JP2003178763A - リン酸型燃料電池の電極製造方法 - Google Patents

リン酸型燃料電池の電極製造方法

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JP2003178763A
JP2003178763A JP2001375355A JP2001375355A JP2003178763A JP 2003178763 A JP2003178763 A JP 2003178763A JP 2001375355 A JP2001375355 A JP 2001375355A JP 2001375355 A JP2001375355 A JP 2001375355A JP 2003178763 A JP2003178763 A JP 2003178763A
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surfactant
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Masato Hanazawa
真人 花澤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】電気化学反応に有害な電気触媒層中の界面活性
材の残留量を微量に抑えて燃料電池の特性を向上する。 【解決手段】界面活性材を混合した純水に触媒粒子を分
散した分散液と、フッ素樹脂粒子を分散した分散液を混
合したのち、凝集剤を加えて触媒粒子とフッ素樹脂粒子
が均一に分散した凝集体を作製し、この凝集体を多孔質
カ─ボン基板上に塗布して電極触媒層を形成し、不活性
ガスに酸素を加えたガス雰囲気下で熱処理して電極触媒
層に含まれる界面活性材を除去し、形態安定化のための
高温度熱処理を行うことによって電極を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リン酸を電解質層
に用い、燃料ガスと酸化剤ガスを供給して電気化学反応
により電気エネルギーを発生させるリン酸型燃料電池に
用いられる電極の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図7は、通常のリン酸型燃料電池の電極
と電解質層の構成を模式的に示す断面図である。なお、
電極1は電解質層2の両面に配されるが、図7において
は簡単化するために片方の電極1のみ表示されている。
電極1は、多孔質カーボン基材3の上に電極触媒層4を
付着して構成されており、このうち電極触媒層4は、触
媒担体5の表面に貴金属微粒子6を担持してなる触媒粒
子7をフッ素樹脂粒子8によって結着して形成されてい
る。また、電解質層2は、シリコンカーバイト微粒子1
0からなる電解質保持層に電解液9を含浸させて形成さ
れている。燃料ガスや酸化剤ガスを供給すると、これら
の反応ガスは多孔質カーボン基材3中を拡散して電極触
媒層4へと到達し、電解質層2からの電解液9と接触し
て、電極触媒層4中に触媒粒子7(固相)、反応ガス
(気相)、電解液9(液相)からなる三相界面が形成さ
れ、電気化学反応が進行する。電気化学反応を効率良く
行わせるためには、この三相界面を増大させる必要があ
るので、触媒粒子7とフッ素樹脂粒子8をできるだけ細
かな微粒子とするとともに、電解液9に濡れやすい触媒
粒子7と電解液9に濡れにくいフッ素樹脂粒子8を均一
に分散させることが必要である。
【0003】一般に用いられている電極製造方法におい
ては、図8に示した手順によって電極1が形成されてい
る。すなわち、まず、触媒粒子を、界面活性剤を含む純
水に超音波等を用いて分散、混合して得た分散液に、界
面活性剤を含む純水にフッ素樹脂粒子を分散した分散液
を加えて混合し、触媒粒子とフッ素樹脂粒子が均一に分
散した分散液を作製する。次いで、この分散液に凝集剤
を添加して混合し、触媒粒子とフッ素樹脂粒子が均一に
分散した凝集体を作製する。次に、この凝集体を多孔質
カーボン基材の上に散布、塗布したり、吸引濾過した
り、あるいは、凝集体を混練しカレンダーロールによる
延伸によりシート状に加工することによって電極触媒層
を形成する。続いて、乾燥後、不活性ガス雰囲気下にお
いて電極触媒層中に介在する界面活性剤を除去するため
の第1の熱処理を行い、つづいて同じく不活性ガス雰囲
気下において形態を安定化し撥水性を付与するための第
2の熱処理を行って、リン酸型燃料電池の電極を製造し
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、リン酸
型燃料電池の電極を製造する際には、触媒粒子とフッ素
樹脂粒子が均一に分散した電極触媒層を得るために、一
般に界面活性剤が使用されている。しかしながら使用し
た界面活性剤が電極触媒層の中に残存すると電池特性を
低下させるので、この界面活性剤を除去するために上記
のごとく不活性ガス雰囲気下での熱処理(第1の熱処
理)を行っている。一般的な界面活性剤は比較的分子量
の多いカーボン直鎖を含む分子構成よりなり、大部分の
界面活性剤成分は熱分解によって除去することが可能で
ある。しかしながら、界面活性剤には揮発・飛散しにく
い成分も存在しており、このため、かなりの量が熱処理
後の電極触媒層4の中に残留していることが処理後の分
析により確認されている。
【0005】また、不活性ガス雰囲気下での界面活性剤
の熱処理工程においては、界面活性剤の分解時に担体表
面と反応することによって、担体表面にカルボニル基や
水酸基等の親水性官能基を生じる可能性が高く、このよ
うに親水性官能基を生じると、燃料電池電極全体が電解
液に対して濡れやすい傾向が強くなるので、この電解液
によって反応ガスの三相界面への流入が阻害され、電池
特性の低下をもたらす可能性がある。また同時に、電解
液による触媒粒子の浸食、腐食によって運転時間の経過
とともに早期に電池特性が低下する可能性がある。
【0006】また、従来のリン酸型燃料電池の電極製造
方法においては、上記のとおり、電極触媒層としての形
態を安定化させ、かつ撥水性を有効に発現させるため
に、不活性雰囲気下、フッ素樹脂の融点付近の温度で第
2の熱処理を行っているが、この熱処理は、電極触媒そ
のものの焼失を防ぐため、通常、酸素濃度を極力低くし
た雰囲気下で行われている。しかしながら、このような
高温で、かつ触媒金属の存在する条件下においてはフッ
素樹脂の一部が分解、飛散することが知られており、還
元雰囲気下、あるいは不活性雰囲気下においてはフッ化
水素ガスなどの腐食性ガスとなることが本発明者らによ
る精密分析で明らかとなっている。したがって、従来の
電極製造方法のごとく、不活性雰囲気下において第2の
熱処理を行えば、腐食性ガスが発生して熱処理装置、あ
るいは電極触媒カーボン等を腐食してしまう可能性が強
く、燃料電池の製造条件の安定化や、燃料電池の発電性
能、寿命性能に悪影響を及ぼすこととなる。
【0007】本発明は上記のごとき従来技術の問題点を
考慮してなされたもので、本発明の目的は、燃料電池の
電気化学反応に対して有害な不純物の電極触媒層中への
残留量が微小に抑えられ、かつ触媒粒子の担体表面への
親水性官能基の生成が抑えられて優れた電池特性を有す
る電極が得られる電極製造方法、並びに、腐食性のフッ
素系ガスを生じることなく形態安定化熱処理が行われ、
優れた電池特性を有する電極が効率的に得られる電極製
造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明においては、触媒粒子とフッ素樹脂粒子
を、界面活性剤を含む水に混合、分散させたのち、凝集
剤を加えて触媒粒子とフッ素樹脂粒子が分散した凝集体
を作製し、この凝集体を用いて多孔質カーボン基材上に
電極触媒層を形成し、形成された電極触媒層中に介在す
る界面活性剤を除去するための第1の熱処理と、形態を
安定化し撥水性を付与するための第2の熱処理を行っ
て、リン酸型燃料電池の電極を製造する電極製造方法に
おいて、(1)界面活性剤を除去するための第1の熱処
理を、不活性ガスに酸素を加えたガス雰囲気下、例え
ば、不活性ガスに5%以上、12%以下の濃度の酸素を
加えたガス雰囲気下で行うこととする。
【0009】(2)また、形態を安定化し撥水性を付与
するための第2の熱処理を、不活性ガスに酸素を加えた
ガス雰囲気下、例えば、不活性ガスに7%以上、11%
以下の濃度の酸素を加えたガス雰囲気下で行うこととす
る。上記の(1)のように、界面活性剤を除去するため
の第1の熱処理を、不活性ガスに適量の酸素を加えたガ
ス雰囲気中において行えば、界面活性剤成分は熱分解に
よって除去されるばかりでなく、酸化反応によっても分
解、飛散されるので、電極触媒層中への残留量が低減さ
れ、また官能基の生成も抑えられることとなる。したが
って、この製造方法を用いて電極を製造すれば、発電性
能、寿命性能ともに優れたリン酸型燃料電池を得ること
ができる。
【0010】また、上記の(2)のように、形態を安定
化し撥水性を付与するための第2の熱処理を、不活性ガ
スに適量の酸素を加えたガス雰囲気下で行えば、腐食性
のフッ素系ガスの発生が抑制される。したがって、熱処
理装置の腐食が抑えられ、多数の電極を安定して熱処理
することができる。また、カーボン等の表面の腐食が抑
制されるので、発電性能、寿命性能ともに優れたリン酸
型燃料電池を得ることが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、実施例を上げて
詳しく説明する。 <実施例1>図1は、本発明のリン酸型燃料電池の電極
の製造方法の実施例を示すフロー図である。本実施例に
おいては、まず、陰イオン系の界面活性剤を 0.5%混合
した純水に触媒粒子を分散、混合して得た分散液と、同
じく陰イオン系の界面活性剤を0.5 %混合した純水にポ
リテトラフルオロエチレン粒子を分散、混合して得た分
散液とを混合したのち、凝集剤を加えて混合し、触媒粒
子とポリテトラフルオロエチレン粒子が均一に分散した
凝集体を作製した。次に、この凝集体を多孔質カーボン
基材の上に塗布して電極触媒層を形成した。次いで、自
然乾燥させた後、窒素ガスに 3〜21%の酸素を混合した
ガスを流通させながら、250 ℃において20 分間の熱処
理(第1の熱処理)を行い、電極触媒層中の界面活性剤
の除去処理を行った。最後に、電極の形態を安定化し、
かつ撥水性を付与するために、窒素ガスを流通させなが
ら、ポリテトラフルオロエチレンの溶融温度に近い 350
℃で熱処理(第2の熱処理)を行って、リン酸型燃料電
池の電極を得た。
【0012】図2は、上記の実施例の製造方法で得た電
極と従来の製造方法で得た電極の電極触媒層中の細孔の
分布を比較して示した特性図で、(b)はその直径以下
の細孔の容積の積算値の分布を示し、(a)は微分細孔
容積の分布、すなわちその直径の細孔の容積の積算値の
分布を示す。図2(a)、(b)ともに、実線で示した
特性Aが第1の熱処理を窒素ガスに7%の酸素を混合し
たガスを流通させながら行って得た電極の特性であり、
点線で示した特性Bが従来のごとく酸素を含まないガス
を流通させながら第1の熱処理を行って得た電極の特性
である。なお、これらの特性はいずれも水銀ポロシ法に
より測定されたものである。
【0013】図2(a)の分布に見られるように、従来
方法で製作した電極(特性B)では細孔直径が 0.05 μ
m付近にブロードなピークがあるのに対して、本実施例
の方法で製作した電極(特性A)では細孔直径が 0.03
μm付近に急峻なピークがある。また、図2(b)の分
布に見られるように、従来方法で製作した電極(特性
B)に比べて本実施例の方法で製作した電極(特性A)
の方が細孔容積積算値が高くなっており、第1の熱処理
の際に雰囲気ガス中に加えられた酸素による酸化反応に
よって界面活性剤が効果的に除去されていることがわか
る。また、特に細孔直径が0.1 μm以下( 0.01 〜0.1
μm)の細孔の容積積算値が大幅に増大しているが、直
径がこの範囲にある細孔は、電極触媒担体粒子間に形成
される細孔で、電解質と反応ガスと触媒粒子が接触して
燃料電池電気化学反応を生じる部分に相当すると見なさ
れている。したがって、本実施例の方法で製作した電極
のように、この領域の細孔の直径が小さくなり、細孔の
容積が大きくなるほど、反応部の面積が広くなって電気
化学反応がより促進されるので、燃料電池の発電特性が
向上すると考えられる。したがって、図2に見られる特
性から、本実施例の方法で製作した電極を用いた燃料電
池は、従来方法で製作した電極を用いた燃料電池に比べ
てより優れた電池特性を有するものと判断される。
【0014】次表は、第1の熱処理時のガス雰囲気中の
酸素濃度を変えて製作した7種類の電極の電極触媒層中
の細孔分布の測定結果である。
【0015】
【表1】(表1)電極触媒層中の細孔分布に及ぼすガス
雰囲気中の酸素濃度の影響 表に見られるように、第1の熱処理時のガス雰囲気中の
酸素濃度が3%の場合には、ピーク位置の細孔直径、直
径 0.1μm以下の細孔容積積算値共に酸素を加えない従
来法で得た電極の細孔分布とほぼ同等であり、酸素を加
えた効果は特に認められないが、酸素濃度が 5〜12%の
ガス雰囲気中で熱処理して製作した電極においては、ピ
ーク位置の細孔直径は約 0.03 μmと小さくなり、直径
0.1μm以下の細孔容積積算値も従来法で得た電極の約
2倍に上昇している。これに対して、ガス雰囲気中の酸
素濃度を15%に上げて製作した電極においては、ピー
ク位置の細孔直径が従来法で得た電極より大きくなり、
直径 0.1μm以下の細孔容積積算値も従来法で得た電極
を下回る結果となった。なお、酸素濃度を 21 %へとさ
らに上げて熱処理したものは焼損に至った。
【0016】これらの結果から、第1の熱処理時のガス
雰囲気として不活性ガスに 5〜12%の酸素を混合したガ
スを用いれば、燃料電池電気化学反応を生じる領域の細
孔が小さくなり、かつ反応部の面積が広くなるので、電
気化学反応がより促進されることとなる。したがって、
本実施例のごとく製作した電極を用いてリン酸型燃料電
池を構成すれば、従来方法で製作した電極を用いたもの
に比べてより優れた電池特性を得ることができる。
【0017】本実施例の電極の製造方法により製作した
電極のうち、窒素ガスに7%の酸素を混合したガス中で
第1の熱処理を行って得た電極を用いてリン酸型燃料電
池を作製し、カソードガスとして空気を、アノードガス
として水素と二酸化炭素の混合ガスを供給し、常圧、19
0 ℃において発電試験を実施した。図3は、本実施例の
電極の製造方法による電極を用いたリン酸型燃料電池と
従来法による電極を用いたリン酸型燃料電池の出力特性
の比較図で、図中、実線で示した特性Aが本実施例の電
極の製造方法による電極を用いた燃料電池の特性、点線
で示した特性Bが従来法による電極を用いた燃料電池の
特性である。図から判るように、本実施例による燃料電
池は、従来法による燃料電池に比べて、同一発電条件下
において 5〜10mVの出力電圧の向上を示している。
【0018】図4は、本実施例の電極の製造方法による
電極を用いたリン酸型燃料電池と従来法による電極を用
いたリン酸型燃料電池の寿命特性の比較図で、図中、実
線で示した特性Aが本実施例の電極の製造方法による電
極を用いた燃料電池の特性、点線で示した特性Bが従来
法による電極を用いた燃料電池の特性である。図に見ら
れるように、本実施例による燃料電池は従来法による燃
料電池に比べて出力電圧の劣化が遅く、同一発電条件下
での出力電圧劣化速度に約9%の向上が見られる。
【0019】<実施例2>図5は、本発明のリン酸型燃
料電池の電極の製造方法の実施例を示すフロー図であ
る。本実施例の製造方法と図8に示した従来例の製造方
法との相違点は、電極触媒層の形態を安定化し撥水性を
付与するための第2の熱処理の熱処理条件にある。すな
わち、第2の熱処理は、従来例では不活性ガス雰囲気に
おいて行われていたが、本実施例では、不活性ガスとし
ての窒素ガスに酸素を 0〜15%加えた混合ガス雰囲気下
で、350 ℃に3分間保持することにより行われている。
【0020】この混合ガス雰囲気において第2の熱処理
を行った複数の電極触媒層について、その腐食の度合い
を調べるために行った電解液の充填特性試験を行った。
その結果を図6に示す。図において、横軸は供試電極触
媒層の第2の熱処理における混合ガス雰囲気中の酸素濃
度(%)、縦軸はその電極触媒層の気孔全容積に対する
充填電解液量の割合(%)である。一般に、カーボンの
腐食の度合いが高くなると電解液の充填量が増大する傾
向を持つ。また、電解液の充填量が増大すれば、反応ガ
スの拡散性が低下して電池特性が低下することとなる。
図に見られるように、本試験結果によれば、第2の熱処
理の混合ガス雰囲気中の酸素濃度が0%から約8%へと
増大するに従って電解液の充填量が減少しており、酸素
の添加によってフッ素系ガスの発生量が減少し、フッ素
系ガスによる腐食が低下していることが判る。一方、酸
素濃度が 10 %から 15 %へと増大するに従って電解液
の充填量が増大しており、過剰酸素による腐食が進行し
ていることが判る。なお、酸素濃度を 15 %に保持して
熱処理したものの一部は焼損に至った。これらの試験結
果から、酸素濃度を7 〜11%に保持して第2の熱処理を
行えば、フッ素系ガスによる腐食と酸素による腐食が共
に抑えられ、電解液の充填量が適正範囲に保持されて、
優れた反応ガスの拡散性が確保されることが確認され
た。
【0021】上記の電極の製造方法により製作した電極
のうち、窒素ガスに 10 %の酸素を混合した混合ガス中
で第2の熱処理を行って得た電極を用いてリン酸型燃料
電池を作製し、カソードガスとして空気を、アノードガ
スとして水素と二酸化炭素の混合ガスを供給し、常圧、
190 ℃において発電試験を実施した。得られた出力特性
によれば、本実施例の方法で作成した燃料電池の出力電
圧は、従来法による燃料電池に比べて、同一発電条件下
に比べて約 10 mV向上した。また、寿命特性によれ
ば、本実施例の方法で作成した燃料電池の出力電圧劣化
速度は、従来法による燃料電池に比べて約 9%向上し
た。
【0022】また、従来の製造方法においては、第2の
熱処理において約 200枚の電極を熱処理すると、熱処理
装置の内壁が腐食し、ヒーターの異常や雰囲気ガスの漏
洩、電極表面への異物の落下等が生じていたが、本実施
例のごとく、第2の熱処理を窒素ガスに 10 %の酸素を
混合した混合ガス雰囲気下で行う方法を用いた場合に
は、 500枚の電極を熱処理しても上記のごとき異常は観
察されなかった。
【0023】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、触媒粒
子とフッ素樹脂粒子を、界面活性剤を含む水に混合、分
散させたのち、凝集剤を加えて触媒粒子とフッ素樹脂粒
子が分散した凝集体を作製し、この凝集体を用いて多孔
質カーボン基材上に電極触媒層を形成し、形成された電
極触媒層中に介在する界面活性剤を除去するための第1
の熱処理と、形態を安定化し撥水性を付与するための第
2の熱処理を行って、リン酸型燃料電池の電極を製造す
る電極製造方法において、(1)界面活性剤を除去する
ための第1の熱処理を、請求項1、さらには請求項2に
記載のごときガス雰囲気下で行うこととしたので、界面
活性剤成分は熱分解によって除去されるばかりでなく、
酸化反応によっても分解、飛散されることとなり、電極
触媒層中への残留量が低減され、また官能基の生成も抑
えられることとなった。したがって、この製造方法を用
いて電極を製造すれば、発電性能、寿命性能ともに優れ
たリン酸型燃料電池を得ることができる。
【0024】(2)また、形態を安定化し撥水性を付与
するための第2の熱処理を、請求項3、さらには請求項
4に記載のごときガス雰囲気下で行うこととすれば、腐
食性のフッ素系ガスの発生が抑制されるので、熱処理装
置の腐食が抑えられ、多数の電極を安定して熱処理する
ことができる。また、カーボン等の表面の腐食が抑制さ
れるので、発電性能、寿命性能ともに優れたリン酸型燃
料電池を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリン酸型燃料電池の電極の製造方法の
第1の実施例を示すフロー図
【図2】第1の実施例の製造方法で得た電極と従来の製
造方法で得た電極の電極触媒層中の細孔の分布を比較し
て示した特性図
【図3】第1の実施例の電極の製造方法による電極を用
いたリン酸型燃料電池と従来法による電極を用いたリン
酸型燃料電池の出力特性の比較図
【図4】第1の実施例の電極の製造方法による電極を用
いたリン酸型燃料電池と従来法による電極を用いたリン
酸型燃料電池の寿命特性の比較図
【図5】本発明のリン酸型燃料電池の電極の製造方法の
第2の実施例を示すフロー図
【図6】第2の実施例の電極の製造方法で得た電極の電
極触媒層の電解液充填性能を示す特性図
【図7】通常のリン酸型燃料電池の電極と電解質層の構
成を模式的に示す断面図
【図8】従来のリン酸型燃料電池の電極の製造方法を示
すフロー図
【符号の説明】
1 電極 2 電解質層 3 多孔質カーボン基材 4 電極触媒層 5 触媒担体 6 貴金属微粒子 7 触媒粒子 8 フッ素樹脂粒子 9 電解液 10 シリコンカーバイト微粒子

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】触媒粒子とフッ素樹脂粒子を、界面活性剤
    を含む水に混合、分散させたのち、凝集剤を加えて触媒
    粒子とフッ素樹脂粒子が分散した凝集体を作製し、この
    凝集体を用いて多孔質カーボン基材上に電極触媒層を形
    成したのち、形成した電極触媒層に介在する界面活性剤
    を除去するための第1の熱処理と、形態を安定化し撥水
    性を付与するための第2の熱処理を行って、リン酸型燃
    料電池の電極を製造する電極製造方法において、 界面活性剤を除去するための前記の第1の熱処理が、不
    活性ガスに酸素を加えたガス雰囲気下において行われる
    ことを特徴とするリン酸型燃料電池の電極製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のリン酸型燃料電池の電極
    製造方法において、前記の第1の熱処理に用いられるガ
    ス雰囲気中の酸素濃度が5%以上、12%以下であるこ
    とを特徴とするリン酸型燃料電池の電極製造方法。
  3. 【請求項3】触媒粒子とフッ素樹脂粒子を、界面活性剤
    を含む水に混合、分散させたのち、凝集剤を加えて触媒
    粒子とフッ素樹脂粒子が分散した凝集体を作製し、この
    凝集体を用いて多孔質カーボン基材上に電極触媒層を形
    成したのち、形成した電極触媒層に介在する界面活性剤
    を除去するための第1の熱処理と、形態を安定化し撥水
    性を付与するための第2の熱処理を行って、リン酸型燃
    料電池の電極を製造する電極製造方法において、 形態を安定化し撥水性を付与するための前記の第2の熱
    処理が、不活性ガスに酸素を加えたガス雰囲気下におい
    て行われることを特徴とするリン酸型燃料電池の電極製
    造方法。
  4. 【請求項4】請求項3に記載のリン酸型燃料電池の電極
    製造方法において、前記の第2の熱処理に用いられるガ
    ス雰囲気中の酸素濃度が7%以上、11%以下であるこ
    とを特徴とするリン酸型燃料電池の電極製造方法。
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