
して含フッ素乳化剤の回収効率が著しく低下する。
【0021】本発明において、回収目的物である含フッ
素乳化剤の濃度は1ppm(質量基準、以下同様)以上
10質量%以下が好ましく、10ppm以上1質量%以
下がより好ましく、とりわけ50ppm以上0.5質量
%以下が好ましい。該含フッ素乳化剤濃度が1ppm以
上であれば、回収液中での層状複水酸化物による該含フ
ッ素乳化剤の捕捉効率が低下してしまう不具合を生じる
ことがない。また含フッ素乳化剤の濃度が10質量%よ
り高濃度の場合はpHを変化させることにより該含フッ
素乳化剤を析出させるなど、より簡便で効率的な方法を
用いることができる。
【0022】凝集排水中に含まれる未凝集の含フッ素ポ
リマー微粒子等の浮遊固形分および浮遊固形分になりう
る物質(以下、これらを総称してSS成分という。)
は、含フッ素乳化剤の回収および回収率に悪影響は及ぼ
さないものの、生成した層状複水酸化物から該含フッ素
乳化剤を再生する際の妨げになる可能性があるため、層
状複水酸化物生成前に1質量%以下まで除去しておくこ
とが重要である。該凝集排水中のSS成分は0.3質量
%以下まで除去するのがより好ましく、とりわけ0.0
5質量%以下まで除去するのが好ましい。なお、浮遊固
形分になりうる物質としては、含フッ素ポリマーの塩析
凝集に使用された金属塩および/または該凝集排水のp
Hの変化によって析出する物質および/または該凝集排
水中の温度低下または温度上昇によって析出する物質な
どが挙げられる。未凝集の含フッ素ポリマー等のSS成
分の除去方法としては、多価金属カチオンを含有する金
属塩を添加してSS成分を凝集させる塩析が効果的であ
る。金属塩の具体例としては、塩化アルミニウム、ポリ
塩化アルミニウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の金属塩
化物が挙げられる。また、塩析により生成した凝集物は
APFOが含有された状態で沈殿することがあるため、
水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを添加
してpHを7以上に調整することにより、APFOを凝
集物から水中に再溶解させることが好ましい。凝集排水
に前記金属塩化物を添加して凝集させたSS成分の凝集
物を除去する方法としては、一般的な固液分離方法が採
用でき、特に、ろ過、デカンテーション、遠心分離及び
シックナーからなる群より選ばれる1種以上の方法を用
いることがより好ましい。ろ過は、加圧下に実施するこ
とも好ましい。また凝集物を含む排水を静置し、凝集物
を沈降させて、上澄み液をろ過することにより凝集物を
除去することが好ましい。また、設備メンテナンスの容
易さ等の点から、シックナー又はスクリューデカンター
が最も好ましい。
【0023】本発明において、前記層状複水酸化物を形
成するのに用いられる3価金属(イオン化したときに3
価のイオンとなる金属)と2価金属(イオン化したとき
に2価のイオンとなる金属)は、該3価金属のイオンが
水酸化物を形成するpHの範囲と、該2価金属のイオン
が水酸化物を形成するpHの範囲が重なっているか、ま
たはこれらのpHの範囲が近ければ層状複水酸化物が形
成され得る。該2価金属の例としてはベリリウム、カド
ミウム、コバルト、クロム(II)酸、銅、鉄(II)、マ
グネシウム、マンガン、ニッケル、鉛、白金、パラジウ
ム、亜鉛、錫、カルシウムなどを例示でき、また該3価
金属の例としてはアルミニウム、ビスマス、セリウム、
クロム(III)、鉄(III)、ガリウム、インジウム、マ
ンガン、チタン、タリウムなどを例示できるが、環境へ
の影響や入手の容易性を考慮すると、本発明において
は、2価金属としてマグネシウムおよび亜鉛から選ばれ
る1種または2種を用い、3価金属としてアルミニウム
を用いることが好ましい。以下、該好ましい2価金属と
3価金属とを用いる場合について説明する。
【0024】本発明において、前記のように該排水のp
Hを、アルミニウムとマグネシウムの層状複水酸化物を
用いる場合は9以上11以下に調整する。ついで、アル
ミニウムイオンとマグネシウムイオンのモル比が1:1
〜1:3、かつアルミニウムイオンおよび、マグネシウ
ムイオンの濃度がそれぞれ0.01mol/L以上2m
ol/L以下である水溶液を攪拌しながら添加する。ア
ルミニウムイオンとマグネシウムイオンは、どのような
原料を用いても問題ないが、入手の容易さから、アルミ
ニウムイオンは塩化アルミニウム、塩化アルミニウム六
水和物、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムが好まし
く、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム6水和物がよ
り好ましい。マグネシウムイオンの原料としては塩化マ
グネシウム、塩化マグネシウム六水和物、硝酸マグネシ
ウム六水和物、硝酸マグネシウム、酸化マグネシウム、
硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム七水和物、炭酸マ
グネシウムを用いるのが好ましく、とりわけ塩化マグネ
シウム、塩化マグネシウム六水和物が好ましい。
【0025】本発明において、前記のように該排水のp
Hをアルミニウムと亜鉛の層状複水酸化物を用いる場合
は6以上9以下に調整する。ついで、アルミニウムイオ
ンと亜鉛イオンのモル比が1:1〜1:3、かつアルミ
ニウムイオンおよび、亜鉛イオンの濃度がそれぞれ0.
01mol/L以上2mol/L以下である水溶液を攪
拌しながら添加する。アルミニウムイオンと亜鉛イオン
は、どのような原料を用いても問題ないが、入手の容易
さから、アルミニウムイオンは塩化アルミニウム、塩化
アルミニウム六水和物、硫酸アルミニウム、硝酸アルミ
ニウムが好ましく、塩化アルミニウム、塩化アルミニウ
ム六水和物がより好ましい。亜鉛イオンの原料としては
塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、硫
酸亜鉛七水和物を用いるのが好ましく、塩化亜鉛がより
好ましい。
【0026】2価及び3価金属イオンを含む混合水溶液
(以下金属イオン水溶液と記す)は0.01mol/L
以上2mol/L以下の水溶液で用いるのが好ましい。
金属イオン濃度がこれ以下だと必要な金属を添加する際
に水の量が多くなってしまい、層状複水酸化物の水溶液
への溶解総量が多くなるため、好ましくない。金属イオ
ン濃度がこれ以上だと、該金属イオン水溶液が酸性であ
るため、層状複水酸化物を形成させるときに、金属イオ
ン水溶液の添加により、水溶液の一部が局所的に層状複
水酸化物を形成するのに最適なpHの範囲を逸脱し、該
金属イオンが層状複水酸化物形成に有効に利用されなく
なってしまう。しかし、一旦前記の濃度範囲を外れた金
属イオン水溶液を添加した場合でも、改めて適切な濃度
範囲の金属イオン水溶液を添加すれば、層状複水酸化物
の合成は可能である。
【0027】層状複水酸化物の焼成は、300〜700
℃の範囲とされ、300℃以上600℃未満で行うこと
が望ましく、400℃以上500℃未満がより望まし
い。上記範囲未満の温度では内包する炭酸イオンが十分
に脱離されない、または十分な脱離のために長時間を要
する。また、上記範囲を超える温度では層状複水酸化物
の結晶構造の崩壊が起きる可能性があり、含フッ素乳化
剤の回収効率を低下させる原因となる。該層状複水酸化
物を焼成して得られる該層状複水酸化物焼成物の該含フ
ッ素ポリマーの凝集排水に対する添加量は、該層状複水
酸化物焼成物中の3価イオンが該含フッ素乳化剤に対し
て1モル倍以上30モル倍以下、かつ2価イオンが該含
フッ素乳化剤に対して1モル倍以上60モル倍以下が好
ましい。また、該層状複水酸化物焼成物中の3価イオン
と2価イオンのモル比は3:1〜1:3が好ましく、
1:1〜1:3がより好ましい。該層状複水酸化物焼成
物の添加量を1モル倍以上とすることによって、該含フ
ッ素乳化剤の回収率が良好となり、該層状複水酸化物焼
成物の添加量を上記範囲以下とすることで該含フッ素乳
化剤の該層状複水酸化物に対する比率が小さくなりすぎ
るため、最終的な該含フッ素乳化剤の再生効率が低下し
てしまう不具合を無くすることができる。また、該層状
複水酸化物焼成物の過剰使用は、含有する金属成分のた
め、最終的な排水処理過程の負荷が増大する面からも好
ましくない。
【0028】本発明において、該含フッ素乳化剤含有排
水に該層状複水酸化物焼成物を添加する時に、該含フッ
素乳化剤含有排水を撹拌することが好ましい。撹拌方法
としては、特に限定されないが、撹拌によって生成した
凝集物粒子を機械的に破壊しないものが好ましい。かか
る撹拌装置の撹拌翼としては、低速回転で排水全体を均
一に混合できる撹拌翼が好ましく、フルゾーン翼、マッ
クスブレンド翼又はアンカー翼からなる群より選ばれる
1種が好ましい。該撹拌翼における攪拌時のG値は、1
〜300が好ましく、5〜250がより好ましく、10
〜200が最も好ましい。ここで、G値とは以下の式に
よって導かれる値をいう。
【0029】
【数1】
【0030】[式中、Pは攪拌動力(W)、Vは液容積
(m3)、ηは液粘性係数(Pa・S)、gcは換算係数
(kgm/kg秒3)をあらわす。]
【0031】該層状複水酸化物焼成物添加中は該含フッ
素ポリマー凝集排水内に存在する炭酸イオン、炭酸水素
イオン、炭酸及び炭酸ガス(以下炭酸イオン等と記す)
を除去するため、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性
ガスでバブリング、もしくは不活性ガスで炭酸イオン等
を追い出したあと、反応容器を密閉するのが好ましい。
これは該層状複水酸化物焼成物が水和して生成する層状
複水酸化物が炭酸イオンと反応し、炭酸イオンと該層状
複水酸化物の結合力が高いために、該含フッ素乳化剤の
回収の妨げになるためである。バブリングを実施する場
合の不活性ガスの流量は0.1Nm3/m3・h〜10N
3/m3・hが好ましく、0.1Nm3/m3・h〜5N
3/m3・hがより好ましい。ガス流量を0.1Nm3
/m3・h以上とすることで系内の炭酸イオン等の除去
が十分に行われるようになり、10Nm3/m3・h以下
とすることで、気化熱によって水溶液の温度が低下して
しまう不具合を防ぐことができる。
【0032】該層状複水酸化物を合成させる際の水温は
10℃以上50℃以下で実施するのが好ましい。水温が
これ以下でもこれ以上でも、層状複水酸化物の形成が低
下してしまう。特にこれ以下の水温での反応率は著しく
低下するため、反応器には温度制御装置を装備するのが
好ましい。このようにして、凝集排水中において、含フ
ッ素乳化剤を層間に含む層状複水酸化物が生成されるの
で、生成された層状複水酸化物を凝集排水から分離する
ことにより、含フッ素乳化剤を回収することができる。
含フッ素乳化剤を含む層状複水酸化物を凝集排水から分
離する方法としては、周知の固液分離方法を適宜用いる
ことができ、特に、ろ過、デカンテーション、遠心分離
およびシックナーからなる群より選ばれる1種以上の方
法を用いることがより好ましい。ろ過は、加圧下に実施
することも好ましい。さらに、層状複水酸化物に内包さ
れた形で回収された含フッ素乳化剤は、例えば層状複水
酸化物を、塩酸および/または硫酸および/または硝酸
のような強酸で再溶解させ、該溶解液から非水溶性有機
溶剤で抽出するなどの方法により再生することができ
る。
【0033】本発明の含フッ素乳化剤の回収方法は、前
記含フッ素乳化剤だけでなく、トリフルオロ酢酸、ペン
タフルオロプロパン酸等の低分子量含フッ素カルボン酸
及び/又はその塩、トリフルオロメタンスルホン酸及び
/又はその塩等にも適用できる。
【0034】
【実施例】次に実施例をあげて本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されない。なお、APF
O、ペルフルオロオクタン酸(以下、PFOAと記
す。)又はペルフルオロオクタン酸ナトリウムの濃度
は、メタノールとジブチルアミン酢酸塩1質量%水溶液
の混合溶液を溶媒とした高速液体クロマトグフィー−マ
ススペクトル法を用いて測定した。この方法で検出され
る種はペルフルオロオクタノエート(C715COO-
である。
【0035】[排水中のSS成分の測定(単位:質量
%)]PTFEの水性分散液からPTFEを凝集・分離
した後の凝集排水の10gをメトラートレド社製ハロゲ
ン式水分測定器HR−73に入れ、200℃で質量が一
定になるまで乾燥させた後の蒸発残分をSS成分とし
た。
【0036】[実施例1]内容積500mLのガラス製
ビーカーにイオン交換水100mLを入れ、0.2N水
酸化ナトリウム水溶液でpHを10に調整した。そこに
炭酸ナトリウム0.364g(3.44mmol)を溶
解させた。この希薄炭酸ナトリウム水溶液に塩化アルミ
ニウムと塩化マグネシウムの混合水溶液[Al3+イオン
濃度0.075mol/L、Mg2+イオン0.15mo
l/L]約22.9mL[Al3+イオン総量1.72m
mol、Mg2+イオン総量3.43mmol]を2時間
かけて滴下した。滴下中はアンカー翼を用いてG値が1
00になるように攪拌を続けた。滴下の間0.2N水酸
化ナトリウム水溶液を適宜滴下してpHを9.8以上1
0.2以下に調整した。塩化アルミニウムと塩化マグネ
シウムの混合水溶液の滴下直後から白色沈殿を生成し始
めた。この混合水溶液の滴下開始後2時間で沈殿の生成
は終了した。攪拌を停止すると生成した沈殿はゆっくり
と沈降した。この沈殿を3μmメンブランフィルターで
濾取した。沈殿を濾紙ごと電気炉を用いて400℃で3
時間焼成した。沈殿物の焼成後重量は140mgであっ
た。この層状複水酸化物焼成物を、水酸化ナトリウム水
溶液を添加して、pHを10.0に調整したPTFEの
乳化重合後の凝集後排水1L(SS成分2300pp
m、APFO濃度148ppm)に30分間かけて添加
した(凝集排水中に含まれる含フッ素乳化剤量に対し、
層状複水酸化物焼成物中のアルミニウムイオンは5.0
倍モル以下に相当する)。添加中はビーカー底部から窒
素バブリングを行い、アンカー翼を用いてG値が100
になるように攪拌を続けた。添加終了後6時間攪拌を続
けたあと攪拌を停止し、沈殿物を3μmのメンブランフ
ィルターで濾取した。以上の操作は炭酸イオンを含む層
状複水酸化物の焼成の際を除き、全て室温下(25℃)
で行った。この沈殿物を濾紙ごと70℃で15時間乾燥
した。沈殿物の乾燥重量は3.89gであった。乾燥し
た沈殿物を示差熱重量分析(DTA)、赤外吸収スペク
トル(IR)、XRDで分析したところ、PTFEに帰
属する弱いピークと、層状複水酸化物に帰属するピー
ク、さらにPFOAに帰属する弱いピークが検出され
た。このことから、この沈殿物は微量のPTFEとPF
OAが層状複水酸化物と共に沈殿したものであることが
確認された。上澄液を分析したところAPFOの濃度は
47ppmであり、従って、層状複水酸化物に含まれる
PFOAの固定率は68.2%であった。
【0037】[実施例2]実施例1に記載と同様の方法
で生成した層状複水酸化物焼成物140mgをPTFE
の乳化重合後の凝集後排水500mL(SS成分230
0ppm、APFO濃度148ppm)に30分間かけ
て添加した(凝集排水中に含まれる含フッ素乳化剤量に
対し、層状複水酸化物焼成物中のアルミニウムイオンは
9.9倍モル以下に相当する)以外は全く同じ方法で操
作を行った結果、得られた濾液を分析したところAPF
Oの濃度は59ppmであり、従って、この沈殿に含ま
れるPFOAの固定率は60.0%であった。
【0038】[実施例3]実施例1において塩化マグネ
シウムの代わりに塩化亜鉛を用い、pH7.5で層状複
水酸化物の生成を行った以外は、実施例1記載と同様の
操作で層状複水酸化物焼成物を合成した。この結果得ら
れた層状複水酸化物焼成物は199mgであった。この
層状複水酸化物焼成物をPTFEの乳化重合後の凝集排
水500mL(SS成分2300ppm、APFO濃度
148ppm)に30分間かけて添加した(凝集排水中
に含まれる含フッ素乳化剤量に対し、層状複水酸化物焼
成物中のアルミニウムイオンは9.9倍モル以下に相当
する)以外は全く同じ方法で操作を行った結果、得られ
た濾液を分析したところAPFOの濃度は39ppmで
あり、従って、この沈殿に含まれるPFOAの固定率は
74.2%であった。
【0039】[実施例4]実施例1に記載と同様の方法
で生成した層状複水酸化物焼成物140mgを水酸化カ
リウム水溶液を添加してpH10.0に調整したTFE
/P共重合体の乳化重合後の凝集排水200mL(SS
成分1700ppm、APFO濃度705ppm)に3
0分間かけて添加した(凝集排水中に含まれる含フッ素
乳化剤量に対し、層状複水酸化物焼成物中のアルミニウ
ムイオンは5.3倍モル以下に相当する)以外は全く同
じ方法で操作を行った結果、得られた濾液を分析したと
ころAPFOの濃度は109ppmであり、従って、こ
の沈殿に含まれるPFOAの固定率は85.4%であっ
た。
【0040】[実施例5]PTFEの乳化重合後の凝集
排水520mL(SS成分2200ppm)に塩化アル
ミニウム水溶液(0.82mol/L)を1.6g添加
して生成した沈殿物を3μmのメンブランフィルターで
除去した結果、得られた排水のSS分は230ppm、
APFO濃度121ppmであった。これに0.2N水
酸化ナトリウム水溶液を添加してpH10.0に調整し
た。この排水510mLに実施例1に記載と同様の方法
で層状複水酸化物焼成物115mgを25分間かけて添
加した(凝集排水中に含まれる含フッ素乳化剤量に対
し、層状複水酸化物焼成物中のアルミニウムイオンは
9.9倍モル以下に相当する)以外は全く同じ方法で操
作を行った結果、得られた濾液を分析したところAPF
Oの濃度は40ppmであり、従って、この沈殿に含ま
れるPFOAの固定率は66.2%であった。
【0041】[比較例1]実施例1に記載と同様の方法
で生成した層状複水酸化物焼成物140mgを、水酸化
カリウム水溶液を添加して、pHを8.5に調整したP
TFEの乳化重合後の凝集排水3.7L(SS成分23
00ppm、APFO濃度40ppm)に30分間かけ
て添加した(凝集排水中に含まれる含フッ素乳化剤量に
対し、層状複水酸化物焼成物中のアルミニウムイオンは
5.0倍モル以下に相当する)。以降の操作も実施例1
と同様の方法で行った結果、上澄液を分析したところA
PFOの濃度は36ppmであり、従って、層状複水酸
化物に含まれるPFOAの固定率は8.0%であった。
【0042】[その他の例1]実施例1に記載と同様の
方法で生成した層状複水酸化物焼成物140mgを、水
酸化カリウム水溶液を添加して、pHを10.0に調整
したPTFEの乳化重合後の凝集排水21L(SS成分
2300ppm、APFO濃度40ppm)に30分間
かけて添加した(凝集排水中に含まれる含フッ素乳化剤
量に対し、層状複水酸化物焼成物中のアルミニウムイオ
ンは0.88倍モル以下に相当する)。以降の操作も実
施例1と同様の方法で行った結果、上澄液を分析したと
ころAPFOの濃度は38ppmであり、従って、層状
複水酸化物に含まれるPFOAの固定率は5.0%であ
った。
【0043】[その他の例2]実施例1において、塩化
アルミニウムと塩化マグネシウムに代えて、塩化鉄(II
I)および塩化カルシウムを用いた以外は、実施例1に
記載と同様の操作を行った。この結果、上澄液を分析し
たところAPFOの濃度は79ppmであり、従って、
層状複水酸化物に含まれるPFOAの固定率は46.5
%であった。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、含フッ素ポリマーの重
合後の排水から簡便に含フッ素乳化剤を回収できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 江田 昌隆 千葉県市原市五井海岸10番地 旭硝子株式 会社内 (72)発明者 舟木 宙 千葉県市原市五井海岸10番地 旭硝子株式 会社内 (72)発明者 神谷 浩樹 千葉県市原市五井海岸10番地 旭硝子株式 会社内 (72)発明者 大森 浩太 秋田県秋田市茨島3−1−6 株式会社ジ ェムコ内 (72)発明者 神谷 武志 秋田県秋田市茨島3−1−6 株式会社ジ ェムコ内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2価金属イオンと3価金属イオンからな
    る金属水酸化物層と炭酸イオンの中間層とを持つ層状複
    水酸化物を該層状複水酸化物が形成されるpHの水溶液
    中で生成し、これを焼成して得られる層状複水酸化物焼
    成物と、含フッ素乳化剤を含み、かつ浮遊固形分および
    浮遊固形分になりうる物質の含有量が1質量%以下であ
    る含フッ素ポリマーの重合後の排水とを、該排水のpH
    を前記層状複水酸化物の形成時と同様のpHに調整した
    あと混合し、前記含フッ素乳化剤を該層状複水酸化物焼
    成物が水和して生成する層状複水酸化物の層間に内包さ
    せ、該含フッ素ポリマーの重合後の排水から該層状複水
    酸化物を分離し、該含フッ素乳化剤を回収することを特
    徴とする含フッ素乳化剤を回収する方法。
  2. 【請求項2】 前記2価金属イオンがマグネシウムイオ
    ンおよび亜鉛イオンから選ばれる1種または2種であ
    り、前記3価金属イオンがアルミニウムイオンである請
    求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記含フッ素ポリマーが、ポリ四フッ化
    エチレン、四フッ化エチレン/エチレン共重合体、四フ
    ッ化エチレン/プロピレン共重合体、四フッ化エチレン
    /プロピレン/フッ化ビニリデン共重合体、四フッ化エ
    チレン/六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレ
    ン/CF2=CFO(CF22CF3共重合体、ポリフッ
    化ビニリデンから選ばれる一種または二種以上であり、
    乳化重合もしくは水性分散重合で得られるポリマーであ
    る請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記含フッ素乳化剤が、炭素原子数5〜
    13の、ペルフルオロアルカン酸、ペルフルオロアルカ
    ンスルホン酸及びこれらの化合物中のフッ素の一部が塩
    素もしくは水素で置換された酸の塩の群から選ばれる1
    種または2種以上および/または、分子中にエーテル性
    の酸素原子を含有するペルフルオロアルカン酸、ペルフ
    ルオロアルカンスルホン酸及びこれらの化合物中のフッ
    素の一部が塩素もしくは水素で置換された酸の塩の群か
    ら選ばれる1種または2種以上である請求項1〜3のい
    ずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記含フッ素乳化剤が、アルカリ金属塩
    またはアンモニウム塩である請求項1〜4のいずれかに
    記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記含フッ素ポリマーの重合後の排水中
    の浮遊固形分および浮遊固形分になりうる物質の含有量
    が0.3質量%以下かつ該含フッ素乳化剤の濃度が1質
    量ppm以上10質量%以下である請求項1〜5のいず
    れかに記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記含フッ素ポリマーの重合後の排水中
    の浮遊固形分および浮遊固形分になりうる物質の含有量
    が0.05質量%以下かつ該含フッ素乳化剤の濃度が5
    0質量ppm以上0.5質量%以下である請求項1〜6
    のいずれかに記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記含フッ素乳化剤が、ペルフルオロオ
    クタン酸アンモニウムである請求項1〜7のいずれかに
    記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記含フッ素ポリマーの重合後の排水に
    含まれる含フッ素乳化剤のモル数に対し、層状複水酸化
    物焼成物をこれに含まれる3価金属イオンのモル数で1
    倍以上30倍以下の量を、また2価金属イオンのモル数
    で1倍以上90倍以下の量を添加することによって、も
    って該含フッ素乳化剤を回収する、請求項1〜8のいず
    れかに記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102145268A (zh) * 2011-01-20 2011-08-10 上海三爱富新材料股份有限公司 表面活性剂组合物及其用途

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CN102145268A (zh) * 2011-01-20 2011-08-10 上海三爱富新材料股份有限公司 表面活性剂组合物及其用途

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