JP2003210176A - 5置換ヒダントインラセマーゼ、これをコードするdna、組み換えdna、形質転換された細胞および光学活性アミノ酸の製造方法 - Google Patents
5置換ヒダントインラセマーゼ、これをコードするdna、組み換えdna、形質転換された細胞および光学活性アミノ酸の製造方法Info
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Abstract
ゼを単離し、当該酵素を用いた光学活性アミノ酸の製造
方法を提供することを課題とする。 【解決手段】 下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有
し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパ
ク質。(a)Flavobcterium由来の特定のア
ミノ酸配列(b)上記のアミノ酸配列において1または数
個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位
を含むアミノ酸配列
Description
トインラセマーゼ、これをコードするDNA、組み換え
DNA、形質転換された細胞および光学活性アミノ酸の
製造方法に関し、特に、ラセミ化反応を効率的に触媒す
る新規5置換ヒダントインラセマーゼ、これをコードす
るDNA、組み換えDNA、形質転換された細胞および
光学活性アミノ酸の製造方法に関する。
「HRase」とも記す)は、光学活性な5置換ヒダン
トイン化合物、すなわちD−またはL−5置換ヒダント
イン化合物に作用し、当該物質のラセミ化反応を触媒す
る酵素である。
(I)に示すように、、の酵素による加水分解反応
を経てアミノ酸となる。 5置換ヒダントイン化合物に作用し、当該物質を加水
分解することによりN−カルバミルアミノ酸を生成する
反応を触媒する酵素(ヒダントイナーゼ、以下「HHa
se」とも記す)。 生成したN−カルバミルアミノ酸に作用し、当該物質
を加水分解することにより光学活性アミノ酸を生成する
反応を触媒する酵素(N−カルバミルアミノ酸ハイドロ
ラーゼ、以下「CHase」とも記す。また、一般にカ
ルバミルアミノ酸ハイドロラーゼはカルバミラーゼと略
称される場合がある)。
ミノ酸を製造するためには、上記ヒダントイナーゼお
よびN−カルバミルアミノ酸ハイドロラーゼのうち、
少なくとも一方に光学選択性の酵素を用いればよく、従
来から微生物酵素系を用いた方法および微生物酵素系と
化学反応系とを組み合わせた方法が知られている。この
5置換ヒダントイン化合物から、光学活性アミノ酸を製
造する方法は、医薬品、化学工業品、食品添加物等の製
造に重要である。
反応系との組み合わせにより、DL−5置換ヒダントイ
ン化合物の全量を光学選択的に加水分解させ、光学活性
アミノ酸に変換するには、基質とならないエナンチオマ
ーを効率的にラセミ化し、基質となるエナンチオマーに
変化させる必要がある。ところが、基質とならない光学
活性5置換ヒダントイン化合物のラセミ化速度がきわめ
て遅いものもあり、ラセミ化が律速となって効率的に光
学活性アミノ酸に変換することができないといった問題
があった。
ダントイン化合物のラセミ化を目的として、HRase
の検索がなされ、アースロバクター(Arthrobacter)属
細菌由来(特開昭62−122591号公報、Ann.N.Y.
Acad.Sci 672巻478ページ、特開平6−3434
62号公報)、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌由
来(特開平4−271784号公報、J.Bacteriol.17
4巻、7989ページ、1992年)が報告されてい
る。従来報告されている細菌由来のHRaseの至適反
応温度は、アースロバクター エスピー(Arthrobacter
sp.)DSM−3747株由来のものが37℃(Ann.N.
Y.Acad.Sci 672巻 478ページ)、同じくアース
ロバクター エスピー(Arthrobacter sp.)DK200
株由来のものが10℃〜50℃(特開昭62−1225
91号公報)、またシュードモナスエスピー(Pseudomon
as sp.)NS671由来のものが45℃である。これら
の菌株はいずれもL−アミノ酸生産菌である。
的応用の観点から、HRaseは有用である。従って、
本発明の目的は、従来にない新規HRaseを単離し、
当該酵素を用いた光学活性アミノ酸の製造方法を提供す
ることにある。
物からD−アミノ酸を生産する菌株については既に報告
があるものの、D−アミノ酸生産菌の中でHRase活
性を有するものについては報告がなく、また、上記のよ
うにHRaseはL−アミノ酸生産菌に由来するものし
か見出されていなかった。しかしながら、本発明者ら
は、L−アミノ酸生産菌に限らずD−アミノ酸生産菌に
ついても幅広く探索を続けたところ、初めてD−アミノ
酸生産菌の中からHRase活性を有する菌を見出し、
本発明を完成させるに至った。
換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質。 (a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列 (b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において
1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加
または逆位を含むアミノ酸配列 〔2〕 フラボバクテリウム属細菌を培養して得た菌体
を破砕または溶菌後、精製処理を行うことにより取得さ
れるフラボバクテリウム属細菌由来の5置換ヒダントイ
ンラセマーゼ画分。 〔3〕 請求項1に記載の5置換ヒダントインラセマー
ゼ活性を有するタンパク質または請求項2に記載の5置
換ヒダントインラセマーゼ画分を、光学活性5置換ヒダ
ントイン化合物に作用させることを特徴とする光学活性
5置換ヒダントイン化合物のラセミ化方法。 〔4〕 上記〔1〕に記載の5置換ヒダントインラセマ
ーゼ活性を有するタンパク質または上記〔2〕に記載の
5置換ヒダントインラセマーゼ画分、および、5置換ヒ
ダントイン化合物を光学選択的に加水分解する酵素また
は当該酵素含有物を、5置換ヒダントイン化合物に作用
させることを特徴とするN−カルバミルアミノ酸の製造
方法。 〔5〕 下記(ii)および(iii)のうち少なくとも一方が
光学選択的に基質を加水分解する酵素または酵素含有物
であり、下記(i)、(ii)および(iii)を5置換ヒダント
イン化合物に作用させることを特徴とする光学活性アミ
ノ酸の製造方法。 (i)上記〔1〕に記載の5置換ヒダントインラセマーゼ
活性を有するタンパク質または上記〔2〕に記載の5置
換ヒダントインラセマーゼ画分 (ii)5置換ヒダントイン化合物を加水分解する酵素また
は当該酵素含有物 (iii)N−カルバミルアミノ酸を加水分解する酵素また
は当該酵素含有物 〔6〕 上記〔1〕に記載の5置換ヒダントインラセマ
ーゼ活性を有するタンパク質または上記〔2〕に記載の
5置換ヒダントインラセマーゼ画分と、5置換ヒダント
イン化合物を光学選択的に加水分解する酵素または当該
酵素含有物と、N−カルバミルアミノ酸を化学的に加水
分解する化学的加水分解剤とを、5置換ヒダントイン化
合物に作用させることを特徴とする光学活性アミノ酸の
製造方法。 〔7〕 下記(a)または(b)の塩基配列を有し、5置換ヒ
ダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質をコード
するDNA。 (a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列 (b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩
基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイ
ブリダイズする塩基配列 〔8〕 下記(c)または(d)のアミノ酸配列を有し、5置
換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質をコ
ードするDNA。 (c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列 (d)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において
1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加
または逆位を含むアミノ酸配列
NAとベクターDNAとが接続されて得られる組み換え
DNA。 〔10〕 前記ベクターDNAは、pUC系プラスミ
ド、pBR322系プラスミドまたはその誘導体である
ことを特徴とする上記
DNAによって形質転換された細胞。 〔12〕 前記細胞は、エシェリヒア コリであること
を特徴とする上記〔11〕に記載の細胞。 〔13〕 上記〔11〕または〔12〕に記載の細胞を
培地中で培養し、培地中および/または細胞中に5置換
ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質を蓄積
させることを特徴とする5置換ヒダントインラセマーゼ
活性を有するタンパク質の製造方法。
方法 の順に添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以
下本明細書においては、特に断る場合を除き、「HRa
se」には5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有する
タンパク質を含めるものとする。
を製造するに際しては、上記反応式(I)に示したように
2種の酵素が用いられる。したがって、HRaseを探
索する場合、原料となる所定の光学活性5置換ヒダント
イン化合物から目的の光学活性を有するアミノ酸が得ら
れないからといってHRase活性がないとは限らな
い。たとえHRase活性が存在していたとしても、H
HaseやCHaseの活性不良による場合も考えられ
るからである。また、原料となる5置換ヒダントイン化
合物自体が自発的にラセミ化するような条件下で試験を
するのもHRase活性の有無の検索としては不適当で
ある。
ヒダントインは酵素反応が行われるような中性条件下で
は、自発的ラセミ化がほとんど起こらないことを確認す
ると共に、HHase、CHaseの活性が十分にある
実験系を確立した上で幅広くHRase活性を有する菌
体を探索したところ、D−アミノ酸生産菌であるフラボ
バクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11
199株に新規HRaseが存在すると考えるに至っ
た。この考えに基づき、本発明者らは、新規HRase
の存在を明らかにすべく、当該菌株の培養菌体からHR
aseを精製単離するとともに、新規HRaseである
ことを見いだした。
エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199株由
来のHRaseを精製し、HRaseのアミノ酸配列を
決定した。さらに、HRaseのアミノ酸配列から演繹
した30塩基対程度のDNA分子を合成し、これをプロ
ーブとして利用しフラボバクテリウム属細菌由来HRa
seをコードするDNA全長を、フラボバクテリウム属
細菌染色体遺伝子ライブラリーから単離することに成功
した。
る代表的なDNAは、特公昭56−025119号に記
載のフラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium s
p.)AJ11199(FERM−P4229)株の染色
体DNAより単離、取得されたものである。なお、フラ
ボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ1
1199(FERM−P4229)株はアルカリゲネス
アクアマリヌス(Alcaligenes aquamarinus)として通
商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され
た微生物であるが、再同定の結果、フラボバクテリウム
エスピー(Flavobacterium sp.)に分類されることが判
明した。現在では、フラボバクテリウムエスピー(Flavo
bacterium sp.)AJ11199(FERM−P422
9)株として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物
寄託センターに寄託されている。
るバージェーズ マニュアル オブデターミネイティブ
バクテリオロジー 第1巻(第9版 1994年、ウイリ
アム アンド ウイルキンス社出版)に照らしあわせて
生理性状試験を実施した試験結果を以下に示す。
erium sp.)AJ11199の再同定結果 グラム染色 陰性 細胞形態 桿菌 運動性 なし 硝酸塩還元 − インドール産生 − ブドウ糖酸性化 − アルギニンジヒドラーゼ − ウレアーゼ + エスクリン加水分解 + ゼラチン加水分解 − β−ガラクトシダーゼ + カタラーゼ + オキシダーゼ + 基質資化能 ブドウ糖 + L−アラビノース + D−マンノース + D−マンニトール + N−アセチル−D−グルコサミン + マルトース + グルコン酸カリウム − n−カプリン酸 − アジピン酸 − dl−リンゴ酸 − クエン酸ナトリウム − 酢酸フェニル −
をフラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)
と同定した。
本発明のHRaseは、HHase遺伝子およびCHa
se遺伝子とともにオペロンを形成していると考えられ
る。図1中、はSau3A I/Sau3A I断片で
あり、はSph I/Sph I断片である。
上記方法によって特定された本発明のHRaseをコー
ドするDNAを配列番号1に示し、HHaseをコード
するDNAを配列番号12に示し、CHaseをコード
するDNAを配列番号14に示す。また、HRase遺
伝子、HHase遺伝子およびCHase遺伝子を含む
構造遺伝子群をコードするDNAを配列番号11に示
す。配列番号11に記載の塩基配列のうち、塩基番号3
817〜4548が本発明のHRaseをコードし、塩
基番号2341〜3798がHHaseをコードし、塩
基番号306〜1220がCHaseをコードしてい
る。
エスピー(Flavobacterium sp. )AJ11199株の
染色体DNAから単離されたものであり、いずれもD−
アミノ酸の製造に用いることができるタンパク質をコー
ドするものである。
列番号1の塩基配列がコードするHRaseのアミノ酸
配列を示し、配列表の配列番号13に、配列表の配列番
号12の塩基配列がコードするHHaseのアミノ酸配
列を示し、配列表の配列番号15に、配列表の配列番号
14の塩基配列がコードするCHaseのアミノ酸配列
を示す。
は、HHaseおよびCHaseと共に用いられて、下
記反応式(II)に例示するように、5−ベンジルヒダン
トインに代表される5置換ヒダントイン化合物から、D
−フェニルアラニンに代表される光学活性アミノ酸を生
成する反応を触媒する。
(1)HRaseをコードするDNA、(2)HRase
の活性測定等、(3)HRaseの製造方法の順に詳細
に説明する。
se遺伝子は、前述したようにフラボバクテリウム エ
スピー(Flavobacterium sp.)AJ11199株の染色体
DNAから単離されたものである。配列表の配列番号1
の塩基配列は、本発明をなす以前に本発明者らが既に見
いだしていた、マイクロバクテリウムリクエファシエン
ス(Microbacterium liquefaciens)AJ3912株由来
のHRase(特願2001−278739号記載)
と、アミノ酸配列において43%の相同性を示す。
シエンス(Microbacterium liquefaciens )AJ391
2は、当初フラボバクテリウム エスピー.(Flavobact
erium sp.)AJ3912(FERM−P3133)と
して1975年6月27日に通商産業省工業技術院生命
工学工業技術研究所に寄託されたが、再同定の結果オー
レオバクテリウム リクエファシエンス(Aureobacteriu
m liquefaciens )に分類されることが判明した。さら
に現在では、種名変更により、オーレオバクテリウム
リクエファシエンス(Aureobacterium liquefaciens )
はマイクロバクテリウム リクエファシエンス(Microb
acterium liquefaciens )に分類され、マイクロバクテ
リウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefa
ciens )AJ3912(国内寄託番号FERM−P31
33、国際寄託番号FERM−BP7643)として独
立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに
寄託されている。
seをコードするDNAを取得する方法について説明す
る。
酸配列を決定する。エドマン法(Edman,P., Acta Chem.
Scand. 4, 227 (1950))を用いてアミノ酸配列を決定
することができる。またApplied Biosystems社製のシー
クエンサーを用いてアミノ酸配列を決定することができ
る。本発明のフラボバクテリウム属細菌由来HRase
について、N末端から30残基のアミノ酸配列を決定
し、明らかとなったアミノ酸配列に基づいて、これをコ
ードするDNAの塩基配列を演繹できる。DNAの塩基
配列を演繹するには、ユニバーサルコドンを採用する。
対程度のDNA分子を合成する。該DNA分子を合成す
る方法はTetrahedron Letters, 22, 1859 (1981)に開示
されている。また、Applied Biosystems社製のシンセサ
イザーを用いて該DNA分子を合成できる。該DNA分
子は、フラボバクテリウム属細菌由来HRaseをコー
ドするDNA全長を、フラボバクテリウム属細菌染色体
遺伝子ライブラリーから単離する際に、プローブとして
利用できる。あるいは、フラボバクテリウム属細菌由来
HRaseをコードするDNAをPCR法で増幅する際
に、プライマーとして利用できる。ただし、PCR法を
用いて増幅されるDNAはフラボバクテリウム属細菌由
来HRaseをコードするDNA全長を含んでいないの
で、PCR法を用いて増幅されるDNAをプローブとし
て用いて、フラボバクテリウム属細菌由来HRaseを
コードするDNA全長をフラボバクテリウム属細菌染色
体遺伝子ライブラリーから単離する。
et al., Trends Genet. 5, 185 (1989)等に記載されて
いる。染色体DNAを調製する方法、さらにDNA分子
をプローブとして用いて、遺伝子ライブラリーから目的
とするDNA分子を単離する方法については、Molecula
r Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press(1
989)等に記載されている。
HRaseをコードするDNAの塩基配列を決定する方
法は、A Practical Guide to Molecular Cloning, John
Wiley & Sons, Inc. (1985)に記載されている。また、
Applied Biosystems社製のDNAシークエンサーを用い
て、塩基配列を決定することができる。フラボバクテリ
ウム属細菌由来HRaseをコードするDNAを配列表
配列番号1に示す。
aseをコードするDNAは、配列表配列番号1に示さ
れるDNAだけではない。すなわち、フラボバクテリウ
ム属に属する細菌の種および株ごとに、塩基配列の違い
が観察されるはずだからである。
seをコードするDNAのみではなく、当然ながら、フ
ラボバクテリウム属細菌の染色体DNAから単離された
HRaseをコードするDNAに人工的に変異を加えた
DNAであっても、HRaseをコードする場合には、
本発明のDNAである。人工的に変異を加える方法とし
て頻繁に用いられるものとして、Method. in Enzymol.,
154 (1987)に記載されている部位特異的変異導入法があ
る。
とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配
列を有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有する
タンパク質をコードするDNAも本発明のDNAであ
る。ここで「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる
特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリ
ッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値
化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高
いDNA同士、例えば50%以上、より好ましくは80
%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有する
DNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低い
DNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常
のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である6
0℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、60
℃、0.1×SSC、0.1%SDS、さらに好ましく
は65℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する
塩濃度でハイブリダイズする条件があげられる。また、
「5置換ヒダントインラセマーゼ活性」とは、5置換ヒ
ダントイン化合物をラセミ化する活性であればよい。た
だし、配列表の配列番号1に記載の塩基配列とストリン
ジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列の場合に
は、50℃、pH8の条件下で配列表の配列番号2に記
載のアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上の
酵素活性を保持していることが望ましい。
AがコードするHRaseと実質的に同一のタンパク質
をコードするDNAも本発明のDNAである。すなわ
ち、(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を
コードするDNA、(b)配列表の配列番号2に記載の
アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置
換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列を
有し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタン
パク質をコードするDNA、も本発明のDNAに含まれ
る。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質
の立体構造や、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を大
きく損なわない範囲のものであり、具体的には、2〜5
0個、好ましくは2〜30個、さらに好ましくは2〜1
0個である。また、「5置換ヒダントインラセマーゼ活
性」とは、前述のとおり、5置換ヒダントイン化合物を
ラセミ化する活性を意味する。ただし、(b)配列表の
配列番号2に記載のアミノ酸配列において1または数個
のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を
含むアミノ酸配列の場合には、50℃、pH8の条件下
で配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタ
ンパク質の半分程度以上の酵素活性を保持していること
が望ましい。
aseの活性測定等について説明する。
離と解析より明らかにされるように、代表的には配列表
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する。しかし、本
発明は、配列番号2に記載のアミノ酸配列と実質的に同
じアミノ酸配列を有し、かつ5置換ヒダントインラセマ
ーゼ活性を有するタンパク質も含むものである。より具
体的には、本発明は、配列表の配列番号2に記載のアミ
ノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、
欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列を有
し、かつ5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタ
ンパク質をも含むものである。さらに、配列表配列番号
2のアミノ酸配列およびこれと実質的に同じアミノ酸配
列を有するタンパク質であれば、複数の酵素活性を有す
る複合的なタンパク質であってもよい。
(a)または(b)のアミノ酸配列を有し、5置換ヒダントイ
ンラセマーゼ活性を有するタンパク質である。 (a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列 (b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列におい
て1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付
加または逆位を含むアミノ酸配列 ここで、「数個」および「5置換ヒダントインラセマー
ゼ活性」の定義は上記(1)HRaseをコードするD
NAの項の説明と同義である。
ン化合物のラセミ化反応を触媒する。
定は、光学活性なD−、またはL−5置換ヒダントイン
化合物を基質とし、ラセミ化度をこれらの旋光度の変化
を測定する、または、光学分割カラムを用いた高速液体
クロマトグラフィー(HPLC)により測定することに
より行うことが可能である。
はD−ベンジルヒダントイン(BH)、50 mM リン酸
−カリウム緩衝液(KPB) (pH 8.0)、5 mM ジ
チオスレイトール(DTT)およびHRase酵素溶液
を含む反応液を37℃で30分間インキュベートした
後、9倍容の1.1 mM CuSO4、11.1 mM H3P
O4溶液を添加することにより反応を停止させる。2
0,000g×10分の遠心により沈澱を取り除いた
後、HPLCにてラセミ化したBH量を定量し、ラセミ
化活性を見積もる。なお、酵素活性の単位として、この
条件にて1分に1μmolのBHをラセミ化する酵素活
性をもって1Uと定義する。
分析はダイセル化学CHIRALPAK WH 0.46
cmφ×25cmを用いて行うことができる。分析条件
の具体例は以下の通り。 移動相:5% (v/v) methanol, 1 mM CuSO4カラム 温度:50℃ 流速:1.5 ml/分 検出:UV210 この条件において、D−BH (リテンションタイム4.
2分)、L−BH (同5.3 分)に溶出する。
本発明のHRaseの製造方法としては、(3-1) 微生物
培養によりHRaseを生成蓄積させる方法と、(3-2)
組み換えDNA技術によりHRaseを生成する形質転
換体を作成し、当該形質転換体を培養することにより当
該タンパク質を生成蓄積させる方法の2つがある。
eの取得源となる微生物としてはフラボバクテリウム(F
lavobacterium)属に属する微生物があげられる。好適な
ものとしては、フラボバクテリウム エスピー(Flavoba
cterium sp.)AJ11199(FERM−P4229)
株などがあげられる。
養形態は液体培養、固体培養いずれも可能であるが、工
業的に有利な方法は、深部通気撹拌培養法である。栄養
培地の栄養源としては、微生物培養に通常用いられる炭
素源、窒素源、無機塩およびその他の微量栄養源を使用
できる。使用菌株が利用できる栄養源であればすべてを
使用できる。
培養温度としては、菌が発育し、HRaseが生産され
る範囲であればよい。従って、厳密な条件は無いが、通
常10〜50℃、好ましくは30〜40℃である。培養
時間は、その他の培養条件に応じて変化する。例えば、
HRaseが最も生産される時間まで培養すればよく、
通常5時間〜7日間、好ましくは10時間〜3日間程度
である。
000×g、10分)により集菌する。当該酵素は菌体
中に存在するので、この菌体を破砕、または溶菌させる
ことにより、酵素の可溶化を行う。菌体破砕には、超音
波破砕、フレンチプレス破砕、ガラスビーズ破砕等の方
法を用いることができ、また溶菌させる場合には、卵白
リゾチームや、ペプチダーゼ処理またはこれらを適宜組
み合わせた方法が用いられる。
を精製する場合、酵素可溶化液を出発材料として精製す
ることになるが、未破砕あるいは未溶菌残査が存在する
ようであれば、可溶化液を再度遠心分離操作に供し、沈
殿する残査を除いた方が、精製に有利である。
めに用いられる全ての常法、例えば硫安塩析法、ゲル濾
過法、イオン交換クロマトグラフィー法、疎水クロマト
グラフィー法等を採用することができる。その結果、よ
り比活性が高いHRase含有画分を得ることができ
る。
る方法について説明する。組み換えDNA技術を利用し
て酵素、生理活性物質等の有用タンパク質を製造する例
は数多く知られており、組み換えDNA技術を用いるこ
とで、天然に微量に存在する有用タンパク質を大量生産
できる。
フローチャートである。先ず、本発明のHRaseをコ
ードするDNAを調製する(ステップS1)。次に、調製
したDNAをベクターDNAと接続して組み換えDNA
を作製し(ステップS2)、該組み換えDNAによって細
胞を形質転換して形質転換体を作製する(ステップS
3)。続いて、該形質転換体を培地中で培養し、培地中
および/または細胞中にHRaseを生成蓄積させる
(ステップS4)。その後、ステップS5に進み、該酵素
を回収・精製することによって精製HRaseを製造す
る。
seまたはステップS4のHRaseが蓄積された培地
をアミノ酸の合成に用いることで、目的とする光学活性
アミノ酸を大量に製造することができる(ステップS
6)。
は、本発明のHRaseが発現可能であればよい。
ase遺伝子としては、上述の (a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDN
A、(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列と相補的
な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件で
ハイブリダイズする塩基配列を有するDNA、(c)配列
表の配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードするDN
A、(d)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列にお
いて1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿
入、付加または逆位を含むアミノ酸配列をコードするD
NA、などを使用できる。
大量生産する場合、該タンパク質を生産する形質転換体
内で該タンパク質が会合し、タンパク質の封入体(incl
usion body)を形成させることが好ましい。この発現生
産方法の利点は、目的のタンパク質を菌体内に存在する
プロテアーゼによる消化から保護する点および目的のタ
ンパク質を菌体破砕に続く遠心分離操作によって簡単に
精製できる点等である。
は、タンパク質変性剤により可溶化され、主にその変性
剤を除去することによる活性再生操作を経た後、正しく
折り畳まれた生理的に活性なタンパク質に変換される。
例えば、ヒトインターロイキン−2の活性再生(特開昭
61−257931号公報)等多くの例がある。
得るためには、可溶化・活性再生等の一連の操作が必要
であり、直接活性型タンパク質を生産する場合よりも操
作が複雑になる。しかし、菌体の生育に影響を及ぼすよ
うなタンパク質を菌体内で大量に生産させる場合は、不
活性なタンパク質封入体として菌体内に蓄積させること
により、その影響を抑えることができる。
せる方法として、強力なプロモータの制御下、目的のタ
ンパク質を単独で発現させる方法の他、大量発現するこ
とが知られているタンパク質との融合タンパク質として
発現させる方法がある。
後に、目的のタンパク質を切り出すため、制限プロテア
ーゼの認識配列を適当な位置に配しておくことも有効で
ある。
大量生産する場合、形質転換される宿主細胞としては、
細菌細胞、放線菌細胞、酵母細胞、カビ細胞、植物細
胞、動物細胞等を用いることができるが、一般に大腸
菌、好ましくはエシェリヒア コリが用いられる。大腸
菌を用いてタンパクを大量生産する技術について数多く
の知見があるためである。以下、形質転換された大腸菌
を用いてHRaseを製造する方法を説明する。
るプロモータとしては、通常大腸菌における異種タンパ
ク質生産に用いられるプロモータを使用することがで
き、例えば、T7プロモータ、trpプロモータ、la
cプロモータ、tacプロモータ、PLプロモータ等の
強力なプロモータが挙げられる。
生産させるためには、HRase遺伝子の上流あるいは
下流に、他のタンパク質、好ましくは親水性であるペプ
チドをコードする遺伝子を連結して、融合タンパク質遺
伝子とする。このような他のタンパク質をコードする遺
伝子としては、融合タンパク質の蓄積量を増加させ、変
性・再生工程後に融合タンパク質の溶解性を高めるもの
であればよく、例えば、T7gene 10、β−ガラ
クトシダーゼ遺伝子、デヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、イ
ンターフェロンγ遺伝子、インターロイキン−2遺伝
子、プロキモシン遺伝子等が候補として挙げられる。
遺伝子とを連結する際には、コドンの読み取りフレーム
が一致するようにする。適当な制限酵素部位で連結する
か、あるいは適当な配列の合成DNAを利用すればよ
い。
タンパク質遺伝子の下流に転写終結配列であるターミネ
ーターを連結することが好ましい。このターミネータと
しては、T7ターミネータ、fdファージターミネー
タ、T4ターミネータ、テトラサイクリン耐性遺伝子の
ターミネータ、大腸菌trpA遺伝子のターミネータ等
が挙げられる。
ク質との融合タンパク質をコードする遺伝子を大腸菌に
導入するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピ
ー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を
有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpB
R322系のプラスミドあるいはその誘導体が挙げられ
る。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿
入、付加または逆位などによってプラスミドに改変を施
したものを意味する。なお、ここでいう改変とは、変異
剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異な
どによる改変をも含む。
クターがアンピシリン耐性遺伝子等のマーカーを有する
ことが好ましい。このようなプラスミドとして、強力な
プロモーターを持つ発現ベクターが市販されている(p
UC系(宝酒造(株)製)、pPROK系(クローンテ
ック製)、pKK233−2(クローンテック製)ほ
か)。
と他のタンパク質との融合タンパク質をコードする遺伝
子、ターミネータの順に連結したDNA断片と、ベクタ
ーDNAとを連結して組み換えDNAを得る。
換し、この大腸菌を培養すると、HRaseまたはHR
aseと他のタンパク質との融合タンパク質が発現生産
される。形質転換される宿主は、異種遺伝子の発現に通
常用いられる株を使用することができるが、エシェリヒ
ア コリ JM109株,特にJM109(DE3)株
が好ましい。形質転換を行う方法、および形質転換体を
選別する方法はMolecular Cloning, 2nd edition, Cold
Spring Harbor press (1989)等に記載されている。
液凝固因子Xa、カリクレインなどの、HRase内に
存在しない配列を認識配列とする制限プロテアーゼを用
いてHRaseを切り出せるようにしてもよい。
地、LB培地など、大腸菌を培養するために通常用いる
培地を用いてもよい。また、培養条件、生産誘導条件
は、用いたベクターのマーカー、プロモータ、宿主菌等
の種類に応じて適宜選択する。
ク質との融合タンパク質を回収するには、以下の方法な
どがある。HRaseあるいはその融合タンパク質が菌
体内に可溶化されていれば、菌体を回収した後、菌体を
破砕あるいは溶菌させ、粗酵素液として使用できる。さ
らに、必要に応じて、通常の沈澱、濾過、カラムクロマ
トグラフィー等の手法によりHRaseあるいはその融
合タンパク質を精製して用いることも可能である。この
場合、HRaseあるいは融合タンパク質の抗体を利用
した精製法も利用できる。
変性剤でこれを可溶化する。菌体タンパク質とともに可
溶化してもよいが、以降の精製操作を考慮すると、封入
体を取り出して、これを可溶化するのが好ましい。封入
体を菌体から回収するには、従来公知の方法で行えばよ
い。例えば、菌体を破壊し、遠心分離操作等によって封
入体を回収する。タンパク質封入体を可溶化させる変性
剤としては、グアニジン塩酸(例えば、6M、pH5〜
8)や尿素(例えば8M)などが挙げられる。
性を有するタンパク質として再生される。透析に用いる
透析溶液としては、トリス塩酸緩衝液やリン酸緩衝液な
どを用いればよく、濃度としては20mM〜0.5M、
pHとしては5〜8が挙げられる。
g/ml程度以下に抑えるのが好ましい。再生したHR
aseが自己架橋を行うのを抑えるために、透析温度は
5℃以下であることが好ましい。また、変性剤除去の方
法として、この透析法のほか、希釈法、限外濾過法など
があり、いずれを用いても活性の再生が期待できる。
列表配列番号1に示されるDNAを用いた場合には配列
番号2に記載のアミノ酸配列を有するHRaseが生産
される。
ミノ酸の製法 次に、本発明のHRaseを用いて、5置換ヒダントイ
ン化合物から光学活性アミノ酸を製造する方法について
述べる。
のHRaseとしては、下記(a)または(b)のアミノ酸配
列を有し、ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパ
ク質が挙げられる。 (a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列、(b)
配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1ま
たは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加また
は逆位を含むアミノ酸配列。
クテリウム属細菌を培養して得たHRaseを用いても
よいし、(2)組み換えDNA技術によりフラボバクテ
リウム属細菌由来のHRaseを生成する形質転換体を
作成し、当該形質転換体を培養して得たHRaseを用
いてもよい。
DNAによって形質転換された細胞を用いて、HRas
eを製造する場合、培養しながら、培養液中に直接基質
を添加してもよいし、培養液より分離された菌体、洗浄
菌体などいずれも使用可能である。また、菌体を破砕あ
るいは溶菌させた菌体処理物をそのまま用いてもよい
し、当該菌体処理物からHRaseを回収し、粗酵素液
として使用してもよいし、さらに、酵素を精製して用い
てもよい。すなわち、HRase活性を有する画分であ
れば、酵素と当該酵素含有物全てを使用することが可能
である。ここで「酵素含有物」とは、当該酵素を含むも
のであればよく、具体的には培養物、培養菌体、洗浄菌
体、菌体を破砕あるいは、溶菌させた菌体処理物、粗酵
素液、精製酵素などを含む。
分解することによりN−カルバミルアミノ酸を生成する
反応を触媒するヒダントイナーゼ(HHase)、 生成したN−カルバミルアミノ酸に作用し、当該物質
を加水分解することにより光学活性アミノ酸を生成する
反応を触媒するN−カルバミルアミノ酸ハイドロラーゼ
(CHase)、 の2つの酵素を用いることにより、光学活性アミノ酸を
製造することができる。光学活性アミノ酸を製造するに
あたっては、HHaseおよびCHaseのうち少なく
とも一方に、光学選択的に基質に作用するものを用いれ
ばよい。
分解するHHaseの光学選択性が高い場合には、光学
選択性の高いHHaseと本発明のHRaseとを5置
換ヒダントイン化合物に作用させることにより、高収率
(HRaseの作用によりモル収率50%以上)で光学
活性のN−カルバミル−L−アミノ酸またはN−カルバ
ミル−D−アミノ酸の一方のみを生成させることができ
る。この場合は、引き続きCHaseまたは当該酵素含
有物を作用させることにより光学活性を維持したまま光
学活性アミノ酸を製造することができる。なお、光学選
択的HHaseと共に光学選択的CHaseを用いる場
合には、L−またはD−について同じ光学選択性を有す
るものを用いる。また、光学選択的HHaseによって
生成したN−カルバミルアミノ酸に、亜硝酸などの化学
的加水分解剤を用い、化学的に加水分解処理を施すこと
により、光学活性を維持したまま、高収率で光学活性ア
ミノ酸を製造することもできる(微生物酵素系と化学反
応系との組み合わせによる方法)。なお、化学的加水分
解剤というときの「化学的加水分解」とは、酵素ではな
い化学薬品の作用によって加水分解するという意味であ
る。
加水分解するHHaseは次のようにして入手できる。
たとえば、N−カルバミル−D−アミノ酸を生成するD
−HHaseを有する菌としては、バチルス属細菌に耐
熱性の酵素の存在が知られており、例としてバチルス
ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilu
s)ATCC31195等からHHaseまたは、HHa
se含有画分を調製すればよい(Appl.Microbiol. Biot
echnol.43巻 270ページ、1995年)。ATCC
31195株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コ
レクション(American Type Culture Collection、住所
12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, U
nited States of America)から入手することができ
る。また、L体ヒダントイン化合物に特異的に作用する
L−HHaseは、例えばバチルスエスピー(Bacillus
sp.)AJ12299株にその存在が知られている(特
開昭63−24894号公報)。バチルス エスピー
AJ12299株は、1986年7月5日に通商産業省
工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、受託番
号FERM−P8837が付与され、2001年6月2
7日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託セ
ンターにブタペスト条約に基づき移管され、受託番号F
ERM BP-7646が付与された微生物である。
くとも、CHaseに光学選択性があれば、生成アミノ
酸はD−もしくはL−の光学活性体となる。この場合、
反応液中には未反応のエナンチオマーであるN−カルバ
ミルアミノ酸、すなわちCHaseがN−カルバミル−
L−アミノ酸を選択的に分解しL−アミノ酸を生成させ
る場合にはN−カルバミル−D−アミノ酸が、また逆に
D−アミノ酸を生成させる場合にはN−カルバミル−L
−アミノ酸が、それぞれ残存することが想定される。し
かしながら、このような場合においてHHaseは、残
存することになる未反応エナンチオマーのN−カルバミ
ルアミノ酸を脱水縮合させ、再度5置換ヒダントイン化
合物を生成させる逆反応をもわずかながら触媒するの
で、HRase、HHase、光学選択性の高いCHa
seの3種の酵素、もしくは3種の酵素含有物により、
高収率(HRaseの作用によりモル収率50%以上)
で光学活性アミノ酸を製造することが可能となる。
バクテリウム リクエファシエンス(Microbacterium l
iquefaciens)AJ3912株のほか、例えばアースロ
バクター オーレセンス(Arthrobacter aurescens)に
その存在が知られている(J.Biotechnol.61巻、1ペ
ージ、1998年)。
水分解するCHaseは、たとえばシュードモナス エ
スピー(Pseudomonas sp. )AJ 11220株にその
存在が知られている(特公昭56−003034号公
報)。再同定の結果、シュードモナス エスピー(Pseud
omonas sp. )AJ 11220株は、アグロバクテリウ
ム エスピー(Agrobacterium sp. )に属することが判
明している。アグロバクテリウム エスピー AJ 11
220株は1977年12月20日に通商産業省工業技
術院生命工学工業技術研究所に寄託され、受託番号FE
RM−P4347が付与され、2001年6月27日に
独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター
にブタペスト条約に基づき移管され、受託番号FERM
BP-7645が付与された微生物である。またN−
カルバミルアミノ酸をL体選択的に加水分解するCHa
seは、たとえばフラボバクテリウム エスピー.(Fla
vobacterium sp.)AJ3912株(特公昭56−00
8749号公報)、バチルスエスピー.(Bacillus sp.)
AJ12299株にその存在が知られている。フラボバ
クテリウム エスピー. AJ3912株は、上述の通り
現在ではマイクロバクテリウム リクエファシエンス
(Microbacterium liquefaciens )AJ3912株(F
ERM−P3133)に分類されているが、1975年
6月27日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研
究所に寄託され、受託番号FERM−P3133が付与
され、2001年6月27日に独立行政法人産業技術総
合研究所特許生物寄託センターにブタペスト条約に基づ
き移管され、受託番号FERMBP-7643が付与さ
れた微生物である。またバチルス エスピーAJ122
99株は、1986年7月5日に、通商産業省工業技術
院生命工学工業技術研究所に寄託され、受託番号FER
M−P8837が付与され、2001年6月27日に独
立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに
ブタペスト条約に基づき移管され、受託番号FERM
BP-7646が付与された微生物である。
質としては、当該酵素の基質特異性においてラセミ化で
きる5置換ヒダントイン化合物であれば、いかなるもの
も使用できる。5置換ヒダントイン化合物の例として
は、ヒダントイン、5−メチルヒダントイン、5−ベン
ジルヒダントイン、5−(4−ヒドロキシベンジル)ヒ
ダントイン、5−インドリルメチルヒダントイン、5−
(3,4−ジヒドロキシベンジル)ヒダントイン、5−
(p−ハイドロキシベンジル)ヒダントイン、5−
(3'−ピリジル)−メチルヒダントイン、5−メチル
チオエチルヒダントイン、5−イソプロピルヒダントイ
ン、5−イソブチルヒダントイン、5−sec−ブチル
ヒダントイン、5−カルボキシエチルヒダントイン、5
−カルボキシメチルヒダントイン、5−(4−アミノブ
チル)ヒダントイン、5−ヒドロキシメチルヒダントイ
ンなどに代表されるような天然型アミノ酸に対応する5
置換ヒダントイン化合物の他、5−フェニルヒダントイ
ン、5−(4−ヒドロキシフェニル)ヒダントイン、5
−メトキシメチルヒダントイン、5−ベンジロキシメチ
ルヒダントイン、5−(3,4−メチレンジオキシベン
ジル)ヒダントイン、ジヒドロウラシルなどに代表され
るような非天然型のアミノ酸若しくはその誘導体に対応
する5置換ヒダントインなどが挙げられる。
よびCHaseの組み合わせとして、配列表配列番号2
に記載のアミノ酸配列を有するHRase、配列表配列
番号13に記載のアミノ酸配列を有するHHase、配
列表配列番号15に記載のアミノ酸配列を有するCHa
seの組み合わせが挙げられる。これらの酵素いずれ
も、フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium s
p.)AJ11199(FERM−P4229)株由来の
酵素である。
有するHRase、配列表配列番号13に記載のアミノ
酸配列を有するHHaseおよび配列表配列番号15に
記載のアミノ酸配列を有するCHaseを組み合わせて
用いる場合、これらのD−アミノ酸の製造に係わるタン
パク質のすべてをコードする配列表の配列番号11に記
載の構造遺伝子群とベクターとが接続されて得られる組
み換えDNAを用いて形質転換された細胞を培養するこ
とによって得られたHRase、HHaseおよびCH
aseからなる混成タンパク質を用いることもできる。
当該混成タンパク質を用いた場合、下記反応式(II)に
示すように、混成タンパク質に含まれるヒダントンラセ
マーゼが5置換ヒダントイン化合物のラセミ化を触媒す
るので、DL体の5置換ヒダントイン化合物から理論的
にはモル収率100%でD−アミノ酸を製造することが
可能となる。
に、L−CHaseを用いることにより、DL体の5置
換ヒダントイン化合物から理論的にはモル収率100%
でL−アミノ酸を製造することも可能である。
ルバミルアミノ酸を製造することも可能である。例え
ば、上記混成タンパク質に、L−又はD−CHaseの
阻害剤等を添加して加水分解反応をN−カルバミルアミ
ノ酸で止めることにより、N−カルバミルアミノ酸を製
造できる。
DNAによって形質転換された細胞の培養液、分離菌
体、洗浄菌体、菌体処理物、当該菌体処理物から得られ
る粗酵素液または精製酵素を用いてアミノ酸生成反応を
進行させる場合には、5置換ヒダントイン化合物と培養
液、分離菌体、洗浄菌体、菌体処理物、粗酵素液、また
は精製酵素を含む反応液を25〜40℃の適当な温度に
調整し、pH5〜9に保ちつつ、8時間〜5日静置また
は攪拌すればよい。
み換えDNAによって形質転換された細胞を水溶性媒体
中で培養しながら、アミノ酸生成反応を進行させる場合
には、5置換ヒダントイン化合物を含み、かつ形質転換
された細胞の生育に必要な炭素源、窒素源、無機イオン
などの栄養素を含む水溶性媒体が用いられる。さらにビ
タミン、アミノ酸等の有機微量栄養素を添加すると望ま
しい結果が得られる場合が多い。5置換ヒダントイン化
合物は分割添加してもよい。好気的条件下でpH5〜
9、温度25〜40℃の適当な範囲に制御しつつ、8時
間〜5日培養することが好ましい。
離精製することができる。例えば、イオン交換樹脂に接
触させて塩基性アミノ酸を吸着させ、これを溶離後晶析
する方法または溶離後、活性炭等による脱色濾過し晶析
する方法等が挙げられる。
に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定され
るものではない。なお、実施例における5置換ヒダント
イン化合物、N−カルバミルアミノ酸、およびアミノ酸
の定量および光学純度測定には、ダイセル化学工業製光
学分割カラムCHIRALPAK WHを利用したHPLCを用い
た。分析条件は以下のとおりである。 カラム:ダイセル化学CHIRALPAK WH 0.46cmφ×
25cm 移動相:5% (v/v) methanol, 1mMCuSO4 カラム温度:50℃ 流速:1.5 ml/分 検出:UV210
ダントインラセマーゼ活性の検出 1.菌体の培養 フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)
AJ11199株およびシュードモナス エスピー(Pse
udomonas sp.)AJ11220株(現在は、アグロバク
テリウム エスピー AJ11220(FERM BP
−7645)株として寄託)を、それぞれCM2G寒天
培地(グルコース0.5%、酵母エキス1.0%、ペプ
トン1.0%、NaCl 0.5%、寒天2%、pH
7.0)上で30℃、24時間培養し、リフレッシュし
た。これらをそれぞれ50mlの誘導培地(グルコース
0.5%、硫酸アンモニウム0.5%、KH2PO4
0.1%、K2HPO4 0.3%、MgSO4 0.05
%、酵母エキス1.0%、ペプトン1.0%、FeSO
4 0.001%、MnSO4 0.001%、DL−5−
シアノエチルヒダントイン0.2%、炭酸カルシウム
2.0%、pH7.0)を張り込んだ500 ml容の
坂口フラスコに1白金耳植菌し、30℃、16時間好気
的に振とう培養した。培養終了後、集菌、洗浄を行い、
菌体をそれぞれ5mlの0.1M KPB (pH 7.
5)に懸濁した。
ーゼ活性の検出 上記のように調製して得られた洗浄菌体を、0.12g
/dlのD−5−ベンジルヒダントイン(D−BH)も
しくはL−5−ベンジルヒダントイン(L−BH)を含
む0.1mM KPB(pH7.5)に、それぞれの洗
浄菌体が1g/dlとなるように添加して30℃で反応
させた。反応22時間後にサンプリングし、20,00
0g×10分の遠心分離操作により沈澱を取り除いた
後、遠心上清をHPLCで解析することにより、生成し
たD−フェニルアラニンを定量した。
(Flavobacterium sp.)AJ11199株はD−ヒダン
トイナーゼ活性およびD−カルバミルアミノ酸ハイドロ
ラーゼ活性を有する菌株であり、シュードモナス エス
ピー(Pseudomonas sp.)AJ11220株は、ヒダン
トイナーゼ活性およびD−カルバミルアミノ酸ハイドロ
ラーゼ活性を有する菌株である。
るように、シュードモナス エスピー(Pseudomonas s
p.)AJ11220株の洗浄菌体を用いた場合には、D
−5−ベンジルヒダントインからのみD−フェニルアラ
ニンを生成させることができ、L−5−ベンジルヒダン
トインからはほとんどD−フェニルアラニンが生成しな
かった。この結果より、自発的なベンジルヒダントイン
のラセミ化はごくわずかであることが示された。これに
対して、フラボバクテリウム エスピー(Flavobacteri
um sp.)AJ11199株の洗浄菌体を用いた場合に
は、D−5−ベンジルヒダントインからのみならず、L
−5−ベンジルヒダントインからも効率良くD−フェニ
ルアラニンを生成させることができた。以上の結果よ
り、フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium s
p.)AJ11199株がヒダントインラセマーゼ活性を
有することが示された。
ントインラセマーゼ遺伝子の単離 1.菌体の取得 フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)
AJ11199株をCM2G寒天培地(グルコース0.
5%、酵母エキス1.0%、ペプトン1.0%、NaC
l 0.5%、寒天2%、pH7.0)上で30℃、2
4時間培養し、リフレッシュした。これを50mlのC
M2G液体培地を張り込んだ500 ml容の坂口フラ
スコに1白金耳植菌し、30℃、16時間好気的に振と
う培養した。
℃、15分間)に供し、集菌した。この菌体を10ml
の50:20 TE(50mM Tris−HCl (pH
8.0)、20mM EDTA)に懸濁して洗浄し、遠心
分離操作により、菌体を回収した後、再びこの菌体を1
0mlの50:20 TEに懸濁した。さらに、この懸濁
液に0.5mlの20mg/mlリゾチーム溶液、1m
lの10% SDS溶液を加えた後、55℃で20分間
インキュベートした。インキュベート後、1倍容の1
0:1 TE飽和のフェノールを加えて除タンパクを行っ
た。分離した水層に対して、1倍容の2−プロパノール
を加えてDNAを沈澱させ、回収した。沈澱したDNA
を0.5ml 50:20 TEに溶解した後、5μlの1
0mg/ml RNase、5μlの10mg/ml Pro
teinaseKを加えて、55℃で2時間反応させた。反応
後、1倍容の10:1 TE飽和のフェノールで除タンパ
クを行った。さらに、分離した水層に対して、1倍容の
24:1 クロロホルム/イソアミルアルコールを加えて
攪拌し、水層を回収した。この操作をさらに2回行った
後に得られた水層に、終濃度0.4Mとなるように3M
酢酸ナトリウム溶液(pH 5.2)を加え、さらに2
倍容のエタノールを加えた。沈澱となって生じたDNA
を回収し、70%エタノールで洗浄、乾燥させ、1ml
の10:1 TEに溶解させた。
sp.)AJ11199株の染色体DNA200μgに制
限酵素Sau3A Iを1U添加し、37℃にて15分
間反応させて部分消化した。次に、このDNAからアガ
ロース電気泳動にて3〜8kbpの断片を回収し、ここ
で取得された約4.1kbのSau3AI断片(図1の
)に、D−CHaseおよびD−HHaseをコード
する遺伝子が含まれることを確認した。この約4.1k
bの断片のうち、D−HHase遺伝子の下流領域約2
50塩基について相同性検索を行ったところ、D−HH
ase遺伝子の終止コドンより数えて19番目の塩基か
らSau3A Iサイトまでにわたり、マイクロバクテ
リウム リクエファシエンス(Microbacterium liquefa
ciens)AJ3912株由来のヒダントインラセマーゼ
(特願2001−278739号記載)との相同性が確
認された。そこで、この配列がヒダントインラセマーゼ
遺伝子の一部であると考え、この配列を用いてヒダント
インラセマーゼ遺伝子全長を取得することを試みた。
長取得のために、サザンハイブリダイゼーションを行っ
た。フラボバクテリウム エスピー(Flavobacterium s
p.)AJ11199株の染色体DNAを鋳型として用
い、表2に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとして
PCRにより増幅した断片(約400bp)を、プロー
ブとして用いた。該増幅断片を約50ng/μlに調整
し、このDNA溶液16μlをDIG High Prime(Boehri
nger Mannheim)のプロトコールに準じて37℃で24
時間インキュベートすることによりDIG標識し、プロー
ブとした。
わせで完全消化し、0.8%アガロースゲルで電気泳動
した後に、ナイロンメンブレン(Boehringer Mannheim,
Nylon membranes positively charged)にブロッティ
ングした。以下定法に従ってサザンハイブリダイゼーシ
ョンを行った。ハイブリダイゼーションはDIG Easy Hyb
(Boehringer Mannheim)を用いて行い、50℃、30
分間プレハイブリダイゼーションを行った後にプローブ
を添加して、50℃、18時間ハイブリダイゼーション
させた。検出はDIG Nucleotide Detection Kit(Boehri
nger Mannheim)を用いて行った。
)において約2.4kbの位置にバンドが検出され
た。そこで、該切断物より2.4kb付近の断片を回収
してpUC18に連結し、E.coli JM109に
てライブラリー(400株)を作製した後、コロニーハ
イブリダイゼーションを行った。コロニーをナイロンメ
ンブレンフィルター(Boehringer Mannheim, Nylon mem
branes for colony and plaque hybridization)に転写
し、アルカリ変性、中和、固定化の処理を行った。ハイ
ブリダイゼーションはDIG Easy Hybを用いて行い、42
℃、30分間プレハイブリダイゼーションを行った後
に、上述のDIG標識プローブを添加し、42℃、18時
間ハイブリダイゼーションさせた。検出はDIG Nucleoti
de Detection Kitを用いて行い、2株のポジティブクロ
ーンを選抜した。
Molecular Cloning, 2nd edition,Cold Spring Harbor
press (1989)に記載される方法に従って調製し、挿
入断片の塩基配列を決定した。その結果、D−HHas
e遺伝子の下流に、約0.7kbからなるオープンリー
ディングフレーム(ORF)が存在しており、ヒダント
インラセマーゼ遺伝子であると推定された。ヒダントイ
ンラセマーゼ遺伝子全長の塩基配列を配列表の配列番号
1に、対応するアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示
した。得られたヒダントインラセマーゼ遺伝子は、マイ
クロバクテリウム リクエファシエンス(Microbacteri
um liquefaciens)AJ3912株由来のヒダントイン
ラセマーゼ(特願2001−278739号記載)とア
ミノ酸配列において43%の相同性を示した。
子のE.coliにおける発現 1.発現プラスミドの構築 取得した遺伝子をE.coliで発現させるために、p
UC18のlacプロモーターの下流にヒダントインラ
セマーゼ遺伝子を連結したプラスミドpUCHR1を以
下のようにして構築した。まず、フラボバクテリウム
エスピー(Flavobacterium sp.)AJ11199株の染
色体DNAを鋳型とし、表2に示すオリゴヌクレオチド
をプライマーとしてPCRによりヒダントインラセマー
ゼ遺伝子を増幅した。この断片をEcoR I、Bam
H Iにて処理し、pUC18のEcoR I、BamH
I切断物とライゲーションした後、E.coli JM
109 に導入した。アンピシリン耐性株の中から目的
のプラスミドを持った株を選択し、発現プラスミドpU
CHR1と命名した。また、発現プラスミドpUCHR
1を有するE.Coli形質転換体をJM109/pU
CHR1と命名した。
/pUCHR1を0.1mg/ml アンピシリンを含
むLB培地で37℃、16時間シード培養した。LB培
地50mlを張り込んだ500ml容坂口フラスコにこ
のシード培養液を1ml添加し、37℃にて本培養を行
った。一部の培地について、培養開始2.5時間後に、
終濃度1mMとなるようにイソプロピル1-チオ-β-D-
ガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、さらに4時
間培養を行った。培養終了後、集菌、洗浄を行い、菌体
を5mlの50mM KPB (pH 7.5)に懸濁し、
0.1mmφ glass beadsとともに3分間(30秒×6
回、90秒のインターバル)ビーズビーターにて破砕し
た。溶液を回収し、20,000g×10分の遠心分離
操作を行い、その上清を無細胞抽出液とした。
l D−5−ベンジルヒダントイン(D−BH)もしく
はL−5−ベンジルヒダントイン(L−BH)、50m
M KPB (pH 7.5)および酵素溶液を含む反応液
を37℃で30分インキュベートした後、9倍容の1.
1mM CuSO4、11.1mM H3PO4を添加し、
20,000g×10分の遠心分離操作により沈澱を取
り除いた上清を、高速液体クロマトグラフィー(HPL
C)にて解析することによった。なお酵素溶液として上
記のようにして得た無細胞抽出液を用いた。また、酵素
活性の単位としては、この条件にて1分間に1μmol
のベンジルヒダントインをラセミ化する酵素活性をもっ
て1Uと定義した。
いて形質転換した株においてベンジルヒダントインのラ
セミ化活性が確認されたことより、この遺伝子がフラボ
バクテリウム エスピー(Flavobacterium sp.)AJ1
1199株由来のヒダントインラセマーゼ遺伝子であ
り、E.coliの菌体内で効率良く発現されているこ
とを確認した。
たベンジルヒダントインのラセミ化反応 0.12g/dl (6.3mM) D-5-ベンジルヒダン
トインもしくはL-5-ベンジルヒダントイン、0.1M
KPB (pH 7.5)、0.01g/dlのJM10
9/pUCHR1洗浄菌体を混合し、37℃で反応させ
た。反応液の一部を経時的にサンプリングし、遠心上清
をHPLCで解析した。
るように、ヒダントインラセマーゼ遺伝子を発現させた
E.coli洗浄菌体を用いることにより、効率良くベ
ンジルヒダントインをラセミ化させることができた。
D−カルバミルアミノ酸ハイドロラーゼとの組み合わせ
によるD−フェニルアラニンの生産 D−HHase遺伝子およびD−CHase遺伝子の両
遺伝子をE.coliで発現させるために、pUC18
のlacプロモーターの下流に両遺伝子を連結したプラ
スミドpUC632HおよびpUC632Cを以下のよ
うにして構築した。まず、フラボバクテリウム エスピ
ー(Flavobacterium sp.)AJ11199株の染色体D
NAを鋳型とし、表6に示すオリゴヌクレオチドをプラ
イマーとしてPCRにより各遺伝子を増幅した。これら
の断片を、それぞれXbaI/HindIII、Eco
RI/XbaIにて処理し、pUC18のXbaI/H
indIII、EcoRI/XbaI切断物とライゲー
ションした後、E.coli JM109 に導入した。
アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを持った
株を選択し、それぞれのプラスミドを発現プラスミドp
UC632HおよびpUC632Cと命名した。
C632Hを持つE.coli形質転換体(JM109
/pUC632H)、およびD−CHase遺伝子搭載
プラスミドpUC632Cを持つE.coli形質転換
体(JM109/pU632C)を0.1mg/mlア
ンピシリンを含むLB培地で37℃、16時間シード培
養した。LB培地50mlを張り込んだ500ml容坂
口フラスコにこれらのシード培養液を1ml添加し、3
7℃にて本培養を行った。培養開始2.5時間後に、終
濃度1mMとなるようにIPTGを添加し、さらに4時
間培養を行った。培養終了後、集菌、洗浄を行い、洗浄
菌体を調製した。また、実施例3と同様にしてJM10
9/pUCHR1の洗浄菌体を調製し、上記D−HHa
se遺伝子発現株およびD−CHase遺伝子発現株の
洗浄菌体とともに1g/dlのDL−5−ベンジルヒダ
ントインを含む0.1mM KPB(pH7.5)にそ
れぞれ1g/dlとなるように添加して37℃で反応さ
せた。反応24時間後にサンプリングし、遠心上清をH
PLCで解析することにより、生成したD−フェニルア
ラニンを定量した。
るように、ヒダントインラセマーゼ遺伝子、D−HHa
se遺伝子およびD−CHase遺伝子を発現させた
E.coli洗浄菌体を用いることにより、DL体のベ
ンジルヒダントインから効率良くD−フェニルアラニン
を生成させることができた。
セマーゼの遺伝子を大腸菌などの宿主において安定に大
量に発現させることが可能である。このような形質転換
体から該酵素を容易に調製することができ、該形質転換
体やその抽出液、精製酵素等を用いることによって各種
5置換ヒダントイン化合物のラセミ化を効率良く行うこ
とができる。また、各種ヒダントイナーゼ、カルバミル
アミノ酸ハイドロラーゼなどと組み合わせて用いること
により、医薬品、化学工業品、食品添加物等の製造に有
用なD−アミノ酸やL−アミノ酸を効率良く生産でき
る。
−カルバミルアミノ酸ハイドロラーゼ、およびヒダント
インラセマーゼをコードする遺伝子群の構造を示す図で
ある。
示すフローチャートである。
学工業技術研究所
究所 特許生物寄託セン ター
Claims (13)
- 【請求項1】 下記(a)または(b)のアミノ酸配列を有
し、5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパ
ク質。 (a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列 (b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において
1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加
または逆位を含むアミノ酸配列 - 【請求項2】 フラボバクテリウム属細菌を培養して得
た菌体を破砕または溶菌後、精製処理を行うことにより
取得されるフラボバクテリウム属細菌由来の5置換ヒダ
ントインラセマーゼ画分。 - 【請求項3】 請求項1に記載の5置換ヒダントインラ
セマーゼ活性を有するタンパク質または請求項2に記載
の5置換ヒダントインラセマーゼ画分を、光学活性5置
換ヒダントイン化合物に作用させることを特徴とする光
学活性5置換ヒダントイン化合物のラセミ化方法。 - 【請求項4】 請求項1に記載の5置換ヒダントインラ
セマーゼ活性を有するタンパク質または請求項2に記載
の5置換ヒダントインラセマーゼ画分、および、5置換
ヒダントイン化合物を光学選択的に加水分解する酵素ま
たは当該酵素含有物を、5置換ヒダントイン化合物に作
用させることを特徴とするN−カルバミルアミノ酸の製
造方法。 - 【請求項5】 下記(ii)および(iii)のうち少なくとも
一方が光学選択的に基質を加水分解する酵素または酵素
含有物であり、下記(i)、(ii)および(iii)を5置換ヒ
ダントイン化合物に作用させることを特徴とする光学活
性アミノ酸の製造方法。 (i)請求項1に記載の5置換ヒダントインラセマーゼ活
性を有するタンパク質または請求項2に記載の5置換ヒ
ダントインラセマーゼ画分 (ii)5置換ヒダントイン化合物を加水分解する酵素また
は当該酵素含有物 (iii)N−カルバミルアミノ酸を加水分解する酵素また
は当該酵素含有物 - 【請求項6】 請求項1に記載の5置換ヒダントインラ
セマーゼ活性を有するタンパク質または請求項2に記載
の5置換ヒダントインラセマーゼ画分と、5置換ヒダン
トイン化合物を光学選択的に加水分解する酵素または当
該酵素含有物と、N−カルバミルアミノ酸を化学的に加
水分解する化学的加水分解剤とを、5置換ヒダントイン
化合物に作用させることを特徴とする光学活性アミノ酸
の製造方法。 - 【請求項7】 下記(a)または(b)の塩基配列を有し、5
置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質を
コードするDNA。 (a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列 (b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩
基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイ
ブリダイズする塩基配列 - 【請求項8】 下記(c)または(d)のアミノ酸配列を有し
5置換ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質
をコードするDNA。 (c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列 (d)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において
1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加
または逆位を含むアミノ酸配列 - 【請求項9】 請求項7または8のいずれかに記載のD
NAとベクターDNAとが接続されて得られる組み換え
DNA。 - 【請求項10】 前記ベクターDNAは、pUC系プラ
スミド、pBR322系プラスミドまたはその誘導体で
あることを特徴とする請求項9に記載の組み換えDN
A。 - 【請求項11】 請求項9または10に記載の組み換え
DNAによって形質転換された細胞。 - 【請求項12】 前記細胞は、エシェリヒア コリであ
ることを特徴とする請求項11に記載の細胞。 - 【請求項13】 請求項11または12に記載の細胞を
培地中で培養し、培地中および/または細胞中に5置換
ヒダントインラセマーゼ活性を有するタンパク質を蓄積
させることを特徴とする5置換ヒダントインラセマーゼ
活性を有するタンパク質の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2002013552A JP4485734B2 (ja) | 2002-01-22 | 2002-01-22 | 5置換ヒダントインラセマーゼ、これをコードするdna、組み換えdna、形質転換された細胞および光学活性アミノ酸の製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005038021A1 (ja) * | 2003-09-08 | 2005-04-28 | Ajinomoto Co., Inc. | 新規トランスポータタンパク質 |
US7709235B2 (en) | 2005-01-31 | 2010-05-04 | Kaneka Corporation | 5-Substituted hydantoin racemase, DNA encoding the same, recombinant DNA, transformed cell, and process for production of optically active N-carbamylamino acid or optically active amino acid |
-
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- 2002-01-22 JP JP2002013552A patent/JP4485734B2/ja not_active Expired - Fee Related
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