JP3629538B2 - 蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器 - Google Patents

蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長が遠赤外からX線領域までを発光し得る蓄積リング型自由電子レーザー装置に関する。
【0002】
【従来技術】
自由電子レーザー装置は、真空中をほぼ光速度で周期的に蛇行する電子または陽電子が電磁場と相互作用し、吸収を上回る誘導放出を起こす現象を利用して、電磁波の増幅・発振を行う装置をいう。
【0003】
通常のレーザーが、原子等にトラップされた電子によるエネルギー準位間の吸収・誘導放出を利用するのと異なり、自由電子レーザー装置は、束縛のない自由な電子を使用するため、ミリ波から真空紫外領域に及ぶ波長域で発振が実現されている。このうち、蓄積リング型自由電子レーザー装置とは、電子ビームの加速に蓄積リングを使用する自由電子レーザー装置をいう。蓄積リング型自由電子レーザーは波長分解能もよく、既存の高輝度光源のない真空紫外域や赤外域での高輝度光源として期待されている。
【0004】
図8は,蓄積リング型自由電子レーザーの構成図である。
図8に示すように、蓄積リング型自由電子レーザーは、基本的に、入射用電磁石(Septum Magnet)、偏向電磁石(BM1、BM2、BM3、BM4、BM5、BM6)、4極電磁石(QD、QF1)、光クライストロン(3.6m Optical Klystron ETLOK―III:Long―wavelength FEL section(1−10micron):アンジュレータ)、光クライストロン(6.3m Optical Klystron ETLOK―II:Short―wavelength FEL section(211−595nm(ナノメータ)):アンジュレータ)、パルス偏向電磁石(Kicker Magnet)、高周波加速空洞(RF Cavity)、真空ミラーマニピュレータ(Vacuum Mirror Manipulator)とから構成される。
【0005】
この蓄積リング型自由電子レーザーにおける真空ミラーマニピュレータ(Vacuum Mirror Manipulator)に光共振器が用いられている。
蓄積リング型自由電子レーザー装置は、電子ビームを維持する蓄積リング、光の発生・増幅を行うアンジュレータ、アンジュレータからの自発放出光を蓄えて増幅に寄与する光共振器で構成される。電子ビームがアンジュレータの周期的電磁場を通過すると、シンクロトロン光のある波長で可干渉的になり、強い発光をする。この光パルスをミラーで構成される光共振器によって閉じこめて、周回する電子ビームと同期をとる。電子ビームがアンジュレータの周期電磁場を通過するときにこの光パルスと重畳すると、アンジュレータ電磁場によって誘導放出を起こし、特定の波長を増幅する。これが蓄積リング型自由電子レーザーの増幅過程である。
【0006】
すなわち、この増幅時には、電子ビームが光パルスにエネルギーを与えることになるので、電子ビームのエネルギー拡がりは拡大して利得が下がりだし、それが共振器損失を上回ると、増幅から減衰へと転じる。エネルギー拡がりは、この増幅過程よりも長い時間スケールである放射減衰によって回復する。このため、発振に至る過程が緩やかであれば持続型の発振になるが、急激な発振を起こした場合は、電子ビームの劣化に修復が間に合わなくなり、発振は間欠的になる。その代わり急激な発振なのでピーク出力は大きいという利点もある。
図6は、蓄積リング型自由電子レーザー装置に使用されている従来型の光共振器の概略図である。
【0007】
蓄積リング型自由電子レーザーに用いられてきた光共振器は、2枚のミラー61、62で構成されたファブリペロー共振器しかない。これはFEL(自由電子レーザー)利得が小さいので、共振器損失を小さく抑えることを優先していたためである(利得−共振器損失のことを有効利得と呼ぶが、これが大きい方が出力も大きくなる。)。
光共振器に対する改良としては、エタロンを挿入して線幅を狭めることが実験で行われている。ただしこの改良は出力の改善を期待するものではない。
共振器内エネルギーを効率よく取り出す工夫としては、誘電体多層膜ミラーの多層膜数を調整して透過率を高めたり、一方のミラーに穴を開けて透過率を上げたりすることが行われているが、光共振器の構成を変えるものではない。
【0008】
蓄積リング型自由電子レーザー装置の光共振器内のエネルギーを取り出す提案は、本発明者によって1997年に初めて行われた[ Sei et al.,Nucl. Instr. and Meth. A393 (1997) 59.]。この論文では、ミラーの一方にピエゾ素子(PZT)を使用して回転させ、もう一方のミラーに設けたホールを通じて共振器内エネルギーを取り出すことを提案している。
【0009】
図7は、積層ピエゾアクチュエータ(PZT)64を備えたミラー62と窓付きミラー63を用いた従来型の光共振器の概略図である。
光共振器内にはミラー62、63以外の構成要素がないので、共振器損失が劣化しないことが利点である。しかし、ピエゾ素子64によるキャビティダンプは、全てのパルスを取り出すのに数回に分けて取り出すことになるので、ピークエネルギーとしては少し効率が下がる(数%程度)欠点があった。特に高反射率のミラーを入手しにくい紫外域では不利である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
蓄積リング型自由電子レーザーでは、その利得が小さいために、光共振器に低損失のミラーを使用する。そのため、ミラーの透過率も小さく、光共振器から取り出せるピークエネルギーが比較的小さいという欠点があった。大型の装置でも、取り出せるエネルギーは1mJにも及ばない。だが光共振器内では、光パルスのピークエネルギーはその100〜10000倍も強く、この光共振器内エネルギーを効率よく取り出すことができれば、強力なピークエネルギーの光パルスを利用できる。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、光共振器から取り出せるピークエネルギーを各段に大きくする蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器を提供することにある。
本発明の他の目的は、平均出力を最適化する蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器を提供することにある。
【0012】
【問題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために下記の解決手段を採用する。
(1) 蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器は、蓄積リング型自由電子レーザーの光共振器において、ミラー間の光路に介挿し光を偏向させる偏向素子と、前記ミラー間で増幅した光パルスを検出し、その検出した光パルスの検出値が最大値になったとき、前記光パルスを回折させて共振器外へ取り出すように前記偏向素子の偏向角を制御する制御装置を設けたことを特徴とする。
(2) 上記(1)記載の蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器は、前記偏向素子を溶融石英としたことを特徴とする。
【0013】
(3) 上記(1)又は(2)記載の蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器は、前記偏向素子の位置で光ビームが絞られるように前記ミラーを組み合わせて配置したことを特徴とする。
(4) 上記(1)記載の蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器は、前記偏向素子を蓄積リングに挿入されているアンジュレータ内部に設置し、電子ビーム損失を避けるように前記偏向素子の前後に電子ビームの軌道を形成したことを特徴とする。
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれか1項記載の蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器は、前記制御装置で、光共振器内から自由電子レーザーを取り出した後、所定時間内、前記偏向素子をアンジュレータ光を取り出す方向に制御することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
光共振器内で光パルスが電子ビーム軌道と離れている部分に、高速で駆動できる偏向素子を挿入し、そこに光パルスが透過或いは反射するように配置する。蓄積リング型自由電子レーザー装置の光共振器は通常10m以上の長さを有しているので、100ns程度の立ち上がり時間と数mradの偏向角を持った偏向素子が必要になる。これに適したものには、強誘電体に高電界を印加した電気光学素子と、光学媒体中に圧電素子の振動で生じた超音波を伝播させることで屈折率勾配を形成し回折効果を生じる偏向素子(例えば、音響光学素子)がある。透過型の場合には、素子の光学媒体には自由電子レーザーの発振波長域で透過率の高い素材を使用し、表面に反射防止膜を施すかブリュースター角で使用することで極力透過率を高める。
【0015】
図2は、本発明の高速偏向素子を用いた光共振器のもっとも単純な一例を示す図である。
光学系のもっとも単純な配置は、図2に示すように、2枚のミラー61、64およびレンズ62、63からなる光共振器が形成するビームウエストに偏向素子21を置くものである。該ビームウエストにおいて光ビームが絞られるように構成されている。このように、絞られたビームウエストに偏向素子21を配置するので、偏向素子の偏向作用が全ビームに対して有効に作用するようになる。
この場合は、偏向素子21の場所で電子ビームが迂回する必要があるので、アンジュレータには充分な磁場と長さを持った分散部を擁する光クライストロンを使用する等の迂回措置をとる。この偏向素子21は、溶融石英から構成することが好ましい。
【0016】
図1は、本発明の高い射出効率を可能にする、高速偏向素子を用いた光共振器と駆動システムの一例を示す図である。
ただし、上記の方法では偏向素子21に対する条件が厳しくなるので、一般的にはミラーを1枚増やして3枚のミラーM1、M2、M3で光共振器10を組み、光ビームを強く絞った位置に偏向素子21を配置する。
光学系は、ミラーM1(11)、M2(12)、M3(13)および偏向素子21からなる。ミラーM2とM1でビームウエストを形成する反射系を構成する。ミラーM2とM3はもう1つの反射系を構成すると共にFEL取りだし用の偏向素子21を介在する。
光共振器10は、ミラーM1(11)とM2(12)の間に設けられる。
駆動システムは、偏向素子21に制御信号を印加する制御装置を構成し、ミラー15、16および17と、PINフォトダイオード25と、波高弁別器24と、パルス発生器23と、RF電源22とからなる。
【0017】
該駆動システムは、前記光共振器10内で発生しているレーザー光を、前記ミラー14、15、16および17を介してPINフォトダイオード25でモニターし、そのモニター出力信号の波高値を波高弁別器24によって弁別する。レーザー出力の取り出しが可能となると前記モニター出力信号が該波高弁別器24の閾値を超えるので、そのとき、パルス発生器23でトリガーパルスを発生する。RF電源22は、前記トリガーパルスに応じて所定(例えば、10ms)幅の駆動パルスを偏向素子21に供給して該素子21の偏向角を最大にする。
すなわち、偏向素子21がOFFの状態では、光パルスはその素子21を透過或いは反射して光共振器10を往復し、蓄積リングの電子ビームと相互作用することで自由電子レーザーを増幅する。増幅が飽和に達すると、素子21はONの状態にされる。
【0018】
また、素子21がONの状態になると、ここを透過或いは反射するときに回折が生じ、回折の1次光または高次光はミラーを飛び越えて光共振器10の外へと自由電子レーザー光になったものを射出される。蓄積リング電子ビームの放射減衰によって決められる時間(エネルギー拡がりが回復する時間)だけONの状態を持続しておき、アンジュレータ光を光共振器内に蓄積しないようにする。所定時間の後、再び素子の状態をOFFにする。
これにより、電子ビームの冷却を早めることができ、また、ミラーの劣化を防止することができるようになる。
上記のサイクルを繰り返すことで、高いピークエネルギーの蓄積リング型自由電子レーザーを生成できる。また、放射減衰程度の短い繰り返し周期で平均出力は最大になる。あらかじめ自由電子レーザー利得と共振器損失を求めておいて自由電子レーザーパルスの時間発展を数値計算することで、平均出力を最適化できる。
【0019】
蓄積リング型自由電子レーザーが研究され始めた頃では、高い利得を実現することが難しく、低損失な光学系を広範囲な波長域で入手することが困難であったが、現在では高い有効利得を実現できるようなってきた。そのため、多少共振器損失が増加しても、光共振器の改良によって強いピークエネルギーを取り出すことが可能となっている。
さらに、本発明は、蓄積リング型自由電子レーザーと、電子ビームの時間発展の性質を利用して、効率よく光エネルギーを取り出し、従って繰り返し周期を短くし、平均出力を最適化する方法も提供する。
次に本発明の具体的実施例を述べ、本発明の効果をさらに詳細に説明する。
【0020】
(実施例)
蓄積リングとして産業技術総合研究所のNIJI−IVを使用し、自由電子レーザーの発振波長を350nmとする。蓄積リングNIJI−IV電子ビームの電流値30mAにおける特性を表1に示す。
【表1】
Figure 0003629538
自由電子レーザーの最大利得は約5%である。
さらに、光学系を構成するミラーについて説明する。
図1のようにミラーは3枚使用し、これらのミラーをM1、M2、M3とし、光パルスはM1→M2→M3→M2→M1と伝播するように配置する。M1は長焦点ミラーでM1−M2間にはアンジュレータ(光共振器)があり、M2とM3は短焦点ミラーでM2−M3間には偏向素子を挿入しておく。ミラーM1、M2、M3の曲率半径をそれぞれ11m、1.4m、1.04mとすれば、M1−M2間が13m、M2−M3間が1.8mになる。偏向素子はM3から1.04mの位置に置かれ、そこでのビームサイズは波長350nmの時に0.075mmとなる。
【0021】
偏向素子及び高周波ドライバーは市販の製品を真空仕様にして使用することが可能である。上記波長では溶融石英が優れた透過特性を持つので適している。溶融石英の音響光学特性を表2に示す。
【表2】
Figure 0003629538
ここで性能指数とは回折角を決める因子である。溶融石英は性能指数が比較的小さいが、10Wの高周波電力で波長350nmにおいて偏向角約4mradを実現できる。可視〜紫外域では、溶融石英の表面に反射防止膜を施したり、ブリュースター角で使用することで、表面反射を著しく押さえることが可能である。その結果、最大透過率は99.8%を実現できる。
【0022】
偏向素子は電気光学素子ほどではないが反応速度が大きい。偏向素子の立ち上がり時間τは、レーザーのビーム径φを用いて次式のように与えられる。
τ= φ/(1.5Va)
ここでVaは音響速度である。従って、NIJI−IVの光共振器10ように光パルスの1往復が99nsの場合には、φを0.6mm程度にしておけばよい。このような素子は波長350nmでは最大回折効率が50%にもなる。
偏向素子21がONの状態では光パルスは回折効率分(〜50%)だけ回折される。OFFの状態では、全光パルスは光共振器10内の往復運動を繰り返す。光パルスがM3から偏向素子を通過後、偏向素子21をONにすると、次に偏向素子21に戻ってきた光パルスはほぼ半分ずつに0次光と1次光に分割される。そしておのおのM3で反射されて、再び偏向素子21を通り、0次光の位置に25%、1次光の位置に50%、2次光の位置(0次光と1次光がなす角の2倍だけ0次光と分かれている)に25%分割される。回折角は素子に供給する高周波電源のパワーで決まるが、10W入力で約4mradほどになる。そのため、M2で再び反射された光パルスはM1の位置では、1次光でミラー中心から27mm、2次光で54mmの位置だけずれることになる。共振器ミラーは半径15mmもあれば充分なので1、2次光合わせて75%の光パルスを一度に取り出すことができる。
【0023】
偏向素子21による共振器10の損失は溶融石英を使用した場合は1往復あたり0.4〜1%である。ミラーを1枚増やしたことでミラーによる共振器損失も増加するが、波長350nm付近ではミラー1枚あたりの損失が0.1(照射前)〜0.4%(照射後)であるので、FEL照射中の平均的な共振器損失はおおよそ1%程度である。従って、光共振器10における1往復あたりの共振器損失は約2%である。NIJI−IVのFEL利得は波長350nmでは最大5%であるから、発振には問題ない。
【0024】
さて、時間を追ってFELパルスの発展と電子ビームのエネルギー拡がりの発展を説明する。偏向素子がONの状態では光パルスは有効効率分だけ回折されて、FELの発振は止まる。しばらくこの状態で光共振器内に光パルスを蓄積しないようにしておくと、放射減衰のためにエネルギー拡がりが回復してくる。
図3は、本発明のキャビティダンプ中におけるエネルギー拡がりの時間発展図である。
【0025】
後述するが、NIJI−IVの場合ではこの時間はおよそ40msである。そこで40ms後に偏向素子をOFFにして、光共振器内に光パルスの蓄積を開始する。
すぐにFELの発振が始まり、NIJI−IVの場合では0.1ms程度で飽和に達する。飽和までの時間は、電子ビームの電流量や、有効利得、共振器損失等に依存している。そこで誘電体多層膜ミラーM1かM2から漏れ出てくる光パルスをPINフォトダイオードで観測し電圧信号に変え、波高弁別器を通してある電圧以上に達したら、パルス波高を記憶する。そして最高値から数%下がったら偏向素子の高周波電源をOFFにする。これらの操作は10MHz以上で駆動するロジック回路を組むことで解決できる。或いは、飽和時間は計算によりおおよそ予測できるので、遅延時間をあらかじめ設定しておいて、偏向素子の高周波電源をOFFにしてもよい。キャビティダンプを行った場合、FELの光パルスは半値幅0.01msぐらいの強度分布(マクロパルスと呼ぶ)を示すので、ピークに達したら遅滞なく偏向素子の高周波電源をOFFにしなければならない。平均出力を重視する場合は、ピークに達する直前にOFFにするとこの繰り返し間隔を短くできるので、平均出力を上げることができる。上記した1周期におけるエネルギー拡がりの時間発展を図3に、光共振器内エネルギーの時間発展を図4に示す。
【0026】
図4は、本発明のキャビティダンプ中における光共振器内エネルギーの時間発展図である。
共振器内エネルギーの飽和強度は最大約0.25mJである。これは、キャビティダンプを用いない通常の光共振器のそれよりも2〜3倍程度低い値になる。しかし通常の光共振器の取り出し効率は多くても0.005程度なので数μJ程度であるが、取り出し効率0.75の本方法は、取り出した光パルスが約0.2mJと百倍程度強くなる。
【0027】
通常のQスイッチではマクロパルスの後半も充分に強度が大きいので、その間も電子ビームは加熱状態にあり、エネルギー拡がりが増大し続ける。その結果、高いピークエネルギー(最大値の80%)を維持しようとすると、Qスイッチの繰り返し間隔は60msほど必要になる。しかしキャビティダンプを行うことで、FELマクロパルスの後半は現れないことになる。このために冷却に必要な時間は40msほどで済む。繰り返しキャビティダンプを行った場合の、ピークエネルギー及び平均出力と繰り返し周波数との関係を図5に示す。
図5は、蓄積リング型自由電子レーザー装置に使用されている従来型の光共振器の概略図である。
【0028】
この図が示すように、平均出力が最大になる繰り返しは、ダンピング時間37msよりも短い30ms程度で最大になる。こうして数値計算によって平均出力を最大にする周波数を求めることができ、高いピークエネルギーかつ比較的高い平均出力が要求される状況にも対応可能である。
【0029】
【発明の効果】
本発明を使用することにより、蓄積リング型自由電子レーザー装置の光共振器内に蓄えられた強力なピークエネルギーを持つ光パルスを効率よく光共振器外へ取り出すことが可能になる。共振器外へ取り出した光パルスは、従来よりも100倍程度の強度を実現することができる。
【0030】
また、蓄積リングの電子ビーム及び自由電子レーザーの時間発展特性を利用することによって、効率の良いキャビティダンプを行い、高いピークエネルギーを保ちつつ平均出力を最適化できる。
さらに、共振器ミラーが強力な光パルスを蓄えている時間が短いために、ミラーの劣化速度が小さくなることも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高い射出効率を可能にする、高速偏向素子を用いた光共振器と駆動システムの一例を示す図である。
【図2】本発明の高速偏向素子を用いた光共振器のもっとも単純な一例を示す図である。
【図3】本発明のキャビティダンプ中におけるエネルギー拡がりの時間発展図である。
【図4】本発明のキャビティダンプ中における光共振器内エネルギーの時間発展図である。
【図5】本発明の計算による、ピークエネルギー及び平均出力とキャビティダンプの繰り返し周波数との関係を示す図である。
【図6】蓄積リング型自由電子レーザー装置に使用されている従来型の光共振器の概略図である。
【図7】積層ピエゾアクチュエータ(PZT)を備えたミラーと窓付きミラーを用いた従来型の光共振器の概略図である。
【図8】従来の蓄積リング型自由電子レーザーの構成図である。
【符号の説明】
10 光共振器
11、12、13、15、16、17、 ミラー
21 偏向素子
22 RF電源
23 パルス発生器
24 波高弁別器
25 PINフォトダイオード

Claims (5)

  1. 蓄積リング型自由電子レーザーの光共振器において、ミラー間の光路に介挿し光を偏向させる偏向素子と、前記ミラー間で増幅した光パルスを検出し、その検出した光パルスの検出値が最大値になったとき、前記光パルスを回折させて共振器外へ取り出すように前記偏向素子の偏向角を制御する制御装置を設けたことを特徴とする蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器。
  2. 前記偏向素子を溶融石英としたことを特徴とする請求項1記載の蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器。
  3. 前記偏向素子の位置で光ビームが絞られるように前記ミラーを組み合わせて配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器。
  4. 前記偏向素子を蓄積リングに挿入されているアンジュレータ内部に設置し、電子ビーム損失を避けるように前記偏向素子の前後に電子ビームの軌道を形成したことを特徴とする請求項1記載の蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器。
  5. 前記制御装置で、光共振器内から自由電子レーザーを取り出した後、所定時間内、前記偏向素子をアンジュレータ光を取り出す方向に制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の蓄積リング型自由電子レーザー用の光共振器。
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