JP2003195237A - 半導体光機能デバイス - Google Patents

半導体光機能デバイス

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JP2003195237A JP2001398175A JP2001398175A JP2003195237A JP 2003195237 A JP2003195237 A JP 2003195237A JP 2001398175 A JP2001398175 A JP 2001398175A JP 2001398175 A JP2001398175 A JP 2001398175A JP 2003195237 A JP2003195237 A JP 2003195237A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 低雑音の半導体光増幅器や、超高速でかつス
イッチング・エネルギーの低い非線形半導体光デバイス
を実現する。 【解決手段】 光導波路内に設けられた、第1の量子井
戸(光増幅領域)37と第2の量子井戸(電子励起領
域)38とが薄い障壁層35により結合した単位結合量
子井戸構造31が複数周期積層されてなる半導体積層構
造3に、第2の量子井戸38のサブバンド間吸収帯域内
の波長の励起光を注入すると共に積層方向に電圧を印加
して電子を流すことで、第1の量子井戸37に誘導放出
利得を生ぜしめ、信号光を増幅する。また、制御光によ
る光増幅領域の利得飽和や電子励起領域の吸収飽和を利
用して、信号光を超高速にスイッチングする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光信号の状態で所
定の処理を施す半導体光機能デバイスに係わり、特に半
導体光増幅器、ならびに超短光パルス信号により別の信
号光の強度,位相,或いは出力先等を制御する非線形光
半導体デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】インターネットの普及等に伴う情報量の
急増により、基幹伝送系においては近い将来、毎秒数百
ギガ〜数十テラビットの大量の情報が光ファイバを飛び
交うものと予想されている。このような超大容量の光ネ
ットワークを実現するためには、高性能な光増幅器、1
Tb/sオーダーの超高速動作が可能な光スイッチング
素子、波長変換素子などの光機能デバイスが必要であ
る。
【0003】光通信用の光増幅器としては、希土類をド
ープした光ファイバ増幅器やファイバ・ラマン増幅器が
あり、既に広く使われている。一方、光LANや装置内
等の用途向けには、進行波型半導体光増幅器の導入も検
討されている。進行波型半導体光増幅器は、半導体レー
ザの端面に低反射コートを施して、高レベルの電流を注
入してもレーザ発振しないようにしたものであり、その
一端面から入射された光はバンド間の誘導放出利得を受
けて増幅されて出力される。進行波型半導体光増幅器
は、光ファイバ増幅器と比べて遙かに小型で消費電力も
小さい。また、希土類ドープの光ファイバ増幅器と比べ
て波長の自由度も大きい。
【0004】しかし、利得帯域全体にわたって出力され
るASE(Amplified SpontaneousEmission)雑音が信
号光対雑音比を悪化させることは、応用上の制約条件と
なっている。また、利得飽和レベルが低いため、十分な
出力を得られないという問題もあった。このため、半導
体光増幅器が光増幅素子として利用できる応用範囲は極
めて限定されていた。
【0005】半導体光増幅器は、光増幅器としてよりも
むしろ、光スイッチ,波長変換素子等の非線形光デバイ
スとしての応用が期待されている。強い光パルスが入射
すれば利得飽和や屈折率の変調が起こるので、様々な非
線形光デバイスとして使用することができる。利得を有
する光増幅器を用いた非線形光デバイスは、スイッチン
グ・パワーが低く、高効率なのが特長である。しかし、
バンド間遷移に基づく利得変化はキャリア寿命により制
限されるので、応答速度は通常数十Gb/s程度、アシ
スト光の注入など特殊な工夫をした場合でもせいぜい数
百Gb/sまでしか動作させることができなかった。
【0006】一方、1Tb/s級の超高速光スイッチン
グ素子の動作原理として、窒化物半導体のサブバンド間
遷移の可飽和吸収の利用が提案されている(例えば、特
開平8−179387公報、N. Suzuki and N. Iizuka,
Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 36, pp.
L1006-1008, 1997年)。サブバンド間の緩和時間はバ
ンド間の緩和時間(キャリア寿命)と比べて3桁程度高
速である。特に、窒化物半導体の量子井戸を用いれば、
光通信で重要な近赤外域でのサブバンド間遷移を実現で
きるうえ、LOフォノンと電子の相互作用が大きいので
サブバンド間緩和時間をInGaAs系と比べて一桁以
上速くできる。
【0007】例えば、GaN系量子井戸におけるサブバ
ンド間緩和時間は、室温,光通信波長帯で200〜40
0fsと短いので、そのサブバンド間吸収の飽和を利用
すれば、1Tb/s程度の超高速繰り返しのビット・モ
ード光スイッチング動作も可能になる。また、半導体を
利用しているので、小型,軽量,安定な光スイッチを実
現でき、量産化が可能なことは言うまでもない。さら
に、窒化物半導体は特に強靭な半導体材料であり、温度
上昇に対しても強い。
【0008】サブバンド間吸収は井戸に垂直な電界成分
に対して生じるから、基板面に垂直に光を入射する面型
光スイッチへの応用は困難であり、主として光導波型の
非線形光デバイスに応用される。光導波路型の非線形光
デバイスとして様々な形態が考えられるが、例えばサブ
バンド間吸収の飽和を利用した可飽和吸収光ゲート・ス
イッチの場合、吸収飽和を起さない程度のパルス・エネ
ルギーの信号光パルスと、吸収飽和を起す程度の大きな
パルス・エネルギーを有する制御光パルスが光導波路に
入射される。いずれのパルスも、サブバンド間吸収の生
じる波長範囲内にあるものとする。信号光パルスのみが
入射した場合は、信号光パルスは吸収されて出力されな
い。信号光パルスと制御光パルスが同時に入射した場合
は、制御光による可飽和吸収で信号光パルスに対する吸
収が減るため、信号光は出力される。
【0009】このような光ゲート・スイッチで十分な消
光比(スイッチのON/OFF比)を得るためには、G
aN系の場合で最低数pJオーダーの制御光パルス・エ
ネルギーが必要であり、これは1THzでは数Wの平均
パワーに相当する。通常、制御光パルスもあるパターン
で変調された信号であり、このようなパワーに増幅する
のは困難である。
【0010】信号光の波長を吸収帯域の端のほうに設定
すれば、制御光による可飽和吸収で位相が変調される光
位相変調素子として用いることもできる。この位相変調
素子を光干渉計の中に組み込むことで、干渉計型光ゲー
ト・スイッチや光路切り替えスイッチとして応用するこ
ともできる。また、吸収帯域内の二つの波長の光のビー
ト成分によるサブバンド間キャリア分布の変化を利用し
た四光波混合型の光スイッチや波長変換素子等にも応用
することが可能である。しかし、いずれの場合も強い制
御光や励起光が必要であることが、実用化を妨げる最大
の課題となっている。
【0011】上記サブバンド間遷移の超高速性と半導体
光増幅器の高効率性を併せ持つ非線形光デバイスを実現
する方法として、サブバンド間遷移を用いた光増幅器を
利用することが考えられる。波長3μm以上の波長で
は、サブバンド間遷移を利用した半導体レーザとして、
量子カスケード・レーザ(QCL)が知られている。Q
CLは、電子注入領域と活性領域からなる単位構造を複
数周期積層した活性層を光導波構造の中に設け、外部か
ら電圧を印加して活性層にキャリアを注入できるように
したものである。QCLについては、例えば、米国特許
第 5,457,709 号(発明者 Capasso et al.、出願日1997
年3月27日)などに開示されている。
【0012】図14に、QCLの活性層を構成する単位
構造100の伝導帯バンド構造の例を示す。この単位構
造100は電子注入領域101と活性領域102から構
成されており、電子注入領域101と活性領域102の
いずれも、InGaAs井戸層103とAlGaInA
s障壁層104からなる量子井戸ないし超格子からな
る。電子注入領域101はチャープ半導体超格子層から
なり、図示のようなミニバンド105が形成されてい
る。活性領域102は通常、多重量子井戸層か半導体超
格子層からなるが、ここでは議論を単純化するために単
一の量子井戸で表した。この活性領域102には、基底
準位E1 、励起準位E2 の二つのサブバンドが形成され
ている。
【0013】活性層には、電極やクラッド層を介して十
分な電界が印加されている。電子は、図の左側から電子
注入領域101のミニバンド105を介して、活性領域
102の励起準位E2 に注入される。活性領域102の
基底準位E1 から右側の電子注入領域101に排出され
る時定数とミニバンド105から励起準位E2 に電子が
注入される時定数のいずれもが、E2 からE1 に電子が
緩和する時定数より十分に短いので、十分な電流を流せ
ば活性領域102に反転分布を形成でき、誘導放出利得
を生じる。端面に高反射コーティング膜を施す等して共
振器を構成すれば、レーザ発振を得ることができる。
【0014】原理的には、QCLの端面に低反射コート
を施してレーザ発振を抑制すれば、光増幅器として使用
できるはずであり、これを応用すれば、超高速かつ高効
率な非線形光半導体デバイスが実現できるはずである。
GaN/AlN系,InGaAs/AlAsSb系,Z
nSe/BeTe系などで、光通信に用いられる波長
1.3〜1.6μm帯でも近赤外波長のサブバンド間遷
移が実現されている。しかしながら、QCLやQCLの
構造を利用した光増幅器を近赤外波長で実現すること
は、以下に示す理由により極めて困難であった。
【0015】近赤外サブバンド間遷移を実現するための
障壁層は、障壁高さが高く有効質量も大きい傾向がある
ので、トンネリングによる結合が弱く、超格子を電子が
伝搬する時定数が長くなる。しかも、近赤外波長のサブ
バンド間遷移ではE2 のエネルギー・レベルが高くなる
ので、電子注入領域101のミニバンド105のエネル
ギー・レベルも活性領域102に接する領域で十分に高
くする必要がある。しかし、井戸層の厚さには1モノレ
ーヤの限界があり、この部分の井戸層の組成を障壁層の
組成に近づけない限り、このようなレベルを実現するこ
とはできない。
【0016】障壁層材料に近い組成を持つ半導体層に
も、キャリア密度を上げられない、有効質量が大きい、
移動度が低い、等の不都合がある。さらに、ミニバンド
のレベルを左側の活性領域のE1 から右側の活性領域の
2 まで持ち上げるためには、電子注入領域の層厚を厚
く(超格子を構成する井戸数を非常に多く)しなければ
ならない。このため、電子注入領域の電子輸送時間が長
くなり、E2 への電子注入時間とE1 からの電子排出時
間が短いという前提条件を満たさなくなってしまう。従
って、近赤外域では、サブバンド間の反転分布の形成は
非常に困難であった。
【0017】また、単位構造一層当たりの電圧降下が大
きい(フォトン・エネルギー+アルファの電圧降下が必
要なので、一単位構造あたり1V近い電圧降下になる)
ため、全体として非常に高い電圧が必要になる。さら
に、電子注入層の層厚が厚いということは、活性層にお
ける活性領域と導波光とのオーバーラップが小さくなる
ということを意味する。近赤外光は中赤外光より導波モ
ード径が小さくなるから、活性層の厚さをそれほど厚く
できない。従って、十分な利得を得るのに必要な単位構
造の積層数を確保することが困難になる。
【0018】このように、QCL構造を利用した光増幅
器では、近赤外域で十分な利得が得られず、非線形光半
導体デバイスとしても、所要の特性を得ることはできな
かった。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、バンド
間遷移を利用した従来技術の半導体光増幅器は、ASE
雑音が大きく、利得飽和レベルが低いため、応用範囲が
極めて限定されていた。また、従来技術の半導体光増幅
器を用いた非線形光半導体デバイスでは、1Tb/s級
以上の超高速動作が不可能であった。一方、GaNなど
のサブバンド間遷移を利用した非線形光デバイスは、高
速・広帯域ではあるが、効率が低く、スイッチング・エ
ネルギーが大きいという課題があった。
【0020】従来技術の組み合わせであるサブバンド間
遷移を利用した光増幅器では、近赤外域で十分な利得が
得られないという課題があり、非線形光半導体デバイス
としても超高速かつ高効率の特性を得ることはできなか
った。
【0021】本発明は上記事情を考慮してなされたもの
で、その目的とするところは、低雑音で飽和レベルの大
きな半導体光増幅器や、超高速でかつスイッチング・エ
ネルギーの低い非線形半導体光デバイス等を実現するた
めの半導体光機能デバイスを提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】(構成)上記課題を解決
するために本発明は、次のような構成を採用している。
【0023】即ち、本発明の半導体光機能デバイスは、
少なくとも二つのサブバンドを有する第1の量子井戸
(光増幅領域)と、少なくとも二つのサブバンドを有し
かつそのサブバンド間エネルギー差が前記第1の量子井
戸のサブバンド間エネルギー差よりも大きな第2の量子
井戸(電子励起領域)と、の少なくとも二つの量子井戸
が薄い障壁層により結合した単位結合量子井戸構造が、
複数層周期的に積層されてなる半導体積層構造と、この
半導体積層構造を含む光導波構造と、前記半導体積層構
造に対しその積層方向に電圧を印加して前記単位結合量
子井戸構造の第1の量子井戸から第2の量子井戸に向か
う方向にキャリアを流す手段と、前記光導波構造の一端
側から光を入射する手段と、前記光導波構造の他端側か
ら光を出射する手段と、前記半導体積層構造に前記第2
の量子井戸のサブバンド間吸収帯域内の励起光を注入す
る手段と、を具備してなることを特徴とする。
【0024】また、本発明の好ましい実施態様として、
以下のようなものがある。 (1)半導体積層構造は、窒化物半導体により構成され
ていること。 (2)光導波構造に入射する光は、第1の量子井戸のサ
ブバンド間遷移帯域内の信号光であること。これによ
り、半導体光増幅器を構成すること。 (3)光導波構造に入射する光は、第1の量子井戸ない
し第2の量子井戸のサブバンド間遷移帯域内の信号光と
制御光であること。これにより、非線形光半導体デバイ
スを構成すること。 (4)第1の量子井戸の基底準位は第2の量子井戸の基
底準位より、量子井戸を構成している材料のLOフォノ
ン・エネルギーに相当するエネルギーより高いレベルに
あること。 (5)第1の量子井戸の基底準位と第2の量子井戸の基
底準位は強く結合しており、そのエネルギー差は30m
eV以上であること。 (6)第1の量子井戸と第2の量子井戸のサブバンド間
遷移波長は、いずれも2μm以下であること。
【0025】(7)第1の量子井戸は、第2の量子井戸
と反対側にステップ状ないし連続的な組成傾斜領域を有
すること。 (8)第1の量子井戸の第2の量子井戸とは反対側に、
第1及び第2の量子井戸間の障壁層よりも薄い別の障壁
層を介して第3の量子井戸が設けられていること。 (9)第2の量子井戸の励起準位は、キャリアの流れの
下流側に相当する隣接層とトンネリングにより結合した
擬似束縛準位であること。 (10)単位結合量子井戸構造とこれに隣接する単位結合
量子井戸構造の間の層には1MV/cm以上の電界がか
かっていること。
【0026】(11)励起光は連続光であること。 (12)励起光はパルス光で、制御光や信号光の到達に先
立って入射されていること。 (13)実施態様(12)において、励起光は光導波構造か
ら導入されること。 (14)励起光は、光導波構造の側面から導入されるこ
と。
【0027】なお、厳密には、結合量子井戸では第1の
量子井戸と第2の量子井戸の両方にまたがってサブバン
ドが形成される。ここでは議論を簡単化するために、第
1(第2)の量子井戸のキャリア存在確率が第2(第
1)の量子井戸のキャリア存在確率より大きなサブバン
ド(基底準位、励起準位)を「第1(第2)の量子井戸
のサブバンド(基底準位、励起準位)」と呼ぶことにす
る。また、第1(第2)の量子井戸が超格子構造である
場合は、「サブバンド」を「ミニバンド」と読み替える
ものとする。
【0028】(作用)本発明の構成において、電圧が印
加され励起光が入射していない状態では、第2の量子井
戸の基底準位に大多数のキャリアが分布している。十分
な強度の励起光が入射すると、キャリアは第2の量子井
戸の励起準位に励起される。励起されたキャリアは、印
加電圧による電位降下により、短時間のうちに隣接する
単位結合量子井戸構造の第1の量子井戸の励起準位に注
入される。
【0029】第1の量子井戸の励起準位は、第2の量子
井戸の励起準位より低いレベルにある。従って、第1の
量子井戸の励起準位の寿命は、LOフォノンの放出を伴
う基底準位への緩和過程により支配されている。その緩
和レートは、波長2μm以下のサブバンド間遷移では、
第2の量子井戸の励起準位から第1の量子井戸の励起準
位への緩和レート、第1の量子井戸の基底準位から第2
の量子井戸の基底準位への緩和レート、のいずれよりも
小さい。
【0030】従って、電圧印加でキャリアが注入され、
励起光による第2の量子井戸の励起レートが十分に大き
ければ、第1の量子井戸の励起準位の寿命が最も長くな
り、第1の量子井戸の基底準位と励起準位の間に反転分
布が形成される。その結果、第1の量子井戸のサブバン
ド間遷移エネルギーに相当する波長帯に誘導放出利得を
生じる。その波長帯域内の信号光が入射されれば増幅さ
れて出射される。単位結合量子井戸構造の数を増やし、
強い励起光を入射することで、飽和利得を増大させるこ
とができる。また、サブバンド間遷移では自発発光が殆
ど起こらないので、ASE雑音の発生は無視でき極めて
低雑音である。(但し、励起光の雑音を拾うので、雑音
の小さな励起光が必要である。)サブバンド間遷移エネ
ルギーは井戸幅等に依存しているから、井戸構造の設計
を変えることにより、近赤外から中赤外域のいろいろな
波長の光増幅器を作製することができる。
【0031】また、実施態様(3)のように非線形光デ
バイスとして動作させる場合における信号光と制御光の
波長については、動作のさせ方により様々な組み合わせ
が考えられる。
【0032】例えば、制御光は光増幅領域の利得帯域内
でかつ電子励起領域の吸収帯域外にあり、信号光は光増
幅領域の利得帯域と電子励起領域の吸収帯域の重なった
波長範囲内にあるものとする。この場合、強い制御光パ
ルスが入射していない状態では、信号光パルスは光導波
構造を伝搬する際に利得と吸収の両者の影響を受ける。
利得の方が吸収より大きくなるように設定しておけば、
入力より大きな出力が得られる。光増幅領域の利得を飽
和させるのに十分なパルス・エネルギーを持つ制御光パ
ルスが信号光パルスに同期して光導波路を伝搬すると、
利得飽和により信号光の増幅が抑制されて吸収の方が大
きくなるため、信号光は光導波路伝搬に伴って減衰し、
出力されない。この場合は、符号が反転したインバータ
動作となる。
【0033】波長配置を変更して利得と吸収の関係を反
転させれば、吸収飽和型の非反転動作にも適用できる。
この場合でも、制御光ないし信号光に対して光増幅領域
の利得が寄与するので、高効率化ないし低スイッチング
・エネルギー化が図れる。
【0034】このように、制御光パルスの有無により信
号光パルスに対する光導波路の透過率を変化させること
ができる。或いは、この変化に伴って、信号光パルスの
位相を変化させることもできる。この変化に係わる現象
は全て高速であるから、超高速の光制御が実現される。
従来のサブバンド間遷移の可飽和吸収のみを利用した非
線形光半導体デバイスと異なり、制御光、信号光、或い
はその両方に対する利得があるため、高効率でスイッチ
ング・エネルギーも低減できる。
【0035】なお、実施態様(1)の窒化物半導体にお
いては、サブバンド間緩和時間は近赤外波長域でも数百
fs、LOフォノン・エネルギーに相当する近接サブバ
ンド間の緩和時間やサブバンド内緩和時間は数十fs以
内と短い。また、キャリア−キャリア散乱時間もGaA
s系などと比べて一桁短い数十fsオーダーである。従
って、注入電流と励起光強度が十分に大きければ、光増
幅により励起準位のキャリアが不足してもすぐに近接準
位からキャリアが補充されるので、利得飽和レベルは高
い。また、単位量子井戸構造の数を増やすことにより、
利得飽和レベルを増大させることができる。但し、単位
量子井戸構造の数が多いほど、必要な印加電圧と励起光
強度は大きくなる。非線形光デバイスに応用した場合、
関連する緩和過程の時定数がいずれもサブピコ秒なの
で、毎秒1テラビット以上の超高速光スイッチを実現で
きる。
【0036】実施態様(4)の場合は、第1の量子井戸
の基底準位にある電子は、LOフォノン放出を伴って短
い時間(窒化物半導体で100fs程度)の間に第2の
サブバンドの基底準位に緩和する。
【0037】実施態様(5)のように二つの量子井戸が
強く結合している状態では、二つの基底サブバンドの包
絡線関数の二乗は、いずれも第1の量子井戸と第2の量
子井戸の両者にピークを有する。二つのサブバンドの電
子の位相差により、主として第1の量子井戸にキャリア
が存在する状態や第2の量子井戸にキャリアが存在する
状態が生じる。誘導放出により第1の量子井戸の励起サ
ブバンドから二つの基底サブバンドに落ちた瞬間にはキ
ャリアは第1の量子井戸に存在しているが、共鳴する二
つの準位のエネルギー差ΔEで決まる量子ビートの周期
(h/ΔE)の半分の時定数で第2のサブバンドの基底
準位に移動する。実際には、量子ビートは位相緩和時間
のオーダー(窒化物半導体で10〜30fs、AsやP
を主要構成元素とする半導体で100fsオーダー)で
減衰するが、井戸間のキャリア移動速度はおおむねこの
時定数から見積もることができる。井戸間の結合が強
く、ΔEが30meV以上なら、この時定数は高々10
0fsである。
【0038】第1の量子井戸の励起準位の寿命は、波長
が短いほど長くなる。従って、実施態様(6)のように
サブバンド間遷移波長が2μm以下なら、この寿命を他
の関係する時定数より長く設定すること、即ち反転分布
を形成することが容易になる。
【0039】実施態様(7)のように、第1の量子井戸
の第2の量子井戸と反対側にステップ状ないし連続的な
組成傾斜領域(中間組成層)を設けることにより、容易
に第1の量子井戸のサブバンド間エネルギーを第2の量
子井戸のサブバンド間エネルギーより小さくすることが
できる。
【0040】実施態様(8)の構造においても、第1の
量子井戸と第3の量子井戸は強く結合しているので、第
3の量子井戸の基底準位をオリジンとするサブバンド
が、第1の量子井戸と第3の量子井戸からなる結合量子
井戸の最低励起準位となる。そして、この結合量子井戸
を本来の第1の量子井戸とみなせば、容易に第1の量子
井戸(第1の量子井戸と第3の量子井戸からなる結合量
子井戸)のサブバンド間エネルギーを第2の量子井戸の
サブバンド間エネルギーより小さく設定することができ
る。
【0041】実施態様(9)の如く第2の量子井戸の励
起準位がキャリアの流れの下流側に相当する隣接層とト
ンネリングにより結合した擬似束縛準位であれば、第2
の量子井戸の励起準位に励起されたキャリアを隣接する
下流側の単位結合量子井戸の第1の量子井戸の励起準位
に注入する時間を短縮できる。
【0042】また、実施態様(10)のように単位結合量
子井戸構造とこれに隣接する単位結合量子井戸構造の間
の層に1MV/cm以上の電界がかかっていても、第2
の量子井戸の励起準位に励起されたキャリアを隣接する
下流側の単位結合量子井戸の第1の量子井戸の励起準位
に注入する時間を短縮できる。
【0043】実施態様(11)のように、励起光がCW光
であれば、時間変動の小さな安定動作が可能である。
【0044】実施態様(12)のように、励起光がパルス
光であれば、励起光の平均パワーを小さく抑えることが
できる。但し、信号光パルスや制御光パルスが到着する
前に反転分布を形成するためには、励起光パルスが制御
光パルスや信号光パルスより先に到達していることが必
要である。励起光が前記制御光パルスと同期し、かつ制
御光パルスより幅の広い周期的な光パルスであれば、連
続的に励起する場合と比べて励起光の平均パワーを低く
抑えることができ、かつ制御光パルスや信号光パルス到
達時に十分な利得を得ることができる。
【0045】励起光がパルス光の場合、実施態様(13)
のように励起光パルスが光導波路から導入されれば、パ
ルス幅を制御光パルスより少し広い程度に抑えることが
でき、効率的である。
【0046】実施態様(14)のように、励起光を光導波
路の側面から導入する方法も考えられる。この場合は、
第2の量子井戸を光導波路の全体にわたってほぼ均一に
励起することが可能で、光導波路を長くして制御光パル
スと信号光パルスの相互作用長を長くすることができ
る。励起光は制御光パルスや信号光パルスが光導波路を
伝搬している間照射されていればよく、この条件を満た
せばパルス光であっても連続光であってもかまわない。
【0047】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細を図示の実施
形態によって説明する。
【0048】(第1の実施形態)図1は、本発明の第1
の実施形態に係わる半導体光増幅器の主な構成要素を模
式的に示す斜視図である。この光半導体光増幅器20
は、サファイア基板1(0001)面上に積層された下
部窒化物半導体層2、この下部窒化物半導体層2上に窒
化物半導体からなる半導体積層構造3と上部窒化物半導
体層4が順に積層されたメサ状の光導波路5、下部窒化
物半導体層2上に前記光導波路5に接して形成されたポ
リイミド膜6、このポリイミド膜6と光導波路5の上に
形成され上部窒化物半導体層4と電気的に接続された上
部電極7、ならびに下部窒化物半導体層2に電気的に接
続された下部電極8などからなる。素子長は約400μ
mである。
【0049】窒化物半導体層2,3,4はウルツ鉱型
で、ここでは表面は III族極性面となっている。結晶成
長の条件によっては微小な極性反転ドメインが形成され
ることもあるが、III 族極性面が支配的である限り大き
な影響はない。なお、V族極性で作成した場合は、以下
の説明で電流,電界の向きを逆にすればよい。窒化物半
導体層にはこの他にも転位等の欠陥が多数存在するが、
本発明のようにサブバンド間遷移を利用したデバイスで
は、バンド間遷移を利用した発光デバイスにおける非発
光再結合センターのような致命的な影響はもたらさな
い。以下の説明では、量子井戸の大部分は±1モノレー
ヤ程度の揺らぎで作製されていることを前提とするが、
発明の作用・効果に本質的な影響をもたらさない上記の
ような結晶欠陥の存在は無視することとする。
【0050】上部電極7には下部電極8に対して負の電
圧が印加され、その結果、上部電極7から光導波路5の
上部窒化物半導体層4,窒化物半導体積層構造3,下部
窒化物半導体層2を通って、下部電極8へと電子が流れ
る。
【0051】光導波路5に入射される光9は、波長1.
45μm帯の信号光である。光導波路5の他方の端から
は、出射光10が取り出される。下部窒化物半導体層2
はスラブ光導波路となっており、図1の右側面から波長
0.98μmの低雑音の励起光11が入射され、光導波
路5に導かれる。いずれの光も、サブバンド間遷移が許
容される基板(井戸層)に垂直な方向に偏波している。
【0052】図2は、この半導体光増幅器20の断面層
構造を模式的に示す図である。下部窒化物半導体層2
は、厚さ0.15μmのアンドープAlN層22、厚さ
0.3μmの第1のn型GaN層23、および厚さ0.
05μmの第1のAlGaN組成傾斜層24からなる。
第1のAlGaN組成傾斜層24は、下から上に向かっ
てGaNに近い組成からAlNに近い組成へとステップ
状に変化するように形成されている。第1のAlGaN
組成傾斜層24の上には、窒化物半導体積層構造3と上
部窒化物半導体層4がメサ状に積層されており、このメ
サ構造によりリッジ型の光導波路5が規定されている。
光導波路5のメサ幅は1.5μmである。上部窒化物半
導体層4は、下から上に向かって組成がAlNに近い組
成からGaNに近い組成へとステップ状に変化する厚さ
0.05μmの第2のAlGaN組成傾斜層25、及び
厚さ0.1μmの第2のn型GaN層26から構成され
る。n型GaN層23,26には、Siが1×1020
-3程度ドープされている。
【0053】半導体積層構造3は、実質的に同じ構造
(結晶成長に起因する多少の変動は許容するものとす
る)の結合量子井戸構造31が30周期積層されてな
る。図3は、この結合量子井戸構造31の三周期分の伝
導帯バンド構造を説明する図である。III 族極性では、
左側が表面側、右側が基板側である。なお、V族極性の
場合は、逆になる。この結合量子井戸構造31は、二つ
の第1のアンドープAlN障壁層32,32Rの間に形
成された、厚さ約0.75nmのアンドープAl0.65
0.35N井戸中間層33、厚さ約0.75nmの第1の
n型GaN井戸層34、厚さ約1nmの第2のアンドー
プAlN障壁層35、及び厚さ約1nmの第2のn型G
aN井戸層36からなる。第1のアンドープAlN障壁
層32の厚さは1.8nmで、一周期の厚さは5.3n
mである。n型GaN井戸層34,36には、Siが5
×1019cm-3程度ドープされている。
【0054】左側の第1のアンドープAlN障壁層3
2、アンドープAl0.65Ga0.35N井戸中間層33、第
1のn型GaN井戸層34、及び第2のアンドープAl
N障壁層35からなる第1の量子井戸37は、光増幅領
域として働く。第2のアンドープAlN障壁層35、第
2のn型GaN井戸層36、及び右側の第1のアンドー
プAlN障壁層32Rからなる第2の量子井戸38は、
電子励起領域として働く。第1のアンドープAlN障壁
層32Rは、左側の結合量子井戸構造31から右側の隣
接する結合量子井戸構造31Rへ電子を注入するための
電子注入領域としても機能する。
【0055】主面が(0001)面のウルツ鉱型窒化物
半導体ヘテロ構造には、ピエゾ電気効果と自発分極によ
り大きな電界が生じる。この電界は、AlNとGaNで
逆向きである。さらに、上部電極7と下部電極8の間に
外部から電圧が印加され、第1の量子井戸37と第2の
量子井戸38のそれぞれの第1サブバンドE2 ,E1
適度に結合するように調整されているものとする。この
とき、AlN障壁層32,35、Al0.65Ga0.35N井
戸中間層33、及びn型GaN井戸層34,36にかか
っている電界は、それぞれ約−4.85MV/cm,約
−1MV/cm,約6.15MV/cmとなっている。
【0056】全体としては、図3の左側の結合量子井戸
ほど電子に対するポテンシャルが高く、電子は図の左側
から右側へ向かって流れる。結合量子井戸31の一周期
当たりの電圧降下は約0.35Vで、30周期で約10
Vの電圧降下になる。
【0057】図3には、この結合量子井戸構造31に形
成されるサブバンドE1 ,E2 ,E 3 ,E4 と、そのそ
れぞれの包絡線関数の二乗の形状を模式的に示してあ
る。サブバンドE1 とサブバンドE2 は強く結合してお
り、いずれも二つの量子井戸37,38にほぼ等確率で
電子が分布する基底準位である(以後、E1 とE2 をま
とめて、第1の量子井戸と第2の量子井戸の共通の「基
底準位」と考える。)。サブバンドE1 とE2 のエネル
ギー差は約30meV(場所による不均一性で多少の変
動はある)であり、その量子ビートの周期は約140f
sである。サブバンドE3 は、主として第1の量子井戸
に束縛された励起準位(以後、「第1の量子井戸の励起
準位」と呼ぶ。)である。サブバンドE4 は、主として
第2の量子井戸に弱く束縛された励起準位(以後、「第
2の量子井戸の励起準位」と呼ぶ。)で、右側の第1の
アンドープAlN障壁層32の三次元量子状態とトンネ
リングにより結合している。
【0058】基底準位E1 ,E2 と第1の量子井戸の励
起準位E3 との間の遷移波長は約1.1μm、基底準位
1 ,E2 と第2の量子井戸の励起準位E4 との間の遷
移波長は約1.41μmである。(ヘテロ界面の組成変
化が急峻とした仮定した場合の遷移波長の計算値は、そ
れぞれ約1μmと約1.3μmであるが、井戸層厚が薄
い量子井戸では界面の組成ゆらぎの影響で計算値より長
めの波長になる傾向がある。)各サブバンド間の遷移エ
ネルギーは、膜厚の揺らぎ等により場所により若干の変
動があり、これは吸収スペクトル幅を広げる原因とな
る。
【0059】本実施形態では、第2のn型GaN層26
から半導体積層構造3の最初(図1、図2では上端、図
3では左端に相当)の結合量子井戸層31への電子の注
入は、第2のAlGaN組成傾斜層25の組成傾斜と電
界によるポテンシャルの傾斜により実現されている。も
ちろん、第2のAlGaN組成傾斜層25を用いる代わ
りに、その基底サブバンド(E1 に相当)が隣接するn
型GaN層26と結合した第2の量子井戸と類似構造の
量子井戸を設けて、励起光により基底サブバンドの電子
をその励起サブバンド(第2の量子井戸のE4 に相当)
に励起することによっても、電子の注入が可能である。
【0060】図3右端の結合量子井戸構造の励起準位E
4 はn型GaN層23より電子に対するポテンシャルが
高いので、電子注入の観点からは第1のAlGaN組成
傾斜層24は不要である。本実施形態では、第1のAl
GaN組成傾斜層24は、励起光を導波するスラブ光導
波路のクラッドとして作用する。
【0061】電界により左側の第1のアンドープAlN
障壁層32から第1の量子井戸37に注入された電子
は、励起準位E3 に捕獲される。励起準位E3 から基底
準位E 1 及びE2 へのLOフォノン放出を伴う緩和時間
は約500fsである。E1 とE2 の包絡線関数の二乗
はほぼおなじ形状なので、E1 とE2 にほぼ等確率で緩
和する。E1 とE2 の干渉で電子は二つの量子井戸を行
ったり来たりする、いわゆる量子ビートを生じる。E1
とE2 のエネルギー差ΔEが30meVのときの量子ビ
ートの周期(h/ΔE、但しhはプランクの定数)は約
140fsなので、第1の量子井戸37で緩和した電子
は、70fs後には殆ど第2の量子井戸38に移動して
いる。
【0062】この電子は、スラブ光導波路を介して光導
波路5へ導入された励起光により、直ちに第2の量子井
戸の励起準位E4 に励起される。励起準位E4 は右側の
第1のアンドープAlN障壁層32Rの三次元量子状態
と結合している。励起準位E 4 に対する実効的な障壁は
低いので、励起された電子は100fs位の間に第1の
アンドープAlN障壁層32Rに逃げ出し、強い電界に
より右側の隣接する結合量子井戸31Rの第1の量子井
戸37Rの励起準位E3 に注入される。
【0063】励起準位E4 に励起された電子の一部は第
1の量子井戸37の励起準位E3 に緩和する。また、第
1のアンドープAlN障壁層32から注入された電子の
一部は直接第2の量子井戸38の励起準位E4 に捕獲さ
れる。しかし、半導体積層構造3のトータル厚さ(30
周期で159nm)が導波モード・サイズ(〜μm)に
比べて十分薄いので、結合量子井戸構造毎の光強度の差
異は小さく、それぞれの結合量子井戸構造31における
電子の動きはバランスしている。従って、全体として電
子は左側の結合量子井戸構造から右側の結合量子井戸構
造へと流れ、特定の結合量子井戸構造に電子が蓄積した
り空乏化したりすることはない。
【0064】十分に強い励起光が入射している場合、基
底準位E1 ,E2 から励起準位E4に電子が励起される
レートと、右側の第1の量子井戸37Rの励起準位E3
に電子が注入されるレートは、いずれも励起準位E3か
ら基底準位E1 ,E2 へ電子が緩和するレートより大き
い。従って、励起準位E3 の電子密度の方が基底準位E
1 ,E2 の電子密度より大きい反転分布の状態が作り出
される。この結果、第1の量子井戸(光増幅領域)37
では波長1.4μm付近に利得を生じる。第2の量子井
戸(電子励起領域)38の光吸収は、励起光により部分
的に吸収が飽和した状態になる。
【0065】図4は、光増幅領域37の利得スペクト
ル、励起光が入射した際の電子励起領域38の吸収スペ
クトル、ならびに入射光9,11の波長配置の関係を説
明する図である。励起光は電子励起領域38で吸収され
るが、光増幅領域37では吸収されない。信号光は、電
子励起領域38の吸収を殆ど受けず、光増幅領域37の
利得により増幅される。励起光パワーと注入電流が十分
に大きく、入力信号光のレベルが十分に低ければ、利得
飽和は生じない。サブバンド間遷移では自発発光確率が
極めて低いので、ASE雑音の発生は無視でき、極めて
低雑音の光増幅が実現される。
【0066】光励起を利用して、各結合量子井戸31に
おける電圧降下を小さく抑えているので、印加電圧を比
較的小さく抑えることができる。(仮に光励起を行わな
い量子カスケード・レーザと類似の構造でこのような機
能を実現することができたとしても、所要電圧は3倍以
上になってしまう。)量子カスケード・レーザ類似構造
と比べて一周期の厚さを薄くできるので、導波モードの
光電界とのオーバーラップも大きく、厚さ方向の光強度
の不均一の影響も小さく、効率的である。
【0067】本実施形態の半導体光増幅器は、様々な変
形が可能である。例えば、信号光パワーが増大している
出射端側で利得飽和を生じさせないために、出射端側で
励起光パワーが大きくなるように調整しておいてもよ
い。或いは、側面からの入射11に加えて出射端側から
も励起光を注入するという使い方もできる。信号光がパ
ルス光の場合は、励起光を信号光パルスに同期したパル
ス光として、励起光の平均パワーを低減することができ
る。この場合、光導波路5を伝搬するパルス信号光を完
全にカバーするタイミングで励起光パルスを入射する必
要がある。井戸幅等の設計を変更すれば、励起光波長や
信号光波長を変更することも可能である。
【0068】(第2の実施形態)第1の実施形態の半導
体光増幅器は、そのまま非線形半導体光デバイス(利得
飽和形光ゲート・スイッチ)として用いることができ
る。入力光を除けば、各部の構造,バンド構造,機能等
は第1の実施形態の半導体光増幅器と同じなので、その
構成の説明は省略する。
【0069】第2の実施形態における非線形半導体光デ
バイスの光導波路5に入射される光9は、波長1.48
μm,パルス幅約200fs,繰り返し160Gb/s
の制御光パルスと、波長1.3μm,パルス幅約100
fs,繰り返し160Gb/sの信号光パルスである。
下部窒化物半導体層2はスラブ光導波路となっており、
図1の右側面から波長0.98μm,幅約3ps,繰り
返し160GHzの励起光パルス11が入射され、光導
波路5に導かれる。いずれの光も、サブバンド間遷移が
許容される基板(井戸層)に垂直な方向に偏波してい
る。
【0070】光導波路5に制御光パルスが入力されず、
十分に強い励起光強度が入射している場合、基底準位E
1 ,E2 から励起準位E4 に電子が励起されるレート
と、右側の第1の量子井戸37Rの励起準位E3 に電子
が注入されるレートは、いずれも励起準位E3 から基底
準位E1 ,E2 へ電子が緩和するレートより大きい。従
って、励起準位E3 の電子密度の方が基底準位E1 ,E
2 の電子密度より大きい反転分布の状態が作り出され
る。この結果、第1の量子井戸(光増幅領域)37では
波長1.4μm付近に利得を生じる。第2の量子井戸
(電子励起領域)38の光吸収は、励起光により部分的
に吸収が飽和した状態になる。
【0071】この非線形光半導体デバイスは160Gb
/sで動作する。制御光パルスは、信号光パルスに重な
るようなタイミングで入射される。励起光パルスは、光
導波路5のどの位置においても制御光パルスに重なるよ
うなタイミングで入射される。励起光のパルス幅は3p
sであり、長さ400μmの光導波路5を信号光パルス
と制御光パルスが伝搬する時間(約2.8ps)より広
い。制御光パルスと信号光パルスは変調されているが、
励起光パルスは6.25ps毎に周期的に入射される。
【0072】図5は、光増幅領域37の利得スペクト
ル、励起光が入射した際の電子励起領域38の吸収スペ
クトル、ならびに入射光9,11の波長配置の関係を説
明する図である。励起光は電子励起領域38で吸収され
るが、光増幅領域37では吸収されない。制御光パルス
は、電子励起領域38の吸収を殆ど受けない。入射端近
傍で制御光パルスのフロント・エッジが増幅されるが、
利得飽和のため制御光パルスの後ろ側は、殆ど増幅され
ないか、減衰する。従って、光導波路5を伝搬するにつ
れて制御光のパルス幅は狭まり、スペクトルも広がる。
しかし、どの位置においても制御光パルスのフロント・
エッジは増幅されるので、制御光パルスは全体としては
増幅を受けて光導波路5の奥の方まで伝播する。また、
それに続く利得飽和の影響は、隣接する左側の結合量子
井戸構造からE3 に電子が供給される時定数と量子ビー
トと励起光により第1の量子井戸の基底準位から電子が
排出される時定数のオーダー(いずれも100fs前
後)だけ継続する。従って、光導波路5全体で信号光パ
ルスに対する利得を飽和させることができる。
【0073】制御光パルスがない場合、信号光パルスは
光増幅領域37の利得と電子励起領域38の損失の両方
の影響を受けるが、前者の方が大きいので増幅されて出
射する。増幅率は、注入電流と励起光の強度に強く依存
する。高効率の増幅を実現するためには、注入電流と励
起光のレベルをうまくバランスさせる必要がある。但
し、バンド間遷移を利用した光増幅器と異なり、サブバ
ンド間遷移では自発発光が殆ど起こらないので、利得ス
ペクトル帯域内のASE雑音は無視できる。
【0074】一方、制御光パルスが入射された場合、E
3 に溜まっていた電子が基底準位E 1 ,E2 に落ちるこ
とで光増幅が行われるので、光増幅領域37の利得は飽
和する。制御光パルスが強い場合は、瞬間的には損失側
に振り込まれるが、平均的には利得の小さな状態にな
る。従って、光増幅領域37のトランジェントな吸収や
電子励起領域38の吸収により信号光パルスは光導波路
5を伝搬する間に吸収され、光導波路5から出力されな
い。
【0075】本実施形態の非線形光半導体デバイスによ
れば、制御光パルスは少なくともフロント・エッジが増
幅されるので、可飽和吸収を用いた光ゲートと比べて一
桁以上小さいパルス・エネルギー(<1pJ)でスイッ
チングが可能になる(符合は反転するので、インバータ
動作となる。)。制御光パルスがない場合、信号光パル
スは入力より増幅されて出力され、しかもASE雑音の
付加がない。(制御光のスペクトルが広がるので、制御
光パルスのクロストークを避けるために、制御光と信号
光の波長はある程度離しておく必要がある。)信号光パ
ルスは制御光の有無に応じて利得または損失を受けるの
で、デバイス長が短くても消光比を大きくとれる。ま
た、時定数が100fsオーダーの高速現象のみ利用し
ているので、高速性も損なわれない。
【0076】図6は、側面から均一に励起光を注入する
ために0.98μm帯の歪InGaAsパルス光源50
を集積化した構成の例である。このパルス光源50は、
モード同期レーザ51とテーパ型光増幅器52を集積化
したものである。モード同期レーザ51は、利得領域5
3,可飽和吸収領域54,チューニング領域55等から
構成される。それぞれの領域には電極56が形成され、
裏面には共通電極が形成されている。後ろ側の端面から
サブハーモニック・シンクロナス・モード同期のための
同期光を入射することができるようになっており、制御
光パルスや信号光パルスに同期した励起光パルスを出力
することができる。
【0077】この図の例ではパルス光源50は光導波路
5と垂直に配置されているが、光導波路5におけるパル
ス伝播遅延を考慮して、光導波路5の入射端側ほど励起
光パルスが早く到着するように傾斜させて配置させるこ
とも可能である。また、モード同期レーザ51と光増幅
器52の間に光分岐部を設け、分岐ごとに遅延量の異な
る光遅延導波路と光増幅器を設け、複数の光増幅器から
光導波路5の入射端側ほど早く励起光パルスが出射する
ように構成することもできる。
【0078】本実施例は、そのほかにも発明の趣旨を逸
脱しない範囲で様々な変形、応用が可能である。
【0079】(第3の実施形態)図7は、本発明の第3
の実施形態に係わる、非線形光半導体デバイス74を用
いたマッハツェンダ干渉計型超高速光分岐スイッチの主
な構成を示す模式図である。ここに用いられている非線
形光半導体デバイス74の構成は、前記図1、図2に示
した第1の実施形態の半導体光増幅器20の構成と同様
なので、図を用いた詳細な説明は省略する。但し、側面
からの励起光の注入はない。層構造は若干異なるが、そ
の詳細は後で説明する。
【0080】このマッハツェンダ干渉計型光スイッチ
は、石英光導波路61上に受動光導波路62により接続
された光素子が集積化されてなる。光入出力ポートとし
て、信号光入力ポート63、励起光・制御光入力ポート
64、第1の信号光出力ポート65、第2の信号光出力
ポート66、励起光・制御光出力ポート67の五つがあ
る。信号光入力ポート63からは、波長1.35μm,
パルス幅100fs,繰り返し1Tb/sの信号光パル
スが入力される。制御光入力ポート64からは、波長
1.55μm,パルス幅200fs,繰り返し1Tb/
sの制御光パルスと、波長1.2μm,パルス幅500
fs,繰り返し1THzの励起光パルスとが、ほぼ同時
に入射される。制御光パルスは信号光パルスに重なるよ
うなタイミングで入射するように設定されている。励起
光パルスは、制御光パルスと信号光パルスに重なるよ
う、かつ制御光パルスより早いタイミングで入射され
る。制御光パルスと信号光パルスは変調されている。励
起光パルスは周期的なクロック・パルスである。
【0081】信号光入力ポート63から入力された信号
光パルスは、光カプラ68により所定の分岐比で第1の
分岐71と第2の分岐72に分割される。第1の分岐7
1に分岐した信号光パルスは、波長カプラ73により制
御光入力ポート64から入力された制御光パルスと合波
され、非線形光半導体デバイス74に導かれる。
【0082】非線形光半導体デバイス74は、所定のパ
ワーの制御光パルスが入力されたときに、信号光パルス
の透過率を殆ど変化させずに位相がπシフトするように
設計されている。その動作については後述する。
【0083】非線形光半導体デバイス74を出力された
信号光パルスは、波長カプラ75により制御光パルスや
励起光パルスと分離され(励起光パルスは殆ど透過しな
い)、1:1光カプラ69において第2の分岐72を通
ってきた参照光パルスと干渉させられる。二つの分岐7
1,72の光路長は、信号光パルスの伝搬遅延が同じに
なるように設定されている。入力側の光カプラ68の分
岐比は、1:1光カプラ69において二つのパルス強度
が概ねバランスするように設定されているが、第2の分
岐72に設けられた光強度変調器76により微調整がで
きるようになっている。第2の分岐72に設けられた光
位相変調器77は、制御光パルスが入射されていない状
態で信号光パルスが第1の信号光出力ポートのみから出
力されるように調整されており、制御光パルスにより信
号光パルスがπシフトを受けた場合は第2の信号光出力
ポート66から出力される。
【0084】波長カプラ75で分離された制御光パルス
は制御光出力ポート67から出力される。分離しきれず
に信号光出力ポートに出力される制御光波長の漏れ成分
は、波長フィルタにより除くことが可能である。
【0085】非線形光半導体デバイス74の非線形光半
導体層(第1の実施形態の半導体積層構造3に相当)
は、実質的に同じ構造の結合量子井戸構造81が10周
期積層されてなる。図8は、この結合量子井戸構造81
の三周期分の伝導帯バンド構造を説明する図である。こ
の結合量子井戸構造81は、二つの第1のアンドープA
lN障壁層82,82Rの間に形成された、厚さ約0.
75nmのアンドープAl0.65Ga0.35N井戸中間層8
3、厚さ約0.75nmの第1のn型GaN井戸層8
4、厚さ約0.75nmの第2のアンドープAlN障壁
層85、及び厚さ約1nmの第2のn型GaN井戸層8
6からなる。第1のアンドープAlN障壁層82の厚さ
は1.25nmである。n型GaN井戸層84,86に
は、Siが5×1019cm-3程度ドープされている。一
周期の厚さは4.5nmで、10周期の合計厚は45n
mである。
【0086】左側の第1のアンドープAlN障壁層から
第2のアンドープAlN障壁層までの層82,83,8
4,85が光増幅領域として働く第1の量子井戸87を
構成しており、第2のアンドープAlN障壁層から右側
の第1のアンドープAlN障壁層までの層85,86,
82Rが電子励起領域として働く第2の量子井戸88を
構成している。第1のアンドープAlN障壁層32は、
電子注入領域としても機能する。AlN障壁層82,8
5、Al0.65Ga0.35N井戸中間層83、及びn型Ga
N井戸層84,86にかかっている電界は、それぞれ約
−5.9MV/cm,約−2.05MV/cm,約5.
1MV/cmである。結合量子井戸81一周期当たりの
電圧降下は約0.44Vで、10周期で約4.4Vの電
圧降下になる。
【0087】本実施形態が第1の実施形態と異なる点
は、第1の量子井戸87と第2の量子井戸88のそれぞ
れの基底準位E2 ,E1 のエネルギー差ΔEが89me
Vと、LOフォノンのエネルギーに共鳴するように設定
されている点である。サブバンドE2 とE3 は主に第1
の量子井戸87に束縛されており、サブバンドE1 とE
4 は主に第2の量子井戸88に束縛されている。第1の
実施形態の結合量子井戸構造31と比べて第2のAlN
障壁層85が薄いので、基底準位E1 ,E2 、励起準位
3 ,E4 のいずれも、もう一方の量子井戸にもかなり
の存在確率を有している。
【0088】励起準位E3 から基底準位E2 へのLOフ
ォノン放出を伴う緩和時間は約500fsである。第1
の量子井戸87の励起準位E3 から基底準位E2 に緩
和、或いは発光により遷移した電子は、10fs程度の
時間でLOフォノンを1個放出して第2の量子井戸88
の基底準位E1 に緩和する。量子ビートを利用した第1
の実施形態の結合量子井戸構造31では、励起光により
4 に励起しきれなかった電子がさらに70fs後に第
1の量子井戸37に戻ってしまう恐れもあったが、本実
施形態の結合量子井戸構造81では、このような恐れも
ない。89meVのエネルギー差は熱エネルギーより大
きいので、熱的に電子がE2 に戻る確率も低い。従っ
て、第1の実施形態の結合量子井戸構造31と比べて、
2 からの電子の排出が高速化され、E2 ,E3 間の反
転分布がさらに形成されやすくなる。その他の点では、
結合量子井戸構造81の作用は概ね第1の実施形態の結
合量子井戸構造31と同様なので、説明を省略する。
【0089】励起光パルスが入射する前は、電子は大部
分がE1に溜まっており、電流は殆ど流れない。励起光
パルスが入射されると、E1 に溜まっていた電子の半数
以上はE4 を介してE3 に移動する。励起光パルスを制
御光パルスより少し早く入射することにより、制御光パ
ルスが到着する前に反転分布が形成される。本実施例で
は、励起光パルスが制御光パルスや信号光パルスと同時
に伝搬するので、励起光のパルス幅を短くできる。この
結果、励起光を側面から入射した場合より、繰り返し動
作速度を上げることができる。但し、光導波路全体に励
起光を伝搬させるため、強い励起が必要である。
【0090】図9は、光増幅領域87で十分な利得が得
られるレベルの電流が注入され、励起光パルスが入射さ
れた直後の、光増幅領域87の利得、電子励起領域88
の吸収、及び入射光の波長配置の関係を説明する図であ
る。光増幅領域87の利得ピーク波長は1.45μm、
電子励起領域88の吸収ピーク波長は1.25μmであ
る。第1の実施形態と比べてE4 の閉じ込めが弱いた
め、電子励起領域88の吸収スペクトル幅が、第1の実
施形態の場合(図4、図5)と比べて広くなっている。
制御光パルスがない場合、信号光パルスは光増幅領域8
7の利得と電子励起領域88の損失がほぼバランスして
いるので、入力とほぼ同じパワーで出力される。電子励
起領域88の励起準位は閉じ込めが弱いので、スペクト
ルも広くなっている。このため、制御光パルスが入射さ
れると、光増幅領域87の利得飽和と電子励起領域88
の吸収飽和が同時に生じる。その結果、信号光パルスに
対する利得も損失も小さくなり、やはり入力とほぼ同じ
パワーで出力される。制御光波長には正味の利得がある
ので、サブバンド間吸収を用いた従来の可飽和吸収光ゲ
ートと比べて小さいパルス・エネルギーでスイッチング
を行うことができる。
【0091】図10は、励起光が入射された場合の屈折
率変化の波長依存性を説明する図である。制御光パルス
が入射されると、光増幅領域においても電子励起領域に
おいても信号光波長で屈折率が減少するので、大きな位
相シフトが得られる。以上の結果、制御光パルスの入射
により、信号光パルスの強度を大きく変化させずに位相
をπシフトできるので、前述の図6の干渉計型の構成に
おいて、信号光出力ポートの高速かつ高消光比でスイッ
チングできる。もちろん、単独で光制御型の光位相変調
器として用いることもできる。
【0092】本発明の第3の実施形態の非線形光半導体
デバイスは、様々な変形,応用が可能である。例えば、
図11は、図8における中間層83を第3のGaN井戸
層89で置き換えた構造である。同じ機能を有する部分
には同じ番号を付した。第1の井戸層84と第3の井戸
層89は第2の障壁層85よりも薄い第3の障壁層85
bを介して強く結合しており、第1の井戸層84と第3
の井戸層89と第3の障壁層85bからなる結合量子井
戸構造が第1の量子井戸(光増幅領域)として機能す
る。図11には各サブバンドの包絡線関数の二乗もプロ
ットしたが、図8の場合とほぼ同じであり、全く同様に
機能する。この構造では、中間組成を用いないので、結
晶成長が容易になる。
【0093】また、光増幅領域を単一量子井戸ではな
く、超格子としてもよい。この場合、これまでの説明中
のE2 ,E3 をサブバンドのレベルではなくエネルギー
に幅を持ったミニバンドのレベルと読みかえればよい。
同様に、電子励起領域も超格子で構成してもよい。この
場合も同様に、E1 ,E4 をミニバンドのレベルと読み
かえればよい。或いは、電子励起領域を複数の量子井戸
で構成してもよい。
【0094】図12は、二個の量子井戸が結合した電子
励起領域を有する変形例の、単位結合量子井戸構造90
の2周期分の伝導帯バンド構造を模式的に示した図であ
る。この単位結合量子井戸構造90は、電子注入領域9
1,光増幅領域92,及び電子励起領域93からなる。
光増幅領域92は、上流側に2段の組成中間層を有する
第1の量子井戸94からなる。電子励起領域93は、ほ
ぼ同じ構造の第2の量子井戸95と第3の量子井戸96
からなる。
【0095】図12では、サブバンドのエネルギー・レ
ベルは、電子の存在確率が高い部分のみ太線で表してあ
る。第1の量子井戸94の基底準位E2 と第2の量子井
戸95の基底準位E’1のエネルギー差、第2の量子井
戸95の基底準位E’1と第3の量子井戸96の基底準
位E1 のエネルギー差、及び第2の量子井戸95の励起
準位E’4と第3の量子井戸96の励起準位E4 のエネ
ルギー差は、いずれもほぼLOフォノンのエネルギーに
等しくなるように設定されている。従って、発光ないし
緩和によりE3 からE’1に落ちた電子は、短い時間の
間に緩和と励起光の吸収によりE1 ないしE’4、及び
4 と電子注入領域91を経て、下流側の光増幅領域9
2の励起準位E3 に輸送される。この構成では、E2
らの電子の排出が図8の場合よりさらに容易になる。ま
た、第1の量子井戸の組成中間層も2段になっているた
め、E3 への電子の注入効率も高くできる。
【0096】図13は、励起光,制御光,信号光の波長
配置を変えて非反転の可飽和吸収ゲートに応用した例で
ある。励起光パルスは光増幅領域87による増幅も受け
るので、光導波路の奥の方までレベルを殆ど変えずに伝
播することができる。励起光パルスのため、光増幅領域
87の利得も電子励起領域88の吸収も部分的に飽和し
た状態になっている。この状態にさらに強くてパルス幅
の狭い制御光パルスが入射すると、光増幅領域87の利
得も電子励起領域88の吸収も完全に飽和する。信号光
パルスは電子励起領域88の吸収帯域内にあるが、光増
幅領域87の利得帯域から外れた波長にある。従って、
制御光パルスがなければ吸収され、制御光パルスにより
吸収が飽和すれば透過する。
【0097】このケースでは、非線形光学動作は主とし
て従来型の吸収飽和により実現されており、光増幅領域
は制御光パルスの損失補償を主目的として使われてい
る。制御光パルスは光増幅領域87の利得と電子励起領
域88の吸収の平衡により、あまりパルス・エネルギー
や波形を変化させずに光導波路を伝搬することができ
る。この効果に加え、励起光パルスによりある程度吸収
飽和が起こりかけていることも相俟って、スイッチング
に必要な制御光パルス・エネルギーを低く抑えることが
できる。また、光導波路が長くても制御光パルスを伝搬
させることができるので、信号光出力の消光比を高める
ことができる。
【0098】或いは、信号光パルスの波長を正味の吸収
が小さな領域に設定しておけば、位相変調器として用い
ることもできる。この場合、制御光が長い距離減衰せず
に伝搬させられるので、比較的小さな制御光エネルギー
で大きな位相シフトを得ることができる。即ち、変調効
率が向上する。励起光パルスは一種のバイアスとして働
くので、非変調時の位相バイアスの微調整にも利用でき
る。
【0099】本発明は、以上述べた3つの実施形態やそ
の変形例以外にも、発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々
な変形、応用が可能である。例えば、第1、第2の実施
形態の層構造を第3の実施形態のような位相変調器、干
渉計型光分岐スイッチに応用したり、第3の実施例のよ
うな層構造を第1の実施形態の半導体光増幅器や第2の
実施形態の利得飽和形光ゲート・スイッチに応用したり
することもできる。また、励起光と制御光を入力とする
光演算素子として用いてもよい。或いは、励起光や制御
光や信号光の波長数を複数にして、さらに複雑な動作を
実現させることも可能である。
【0100】これらの光スイッチを波長変換素子として
利用することも可能である。例えば、第2の実施形態に
おいて、信号光パルスをクロック・パルス、制御光パル
スを入力信号とすれば、入力信号のパターンが波長の異
なるクロック・パルスに転写される(符号は反転す
る)。
【0101】これ以外にも、他の素子と組み合わせた
り、集積化したりして、さまざまな機能を実現すること
ができる。材料系も、II−VI族半導体、InGaAs/
AlAsSb系などが利用できる。
【0102】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、極
めて低雑音で飽和レベルの高い半導体光増幅器が実現で
きる。また、サブバンド間吸収を用いた従来の可飽和吸
収光ゲートと比べて小さいパルス・エネルギーで、高効
率かつ高速に、信号光の強度,位相,光出力先等をスイ
ッチングすることが可能になる。そして、可飽和吸収ゲ
ートや光分岐スイッチとして用いた場合は、従来技術よ
り消光比も改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係わる半導体光増幅器の構造
を模式的に示す斜視図。
【図2】第1の実施形態に係わる半導体光増幅器の層構
造を模式的に示す断面図。
【図3】第1の実施形態に係わる半導体光増幅器の半導
体積層構造を構成する結合量子井戸構造三周期分のバン
ド図。
【図4】第1の実施形態に係わる半導体光増幅器の波長
配置を説明する図。
【図5】第2の実施形態に係わる非線形光半導体デバイ
スの波長配置を説明する図。
【図6】第2の実施形態に係わる非線形光半導体デバイ
スを励起光光源と集積化した構成例を模式的に示す図。
【図7】第3の実施形態に係わる非線形光半導体デバイ
スを用いた超高速光分岐スイッチの構成を模式的に示す
図。
【図8】第3の実施形態に係わる非線形光半導体デバイ
スの非線形光半導体層を構成する結合量子井戸構造三周
期分のバンド図。
【図9】第3の実施形態に係わる非線形光半導体デバイ
スの波長配置を説明する図。
【図10】第3の実施形態に係わる非線形光半導体デバ
イスの制御光による屈折率変化を説明する図。
【図11】第3の実施形態に係わる非線形光半導体デバ
イスの光増幅領域の変形例を説明する伝導帯バンド構造
図。
【図12】第3の実施形態に係わる非線形光半導体デバ
イスの電子注入領域の変形例を説明する伝導帯バンド構
造図。
【図13】本発明の波長配置の変形例を説明する図。
【図14】従来の技術の量子カスケード・レーザの活性
層を構成する単位構造2周期分の伝導帯バンド構造を模
式的に示す図。
【符号の説明】
1…サファイア基板 2,4…窒化物半導体層 3…非線形光半導体層 5…メサ光導波路 6…ポリイミド 7,8…電極 9…入射光 10…出射光 11…励起光 20…半導体光増幅器/非線形光半導体デバイス(利得
飽和型光ゲート・スイッチ) 22…アンドープAlN層 23…第1のn型GaN層 24…第1のAlGaN組成傾斜層 25…第2のAlGaN組成傾斜層 26…第2のn型GaN層 31,81…半導体積層構造の一積層周期の結合量子井
戸構造 32,82…第1のアンドープAlN障壁層(電子注入
領域) 33,83…アンドープAlGaN井戸中間層 34,84…第1のn型GaN井戸層 35,85…第2のアンドープAlN障壁層 36,86…第2のn型GaN井戸層 37,87…第1の量子井戸(光増幅領域) 38,88…第2の量子井戸(電子励起領域) 50…半導体光励起素子 51…モード同期レーザ 52…テーパ型半導体光増幅素子 53,54…利得領域 55…可飽和吸収領域 56…電極 57…同期光入力 61…石英光集積回路 62…受動光導波路 63…信号光入力ポート 64…制御光入力ポート 65…第1の信号光出力ポート 66…第2の信号光出力ポート 67…制御光出力ポート 68…光カプラ 69…1:1光カプラ 71…第1の分岐 72…第2の分岐 73,75…波長カプラ 74…第2の実施形態の非線形光半導体デバイス(光位
相変調素子) 76…光強度変調器 77…光位相変調器 89…第3のGaN井戸層 90…変形例の単位結合量子井戸構造 91…電子注入領域 92…光増幅領域 93…電子励起領域 94…第1の量子井戸 95…第2の量子井戸 96…第3の量子井戸 101…電子注入領域 102…活性領域 103…井戸層 104…障壁層 105…ミニバンド
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01S 5/50 610 H01S 5/50 630 630 G02B 6/12 H Fターム(参考) 2H047 KA04 NA08 QA02 RA08 TA05 TA11 2H079 AA08 AA13 AA14 BA01 CA05 CA09 DA16 EA03 EA04 EA05 EA07 HA15 2K002 AA02 AB05 AB23 AB25 AB30 BA02 BA03 CA13 DA06 DA07 DA08 DA12 GA10 HA16 HA30 5F073 AA13 AA45 AA71 AA74 AA89 AB12 BA03 BA08 BA09 CA02 CA07 CB05 EA27 EA29

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも二つのサブバンドを有する第1
    の量子井戸(光増幅領域)と、少なくとも二つのサブバ
    ンドを有しかつそのサブバンド間エネルギー差が前記第
    1の量子井戸のサブバンド間エネルギー差よりも大きな
    第2の量子井戸(電子励起領域)と、の少なくとも二つ
    の量子井戸が薄い障壁層により結合した単位結合量子井
    戸構造が、複数層周期的に積層されてなる半導体積層構
    造と、 この半導体積層構造を含む光導波構造と、 前記半導体積層構造に対しその積層方向に電圧を印加し
    て前記単位結合量子井戸構造の第1の量子井戸から第2
    の量子井戸に向かう方向にキャリアを流す手段と、 前記光導波構造の一端側から光を入射する手段と、 前記光導波構造の他端側から光を出射する手段と、 前記半導体積層構造に前記第2の量子井戸のサブバンド
    間吸収帯域内の励起光を注入する手段と、 を具備してなることを特徴とする半導体光機能デバイ
    ス。
  2. 【請求項2】前記光導波構造に入射する光は、前記第1
    の量子井戸のサブバンド間遷移帯域内の信号光であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の半導体光機能デバイス。
  3. 【請求項3】前記光導波構造に入射する光は、前記第1
    の量子井戸ないし第2の量子井戸のサブバンド間遷移帯
    域内の信号光と制御光であることを特徴とする請求項1
    記載の半導体光機能デバイス。
  4. 【請求項4】前記半導体積層構造は、窒化物半導体によ
    り構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいず
    れかに記載の半導体光機能デバイス。
  5. 【請求項5】前記第1の量子井戸と前記第2の量子井戸
    のサブバンド間遷移波長は、いずれも2μm以下である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導
    体光機能デバイス。
  6. 【請求項6】前記第1の量子井戸は、前記第2の量子井
    戸と反対側側にステップ状ないし連続的な組成傾斜領域
    を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記
    載の半導体光機能デバイス。
  7. 【請求項7】前記第1の量子井戸の前記第2の量子井戸
    とは反対側に、前記障壁層より薄い別の障壁層を介して
    第3の量子井戸が設けられていることを特徴とする請求
    項1〜3のいずれかに記載の半導体光機能デバイス。
  8. 【請求項8】前記励起光は、前記光導波構造の側面から
    導入されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに
    記載の半導体光機能デバイス。
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