JP2003193027A - 艶消し剤 - Google Patents

艶消し剤

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JP2003193027A
JP2003193027A JP2001398421A JP2001398421A JP2003193027A JP 2003193027 A JP2003193027 A JP 2003193027A JP 2001398421 A JP2001398421 A JP 2001398421A JP 2001398421 A JP2001398421 A JP 2001398421A JP 2003193027 A JP2003193027 A JP 2003193027A
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silica gel
matting agent
max
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English (en)
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Hiroshi Mori
寛 森
Hanako Katou
波奈子 加藤
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Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 過酷な条件下や長期間経過時でも安定した物
性を保つことができるとともに、様々な塗料や樹脂に対
する分散性や透明性に優れ、且つ生産が容易で製造コス
トも抑えられるようにする。 【解決手段】 シリカゲルよりなる艶消し剤であって、
(a)細孔容積が0.6〜2.0ml/g、(b)比表
面積が300〜1000m2/g、(c)細孔の最頻直
径(Dmax)が20nm未満、(d)直径がDmax±20
%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の5
0%以上、(e)非晶質であり、(f)金属不純物の総
含有率が500ppm以下、且つ、(g)固体Si−N
MRでのQ4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)と
した場合に、δが下記式(I) −0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(I) を満足するようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水性・油性塗料,
合成皮革,樹脂等への添加・混合などの各種用途に用い
て好適な、シリカゲルからなる艶消し剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、水性・油性塗料,合成皮革,樹脂
等の光沢を抑え、艶の無い仕上がりを実現するために、
これらの原料に添加する各種の艶消し剤が使用されてい
る。この種の艶消し剤の材料としては、一般的にシリカ
が使用されている。
【0003】シリカは、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と
鉱酸の中和反応によって製造することができ、その製造
方法は湿式法と呼ばれている。湿式法は、中性またはア
ルカリ性下で反応させ比較的濾過し易い沈澱ケイ酸を得
る沈澱法と、酸性下で反応させゲル状のケイ酸を得るゲ
ル法とに分類される。
【0004】沈澱法シリカは、例えば、特公昭39−1
207号等に開示されているように、中和反応によって
構造性を有するように一次粒子を成長させて得られた沈
澱ケイ酸を、乾燥および引き続いて粉砕し製品とされ
る。即ち、静置乾燥あるいは噴霧乾燥の後に、目的に応
じて適当な粉砕機、例えばビンなどの間での衝撃剪断・
摩擦作用を利用して粉砕するビンミル、或いは高圧のジ
ェット気流に粒子をまきこんで相互衝突により粉砕する
ジェット粉砕機等(最新超微粉砕プロセス技術:ソフト
技研出版部編、新技術情報センター発行、1985年、
8〜10頁)を用いて粉砕される。これらの方法によっ
て知られる一般的な沈澱法シリカは、BET比表面積が
通常100〜400m2/gの範囲であり、主として汎
用のゴム補強充填剤、農薬の吸着担体、塗料の艶消し
剤、或は種々の媒体の粘度調製剤等として使用されてい
る。
【0005】しかしながら、一般的な沈澱法シリカは、
塗料分野では艶消し剤として高い艶消し効果を発揮する
が、塗膜の透明性を重視し例えばサンドミル等の高シェ
アー下で分散させるような使用分野においては、細孔壁
が脆く粒子が砕け易い性質の為か、その効果が失われて
しまうという傾向がある。そのため、合成皮革、プラス
チック等のコーティングの分野において艶消しに有用な
添加剤としては利用されていなかった。よって、過酷な
分散条件下においても安定した物性が維持されるよう、
改善が求められている。
【0006】一方、ゲル法シリカは、例えば米国特許
2,466,842号等に開示されているように、酸性
反応によって得られたゲルを水洗、乾燥後、粉砕して得
られる。これらゲル法シリカは、一般的に沈澱法シリカ
に比ベて高い構造性を有しており、高シェアー下におい
て粒子が剪断を受けてもその構造性を保つので、合成皮
革やプラスチック等のコーティングの分野の用途には有
効に使用されている。
【0007】しかしながら、一般に透明又は黒色の塗料
や樹脂等において、これらの沈澱法シリカやゲル法シリ
カを艶消し剤として使用すると、塗膜や樹脂ポリマー等
の表面が白っぽくなるという欠点を有していた。この塗
膜や樹脂ポリマー等の表面が白っぽくなる現象は、BE
T比表面積の比較的小さい沈澱法シリカにおいてしばし
ば見られるが、ゲル法シリカにおいても、構造性を維持
するための凝集力が強過ぎて分散が悪くなる為か、少な
からずこの現象が見られる。よって、様々な塗料や樹脂
に対する分散性や透明性を向上させるよう、物性面の改
善が期待されている。
【0008】更には、ゲル法は、アルカリ金属ケイ酸塩
水溶液と鉱酸とをpHl〜2という強酸性域で反応させ
る必要があり、また洗浄工程においては、硬い塊状のヒ
ドロゲル中から副生するボウ硝等の塩類を完全に除去す
る目的で、36〜48時間という長い時間をかけて洗浄
する必要がある。従って、製造設備的には強酸性雰囲気
に対する耐食材料が要求され、また長時間の洗浄を必要
とするので、洗浄工程での設備投資が増大するといった
問題点を有しており、こうした面でも改善が求められて
いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上の背景から、過酷
な条件下や長期間経過時でも安定した物性を保つことが
できるとともに、様々な塗料や樹脂に対する分散性や透
明性に優れ、且つ生産が容易で製造コストも抑えられ
る、艶消し剤用のシリカゲルが望まれていた。
【0010】本発明は、上述の課題に鑑みてなされたも
のである。すなわち、本発明の目的は、シリカゲルから
なる艶消し剤であって、過酷な条件下や長期間経過時で
も安定した物性を保つことができるとともに、様々な塗
料や樹脂に対する分散性や透明性に優れ、且つ生産が容
易で製造コストも抑えられる艶消し剤を提供することに
ある。
【0011】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、シャープな
細孔分布を有するとともに、純度が高く、且つ、構造が
均質で歪みの少ないシリカゲルを用いることによって、
上記課題が効果的に解決されることを見出し、本発明を
完成するに至った。
【0012】すなわち、本発明の要旨は、シリカゲルよ
りなる艶消し剤であって、(a)細孔容積が0.6〜
2.0ml/gであり、(b)比表面積が300〜10
00m 2/gであり、(c)細孔の最頻直径(Dmax)が
20nm未満であり、(d)直径がDmax±20%の範
囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の50%以
上であり、(e)非晶質であり、(f)金属不純物の総
含有率が500ppm以下であり、且つ、(g)固体S
i−NMRでのQ4ピークのケミカルシフトをδ(pp
m)とした場合に、δが下記式(I) −0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(I) を満足することを特徴とする、艶消し剤に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の艶消し剤として用いられるシリカゲル(本発明
の艶消し剤用シリカゲル)は、以下に挙げる特徴を有す
る。
【0014】まず、本発明の艶消し剤用シリカゲルは、
細孔容積及び比表面積が通常のものより大きい範囲にあ
ることを特徴とする。具体的に、細孔容積の値は、通常
0.6〜2.0ml/gの範囲、好ましくは0.8〜
1.6ml/gの範囲に、また、比表面積の値は、通常
300〜1000m2/gの範囲、好ましくは300〜
900m2/gの範囲、更に好ましくは400〜900
2/gの範囲に存在する。これらの細孔容積及び比表
面積の値は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定され
る。
【0015】また、本発明の艶消し剤用シリカゲルは、
細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であることを
特徴とする。最頻直径(Dmax)は、気体や液体の吸着
や吸収に関する特性であり、最頻直径(Dmax)が小さ
いほど吸着や吸収性能が高い。従って、種々の特性の中
で最頻直径(Dmax)は、特に樹脂・塗料への充填剤や
添加剤として使用するシリカゲルにとって、分散性に影
響を与える重要な物性である。本発明の艶消し剤用シリ
カゲルの好ましい最頻直径(Dmax)は、添加される樹
脂や塗料の種類により適宜選択されるが、中でも19n
m以下、更には18nm以下である。また、下限は特に
制限されないが、通常は2nm以上、好ましくは5nm
以上、更には10nm以上である。
【0016】なお、上記の最頻直径(Dmax)は、窒素
ガス吸脱着によるBET法で測定した等温脱着曲線か
ら、E. P. Barrett, L. G. Joyner, P. H. Haklenda,
J. Amer. Chem. Soc., vol. 73, 373 (1951) に記載の
BJH法により算出される細孔分布曲線をプロットして
求められる。ここで、細孔分布曲線とは、微分細孔容
積、すなわち、細孔直径d(nm)に対する微分窒素ガ
ス吸着量(ΔV/Δ(logd))を言う。上記のV
は、窒素ガス吸着容積を表す。
【0017】更に、本発明の艶消し剤用シリカゲルは、
上記の最頻直径(Dmax)の値を中心として±20%の
範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の通常50
%以上、好ましくは60%以上であることを特徴とす
る。このことは、本発明の艶消し剤用シリカゲルが有す
る細孔の直径が、最頻直径(Dmax)付近の細孔で揃っ
ていることを意味する。なお、上記の最頻直径
(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の総容積に
ついて、特に上限は無いが、通常は全細孔の総容積の9
0%以下である。
【0018】かかる特徴に関連して、本発明の艶消し剤
用シリカゲルは、上記のBJH法により算出された最頻
直径(Dmax)における微分細孔容積ΔV/Δ(log
d)が、通常2〜20ml/g、特に5〜12ml/g
であることが好ましい(なお、上式において、dは細孔
直径(nm)であり、Vは窒素ガス吸着容積である)。
微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が前記範囲に含まれ
るものは、最頻直径(Dmax)の付近に揃っている細孔
の絶対量が極めて多いものと言える。
【0019】加えて、本発明の艶消し剤用シリカゲル
は、その三次元構造を見るに、非晶質であること、即
ち、結晶性構造が認められないことを特徴とする。この
ことは、本発明の艶消し剤用シリカゲルをX線回折で分
析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないこ
とを意味する。なお、本明細書において結晶質のシリカ
ゲルとは、X線回折パターンで6オングストローム(Å
Units d-spacing)を越えた位置に、少なくとも一つの
結晶構造のピークを示すものを指す。結晶性構造を有す
るシリカゲルの例として、界面活性剤等の有機テンプレ
ートを用いて細孔制御を行なったミセルテンプレートシ
リカが挙げられる。非結晶質のシリカゲルは、結晶性の
シリカゲルに較べて、極めて生産性に優れている。
【0020】また、本発明の艶消し剤用シリカゲルは、
不純物の含有率が非常に低く、極めて高純度であること
を特徴とする。具体的には、シリカゲル中に存在するこ
とでその物性に影響を与えることが知られている、アル
カリ金属,アルカリ土類金属,周期表の3A族,4A族
及び5A族並びに遷移金属からなる群に属する金属元素
(金属不純物)の合計の含有率が、通常500ppm以
下、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50
ppm以下、最も好ましくは30ppm以下である。こ
のように不純物の影響が少ないことが、本発明の艶消し
剤用シリカゲルが高い耐熱性や耐水性などの優れた性質
を発現できる大きな要因の一つである。
【0021】更に、本発明の艶消し剤用シリカゲルは、
その構造に歪みが少ないことを特徴とする。ここで、シ
リカゲルの構造的な歪みは、固体Si−NMR測定にお
けるQ4ピークのケミカルシフトの値によって表わすこ
とができる。以下、シリカゲルの構造的な歪みと、前記
のQ4ピークのケミカルシフトの値との関連について、
詳しく説明する。
【0022】本発明の艶消し剤用シリカゲルは非晶質ケ
イ酸の水和物であり、SiO2・nH2Oの示性式で表さ
れるが、構造的には、Siの四面体の各頂点にOが結合
され、これらのOに更にSiが結合して、ネット状に広
がった構造を有する。そして、Si−O−Si−O−の
繰り返し単位において、Oの一部が他の成員(例えば−
H、−CH3など)で置換されているものもあり、一つ
のSiに注目した場合、下記式(A)に示す様に4個の
−OSiを有するSi(Q4)や、下記式(B)に示す
様に3個の−OSiを有するSi(Q3)等が存在する
(下記式(A)及び(B)では、上記の四面体構造を無
視し、Si−Oのネット構造を平面的に表わしてい
る)。そして、固体Si−NMR測定において、上記の
各Siに基づくピークは、順にQ4ピーク、Q3ピーク、
・・と呼ばれる。
【0023】
【化1】
【0024】本発明の艶消し剤用シリカゲルは、上記の
4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合
に、δが下記式(I) −0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(I) を満足することを特徴とする。従来のシリカゲルでは、
上記のQ4ピークのケミカルシフトの値δは、上記式
(I)の左辺に基づいて計算した値よりも、一般に大き
くなる。よって、本発明の艶消し剤用シリカゲルは、従
来のシリカゲルに比べて、Q4ピークのケミカルシフト
がより小さな値を有することになる。これは、本発明の
艶消し剤用シリカゲルにおいて、Q4ピークのケミカル
シフトがより高磁場に存在するということに他ならず、
ひいては、Siに対して2個の−OSiで表される結合
角がより均質であり、構造的な歪みがより少ないことを
意味している。
【0025】本発明の艶消し剤用シリカゲルにおいて、
4ピークのケミカルシフトδは、上記式(I)の左辺
(−0.0705×(Dmax)−110.36)に基づ
き算出される値よりも、好ましくは0.05%以上小さ
い値であり、更に好ましくは0.1%、特に好ましくは
0.15%以上小さい値である。通常、シリカゲルのQ
4ピークの最小値は、−113ppmである。
【0026】本発明の艶消し剤用シリカゲルが有する、
優れた耐熱性や耐水性と、上記の様な構造的歪みの関係
については、必ずしも明らかではないが、次の様に推定
される。すなわち、シリカゲルは大きさの異なる球状粒
子の集合体で構成されているが、上記の様な構造的に歪
みの少ない状態においては、球状粒子全体のミクロ構造
的な高度の均質性が維持されるので、その結果、優れた
耐熱性や耐水性が発現されるものと考えられる。なお、
3以下のピークは、Si−Oのネット構造の広がりに
制限があるため、シリカゲルの構造的な歪みが現れにく
い。
【0027】上記の特徴に関連して、本発明の艶消し剤
用シリカゲルは、固体Si−NMR測定によるQ4/Q3
の値が、通常1.3以上、中でも1.5以上であること
が好ましい。ここで、Q4/Q3の値とは、上述したシリ
カゲルの繰り返し単位の中で、−OSiが3個結合した
Si(Q3)に対する−OSiが4個結合したSi
(Q4)のモル比を意味する。一般に、この値が高い
程、シリカゲルの熱安定性が高いことが知られており、
ここから、本発明の艶消し剤用シリカゲルは、熱安定性
に極めて優れていることが判る。これに対して、前述の
ミセルテンプレートシリカは、Q4/Q3の値が1.3を
下回ることが多く、耐熱性が低い。なお、水熱処理によ
り細孔径を制御する従来のシリカゲルや本発明の艶消し
剤用シリカゲルにおいては、Q4/Q3の値は、細孔径が
大きくなるほど(即ち、水熱処理条件が厳しくなるほ
ど)大きな値を取る様になる。
【0028】なお、Q4ピークのケミカルシフト及びQ4
/Q3の値は、固体Si−NMR測定を行ない、その結
果に基づいて算出することができる。また、測定データ
の解析(ピーク位置の決定)は、例えば、ガウス関数を
使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽
出する方法で行なう。
【0029】本発明の艶消し剤用シリカゲルは、従来の
ゾル−ゲル法とは異なり、シリコンアルコキシドを加水
分解する加水分解工程と共に得られたシリカヒドロゾル
を縮合する工程縮合工程を経てシリカヒドロゲルを形成
する加水分解・縮合工程と、当該加水分解・縮合工程に
引き続き、シリカヒドロゲルを熟成することなく水熱処
理することにより、所望の物性範囲のシリカゲルを得る
物性調節工程とを、ともに包含する方法で製造すること
ができる。
【0030】本発明の艶消し剤用シリカゲルの原料とし
て使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメト
キシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラ
ン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、
テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル
基を有するトリまたはテトラアルコキシシラン或いはそ
れらのオリゴマーが挙げられるが、好ましくはテトラメ
トキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリ
ゴマーである。以上のシリコンアルコキシドは蒸留によ
り容易に精製し得るので、高純度のシリカゲルの原料と
して好適である。シリコンアルコキシド中の金属不純物
の総含有量は、通常100ppm以下、中でも50pp
m以下、更には30ppm以下、特に10ppm以下が
好ましい。これらの金属不純物の含有率は、一般的なシ
リカゲル中の不純物含有率の測定法と同じ方法で測定で
きる。
【0031】シリコンアルコキシドの加水分解は、シリ
コンアルコキシド1モルに対して、通常2〜20モル、
好ましくは3〜10モル、特に好ましくは4〜8モルの
水を用いて行なう。シリコンアルコキシドの加水分解に
より、シリカのヒドロゲルとアルコールとが生成する。
この加水分解反応は、通常、室温から100℃程度であ
るが、加圧下で液相を維持することで、より高い温度で
行なうことも可能である。また、加水分解時には必要に
応じて、水と相溶性のあるアルコール類等の溶媒を添加
してもよい。具体的には、炭素数1〜3の低級アルコー
ル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、
アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロルブ、エチ
ルセロルブ、メチルエチルケトン、その他の水と任意に
混合できる有機溶媒を任意に用いることができるが、中
でも強い酸性や塩基性を示さないものが、均一なシリカ
ヒドロゲルを生成できる理由から好ましい。
【0032】これらの溶媒を使用しない場合、本発明の
艶消し剤用シリカゲルの製造のためには、特に加水分解
の際の攪拌速度が重要である。すなわち、シリコンアル
コキシドと加水分解用の水は初期には分液しているた
め、攪拌によりエマルジョン化し、反応を促進させる。
この際の攪拌速度は通常30rpm以上、好ましくは5
0rpm以上である。斯かる条件を満足しない場合に
は、本発明の艶消し剤用シリカゲルを得るのが困難にな
る。なお、加水分解によりアルコールが生成して液が均
一液となり、発熱が収まった後には、均一なヒドロゲル
を形成させるために攪拌を停止することが好ましい。
【0033】結晶構造を有するシリカゲルは、水中熱安
定性に乏しくなる傾向にあり、ゲル中に細孔を形成する
のに用いられる界面活性剤等のテンプレートの存在下で
シリコンアルコキシドを加水分解すると、ゲルは容易に
結晶構造を含むものとなる。従って、本発明において
は、界面活性剤等のテンプレートの非存在下で、即ち、
これらがテンプレートとしての機能を発揮する程の量は
存在しない条件下で、加水分解を行なうことが好まし
い。
【0034】反応時間は、反応液組成(シリコンアルコ
キシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存
し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定
されない。なお、反応系に触媒として、酸,アルカリ,
塩類などを添加することで加水分解を促進させることが
できる。しかしながら、斯かる添加物の使用は、後述す
るように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすこと
になるので、本発明の艶消し剤用シリカゲルの製造にお
いてはあまり好ましくない。
【0035】上記のシリコンアルコキシドの加水分解反
応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリケー
トが生成するが、引き続いて該シリケートの縮合反応が
起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシ
リカヒドロゲルとなる。本発明の艶消し剤用シリカゲル
を製造するためには、上記の加水分解により生成したシ
リカのヒドロゲルの硬さが上昇しないように、実質的に
熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうことが重要
である。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱
なシリカのヒドロゲルが生成するが、このヒドロゲルを
安定した熟成、あるいは乾燥させ、更にこれに水熱処理
を施し、最終的に細孔特性の制御されたシリカゲルとす
る従来の方法では、本発明で規定する物性範囲の艶消し
剤用シリカゲルを製造することができない。
【0036】上記にある、加水分解により生成したシリ
カのヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに
水熱処理を行なうということは、シリカのヒドロゲルが
生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の、
水熱処理に供するようにするということを意味する。シ
リコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、
塩類等を添加すること、または該加水分解反応の温度を
厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行さ
せるため好ましくない。また、加水分解後の後処理にお
ける水洗,乾燥,放置などにおいて、必要以上に温度や
時間をかけるべきではない。
【0037】ヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認する
手段としては、ヒドロゲルの硬度を参考にすることがで
きる。即ち、破壊応力が、通常6MPa以下、好ましく
は3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下の柔らか
い状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規
定する物性範囲の艶消し剤用シリカゲルを得ることがで
きる。
【0038】この水熱処理の条件としては、水の状態が
液体、気体のいずれでもよく、溶媒や他の気体によって
希釈されていてもよいが、好ましくは液体の水が使われ
る。シリカのヒドロゲルに対して、通常0.1〜10重
量倍、好ましくは0.5〜5重量倍、特に好ましくは1
〜3重量倍の水を加えてスラリー状とし、通常40〜2
50℃、好ましくは50〜200℃の温度で、通常0.
1〜100時間、好ましくは1〜10時間実施される。
水熱処理に使用される水には低級アルコール類、メタノ
ール、エタノール、プロパノールや、ジメチルホルムア
ミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)、
その他の有機溶媒などが含まれてもよい。なお、加水分
解反応の反応器を用い、続けて温度条件変更により水熱
処理を行なうことも可能であるが、加水分解反応とその
後の水熱処理とでは通常、最適条件が異なっているた
め、この方法で本発明の艶消し剤用シリカゲルを得るこ
とは一般的に難しい。
【0039】以上の水熱処理条件において温度を高くす
ると、得られるシリカゲルの細孔径、細孔容積が大きく
なる傾向がある。水熱処理温度としては、100〜20
0℃の範囲であることが好ましい。また、処理時間とと
もに、得られるシリカゲルの比表面積は、一度極大に達
した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏
まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択する必要
があるが、水熱処理は、シリカゲルの物性を変化させる
目的なので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温
条件とすることが好ましい。
【0040】水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定
すると、本発明の艶消し剤用シリカゲルを得ることが困
難となる。例えば、水熱処理の温度が高すぎると、シリ
カゲルの細孔径、細孔容積が大きくなりすぎ、また、細
孔分布も広がる。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、
生成するシリカゲルは、架橋度が低く、熱安定性に乏し
くなり、細孔分布にピークが発現しなくなったり、前述
した固体Si−NMRにおけるQ4/Q3値が極端に小さ
くなったりする。
【0041】なお、水熱処理をアンモニア水中で行なう
と、純水中で行なう場合よりも低温で同様の効果が得ら
れる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、純水中
で処理する場合と比較して、最終的に得られるシリカゲ
ルは一般に疎水性となるが、通常30〜250℃、好ま
しくは40〜200℃という比較的高温で水熱処理する
と、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のア
ンモニア濃度としては、好ましくは0.001〜10
%、特に好ましくは0.005〜5%である。
【0042】水熱処理されたシリカヒドロゲルは、通常
40〜200℃、好ましくは60〜120℃で乾燥す
る。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式
でも連続式でもよく、且つ、常圧でも減圧下でも乾燥す
ることができる。必要に応じ、原料のシリコンアルコキ
シドに由来する炭素分が含まれている場合には、通常4
00〜600℃で焼成除去することができる。また、表
面状態をコントロールするため、最高900℃の温度で
焼成することもある。
【0043】乾燥(又は焼成)後のシリカゲルを、必要
に応じて公知の各種手法により微粉状に粉砕及び/又は
分級することで、本発明の艶消し剤用シリカゲルを得る
ことができる。なお、粉体取扱性の改善、計量法の合理
化、輸送や保管上の利便性など、作業上の必要に応じ
て、粉砕及び/又は分級後の微粉状シリカゲルを公知の
各種手法により造粒(例えば、顆粒状や粒状等の低強度
の凝集体)して、これを本発明の艶消し剤用シリカゲル
として使用するのも好ましい。
【0044】本発明の艶消し剤用シリカゲルの形状は特
に限定されず、粉末状、粒状、球状、微粉凝集体等の各
種の形状の中から、用途に応じて適宜選択することがで
きる。上述の粉砕,分級,成形等の有無及び条件につい
ては、選択した形状に応じて適宜決定すればよい。更
に、本発明の艶消し剤用シリカゲルは必要に応じて、シ
ランカップリング剤や無機塩等により、分散性向上のた
めの表面処理を行なっても良い。
【0045】本発明の艶消し剤用シリカゲルは、従来の
艶消し剤用シリカゲルと同様に、水性及び油性の塗料,
樹脂,合成皮革,インキ等の艶消し剤として使用するこ
とができる。艶消し剤として好適な粒径は、配合対象と
なる樹脂や塗料の組成及び粘度によっても変わるので、
一概に特定することはできないが、通常1〜20μm、
好ましくは1〜10μm、更に好ましくは1〜5μmに
調製されていることが望ましい。この範囲を下回る粒子
が多いと(特に全体の20%を上回ると)、樹脂や塗料
の艶消しに寄与しない粒子が増大し、単位添加量当たり
の艶消し効果が低下するので、同程度の艶消し効果を得
るために多量の添加が必要となる。また、樹脂や塗料中
で凝集し易くなるので、分散が困難になり、樹脂や塗膜
の表面のブツおよび樹脂や塗料の粘度上昇を招く。一
方、この範囲を上回る粒子が多いと、樹脂や塗膜の外観
が粗くなってしまうとともに、樹脂や塗料中で沈降し易
く、均一な艶消し塗膜が得られない。
【0046】本発明の艶消し剤用シリカゲルを粉砕する
方法としては、公知のいかなる装置・器具を用いても良
いが、10μm以下の微粉(シリカゲル微粒子)を得る
ためには、ボールミル(転動ミル、振動ボールミル、遊
星ミル等)、攪拌ミル(塔式粉砕器、攪拌槽型ミル、流
通管型ミル、アニュラー(環状)ミル等)、高速回転微
粉砕機(スクリーンミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミ
ル)、ジェット粉砕機(循環ジェットミル、衝突タイプ
ミル、流動層ジェットミル)、せん断ミル(擂解機、オ
ングミル)、コロイドミル、乳鉢などの装置・器具を用
いることができる。これらの中で、2μm以下の超微粒
子を得る際には、ボールミル、攪拌ミルがより好まし
い。また、粉砕時の状態としては、湿式法及び乾式法が
あり、何れも選択可であるが、超微粒子を得るためには
湿式法がより好ましい。湿式法の場合、使用する分散媒
としては、水及びアルコール等の有機溶媒の何れを用い
ても、また2種以上の混合溶媒としても良く、目的に応
じて使い分ける。なお、湿式法においては、次工程の造
粒工程に入る前に、必要に応じて乾燥を行なうことがあ
る。微粉砕時に不必要に強い圧力や剪断力を長時間かけ
続けることは、シリカゲルの細孔特性を損なうことがあ
り好ましくない。
【0047】本発明の艶消し剤用シリカゲルを添加でき
る油性塗料の種類は特に限定されず、油脂成分を主要な
溶剤として含有している油性塗料はもちろんのこと、使
用時に油性溶剤で希釈して使用できる塗料用組成物への
添加にも好適である。また、油性の塗料であれば、他の
成分については特に限定されず、所謂バインダー成分、
例えばフッ素樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、アク
リルウレタン樹脂、シリコンアクリル樹脂等を主体とし
て、必要に応じて各種顔料を添加した塗料であれば、何
れも本発明の艶消し剤用シリカゲルを添加して所望の艶
消し効果を得ることができる。
【0048】また、本発明の艶消し剤用シリカゲルを添
加できる水性塗料の種類も特に限定されず、水を主要な
溶剤として含有している水性塗料はもちろんのこと、使
用時に水で希釈して使用できる塗料用組成物への添加に
も好適である。また、水系の塗料であれば、他の成分に
ついては特に限定されず、例えば、水溶性もしくは水分
散性のアクリル酸樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、
フッ素樹脂、アルキド樹脂、乾性油などを主体として、
必要に応じて各種顔料を添加した塗料であれば、いずれ
も本発明の艶消し剤用シリカゲルを添加して、所望の艶
消し効果を得ることができる。
【0049】更に、本発明の艶消し剤用シリカゲルを添
加できる樹脂の種類も特に限定されず、例えばアクリル
樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリプロピレン
樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレ
ンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエステル樹脂、
シリコン樹脂、フッ素樹脂等に、いずれも本発明の艶消
し剤用シリカゲルを添加して、所望の艶消し効果を得る
ことができる。その他、各種の合成皮革への添加等にも
好適に使用される。また、艶消し対象となる樹脂等に艶
消し剤を直接練り込むのではなく、クリア塗料に艶消し
剤を添加したものを樹脂等の表面にコーティングして艶
消し層を設ける、プラスチック等のコーティング分野に
も好ましく利用できる。
【0050】上述した水性及び油性の塗料,樹脂,合成
皮革等に対する、本発明の艶消し剤用シリカゲルの添加
方法及び添加量は、目的とする艶消しの度合いや、添加
対象となる塗料・樹脂等の濃度・粘度との兼ね合いによ
り、粒子径と共に適宜選択される。なお、上述した樹脂
や塗料の例は一例であり、本発明はこれにより限定され
るものではない。
【0051】なお、本発明の艶消し剤用シリカゲルの添
加に伴い、必要に応じて界面活性剤等の添加成分を同時
に用いても良い。また、必要に応じて、無機塩やシラン
カップリング剤等により疎水化等の表面改質処理を行っ
ても良い。
【0052】本発明の艶消し剤用シリカゲルは、従来の
シリカゲルからなる艶消し剤と比較して、よりシャープ
な細孔分布を有するとともに、その細孔径をより精密に
制御することが可能である。艶消し剤の分散性は一般に
シリカゲルの粒子径によって制御されるが、シリカゲル
の細孔径や細孔容積、比表面積等も分散性に影響を与え
ることが知られている。従って、本発明ではその細孔径
を制御することにより、従来品以上に細かく塗料や樹脂
中の分散性を制御することが可能になると期待される。
【0053】また、本発明の艶消し剤用シリカゲルは、
非常に高純度である上に、シリカゲルの細孔壁が比較的
厚く、また、シロキサン結合角の歪みが少ない均質で安
定な構造を有するので、過酷な使用条件においても細孔
特性等の物性変化が少ないという特徴を有する。従っ
て、塗料としての長時間にわたる保存時、樹脂への添加
時の高温・高シェアーの条件における分散処理時、屋外
における塗膜の長期使用時等において、細孔特性の変化
による分散性の悪化や粒子の収縮による塗膜性能の劣化
が少なく、耐久性に優れていることは明白である。特
に、サンドミル等の高シェアー下で分散させるような、
合成皮革や樹脂等の高粘度系への添加用途では、シリカ
ゲル粒子が剪断を受けても砕け難く、細孔構造が破壊さ
れないため、本発明の効果がより顕著に発揮される。ま
た、非常に高純度であるので、塗膜とした場合には、不
純物金属の触媒活性による樹脂成分側の劣化が起こり難
いとともに、特に水系塗料に使用した場合には、アルカ
リ金属などの溶出によるpH変化が無く、分散性への影
響を抑えることができると期待される。
【0054】更に、本発明の艶消し剤用シリカゲルは、
同程度の細孔径を有する従来の艶消し剤用シリカゲルと
比較して、より高比表面積かつ高細孔容積という特徴を
有するので、分散時に比較的小さな細孔径を選択する必
要がある場合にも、細孔内に十分な量の溶剤や塗料成分
を保持することができる。よって、粒子の凝集や粘度の
上昇等が少ないとともに、添加対象となる樹脂や塗料等
との親和性が高く、分散性や透明性に優れるものと期待
される。
【0055】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例
に制約されるものではなく、種々変形して実施すること
が可能である。
【0056】(1)艶消し剤用シリカゲルの分析方法 (1−1)細孔容積、比表面積 カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線
を測定し、細孔容積、比表面積を求めた。具体的には細
孔容積は相対圧P/P0=0.98のときの値を採用
し、比表面積はP/P0=0.1,0.2,0.3の3
点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。ま
た、BJH法で細孔分布曲線及び最頻直径(Dmax)に
おける微分細孔容積を求めた。測定する相対圧の各点の
間隔は0.025とした。
【0057】(1−2)粉末X線回折 理学電機社製RAD-RB装置を用い、CuKαを線源
として測定を行なった。発散スリット1/2deg、散
乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmと
した。
【0058】(1−3)金属不純物の含有量 試料2.5gにフッ酸を加えて加熱し、乾涸させたの
ち、水を加えて50mlとした。この水溶液を用いてI
CP発光分析を行なった。なお、ナトリウム及びカリウ
ムはフレーム炎光法で分析した。
【0059】(1−4)固体Si−NMR測定 Bruker社製固体NMR装置(「MSL300」)
を使用するとともに、共鳴周波数59.2MHz(7.
05テスラ)、7mmのサンプルチューブを使用し、C
P/MAS(Cross Polarization / Magic Angle Spinn
ing)プローブの条件で測定した。具体的な測定条件を
下の表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】測定データの解析(Q4ピーク位置の決
定)は、ピーク分割によって各ピークを抽出する方法で
行なう。具体的には、ガウス関数を使用した波形分離解
析を行なう。この解析には、サーモガラテック(Thermo
galatic)社製の波形処理ソフト「GRAMS386」
を使用することができる。
【0062】(1−5)粒度分布 セイシン企業製LMS−30装置(分散媒:水)を用い
て、粒度分布及び平均粒径の測定を行なった。
【0063】(2)艶消し剤用シリカゲルの製造及び評
価 ・実施例1,2 ガラス製で、上部に大気開放の水冷コンデンサが取り付
けてある5Lセパラブルフラスコ(ジャケット付き)
に、純水1000gを仕込んだ。100rpmで撹拌し
ながら、これにテトラメトキシシラン1400gを3分
間かけて仕込んだ。水/テトラメトキシシランのモル比
は約6である。セパラブルフラスコのジャケットには5
0℃の温水を通水した。引き続き撹拌を継続し、内容物
が沸点に到達した時点で、撹拌を停止した。引き続き約
0.5時間、ジャケットに50℃の温水を通水して生成
したゾルをゲル化させた。その後、速やかにゲルを取り
出し、目開き600ミクロンのナイロン製網を通してゲ
ルを粉砕し、粉体状のウェットゲル(シリカヒドロゲ
ル)を得た。このヒドロゲル450gと純水450gを
1Lのガラス製オートクレーブに仕込み、実施例1につ
いては150℃×3Hr、実施例2については200℃
×3Hrの条件で、それぞれ水熱処理を実施した。所定
時間水熱処理した後、No.5A濾紙で濾過し、得られ
たシリカゲルを水洗することなく100℃で恒量となる
まで減圧乾燥した。乾燥後、乳鉢にて粉砕し、篩により
分級して、いずれも平均粒径5μmの粉体のシリカゲル
を得た。これらをそれぞれ実施例1,2の艶消し剤用シ
リカゲルとする。
【0064】得られた実施例1,2の艶消し剤用シリカ
ゲルの諸物性を表2に示す。何れのシリカゲルにおいて
も、周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピ
ークは認められない。なお、実施例1,2の艶消し剤用
シリカゲルの不純物金属含有率は、何れについても、ナ
トリウム0.2ppm、カリウム0.1ppm、カルシ
ウム0.2ppmであり、その他の金属は検出されなか
った。また、固体Si−NMRのQ4ピークのケミカル
シフトの値δは、いずれも前述した式(I)の左辺{−
0.0705×(Dmax)−110.36}で計算され
る値より小さな値(よりマイナス側に存在する値)とな
った。すなわち、実施例1及び2の艶消し剤用シリカゲ
ルは、歪みの少ない均質な構造を有し、長期使用時や繰
り返し便用時、過酷な条件での使用時等において、各種
物性が安定していると判断される。
【0065】・参考例1 市販の艶消し剤用シリカゲルである日本シリカ工業製N
IPGELAY−200(平均粒径2.8μm)を、参
考例1の艶消し剤用シリカゲルとして用いた。その諸物
性を下の表2に示す。粉末X線回折図によれば、周期的
構造による低角度側のピークは認められない。なお、ア
ルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く不純物金属の含
有率は1041ppmであり、実施例1及び2の艶消し
剤用シリカゲルと比較して非常に多いことから、耐熱性
及び耐水熱性に劣るものと考えられる。また、固体Si
−NMRのQ4ピークのケミカルシフトの値δは、実施
例1及び2のいずれの艶消し剤用シリカゲルより大き
く、且つ前述した式(I)の左辺{−0.0705×
(Dmax)−110.36}より計算される値より大き
な値(よりプラス側に存在する値)となった。すなわ
ち、参考例1の艶消し剤用シリカゲルは、実施例1及び
2の艶消し剤用シリカゲルと比べて、その構造に歪みが
多く、長期使用時や繰り返し便用時、過酷な条件での使
用時等において物性変化を受け易いものと判断される。
【0066】・艶消し剤用シリカゲルの水中熱安定性試
験 実施例1及び2並びに参考例1の艶消し剤用シリカゲル
に、各々純水を加えて40重量%のスラリーを調製し
た。容積60mlのステンレススチール製のミクロボン
ベに、上記で調製したスラリー約40mlを入れて密封
し、280±1℃のオイルバス中に3日間浸漬した。ミ
クロボンベからスラリーの一部を抜出し、5A濾紙で濾
過した。濾滓は100℃で5時間真空乾燥した。この試
料について比表面積を測定した結果を表2及び表3に示
す。実施例1及び2の艶消し剤用シリカゲルは、参考例
1の艶消し剤用シリカゲルに比べて、比表面積の減少が
少なく、水熱安定性に優れていた。
【0067】
【表2】
【0068】表2の結果から、実施例1及び2の艶消し
剤用シリカゲルは、参考例1に代表される従来の艶消し
剤用シリカゲルに比べて、よりシャープで制御された細
孔分布を有していることが分かる。従って、実施例1及
び2の艶消し剤用シリカゲルは、その細孔径を制御する
ことにより、従来品以上に細かく塗料や樹脂への分散性
を制御することが可能になると考えられる。
【0069】また、実施例1及び2の艶消し剤用シリカ
ゲルは、参考例1に代表される従来の艶消し剤用シリカ
ゲルに比べて、金属不純物が少なく遥かに高純度である
とともに、シロキサン結合角の歪みが少ない均質で安定
な構造を有していることから、反応性が低く、耐熱性や
耐水性等に優れており、且つ、過酷な使用条件において
も細孔特性等の物性変化が少ないことが分かる。従っ
て、塗料としての長時間にわたる保存時、樹脂への添加
時の高温・高シェアーの条件における分散処理時、屋外
における塗膜の長期使用時等において、細孔特性の変化
による分散性の悪化や粒子の収脂による塗膜性能の劣化
が少ないものと考えられる。また、非常に高純度である
ので、塗膜とした場合には、不純物金属の触媒活性によ
る樹脂成分側の劣化が起こり難いとともに、特に水系塗
料に使用した場合には、アルカリ金属などの溶出による
pH変化が無く、分散性への影響を抑えることができる
ものと考えられる。
【0070】更に、実施例1及び2の艶消し剤用シリカ
ゲルは、参考例1に代表される従来の艶消し剤用シリカ
ゲルに比べて、より高比表面積かつ高細孔容積という特
徴を有するので、分散時に比較的小さな細孔径を選択す
る必要がある場合にも、細孔内に十分な量の溶剤や塗料
成分を保持することができ、粒子の凝集や粘度の上昇等
が少なく、透明性や分散性に優れるものと考えられる。
【0071】従って、実施例1及び2の艶消し剤用シリ
カゲルは、参考例1に代表される従来の艶消し剤用シリ
カゲルに比べて、艶消し剤としてより優れた性能を得る
ことができるものと推測される。
【0072】なお、実施例1及び2の艶消し剤用シリカ
ゲルは粉砕された破砕状の粒子として得られたが、必要
に応じ、公知の成形技術により他の形状(例えば顆粒状
や粒状等の低強度の凝集体粒子状)に成形しても良い。
【0073】(3)艶消し剤への適用 実施例1及び2の艶消し剤用シリカゲルは、従来の艶消
し剤用シリカゲルと同様に、水性及び油性の塗料,樹
脂,合成皮革,インキ等の艶消し剤として使用すること
ができる。艶消し剤として好適な粒径、粉砕の方法、艶
消し剤として添加できる塗料や樹脂等の種類、添加の方
法及び添加量、併用できる添加成分については、それぞ
れ上に詳述した通りである。
【0074】具体例として、水系エマルジョン塗料への
適用例を以下に示す。水系アクリルエマルジョン樹脂塗
料100重量部に対し、実施例1又は2の艶消し剤用シ
リカゲル5重量部を添加し、T.K.オートホモミキサ
ー(特殊機化工業(株)製、直径40mmクローバー型
可変羽根使用)により4000rpmで5分間にわたっ
て攪拌、分散する。分散後、フィルムアプリケーター4
MILにより隠ぺい紙に塗布し、クリーンベンチ内で室
温乾燥した後、塗膜の表面状態を観察する。
【0075】(4)艶消し剤の性能評価 実施例1〜3の艶消し剤用シリカゲルを艶消し剤として
適用した場合の各種性能は、例えば以下の手法により評
価することができる。
【0076】<塗料粘度>B型粘度計を用いて、艶消し
剤を添加した塗料や樹脂の粘度を測定する。艶消し剤の
添加により塗料粘度が増加し過ぎると、塗工作業が困難
になり望ましくない。
【0077】<塗装外観>艶消し剤を添加した塗料や樹
脂の塗口表面を目視にて観察し、表面のブツ、均一度、
平滑度、艶ムラ等を評価する。
【0078】<光沢度>グロスメーターを用いて、艶消
し剤を添加した塗料や樹脂の塗口表面における、20,
40,60度の反射率を測定する。数値が低い方が光沢
が少なく、艶消し効果があると判断される。
【0079】<透過率>色度計を用いて、艶消し剤を添
加した塗料や樹脂の透過度を測定する。数値が高い方が
光透過率が高く、透明性に優れていると判断される。艶
消し剤の粒径が大き過ぎた場合や、艶消し剤の凝集が起
きて分散性が悪化した場合等に、透過率は低下する。
【0080】<塗膜内分散度>グラインドゲージを用い
て、添加した艶消し剤の塗料や樹脂への分散度を測定す
る。
【0081】以上の各種評価を行なうことにより、実施
例1及び2の艶消し剤用シリカゲルは、参考例1に代表
される従来の艶消し剤用シリカゲルに比べて、塗料や樹
脂への添加による粘度上昇が少なく、塗料や樹脂の表面
におけるブツや艶ムラの存在、均一性や平滑性の欠如等
が抑えられるとともに、艶消し効果、透明度、分散度に
優れ、且つ、過酷な条件下や長期間経過時でもこれらの
性能が高く保たれている、という評価が得られるものと
考えられる。
【0082】
【発明の効果】本発明の艶消し剤は、従来の艶消し剤と
比較して、過酷な条件下や長期間経過時でも安定した物
性を保つことができるとともに、様々な塗料や樹脂に対
する分散性や透明性に優れ、且つ生産が容易で製造コス
トも抑えられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G072 AA28 CC10 HH30 MM01 RR05 TT05 TT09 TT19 TT30 UU30 4J037 AA18 CB05 DD06 DD07 DD27 EE14 EE43 EE47 FF02 FF15 4J038 CD091 CG001 DD001 DL001 HA446 KA08 NA01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリカゲルよりなる艶消し剤であって、
    (a)細孔容積が0.6〜2.0ml/gであり、
    (b)比表面積が300〜1000m2/gであり、
    (c)細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であ
    り、(d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の
    総容積が、全細孔の総容積の50%以上であり、(e)
    非晶質であり、(f)金属不純物の総含有率が500p
    pm以下であり、且つ、(g)固体Si−NMRでのQ
    4ピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合
    に、δが下記式(I) −0.0705×(Dmax)−110.36>δ ・・・式(I) を満足することを特徴とする、艶消し剤。
  2. 【請求項2】 最頻直径(Dmax)における微分細孔容
    積が、2〜20ml/gであることを特徴とする、請求
    項1記載の艶消し剤。
  3. 【請求項3】 固体Si−NMR測定におけるQ4/Q3
    ピークの値が、1.3以上であることを特徴とする、請
    求項1又は請求項2に記載の艶消し剤。
  4. 【請求項4】 シリコンアルコキシドを加水分解する工
    程を経て製造されることを特徴とする、請求項1〜3の
    何れか一項に記載の艶消し剤。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015045028A (ja) * 2009-02-16 2015-03-12 日産自動車株式会社 微粒子−ポリロタキサン含有塗料、微粒子−ポリロタキサン含有塗膜及び塗装物品
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JP2017020041A (ja) * 2016-08-26 2017-01-26 株式会社トクヤマ エアロゲル及び該エアロゲルからなる艶消し剤

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