JP2003183247A - アルキルチオ及びヒドロキシ置換基を含有するジチオカルバメート - Google Patents

アルキルチオ及びヒドロキシ置換基を含有するジチオカルバメート

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルキルチオ及びヒドロキシ置換基を含有す
るジチオカルバメート 【解決手段】 本発明は低リン潤滑剤の配合に使用する
ことができる、アルキルチオ及びヒドロキシ置換基を含
む新規なジチオカルバメートを含有する低コストの磨耗
防止剤に関する。磨耗防止に加えて、本発明のジチオカ
ルバメート組成物は潤滑油に実質的な酸化防止をもたら
し、燃料経済性に対して害にならない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は低リン潤滑剤の配合
に使用することができる低コストの磨耗防止剤に関す
る。磨耗防止に加えて、この新しい防止剤は実質的な酸
化防止をもたらし、燃料経済性に対して害にならない。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】いくつかの研究は、エ
ンジンオイルから誘導される化合物からの汚染の結果と
して排気ガスシステムが不活性化され得ることを示唆し
てきた。他の研究は、高金属/リン比を含む潤滑剤を使
用することにより、排気ガスシステムの耐久性が改善さ
れることがあることを示唆してきた。エンジンオイル中
のリンのレベルを低減することも触媒コンバーターの効
率を延ばす手段として示唆されてきた。エンジンオイル
中のこのリンは、磨耗の防止と酸化のコントロールに使
用される亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDD
P)に主な起源がある。ここ何年にもわたって、ZDD
Pは信頼性のある磨耗防止剤と酸化防止剤の有効性を示
してきた。大多数のエンジンメーカーは、磨耗防止が許
容し得るという実験室及びフィールドにおける広範な保
証なしで今日のZDDPレベルからの実質的な低減を含
むエンジンオイルを推奨しようとしない。APISJの
要請に合致する市販のエンジンオイルはZDDPに由来
するほぼ0.10重量%のリンを通常含有する。ZDD
Pの実質的な低減が触媒コンバーターの耐久性に要求さ
れるが、結果として著しく高いエンジン磨耗とオイル酸
化を生じる。エンジンオイル中の少量のZDDPの使用
を補償するために、補助的な磨耗及び酸化防止剤が必要
とされる。
【0003】少し以前からジチオカルバメートが当該技
術において既知であった。種々の構造的に異なるジチオ
カルバメートの例が次の特許に開示されている: 第3,407,222号、第5,693,598号、第
4,885,365号、第4,125,479号、第
5,902,776号、第3,867,359号、第
5,686,397号、第4,836,942号、第
4,758,362号、第3,509,051号、第
2,710,872号、第5,789,357号、第
4,927,552号、第5,629,272号、第
3,356,702号、第5,840,664号、第
4,957,643号、第4,876,375号、第
5,759,965号、第4,098,705号。 すべての特許、特許出願、及び論文または刊行物はこれ
らの全面的な開示のために引用によりこの明細書に含め
られている。
【0004】アルコキシ−及びヒドロキシル−置換ジチ
オカルバメートの例が当該技術で知られていて、例が次
のリフアレンスに開示されている:Zh.Org.Kh
im.(1991),27(1),161−170;Z
h.Org.Khim.(1988),24(2),2
86−29l;Z.Chem.(1987),27
(1),24−25;Zh.Org.Khim.(19
85).21(6),1173−l176;Nefte
khim(1983),23(3),409−412;
及びNeftepererab.Neftekhim.
(Moscow)(1983),(1),20−22。
【0005】アルキルグリシジルチオエーテルの製造方
法は米国特許第4,931,576号と第5,618,
778号に記述されている。
【0006】市販のジチオカルバメートの例は、Van
lube 7723、メチレンビス(ジブチルジチオカ
ルバメート)、Molyvan A、モリブデンオキシ
スルフィドジチオカルバメート、Molyvan 82
2、有機モリブデンジチオカルバメート、Vanlub
e AZ、亜鉛ジアミルジチオカルバメート、Vanl
ube 71、鉛ジアミルジチオカルバメート、Van
lube73、アンチモンジアルキルジチオカルバメー
ト、及びVanlube 732、ジチオカルバメート
誘導体を含み、これらはすべてR.T.Vanderb
ilt Company,Inc.から得られる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の態様によれば、
アルキルグリシジルチオエーテルと一級及び/または二
級アミン及び二硫化炭素とを反応させることにより、新
規なジチオカルバメート組成物が製造される。これらの
新しいジチオカルバメートは有効な酸化防止剤と磨耗防
止剤であり、低リン潤滑剤中でZDDPに対する部分的
な置換物として使用可能である。本発明のジチオカルバ
メートの追加のメリットは、これらが潤滑剤の摩擦変成
特性に害にならないことである。
【0008】本発明で記述される化合物は、低減された
レベルのZDDPを含有するエンジンオイル、すなわち
低減されたレベルのリンを含有するエンジンオイルでの
磨耗及び酸化性能を改善するように作用する。
【0009】これらの本発明の低コストの磨耗防止剤が
もたらす更なるメリットは、低レベルのZDDPを含有
する完全配合クランクケースエンジンオイルで摩擦を低
減し、それによりエンジンに改善された燃料経済性をも
たらすことである。
【0010】本発明は、例えば、クランクケースオイル
で磨耗防止剤及び酸化防止剤として有用性を有する新し
いクラスのアルキルチオ−及びヒドロキシル−置換ジチ
オカルバメート化合物を記述する。本発明のジチオカル
バメートを乗用車エンジンオイル、重作業用ジーゼルエ
ンジンオイル、鉄道用オイル、及び天然ガスエンジンオ
イルを含む広範で多様なクランクケースオイルで使用し
てもよい。これらを主要な磨耗防止成分として使用し
て、追加の磨耗防止添加剤を含有しない潤滑剤において
磨耗及び酸化防止を付与してもよい。この場合にはこれ
らは主要な磨耗防止成分と考えられる。このように使用
することにより、これらはゼロリンのクランクケースオ
イルの開発向けに適用可能である。また、一つあるいは
それ以上の追加の磨耗防止添加剤を含有する潤滑剤で、
これらを補助的な磨耗防止成分として使用してもよい。
この例は、低減されたレベルのリンを含有する乗用車エ
ンジンオイルでの補助的な磨耗防止成分としてのこれら
の使用である。
【0011】SJオイルに対する低減されたレベルのリ
ンは、1000ppmの最大の現行許容レベル未満の任
意のリンレベルとして定義される。通常の低減されたリ
ンレベルは約900ppmのリンから約500ppmあ
るいはそれ以下のリンといった低いレベルまでの範囲で
あってもよい。このような場合には、本発明のジチオカ
ルバメートをZDDPと組み合わせて使用して、磨耗及
び酸化性能の両方を付与してもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の態様に記載のアルキルチ
オ−及びヒドロキシル−置換ジチオカルバメートの化学
構造が下記に示される。ここで、R及び/またはR’の
少なくとも一つはアルキルであり、R”はアルキルまた
はR”'OCOCH2、またはR”'OCOCH2CH
2(ここで、R”'はアルキルであり、そしてXはSであ
る)であるという条件で、R及びR’は水素またはアル
キルであってもよい。好ましい態様においては、R”は
4ないしC12、更に好ましくはC9ないしC12の鎖長の
アルキルである。
【0013】
【化8】
【0014】本発明の態様においては、この添加剤が低
揮発性であり、上昇した運転温度で配合クランクケース
オイル中に残留するように、R、R’及びR”中の炭素
原子の総合計は10個以上であることが好ましい。10
個あるいはそれ以下の炭素の添加剤は、高温クランクケ
ース環境中での使用には揮発性が高過ぎる。使用中に、
このような揮発性成分は、磨耗防止及び酸化防止機能を
果たすことができないうちに、クランクケースから揮発
する。本発明によれば、R、R’、R"及びR”'に対す
るアルキル基は、炭素原子1から約22個まで変わって
もよく、線状あるいはn−及び分岐あるいはi−のすべ
ての可能なアルキル異性体を含むことができる。通常の
アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチ
ル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニ
ル、デシル、ウンデシル.ドデシル、トリデシル、テト
ラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシ
ル、及びオクタデシルを含み、各アルキルタイプのすべ
ての可能な異性体を含む。例えば、2−エチルヘキシル
アルキル基はオクチル基の異性体と考えられる。R及び
R’は3ないし8個の炭素原子、好ましくは4ないし6
個の炭素原子を有するアルキル基から独立に選択可能で
ある。
【0015】一つの態様においてはほぼ等しいモル濃度
でエポキシド、一級のあるいは二級アミン、及び二硫化
炭素を合体させることにより、本発明のアルキルチオ−
及びヒドロキシル−置換ジチオカルバメートを製造して
もよい。この反応は0ないし30°Cなどの低温で行な
われるが、ここでは例えば、80°Cなどの温度も有効
である。
【0016】かくして、もう一つの態様においては、本
発明は、アルキルグリシジルチオエーテルと一級及びま
たは二級アミン、及び二硫化炭素とを反応させることを
含んでなる組成物を製造する方法を指向する。
【0017】
【化9】
【0018】等モル濃度のこの3成分(エポキシド、ア
ミン、及び二硫化炭素)を使用するのが好ましい。しか
しながら、特にこの反応の完了直後にこの過剰を取り除
くことができる場合には、いずれか一つあるいは2つの
成分を小過剰で使用してもよい。例えば、エポキシド、
アミン、二硫化炭素の通常のモル比は、約1:1:1.
2とすることもある。
【0019】本発明の添加剤の製造に使用可能なエポキ
シドの例は、メチルグリシジルチオエーテル、エチルグ
リシジルチオエーテル.n−プロピルグリシジルチオエ
ーテル、n−ブチルグリシジルチオエーテル、s−ブチ
ルグリシジルチオエーテル、n−ヘキシルグリシジルチ
オエーテル、シクロヘキシルグリシジルチオエーテル、
n−オクチルグリシジルチオエーテル、t−ノニルグリ
シジルチオエーテル、n−ドデシルグリシジルチオエー
テル、t−ドデシルグリシジルチオエーテル、及びこれ
らの混合物を含むことができる。本発明で使用してもよ
い追加のエポキシドは、次の化学構造のものなどのカル
ボン酸エステル置換アルキルグリシジルチオエーテルを
含む:
【0020】
【化10】
【0021】ここで、このアルキル基はメチルからドデ
シルまで変更可能であり、線状及び分岐の両方のアルキ
ル基を含むことができる。
【0022】アルキルグリシジルチオエーテルの製造方
法は、米国特許第4,931,576号及び第5,61
8,778号に述べられている。
【0023】この反応で希釈剤を使用してもよいが、こ
のような希釈剤は必ずしも必要でない。事実、製造コス
トを低くし、製造サイクル時間を短く保つためには、希
釈剤を使用しないのが好ましい。希釈剤の例は水、アル
コール、炭化水素溶媒、芳香族溶媒、塩素化溶媒、極性
非プロトン性溶媒、希釈剤オイル、プロセスオイル、及
び基油を含む。希釈剤をエポキシドの製造から持ち越し
て、アルキルチオ−及びヒドロキシル置換ジチオカルバ
メートの以降の製造で使用してもよい。例えば、本発明
の一つの態様においては、このエポキシドを単離または
精製せずにこのメルカプタンとエピクロロヒドリンから
このエポキシドを最初に製造し、続いてこのエポキシド
とこのアミン及び二硫化炭素とを反応させることによ
り、このジチオカルバメートを2ステップで製造しても
よい。このような場合には、エポキシドの製造からの水
を保持し、この反応に持ち越して、本発明のアルキルチ
オ−及びヒドロキシル置換ジチオカルバメートの製造で
助けとする。この反応によれば、下記に示すように、一
つの反応器のみを用いて、2つの反応ステップで容易に
入手できる原料から新しいジチオカルバメートの製造が
可能になる。
【0024】
【化11】
【0025】かくして、もう一つの態様においては、本
発明は、メルカプタンとエピクロロヒドリンを反応させ
ることによりエポキシドを準備し、そしてこのエポキシ
ドとこのアミン及び二硫化炭素とを反応させるステップ
を含む方法を指向する。この方法の一つの態様において
は、上記アミンと二硫化炭素とを反応させる前にこのエ
ポキシドの単離あるいは精製をしない。
【0026】この反応で触媒を使用してもよいが、この
ような触媒は必ずしも必要でない。事実、製造コストを
低くし、製造サイクル時間を短く保つためには、触媒を
使用しないことが好ましい。
【0027】しかしながら、アルキルチオ−及びヒドロ
キシル−置換ジチオカルバメートの収率を改善するの
に、触媒が必要とされることもある。使用してもよい触
媒の例は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウム
などのアルカリ及びアルカリ土類金属水酸化物を含む。
この濃度がこのアミンに対して化学量論未満であるなら
ば、この触媒を真の触媒として使用してもよく、あるい
はこの濃度がこのアミンに対して化学量論あるいはそれ
以上であるならば、これを試剤として使用してもよい。
【0028】アミン、二硫化炭素及びエポキシドの間の
反応は発熱的であり、加熱を必要としない。事実、この
3つの成分の合体は実質的な熱を発生し、コントロール
と揮発性の二硫化炭素の損失防止のためには普通冷却を
必要とする。反応温度は、この成分の合体時には0℃か
ら30°Cまで、また成分添加後には20°Cから80
℃まで変動可能である。
【0029】通常の反応は添加速度により0°と5°C
の間でコントロールされた温度で二硫化炭素とエポキシ
ドを含有する攪拌溶液にこのアミンを1時間にわたって
添加することを含む。添加後、この反応混合物を60°
ないし80°Cで1ないし2時間加熱する。真空ストリ
ッピングを使用して、過剰あるいは残存の二硫化炭素ま
たは未反応のアミンを除去してもよい。真空ストリッピ
ングを概ね60°ないし80°Cで1ないし2時間行な
う。使用した場合には、溶媒を真空蒸留により除去して
もよい。使用した場合には、一連の水洗及び/または濾
過を行うことにより、触媒を除去してもよい。再度にな
るが、溶媒と触媒の不存在下でこれらの反応を行うこと
が好ましい。
【0030】生成する製品を実質的に変更することな
く、この反応に改変を加えてもよい。例えば、痕跡量の
過酸化水素を添加して、ある製品の臭気を低減させても
よい。
【0031】本発明のアルキルチオ−及びヒドロキシル
−置換ジチオカルバメートをこのメルカプタンから2ス
テップで製造する場合、少量の副生成物が生成すること
があり得る。例えば、第1のステップでの未反応のエピ
クロロヒドリンを2等量のアミン及び2等量の二硫化炭
素と反応して、下記に示す新規な生成物を生成してもよ
く、ここで、R及びR’は上記に定義した通りであり、
好ましくはC3あるいはそれ以上である。本発明に対し
ては、この新規な副生成物をこの明細書では2−ヒドロ
キシプロピル−1,3−ビス−ジアルキルカルバモジチ
オエートと呼ぶ。
【0032】
【化12】
【0033】製品中の少量のこの化合物の存在は害にな
らず、これはこのアルキルチオ−及びヒドロキシル−置
換ジチオカルバメートに類似した構造的な特徴を持って
いるので、実際にはメリットをもたらす。所望ならば、
この中間体のエポキシドを精製することにより、この化
合物を除去することができる。
【0034】第1のステップでの少量のエピクロロヒド
リンは2等量のメルカプタンと反応して、下記に示すタ
イプの生成物を生成することもあり、ここで、R”は上
記に定義した通りである。製品中のこの化合物の少量の
存在は害にならず、これは本発明のアルキルチオ−及び
ヒドロキシル−置換ジチオカルバメートに類似した構造
的な特徴を持っているので、実際にはメリットをもたら
す。中間体のエポキシドを精製することにより、この化
合物の存在を無くすことができる。
【0035】
【化13】
【0036】従来技術のジチオカルバメートと本発明の
アルキルチオ−及びヒドロキシル−置換ジチオカルバメ
ートの間の主要な差異は、この同一分子内の2つのタイ
プのイオウの存在にある。従来技術のジチオカルバメー
トはジチオカルバメート官能基の形のイオウを含有す
る。本発明の新しいジチオカルバメートは、ジチオカル
バメート官能基として、またスルフィド官能基として2
つの形のイオウを含有する。一方の形がスルフィドであ
り、他方の形がジチオカルバメートである2つの形のイ
オウの組み合せは、架橋ヒドロキシル基の存在と組み合
わさって、これらの新しいジチオカルバメートに酸化防
止剤と磨耗防止剤としての独自の性質を与え、一方、そ
れと同時に完成潤滑剤摩擦特性には有害でない。
【0037】この新しいアルキルチオ−及びヒドロキシ
ル−置換ジチオカルバメートの更なる利点は次の通りで
ある:無灰性である。これはジーゼルエンジンオイルと
天然ガスエンジンオイルなどの低灰分潤滑剤の配合で利
点となる。
【0038】リンを含有しない。これは主に乗用車エン
ジンオイル用の低リンあるいはゼロリン潤滑剤の配合で
利点となる。リンなしの添加剤の使用は触媒コンバータ
ー性能を改善し、結果として、乗用車寿命の続く間NO
x排出を低減させる。
【0039】低熱安定性を有する。これは、磨耗防止添
加剤としてこの新しいジチオカルバメートの性能を改善
する。ある市販のジチオカルバメートは極めて高い熱安
定性を有し、主に高温用途での酸化防止剤として使用さ
れる。このような高い熱安定性の市販のジチオカルバメ
ートの例は、メチレンビス(ジブチルジチオカルバメー
ト)である。
【0040】XがS以外の基に等しい場合には、得られ
るジチオカルバメートを含有する潤滑油の性能が著しく
低下することも判明した。この潤滑油の性能を最大とす
るためには、X=Sであることが重要である。下記の実
施例で提示される性能ベンチ試験でこのことを示す。
【0041】本発明のアルキルチオ−及びヒドロキシル
−置換ジチオカルバメートを広範で多様な潤滑剤で酸化
防止剤と磨耗防止添加剤として使用してもよい。通常の
用途の例は、乗用車エンジンオイル、重作業用ジーゼル
エンジンオイル、鉄道用オイル、天然ガスエンジンオイ
ル、工業用及び自動車用ギアオイル、自動及び手動伝動
装置流体、油圧オイル、防錆及び酸化防止オイル、ター
ビンオイル、及びグリースを含む。これらを広範で多様
な粘度グレードの油と基油タイプで使用してもよい。
【0042】これらのアルキルチオ−及びヒドロキシル
−置換ジチオカルバメートを使用して、現在使用されて
いるZDDPの全部あるいは一部を置き換えることによ
り、低リン乗用車エンジンオイルを配合することができ
る。ZDDPを超えるこれらの新しいジチオカルバメー
トの一つの利点は、本発明の添加剤がこの潤滑剤の摩擦
変成特性に害にならないことである。これはあるタイプ
の乗用車エンジンでの改善された燃料経済性性能と言い
換えることができる。もう一つの利点は、これらがリン
を含有しないということであり、乗用車オイルで使用さ
れるこのような化合物の量への遵守すべき上限は現在で
は存在しないことである。
【0043】このように、本発明は、また、本発明の新
規なジアルキルジチオカルバメート、並びにこのような
潤滑剤添加剤を含有する潤滑油を含んでなる潤滑剤添加
剤も提供する。本発明の潤滑油は、洗浄剤、分散剤、磨
耗防止剤、摩擦変成剤、流動点降下剤、発泡防止剤、防
食剤、防錆剤、及び粘度指数改善剤の少なくとも一つを
更に含有することができる。加えて、本発明の潤滑油
は、ジフェニルアミン、フェノチアジン、ヒンダードフ
ェノール、アルキルフェノール、イオウ化ヒンダードフ
ェノール、イオウ化アルキルフェノール、メチレン架橋
ヒンダードフェノール、スルフィド及びポリスルフィ
ド、イオウ化オレフィン、イオウ化脂及びイオウ化油か
ら選ばれる少なくとも一つの酸化防止剤を更に含有する
ことができる。
【0044】本発明の組成物はこの組成物を入れた潤滑
油の酸化を低減するのに有効である。加えて、本発明の
組成物を含有しないオイルにより潤滑されたエンジン中
で生成した堆積物に比べて、本発明の組成物は、この組
成物を含有する潤滑油により潤滑されたエンジン中での
堆積物生成を低減させる。また、本発明のジアルキルジ
チオカルバメート組成物を含有するオイルによりこのエ
ンジンを潤滑することにより、エンジン磨耗とエンジン
摩擦が低減される。本発明の組成物を含有するオイルに
より潤滑されるエンジンに比べて、燃料経済性、色調保
持、及び臭気低減もエンジンを潤滑するのに使用される
オイル中で本発明の組成物を使用することから誘導され
るメリットである。最後に、このような装置を本発明の
組成物とオイルにより潤滑する場合、改善されたエンジ
ン、自動伝動装置、タービン、ギア、及び油圧オイルが
本発明により提供される。
【0045】
【実施例】比較例1 250mLの四つ口丸底フラスコに磁気スターラー、添
加用漏斗、温度計、及び窒素入口を設ける。若干陽圧の
窒素雰囲気をこの反応フラスコ中で維持する。この反応
器に2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(28.0
g,0.150モル)と二硫化炭素(13.0g,0.
171モル)を装填する。この混合物をほぼ室温(水道
水浴)まで冷却により攪拌する。ビス(2−エチルヘキ
シル)アミン(35.8g,0.148モル)をこの反
応物に1時間かけてゆっくりと添加する。発熱が観察さ
れ、添加をコントロールして、反応温度を30°C以下
に保つ。室温で4時間後、この混合物を50°Cで1時
間穏やかに加熱する。この反応混合物を30°C以下に
冷却し、追加の量の二硫化炭素(1.2g,0.016
モル)を添加する。室温で攪拌を一夜継続する。次の
朝、この反応物を50°Cまで加熱し、真空下この温度
で1.5時間保持する。黄色の粘稠液体(74.7g,
98.7%)を単離する。イオウ含量=12.41重量
%(理論=12.72重量%)、窒素含量=2.94重
量%(理論=2.78重量%)。この液体の低分子量G
PC分析は、単一ピーク(100%,保持時間=22.
3分)の存在を示す。FT−IR、13C−NMR及び1
H−NMR分析によって、この混合物の主成分が次の化
学構造を有する3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2
−ヒドロキシプロピルビス(2−エチルヘキシル)カル
バモジチオエートであることが確認される:
【0046】
【化14】
【0047】比較例2 250mLの四つ口丸底フラスコに磁気スターラー、添
加用漏斗、温度計、及び窒素入口を設ける。若干陽圧の
窒素雰囲気をこの反応フラスコ中で維持する。この反応
器に2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(28.0
g,0.150モル)と二硫化炭素(14.3g,0.
188モル)を装填する。この混合物をほぼ室温(水道
水浴)まで冷却により攪拌する。ジブチルアミン(1
9.2g,0.149モル)をこの反応物に30分かけ
てゆっくりと添加する。発熱が観察され、添加をコント
ロールして、反応温度を30°C以下に保つ。室温で2
時間後、この混合物を35°Cで2時間穏やかに加熱
し、続いて50°Cで1時間加熱する。揮発性成分を真
空下50°Cで1.5時間除去する。黄色の粘稠液体
(57.8g,95.7%)を単離する。イオウ含量=
16.07重量%(理論=16.37重量%)、窒素含
量=3.86重量%(理論=3.58重量%)。この液
体の低分子量GPC分析は、主として一つのピーク(9
9%、保持時間=23.0分)の存在を示す。FT−I
R、13C−NMR及び1H−NMR分析によって、この
混合物の主成分が次の化学構造を有する3−(2−エチ
ルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルジブチル
カルバモジチオエートであることが確認される:
【0048】
【化15】
【0049】実施例(本発明)1 1000mLの四つ口丸底フラスコに機械的スターラ
ー、添加用漏斗、温度計、及びほぼ5°Cまで冷却した
還流コンデンサーを設ける。添加用漏斗からこの反応器
に、そして反応器から還流コンデンサーへと乾燥窒素を
通す。この反応器を氷水浴により冷やし、これにエピク
ロロヒドリン(46.3g,0.50モル)とt−ドデ
シルメルカプタン(101.1g,0.50モル)を装
填する。この混合物をほぼ5°−10°Cまで冷却しな
がら攪拌する。水酸化ナトリウム(21.2g,0.5
3モル)、水(230g)及び水酸化テトラブチルアン
モニウム(水中40%,6.0g,6ミリモル)を混合
しながら合体し、このエピクロロヒドリンとt−ドデシ
ルメルカプタンに1時間の時間をかけてゆっくり添加す
る。発熱が観察され、添加時に反応温度を5°−10°
Cの間に維持しながら冷却を継続する。添加後、この反
応物を50°Cで2時間加熱し、5°Cまで冷却する。
次に、二硫化炭素(40.0g,0.53モル)をこの
反応混合物に迅速に添加する。次に、反応温度を5°−
15°Cの間に維持しながら、ジブチルアミン(65.
0g,0.50モル)を1時間かけてゆっくり添加す
る。この反応物を一夜で室温まで温める。翌朝、この反
応物を80°Cで1時間加熱し、次に0.60gの30
%過酸化水素を70°Cで添加する。この反応物を70
°Cで更に15分間加熱し、50°Cまで冷却し、相を
分離する。この有機部分を2×100mLの水で洗浄す
る。この有機溶液を500mLの3つ口丸底フラスコに
戻し、残存する水を真空下60°Cで3時間除去する。
この生成物を粗い燒結ガラス漏斗により濾過して、次の
物理的及び化学的性質を持つ220.0g(94.5
%)の透明な黄色の粘稠液体を得る: 窒素含量 3.14重量% イオウ含量 19.68重量% 粘度@40°C 295cSt 低分子量GPC分析 97.1%ジアルキル化生成物
(保持時間=22.7分) FT−IR、13C−NMR及び1H−NMR分析によっ
て、この混合物の主成分が次の化学構造を有する3−
(t−ドデシルチオ)−2−ヒドロキシプロピルジブチ
ルカルバモジチオエートであることが確認される:
【0050】
【化16】
【0051】実施例(本発明)2 2000mLの四つ口丸底フラスコに機械的スターラ
ー、添加用漏斗、温度計、及びほぼ5°Cまで冷却した
還流コンデンサーを設ける。添加用漏斗からこの反応器
に、そして反応器から還流コンデンサーへと乾燥窒素を
通す。この反応器を氷水浴により冷やし、これにエピク
ロロヒドリン(138.9g,1.50モル)と2−エ
チルヘキシル3−メルカプトプロピオネート(327.
6g,1.50モル)を装填する。この混合物をほぼ5
°−10°Cまで冷却しながら攪拌する。水酸化ナトリ
ウム(63.0g,1.58モル)、水(700g)及
び水酸化テトラブチルアンモニウム(水中40%,1
8.8g,19ミリモル)を混合しながら合体し、この
エピクロロヒドリンと2−エチルヘキシル3−メルカプ
トプロピオネートに1時間の時間をかけてゆっくり添加
する。添加開始時に発熱が観察され、それによってこの
温度は80°Cに達する。残りの添加に対して反応温度
を5°−10°Cの間に維持しながら、この温度を5°
Cまで戻し、冷却を継続する。添加後、この反応物を5
0°Cで2時間加熱し、一夜冷却する。翌朝、この反応
物を5°Cまで冷却し、二硫化炭素(120.0g,
1.58モル)を添加する。次に、反応温度を5°−1
5°Cの間に維持しながら、ジブチルアミン(193.
8.0g,1.50モル)を1時間かけてゆっくり添加
する。この反応物を80°Cで1時間加熱し、次に5.
0gの30%過酸化水素を70°Cで添加する。この反
応物を70°Cで更に15分間加熱し、50°Cまで冷
却し、相を分離する。この有機部分を400mLの10
%重炭素ナトリウム水溶液で洗浄する。トルエン(30
0mL)を添加して、相分離を改善し、この有機溶液を
2×300mLの水で洗浄する。トルエンを水アスピレ
ーターの真空下ロータリーエバポレーターで除去する。
次に、この有機生成物を1000mLの3つ口丸底フラ
スコに戻し、残存する水を真空下60°Cで3時間除去
する。この生成物を粗い燒結ガラス漏斗により濾過し
て、次の物理的及び化学的性質を持つ692.0g(9
5.2%)の透明な黄色の粘稠液体を得る: 窒素含量 3.00重量% イオウ含量 19.28重量% 粘度@40°C 116cSt 低分子量GPC分析 91.3%ジアルキル化生成物
(保持時間=22.6分) FT−IR、13C−NMR及び1H−NMR分析によっ
て、この混合物の主成分が次の化学構造を有する2−エ
チルヘキシル3−[[3−[[(ジブチルアミノ)チオ
キソメチル]チオ]−2−ヒドロキシプロピル]チオ]
プロパノエートであることが確認される:
【0052】
【化17】
【0053】実施例(本発明)3 1000mLの四つ口丸底フラスコに機械的スターラ
ー、添加用漏斗、温度計、及びほぼ5°Cまで冷却した
還流コンデンサーを設ける。添加用漏斗からこの反応器
に、そして反応器から還流コンデンサーへと乾燥窒素を
通す。この反応器を氷水浴により冷やし、これにエピク
ロロヒドリン(46.3g,0.50モル)とn−ドデ
シルメルカプタン(101.1g,0.50モル)を装
填する。この混合物をほぼ5°−10°Cまで冷却しな
がら攪拌する。水酸化ナトリウム(21.2g,0.5
2モル)、水(240g)及び水酸化テトラブチルアン
モニウム(水中40%,7.0g,7ミリモル)を混合
しながら合体し、このエピクロロヒドリンとn−ドデシ
ルメルカプタンに1時間の時間をかけてゆっくり添加す
る。発熱が観察され、添加時に反応温度を5°−10°
Cの間に維持しながら冷却を継続する。添加後、この反
応物を50°Cで2時間加熱し、5°Cまで冷却する。
次に、二硫化炭素(40.0g,0.53モル)をこの
反応混合物に迅速に添加する。次に、反応温度を5°−
15°Cの間に維持しながら、ジブチルアミン(64.
6g,0.50モル)を1時間かけてゆっくり添加す
る。添加後、この反応物を80°Cで1時間加熱し、次
に1.0gの30%過酸化水素を80°Cで添加する。
この反応物を80°Cで更に30分間加熱し、50°C
まで冷却し、相を分離する。この有機部分を2×100
mLの水で洗浄する。この有機溶液を500mLの3つ
口丸底フラスコに戻し、残存する水を真空下60°Cで
2時間除去する。この生成物を粗い燒結ガラス漏斗によ
り濾過して、次の物理的及び化学的性質を持つ226.
6g(97.7%)の透明な黄色の粘稠液体を得る: 窒素含量 3.10重量% イオウ含量 19.21重量% 粘度40°C 85cSt 低分子量GPC分析 96.8%ジアルキル化生成物
(保持時間=22.3分) FT−IR、13C−NMR及び1H−NMR分析によっ
て、この混合物の主成分が次の化学構造を有する3−
(n−ドデシルチオ)−2−ヒドロキシプロピルジブチ
ルカルバモジチオエートであることが確認される:
【0054】
【化18】
【0055】実施例(本発明)4 250mLの四つ口丸底フラスコに機械的スターラー、
添加用漏斗、温度計、及びほぼ5°Cまで冷却した還流
コンデンサーを設ける。添加用漏斗から反応器に、そし
て反応器から還流コンデンサーへと乾燥窒素を通す。こ
の反応器を氷水浴により冷やし、これにエピクロロヒド
リン(11.6g,0.125モル)とt−ドデシルメ
ルカプタン(25.3g,0.125モル)を装填す
る。この混合物をほぼ5°−10°Cまで冷却しながら
攪拌する。水酸化ナトリウム(5.2g,0.13モ
ル)、水(60mL)及び水酸化テトラブチルアンモニ
ウム(水中40%,1.75g,1.7ミリモル)を混
合しながら合体し、このエピクロロヒドリンとt−ドデ
シルメルカプタンに1時間の時間をかけてゆっくり添加
する。発熱が観察され、添加時に反応温度を5°−10
°Cの間に維持しながら冷却を継続する。添加後、この
反応物を1−1/2時間かけて室温までゆっくり温め
る。この反応物を50°Cで更に1時間加熱し、次に5
°Cまで冷却する。二硫化炭素(10.0g,0.13
1モル)をこの反応混合物に迅速に添加する。次に、反
応温度を5°−15°Cの間に維持しながら、ビス(2
−エチルヘキシル)アミン(30.3g,0.125モ
ル)を1時間かけてゆっくり添加する。この反応物を8
0°Cで1時間加熱し、60mLのトルエンで希釈す
る。この相を分離し、この有機部分を50mLの水で洗
浄する。この有機溶液をMgSO 4で乾燥し、ロータリ
ーエバポレーターで2時間濃縮する。黄色の粘稠な液体
(69.9g,96.7%)を単離する。イオウ含量=
15.26重量%、窒素含量=2.66重量%。この液
体の低分子量GPC分析は、エピクロロヒドリンのジア
ルキル化により生成する生成物に対応する主ピーク(9
0.7%,保持時間=22.1分)の存在を示す。FT
−IR、13C−NMR及び1H−NMR分析によって、
この混合物の主成分が次の化学構造を有する3−(t−
ドデシルチオ)−2−ヒドロキシプロピルビス(2−エ
チルヘキシル)カルバモジチオエートであることが確認
される:
【0056】
【化19】
【0057】実施例(本発明)5 実施例(本発明)4に類似した方法で、2−エチルヘキ
シルアミンをt−ドデシルメルカプタン、エピクロロヒ
ドリン、及び二硫化炭素と反応させる。黄色の粘稠な液
体(56.2g,96.6%)を単離する。イオウ含量
=19.43重量%、窒素含量3.37重量%。この液
体の低分子量GPC分析は、エピクロロヒドリンのジア
ルキル化により生成する生成物に対応する主ピーク(7
9.9%,保持時間=22.5分)の存在を示す。FT
−IR、13C−NMR及び1H−NMR分析によって、
この混合物の主成分が次の化学構造を有する3−(t−
ドデシルチオ)−2−ヒドロキシプロピル2−エチルヘ
キシルカルバモジチオエートであることが確認される:
【0058】
【化20】
【0059】この新しいアルキルチオ−及びヒドロキシ
ル−置換ジチオカルバメートの利点を次の実施例で示
し、酸化防止剤、摩擦変成剤及び磨耗防止添加剤として
の有効性を示す。実施例6ではアルコキシ−及びヒドロ
キシル−置換ジチオカルバメートを超える酸化防止剤と
してのメリットを示す。実施例7では市販のジチオカル
バメートのVanlube 7723(DTC)と亜鉛
ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)を超える摩
擦変成剤としてのメリットを示す。実施例8ではDTC
を超える磨耗防止剤としてのメリットを示す。実施例9
では磨耗促進剤の存在下での磨耗防止剤としてのメリッ
トを示す。実施例10ではTGAを使用して、観察され
る性能を説明する。実施例6 種々のアルキルチオ−及びヒドロキシル−置換ジチオカ
ルバメートとアルコキシ−及びヒドロキシル−置換ジチ
オカルバメートを表1に示すように、SAEグレード5
W−30タイプモーターオイルの中にブレンドした。こ
れらのオイルは通常の分散剤防止剤パッケージを含有
し、これをAPI基IIカテゴリーに適合する低イオウ
及び低芳香族の水素クラッキング及びイソ脱ワックス処
理を受けた基油と配合した。このオイルは二級亜鉛ジア
ルキルジチオホスフェート(ZDDP)に由来する50
0ppmのリンを含有していた。比較のために、R.
T.Vanderbilt Company,Inc.
から入手できる市販のジチオカルバメート酸化防止剤
(DTC)のVanlube 7723、Ethyl
Corporationから入手できる市販のイオウ化
オレフィン酸化防止剤(SO)のHiTEC 718
8、及びEthyl Corporationから入手
できる市販の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZD
DP)のHiTEC7169をこの試験に含めた。この
ジチオカルバメート、イオウ化オレフィン及びこの亜鉛
ジアルキルジチオホスフェートに対するすべての添加剤
トリート率は、等しいイオウ(1500ppmイオウ)
をこのオイルに供給することを基準とした。それゆえ、
この添加剤のイオウ含量が高い程、完成オイルへの添加
剤トリート率は低い。低添加剤トリート率を有すること
が望ましい。一部のオイルもEthyl Corpor
ationから入手できるアルキル化ジフェニルアミン
酸化防止剤(DPA)のHiTEC 4793を含有し
ていた。J.A.Walker及びW.Tsangの
「Characterization of Lubr
ication Oil By Differenti
al Scanning Calorimetry」,
SAE Technical Paper Paper
Series.801383(Oct.20−23、
1980)に記述されているような加圧示差走査型熱量
法(PDSC)により、これらのオイルの酸化安定性を
測定した。ナフテン酸鉄(III)触媒(55ppm
Fe)でオイル試料を処理し、2.0ミリグラムを開放
したアルミニウム気密パンの中で分析した。このDSC
セルを500psi空気で加圧し、次の加熱シーケンス
でプログラムした:(1)室温から155°Cまでのジ
ャンプ昇温、(2)155°Cから175°Cまで10
°C/分でランプ昇温(3)175°Cから185°C
まで5°C/分でランプ昇温、(4)185°Cで等温
保持(iso−track)する。熱の発熱的放出が観
察されるまで、このオイル試料を185°Cで保持し
た。熱の発熱的放出はこの酸化反応の標識となる。この
実験の開始から熱の発熱的放出までの時間は、酸化誘導
時間と呼ばれ、このオイルの酸化安定性の目安である
(すなわち、酸化誘導時間が長い程、このオイルの酸化
安定性は大きい)。すべてのオイルを2回評価し、結果
を平均する。表1に示すように、等量のイオウ比較で、
この新しいアルキルチオ−及びヒドロキシル−置換ジチ
オカルバメートは、アルコキシ−及びヒドロキシル−置
換ジチオカルバメートよりも有効である。
【0060】
【表1】
【0061】実施例7 実施例6で酸化性能に対して評価した同一のオイルを高
周波往復リグ(HERR)を用いた境界摩擦特性につい
ても評価した。この装置では、1−2ミリリットルの試
験モーターオイルを温度制御したスチールパン中に入れ
る。可動腕に取り付けた鋼球をこのパンの中に降ろす。
400グラムの荷重をこの鋼球/腕アセンブリーに印加
する。この鋼/球腕アセンブリーを1ミリメーターの経
路長にわたって20Hzで振動させる。腕を振動しなが
ら、摩擦係数を5秒ごとに求める。この試験を3分間続
け、ほぼ30個のデータポイントを平均して、オイルの
摩擦係数を求める。この摩擦係数の低減はこのオイルの
改善された摩擦特性に対応する。2回の試験を各オイル
に対して130°Cで行った。各試料に対する平均摩擦
係数を表2に示す。この結果は、亜鉛ジアルキルジチオ
ホスフェート(ZDDP)、またはメチレンビス(ジブ
チルジチオカルバメート)(DTC)の添加がこのオイ
ルの摩擦特性に害を及ぼすことを示す。しかしながら、
このアルキルチオ−及びヒドロキシル−置換ジチオカル
バメートとこのアルコキシ−及びヒドロキシル−置換ジ
チオカルバメートは、このオイルの摩擦特性に害を及ぼ
さない。
【0062】
【表2】
【0063】実施例8 ASTMD−4172に定義したような四球磨耗試験を
用いて、このアルキルチオ−及びヒドロキシル−置換ジ
チオカルバメートの磨耗防止特性を示した。評価する添
加剤を表3に示すように、SAEグレード5W−30タ
イプのモーターオイルの中にブレンドした。このモータ
ーオイルは通常の分散剤防止剤パッケージを含有し、こ
れをAPI基IIカテゴリーに適合する低イオウ及び低
芳香族の水素クラッキング及びイソ脱ワックス処理を受
けた基油と配合した。このオイルは二級亜鉛ジアルキル
ジチオホスフェート(ZDDP)に由来する500pp
mのリンと0.3重量%のHiTEC 4793、アル
キル化ジフェニルアミン酸化防止剤を含有していた。比
較のために、R.T.Vanderbilt Comp
any,Inc.から入手できる市販のジチオカルバメ
ート酸化防止剤(DTC)のVanlube 7723
をこの試験に含めた。このジチオカルバメートに対する
すべての添加剤トリート率は、このオイルに等しいイオ
ウ(750ppmイオウ)を供給することを基準とし
た。それゆえ、この添加剤のイオウ含量が高い程、完成
オイルへの添加剤のトリート率は低い。試験に先立っ
て、すべてのオイルを磨耗促進剤として1.0重量%の
クメンハイドロパーオキサイドで処理した。四球磨耗試
験での結果をミリメーターの磨耗傷跡として示す。磨耗
傷跡に対する低い値は有効な磨耗防止を示し、一方では
高い値は劣った磨耗防止を示す。表3の結果は、このア
ルキルチオ−及びヒドロキシル−置換ジチオカルバメー
トの添加が四球磨耗試験での磨耗傷跡を低減させること
を明らかに示す。この結果は、また、この新しいアルキ
ルチオ−及びヒドロキシル−置換ジチオカルバメートが
市販のジチオカルバメートのVanlube 7723
よりも磨耗傷跡の低減において有効であることも示す。
【0064】
【表3】
【0065】実施例9 若干異なるモーターオイル中で上記に定義したように四
球磨耗試験を行った。評価する添加剤を表4に示すよう
に、SAEグレード5W−30タイプモーターオイルの
中にブレンドした。このモーターオイルは通常の分散剤
防止剤パッケージを含有し、これをAPI基IIカテゴ
リーに適合する低イオウ及び低芳香族の水素クラッキン
グ及びイソ脱ワックス処理を受けた基油と配合した。こ
のオイルは、また、二級亜鉛ジアルキルジチオホスフェ
ート(ZDDP)に由来する500ppmのリンと0.
4の重量%のHiTEC 4793アルキル化ジフェニ
ルアミン酸化防止剤も含有していた。これらの評価で
は、色々のレベルのクメンハイドロパーオキサイド(過
酸化物)を使用した。このジチオカルバメートトリート
率は完成モーターオイルにほぼ1500ppmのイオウ
を供給することを基準としている。表4の結果は、この
磨耗促進剤の存在下では本発明のアルキルチオ−及びヒ
ドロキシル−置換ジチオカルバメートの添加が四球磨耗
試験での磨耗傷跡を低減させることを明らかに示す。
【0066】
【表4】
【0067】実施例10 添加剤の熱安定性を定性的に評価するツールとして熱重
量分析(TGA)を使用することができる。この試験は
特定のランプ昇温シーケンスに従って添加剤の小さい試
料を加熱することを含む。このTGA装置は試料重量減
少を温度の関数としてモニターする。ほぼ同一の分子量
の材料に対しては、重量減少速度が迅速である程、熱安
定性が低いことにおおまかに対応する。本発明の新しい
アルキルチオ−及びヒドロキシル−置換ジチオカルバメ
ートと市販のジチオカルバメートのVanlube 7
723(DTC)についてTGAを行った。次の加熱シ
ーケンスを使用した:30°Cで平衡させ、20°C/
分で900°Cまでランプさせる。この実験を窒素雰囲
気下で行った。特定の重量減少が観測された温度を表5
に示す。この結果は、本発明のアルキルチオ−及びヒド
ロキシル−置換ジチオカルバメートが市販のジチオカル
バメートDTCよりも揮発性であることを示す。この新
しいジチオカルバメートの分子量はDTCよりも若干高
いので、この迅速な重量減少は熱安定性の低下によるも
のである。このデータは本発明のジチオカルバメートが
慣用のDTCよりも低い温度で分解することを示し、そ
してこのような特性は、慣用のDTCに比べてこの新し
いジチオカルバメートの磨耗防止及び摩擦性能の改善を
説明する。
【0068】
【表5】
【0069】本発明は実施する場合かなりのバリエーシ
ョンを受けることがある。従って、本発明は上記に述べ
た具体的な例示に限定されない。むしろ、本発明は、法
律の問題として入手可能なこれらの同等物を含む添付の
請求項の精神と範囲内である。
【0070】特許権所有者はいかなる開示された態様も
公にゆだねることを意図せず、そしていかなる開示され
た改変または変更もこの請求項の範囲内に文字通り入ら
ない範囲で同等物の原則の下で本発明の部分と考えられ
る。
【0071】本発明の特徴及び態様は次の通りである。
【0072】1.次の化学構造
【0073】
【化21】
【0074】(ここで、R及びR’は水素またはアルキ
ルであってもよく、このさいRまたはR’の少なくとも
一つはアルキルであり、ここでR”はアルキルまたは
R”'OCOCH2、またはR”'OCOCH2CH2(こ
こで、R”'はアルキルであり、そしてXはSである)
である)を有する組成物。
【0075】2.R及びR’がアルキルである上記1の
組成物。
【0076】3.R”がR”'OCOCH2である上記1
の組成物。
【0077】4.R”がR”'OCOCH2CH2である
上記1の組成物。
【0078】5.R”がアルキルである上記1の組成
物。
【0079】6.該アルキル基がC4ないしC12である
上記5の組成物。
【0080】7.該アルキル基がC9ないしC12である
上記5の組成物。
【0081】8.R及びR’が3ないし8個の炭素原子
を有するアルキル基から独立に選ばれる上記1の組成
物。
【0082】9.R及びR’が4ないし6個の炭素原子
を有するアルキル基から独立に選ばれる上記1の組成
物。
【0083】10.アルキルグリシジルチオエーテルと
一級及び/または二級アミン、及び二硫化炭素とを反応
させることを含んでなる組成物を製造する方法。
【0084】11.該組成物が潤滑剤添加剤である上記
10の方法。
【0085】12.上記11の方法により製造される潤
滑剤添加剤。
【0086】13.上記10の方法により製造される反
応生成物。
【0087】14.上記1の組成物と潤滑性粘度の基油
を含んでなる潤滑油。
【0088】15.洗浄剤、分散剤、磨耗防止剤、摩擦
変成剤、流動点降下剤、発泡防止剤、防食剤、防錆剤、
及び粘度指数改善剤の少なくとも一つを更に含んでなる
上記14の潤滑油。
【0089】16.上記12の組成物と潤滑性粘度の基
油を含んでなる潤滑油組成物。
【0090】17.ジフェニルアミン、フェノチアジ
ン、ヒンダードフェノール、イオウ化ヒンダードフェノ
ール、アルキルフェノール、イオウ化アルキルフェノー
ル、メチレン架橋ヒンダードフェノール、スルフィド及
びポリスルフィド、イオウ化オレフィン、及びイオウ化
油脂から選ばれる少なくとも一つの酸化防止剤を更に含
んでなる上記14の潤滑油。
【0091】18.上記1の組成物を含んでなる乗用車
クランクケースエンジンオイル。
【0092】19.上記1の組成物を含んでなる重作業
用ジーゼルエンジンオイル。
【0093】20.上記1の組成物を含んでなる鉄道用
オイル。
【0094】21.上記1の組成物を含んでなる天然ガ
スエンジンオイル。
【0095】22.上記1の組成物を含んでなる油圧オ
イル。
【0096】23.上記1の組成物を含んでなるタービ
ンオイル。
【0097】24.上記1の組成物を含んでなる防錆及
び酸化防止オイル。
【0098】25.上記1の組成物を含んでなる自動伝
動装置用流体。
【0099】26.R、R’及びR”中の炭素原子の総
合計が10個以上である上記1の組成物。
【0100】27.R、R’、R”、及びR”'がアル
キルであり、線状及び分岐の異性体から独立に選ばれる
上記1の組成物。
【0101】28.R、R’、R”、及びR”'がアル
キルであり、メチル、エチル、プロピル、ブチル.ペン
チル.ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシ
ル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシ
ル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、及び
オクタデシル、及びこれらの異性体から独立に選ばれる
上記1の組成物。
【0102】29.該アルキルグリシジルチオエーテ
ル、一級及び/または二級アミン、及び二硫化炭素がほ
ぼ等しいモル濃度で合体される上記10の方法。
【0103】30.メルカプタンとエピクロロヒドリン
を反応させることによりエポキシドを準備し、そして該
エポキシドと該アミン及び二硫化炭素とを反応させるス
テップを含んでなる上記10の方法。
【0104】31.上記アミンと二硫化炭素とを反応さ
せる前に該エポキシドを単離あるいは精製しない上記3
0の方法。
【0105】32.該エポキシドがアルキルグリシジル
チオエーテルであり、そして該アミンが一級アミンであ
る上記10の方法。
【0106】33.該エポキシドがアルキルグリシジル
チオエーテルであり、そして該アミンが二級アミンであ
る上記10の方法。
【0107】34.該アルキルグリシジルチオエーテル
がメチルグリシジルチオエーテル、エチルグリシジルチ
オエーテル、n−プロピルグリシジルチオエーテル、n
−ブチルグリシジルチオエーテル、s−ブチルグリシジ
ルチオエーテル、n−ヘキシルグリシジルチオエーテ
ル、シクロヘキシルグリシジルチオエーテル、n−オク
チルグリシジルチオエーテル、t−ノニルグリシジルチ
オエーテル、n−ドデシルグリシジルチオエーテル、t
−ドデシルグリシジルチオエーテル、及びこれらの混合
物から選ばれる上記10の方法。
【0108】35.該アルキルグリシジルチオエーテル
がカルボン酸エステル置換アルキルグリシジルチオエー
テルである上記10の方法。36.次の化学構造
【0109】
【化22】
【0110】を有する組成物。
【0111】37.R及びR’が独立にC3あるいはそ
れ以上のアルキル基である上記36の組成物。
【0112】38.2−プロパノール−1,3−ビス−
ジアルキルカルバモジチオエートの組成物。
【0113】39.3−(t−ドデシルチオ)−2−ヒ
ドロキシプロピル2−エチルヘキシルカルバモジチオエ
ートの組成物。
【0114】40.次の化学構造
【0115】
【化23】
【0116】を有する組成物。
【0117】41.3−(t−ドデシルチオ)−2−ヒ
ドロキシプロピルジブチルカルバモジチオエートの組成
物。
【0118】42.次の化学構造
【0119】
【化24】
【0120】を有する組成物。
【0121】43.2−エチルヘキシル3−[[3−
[[(ジブチルアミノ)チオキソメチル]チオ]−2−
ヒドロキシプロピル]チオ]プロパノエートの組成物。
【0122】44.次の化学構造
【0123】
【化25】
【0124】を有する組成物。
【0125】45.3−(n−ドデシルチオ)−2−ヒ
ドロキシプロピルジブチルカルバモジチオエートの組成
物。
【0126】46.次の化学構造
【0127】
【化26】
【0128】を有する組成物。
【0129】47.3−(t−ドデシルチオ)−2−ヒ
ドロキシプロピルビス(2−エチルヘキシル)カルバモ
ジチオエートの組成物。
【0130】48.次の化学構造
【0131】
【化27】
【0132】を有する組成物。
【0133】49.潤滑性粘度のオイルに酸化を低減さ
せる量の上記1の組成物を添加することを含んでなる潤
滑油の酸化を低減する方法。
【0134】50.潤滑油により潤滑されたエンジン中
での堆積物生成を低減させる方法であって、上記方法が
潤滑性粘度のオイルに堆積物を低減させる量の上記1の
組成物を添加し、エンジンを上記潤滑油により潤滑する
ことを含んでなる方法。
【0135】51.潤滑油により潤滑されたエンジン中
でのエンジン磨耗を低減させる方法であって、上記方法
が潤滑性粘度のオイルに磨耗を低減させる量の上記1の
組成物を添加し、エンジンを上記オイルにより潤滑する
ことを含んでなる方法。
【0136】52.潤滑油により潤滑されたエンジン中
でのエンジン摩擦を低減させる方法であって、上記方法
が潤滑性粘度のオイルに摩擦を低減させる量の上記1の
組成物を添加し、エンジンを上記オイルにより潤滑する
ことを含んでなる方法。
【0137】53.潤滑油により潤滑されたエンジン中
での燃料経済性を改善する方法であって、上記方法が潤
滑性粘度のオイルに燃料経済性を改善する量の上記1の
組成物を添加し、エンジンを上記オイルにより潤滑する
ことを含んでなる方法。
【0138】54.エンジンを上記潤滑油により潤滑す
ることを更に含んでなる上記49の方法。
【0139】55.ギアを上記潤滑油により潤滑するこ
とを更に含んでなる上記49の方法。
【0140】56.自動伝動装置を上記潤滑油により潤
滑することを更に含んでなる上記49の方法。
【0141】57.油圧機構を上記潤滑油により潤滑す
ることを更に含んでなる上記49の方法。
【0142】58.上記1の組成物を含んでなるオイル
により潤滑されるエンジン。
【0143】59.上記1の組成物を含んでなるオイル
により潤滑されるギア。
【0144】60.上記1の組成物を含んでなるオイル
により潤滑される自動伝動装置。
【0145】61.上記1の組成物を含んでなるオイル
により潤滑されるタービン。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の化学構造 【化1】 (ここで、R及びR’は水素またはアルキルであってよ
    く、このさいRまたはR’の少なくとも一つはアルキル
    であり、ここでR”はアルキル、またはR”'OCOC
    2、またはR”'OCOCH2CH2(ここで、R”'は
    アルキルであり、そしてXはSである)である)を有す
    る組成物。
  2. 【請求項2】 アルキルグリシジルチオエーテルと一級
    及び/または二級アミン、及び二硫化炭素とを反応させ
    ることを含んでなる、組成物を製造する方法。
  3. 【請求項3】 次の化学構造 【化2】 を有する組成物。
  4. 【請求項4】 次の化学構造 【化3】 を有する組成物。
  5. 【請求項5】 次の化学構造 【化4】 を有する組成物。
  6. 【請求項6】 次の化学構造 【化5】 を有する組成物。
  7. 【請求項7】 次の化学構造 【化6】 を有する組成物。
  8. 【請求項8】 次の化学構造 【化7】 を有する組成物。
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