JP2003171681A - 金属塑性加工用潤滑剤組成物及び金属の塑性加工方法 - Google Patents

金属塑性加工用潤滑剤組成物及び金属の塑性加工方法

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JP2003171681A
JP2003171681A JP2001374157A JP2001374157A JP2003171681A JP 2003171681 A JP2003171681 A JP 2003171681A JP 2001374157 A JP2001374157 A JP 2001374157A JP 2001374157 A JP2001374157 A JP 2001374157A JP 2003171681 A JP2003171681 A JP 2003171681A
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metal
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film
polyether polyester
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Kunio Goto
邦夫 後藤
Keiji Matsumoto
圭司 松本
Norinobu Yamamoto
宣延 山本
Shigeyuki Nozaki
茂幸 野▲崎▼
Terunori Matsushita
輝紀 松下
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Nippon Shokubai Co Ltd
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属の表面に密着性の高い潤滑皮膜を形成す
ることができると共に、塑性加工する際に優れた潤滑効
果を発揮することから、摩擦を軽減し、焼付きを防止し
て工具の寿命延長や製品品質の向上を実現することがで
き、しかも、塑性加工後における洗浄性が優れるうえ
に、塑性加工において要求される耐水性や耐湿性を充分
に満足することができる潤滑皮膜を形成し得る金属塑性
加工用潤滑剤組成物及びそれを用いる金属の塑性加工方
法を提供する。 【解決手段】 ポリエーテルポリエステル系ポリマーの
架橋性を利用する架橋性材料を含有してなる金属塑性加
工用潤滑剤組成物、ポリエーテルポリエステル系ポリマ
ーと疎水性無機微粒子を含有してなる金属塑性加工用潤
滑剤組成物及び上記金属塑性加工用潤滑剤組成物により
金属表面を処理する工程を行った後に、塑性加工する工
程を行う金属の塑性加工方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属塑性加工用潤
滑剤組成物及び金属の塑性加工方法に関する。より詳し
くは、金属の冷間塑性加工に好適に用いることができる
金属塑性加工用潤滑剤組成物及びそれを用いる金属の塑
性加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】金属塑性加工は、金属材料を変形させて
所定の形にする工程により行われることになるが、中で
も金属の冷間塑性加工では、ロールや工具等の加工用機
械(以下、工具という)を用いて、板圧延、管圧延、条
鋼(形鋼、棒線、線材)圧延、引抜き、鍛造、せん断、
プレス成形等の工程により行われることになる。このよ
うな塑性加工において、被加工材として塑性加工に供さ
れる金属材料には、炭素鋼やステンレス鋼等の各種の鋼
の他、アルミニウム、銅、チタニウム及びそれらの合金
若しくはそれらの複層クラッド等が挙げられる。
【0003】このような金属塑性加工においては、例え
ば、冷間での塑性加工の場合、被加工材である金属材料
と工具との間に摩擦が生じ、それにより加工動力が減少
したり、摩耗や焼付きにより工具の寿命が低下するうえ
に製品品質が低下したりすることから、これらの点を改
善するために、被加工材と工具とを潤滑させることが行
われている。潤滑方法としては、塑性加工直前に工具又
は被加工材に潤滑剤を供給する方法や、予め工具表面に
化成潤滑皮膜を形成してから塑性加工する方法等が知ら
れ、通常では、被圧延材等と工具との材質、加工方法、
面圧、加工速度、表面粗度、作業環境等に応じて使い分
けられている。金属塑性加工に用いられる潤滑剤の例と
しては、液体状のものから、高粘度のグリース、更に高
温で溶融して流体潤滑作用を発揮するガラスやそれらに
黒鉛、雲母等の固体潤滑物質を含有させた潤滑剤等が知
られている。
【0004】しかしながら、これらの潤滑方法におい
て、塑性加工直前に潤滑剤を供給する潤滑方法を用いる
場合、高温、高面圧のような厳しい塑性加工条件では、
摩擦界面に潤滑剤を確実に導入したり、塑性加工に伴う
被加工材の表面積の増大に潤滑剤を追従させたりするこ
とができないことから、充分な潤滑効果を得ることはで
きなかった。また、工具に予め化成潤滑皮膜を形成する
潤滑方法でも、加工が進むにつれて潤滑皮膜の摩耗及び
剥離を生じるため、加工を一旦中止し、工具の交換を余
儀なくされることから、継続的な潤滑効果を得ることが
困難であった。更に、塑性加工後に被加工材の表面に残
った化成皮膜は、脱脂等では容易には除去できないこと
から、次工程に塗装等がある場合には、除去のための作
業工程が必要となり、コスト高となっている。
【0005】特開昭47−39965号公報には、水溶
性樹脂皮膜を形成する種類の塑性加工用潤滑剤が、薄鋼
板に代表される被加工材表面の保護とプレス成形時の潤
滑性向上のためにプレス成形用に使用できることが開示
されている。しかしながら、プレス成形時には、防錆も
兼ねた高潤滑油を別に使用するのが普通であり、もとも
とこのような水溶性樹脂皮膜そのものには、塑性加工時
に必要な充分な潤滑性を発揮させることはできず、ま
た、そのような目的のためのものではなかった。
【0006】特開平7−108319号公報には、潤滑
性及び耐食性に優れる冷間鍛造用棒鋼線材の製造方法に
関し、水系樹脂を主体とし、粒子径0.1〜10μmの
フッ素系樹脂粒子2.5〜50重量%及び粒子径1〜3
0nmのシリカ粒子1〜30重量%の含有する潤滑皮膜
を0.5〜50g/m2の割合で表面に形成した後、伸
線することが開示されている。しかしながら、この水系
樹脂は、潤滑性の高いフッ素系樹脂粒子やシリカ粒子の
バインダーとして使用されており、水系樹脂自体により
潤滑性を発揮させることを目的としたものではなかっ
た。
【0007】特開平3−231995号公報には、エチ
レンオキシド由来のポリエーテル部分を含むポリエーテ
ルポリエステル又はポリエーテルポリウレタンの水溶液
又は有機溶剤溶液を、金属のパイプ、線、板等の加工に
用いることが開示されている。しかしながら、金属と潤
滑皮膜との密着性が充分ではないため、負荷が高い場合
や焼付けが発生しやすい金属材料を塑性加工する場合に
は、充分な潤滑性を発揮させることはできなかった。
【0008】ところで、塑性加工においては、潤滑剤に
より形成される潤滑皮膜に耐水性や耐湿性が要求される
ことがある。この場合には、例えば、金属の表面に潤滑
皮膜が形成された後、塑性加工されるまでの間に湿度の
高い環境下に放置される場合に潤滑皮膜が吸湿して劣化
したり、工具に付着した水がある場合に潤滑皮膜が溶け
落ちてしまったりすることから、充分な潤滑性が金属の
表面全体に発揮されるように工夫する余地があった。従
って、潤滑剤において、塑性加工後における洗浄性が優
れるうえに、塑性加工において要求される耐水性や耐湿
性を充分に満足することができる潤滑皮膜を形成し得る
ものを工夫する余地があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑みてなされたものであり、金属の表面に密着性の高い
潤滑皮膜を形成することができると共に、塑性加工する
際に優れた潤滑効果を発揮することから、摩擦を軽減
し、焼付きを防止して工具の寿命延長や製品品質の向上
を実現することができ、しかも、塑性加工後における洗
浄性が優れるうえに、塑性加工において要求される耐水
性や耐湿性を充分に満足することができる潤滑皮膜を形
成し得る金属塑性加工用潤滑剤組成物及びそれを用いる
金属の塑性加工方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、金属塑性
加工に用いることができる潤滑剤組成物について種々検
討した結果、ポリエーテルポリエステル系ポリマーを含
有してなる潤滑剤組成物を用いて金属表面に潤滑皮膜を
形成すると、エーテル結合に起因して優れた潤滑性が発
現するうえに、金属との密着性に優れて塑性加工する際
に剥離しないことから、金属塑性加工、特に冷間での金
属塑性加工において摩擦を軽減し、焼付きを防止して工
具の寿命延長や製品品質の向上を実現することができる
ことに着目し、また、ポリエーテルポリエステル系ポリ
マーが親水性であることに起因して塑性加工後における
洗浄性が優れることに着目した。このような潤滑剤組成
物により形成される潤滑皮膜は、一方で親水性であるが
ために塑性加工において要求される耐水性や耐湿性を充
分に満足することができないが、ポリエーテルポリエス
テル系ポリマーを自己架橋させたり、架橋剤を用いて架
橋させたりすることにより、また、疎水性無機微粒子を
含有させることにより潤滑皮膜を疎水化すると、塑性加
工後における洗浄性と塑性加工において要求される耐水
性や耐湿性とを充分に満足することができることを見い
だし、上記課題をみごとに解決することができることに
想到した。
【0011】すなわち本発明は、ポリエーテルポリエス
テル系ポリマーの架橋性を利用する架橋性材料を含有し
てなる金属塑性加工用潤滑剤組成物である。本発明はま
た、ポリエーテルポリエステル系ポリマーと疎水性無機
微粒子を含有してなる金属塑性加工用潤滑剤組成物でも
ある。
【0012】本発明は更に、上記金属塑性加工用潤滑剤
組成物により金属表面を処理する工程を行った後に、塑
性加工する工程を行う金属の塑性加工方法でもある。以
下に本発明を詳述する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の金属塑性加工用潤滑剤組
成物は、ポリエーテルポリエステル系ポリマーの架橋性
を利用する架橋性材料を含有してなるものであり、架橋
密度を調整することにより、洗浄性を損なうことなく、
加工時の耐水性や耐湿性を付与することができる。
【0014】また本発明の金属塑性加工用潤滑剤組成物
にかかるもう1つの発明は、ポリエーテルポリエステル
系ポリマーと疎水性無機微粒子を含有してなるものであ
り、疎水性無機微粒子の種類と量を調整することによ
り、洗浄性を損なうことなく、加工時の耐水性や耐湿性
を付与することができる。
【0015】本発明の金属塑性加工用潤滑剤組成物は親
水性であるので、水洗で簡単に除去することができる。
また、上記ポリエーテルポリエステル系ポリマーが官能
基を含むものであると、イオン的な結合により金属との
密着を向上するのに優れた効果を発揮するものと考えら
れる。
【0016】上記ポリエーテルポリエステル系ポリマー
は、ポリアルキレングリコールとして、例えば、ポリエ
チレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロ
ピレングリコール、ポリプロピレンオキサイドや、ポリ
ジオキソランを多価カルボン酸化合物及び/又はその酸
無水物と反応させることにより得られる。これらはいず
れもエーテル結合を有し、この結合が柔軟な骨格構造で
あるので、大きな潤滑効果を発揮することになる。ま
た、このようなポリエーテルポリエステル系ポリマー
は、ポリアルキレングリコールやポリジオキソランが多
価カルボン酸化合物及び/又はその酸無水物により結合
して形成されることから、分子量が高いものとなり、こ
れに起因して金属塑性加工用潤滑剤組成物から形成され
る潤滑皮膜の成膜性、潤滑性、伸び等の特性が向上する
こととなる。なおポリアルキレングリコールやポリジオ
キソランの中でも、ポリエチレングリコールが好適であ
り、また、多価カルボン酸化合物及び/又はその酸無水
物として、多価酸無水物の具体例としては、ブタン−
1,2,3,4−テトラカルボン酸二酸無水物、二無水
ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二酸無水
物、p−ターフェニル3,4,3′,4′−テトラカル
ボン酸二酸無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノ
ンテトラカルボン酸二酸無水物、1,2,3,4−シク
ロペンタンテトラカルボン酸二酸無水物、ナフタレン−
1,4,5,8−テトラカルボン酸二酸無水物、3,
4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二酸無水物、
2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸
二酸無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホン
テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オ
クト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二
酸無水物等の2価酸無水物;無水マレイン酸−スチレン
共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水
マレイン酸−塩化ビニル共重合体、無水マレイン酸−ブ
タジエン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエー
テル共重合体、無水マレイン酸−エチレン共重合体等が
挙げられる。これらの多価酸無水物は1種又は必要に応
じて2種以上を混合したものでも良い。特に、2価酸無
水物が、二無水ピロメリット酸、ブタン−1,2,3,
4−テトラカルボン酸二酸無水物から選ばれる少なくと
も1種であると、反応性及び製造効率が高いため更に好
ましい。
【0017】上記ポリエーテルポリエステル系ポリマー
の分子量としては1万〜1000万、好ましくは3万〜
100万、より好ましくは5万〜50万である。分子量
が上記範囲よりも小さいと塑性加工時の変形に金属塑性
加工用潤滑剤組成物により形成される潤滑皮膜が追随し
ていかず金属表面に疵や焼付きを生じることがある。ま
た分子量が上記範囲よりも大きくなると、製造時におけ
る反応時間が著しく長くなること、及び、塑性加工時に
用いる溶液粘度が高すぎて扱いにくく実用的ではない場
合がある。なお本明細書中における分子量とは、数平均
分子量を意味する。
【0018】本発明における架橋性材料は、ポリエーテ
ルポリエステル系ポリマーが架橋することにより潤滑皮
膜を形成することになるが、ここで、本発明にかかる架
橋性材料は、上記ポリエーテルポリエステル系ポリマー
のみからなる場合、他の成分をも含む場合、のどちらで
あってもよいとし、特に限定はされない。これらはそれ
ぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の金属塑性加工用潤滑剤組成物においては、ポリ
エーテルポリエステル系ポリマーが自己架橋してもよ
く、ポリエーテルポリエステル系ポリマーと架橋剤とに
より架橋されてもよい。
【0019】本発明の金属塑性加工用潤滑剤組成物にお
いて、架橋剤を用いて架橋させる場合は、上記ポリエー
テルポリエステル系ポリマーは、官能基を有することが
好ましく、上記官能基としてはカルボキシル基、アミノ
基、メルカプト基、ヒドロキシル基、リン酸基等が挙げ
られるが密着性の点でカルボキシル基が最も好ましい。
一方防錆効果を考慮した場合アミノ基やメルカプト基が
好ましい。
【0020】本発明に使用する金属塑性加工用潤滑剤組
成物は、耐水性や耐湿性を向上させる目的には表面を疎
水化処理した無機微粒子を混合することも効果的であ
る。上記微粒子としては、特に限定はされないが、具体
的には、例えば、日本アエロジル社製のRX200、R
Y200、RY200S、R202、R812、R81
2S、R972、R974、R976、R976S等が
挙げられる。また、疎水化処理を施した粉末状の固体潤
滑剤も用いることができる。この固体潤滑剤としては、
黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、雲母、
窒化ホウ素、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等であ
る。本明細書においては、これらを疎水性無機微粒子と
いう。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用し
てもよい。尚、疎水性処理としては、例えば、ラウリン
酸塩等のアニオン系の脂肪酸塩が使用される。粉末のス
ラリーにこれらの脂肪酸塩を添加すると、極性基側が内
側を向いて粉末に吸着し、炭化水素基が外側に向いて疎
水性を示す。また、これらの疎水化された固体潤滑剤以
外にも、ワックス粒子や樹脂粒子等の有機化合物からな
る疎水性粒子も用いることができる。上記微粒子を混合
した金属塑性加工用潤滑剤組成物の耐水性や耐湿性を更
に向上させる目的で、上記架橋剤を用いて架橋させるこ
とも有効な方法である。
【0021】以上のことから、本発明の金属塑性加工用
潤滑剤組成物においては、(1)ポリエーテルポリエス
テル系ポリマーが自己架橋する形態、(2)ポリエーテ
ルポリエステル系ポリマーの他に架橋剤を含有して架橋
される形態、(3)ポリエーテルポリエステル系ポリマ
ーと疎水性無機微粒子とを含有する形態が挙げられる
が、(3)においては、更に、(3−1)ポリエーテル
ポリエステル系ポリマーが架橋しない形態、(3−2)
ポリエーテルポリエステル系ポリマーが自己架橋する形
態、(3−3)ポリエーテルポリエステル系ポリマーの
他に架橋剤を含有して架橋される形態が挙げられる。
【0022】また本発明に使用する金属塑性加工用潤滑
剤組成物には、上記疎水性微粒子以外にも各種添加剤、
例えば、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆添加剤、増粘
剤、分散剤、界面活性剤、結晶核剤等を加えてもよい。
また、ポリエーテルポリエステル系ポリマー以外の水溶
性樹脂を性能を損なわない範囲で加えてもよい。これら
はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用しても
よい。添加剤が油溶性の場合は、水溶性である本発明の
金属の塑性加工用潤滑剤組成物には混合し難いことがあ
る。このような場合には、該油溶性添加剤を、乳化剤を
用いてエマルション化し、本発明の金属の塑性加工用潤
滑剤組成物に混合すればよい。
【0023】本発明に使用する金属塑性加工用潤滑剤組
成物により工具表面及び/又は被加工材表面を処理する
方法は特に制限はないが、例えば、溶融塗工する方法
や、溶液状態で塗布する方法が挙げられる。その中でも
特に、本発明の金属の塑性加工方法においては、上記金
属表面を処理する工程が、上記金属塑性加工用潤滑剤組
成物を水溶液にして塗布若しくはディッピングしたもの
を、塑性加工前に工具及び/又は被加工用材表面に予め
付着せしめることにより行われることが安全面又は環境
面から好ましい。又は、本発明の金属の塑性加工方法に
おいては、上記金属表面を処理する工程が、上記金属塑
性加工用潤滑剤組成物をフィルム化したものを、塑性加
工前に工具表面及び/又は被加工材表面に予め付着せし
めることにより行われることが安全面又は環境面から好
ましい。このように、本発明の金属塑性加工用潤滑剤組
成物は、金属塑性加工用潤滑剤組成物により金属表面を
処理する工程を行った後に、塑性加工する工程を行う金
属の塑性加工方法に好適に適用される。このような金属
の塑性加工方法もまた本発明の1つである。
【0024】上記塑性加工方法において、金属塑性加工
用潤滑剤組成物を水溶液にして塗布する場合の固形分濃
度は、使用する重合体の分子量にもよるが、1〜50重
量%程度が適当である。固形分濃度が1重量%よりも低
いと乾燥に多大のエネルギーと時間を費やすことになり
不経済であり、逆に50重量%を超えると粘度が非常に
高く、金属表面に対する塗布が効率的に行えない場合が
ある。塗布に最適な粘度としては100〜10000m
Pa・s程度であり、水溶液粘度が低く塗布が困難な場
合は、一般的な増粘剤又はポリエーテル系ポリマーとコ
ンプレックスを形成する尿素等を添加することが効果的
である。
【0025】また塗布後の乾燥条件としては70〜15
0℃程度の温度で30秒〜5分程度で行うのがよい。1
50℃以上の温度で長時間加熱すると重合体等が分解す
ることがあり、70℃以下では乾燥時間に必要以上の時
間がかかり生産効率が悪くなることがある。乾燥方法と
しては、上記温度に保たれた恒温槽や炉に入れる方法、
上記温度に保たれた均熱帯を通過させる方法、更には上
記温度の温風を吹き付ける方法等がある。塗布量として
は、塗布・乾燥後の膜厚が1〜100μmであることが
好ましい。1μm以下では充分な潤滑効果が得られない
場合があり、一方100μm以上の皮膜を形成させても
潤滑効果の顕著な向上が観られないので経済的でない。
塗布する場合、予め被処理物の温度を上げておくと皮膜
処理し易い。その温度としては、60〜150℃が好ま
しい。より好ましくは80〜120℃である。
【0026】また本発明においては、塗布後の皮膜は充
分に結晶化した後、塑性加工に供することが好ましい。
潤滑皮膜が結晶化する前、すなわち溶融状態又は溶液状
態で使用してもそれなりの潤滑効果は示すものの、加工
方法によっては焼付きを生じる場合がある。これが結晶
化した皮膜においては、金属の塑性変形に対して潤滑皮
膜が延伸されながら金属表面に追随するため加工の最後
まで充分な潤滑効果が継続するものと推測される。こう
した皮膜強度を発揮するためにはポリエーテルポリエス
テル系ポリマーの分子量は数平均分子量で30000以
上、好ましくは50000以上の分子量が必要である。
【0027】上記塑性加工方法において、金属塑性加工
用潤滑剤組成物から形成されるフィルムの成形方法につ
いては特に制限はなく、従来既知のいかなるフィルム製
造方法でも適用することができる。具体的には、インフ
レーション法、Tダイ法、カレンダー法、ホットプレス
法等が挙げられ、一軸若しくは二軸方向に熱間延伸又は
冷間延伸することも可能である。
【0028】また2種以上のフィルム基材を部分的に又
は全体に重ね合わせて多層構造とすることも可能であ
る。更に、1種又は2種以上を重ね合わせたフィルム上
に、その樹脂自体ではフィルムとして強度が得られない
樹脂を溶融又は溶液で塗布することも可能である。これ
らの方法の組み合わせにより、例えば、疎水性無機微粒
子を含んだフィルムと架橋剤としての多官能化合物を含
むフィルムを部分的又は全体的に積層することにより意
図的に疎水性無機微粒子の濃度分布を変えたり、フィル
ムの厚み分布を変えたりすることができる。
【0029】本発明に用いるフィルムの厚みに特に制限
はないが、柔軟で且つ強靭なフィルムを得るためにはそ
の厚みが1〜500ミクロンであることが好ましく、更
に好ましくは5〜400ミクロン、最も好ましくは10
〜300ミクロンである。フィルムの厚みが1ミクロン
よりも薄いとフィルムとして充分な強度が得られず、ま
た500ミクロンよりも厚くても塑性加工時の潤滑効果
はあまり向上せず不経済であり、また、フィルムの柔軟
性が低下するため取り扱いに不便である。
【0030】上記塑性加工方法において、本発明の金属
塑性加工用潤滑剤組成物がポリエーテルポリエステル系
ポリマーのみにより架橋される場合には、本発明におけ
る架橋性材料に、紫外線等の電離放射線が照射され、該
架橋性材料に含まれるポリエーテルポリエステル系ポリ
マーが架橋されることが好ましい。この場合、上記ポリ
エーテルポリエステル系ポリマー中のヘテロ結合におい
て、ヘテロ原子に隣接した炭素上の水素は紫外線等の照
射によりラジカルとして比較的解裂しやすいため、分子
鎖上にいくつかのラジカルが発生し、こうしてできたポ
リマー分子鎖上のラジカル同士が結合して、架橋構造が
形成されるものと考えられる。この架橋は、ポリマー同
士の架橋であり、またラジカル濃度も低いため、架橋密
度の低いゆるやかな架橋構造が形成される。そのため、
照射後の架橋性材料は、洗浄性を低下させないまま耐水
性が向上したものとなる。逆に照射時間が長すぎると、
いくら架橋剤を添加していないからといっても、架橋密
度が上がりすぎ、潤滑性能の低下を招く。したがって照
射時間も一定時間以内である必要がある。
【0031】本発明における架橋性材料であるポリエー
テルポリエステル系ポリマーを架橋させる場合は、上述
の通り、通常放射線硬化型樹脂等の硬化に必要とされる
光開始剤や光増感剤、光架橋剤、不飽和結合含有化合物
は特に必要ないが、照射後の架橋性材料の潤滑性能を低
下させない範囲、及び、架橋効率の向上の目的で、これ
らの添加物、化合物を併用してもよい。
【0032】上記電離放射線としては特に制限はない
が、上述した紫外線の他、例えば、α線、β線、γ線、
X線及び電子線等が挙げられる。ただしα線、β線、γ
線又はX線は人体への危険性の問題があるため、取り扱
いが容易で工業的にもその利用が普及している紫外線が
有効であり好ましい。したがって本発明の金属塑性加工
用潤滑剤組成物及び金属の塑性加工方法においては、金
属塑性加工用潤滑剤組成物を紫外線により架橋させるこ
とが好ましく、このような形態が本発明の好ましい実施
形態の1つである。
【0033】上記電離放射線によりポリエーテルポリエ
ステル系ポリマーを架橋させる場合、その照射時間は、
電離放射線の種類にもよるが、例えば、紫外線であれ
ば、高圧水銀灯を用いた場合は10秒以内が好ましく、
より好ましくは3秒以内である。10秒を超えると、架
橋密度が高くなりすぎて、潤滑性能が低下する場合があ
り、生産効率も低下するため経済的にも好ましくない。
使用する光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀
灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、及びタングステンラ
ンプ等が使用される。
【0034】本発明にかかる架橋性材料は、上述したよ
うに、更に、架橋剤を含んでいてもよく、この場合も、
上記ポリエーテルポリエステル系ポリマーを架橋させる
ことができるが、より容易に架橋させることができるの
で好ましく、この形態においても本発明の架橋性材料は
「ポリエーテルポリエステル系ポリマーの架橋性を利用
する」ということができる。
【0035】上記架橋剤としては、特に限定はされない
が、一般的な多官能化合物を使用することができる。上
記架橋剤である多官能化合物としては、本発明でいう官
能基(上記ポリエーテルポリエステル系ポリマーが有す
る官能基)が、例えば、カルボキシル基である場合、特
に限定されるわけではないが、エポキシ化合物類、メラ
ミン化合物類、ベンゾグアナミン化合物類、イソシアネ
ート化合物類、オキサゾリン化合物類、アミン化合物
類、アジリジン化合物類、金属酸化物類等を好ましく挙
げることができる。これらは1種のみで用いても2種以
上を併用してもよい。
【0036】上記エポキシ化合物類としては、特に限定
はされないが、具体的には、例えば、ソルビトールポリ
グリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテ
ル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタ
エリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロー
ルポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2
−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロール
ポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリ
グリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテ
ル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチ
レングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレング
リコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール
ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグ
リシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグ
リシジルエーテル等が好ましく挙げられる。これらは1
種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0037】上記メラミン化合物類又はベンゾグアナミ
ン化合物類としては、特に限定はされないが、具体的に
は、例えば、ヘキサメトキシメチロールメラミン及びそ
の変性物等が好ましく挙げられ、詳しくは、以下に列挙
する三井サイアナミッド社製のサイメルシリーズ(C−
番号)やマイコートシリーズ(M−番号)がある。上記
シリーズのうち、完全アルキル型としては、C−30
0、C−301、C−303、C−350、C−23
2、C−235、C−236、C−238、C−26
6、C−267、C−285、C−1123、C−11
23−10、C−1170、M−506等が挙げられ
る。メチロール基型としては、C−370、C−77
1、C−272、C−1172、M−102等が挙げら
れる。イミノ基型としては、C−325、C−327、
C−703、C−712、C−254、C−253、C
−212、C−1128、M−101、M−106、M
−130、M−132、M−508、M−105等が挙
げられる。メチロール/イミノ基型としては、C−70
1、C−202、C−207等が挙げられる。これらは
1種のみ用いても2種以上併用してもよい。なおこれら
は商品名を表すものである。
【0038】上記イソシアネート化合物類としては、特
に限定はされないが、具体的には、例えば、1,6−ヘ
キサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイ
ソシアネート、トリレンジイソシアネート、2,2,4
−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フ
ェニレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシ
ルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルフェニ
ル−4,4′−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソ
シアネート、m−キシレンジイソシアネート、テトラメ
チルキシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシ
アネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、tr
ans−1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、リ
シンジイソシアネート等が好ましく挙げられる。これら
は1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0039】上記オキサゾリン化合物類としては、特に
限定はされないが、具体的には、例えば、ビスオキサゾ
リン、オキサゾリン環を側鎖に有するポリマー(例え
ば、日本触媒社製、商品名:エポクロスWS−500)
等が好ましく挙げられる。これらは1種のみ用いても2
種以上併用してもよい。
【0040】上記アミン化合物類としては、特に限定は
されないが、具体的には、例えば、トリエチレンテトラ
ミン、エチレンジアンミン、ヘキサメチレンジアミン、
1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン等
が好ましく挙げられる。これらは1種のみ用いても2種
以上併用してもよい。
【0041】上記アジリジン化合物類としては、特に限
定はされないが、具体的には、例えば、トリス−2,
4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジ
ン、トリス[1−(2−メチル)−アジリジニル]フォ
スフィンオキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)−アジ
リジニル]トリフォスファトリアジン等が好ましく挙げ
られる。これらは1種のみ用いても2種以上併用しても
よい。上記金属酸化物類としては、特に限定はされない
が、具体的には、例えば、酸化亜鉛等が好ましく挙げら
れる。これらは1種のみ用いても2種以上併用してもよ
い。
【0042】本発明の架橋性材料に、架橋剤としての上
記多官能化合物を含むようにする場合は、その含有量
は、特に限定されるわけではないが、上記ポリエーテル
ポリエステル系ポリマーの含有量に対して、0.1〜1
00重量%であることが好ましく、より好ましくは0.
1〜50重量%、更により好ましくは1〜20重量%で
ある。上記含有量が0.1重量%未満の場合は、充分な
耐水性が得られないことがあり、100重量%を超える
場合は、架橋密度が高くなりすぎて潤滑性能が低下する
おそれがある。
【0043】上述のように、本発明の架橋性材料に架橋
剤を含むようにして、ポリエーテルポリエステル系ポリ
マーの架橋を可能にしている場合、架橋反応を行う処理
方法としては、加熱処理や常温乾燥等の一般的架橋方法
等を挙げることができる。また、上記電離放射線の照射
による処理も併用してもよい。
【0044】上記加熱処理を行う場合、その条件として
は、特に限定はされないが、加熱温度は、50〜200
℃が好ましく、より好ましくは80〜150℃である。
上記加熱温度が低すぎると、例えば、乾燥不充分となっ
たりして、充分な架橋をするのに長時間を費やすことと
なり、高すぎるとポリエーテルポリエステル系ポリマー
自体が分解する可能性がある。また、加熱処理時間は、
1秒〜30分が好ましく、より好ましくは1秒〜10分
である。上記加熱処理時間が短すぎると、加熱温度によ
っては、例えば、乾燥不充分となって、充分な架橋がで
きないおそれがあり、長すぎると、ポリエーテルポリエ
ステル系ポリマー自体が分解する可能性がある。
【0045】本発明の塑性加工用潤滑剤組成物を、被加
工材である金属表面に適用して潤滑皮膜を形成する方法
は、皮膜形成が可能な方法であれば特に制限されない。
例えば、溶融塗工する方法や、水溶性樹脂を適当な溶媒
に溶解させた溶液状態で塗布する方法が可能である。被
加工材となる金属の表面酸洗やショットピーニング等の
一般的な方法で粗面化処理をしておくと、より高い皮膜
の付着強度を実現することができる。但し、あまり粗く
し過ぎると付着強度は上がるものの、粗さの突起部で焼
付きを生じやすい。従って、粗面化する際の平均表面粗
さRaは0.1μm〜20μmが好ましい。より好まし
くは0.4μm〜10μmである。本発明の金属の塑性
加工用潤滑剤組成物を処理した上に更に液体の潤滑油を
用いて加工しても良い。これは、加工初期の摩擦低減に
効果がある。但し、この場合、油を塗布する前に、本発
明の金属の塑性加工用潤滑剤組成物を塗布し、その皮膜
を乾燥させておく必要がある。
【0046】本発明にかかる塑性加工用潤滑剤組成物
は、板圧延、管圧延、条鋼(形鋼、棒鋼、線材)圧延、
引抜き、鍛造といった金属の冷間塑性加工に好適に利用
できる。もちろん、塑性加工を受けない、単なる製品出
荷時の防錆皮膜処理としての用途や被加工材の搬送時の
ローラー、ガイドとの接触による疵防止のため皮膜保護
及び摩擦軽減の用途として使用することもできる。いず
れの場合も、塑性加工後、或いは塑性加工しない場合に
は皮膜が不要になった場合、本発明の潤滑剤組成物から
形成された皮膜は水洗いにより簡単に除去することがで
きる。
【0047】上記塑性加工を施す金属としては、炭素
鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタン等の金
属、それらの合金、それらの複層クラッド等、塑性加工
が可能な任意の金属でよい。好ましくは、より高い密着
性とそれによる潤滑効果が得られる炭素鋼やステンレス
鋼に代表される鋼である。
【0048】上記潤滑皮膜の形成において、塑性加工用
工具と被加工材との接触面の特定箇所において潤滑性を
特に必要とするような塑性加工、例えば、板圧延におけ
るロール通板エッジ部の焼付きや、管圧延における穴型
ロールの管外径接触部での焼付き、の防止を目的とする
場合には、その部位にだけ潤滑皮膜が介在するようにす
ればよい。
【0049】また冷間抽伸に於いては、抽伸用線材又は
管材を本発明にかかる塑性加工用潤滑剤組成物の水溶液
を入れたタンク内を通過させるか、又は、ノズルを用い
て線材に吹き付ける等の一般的な塗布方法により、該線
材、管材表面に該塑性加工用潤滑剤組成物を塗布した
後、必要に応じて100〜150℃の乾燥帯を通過さ
せ、所望厚みの皮膜を形成させた後、ダイスで抽伸す
る。線材、管材に残った皮膜は、その後の水洗いで完全
に除去される。
【0050】更にハイドロフォーミング(液圧バルジ成
形)においては、被加工材である素管外面に本発明にか
かる塑性加工用潤滑剤組成物を塗布、乾燥させた後、成
形することにより摩擦軽減、被加工材及び金型表面の疵
防止を達成することができる。また、加工後、簡単な水
洗いで潤滑皮膜が除去されるため、燐酸亜鉛処理のよう
な化成皮膜処理に比べ、設備・ランニングコストの面で
も有利となる。
【0051】本発明の塑性加工用潤滑剤組成物により形
成される皮膜は、耐水性・耐湿性が高いため、湿度の高
い館等に皮膜形成後に放置されても皮膜が吸湿して性能
が変化することがない。したがって本発明の金属の塑性
加工用潤滑剤組成物は、金属の塑性加工、特に冷間にお
ける場合において、焼付きが発生しやすい厳しい加工条
件においても優れた潤滑性を発揮し、かつ洗浄性を損な
うことなく、潤滑皮膜に耐水性や耐湿性を付与すること
ができるものである。
【0052】
【実施例】以下に、実施例により、本発明をさらに具体
的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定される
ものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を
単に「部」と記すことがある。
【0053】実施例で使用する金属塑性加工用樹脂を以
下の方法で合成した。 (製造例1)1リットルの卓上ニーダーに、数平均分子
量14000のポリエチレングリコールを500部、ピ
ロメリット酸二無水物を7.7部及び炭酸カルシウムを
4.02部仕込み、大気圧下で130℃、90分間の反
応を行い、製造例1のポリエーテルポリエステル(1)
を得た。得られたポリエーテルポリエステル(1)の数
平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィに
より測定したところ、135000であった。
【0054】(製造例2)1リットルの卓上ニーダー
に、数平均分子量14000のポリエチレングリコール
を500部及びピロメリット酸二無水物を7.7部仕込
み、大気圧下で130℃、90分間の反応を行い、製造
例2のポリエーテルポリエステル(2)を得た。得られ
たポリエーテルポリエステル(2)の数平均分子量をゲ
ルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したと
ころ、130000であった。
【0055】(製造例3)1リットルの卓上ニーダー
に、数平均分子量4000のポリエチレングリコールを
500部及びピロメリット酸二無水物を26.7部仕込
み、大気圧下で130℃、90分間の反応を行い、製造
例3のポリエーテルポリエステル(3)を得た。得られ
たポリエーテルポリエステル(3)の数平均分子量をゲ
ルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したと
ころ、125000であった。
【0056】(製造例4)1リットルの卓上ニーダーに
数平均分子量4000のポリエチレングリコールを50
0部、二無水ピロメリット酸26.7部及び炭酸カルシ
ウムを24.5部仕込み、大気圧下で130℃、90分
間、高分子量化反応を行い、製造例4のポリエーテルポ
リエステル(4)を得た。得られたポリエーテルポリエ
ステル(4)の数平均分子量をゲルパーミエーションク
ロマトグラフィにより測定したところ、124000で
あった。
【0057】(製造例5)1リットルの卓上ニーダー
に、数平均分子量4000のポリエチレングリコールを
500部、ピロメリット酸二無水物を26.7部及び疎
水性シリカR976S(日本アエロジル社製)を10.
5部仕込み、大気圧下で130℃、90分間の反応を行
い、製造例5のポリエーテルポリエステル(5)を得
た。得られたポリエーテルポリエステル(5)の数平均
分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィにより
測定したところ、120000であった。
【0058】(製造例6)1リットルの卓上ニーダー
に、数平均分子量14000のポリエチレングリコール
を500部、ピロメリット酸二無水物を7.7部、炭酸
カルシウムを4.02部及び疎水性シリカR974(日
本アエロジル社製)を10.3部仕込み、大気圧下で1
30℃、90分間の反応を行い、製造例6のポリエーテ
ルポリエステル(6)を得た。得られたポリエーテルポ
リエステル(6)の数平均分子量をゲルパーミエーショ
ンクロマトグラフィにより測定したところ、13300
0であった。
【0059】(耐水性試験)実施例にて得られた各塑性
加工用潤滑剤組成物の耐水性を試験した。評価方法は以
下の通りである。得られた各塑性加工用潤滑剤組成物を
23℃の水中に1分間浸水させ、予め測定しておいた浸
水前の皮膜重量と浸水後の皮膜重量から、残皮膜率を計
算して評価した。
【0060】(実施例1)製造例1のポリエーテルポリ
エステル(1)を20%水溶液にし、これを金属表面上
に塗布、乾燥した後UVを1秒照射し、塑性加工用潤滑
剤組成物を得た。このときの残皮膜率は91%であっ
た。なお、UV照射に関する装置・照射条件は以下のと
おりである。 ・装置:紫外硬化用光源装置UB031−5BM(アイ
グラフィックス社製) ・光源:紫外硬化用水銀ランプ形式H03−L31、8
0W/cm ・照射条件:照射距離10cm、1秒照射
【0061】(実施例2)製造例2のポリエーテルポリ
エステル(2)を用いた以外は、実施例1と同様の操作
を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このときの残
皮膜率は85%であった。
【0062】(実施例3)製造例3ポリエーテルポリエ
ステル(3)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を
行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このときの残皮
膜率は97%であった。
【0063】(実施例4)製造例4ポリエーテルポリエ
ステル(4)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を
行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このときの残皮
膜率は82%であった。
【0064】(実施例5)実施例1のUV照射時間を5
秒に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、塑性
加工用潤滑剤組成物を得た。このときの残皮膜率は95
%であった。
【0065】(実施例6)実施例2のUV照射時間を5
秒に変えた以外は、実施例2と同様の操作を行い、塑性
加工用潤滑剤組成物を得た。このときの残皮膜率は95
%であった。
【0066】(実施例7)実施例3のUV照射時間を5
秒に変えた以外は、実施例3と同様の操作を行い、塑性
加工用潤滑剤組成物を得た。このときの残皮膜率は97
%であった。
【0067】(実施例8)実施例4のUV照射時間を5
秒に変えた以外は、実施例4と同様の操作を行い、塑性
加工用潤滑剤組成物を得た。このときの残皮膜率は90
%であった。
【0068】(実施例9)製造例1のポリエーテルポリ
エステル(1)を20%水溶液にし、この水溶液に対し
て2重量%量の疎水性シリカR976S(日本アエロジ
ル社製)を加えて均一に分散させた後、これを金属表面
上に塗布し、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このとき
の残皮膜率は93%であった。
【0069】(実施例10)製造例2のポリエーテルポ
リエステル(2)を用いた以外は、実施例9と同様の操
作を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このときの
残皮膜率は89%であった。
【0070】(実施例11)製造例3のポリエーテルポ
リエステル(3)を用いた以外は、実施例9と同様の操
作を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このときの
残皮膜率は94%であった。
【0071】(実施例12)製造例4のポリエーテルポ
リエステル(4)を用いた以外は、実施例9と同様の操
作を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このときの
残皮膜率は88%であった。
【0072】(実施例13)製造例1のポリエーテルポ
リエステル(1)を20%水溶液にし、この水溶液に対
して2重量%量の疎水性シリカR974(日本アエロジ
ル社製)を加えて均一に分散させた後、これを金属表面
上に塗布し、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このとき
の残皮膜率は83%であった。
【0073】(実施例14)製造例2のポリエーテルポ
リエステル(2)を用いた以外は、実施例13と同様の
操作を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このとき
の残皮膜率は82%であった。
【0074】(実施例15)製造例3のポリエーテルポ
リエステル(3)を用いた以外は、実施例13と同様の
操作を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このとき
の残皮膜率は86%であった。
【0075】(実施例16)製造例4のポリエーテルポ
リエステル(4)を用いた以外は、実施例13と同様の
操作を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このとき
の残皮膜率は81%であった。
【0076】(実施例17)製造例1のポリエーテルポ
リエステル(1)を20%水溶液にし、これをベースポ
リマーとして、このベースポリマー30gに、架橋剤と
してWS−500(日本触媒社製、商品名:エポクロス
WS−500)0.44gを配合した後、金属表面上に
乾燥膜厚20μmとなるように塗布した。その後、12
0℃×3分乾燥させ、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。
このときの残皮膜率は94%であった。
【0077】(実施例18)製造例2のポリエーテルポ
リエステル(2)を20%水溶液にし、これをベースポ
リマーとして、このベースポリマー30gに、架橋剤と
してWS−500(日本触媒社製、商品名:エポクロス
WS−500)0.44gを配合した後、金属表面上に
乾燥膜厚20μmとなるように塗布した。その後、12
0℃×3分乾燥させ、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。
このときの残皮膜率は99%であった。
【0078】(実施例19)製造例3のポリエーテルポ
リエステル(3)を20%水溶液にし、これをベースポ
リマーとして、このベースポリマー30gに、架橋剤と
してWS−500(日本触媒社製、商品名:エポクロス
WS−500)1.54gを配合した後、金属表面上に
乾燥膜厚20μmとなるように塗布した。その後、12
0℃×3分乾燥させ、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。
このときの残皮膜率は98%であった。
【0079】(実施例20)製造例4のポリエーテルポ
リエステル(4)を20%水溶液にし、これをベースポ
リマーとして、このベースポリマー30gに、架橋剤と
してWS−500(日本触媒社製、商品名:エポクロス
WS−500)1.54gを配合した後、金属表面上に
乾燥膜厚20μmとなるように塗布した。その後、12
0℃×3分乾燥させ、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。
このときの残皮膜率は96%であった。
【0080】(実施例21)実施例17で架橋剤WS−
500の添加量を2倍に増やした以外は、実施例17と
同様の操作を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。こ
のときの残皮膜率は96%であった。
【0081】(実施例22)実施例18で架橋剤WS−
500の添加量を2倍に増やした以外は、実施例18と
同様の操作を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。こ
のときの残皮膜率は99%であった。
【0082】(実施例23)実施例19で架橋剤WS−
500の添加量を2倍に増やした以外は、実施例19と
同様の操作を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。こ
のときの残皮膜率は99%であった。
【0083】(実施例24)実施例20で架橋剤WS−
500の添加量を2倍に増やした以外は、実施例20と
同様の操作を行い、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。こ
のときの残皮膜率は97%であった。
【0084】(比較例1)製造例1のポリエーテルポリ
エステル(1)を20%水溶液にし、これを金属表面上
に塗布、乾燥した後UVを照射せずに、塑性加工用潤滑
剤組成物を得た。このときの残皮膜率は3%であった。
【0085】(比較例2)製造例2のポリエーテルポリ
エステル(2)を20%水溶液にし、この水溶液に対し
て疎水性無機微粒子を添加せずに、これを金属表面上に
塗布し、塑性加工用潤滑剤組成物を得た。このときの残
皮膜率は7%であった。
【0086】(比較例3)製造例3のポリエーテルポリ
エステル(3)を20%水溶液にし、これをベースポリ
マーとして、このベースポリマー30gに、架橋剤を加
えずに、金属表面上に乾燥膜厚20μmとなるように塗
布した。その後、120℃×3分乾燥させ、塑性加工用
潤滑剤組成物を得た。このときの残皮膜率は5%であっ
た。
【0087】(比較例4)製造例4のポリエーテルポリ
エステル(4)を20%水溶液にし、これを金属表面上
に塗布、乾燥した後UVを照射せずに、塑性加工用潤滑
剤組成物を得た。このときの残皮膜率は2%であった。
【0088】(フィルム合成例1)フィルム用樹脂とし
て製造例1のポリエーテルポリエステル(1)と、疎水
性無機微粒子の所定量を、東洋精機製作所社製ラボプラ
ストミルR−30で、70℃、30rpmで3分間混練
することにより樹脂組成物(1〜4)を得た。得られた
樹脂組成物(1〜4)を、三浦プレス社製37tプレス
機を用い、150℃、1.47×10-1Pa、8分間の
条件でホットプレス法により、フィルム(1〜4)を得
た。
【0089】(フィルム合成例2)フィルム用樹脂とし
て製造例2のポリエーテルポリエステル(2)と、疎水
性無機微粒子の所定量を、東洋精機製作所社製ラボプラ
ストミルR−30で、70℃、30rpmで3分間混練
することにより樹脂組成物(5〜8)を得た。得られた
樹脂組成物(5〜8)を、三浦プレス社製37tプレス
機を用い、120℃、1.47×10-1Pa、5分間の
条件でホットプレス法により、フィルム(5〜8)を得
た。
【0090】(フィルム合成例3)フィルム用樹脂とし
て製造例3のポリエーテルポリエステル(3)と、疎水
性無機微粒子の所定量を、東洋精機製作所社製ラボプラ
ストミルR−30で、70℃、30rpmで3分間混練
することにより樹脂組成物(9〜12)を得た。得られ
た樹脂組成物(9〜12)を、三浦プレス社製37tプ
レス機を用い、100℃、1.47×10-1Pa、3分
間の条件でホットプレス法により、フィルム(9〜1
2)を得た。
【0091】(フィルム合成例4)フィルム用樹脂とし
て製造例4のポリエーテルポリエステル(4)と、疎水
性無機微粒子の所定量を、東洋精機製作所社製ラボプラ
ストミルR−30で、70℃、30rpmで3分間混練
することにより樹脂組成物(13〜16)を得た。得ら
れた樹脂組成物(13〜16)を、三浦プレス社製37
tプレス機を用い、120℃、1.47×10-1Pa、
5分間の条件でホットプレス法により、フィルム(13
〜16)を得た。
【0092】(フィルム合成例5)フィルム用樹脂とし
て製造例5のポリエーテルポリエステル(5)を、三浦
プレス社製37tプレス機を用い、120℃、9.81
×10-2Pa、8分間の条件でホットプレス法により、
フィルム(17)を得た。
【0093】(フィルム合成例6)フィルム用樹脂とし
て製造例6のポリエーテルポリエステル(6)を、三浦
プレス社製37tプレス機を用い、150℃、9.81
×10-2Pa、8分間の条件でホットプレス法により、
フィルム(18)を得た。
【0094】上記、樹脂組成物/フィルム(1〜18)
の疎水性無機微粒子の種類と添加量、及び残皮膜率につ
いて、表1に示した。
【0095】
【表1】
【0096】(実施例25)小型抽伸機により線材を冷
間抽伸する際の本発明にかかる潤滑剤組成物の使用を例
示する。被加工材となる線材は、炭素鋼(S45C)で
あり、その寸法は直径9mm×長さ2000mmであ
る。試験に用いる線材は、予め酸洗により表面の粗面化
処理を施した。ダイスの口径は直径7mmであり、加工
後の減面率は30.6%となる。
【0097】本発明にかかる潤滑剤組成物としては前述
の実施例1、10及び19の組成物を使用した。比較と
して、一般市販の冷間引抜き油(主な成分は、脂肪酸1
5質量%、硫化油脂70質量%)を用いた。実施した塑
性加工方法を図1に示す。まず、被加工材である線材
を、潤滑剤組成物を収容したタンクに浸漬した後、約1
50℃の均熱炉中を通過させて乾燥し、潤滑皮膜を形成
した。潤滑皮膜の厚みはいずれも約30μmであった。
その後、ダイスで抽伸を行った。冷間引抜き油について
は、ダイス抽伸の直前に線材表面に充分な量を原液のま
ま供給して使用した。
【0098】加工後の線材表面の状態を調査したとこ
ろ、冷間引抜き油を使用した場合には、線材表面に筋状
の焼付き疵を発生したのに対し、本発明にかかる実施例
1、10及び19では、焼付き等の表面疵を発生させず
に抽伸できることを確認した。また、水による洗浄によ
って、残存した該潤滑皮膜は完全に除去されることも確
認した。
【0099】(実施例26)次に、本発明にかかる潤滑
剤組成物が処理された皮膜の耐水性を確認するため、実
施例25の試験機及び試験条件で抽伸テストを行った。
ここでは、抽伸時に材料の導入部に向けて水を塗布し
た。塗布量は約100ml/minであった。実施した
潤滑剤組成物は、実施例6、15及び24の組成であっ
た。また、比較として、前述の比較例1の組成物も用い
た。
【0100】加工後の線材表面の状態を調査したとこ
ろ、比較例1の組成物では、皮膜の一部が水により溶け
落ち、その部分で焼付きを生じている。一方の本発明例
6、15及び24の組成物では、皮膜が溶損するような
ことは見受けられず、従って焼付きも生じなかった。
【0101】次に、本発明の金属塑性加工用潤滑剤組成
物をフィルム化して塑性加工前に工具及び/又は被加工
表面に予め付着せしめた場合の加工法を例示する。ま
ず、フィルムとしては以下の(a)〜(c)の3種類を
準備した。 (a)製造例1のポリエーテルポリエステル(1)を三
浦プレス社製37tプレス機を用い、150℃、1.4
7×10−1Pa、8分間の条件でホットプレス法によ
りフィルム化した。その直後に、実施例1に記載される
装置・照射条件でUV照射を5秒間行った。 (b)製造例2のポリエーテルポリエステル(2)を架
橋剤としてWS−500を6:0.44の重量比率で混
合し、直後に三浦プレス社製37tプレス機を用い、1
50℃、1.47×10−1Pa、8分間の条件でホッ
トプレス法によりフィルム化した。 (c)前記フィルム合成例3記載のフィルム。
【0102】次に、評価に用いた小型プレスでの円筒深
絞り成形による加工方法を示す。その概略図を図2に示
す。引抜き速度200mm/min、ポンチ径90mm
φ、しわ押さえ力3t、被加工材は炭素鋼の溶融亜鉛メ
ッキ鋼板で、サイズは90mmφ×0.7mmtであっ
た。前述のフィルムを被加工材の両面に同じ90mmφ
に切った後に付着させた。尚、被加工材への付着には接
着剤等は使用せず、ダイと被加工材とで挟み込むように
した。また、比較用の潤滑剤として一般的なプレス油
(VG100グレードの鉱油50重量%、菜種油50重
量%)を用いた。このプレス油はハケ塗りで被加工材の
両面に充分量塗布した。
【0103】深絞り成形を行った結果、本発明例のフィ
ルム(a)、(b)、(c)では焼付きや被加工材の割
れなく、最後まで絞り成形が行えた。しかし、比較用潤
滑剤では、最後まで絞り成形が終わる直前に、上ダイス
のコーナー部及び被加工材の表面に小さな焼付きを生じ
た。また、実施例26同様に被加工部に向けて100m
l/minの水を塗布しながら加工を行っても本発明の
フィルム(a)、(b)、(c)は溶けたり剥がれたり
することなく、従って焼付きもなく最後まで成形するこ
とができた。
【0104】
【発明の効果】本発明の金属塑性加工用潤滑剤組成物
は、上述のような構成よりなるため、金属の塑性加工、
特に冷間における場合において、焼付きが発生しやすい
厳しい加工条件においても優れた潤滑性を発揮し、かつ
洗浄性を損なうことなく、潤滑皮膜に耐水性や耐湿性を
付与することができるものである。また本発明の金属の
塑性加工方法によれば、摩擦を軽減し、焼付きを防止し
て工具の寿命延長や製品品質の向上を実現することがで
き、しかも、塑性加工後における洗浄性が優れるうえ
に、塑性加工において要求される耐水性や耐湿性を充分
に満足することができる潤滑皮膜を形成することが可能
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で採用した線材の連続伸線工程を例示す
る説明図である。
【図2】実施例において、評価に用いた小型プレスでの
円筒深絞り成形による加工方法を示す概略図である。
【符号の説明】
1 潤滑剤組成物 13 潤滑剤タンク 14 ダイス 15 水洗装置 16 乾燥装置 17 金属(線材)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10M 125/22 C10M 125/22 125/26 125/26 // C10N 10:04 C10N 10:04 10:12 10:12 40:20 40:20 Z (72)発明者 松本 圭司 兵庫県尼崎市扶桑町1番8号 住友金属工 業株式会社内 (72)発明者 山本 宣延 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内 (72)発明者 野▲崎▼ 茂幸 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内 (72)発明者 松下 輝紀 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内 Fターム(参考) 4H104 AA04C AA13C AA19C AA22C AA24C AA26C CB13A CB14A FA02 FA06 PA21 QA12 QA13 QA14

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエーテルポリエステル系ポリマーの
    架橋性を利用する架橋性材料を含有してなることを特徴
    とする金属塑性加工用潤滑剤組成物。
  2. 【請求項2】 前記ポリエーテルポリエステル系ポリマ
    ーの他に架橋剤としての多官能化合物を含むことを特徴
    とする請求項1に記載の金属塑性加工用潤滑剤組成物。
  3. 【請求項3】 ポリエーテルポリエステル系ポリマーと
    疎水性無機微粒子を含有してなることを特徴とする金属
    塑性加工用潤滑剤組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1から3のいずれかに記載の金属
    塑性加工用潤滑剤組成物により金属表面を処理する工程
    を行った後に、塑性加工する工程を行うことを特徴とす
    る金属の塑性加工方法。
  5. 【請求項5】 前記金属表面を処理する工程は、請求項
    1から3のいずれかに記載の金属塑性加工用潤滑剤組成
    物をフィルム化したものを、塑性加工前に工具表面及び
    /又は被加工材表面に予め付着せしめることにより行わ
    れることを特徴とする請求項4に記載の金属の塑性加工
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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