JP2003193164A - Al−Si系合金の焼結体及び圧縮塑性加工成形体 - Google Patents

Al−Si系合金の焼結体及び圧縮塑性加工成形体

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JP2003193164A
JP2003193164A JP2001395614A JP2001395614A JP2003193164A JP 2003193164 A JP2003193164 A JP 2003193164A JP 2001395614 A JP2001395614 A JP 2001395614A JP 2001395614 A JP2001395614 A JP 2001395614A JP 2003193164 A JP2003193164 A JP 2003193164A
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Yasuaki Shiomi
泰章 塩見
Jun Yoshino
順 吉野
Setsuhisa Fujino
摂央 藤野
Eiji Nozu
栄治 野洲
Atsushi Kuroishi
農士 黒石
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Al−Si系合金粉末の放電プラズマ焼結体
(予備成形体)を圧縮塑性加工して形成される成形体につ
いて、高い疲労強度を具備させることであり、そのよう
な高疲労強度成形体が確実に得られる予備成形体を形成
する。 【解決手段】 粉末を加圧しながらパルス電圧を印加し
て得られるAl−Si系合金の焼結体及び該焼結体の圧
縮塑性加工成形体であって、Al及び/又はAlの過飽
和固溶体のマトリックスにAlと合金元素の金属間化合
物が分散し、粒界に結晶Siが晶出した組織を有してお
り、マトリックスの平均結晶粒径が2.0μm以下、結
晶Siの平均結晶粒径が0.1〜2.0μm、金属間化合
物の平均結晶粒径が0.5μm以下であり、酸素の含有
量は0.11重量%以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Al−Si系合金
の焼結体及び該焼結体の圧縮塑性加工成形体に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】Alは、比重がFeの約3分の1と小さ
く軽量であるため、例えば内燃機関のピストンをAlで
製作するとエネルギー効率面で非常に有利である。しか
し、Alを内燃機関用ピストンへ適用するには、耐摩耗
性、強度などの機械的性質が鉄系材料よりも劣る問題が
あった。Alと、Si、Fe、Mn、Ni等の元素を合
金化させることにより、機械的性質は向上するが、この
種Al合金を溶解・鋳造法で製造する場合は、固溶され
る元素の量が少なく限定されている。そこで、粉末冶金
法によるAl合金の開発が進められてきた。これは、A
lの他に各種合金元素を多量に添加した溶湯をガスアト
マイズ等の急冷噴霧処理に付して粉末を調製し、得られ
たAl合金粉末を熱間押出し法等で所望形状に成形加工
するものである。粉末冶金法によれば、溶解・鋳造法で
は困難であったSi、Fe、Mn、Ni等を多量に含有
するAl合金部材を製造することができるので、各種合
金元素の添加効果として、耐摩耗性及び強度にすぐれた
部品を製造することができる。
【0003】しかしながら、この粉末冶金法は、内燃機
関用ピストン等の構造部品の製造方法として広く普及す
るに至っていない。その主な理由として、多量の合金元
素を含有する粉末は硬質でしかも耐熱性を有することか
ら加工性が悪く、成形加工を高温(約500℃以上)及び
高加圧力(約200MPa以上)の条件下で行なわねばな
らないため、金型の耐用寿命が短く、複雑形状の部品を
精度良く成形することが困難であったことが挙げられ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらの問題点に鑑
み、出願人は、以前に、Al合金粉末を放電プラズマ焼
結することによって予備成形体を形成し、該予備成形体
に圧縮塑性加工を施すことによって成形体を形成する技
術を提案した(特開平11−209839)。しかしなが
ら、前記技術によって形成した成形体の一例である内燃
機関用部品は、近年、その使用条件の過酷化が進み、疲
労強度のさらなる向上が要請され、また、切欠き係数を
さらに小さくすることが望まれている。
【0005】本発明の目的は、高疲労強度及び低切欠き
係数を有するAl−Si系合金圧縮塑性加工成形体の予
備成形体として、放電プラズマ焼結によるAl−Si系
合金の焼結体を提供することである。本発明の他の目的
は、高疲労強度及び低切欠き係数を有するAl−Si系
合金の圧縮塑性加工成形体を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1記載のAl−Si系合金の焼結体は、粉末
を加圧しながらパルス電圧を印加することにより得ら
れ、Al及び/又はAlの過飽和固溶体のマトリックス
にAlと合金元素の金属間化合物が分散し、粒界に結晶
Siが晶出した組織を有しており、マトリックスの平均
結晶粒径が2.0μm以下、結晶Siの平均結晶粒径が
0.1〜2.0μm、金属間化合物の平均結晶粒径が0.
5μm以下であり、酸素の含有量が0.11重量%以下
であることを特徴としている。請求項2記載のAl−S
i系合金の焼結体は、粉末を加圧しながらパルス電圧を
印加することにより得られ、重量%にて、Fe、Cr、
Ni、Zr、Ti、Mn、V及びMoからなる群から選
択される少なくとも1種の遷移金属元素:1〜15%
(複数含む場合は合計量)、Si:10〜30%、Cu:
0.5〜5%、Mg:1〜5%、残部実質的にAlから
なり、酸素の含有量が0.11重量%以下であることを
特徴としている。請求項3記載のAl−Si系合金の焼
結体は、水素の含有量が0.01重量%以下であること
を特徴としている。
【0007】また、請求項4に記載されたAl−Si系
合金の圧縮塑性加工成形体は、Al及び/又はAlの過
飽和固溶体のマトリックスにAlと合金元素との金属間
化合物が分散し、粒界に結晶Siが晶出した組織を有し
ており、マトリックスの平均結晶粒径が2.0μm以
下、結晶Siの平均結晶粒径が0.1〜2.0μm、金属
間化合物の平均結晶粒径が0.5μm以下であって、酸
素の含有量が0.11重量%以下であることを特徴とし
ている。請求項5に記載されたAl−Si系合金の圧縮
塑性加工成形体は、重量%にて、Fe、Cr、Ni、Z
r、Ti、Mn、V及びMoからなる群から選択される
少なくとも1種の遷移金属元素:1〜15%(複数含む
場合は合計量)、Si:10〜30%、Cu:0.5〜5
%、Mg:1〜5%、残部実質的にAlからなり、酸素
の含有量が0.11重量%以下であることを特徴として
いる。請求項6記載のAl−Si系合金の圧縮塑性加工
成形体は、切欠き係数が3以下であることを特徴として
いる。
【0008】
【作用及び効果】請求項1及び2に記載されたAl−S
i系合金の焼結体は、酸素含有量が0.11重量%以下
と極めて少ない。焼結体に含まれる酸素の大部分は、焼
結時に粉体表面に付着した酸化物被膜が取り込まれたも
のであり、この酸化物被膜は、焼結体の粒子間の結合力
を低下させる。また、その後に圧縮塑性加工される成形
体は、切欠きに対する抵抗力が低下し、構造部品として
の信頼性の低下を招く。焼結体の酸素含有量は、換言す
れば、焼結体に取り込まれる酸化物被膜の量の指標でも
あり、本発明の焼結体は、有害な酸化物被膜が少ないこ
とを示している。請求項1に記載されたAl−Si系合
金の焼結体は、マトリックスの平均結晶粒径が2.0μ
m以下、結晶Siの平均結晶粒径が0.1〜2.0μm、
金属間化合物の平均結晶粒径が0.5μm以下と微細で
あるから超塑性特性を発現し、その後の塑性加工、特に
高速超塑性加工に適している。請求項3に記載されたA
l−Si系合金の焼結体は、水素含有量が0.01重量
%以下と極めて少ない。焼結体に含まれる水素の大部分
は、焼結時に粉体表面に付着した水酸化物被膜が取り込
まれたものであり、この水酸化物被膜は、焼結体の粒子
間の結合力を低下させ、その後に圧縮塑性加工された成
形体は、切欠きに対する抵抗力の低下を招く。焼結体の
水素含有量は、換言すれば、焼結体に取り込まれた水酸
化物被膜の量の指標でもあり、本発明の焼結体は、有害
な水酸化物被膜が少ないことを示している。
【0009】請求項4及び5に記載されたAl−Si系
合金の圧縮塑性加工成形体は、酸素含有量が0.11重
量%以下と極めて少ない。成形体に含まれる酸素の大部
分は、酸化物の形態で存在し、この酸化物は強度欠陥の
原因となる。本発明の圧縮塑性加工成形体は、酸素含有
量が少ないため、強度欠陥が極めて少なく、請求項6に
記載されるように切欠き係数が低く、切欠きに対して高
い抵抗力を有している。成形体は塑性加工によって形成
されるから、成形形状の制約が少なく、内燃機関のピス
トンの如き複雑形状の構造部品の対してもその制作は容
易である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のAl−Si系合金の焼結
体は、圧縮塑性加工成形体の予備成形体として供される
ものであって、放電プラズマ焼結法により、Al−Si
系合金の原料粉末を加圧しながらパルス電圧を印加する
ことにより得られ、好ましくはAl及び/又はAlの過
飽和固溶体のマトリックスにAlと合金元素の金属間化
合物が分散し、粒界に結晶Siが晶出した組織を有して
おり、酸素の含有量は0.11重量%以下であり、0.1
0重量%以下が好ましく、0.09重量%以下がさらに
好ましい。また、水素の含有量は好ましくは0.01重
量%以下であり、0.005重量%以下がより好まし
く、0.003重量%以下がさらに好ましい。本発明の
Al−Si系合金の圧縮塑性加工成形体は、前記のAl
−Si系合金焼結体を圧縮塑性加工することにより形成
され、成形体に含まれる酸素の含有量は0.11重量%
以下である。
【0011】<Al−Si系合金粉末(原料粉末)の調製
>Al−Si系合金の原料粉末は、マトリックスの平均
結晶粒径が1.5μm以下の超微細構造で、結晶Siの
平均結晶粒径が0.1μm以下、金属間化合物の平均結
晶粒径が0.1μm以下あり、粉体粒子径が50〜40
0μmのものが好適に用いられる。このように超微細結
晶構造の原料粉末を用いるのは、放電プラズマ焼結によ
り、マトリックスの平均結晶粒径が2.0μm以下、結
晶Siの平均結晶粒径が0.1〜2.0μm、金属間化合
物の平均結晶粒径が0.5μm以下の微細構造の焼結体
を得て、その後の圧縮塑性加工において超塑性特性を発
現させるためである。
【0012】Al−Si系合金の原料粉末に含まれる酸
素の含有量は、0.10重量%以下が好ましく、0.08
重量%以下がより好ましい。また、水素の含有量は0.
004重量%以下が好ましい。なお、粉末に含まれる酸
素及び水素は、粉体内部で合金化されているものもある
が量的には極く僅かであり、主に、酸化物(アルミナ等)
や水酸化物(水酸化アルミニウム等)の形態として粉体表
面に付着して存在している。Al−Si系合金粉末は、
主要成分のAl及びSiが酸化され易い元素であるた
め、通常は製造後直ちに密閉容器に保存され、保存状態
では酸化物や水酸化物の被膜は殆んど形成されない。し
かし、粉末を容器から取り出した際、このAlとSi
は、空気中の水蒸気と反応して酸素又は水素を取り込ん
で、粉体表面に酸化物又は水酸化物の被膜を形成する。
表面に酸化物等の被膜を有する粉体どうしを焼結する
と、これら被膜が粉体粒子間の結合の妨げとなり、この
ような被膜を含む焼結体を圧縮塑性加工すると、得られ
る成形体は、切欠きに対する抵抗力が低下し、所望の切
欠き係数を確保することが困難となる不都合がある。
【0013】Al−Si系合金の原料粉末において、酸
素含有量が0.10重量%以下、水素含有量が0.004
重量%以下であるということは、粉体表面に酸化物、水
酸化物の被膜が少量である粉末であることを意味し、そ
のような粉末を放電プラズマ焼結すると、酸素含有量が
0.11重量%以下、好ましくは0.10重量%以下、さ
らに好ましくは0.09重量%以下、水素含有量が0.0
1重量%以下、好ましくは0.005重量%以下、さら
に好ましくは0.003%以下の焼結体が得られ、得ら
れた焼結体は、切欠き強度に悪影響を及ぼす酸化物、水
酸化物が少ない。焼結を行なうに際し、原料粉末中の酸
素、水素の含有量が前記の上限値を越えないように維持
する方法の一例として、貯蔵容器から取り出した粉末
を、連続的又は間欠的に混ぜながら焼結近傍温度まで加
熱することが挙げられる。この方法によれば、各粉体の
表面に存在する空気中の水蒸気は略完全に蒸発するの
で、合金中のAl、Si等の酸化性元素が酸素や水素を
取り込むことはできず、焼結を開始するまでの段階で粉
末中の酸素や水素の含有量が増加することはない。な
お、焼結技術分野では、焼結前に原料粉末を加熱する処
理を行なうものもあるが、これは、焼結時間の単なる短
縮化を狙ったものにすぎず、粉末を混ぜながら加熱する
ことによって粉体表面に酸化物等の被膜が形成されるの
をより一層防止することができる。原料粉末の加熱処理
は、大気雰囲気中でもよいが、不活性雰囲気下で行なう
ことがより好ましい。
【0014】Al−Si系合金の望ましい組成として、
Fe、Cr、Ni、Zr、Ti、Mn、V及びMoから
なる群から選択される少なくとも1種の遷移金属元素:
1〜15%(複数含む場合は合計量)、Si:10〜30
%、Cu:0.5〜5%、Mg:1〜5%、残部実質的
にAlからなるものを例示することができる。Fe、C
r、Ni、Zr、Ti、Mn、V及びMoの遷移金属元
素は、Al合金に含まれると、強度の向上に寄与すると
共に、機械的性質の改善に奏功する元素である。これら
の元素はAlと化合し、微細な化合物相として析出する
ことによりAl合金の結晶成長を抑制し、超塑性特性の
発現に必要な微細結晶構造を得ることを可能にする。所
望の強度向上効果と超塑性特性を確保するために、含有
量は1〜15%(2種以上を含有する場合は合計量)とす
る。なお、一般的に、Fe等の含有量が増すにつれて、
高温引張強度は向上し、硬質で耐熱性にすぐれるが、F
eの含有量が増えると、その後の塑性加工における生産
性の低下を招く不都合があった。しかし、本発明で利用
するAl−Si合金粉末はFeを例えば5〜15%の範
囲で含有させても、高速超塑性特性を有するので、後の
塑性加工において生産性を殆んど低下させることがな
く、所望の高温強度を具備することができる。Si、C
u及びMgは、耐熱性、耐摩耗性等を高めるのに有効な
元素であり、これらの効果を得るために、前記範囲内で
含有させることが好ましい。
【0015】Al−Si系合金の原料粉末の中でも、酸
素及び水素の含有量が少なく、かつ超微細結晶構造及び
粉体粒径を有する粉末は、SWAP(Spinning Water At
omization Process)法の噴霧処理(冷却速度:104℃
/秒以上)により収率良く得ることができる。SWAP
法は、旋回しながら流下する水流中に合金溶湯を滴下
し、急冷凝固により微細な球状の粉体を形成する方法で
ある。なお、粉末に含まれる酸素含有量を下げる方法が
とれる場合は、水、空気、ガス又はこれら混合流体を噴
射するアトマイズ法によっても原料粉末を製造すること
ができる。
【0016】<Al−Si系合金の焼結体の形成>本発
明のAl−Si系合金の焼結体は、前記のAl−Si系
合金の原料粉末を放電プラズマ焼結することにより得ら
れる。焼結に際しては、原料粉末の粉体表面に酸化物、
水酸化物被膜が形成されないように、原料粉末を混ぜな
がら加熱を施すが、金型についても加熱することが望ま
しい。金型を予め加熱するのは、焼結時間のさらなる短
縮化を図り、結晶粒の成長及び粗大化を抑制するためで
ある。
【0017】放電プラズマ焼結は、パルス通電を利用し
て加圧焼結するもので、粉体粒子間隙に発生する瞬間及
び断続的な火花放電による高温プラズマの高エネルギー
を利用した内部発熱方式の焼結法である。粉体試料内の
放電点は、電流・電圧印加のオン・オフ繰返しに伴って
試料全体に移動分散する。この内部発熱による均一な加
熱効果により、短時間かつ低温度の処理条件下にて焼結
が行われるので、結晶粒成長及び粗大化が抑制防止さ
れ、均質な焼結を達成することができる。
【0018】焼結温度は500℃以下が望ましい。結晶
粒の成長粗大化を防止し、原料粉末の微細結晶構造を可
能な限り維持するためである。処理温度は、パルス電
流、オン・オフ周期、処理時間等により容易に制御する
ことができる。また、加圧力は約50〜180MPaの
範囲が適当である。加圧力がこれより低いと、高温焼結
が必要となり、結晶粒の成長粗大化を招く不都合がある
ためである。他方、180MPaを越える高圧力とする
必要はなく、それ以上の加圧力の増加は金型の消耗を助
長するので好ましくない。望ましい放電プラズマ焼結処
理として、通電開始後約40秒間50MPaの加圧を行
ない、その後約5秒間、150MPaの加圧を行なう工
程を例示できる。
【0019】放電プラズマ焼結工程において、Al合金
の結晶中に、各種の金属間化合物(Cu−Al、Mg−
Si、Al−Cu−Fe、Al−Mn等)が析出する。
本発明に利用されるAl−Si系合金の原料粉末は、F
e等の遷移元素を多量に含有しているが、SWAP法等
の超急冷凝固処理(冷却速度:104℃/秒以上)で製造
されるため、合金粉末段階では析出物の生成は殆んどな
く(析出しても生成量は少なく)、過飽和の固溶状態にあ
る。放電プラズマ焼結過程で、これらの元素は金属間化
合物として析出する。その焼結処理は、低温・短時間の
条件下で達成されるので、析出化合物相は微細(粒径0.
5μm以下)であり、それゆえ、後の圧縮塑性加工にお
ける高速超塑性特性を損なうことはなく、またAl合金
製品としての機械的性質の強化に寄与することができ
る。
【0020】<Al−Si系合金の圧縮塑性加工成形体
の形成>Al−Si系合金の圧縮塑性加工成形体は、予
備成形体としてのAl−Si系合金焼結体を、押出成形
機、プレス機械等を用いて、塑性加工、望ましくは高速
超塑性加工を施すことによって形成される。塑性加工
は、Al−Si系合金の固相線Tsol直下の温度域にお
いて、歪み加工速度10-2秒以上の条件下で行なうこと
が好ましい。塑性加工温度Tの最適領域は、Tsol−3
5℃≦T≦Tsol−10℃である。固相線直下の温度域
(約515〜540℃)での高歪み速度加工において、伸
び率200%以上の高延性を示し、その変形流動応力は
20MPa以下と著しく低い。
【0021】圧縮塑性加工に付されるAl−Si系合金
焼結体は、Al及び/又はAlの過飽和固溶体のマトリ
ックスにAlと合金元素との金属間化合物が分散し、粒
界に結晶Siが晶出した組織を有しており、マトリック
スの平均結晶粒径が2.0μm以下、結晶Siの平均結
晶粒径が0.1〜2.0μm、金属間化合物の平均結晶粒
径が0.5μm以下と微細であるから、このような高速
超塑性加工が可能となる。
【0022】圧縮塑性加工成形体の酸素含有量は0.1
1重量%以下である。圧縮塑性加工成形体に含まれる酸
素がこのように低量であるため、強度欠陥が極めて少な
く、室温条件下では、107サイクルで140MPa以
上の高疲労強度を確保することができ、また、切欠き係
数は3以下と小さい。圧縮塑性加工は、高速度・低加圧
力下で効率的に行なわれるので、粉末冶金法と比べて、
生産性は著しく向上する。また金型の損耗が軽減緩和さ
れ、その耐用寿命が改善される。また、圧縮塑性加工に
おいて、予備成形体は超塑性特性を発現するから、複雑
形状の部材の成形が可能であり、得られた成形体の形状
精度も高い。
【0023】
【実施例】SWAP法により、次の3種類の供試粉末
(粉体粒子径は50〜400μm)を作製した。なお、
「%」は全て重量%である。 供試粉末No.1…Si:12%、Fe:8%、残部:実
質的にAl。 供試粉末No.2…Si:17%、Fe:3%、Ni:2
%、Cu:3%、Mg:2%、残部:実質的にAl。 供試粉末No.3…Si:25%、Fe:1%、Cu:3
%、Mg:1.5%、残部:実質的にAl。
【0024】予備成形体及び成形体を次の要領にて作製
した。予備成形体の作製 発明例1、2、3は、供試粉末を混ぜながら加熱(40
0〜530℃)した後、放電プラズマ焼結により焼結体
を作製した。比較例1、2、3は、供試粉末を冷間成形
(密度65〜80%)し、熱間押出加工の後、切断するこ
とにより予備成形体を得た。成形体の作製 発明例1、2、3は、高速超塑性成形により成形体を作
製した。比較例1、2、3は、熱間鍛造により成形体を
作製した。
【0025】上記の要領にて作製した予備成形体及び成
形体について、酸素及び水素量を測定した。また、疲労
強度を測定すると共に、疲労強度の測定結果に基づいて
切欠き係数を算出した。その結果を表1に示す。酸素及
び水素量の測定は、堀場製作所製の分析装置(型式:E
MGA)を用いて行なった。疲労強度の測定は、平滑試
験片と切欠き試験片について、室温及び300℃におい
て、107サイクルでの強度を求めた。測定装置は、小
野式回転曲げ疲労試験機を用いた。切欠き係数は、平滑
試験片の疲労強度を切欠き試験片の疲労強度で除した数
値であり、切欠きに対する抵抗力を示す。この値が小さ
い程、構造敏感性が小さいため、構造部品としての信頼
性が高いことを意味する。
【0026】
【表1】
【0027】表1の結果を参照すると、酸素と水素の含
有量については、予備成形体と成形体とでは略同じであ
る。これは、予備成形体の成形体への形成を高速超塑性
加工又は熱間鍛造のどちらの方法で行なっても、それら
の成形工程では、酸素及び水素は殆んど増加しないこと
を示している。
【0028】疲労強度について、発明例と比較例を比較
すると、平滑試験片の場合、室温及び300℃共あまり
大きな違いは認められないが、切欠き試験片の場合は室
温及び300℃共、比較例は発明例よりも劣っており、
切欠き係数が大きくなっている。これは、比較例の方が
発明例よりも、酸素と水素の含有量が多く、成形体に存
在する酸化物及び水酸化物の影響により、切欠きに対す
る抵抗力が低下したものと考えられる。この結果より、
予備成形体に含まれる酸素及び水素の含有量を少なくす
ることの重要性が理解されるであろう。
【0029】図1は、発明例3の放電プラズマ焼結法に
より得られた焼結体を模式的に示す図であり、Al及び
/又はAlの過飽和固溶体のマトリックス(1)にAlと
合金元素の金属間化合物(2)(2)(例えばAl3Ni、A
2Fe5等)が分散し、粒界に結晶Si(3)が晶出した
組織を有していることを示している。マトリックス(1)
の平均結晶粒径は1.0μm、結晶Si(3)の平均結晶
粒径は1.0μm、金属間化合物(2)の平均結晶粒径は
0.5μmであった。
【0030】上記実施例の説明は、本発明を説明するた
めのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定
し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本
発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲
に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の焼結体の組織を模式的に示す図であ
る。
【符号の説明】
(1) Al及び/又はAlの過飽和固溶体のマトリック
ス (2) 金属間化合物 (3) 結晶Si
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤野 摂央 茨城県竜ヶ崎市向陽台5丁目6番 株式会 社クボタ開発センターつくば分室内 (72)発明者 野洲 栄治 茨城県竜ヶ崎市向陽台5丁目6番 株式会 社クボタ開発センターつくば分室内 (72)発明者 黒石 農士 茨城県竜ヶ崎市向陽台5丁目6番 株式会 社クボタ開発センターつくば分室内 Fターム(参考) 4K018 AA16 DA25 FA01 KA08

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粉末を加圧しながらパルス電圧を印加し
    て得られるAl−Si系合金の焼結体であって、Al及
    び/又はAlの過飽和固溶体のマトリックスにAlと合
    金元素の金属間化合物が分散し、粒界に結晶Siが晶出
    した組織を有しており、マトリックスの平均結晶粒径が
    2.0μm以下、結晶Siの平均結晶粒径が0.1〜2.
    0μm、金属間化合物の平均結晶粒径が0.5μm以下
    であり、酸素の含有量が0.11重量%以下であること
    を特徴とするAl−Si系合金の焼結体。
  2. 【請求項2】 粉末を加圧しながらパルス電圧を印加し
    て得られるAl−Si系合金の焼結体であって、重量%
    にて、Fe、Cr、Ni、Zr、Ti、Mn、V及びM
    oからなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属
    元素:1〜15%(複数含む場合は合計量)、Si:10
    〜30%、Cu:0.5〜5%、Mg:1〜5%、残部
    実質的にAlからなり、酸素の含有量が0.11重量%
    以下であることを特徴とするAl−Si系合金の焼結
    体。
  3. 【請求項3】 水素の含有量は0.01重量%以下であ
    ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のAl
    −Si系合金の焼結体。
  4. 【請求項4】 Al及び/又はAlの過飽和固溶体のマ
    トリックスにAlと合金元素との金属間化合物が分散
    し、粒界に結晶Siが晶出した組織を有しており、マト
    リックスの平均結晶粒径が2.0μm以下、結晶Siの
    平均結晶粒径が0.1〜2.0μm、金属間化合物の平均
    結晶粒径が0.5μm以下であって、酸素の含有量が0.
    11重量%以下であることを特徴とするAl−Si系合
    金の圧縮塑性加工成形体。
  5. 【請求項5】 重量%にて、Fe、Cr、Ni、Zr、
    Ti、Mn、V及びMoからなる群から選択される少な
    くとも1種の遷移金属元素:1〜15%(複数含む場合
    は合計量)、Si:10〜30%、Cu:0.5〜5%、
    Mg:1〜5%、残部実質的にAlからなり、酸素の含
    有量が0.11重量%以下であることを特徴とするAl
    −Si系合金の圧縮塑性加工成形体。
  6. 【請求項6】 切欠き係数が3以下であることを特徴と
    する請求項4又は請求項5に記載のAl−Si系合金の
    圧縮塑性加工成形体。
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