JP2003183646A - 複酸化物蛍光体薄膜及びその製造方法 - Google Patents

複酸化物蛍光体薄膜及びその製造方法

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JP2003183646A JP2001390744A JP2001390744A JP2003183646A JP 2003183646 A JP2003183646 A JP 2003183646A JP 2001390744 A JP2001390744 A JP 2001390744A JP 2001390744 A JP2001390744 A JP 2001390744A JP 2003183646 A JP2003183646 A JP 2003183646A
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oxide phosphor
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Yasuo Iida
康夫 飯田
Kazumi Kato
一実 加藤
Masaharu Okazaki
正治 岡嵜
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 複酸化物蛍光体薄膜及びその製造方法を提供
する。 【解決手段】 複酸化物蛍光体の薄膜を該複酸化物を構
成する成分酸化物薄膜の層間反応により作製する方法で
あって、該複酸化物を構成する成分酸化物薄膜を発光中
心となる金属イオンを任意に添加して基板上に1回以上
積層した後、加熱処理を行うことにより、成分酸化物薄
膜間の反応を進行させて目的とする複酸化物蛍光体層を
薄膜内に形成させることを特徴とする複酸化物蛍光体薄
膜の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複酸化物蛍光体薄
膜及びその製造方法に関するものであり、更に詳しく
は、所望する複酸化物蛍光体薄膜の設計自由度を確保
し、良質の高機能蛍光体薄膜を簡便な操作で作製するこ
とを可能とする新しい複酸化物蛍光体薄膜の作製方法に
関するものであり、特に、平面発光体として照明用に用
いる低価格・大面積の酸化物薄膜エレクトロルミネッセ
ンス(EL)素子用の高輝度蛍光体薄膜の製造に有用で
あり、また、蛍光薄膜を付与することによって付加価値
を高めた装飾用ガラス材、装飾品の製造に用いることが
可能な複酸化物蛍光体薄膜の製造に有用である。
【0002】
【従来の技術】従来、EL素子用の蛍光体薄膜の母体材
料としては、硫化亜鉛に代表される硫化物が使用されて
きたが、湿度に弱いという硫化物系の欠点があり、それ
を克服するために、各種の複酸化物を母体とした蛍光体
薄膜が開発されてきた。この蛍光体薄膜の製造方法とし
ては、従来、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、及び
スパッタ法に代表される物理的な薄膜堆積法や、気相成
長法、ゾルゲル法及び化学的溶液法に代表される化学的
な薄膜堆積法が用いられている。
【0003】しかしながら、従来の製造方法のうち、物
理的な薄膜堆積法については、複雑な化学組成を有する
複酸化物蛍光体を作製する場合、成分酸化物間の蒸発挙
動の差により原料酸化物と堆積酸化物との組成が大きく
ずれることが起こりやすいという問題がある。一方、化
学的な薄膜堆積法についても、目的成分をガスとして供
給する気相成長法では、すべての成分を同時に堆積させ
る複酸化物系の場合、ハロゲン化物や有機金属間の蒸気
圧差や酸素との反応性の差により多成分複酸化物への適
用は困難となる。また、溶液反応を用いるゾルゲル法、
及び化学溶液法においても複酸化物を構成する金属イオ
ンの反応性が大きく異なる場合が多く、安定な塗布溶液
を作製するのが困難な場合が多く、製造法の設計の段階
で母体複酸化物系に制限を設けざるを得ないという問題
がある。物理的製膜法による蛍光体膜作製における組成
変化の問題は、例えば、Thin Solid Films, 303 (1997)
76-83. にテルビウムをドープした酸化イットリウム蛍
光体をレーザーアブレーション法により作製する場合に
ついて議論されており、チャンバー内の酸素圧やターゲ
ット組成により蛍光特性が大きく変動することが示され
ている。また、化学的製膜法においては、例えば、Jpn.
J. Appl. Phys., 38 (1999) 5417-22. において、複酸
化物薄膜を得るためには目的酸化物に対応したトリプル
アルコキシドを作製することが必要であるなど、複雑な
操作が必要とされることが示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような状況の中
で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記製造方
法の問題点を確実に解消し得る新しい蛍光体薄膜の製造
技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた
結果、複酸化物を構成する成分酸化物薄膜の層間反応を
利用することにより所期の目的を達成し得ることを見出
し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、前記
従来の蛍光体薄膜の製造方法の問題点を考慮し、所望す
る複酸化物蛍光体薄膜の設計自由度を確保し、良質の高
機能蛍光薄膜を簡便なプロセスで製造できる方法を提供
することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明は、以下の技術的手段から構成される。 (1)複酸化物蛍光体の薄膜を該複酸化物を構成する成
分酸化物薄膜の層間反応により作製する方法であって、
該複酸化物を構成する成分酸化物薄膜を発光中心となる
金属イオンを任意に添加して基板上に1回以上積層した
後、加熱処理を行うことにより、成分酸化物薄膜間の反
応を進行させて目的とする複酸化物蛍光体層を薄膜内に
形成させることを特徴とする複酸化物蛍光体薄膜の製造
方法。 (2)成分酸化物の溶液濃度、積層回数を増減させるこ
とにより複酸化物蛍光体の組成を制御することを特徴と
する前記(1)に記載の複酸化物蛍光体薄膜の製造方
法。 (3)発光中心となる金属イオン源の濃度、積層回数を
増減させることにより発光中心となる金属イオンの濃度
分布を制御することを特徴とする前記(1)に記載の複
酸化物蛍光体薄膜の製造方法。 (4)加熱処理を400〜1800℃で行うことを特徴
とする前記(1)に記載の複酸化物蛍光体薄膜の製造方
法。 (5)目的とする複酸化物を形成させた後、更に加熱処
理を行い金属イオンを活性化させることを特徴とする前
記(1)に記載の複酸化物蛍光体薄膜の製造方法。 (6)前記(1)から(5)のいずれかに記載の製造方
法で作製された、成分酸化物薄膜の層間反応により形成
された複酸化物蛍光体を発光層とすることを特徴とする
複酸化物蛍光体薄膜。 (7)薄膜の深さ方向に複酸化物蛍光体層の組成が制御
されたことを特徴とする前記(6)に記載の複酸化物蛍
光体薄膜。 (8)薄膜の深さ方向に発光中心となる金属イオン濃度
の制御されたことを特徴とする前記(6)に記載の複酸
化物蛍光体薄膜。 (9)可視域で透明であることを特徴とする前記(6)
に記載の複酸化物蛍光体薄膜。
【0006】
【発明の実施の形態】次に、本発明について更に詳細に
説明する。本発明では、複酸化物蛍光体の形成を成分酸
化物薄膜間の反応により行うことを特徴としており、こ
れにより、複酸化物形成における出発物質作製の困難性
を克服する。このことにより、母体複酸化物作製の自由
度を大幅に増加させることが可能となり、高機能蛍光体
の作製や設計を容易にすることが可能となる。また、薄
膜内における母体成分の深さ方向での組成変化や発光中
心となる金属イオンの濃度分布を構成薄膜の積層回数や
積層膜厚を変えることにより容易に設計し、制御するこ
とが可能であり、それにより、複酸化物蛍光体薄膜の高
輝度・高効率化を達成することができる。
【0007】本発明は、複酸化物を母体とする蛍光体薄
膜の作製に有効であり、本発明においては、これらの母
体として、特に、反応性の異なる金属イオンを構成成分
とするアルカリ土類金属アルミネート、アルカリ金属土
類ガレート、亜鉛シリケート、亜鉛ジャーマネート、亜
鉛ガレート、亜鉛インレート、亜鉛アルミネートなどを
用いることができる。これらは、出発物質の製造容易性
の確保、元素間の組み合わせの制限緩和に有効、かつ好
適に用いることができるが、これらに制限されるもので
はない。
【0008】また、本発明においては、反応性の似た金
属イオンを構成成分とする複酸化物蛍光体の母体とし
て、例えば、イットリウムアルミネート、イットリウム
ガレート、希土類アルミネート、希土類ガレートなどを
用いることができる。これらは、深さ方向で母体組成を
変化させて望ましい機能を得るのに有効、かつ好適に用
いることができるが、これらに制限されるものではな
い。本発明において、薄膜の深さ方向に複酸化物蛍光体
発光層の組成が制御されたことは、エレクトロルミネッ
センス素子蛍光体や発光表示管蛍光体において重要な電
気的性質、即ち電気伝導度や誘電率の制御を可能にする
ことを意味し、素子の性能向上に多大の効果をもたら
す。
【0009】また、発光中心となる金属イオンとして
は、より安定な成分酸化物を選択することが可能であ
り、通常使用されるマンガン、クロム、銅などの遷移金
属、サマリウム、ユーロピウム、プラセオジウム、ツリ
ウムなどの希土類を用いることが可能であるが、これら
に制限されるものではない。更に、これらの発光中心と
なる金属イオンを、特定の構成酸化物層に添加するこ
と、複数回の積層において特定の積層時に導入すること
等によって、深さ方向での金属イオンの濃度分布の制御
が可能となり、これにより、他種イオンの干渉や濃度消
光など発光中心イオンが近接して存在することによる負
の影響を緩和することができる。
【0010】このような複酸化物蛍光体薄膜を得るため
の積層法としては、例えば、電子ビーム蒸着法、抵抗加
熱蒸着法、及びスパッタ法に代表される物理的な薄膜堆
積法や、気相成長法、ゾルゲル法及び化学的溶液法に代
表される化学的な薄膜堆積法が用いられるが、積層後に
構成酸化物層間での反応を利用する本発明においては、
積層時に結晶性を高めるような条件は抑えることが望ま
しい。例えば、物理的堆積法においては、基板温度は6
00℃以下に抑えることが望ましい。化学的積層法にお
いても同様であるが、常温での積層を行うゾルゲル法、
及び化学溶液法においては、有機物分解温度やアニーリ
ング温度を500℃程度までに抑えることが望ましい。
【0011】複酸化物蛍光体薄膜の全体としての膜厚
は、例えば、10nm〜数μmが例示されるが、特に制
限されるものはない。また、反応を行わせる成分酸化物
薄膜においては、その膜厚は、例えば、数nm〜1μm
程度が好ましいが、用途によっては数μm程度の厚さの
薄膜間の反応において蛍光体層を形成することが有用な
場合もある。薄膜間反応による複酸化物蛍光体薄膜は界
面において進行する反応であり膜厚に関する自由度は大
きい。
【0012】本発明においては、層間反応を進行させる
ために、加熱処理を行うが、この場合、500℃から1
600℃程度の基板や薄膜が溶融しない程度までの温度
範囲を用いることができる。熱源としては、通常の電気
炉加熱や、レーザー光による特定位置への加熱が有効で
ある。また、層間反応による複酸化物蛍光体を形成させ
た後、更に、窒素ガスなどの不活性弱還元雰囲気や5%
水素/アルゴン希釈の雰囲気において加熱処理を行い、
金属イオンを活性化させることができる。その加熱条件
としては、例えば、400℃1時間から500℃3時間
程度の比較的低温短時間で進行させることが望ましい。
層間反応を進行させるための熱処理は、層間反応という
固体反応を進行させるために比較的高い温度で長時間行
うことが必要である。この間に、薄層界面に新しい蛍光
体多結晶層を形成し、金属イオンにおいても最も安定で
蛍光強度の得やすいサイトに移動、安定化することが期
待される。一方、金属イオンの活性化は、例えば、3価
のマンガンイオンを2価にするという操作で還元雰囲気
を用いれば比較的低温で短時間に進行させることが可能
である。また、金属イオンの価数を変化させることの必
要のない金属イオン、例えば、3価の希土類金属イオン
(Eu,Tm,Pr等)については活性化のための処理
はまったく必要がない。
【0013】基板として用いる材料は、層間反応時の加
熱温度に耐えうるものであれば特に限定されるものでは
ないが、具体的には、例えば、アルミナ、ジルコニア、
ムライト、フォルステライト、窒化アルミニウム、耐熱
性ガラス、石英、シリコンウエハー、チタン、ニッケ
ル、ステンレスなどの基板を例示することができる。本
発明において、可視域で透明である製品を製造するに
は、上記例示基板のうち石英、耐熱性ガラス、透光性ア
ルミナなどの基板を用いればよい。
【0014】本発明では、複酸化物を構成する成分酸化
物の薄膜を反応活性な状態で積層し、その後、加熱処理
を行うことによって、目的とする複酸化物蛍光体を得
る。発光中心となる金属イオンは、成分酸化物の内、添
加の容易な成分、あるいはより安定な成分に添加する。
本発明の製造方法により、薄膜の深さ方向における母体
成分組成の制御や、発光中心となる金属イオンの濃度設
計が可能となる。また、本発明により、各種製膜法にお
ける出発物質の調製の容易さや自由度を増すことが可能
となり、多種類の、かつ性能の良い蛍光体薄膜の製造が
可能となる。
【0015】
【作用】本発明では、複酸化物を構成する成分酸化物の
薄膜を、それぞれの成分ごとに、あるいは適当な組み合
わせのもとに、作製の容易な出発物質を用いて積層し、
また、発光中心となる金属イオンもその安定性や母体複
酸化物における置換位置を考慮して、もっとも適当な成
分に添加する。薄膜深さ方向での母体複酸化物の成分設
計は、積層の回数や成分濃度の調整により実現する。こ
のようにして作製した積層薄膜を加熱処理することによ
って薄層間の反応を促して目的の複酸化物を形成させ、
それにより、蛍光体としての機能を発現させる。
【0016】
【実施例】次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説
明する。 実施例1 本実施例では、蛍光体母体として、酸化亜鉛薄膜と二酸
化ケイ素薄膜の薄膜間反応により形成した亜鉛シリケー
トを用い、発光中心となる金属イオンとしてはマンガン
を用いた蛍光体薄膜の場合について説明する。薄膜形成
はディプコーティングを用いた化学溶液法により行っ
た。酸化亜鉛溶液については、酢酸亜鉛4.4g及び発
光中心となる金属イオン源として酢酸マンガン0.01
2gを、安定剤として1.2gのエチレングリコールを
添加したエタノール200mlに溶解した後、3時間程
度加熱しながら少しずつ溶媒を蒸留するという操作によ
り、全容50mlとしたものを使用した。本操作によ
り、溶液中には酸化亜鉛ナノクラスターが形成され、安
定な塗布液として使用できる。二酸化ケイ素溶液につい
ては、テトラエチルシリケート8.3gをエタノール7
5ml、水20ml、酢酸5mlの混合溶媒中で24時
間加水分解したものを使用した。
【0017】石英基板上にまず酸化亜鉛薄膜を4回積層
させた後に、二酸化ケイ素膜を2回積層させた。どちら
の構成酸化物においても、空気を流し400℃に加熱し
た環状炉に導入することにより有機物の熱分解、酸化物
形成を行った。これらの操作により、おおよそ100n
mの厚さの反応性を維持した各構成酸化物薄膜を形成す
ることができた。このときの溶液濃度や積層回数を増減
させることにより構成酸化物薄膜の厚さ、成分量を制御
することはきわめて容易である。積層終了後、900℃
2時間の加熱処理により薄膜間での反応を進行させ、ケ
イ酸亜鉛蛍光体を形成させた。更に、5%水素/アルゴ
ン希釈の雰囲気において400℃1時間の加熱処理を行
い、マンガンイオンを2価として活性化させた。
【0018】図1は、本操作により複酸化物蛍光体薄膜
が作製される様子を模式的に示したものである。図2
に、作製した蛍光体薄膜から得られた蛍光スペクトルと
励起スペクトルを示した。亜鉛シリケートを母体とする
Mn2+イオンに特徴的な緑色蛍光が観測され、蛍光体薄
膜の形成が確認できた。市販の短波長UVランプによる
室内光下での肉眼観察でもはっきりと蛍光発光が認めら
れた。図3に、紫外可視透過スペクトルを示した。広範
囲の領域で透過率90%以上を確保するとともに、均一
膜に特徴的な干渉パターンが現れている。このパターン
から膜厚を見積もることができ、おおよそ150nm厚
の薄膜が得られていることがわかった。
【0019】実施例2 蛍光体母体として、酸化亜鉛薄膜と酸化ガリウム薄膜の
薄膜間反応により形成した亜鉛ガレートを用い、発光中
心となる金属イオンとしてはクロムを用いた蛍光体薄膜
の場合について説明する。薄膜形成はディプコーティン
グを用いた化学溶液法により行った。酸化亜鉛薄膜は、
実施例1と同様に作製した。酸化ガリウム薄膜は、ガリ
ウムアセチルアセチナート2gをエタノール30mlに
溶解し、更にクエン酸を2g加えたものに少量のエタノ
ール中アンモニアを加えpHを弱酸性とした溶液を塗布
液として作製した。発光中心となるクロムイオンは、硝
酸クロムとして0.010gを本溶液に添加した。石英
基板上にまず酸化亜鉛薄膜を4回積層させた後に、酸化
ガリウム膜を4回積層させた。
【0020】どちらの構成酸化物薄膜においても、空気
を流し400℃に加熱した環状炉に導入することにより
有機物の熱分解、酸化物形成を行った。これらの操作に
より、おおよそ100nmの厚さの各構成酸化物薄膜を
形成した。積層終了後、800℃6時間の加熱処理によ
り薄膜間での反応を進行させ、亜鉛ガレート蛍光体を形
成させた。更に、5%水素/アルゴン希釈の雰囲気にお
いて400℃1時間の加熱処理を行い、クロムイオンを
活性化させた。図4に、このようにして作製した蛍光体
薄膜から得られた蛍光スペクトルと励起スペクトルを示
した。亜鉛ガレートを母体とするCr3+イオンに特徴的
な赤色蛍光が観測され、蛍光体薄膜の形成が確認でき
た。市販の短波長UVランプによる室内光下での肉眼観
察でもはっきりと蛍光発光が認められた。作製した薄膜
は透明であり300nm以上の波長で透過率90%を示
した。
【0021】実施例3 石英板上に二酸化ケイ素/酸化亜鉛(マンガン添加)/
二酸化ケイ素/酸化亜鉛/酸化ガリウム(クロム添加)
という積層薄膜を形成し、2つの異なった発光中心金属
を薄膜の異なる層内に導入した蛍光体薄膜を作製した。
図5は、本操作により複酸化物蛍光体薄膜が作製される
様子を模式的に示したものである。各構成酸化物薄膜は
実施例1及び実施例2と同様の塗布液を用いて作製し
た。各層の積層回数は2ないし4回とした。積層後の加
熱処理については実施例2と同様とした。図6に、この
ようにして作製した蛍光体薄膜から得られた蛍光スペク
トルを示した。亜鉛シリケートを母体とするMn2+イオ
ンに特徴的なピークと、亜鉛ガレートを母体とするCr
3+イオンに特徴的なピークが同時に観測され、それぞれ
の発光中心が形成できていることが確認できた。
【0022】以上の実施例では、蛍光体母体複酸化物と
して亜鉛シリケートあるいは亜鉛ガレートを、また、発
光中心となる金属イオンとしてマンガン及びクロムを用
いて蛍光体薄膜を作製した場合について説明したが、本
発明は、複酸化物蛍光体薄膜作製において、複酸化物を
構成する成分酸化物薄膜間の反応により蛍光体母体を形
成することを特徴とした蛍光体薄膜の製造方法に関する
ものであり、従って、蛍光体母体複酸化物や発光中心と
なる金属イオンについては特に制限されるものではな
く、適宜のものを使用することができる。
【0023】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、複酸化
物蛍光体薄膜及びその製造方法に係るものであり、本発
明によれば、1)複酸化物を構成する成分酸化物薄膜の
層間反応により複酸化物蛍光体薄膜を作製することがで
きる、2)成分酸化物の溶液濃度、積層回数を増減させ
ることにより複酸化物蛍光体の組成を任意に制御するこ
とができる、3)複酸化物蛍光体薄膜層の形成と発光中
心となる金属イオンの添加方法、濃度、更に分布を容易
に制御することが可能である、4)高輝度、高効率の蛍
光体薄膜を簡便な操作で製造することができ、その実用
的価値は大きい、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】Zn2 SiO4 :Mn蛍光体薄膜形成過程の模
式図を示す。
【図2】Zn2 SiO4 :Mn蛍光体薄膜の蛍光スペク
トルを示す。
【図3】Zn2 SiO4 :Mn蛍光体薄膜の可視紫外透
過スペクトルを示す。
【図4】ZnGa2 4 :Cr蛍光体薄膜の蛍光スペク
トルを示す。
【図5】Zn2 SiO4 :Mn/ZnGa2 4 :Cr
積層蛍光体薄膜形成過程の模式図を示す。
【図6】Zn2 SiO4 :Mn/ZnGa24 :Cr
積層蛍光体薄膜の蛍光スペクトルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C09K 11/59 CPN C09K 11/59 CPN CPR CPR 11/62 11/62 (72)発明者 岡嵜 正治 愛知県名古屋市守山区大字下志段味字穴ケ 洞2266−98 独立行政法人産業技術総合研 究所中部センター内 Fターム(参考) 3K007 AB02 AB18 FA01 FA03 4H001 CA01 CF01 XA08 XA14 XA30 XA31 YA24 YA25

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複酸化物蛍光体の薄膜を該複酸化物を構
    成する成分酸化物薄膜の層間反応により作製する方法で
    あって、該複酸化物を構成する成分酸化物薄膜を発光中
    心となる金属イオンを任意に添加して基板上に1回以上
    積層した後、加熱処理を行うことにより、成分酸化物薄
    膜間の反応を進行させて目的とする複酸化物蛍光体層を
    薄膜内に形成させることを特徴とする複酸化物蛍光体薄
    膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 成分酸化物の溶液濃度、積層回数を増減
    させることにより複酸化物蛍光体の組成を制御すること
    を特徴とする請求項1に記載の複酸化物蛍光体薄膜の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 発光中心となる金属イオン源の濃度、積
    層回数を増減させることにより発光中心となる金属イオ
    ンの濃度分布を制御することを特徴とする請求項1に記
    載の複酸化物蛍光体薄膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 加熱処理を400〜1800℃で行うこ
    とを特徴とする請求項1に記載の複酸化物蛍光体薄膜の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 目的とする複酸化物を形成させた後、更
    に加熱処理を行い金属イオンを活性化させることを特徴
    とする請求項1に記載の複酸化物蛍光体薄膜の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれかに記載の製造
    方法で作製された、成分酸化物薄膜の層間反応により形
    成された複酸化物蛍光体を発光層とすることを特徴とす
    る複酸化物蛍光体薄膜。
  7. 【請求項7】 薄膜の深さ方向に複酸化物蛍光体層の組
    成が制御されたことを特徴とする請求項6に記載の複酸
    化物蛍光体薄膜。
  8. 【請求項8】 薄膜の深さ方向に発光中心となる金属イ
    オン濃度の制御されたことを特徴とする請求項6に記載
    の複酸化物蛍光体薄膜。
  9. 【請求項9】 可視域で透明であることを特徴とする請
    求項6に記載の複酸化物蛍光体薄膜。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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