JP2003192231A - コアレスコイル及びその製造方法 - Google Patents

コアレスコイル及びその製造方法

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JP2003192231A JP2001392853A JP2001392853A JP2003192231A JP 2003192231 A JP2003192231 A JP 2003192231A JP 2001392853 A JP2001392853 A JP 2001392853A JP 2001392853 A JP2001392853 A JP 2001392853A JP 2003192231 A JP2003192231 A JP 2003192231A
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宏和 鈴木
Yukio Saisu
幸男 齋須
Yasuo Akuta
泰夫 芥田
Toru Umeki
亨 梅木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コアレスコイルの使用時に、線材巻崩れや線
材もつれが生じず、線材Aが無くなるまで、線材を連続
して円滑に取り出すことができ、更に、後工程の線材処
理加工設備の稼働率を高めることができるコアレスコイ
ル及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 線材Aがコイル状に巻回されて中心にテ
ーパ穴10aを有するコイル巻層体10が形成され、線
材Aをコイル巻層体10の内側からテーパ穴10aを通
して取り出せるようにしたコアレスコイルにおいて、前
記コイル巻層体10の任意層における線材Aの1周巻回
ループの残留ひずみを開放したときに得られる残留曲率
が線材Aをコイル状に巻回するときの巻取曲率よりも大
きくなるように構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、銅線、アルミニウ
ム線等の線材を内側から取り出せるようにした中心にテ
ーパ穴を有するコアレスコイル(コンパクトコイル、タ
イトコイルを含む)及びその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来のコアレスコイルは、図12に示す
ように、線材Aがコイル状に巻回されて中心にテーパ穴
3aを有するコイル巻層体3が形成され、コイル巻層体
3の内側からテーパ穴3aを通して線材Aを取り出せる
ようにした構造になっている。
【0003】また、このコアレスコイルの製造方法は、
図13に示すように、図示しない線材圧延機、伸線機等
から送出される線材Aをガイドしながらスプール1に供
給するガイドシーブ2を、スプール1におけるテーパ巻
胴1aの外径の小さい右方のトラバース反転位置B(右
側鍔の内側面近傍位置)に配置すると共に、線材Aの巻
始め端末をスプール1に固定する。
【0004】次に、スプール1を矢印方向へ起動回転す
ると共に、ガイドシーブ2をスプール1のテーパ巻胴1
aの外径が大きい左方に移動させ、線材Aを左方へトラ
バースさせながらスプール1のテーパ巻胴1aにコイル
状に巻回し、1層目の巻層(最内層)を形成して行く。
【0005】次に、ガイドシーブ2が前記テーパ巻胴1
aの外径の大きい左方のトラバース反転位置C(左側鍔
の内側面近傍位置)に到達したら、ガイドシーブ2の移
動を反転させて前記テーパ巻胴1aの外径の小さい方に
移動させ、線材Aを反転させて右方にトラバースさせ、
前記テーパ巻胴1aにコイル状に巻回し、2層目の巻層
を形成して行く。
【0006】次に、ガイドシーブ2が前記トラバース反
転位置Bに到達したら、その移動を反転させて左方に移
動させ、以後、該シーブ2をそれぞれ所定位置に固定配
置されたトラバース反転位置B、C間で往復移動させ、
線材Aをトラバース反転位置B、C間で往復トラバース
させながら、スプール1のテーパ巻胴1aにコイル状に
巻回し、3層目、4層目、5層目、6層目等、多層の巻
層を形成して行く。
【0007】このようにして、線材Aの巻量が満巻量又
はそれに近い巻量に到達したら、線材Aの巻層が内層か
ら外層へ進行するに伴い、左側のトラバース反転位置C
を右側のトラバース反転位置Bに近づく方向に漸次移動
させ、線材Aをコイル状に巻回して外形状が円筒形状に
なるよう整えて行く。その後、ガイドシーブ2の移動を
トラバース反転位置Bで停止させて線材Aの巻回を終了
し、図14に示すような中心にテーパ穴3aを有するコ
イル巻層体3を形成する。
【0008】なお、図示の方法では、線材Aの方をトラ
バースさせて線材Aをスプール1のテーパ巻胴1aに巻
回するようにしたが、ガイドシーブ2を移動させず、ス
プール1の方を左右に往復トラバースさせて線材Aをテ
ーパ巻胴1aに巻回し、コイル巻層体3を形成するよう
にしてもよい。
【0009】このようにして、コイル巻層体3を形成し
た後、スプール1を分解等して取り除き、前記図12に
示すような、線材Aをコイル巻層体3の内側からテーパ
穴3aを通して取り出せるようにしたコアレスコイルを
製造する。
【0010】上記のようにして製造されたコアレスコイ
ルは保管、運搬等の際、荷崩れ等が生じないように、図
15に示すように、コイル巻層体3のテーパ穴3aの中
心軸線が垂直になるように、且つ、テーパ穴3aの穴径
の大きい方が上部に位置するように90度転回してパレ
ット6に載置する。そして、コイル巻層体3の外周を円
周方向に数箇所にわたり鋼帯等のバンド4で結束し、該
コイル巻層体3の外周を熱収縮性フイルム、シートから
なるシュリンク梱包材5で覆って梱包し、保管、運搬等
に供せられる。
【0011】このコアレスコイルを使用する場合には、
図16に示すように、コイル巻層体3の上端面に、塩化
ビニール樹脂或いはアクリル樹脂製の中空円板7を載せ
る。次いで、コイル巻層体3の上端面を覆うシュリンク
梱包材5の中央部をカッタ等で開口する。次いで、コイ
ル巻層体3を円周方向の数箇所で輪状にバインドして結
束しているバンド4を、それぞれコイル巻層体3の内側
において、上下方向の中間適宜位置で上下に分断し、上
方の分断された各バンド4端末を上側へ折り曲げてコイ
ル巻層体3の上方へ引き出し、これをそれぞれ図17に
示すようにバンド止め部8のバンド通し穴に内側から外
側へ通して止める。次いで、内筒体9をコイル巻層体3
のテーパ穴3aに挿入し、線材Aをテーパ穴3aの傾斜
内面に沿って、内筒体9の周囲をスパイラル状に回りな
がら上方へ取り出す。
【0012】そうすると、線材Aは、図17に示すよう
に、コイル巻層体3の1層目(最内層)の下方位置から
上方に向かってほぐされつつ、螺旋を巻きながら上方へ
取り出される。1層目の線材Aの取り出しが終了する
と、線材Aは2層目の上方から下方に向かって取り出さ
れ、2層目の取り出しが終了すると、線材Aは、3層目
の下方から上方に向かって取り出される。このようにし
て、線材Aは上下方向に取り出し点が移動しながら、コ
イル巻層体3の半径方向内側の内層から外側の外層に向
かって、取り出し開始の段階から終了段階まで、上方に
末広がり状に開口するテーパ穴3aの傾斜内面に沿って
テーパ穴3aを通して上方へ取り出される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】従来のコアレスコイル
によると、これを製造する過程において、ガイドシーブ
2の大きさやスプール1のテーパ巻胴1aの外径、線材
Aの種類により、コイル巻層体3の任意層における線材
Aの1周巻回ループを採取して水平な台等に置いてその
残留ひずみを開放したときに得られる残留曲率R(該ル
ープの巻き半径)が、図18に示すように、線材Aをス
プール1のテーパ巻胴1aにコイル状に巻回するときの
巻取曲率r(該ループの巻き半径)よりも小さくなるこ
とが度々生じる。
【0014】そうすると、このコアレスコイルを使用し
て線材Aを後工程で表面処理したり、絶縁被覆したり、
焼鈍したり、撚り合わせたり、伸線加工したり等する線
材処理加工設備に供給するために、図17に示すよう
に、線材Aをコイル巻層体3の内側から取り出して、上
方に末広がり状に開口するテーパ穴3aを通して上方へ
取り出す際、線材Aの取り出される巻層部分の線材A
が、図19に示すように、テーパ穴3aの中心側へ変位
して位置ずれを起こし易くなる。
【0015】このため、線材Aがコイル巻層体3から巻
き解かれる線材量の方が上方へ取り出される線材量より
も多くなって、線材Aがテーパ穴3a内でだぶ付きを起
こし、図20に示すように、一度に3〜4ループ以上の
線材Aがテーパ穴3aの内周面から巻き解かれてテーパ
穴3a内を落下して線材巻崩れを生じることがある。さ
らに、このような状態で線材Aが上方に取り出される
と、線材Aの螺旋状のループ同士が絡まり、図21に示
すような線材もつれを生じることがある。その結果、線
材Aの円滑な取り出しが困難になったり、断線を引き起
こしたりする頻度が多くなり、コアレスコイルが使用で
きなくなるほか、後工程の線材処理加工設備の稼働率を
低下させることがあった。
【0016】本発明は上記の課題を解決し、コアレスコ
イルの使用時に、線材巻崩れや線材もつれが生じず、線
材Aが無くなるまで、線材を連続して円滑に取り出すこ
とができ、更に、後工程の線材処理加工設備の稼働率を
高めることができるコアレスコイル及びその製造方法を
提供する。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の請求項1に記載された発明は、線材がコイ
ル状に巻回されて中心にテーパ穴を有するコイル巻層体
が形成され、線材をコイル巻層体の内側からテーパ穴を
通して取り出せるようにしたコアレスコイルにおいて、
前記コイル巻層体の任意層における線材の1周巻回ルー
プの残留ひずみを開放したときに得られる残留曲率が線
材をコイル状に巻回するときの巻取曲率よりも大きくな
るように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】上記構成のコアレスコイルによると、コイ
ル巻層体の任意層における線材の1周巻回ループの残留
ひずみを開放したときに得られる残留曲率が線材をコイ
ル状に巻回するときの巻取曲率よりも大きくなるように
構成されているので、線材をコイル巻層体の内側から取
り出して上方に末広がり状に開口するテーパ穴を通して
取り出す際、線材の取り出される巻層部分の線材がテー
パ穴の半径方向外側へ変位して広がろうとする。従っ
て、コイル巻層体の内側から取り出される線材がテーパ
穴の中心側へ変位して位置ずれを起こすようなことがな
く、コイル巻層体の内側から巻き解かれる線材量と、巻
き解かれた後、コイル巻層体の上方へ取り出される線材
量がほどよくバランスし、線材がテーパ穴内でだぶ付き
を起こさなくなる。
【0019】これにより、一度に3〜4ループ以上の線
材がテーパ穴内を落下して線材巻崩れを生じたり、さら
に、線材が上方に取り出されて螺旋状のループ同士が絡
まり、線材もつれを生じたりするようなこともなくな
る。その結果、線材を円滑に、また、取出し途中で断線
を引き起こすことなく、コイル巻層体の線材が無くなる
まで連続して取り出すことができる。更に線材の取り出
し中に断線等を生じにくくなり、コアレスコイルが使用
不能になるようなことが減少するので、後工程の線材処
理加工設備の稼動率を高めることができる。
【0020】また、本発明の請求項2に記載された発明
は、線材をガイドしながらスプールに供給するガイドシ
ーブをスプールに対して相対的に往復トラバースさせな
がら、線材をスプールのテーパ巻胴にコイル状に巻回し
てコイル巻層体を形成し、スプールを取り除いて得られ
るコアレスコイルの製造方法において、前記ガイドシー
ブとスプール間で線材にこれをスプールのテーパ巻胴に
巻回する方向とは逆方向の曲げ力を付与し、前記コイル
巻層体の任意層における線材の1周巻回ループの残留ひ
ずみを開放したときに得られる残留曲率が線材をコイル
状に巻回するときの巻取曲率よりも大きくなるように調
整しながら、線材をスプールのテーパ巻胴にコイル状に
巻回してコイル巻層体を形成することを特徴とするもの
である。
【0021】このような構成によると、前記ガイドシー
ブとスプール間で線材に曲げ力を付与して前記コイル巻
層体の任意層における線材の1周巻回ループの残留曲率
を調整するようにしたので、本発明のコアレスコイルを
歩留まりよく能率的に製造することができ、コアレスコ
イルのコストを安くすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】次に本発明に係るコアレスコイル
及びその製造方法を図面により詳細に説明する。なお、
従来のコアレスコイル、梱包等の部品で同一構造、機能
を有するものは同一符号を使用している。本発明のコア
レスコイルは、図1に示すように、線材Aがコイル状に
巻回されて中心にテーパ穴10aを有するコイル巻層体
10が形成され、コイル巻層体10の内側からテーパ穴
10aを通して線材Aを取り出せるようになっている。
また、本発明のコアレスコイルは、更に、コイル巻層体
10の任意層における線材Aを2箇所切断して線材Aの
1周巻回ループを採取し、水平な台等に置いてその残留
ひずみを開放したときに得られる該ループの残留曲率R
(開ループの巻き半径)が、図2に示すように、線材A
をスプール1のテーパ巻胴1aにコイル状に巻回すると
きの巻取曲率r(閉ループの巻き半径)よりも大きくな
るようになっている。前記残留曲率Rは採取した線材A
の1周巻回ループ(開ループ)の開いた両端部の間隔D
が(0.70〜4.00)rの範囲(0.70r≦D≦
4.00r)に入るようにして前記巻取曲率rよりも大
きく設定するのが望ましい。本発明のコアレスコイルは
以上のような構成になっている。
【0023】上記構成のコアレスコイルは保管、運搬等
の際、荷崩れ等が生じないように、図3に示すように、
コイル巻層体10のテーパ穴10aの中心軸線が垂直に
なるように、且つ、テーパ穴10aの穴径の大きい方が
上部に位置するように90度転回してパレット6に載置
する。そして、コイル巻層体10の外周を円周方向に数
箇所にわたり鋼帯等のバンド4で結束し、該コイル巻層
体10の外周を熱収縮性フイルム、シートからなるシュ
リンク梱包材5で覆って梱包し、保管、運搬等に供せら
れる。
【0024】このコアレスコイルを使用する場合には、
図4に示すように、コイル巻層体10の上端面に、塩化
ビニール樹脂或いはアクリル樹脂製の中空円板7を載せ
る。次いで、コイル巻層体10の上端面を覆うシュリン
ク梱包材5の中央部をカッタ等で開口する。次いで、コ
イル巻層体10を円周方向の数箇所で輪状にバインドし
て結束しているバンド4を、それぞれコイル巻層体10
の内側において、上下方向の中間適宜位置で上下に分断
し、上方の分断された各バンド4端末を上側へ折り曲げ
てコイル巻層体10の上方へ引き出し、これをそれぞれ
図5に示すようにバンド止め部8のバンド通し穴に内側
から外側へ通して止める。次いで、内筒体9をコイル巻
層体10のテーパ穴10aに挿入して保持し、コイル巻
層体10の最内層である1層目の線材Aを最下位置から
上方へ向けてテーパ穴10aの傾斜内面に沿ってスパイ
ラル状(らせん状)に巻き解きつつ、内筒体9の周囲を
スパイラル状に回しながらテーパ穴10aを通して上方
へ取り出す。
【0025】更に、1層目の線材Aの取り出しが終了し
たら、線材Aを2層目の上方から下方に向かって取り出
して行き、2層目の取り出しが終了したら、線材Aを3
層目の下方から上方に向かって取り出して行く。このよ
うにして、線材Aを上下方向に取り出し点を移動させな
がら、コイル巻層体10の半径方向内側の内層から外側
の外層に向かって、取り出し開始の段階から終了段階ま
で、上方に末広がり状に開口するテーパ穴10aの傾斜
内面に沿ってテーパ穴10aを通して上方へ取り出し、
コイル巻層体10の最外層の線材Aが取り出された時点
で線材Aの取り出し作業が終了する。
【0026】本発明のコアレスコイルを使用して線材A
を後工程で表面処理したり、伸線加工したり等する線材
処理加工設備に供給するために、図5に示すように、線
材Aをコイル巻層体10の内側から取り出して、上方に
末広がり状に開口するテーパ穴10aを通して上方へ取
り出す際、コイル巻層体10の任意層、即ち、線材Aが
取り出される巻層部分における線材Aの1周巻回ループ
の残留ひずみを開放したときに得られる残留曲率Rが,
図2に示すように、線材Aをコイル状に巻回するときの
巻取曲率rよりも大きくなるように構成されているの
で、図6に示すように、線材Aの取り出される巻層部分
の線材Aが弾発力でテーパ穴10aの半径方向外側へ変
位して広がろうとする。従って、コイル巻層体10の内
側から取り出される線材Aがテーパ穴10aの中心側へ
変位して位置ずれを起こすようなことがなくなり、コイ
ル巻層体10の内側から巻き解かれる線材量と、巻き解
かれた後、コイル巻層体10の上方へ取り出される線材
量がほどよくバランスし、線材Aがテーパ穴10a内で
だぶ付きを起こさなくなる。
【0027】これにより、一度に3〜4ループ以上の線
材Aがコイル巻層体10のテーパ穴10a内を落下して
線材巻崩れを生じたり、さらに、線材Aが上方に取り出
されて螺旋状のループ同士が絡まり、線材もつれを生じ
たりするようなこともなくなる。その結果、線材Aを円
滑に、また、取出し途中で断線を引き起こすことなく、
コイル巻層体10の線材Aが無くなるまで連続して取り
出すことができる。更に線材Aの取り出し中に断線等を
生じにくくなり、コアレスコイルが使用不能になるよう
なことが減少するので、後工程の線材処理加工設備の稼
動率を高めることができる。
【0028】次に、本発明のコアレスコイルの製造方法
を図7、8により説明する。先ず、図示しない線材圧延
機、伸線機等から送出される線材Aをガイドしながらス
プール1に供給するガイドシーブ2を、スプール1にお
けるテーパ巻胴1aの外径の小さい右方のトラバース反
転位置B(右側鍔の内側面近傍位置)に配置すると共
に、線材Aの巻始め端末をスプール1に固定する。
【0029】次に、スプール1を矢印方向へ起動回転す
ると共に、ガイドシーブ2をスプール1のテーパ巻胴1
aの外径が大きい左方に移動させ、線材Aを左方へトラ
バースさせると共に、前記ガイドシーブ2とスプール1
間で線材Aにこれをスプール1のテーパ巻胴1aに巻回
する方向とは逆方向の曲げ力を付与し、前記コイル巻層
体10の任意層における線材Aの1周巻回ループの残留
ひずみを開放したときに得られる残留曲率Rが線材Aを
コイル状に巻回するときの巻取曲率rよりも大きくなる
ように調整しながら、線材Aをスプール1のテーパ巻胴
1aにコイル状に巻回し、1層目の巻層(最内層)を形
成して行く。
【0030】前記ガイドシーブ2とスプール1間で線材
Aにこれをスプール1のテーパ巻胴1aに巻回する方向
とは逆方向の曲げ力を付与する方法としては、図7に示
すように、ガイドシーブ2とスプール1間に線材Aの蛇
行等の曲げ癖を除去して整直する整直器11を配設し、
その整直器11自体を所定量押し込むことにより行う。
このようにして、線材Aに所定の曲げ力を付与しなが
ら、形成されるコイル巻層体10の任意層における線材
Aの1周巻回ループの残留ひずみを開放したときに得ら
れる残留曲率Rが線材Aをコイル状に巻回するときの巻
取曲率rよりも大きくなるように調整しながら、線材A
をスプール1のテーパ巻胴1aにコイル状に巻回してコ
イル巻層体10を形成する。
【0031】整直器11としては、種々のものがある
が、例えば、線材Aの長さ方向に間隔をおいて線材Aを
はさむように千鳥状に配列される複数の固定ロール12
と少なくとも1個の可動ロール13とからなり、可動ロ
ール13を固定ロール12の方に所定量移動させて、両
ロール12、13を千鳥状に配列させることにより、線
材Aを整直するものである。整直器11の前記押し込み
量を大きくして線材Aに付与される曲げ力の大きさが大
きくなるほど、前記コイル巻層体10の任意層における
線材Aの1周巻回ループの残留ひずみを開放したときに
得られる残留曲率Rが線材Aをコイル状に巻回するとき
の巻取曲率rよりも大きくなる。
【0032】ところで、この残留曲率Rが大き過ぎる
と、スプール1のテーパ巻胴1aに巻回される線材Aに
巻き乱れが生じてテーパ巻胴1aに線材Aをきちんと巻
き取りにくくなったり、線材Aに無理な加工ひずみが生
じたりして好ましくない。一方、残留曲率Rが巻取曲率
rに接近し過ぎると(例えば、テーパ巻胴1aの外径の
大きくなる左方のトラバース反転位置Cで線材Aを巻回
する場合等)、線材Aをコイル巻層体10の内側から取
り出すとき、線材巻崩れや線材もつれが生じ易くなる。
そこで、線材Aの巻取性の向上と線材巻崩れやもつれ防
止を図るために、この残留曲率Rは前記採取した線材A
の1周巻回ループ(開ループ)の開いた両端部の間隔D
が(0.70〜4.00)rの範囲(0.70r≦D≦
4.00r)で前記巻取曲率rよりも大きくなるように
調整するのが望ましい。この調整は線材Aに付与する前
記曲げ力の大きさを適宜変えることにより行う。
【0033】このようにして、整直器11により線材A
に残留曲率Rが巻取曲率rよりも大きくなるように適宜
曲げ力を付与しながら、ガイドシーブ2及び整直器11
を同一方向に同一速度でトラーバスさせながら、線材A
をスプール1のテーパ巻胴1aに巻回して巻き取って行
く。そして、ガイドシーブ2及び整直器11が前記テー
パ巻胴1aの外径の大きい左方のトラバース反転位置C
(左側鍔の内側面近傍位置)に到達したら、ガイドシー
ブ2及び整直器11の移動を反転させて前記テーパ巻胴
1aの外径の小さい方に移動させ、線材Aを反転させて
右方にトラバースさせ、前記1層目の巻層(最内層)を
形成して行く方法と同じ方法により、即ち、線材Aに残
留曲率Rが巻取曲率rよりも大きくなるように適宜曲げ
力を付与しながら、前記テーパ巻胴1aにコイル状に巻
回し、2層目の巻層を形成して行く。
【0034】次に、ガイドシーブ2及び整直器11が前
記トラバース反転位置Bに到達したら、その移動を反転
させて左方に移動させ、以後、該シーブ2をそれぞれ所
定位置に固定配置されたトラバース反転位置B、C間で
往復移動させ、線材Aをトラバース反転位置B、C間で
往復トラバースさせながら、スプール1のテーパ巻胴1
aに同様な方法でコイル状に巻回し、3層目、4層目、
5層目、6層目等、多層の巻層を形成して行く。
【0035】このようにして、線材Aの巻量が満巻量又
はそれに近い巻量に到達したら、線材Aの巻層が内層か
ら外層へ進行するに伴い、左側のトラバース反転位置C
を右側のトラバース反転位置Bに近づく方向に漸次移動
させ、線材Aをコイル状に巻回して外形状が円筒形状に
なるよう整えて行く。その後、ガイドシーブ2の移動を
トラバース反転位置Bで停止させて線材Aの巻回を終了
し、図8に示すような中心にテーパ穴10aを有するコ
イル巻層体10を形成する。
【0036】なお、図示の方法では、線材Aの方をトラ
バースさせて線材Aをスプール1のテーパ巻胴1aに巻
回するようにしたが、ガイドシーブ2及び整直器11の
方を移動させず、スプール1の方を左右に往復トラバー
スさせて線材Aをテーパ巻胴1aに巻回し、コイル巻層
体10を形成するようにしてもよい。また、線材Aの1
層目(最内層)は、スプール1のテーパ巻胴1aの外径
が小さい方から線材Aを左方にトラバースさせながらコ
イル状に巻回して形成したが、逆にテーパ巻胴1aの外
径の大きいから線材Aを右方にトラバースさせながらコ
イル状に巻回して形成し、以後、前記した方法で2層目
以降の巻層を形成するようにしてもよい。
【0037】図9は図7に示すコアレスコイルの製造方
法とは異なるコアレスコイルの製造方法を示す概要図で
ある。このコアレスコイルの製造方法が図7に示すコア
レスコイルの製造方法と異なるところは、前記ガイドシ
ーブ2とスプール1間で線材Aにこれをスプール1のテ
ーパ巻胴1aに巻回する方向とは逆方向の曲げ力を付与
する方法として、整直器11の代わりに1個の曲げロー
ル14を用い、この曲げロール14を線材Aに当てて所
定量押し込むことにより付与する方法を採用したことで
ある。その他の製造方法は同じである。即ち、この曲げ
ロール14により、線材Aに所定の曲げ力を付与しなが
ら、ガイドシーブ2及び曲げロール14を同一方向に同
一速度でトラーバスさせ、線材Aをスプール1のテーパ
巻胴1aに巻回して巻き取って行く。この際、形成され
るコイル巻層体10の任意層における線材Aの1周巻回
ループの残留ひずみを開放したときに得られる残留曲率
Rが線材Aをコイル状に巻回するときの巻取曲率rより
も大きくなるように調整しながら、線材Aをスプール1
のテーパ巻胴1aにコイル状に巻回してコイル巻層体1
0を形成する方法であり、重複を避けるために詳細な説
明は省略する。
【0038】上記図7、8又は図9に示すような製造方
法で本発明コアレスコイルを製造すると、そのコアレス
コイルを歩留まりよく能率的に製造することができ、コ
アレスコイルのコストを安くすることができる。
【0039】次に図9に示す製造方法で本発明のコアレ
スコイル(図1参照)を試作し、このコアレスコイルを
用いて線材Aをコイル巻層体10の内側からテーパ穴1
0aを通して取り出す実験を行い、コイル巻層体10の
最内層から半径方向外側の最外層に至る距離18cm
(コイル上端部におけるコイル最内層から最外層までの
距離)の間で線材巻崩れが生じた回数を調査した結果を
図10に示す。これによると、本発明のコアレスコイル
では、コイル巻層体の最内層から線材Aの取り出しが行
われ、最外層まで進み、最外層から線材Aを取り出した
ときに、1回だけ線材巻崩れが生じただけで、それ以外
の線材巻崩れは生じなかった。
【0040】これに対して、図13、14に示す従来の
製造方法で従来のコアレスコイル(図12参照)を試作
し、このコアレスコイルを用いて線材Aをコイル巻層体
3の内側からテーパ穴3aを通して取り出す実験を行
い、コイル巻層体3の最内層から半径方向外側の最外層
に至る距離18cm(コイル上端部におけるコイル最内
層から最外層までの距離)の間で同様に線材巻崩れが生
じた回数を調査した結果を図11に示す。これによる
と、コイル巻層体3の最内層から外側に12cmの距離
の中間巻層まで線材Aの取り出しが行われたところで、
早くも線材Aの線材巻崩れが3回生じ、13cmのとこ
ろでも同じ3回生じ、14cmのところで10回と急激
に線材巻崩れの回数が増加し、15cmのところで、6
回と一旦減少したものの、16cmのところで、11回
と再び増加し、以後漸次増加して最外層の18cmのと
ころでは、16回の線材巻崩れが生じた。
【0041】上記の実験結果から明らかなように、本発
明のコアレスコイルを使用すると、コイル巻層体10の
内側から線材Aを取り出す際、最内層から最外層に至る
まで殆ど線材巻崩れや線材もつれを生じることなく、円
滑に線材Aを取り出すことができる。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のコアレス
コイルによると、コイル巻層体の任意層における線材の
1周巻回ループの残留ひずみを開放したときに得られる
残留曲率が線材をコイル状に巻回するときの巻取曲率よ
りも大きくなるように構成されているので、線材をコイ
ル巻層体の内側から取り出して上方に末広がり状に開口
するテーパ穴を通して取り出す際、線材の取り出される
巻層部分の線材がテーパ穴の半径方向外側へ変位して広
がろうとして、コイル巻層体の内側から取り出される線
材がテーパ穴の中心側へ変位して位置ずれを起こすよう
なことがなくなる。これにより、一度に3〜4ループ以
上の線材がテーパ穴内を落下して線材巻崩れを生じた
り、さらに、線材が上方に取り出されて螺旋状のループ
同士が絡まり、線材もつれを生じたりするようなことも
なくなり、線材を円滑に、また、取出し途中で断線を引
き起こすことなく、コイル巻層体の線材が無くなるまで
連続して取り出すことができる。
【0043】また、線材の取り出し中に断線等を生じに
くくなり、コアレスコイルが使用不能になるようなこと
が減少するので、後工程の線材処理加工設備の稼動率を
高めることができる。
【0044】また、本発明のコアレスコイルの製造方法
によると、前記ガイドシーブとスプール間で線材にこれ
をスプールのテーパ巻胴に巻回する方向とは逆方向の曲
げ力を付与し、前記コイル巻層体の任意層における線材
の1周巻回ループの残留ひずみを開放したときに得られ
る残留曲率が線材をコイル状に巻回するときの巻取曲率
よりも大きくなるように調整しながら、線材をスプール
のテーパ巻胴にコイル状に巻回してコイル巻層体を形成
するので、本発明のコアレスコイルを歩留まりよく能率
的に製造することができ、コアレスコイルのコストを安
くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコアレスコイルを示す断面図である。
【図2】本発明のコアレスコイルにおいて、コイル巻層
体の任意層における線材の1周巻回ループを採取して水
平な台等に置き、ループの残留ひずみを開放したときに
得られる残留曲率が線材をコイル状に巻回するときの巻
取曲率よりも大きくなる状態を示す説明図である。
【図3】本発明のコアレスコイルの梱包状態を示す斜視
図である。
【図4】図3の梱包された状態のコアレスコイルから線
材を取り出して使用するために、コアレスコイルの上端
面に中空円板を載せた状態を示す斜視図である。
【図5】図4のコアレスコイルから線材を取り出す状態
を示す説明図である。
【図6】図5の状態で線材をコイル巻層体の内側からテ
ーパ穴を通して取り出す場合、線材が取り出される巻層
部分の線材がテーパ穴の半径方向外側へ変位して広がろ
うとする状態を示す説明図である。
【図7】本発明に係るコアレスコイルの製造方法の1実
施形態を示す概要図である。
【図8】図7のコアレスコイルの製造方法において、ス
プールのテーパ巻胴にコイル巻層体を形成した状態を示
す断面図である。
【図9】図7のコアレスコイルの製造方法とは異なる製
造方法を示す概要図である。
【図10】本発明のコアレスコイルを用いて線材をコイ
ル巻層体の内側からテーパ穴を通して取り出すとき、コ
イル巻層体の最内層から半径方向外側の最外層に至る距
離の間で線材巻崩れが生じた回数を示す図である。
【図11】従来のコアレスコイルを用いて線材をコイル
巻層体の内側からテーパ穴を通して取り出すとき、コイ
ル巻層体の最内層から半径方向外側の最外層に至る距離
の間で線材巻崩れが生じた回数を示す図である。
【図12】従来のコアレスコイルを示す断面図である。
【図13】従来のコアレスコイルの製造方法を示す概要
図である。
【図14】図13のコアレスコイルの製造方法におい
て、スプールのテーパ巻胴にコイル巻層体を形成した状
態を示す断面図である。
【図15】従来のコアレスコイルの梱包状態を示す斜視
図である。
【図16】図15の梱包された状態のコアレスコイルか
ら線材を取り出して使用するために、コアレスコイルの
上端面に中空円板を載せた状態を示す斜視図である。
【図17】図16のコアレスコイルから線材を取り出す
状態を示す説明図である。
【図18】従来のコアレスコイルにおいて、コイル巻層
体の任意層における線材の1周巻回ループを採取して水
平な台等に置き、ループの残留ひずみを開放したときに
得られる残留曲率が線材をコイル状に巻回するときの巻
取曲率よりも小さくなる状態を示す説明図である。
【図19】図17の状態で線材をコイル巻層体の内側か
らテーパ穴を通して取り出す場合、線材が取り出される
巻層部分の線材がテーパ穴の中心側へ移動しようとする
状態を示す説明図である。
【図20】図17の状態でコアレスコイルから線材を取
り出す際に、コアレスコイルのテーパ穴内で線材崩れが
発生している状態を示す図である。
【図21】図20の状態で線材を取り出した場合、コア
レスコイルの上方で線材もつれが発生している状態を示
す図である。
【符号の説明】
1 スプール 1a テーパ巻胴 2 ガイドシーブ 4 バンド 5 シュリンク梱包材 6 パレット 7 中空円板 8 バンド止め部 9 内筒体 10 コイル巻層体 10a テーパ穴 11 整直器 12 固定ロール 13 可動ロール 14 曲げロール A 線材 B トラバース反転位置 C トラバース反転位置
フロントページの続き (72)発明者 梅木 亨 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古 河電気工業株式会社内 Fターム(参考) 3F115 AA04 BA06 4E026 AA01 BA03 BA11 BA14 GA01

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 線材がコイル状に巻回されて中心にテー
    パ穴を有するコイル巻層体が形成され、線材をコイル巻
    層体の内側からテーパ穴を通して取り出せるようにした
    コアレスコイルにおいて、前記コイル巻層体の任意層に
    おける線材の1周巻回ループの残留ひずみを開放したと
    きに得られる残留曲率が線材をコイル状に巻回するとき
    の巻取曲率よりも大きくなるように構成されていること
    を特徴とするコアレスコイル。
  2. 【請求項2】 線材をガイドしながらスプールに供給す
    るガイドシーブをスプールに対して相対的に往復トラバ
    ースさせながら、線材をスプールのテーパ巻胴にコイル
    状に巻回してコイル巻層体を形成し、スプールを取り除
    いて得られるコアレスコイルの製造方法において、前記
    ガイドシーブとスプール間で線材にこれをスプールのテ
    ーパ巻胴に巻回する方向とは逆方向の曲げ力を付与し、
    前記コイル巻層体の任意層における線材の1周巻回ルー
    プの残留ひずみを開放したときに得られる残留曲率が線
    材をコイル状に巻回するときの巻取曲率よりも大きくな
    るように調整しながら、線材をスプールのテーパ巻胴に
    コイル状に巻回してコイル巻層体を形成することを特徴
    とするコアレスコイルの製造方法。
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