JP2003209310A - 蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器 - Google Patents

蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器

Info

Publication number
JP2003209310A
JP2003209310A JP2002004593A JP2002004593A JP2003209310A JP 2003209310 A JP2003209310 A JP 2003209310A JP 2002004593 A JP2002004593 A JP 2002004593A JP 2002004593 A JP2002004593 A JP 2002004593A JP 2003209310 A JP2003209310 A JP 2003209310A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
optical resonator
free electron
storage ring
electron laser
ring type
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2002004593A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3629538B2 (ja
Inventor
Norihiro Sei
紀弘 清
Kawakatsu Yamada
家和勝 山田
Tomohisa Misumi
智久 三角
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2002004593A priority Critical patent/JP3629538B2/ja
Publication of JP2003209310A publication Critical patent/JP2003209310A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3629538B2 publication Critical patent/JP3629538B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Lasers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 光共振器から取り出せるピークエネルギーを
各段に大きくする、最適化蓄積リング型自由電子レーザ
ー用の光共振器を提供することにある。 【解決手段】 蓄積リング型自由電子レーザー用の光共
振器において、ミラー間の光路に光を偏向する偏向素子
を介挿し、該偏向素子に制御信号を印加する制御装置を
設けた構造とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、波長が遠赤外から
X線領域までを発光し得る蓄積リング型自由電子レーザ
ー装置に関する。
【0002】
【従来技術】自由電子レーザー装置は、真空中をほぼ光
速度で周期的に蛇行する電子または陽電子が電磁場と相
互作用し、吸収を上回る誘導放出を起こす現象を利用し
て、電磁波の増幅・発振を行う装置をいう。
【0003】通常のレーザーが、原子等にトラップされ
た電子によるエネルギー準位間の吸収・誘導放出を利用
するのと異なり、自由電子レーザー装置は、束縛のない
自由な電子を使用するため、ミリ波から真空紫外領域に
及ぶ波長域で発振が実現されている。このうち、蓄積リ
ング型自由電子レーザー装置とは、電子ビームの加速に
蓄積リングを使用する自由電子レーザー装置をいう。蓄
積リング型自由電子レーザーは波長分解能もよく、既存
の高輝度光源のない真空紫外域や赤外域での高輝度光源
として期待されている。
【0004】図8は,蓄積リング型自由電子レーザーの
構成図である。図8に示すように、蓄積リング型自由電
子レーザーは、基本的に、入射用電磁石(Septum
Magnet)、偏向電磁石(BM1、BM2、BM
3、BM4、BM5、BM6)、4極電磁石(QD、Q
F1)、光クライストロン(3.6m Optical
Klystron ETLOK―III:Long―
wavelength FEL section(1−
10micron):アンジュレータ)、光クライスト
ロン(6.3m Optical Klystron
ETLOK―II:Short―wavelength
FEL section(211−595nm(ナノ
メータ)):アンジュレータ)、パルス偏向電磁石(K
icker Magnet)、高周波加速空洞(RF
Cavity)、真空ミラーマニピュレータ(Vacu
um Mirror Manipulator)とから
構成される。
【0005】この蓄積リング型自由電子レーザーにおけ
る真空ミラーマニピュレータ(Vacuum Mirr
or Manipulator)に光共振器が用いられ
ている。蓄積リング型自由電子レーザー装置は、電子ビ
ームを維持する蓄積リング、光の発生・増幅を行うアン
ジュレータ、アンジュレータからの自発放出光を蓄えて
増幅に寄与する光共振器で構成される。電子ビームがア
ンジュレータの周期的電磁場を通過すると、シンクロト
ロン光のある波長で可干渉的になり、強い発光をする。
この光パルスをミラーで構成される光共振器によって閉
じこめて、周回する電子ビームと同期をとる。電子ビー
ムがアンジュレータの周期電磁場を通過するときにこの
光パルスと重畳すると、アンジュレータ電磁場によって
誘導放出を起こし、特定の波長を増幅する。これが蓄積
リング型自由電子レーザーの増幅過程である。
【0006】すなわち、この増幅時には、電子ビームが
光パルスにエネルギーを与えることになるので、電子ビ
ームのエネルギー拡がりは拡大して利得が下がりだし、
それが共振器損失を上回ると、増幅から減衰へと転じ
る。エネルギー拡がりは、この増幅過程よりも長い時間
スケールである放射減衰によって回復する。このため、
発振に至る過程が緩やかであれば持続型の発振になる
が、急激な発振を起こした場合は、電子ビームの劣化に
修復が間に合わなくなり、発振は間欠的になる。その代
わり急激な発振なのでピーク出力は大きいという利点も
ある。図6は、蓄積リング型自由電子レーザー装置に使
用されている従来型の光共振器の概略図である。
【0007】蓄積リング型自由電子レーザーに用いられ
てきた光共振器は、2枚のミラー61、62で構成され
たファブリペロー共振器しかない。これはFEL(自由
電子レーザー)利得が小さいので、共振器損失を小さく
抑えることを優先していたためである(利得−共振器損
失のことを有効利得と呼ぶが、これが大きい方が出力も
大きくなる。)。光共振器に対する改良としては、エタ
ロンを挿入して線幅を狭めることが実験で行われてい
る。ただしこの改良は出力の改善を期待するものではな
い。共振器内エネルギーを効率よく取り出す工夫として
は、誘電体多層膜ミラーの多層膜数を調整して透過率を
高めたり、一方のミラーに穴を開けて透過率を上げたり
することが行われているが、光共振器の構成を変えるも
のではない。
【0008】蓄積リング型自由電子レーザー装置の光共
振器内のエネルギーを取り出す提案は、本発明者によっ
て1997年に初めて行われた[ Sei et a
l.,Nucl. Instr. and Meth.
A393 (1997)59.]。この論文では、ミ
ラーの一方にピエゾ素子(PZT)を使用して回転さ
せ、もう一方のミラーに設けたホールを通じて共振器内
エネルギーを取り出すことを提案している。
【0009】図7は、積層ピエゾアクチュエータ(PZ
T)64を備えたミラー62と窓付きミラー63を用い
た従来型の光共振器の概略図である。光共振器内にはミ
ラー62、63以外の構成要素がないので、共振器損失
が劣化しないことが利点である。しかし、ピエゾ素子6
4によるキャビティダンプは、全てのパルスを取り出す
のに数回に分けて取り出すことになるので、ピークエネ
ルギーとしては少し効率が下がる(数%程度)欠点があ
った。特に高反射率のミラーを入手しにくい紫外域では
不利である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】蓄積リング型自由電子
レーザーでは、その利得が小さいために、光共振器に低
損失のミラーを使用する。そのため、ミラーの透過率も
小さく、光共振器から取り出せるピークエネルギーが比
較的小さいという欠点があった。大型の装置でも、取り
出せるエネルギーは1mJにも及ばない。だが光共振器
内では、光パルスのピークエネルギーはその100〜1
0000倍も強く、この光共振器内エネルギーを効率よ
く取り出すことができれば、強力なピークエネルギーの
光パルスを利用できる。
【0011】本発明の目的は、上記問題点に鑑み、光共
振器から取り出せるピークエネルギーを各段に大きくす
る蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器を提供す
ることにある。本発明の他の目的は、平均出力を最適化
する蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器を提供
することにある。
【0012】
【問題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成
するために下記の解決手段を採用する。 (1)蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器にお
いて、ミラー間の光路に光を偏向する偏向素子を介挿
し、該偏向素子に制御信号を印加する制御装置を設けた
こと。 (2)上記(1)記載の蓄積リング型自由電子レーザー
用の光共振器において、前記偏向素子を溶融石英とした
こと。
【0013】(3)上記(1)または(2)記載の蓄積
リング型自由電子レーザー用の光共振器において、前記
偏向素子の位置で光ビームが絞られるように前記ミラー
を組み合わせて配置したこと。 (4)上記(1)乃至(3)のいずれか1項記載の蓄積
リング型自由電子レーザー用の光共振器において、前記
制御装置を、前記ミラー間で増幅したレーザーを検出
し、検出値が最大値になったとき前記偏向素子に制御信
号を出力するように構成したこと。 (5)上記(1)乃至(4)のいずれか1項記載の蓄積
リング型自由電子レーザー用の光共振器において、前記
制御装置で、光共振器内から自由電子レーザーを取り出
した後、所定時間内、前記偏向素子を前記ミラー間に残
っている光を取り出す方向に制御すること。
【0014】
【発明の実施の形態】光共振器内で光パルスが電子ビー
ム軌道と離れている部分に、高速で駆動できる偏向素子
を挿入し、そこに光パルスが透過或いは反射するように
配置する。蓄積リング型自由電子レーザー装置の光共振
器は通常10m以上の長さを有しているので、100n
s程度の立ち上がり時間と数mradの偏向角を持った
偏向素子が必要になる。これに適したものには、強誘電
体に高電界を印加した電気光学素子と、光学媒体中に圧
電素子の振動で生じた超音波を伝播させることで屈折率
勾配を形成し回折効果を生じる偏向素子(例えば、音響
光学素子)がある。透過型の場合には、素子の光学媒体
には自由電子レーザーの発振波長域で透過率の高い素材
を使用し、表面に反射防止膜を施すかブリュースター角
で使用することで極力透過率を高める。
【0015】図2は、本発明の高速偏向素子を用いた光
共振器のもっとも単純な一例を示す図である。光学系の
もっとも単純な配置は、図2に示すように、2枚のミラ
ー61、64およびレンズ62、63からなる光共振器
が形成するビームウエストに偏向素子21を置くもので
ある。該ビームウエストにおいて光ビームが絞られるよ
うに構成されている。このように、絞られたビームウエ
ストに偏向素子21を配置するので、偏向素子の偏向作
用が全ビームに対して有効に作用するようになる。この
場合は、偏向素子21の場所で電子ビームが迂回する必
要があるので、アンジュレータには充分な磁場と長さを
持った分散部を擁する光クライストロンを使用する等の
迂回措置をとる。この偏向素子21は、溶融石英から構
成することが好ましい。
【0016】図1は、本発明の高い射出効率を可能にす
る、高速偏向素子を用いた光共振器と駆動システムの一
例を示す図である。ただし、上記の方法では偏向素子2
1に対する条件が厳しくなるので、一般的にはミラーを
1枚増やして3枚のミラーM1、M2、M3で光共振器
10を組み、光ビームを強く絞った位置に偏向素子21
を配置する。光学系は、ミラーM1(11)、M2(1
2)、M3(13)および偏向素子21からなる。ミラ
ーM2とM1でビームウエストを形成する反射系を構成
する。ミラーM2とM3はもう1つの反射系を構成する
と共にFEL取りだし用の偏向素子21を介在する。光
共振器10は、ミラーM1(11)とM2(12)の間
に設けられる。駆動システムは、偏向素子21に制御信
号を印加する制御装置を構成し、ミラー15、16およ
び17と、PINフォトダイオード25と、波高弁別器
24と、パルス発生器23と、RF電源22とからな
る。
【0017】該駆動システムは、前記光共振器10内で
発生しているレーザー光を、前記ミラー14、15、1
6および17を介してPINフォトダイオード25でモ
ニターし、そのモニター出力信号の波高値を波高弁別器
24によって弁別する。レーザー出力の取り出しが可能
となると前記モニター出力信号が該波高弁別器24の閾
値を超えるので、そのとき、パルス発生器23でトリガ
ーパルスを発生する。RF電源22は、前記トリガーパ
ルスに応じて所定(例えば、10ms)幅の駆動パルス
を偏向素子21に供給して該素子21の偏向角を最大に
する。すなわち、偏向素子21がOFFの状態では、光
パルスはその素子21を透過或いは反射して光共振器1
0を往復し、蓄積リングの電子ビームと相互作用するこ
とで自由電子レーザーを増幅する。増幅が飽和に達する
と、素子21はONの状態にされる。
【0018】また、素子21がONの状態になると、こ
こを透過或いは反射するときに回折が生じ、回折の1次
光または高次光はミラーを飛び越えて光共振器10の外
へと自由電子レーザー光になったものを射出される。蓄
積リング電子ビームの放射減衰によって決められる時間
(エネルギー拡がりが回復する時間)だけONの状態を
持続しておき、アンジュレータ光を光共振器内に蓄積し
ないようにする。所定時間の後、再び素子の状態をOF
Fにする。これにより、電子ビームの冷却を早めること
ができ、また、ミラーの劣化を防止することができるよ
うになる。上記のサイクルを繰り返すことで、高いピー
クエネルギーの蓄積リング型自由電子レーザーを生成で
きる。また、放射減衰程度の短い繰り返し周期で平均出
力は最大になる。あらかじめ自由電子レーザー利得と共
振器損失を求めておいて自由電子レーザーパルスの時間
発展を数値計算することで、平均出力を最適化できる。
【0019】蓄積リング型自由電子レーザーが研究され
始めた頃では、高い利得を実現することが難しく、低損
失な光学系を広範囲な波長域で入手することが困難であ
ったが、現在では高い有効利得を実現できるようなって
きた。そのため、多少共振器損失が増加しても、光共振
器の改良によって強いピークエネルギーを取り出すこと
が可能となっている。さらに、本発明は、蓄積リング型
自由電子レーザーと、電子ビームの時間発展の性質を利
用して、効率よく光エネルギーを取り出し、従って繰り
返し周期を短くし、平均出力を最適化する方法も提供す
る。次に本発明の具体的実施例を述べ、本発明の効果を
さらに詳細に説明する。
【0020】(実施例)蓄積リングとして産業技術総合
研究所のNIJI−IVを使用し、自由電子レーザーの
発振波長を350nmとする。蓄積リングNIJI−I
V電子ビームの電流値30mAにおける特性を表1に示
す。
【表1】 自由電子レーザーの最大利得は約5%である。さらに、
光学系を構成するミラーについて説明する。図1のよう
にミラーは3枚使用し、これらのミラーをM1、M2、
M3とし、光パルスはM1→M2→M3→M2→M1と
伝播するように配置する。M1は長焦点ミラーでM1−
M2間にはアンジュレータ(光共振器)があり、M2と
M3は短焦点ミラーでM2−M3間には偏向素子を挿入
しておく。ミラーM1、M2、M3の曲率半径をそれぞ
れ11m、1.4m、1.04mとすれば、M1−M2
間が13m、M2−M3間が1.8mになる。偏向素子
はM3から1.04mの位置に置かれ、そこでのビーム
サイズは波長350nmの時に0.075mmとなる。
【0021】偏向素子及び高周波ドライバーは市販の製
品を真空仕様にして使用することが可能である。上記波
長では溶融石英が優れた透過特性を持つので適してい
る。溶融石英の音響光学特性を表2に示す。
【表2】 ここで性能指数とは回折角を決める因子である。溶融石
英は性能指数が比較的小さいが、10Wの高周波電力で
波長350nmにおいて偏向角約4mradを実現でき
る。可視〜紫外域では、溶融石英の表面に反射防止膜を
施したり、ブリュースター角で使用することで、表面反
射を著しく押さえることが可能である。その結果、最大
透過率は99.8%を実現できる。
【0022】偏向素子は電気光学素子ほどではないが反
応速度が大きい。偏向素子の立ち上がり時間τは、レー
ザーのビーム径φを用いて次式のように与えられる。 τ= φ/(1.5Va) ここでVaは音響速度である。従って、NIJI−IV
の光共振器10ように光パルスの1往復が99nsの場
合には、φを0.6mm程度にしておけばよい。このよ
うな素子は波長350nmでは最大回折効率が50%に
もなる。偏向素子21がONの状態では光パルスは回折
効率分(〜50%)だけ回折される。OFFの状態で
は、全光パルスは光共振器10内の往復運動を繰り返
す。光パルスがM3から偏向素子を通過後、偏向素子2
1をONにすると、次に偏向素子21に戻ってきた光パ
ルスはほぼ半分ずつに0次光と1次光に分割される。そ
しておのおのM3で反射されて、再び偏向素子21を通
り、0次光の位置に25%、1次光の位置に50%、2
次光の位置(0次光と1次光がなす角の2倍だけ0次光
と分かれている)に25%分割される。回折角は素子に
供給する高周波電源のパワーで決まるが、10W入力で
約4mradほどになる。そのため、M2で再び反射さ
れた光パルスはM1の位置では、1次光でミラー中心か
ら27mm、2次光で54mmの位置だけずれることに
なる。共振器ミラーは半径15mmもあれば充分なので
1、2次光合わせて75%の光パルスを一度に取り出す
ことができる。
【0023】偏向素子21による共振器10の損失は溶
融石英を使用した場合は1往復あたり0.4〜1%であ
る。ミラーを1枚増やしたことでミラーによる共振器損
失も増加するが、波長350nm付近ではミラー1枚あ
たりの損失が0.1(照射前)〜0.4%(照射後)で
あるので、FEL照射中の平均的な共振器損失はおおよ
そ1%程度である。従って、光共振器10における1往
復あたりの共振器損失は約2%である。NIJI−IV
のFEL利得は波長350nmでは最大5%であるか
ら、発振には問題ない。
【0024】さて、時間を追ってFELパルスの発展と
電子ビームのエネルギー拡がりの発展を説明する。偏向
素子がONの状態では光パルスは有効効率分だけ回折さ
れて、FELの発振は止まる。しばらくこの状態で光共
振器内に光パルスを蓄積しないようにしておくと、放射
減衰のためにエネルギー拡がりが回復してくる。図3
は、本発明のキャビティダンプ中におけるエネルギー拡
がりの時間発展図である。
【0025】後述するが、NIJI−IVの場合ではこ
の時間はおよそ40msである。そこで40ms後に偏
向素子をOFFにして、光共振器内に光パルスの蓄積を
開始する。すぐにFELの発振が始まり、NIJI−I
Vの場合では0.1ms程度で飽和に達する。飽和まで
の時間は、電子ビームの電流量や、有効利得、共振器損
失等に依存している。そこで誘電体多層膜ミラーM1か
M2から漏れ出てくる光パルスをPINフォトダイオー
ドで観測し電圧信号に変え、波高弁別器を通してある電
圧以上に達したら、パルス波高を記憶する。そして最高
値から数%下がったら偏向素子の高周波電源をOFFに
する。これらの操作は10MHz以上で駆動するロジッ
ク回路を組むことで解決できる。或いは、飽和時間は計
算によりおおよそ予測できるので、遅延時間をあらかじ
め設定しておいて、偏向素子の高周波電源をOFFにし
てもよい。キャビティダンプを行った場合、FELの光
パルスは半値幅0.01msぐらいの強度分布(マクロ
パルスと呼ぶ)を示すので、ピークに達したら遅滞なく
偏向素子の高周波電源をOFFにしなければならない。
平均出力を重視する場合は、ピークに達する直前にOF
Fにするとこの繰り返し間隔を短くできるので、平均出
力を上げることができる。上記した1周期におけるエネ
ルギー拡がりの時間発展を図3に、光共振器内エネルギ
ーの時間発展を図4に示す。
【0026】図4は、本発明のキャビティダンプ中にお
ける光共振器内エネルギーの時間発展図である。共振器
内エネルギーの飽和強度は最大約0.25mJである。
これは、キャビティダンプを用いない通常の光共振器の
それよりも2〜3倍程度低い値になる。しかし通常の光
共振器の取り出し効率は多くても0.005程度なので
数μJ程度であるが、取り出し効率0.75の本方法
は、取り出した光パルスが約0.2mJと百倍程度強く
なる。
【0027】通常のQスイッチではマクロパルスの後半
も充分に強度が大きいので、その間も電子ビームは加熱
状態にあり、エネルギー拡がりが増大し続ける。その結
果、高いピークエネルギー(最大値の80%)を維持し
ようとすると、Qスイッチの繰り返し間隔は60msほ
ど必要になる。しかしキャビティダンプを行うことで、
FELマクロパルスの後半は現れないことになる。この
ために冷却に必要な時間は40msほどで済む。繰り返
しキャビティダンプを行った場合の、ピークエネルギー
及び平均出力と繰り返し周波数との関係を図5に示す。
図5は、蓄積リング型自由電子レーザー装置に使用され
ている従来型の光共振器の概略図である。
【0028】この図が示すように、平均出力が最大にな
る繰り返しは、ダンピング時間37msよりも短い30
ms程度で最大になる。こうして数値計算によって平均
出力を最大にする周波数を求めることができ、高いピー
クエネルギーかつ比較的高い平均出力が要求される状況
にも対応可能である。
【0029】
【発明の効果】本発明を使用することにより、蓄積リン
グ型自由電子レーザー装置の光共振器内に蓄えられた強
力なピークエネルギーを持つ光パルスを効率よく光共振
器外へ取り出すことが可能になる。共振器外へ取り出し
た光パルスは、従来よりも100倍程度の強度を実現す
ることができる。
【0030】また、蓄積リングの電子ビーム及び自由電
子レーザーの時間発展特性を利用することによって、効
率の良いキャビティダンプを行い、高いピークエネルギ
ーを保ちつつ平均出力を最適化できる。さらに、共振器
ミラーが強力な光パルスを蓄えている時間が短いため
に、ミラーの劣化速度が小さくなることも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高い射出効率を可能にする、高速偏向
素子を用いた光共振器と駆動システムの一例を示す図で
ある。
【図2】本発明の高速偏向素子を用いた光共振器のもっ
とも単純な一例を示す図である。
【図3】本発明のキャビティダンプ中におけるエネルギ
ー拡がりの時間発展図である。
【図4】本発明のキャビティダンプ中における光共振器
内エネルギーの時間発展図である。
【図5】本発明の計算による、ピークエネルギー及び平
均出力とキャビティダンプの繰り返し周波数との関係を
示す図である。
【図6】蓄積リング型自由電子レーザー装置に使用され
ている従来型の光共振器の概略図である。
【図7】積層ピエゾアクチュエータ(PZT)を備えた
ミラーと窓付きミラーを用いた従来型の光共振器の概略
図である。
【図8】従来の蓄積リング型自由電子レーザーの構成図
である。
【符号の説明】
10 光共振器 11、12、13、15、16、17、 ミラー 21 偏向素子 22 RF電源 23 パルス発生器 24 波高弁別器 25 PINフォトダイオード
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5F072 HH07 JJ02 JJ03 JJ04 JJ20 KK03 KK06 KK30 LL08 LL19 LL20 MM04 MM20 PP06 PP09

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蓄積リング型自由電子レーザーの光共振
    器において、ミラー間の光路に光を偏向する偏向素子を
    介挿し、該偏向素子に制御信号を印加する制御装置を設
    けたことを特徴とする蓄積リング型自由電子レーザー用
    の光共振器。
  2. 【請求項2】 前記偏向素子を溶融石英としたことを特
    徴とする請求項1記載の蓄積リング型自由電子レーザー
    用の光共振器。
  3. 【請求項3】 前記偏向素子の位置で光ビームが絞られ
    るように前記ミラーを組み合わせて配置したことを特徴
    とする請求項1または2記載の蓄積リング型自由電子レ
    ーザー用の光共振器。
  4. 【請求項4】 前記制御装置を、前記ミラー間で増幅し
    たレーザーを検出し、検出値が最大値になったとき前記
    偏向素子に制御信号を出力するように構成したことを特
    徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の蓄積リン
    グ型自由電子レーザー用の光共振器。
  5. 【請求項5】 前記制御装置で、光共振器内から自由電
    子レーザーを取り出した後、所定時間内、前記偏向素子
    をアンジュレータ光を取り出す方向に制御することを特
    徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の蓄積リ
    ング型自由電子レーザー用の光共振器。
JP2002004593A 2002-01-11 2002-01-11 蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器 Expired - Lifetime JP3629538B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002004593A JP3629538B2 (ja) 2002-01-11 2002-01-11 蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002004593A JP3629538B2 (ja) 2002-01-11 2002-01-11 蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003209310A true JP2003209310A (ja) 2003-07-25
JP3629538B2 JP3629538B2 (ja) 2005-03-16

Family

ID=27643889

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002004593A Expired - Lifetime JP3629538B2 (ja) 2002-01-11 2002-01-11 蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3629538B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008546152A (ja) * 2005-06-02 2008-12-18 マデイ,ジョン・エム・ジェイ 光アンジュレータを使用する高効率単色x線源
CN112217086A (zh) * 2020-11-10 2021-01-12 中国工程物理研究院应用电子学研究所 一种高脉冲能量谐振腔型自由电子激光系统

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008546152A (ja) * 2005-06-02 2008-12-18 マデイ,ジョン・エム・ジェイ 光アンジュレータを使用する高効率単色x線源
CN112217086A (zh) * 2020-11-10 2021-01-12 中国工程物理研究院应用电子学研究所 一种高脉冲能量谐振腔型自由电子激光系统

Also Published As

Publication number Publication date
JP3629538B2 (ja) 2005-03-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6197133B1 (en) Short-pulse high-peak laser shock peening
JP6665106B2 (ja) 連続波方式および疑似連続波方式で動作する超高出力の単一モード緑色ファイバレーザ
JP5338334B2 (ja) レーザ光源装置およびレーザ加工装置
JP2013239723A (ja) レーザシステム
JP2008270549A (ja) 極端紫外光源用ドライバレーザ
JP5082798B2 (ja) レーザ発振装置及びその制御方法
JP4640336B2 (ja) レーザ装置
CN103762495A (zh) 提高激光热响应速度的方法及多端泵浦固体激光器
JP6562464B2 (ja) 受動qスイッチレーザ装置
CN113471803A (zh) 脉冲输出可调的声光调q固体激光器及脉冲激光产生方法
JP2007096039A (ja) 光源装置
JP3629538B2 (ja) 蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器
JP4874561B2 (ja) Qスイッチレーザ装置
JP2013219346A (ja) パルスレーザシステムにおける寄生光フィードバックの抑制
JPH09181375A (ja) パルスガスレーザ装置
JP2003298153A (ja) 単一光子発生素子
US11784454B1 (en) High intensity pulse laser generation system and method
JP7488480B2 (ja) Qスイッチ共振器、及びパルス発生器
JP3810716B2 (ja) X線発生装置及び発生方法
JP2008177226A (ja) レーザパルス発生装置及び方法
JP4137227B2 (ja) レーザ発振器
Nilsen et al. Modeling of short-pulse-driven nickel-like x-ray lasers and recent experiments
US5202898A (en) Laser oscillator, laser resonator, and apparatus for manufacturing of semiconductor
JP2711562B2 (ja) レーザー発振用ターゲット
JP2000244047A (ja) レーザ発振器

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040713

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040812

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040914

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041018

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20041116

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3629538

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

EXPY Cancellation because of completion of term