JP2003170597A - インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタ - Google Patents

インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタ

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JP2003170597A
JP2003170597A JP2002281351A JP2002281351A JP2003170597A JP 2003170597 A JP2003170597 A JP 2003170597A JP 2002281351 A JP2002281351 A JP 2002281351A JP 2002281351 A JP2002281351 A JP 2002281351A JP 2003170597 A JP2003170597 A JP 2003170597A
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heat
ink
substrate
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heat transfer
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JP2002281351A
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Ryoichi Yamamoto
亮一 山本
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Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】熱伝導率の低い安価な基板上に発熱ヒータを設
けたサーマル方式のインクジェットヘッドにおいて、発
熱ヒータの周辺の温度上昇を抑え、長時間インク液滴を
吐出させる。 【解決手段】インクジェットヘッドの基板102は、熱
伝導率が15(W/m/K)以下であり、この基板10
2上に、厚さが10μm以上の伝熱層104、その上層
に熱絶縁層106を設け、その上層に発熱ヒータ118
を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インク液滴を発熱
ヒータを用いてインク吐出ノズルから記録媒体に吐出す
るサーマル方式のインクジェットヘッドおよびこれを用
いたインクジェットプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】サーマル方式のインクジェットプリンタ
のインクジェットヘッドは、例えば、ヘッド基板に対し
て略垂直方向にインク液滴を吐出するトップシュータ方
式の場合、ヘッド基板であるシリコン基板などの半導体
基板上に形成された薄膜抵抗体と、この薄膜抵抗体の略
垂直上方に設けられたインク吐出ノズルと、このインク
吐出ノズルに連通する、半導体基板上の隔壁層によって
形成されたインク流路とを有し、インク流路内のインク
の一部を急速に沸騰させ気泡を発生させることによっ
て、インク吐出ノズルから基板に対して略垂直方向にイ
ンク液滴を吐出させる。
【0003】このようなインクジェットヘッドは、高解
像度で高画質の画像を記録紙にプリントできるように、
インク吐出ノズルの径を小さくし、さらに、インク吐出
ノズルを高密度化することが望まれている。一方、高解
像度で高画質のプリントを短時間に出力できるように、
インク吐出ノズルが大規模に配列した長尺ヘッド、例え
ば、A4サイズの記録紙の幅方向一杯にインク吐出ノズ
ルが配列されたラインヘッドの開発が望まれている。
【0004】ここで、インクジェットヘッドは、発熱ヒ
ータをインク吐出ノズルに一対一に対応させて基板上に
形成するため、インクジェットヘッドの製造容易の点か
ら基板としてシリコン基板を用いるのが一般的である。
しかし、シリコン基板によって作られるインクジェット
ヘッドは、6インチ等の所定の大きさのシリコンウエハ
から切り出して製造されるため、長尺ヘッドを製造する
には、サイズの大きい高価なシリコンウエハを用いなけ
ればならない。さらに、この長尺ヘッドの長さもシリコ
ンウエハのサイズによって制限されるため、上述のよう
なラインヘッドを1つの基板で1チップ化し、しかも安
価に製造することはできない。
【0005】一方、このような高価でサイズの制限され
るシリコン基板に対して、コストも比較的安く、大きさ
も制限されないガラス基板を用いてインクジェットヘッ
ドを製造することも考えられる。例えば、特許文献1で
は、ソーダ石灰ガラス基板の上層にアルミニウムや銅や
金等の熱伝導率の高い、厚さが1〜2μmの金属のヒー
トシンク層、その上層に絶縁層、その上層に抵抗層およ
び導電層からなる発熱ヒータ、その上に、保護層を形成
した構造のインクジェットヘッドが開示されている。こ
こで、金属のヒートシンク層は、発熱ヒータの下にある
ので、発熱ヒータから発生する熱エネルギーを素早く放
散させて熱を開放する機能を有するとされている。
【0006】しかし、このようなヘッド構造を、インク
吐出ノズルの高密度化、例えば、インク吐出ノズルの密
度を600npi(ノズル/インチ)以上とするのに伴
って発熱ヒータを高密度に集積し、しかも10kHz以
上に相当するインク吐出周期でインク液滴を吐出する
と、発熱ヒータで発熱した熱の放熱が追いつかず、発熱
ヒータの周辺の温度が上昇して、インク液滴の連続吐出
が不能となる場合が多く見られた。金属のヒートシンク
層の熱伝導率は極めて高いため、これ以上熱伝導率の高
い材料を用いることはできない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−191529号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、上
記問題点を解決するために、熱伝導率の低い安価な基板
上に設けられた発熱ヒータを用いてインク液滴を吐出さ
せるインクジェットヘッドにおいて、インクジェットヘ
ッドの高密度化の場合においても、発熱ヒータの周辺の
温度上昇を抑え、長時間インク液滴を吐出させることの
できるインクジェットヘッドおよびこれを用いたインク
ジェットプリンタを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、インク液滴をインク吐出ノズルから記録
媒体に吐出するインクジェットヘッドであって、熱伝導
率が15(W/m/K)以下の基板上に、10μm以上
の厚さの伝熱層およびこの伝熱層と隣接する上層に熱絶
縁層が設けられるとともに、この熱絶縁層の隣接する上
層に、インクの一部を沸騰させて気泡を発生させ、この
気泡の膨張により、インク液滴をインク吐出ノズルから
吐出させる薄膜抵抗体とこの薄膜抵抗体に通電するため
の薄膜導体電極とを有する発熱ヒータが設けられたこと
を特徴とするインクジェットヘッドを提供する。
【0010】ここで、前記伝熱層は、Cu、Alおよび
Siの中から選択された金属で形成されるのが好まし
い。また、前記伝熱層は、前記発熱ヒータの形成された
基板の表面からこの表面と反対の基板の裏面まで、基板
の端部を回り込むように繋がって形成され、この基板の
裏面に、前記発熱ヒータから前記伝熱層によって伝えら
れた熱を放熱する放熱部が設けられるのが好ましい。あ
るいは、前記基板は、前記発熱ヒータの形成された表面
と反対の裏面に、放熱部が設けられ、前記基板の表面と
裏面とを貫通し、前記表面の前記伝熱層と前記裏面の放
熱部とを繋ぐ伝熱部材が設けられるのも同様に好まし
い。
【0011】また、前記熱絶縁層は、熱伝導率が0.1
〜10(W/m/K)であるのが好ましく、前記熱絶縁
層は、Si酸化物、Si窒化物あるいはSi炭化物、あ
るいはポリイミド樹脂材料からなるのが好ましい。前記
薄膜抵抗体は、Ta金属を組成物として含むのが好まし
く、その際、前記薄膜抵抗体は、Ta−Si−O3元合
金を抵抗材料として用いるのが好ましい。また、前記発
熱ヒータは、厚さが1μm以下の保護層が前記薄膜抵抗
体の上層に形成されるのが好ましい。
【0012】前記インク吐出ノズルは、前記インク吐出
ノズルの入り口端が基板上に形成された前記薄膜抵抗体
と対向するように配置され、このインク吐出ノズルから
インク液滴が基板に対して略垂直方向に吐出する、いわ
ゆる、トップシュータ方式であるのが好ましい。その
際、前記発熱ヒータのヒータ面から前記インク吐出ノズ
ルの吐出端までの距離は40μm以下であり、前記イン
ク吐出ノズルの入り口端の形状は、前記発熱ヒータのヒ
ータ面に投影した場合、前記発熱ヒータのヒータ面の形
状に内包されるのが好ましい。また、上述のインクジェ
ットヘッドは、前記発熱ヒータの駆動を制御する制御回
路が、前記基板上に形成された多結晶シリコン層によっ
て形成されたインクジェットヘッドであるのが好まし
い。
【0013】また、本発明は、インク液滴をインク吐出
ノズルから記録媒体に吐出するインクジェットヘッドで
あって、熱伝導率が15(W/m/K)以下の基板上に
伝熱層およびこの伝熱層と隣接する上層に熱絶縁層が設
けられるとともに、この熱絶縁層の隣接する上層に、イ
ンクの一部を沸騰させて気泡を発生させ、この気泡の膨
張により、インク液滴をインク吐出ノズルから吐出させ
る薄膜抵抗体とこの薄膜抵抗体に通電するための薄膜導
体電極とを有する発熱ヒータが設けられ、前記伝熱層
が、インクの吐出のために供給されるインクに対して放
熱する放熱部と接続されたことを特徴とするインクジェ
ットヘッドを提供する。
【0014】ここで、前記伝熱層の上層に、前記発熱ヒ
ータが複数個並列して設けられ、前記伝熱層は、この複
数の発熱ヒータからの熱をまとめて前記放熱部に向けて
伝熱する配線パターンを成しているのが好ましい。前記
放熱部は、前記発熱ヒータの形成された表面と反対の裏
面に設けられ、前記基板の表面と裏面とを貫通し、前記
表面の前記伝熱層と前記裏面の放熱部とを接続するため
の伝熱部材が前記基板に設けられるのが好ましい。この
場合、前記基板には、インクの吐出のために前記基板の
裏面から表面に向けてインクを供給するための貫通孔が
設けられ、前記伝熱部材は、前記貫通孔に沿って設けら
れるのが好ましい。
【0015】また、本発明は、前記インクジェットヘッ
ドを用いたことを特徴とするインクジェットプリンタを
提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のインクジェットヘッドお
よびインクジェットプリンタについて、添付の図面に示
す好適実施例を用いて以下に詳細に説明する。図1
(a)および(b)は、本発明のインクジェットヘッド
を搭載するインクジェットプリンタの一例であるプリン
タ10を示している。図1(a)はプリンタ10の概略
の構成図であり、図1(b)は、概略斜視図である。
【0017】プリンタ10は、インクジェットヘッド5
2が、記録紙等の記録媒体Pの少なくとも1辺の長さを
超えてインクを吐出する複数のインク吐出用ノズルが一
方向に大規模かつ高密度に配列されたラインヘッドで構
成されたインクジェットプリンタである。プリンタ10
は、記録部12、供給部14、プレヒート部16および
排出部18を有して構成される。
【0018】供給部14は、搬送ローラ対20および2
2と、ガイド24および26とを有し、記録媒体Pは、
供給部14によって横方向から上方に搬送されプレヒー
ト部16に供給される。
【0019】プレヒート部16は、3本のローラおよび
エンドレスベルトからなるコンベア28と、コンベア2
8の外方からエンドレスベルトに押圧される圧着ローラ
30と、コンベア28の内方から圧着ローラ30に押圧
される加熱装置32と、プレヒート部16内を排気する
排気ファン34とを有する。このようなプレヒート部1
6は、インクジェットによる記録に先立ち記録媒体Pを
加熱することで、記録媒体Pに吐出されたインクの乾燥
を促進し、高速記録を実現するためのもので、供給部1
4から搬送された記録媒体Pは、コンベア28と圧着ロ
ーラ30とによって挟持搬送されつつ、加熱装置32に
よって記録面側から加熱され、記録部12に搬送され
る。
【0020】記録部12は、記録ヘッド部50と記録媒
体搬送部58とを有して構成され、記録ヘッド部50
は、Si基板からなるヘッドチップを有するインクジェ
ットヘッド52と、記録制御部54と、インクタンク5
6とを有し、インクジェットヘッド52は、記録制御部
54に接続される。
【0021】インクジェットヘッド52は、プリンタ1
0の画像記録の対象とする最大幅サイズの記録媒体Pの
少なくとも1辺を超える長さにわたって、インク液滴を
吐出するインク吐出用ノズルが複数配列された大規模な
ラインヘッドで、インク吐出用ノズルは、図1(a)中
の紙面において垂直方向に配列される。従って、記録ヘ
ッド部50は、駆動ローラ62および搬送ローラ60
a、60bに巻回されたベルト64を有する記録媒体搬
送部58によって搬送される記録媒体P上に、図1
(a)の紙面に垂直方向に走査することなく、記録幅全
体に渡って、一度に記録される。記録された記録媒体P
は、ローラ対72、74を有する排出部18より排出さ
れる。なお、プリンタ10のインクジェットヘッド52
は、インク吐出用ノズルの密度が、600npi(ノズ
ル/インチ)以上であり、好ましくは900npi以
上、さらに好ましくは1600npi(ノズル/イン
チ)以上である。このような高密度化されたインクジェ
ットヘッドにおいて、後述する本発明の効果がより効果
的に発揮される。また、インクジェットヘッド52は、
ラインヘッドに限られず、記録媒体Pの搬送方向と直交
する方向にインクジェットヘッド10が走査するシリア
ルタイプのインクジェットヘッドであってもよい。
【0022】このようなプリンタ10のインクジェット
ヘッド52の1つのインク吐出ノズルに対応したヘッド
構造100が図2に示されている。図2において、ヘッ
ド構造100は、インク吐出の配列方向(紙面に対して
垂直方向)に高密度に設けられている。なお、図2で示
す断面方向の厚さは、理解しやすいように誇張されてい
る。後述する、図3や図4や図5も同様である。図2に
示すヘッド構造100は、基板102と、この基板10
2に隣接する上層としての伝熱層104と、この伝熱層
104に隣接する上層としての熱絶縁層106と、この
熱絶縁層106に隣接する上層としての抵抗層108
と、この抵抗層108に隣接する上層としての電極層1
10(110a,110b)と、隔壁層112と、この
隔壁層112に隣接する上層としてのプレート層116
とを有して形成される。
【0023】ここで、電極層110の一部は除去されて
下層の抵抗層108が表れており、この表面に表れた抵
抗層108の部分を薄膜抵抗体120とし、図中左右に
分かれた電極層110a、110bを導体電極122と
する発熱ヒータ118が形成されている。すなわち、発
熱ヒータ118は、薄膜抵抗体120と薄膜導体電極1
22とを有する。一方、基板102の垂直方向の薄膜抵
抗体120と対向する位置にプレート層116に穿孔さ
れたインク吐出ノズル124が配置される。すなわち、
インク吐出ノズル124は、ノズルの入り口端が基板1
02上に形成された薄膜抵抗体120と対向するように
配置される。また、隔壁層112は、インク吐出ノズル
124毎に隔壁で隔てられたインク流路114を形成
し、このインク流路114は、インクタンク56からイ
ンクを供給し、インク吐出ノズル124内にまでインク
を満たす。ここで、薄膜抵抗体120は、薄膜導体電極
122からの電流によって発熱することで、インクを急
速に加熱してインクの一部を沸騰させて気泡を発生さ
せ、この気泡の膨張により、インク吐出ノズル124か
らインク液滴を基板102に対して略垂直方向(80度
〜100度方向)に吐出させる。
【0024】ここで、薄膜抵抗体120(抵抗層10
8)は、Ta−Si−O三元合金からなり、インクと接
触する表層には、薄膜抵抗体120自らの表面が酸化し
た、図示されない自己酸化被膜が予め形成され、発熱ヒ
ータ118のヒータ面を形成する。薄膜抵抗体120の
厚さが、例えば0.1μmの場合、自己酸化被膜は、薄
膜抵抗体120の厚さの10分の1以下の0.01μm
以下となっている。このようなTa−Si−O三元合金
の自己酸化被膜は、電気絶縁性があるとともに耐キャビ
テーション性にも優れ、しかも、その厚さが0.01μ
m以下と薄い。従って、薄膜抵抗体120で発生した熱
により、108 (K/秒)(K:ケルビン)以上の加熱
速度でインクを加熱することができ、パルス信号に対す
る気泡の発生の応答性を上げ、しかも、印加電力も小さ
くて済み、薄膜抵抗体120の発熱エネルギーも少なく
て済む。なお、薄膜抵抗体120の加熱速度は10
8 (K/秒)〜5×108 (K/秒)であることが、イ
ンク液滴を安定して吐出させる点で好ましい。
【0025】なお、本発明においては、薄膜抵抗体12
0(抵抗層108)として、TaにSi(ケイ素)やA
l(アルミニウム)やN(窒素)やO(酸素)の成分を
含んだ合金を抵抗材料として用いてもよく、少なくと
も、Ta金属を組成物として含む。この場合、図3に示
すように、薄膜抵抗体120の上層に酸化ケイ素や窒化
ケイ素や炭化ケイ素やTa金属を保護層123として設
けてもよい。図3に示す保護層123は1層であるが、
2層以上であってもよく、少なくとも、保護層の合計の
厚さは、パルス信号の印加に対する気泡の発生の応答性
および発熱エネルギーの省力化の点から、1μm以下で
あるのが好ましい。
【0026】隔壁層112は、感光性ポリイミド樹脂材
によって形成される。この隔壁層112の厚さは15μ
m以下であるのが好ましい。プレート層116は、隔壁
層112の上層に接着等によって貼り付けられたポリイ
ミドプレートであり、反応性ドライエッチング等によっ
て、インク吐出ノズル124が略垂直方向(80度〜1
00度方向)にあけられ、インク吐出ノズル124の入
り口端が基板102上に形成された薄膜抵抗体120の
位置に対向するように配置され、インク吐出ノズル12
4からインク液滴が略垂直方向に吐出する。このような
プレート層116の厚さは25μm以下であるのが好ま
しく、隔壁層112およびプレート層116の合計の厚
さが40μm以下であるのが好ましい。
【0027】隔壁層112およびプレート層116の合
計の厚さを40μm以下とすることで、インク吐出ノズ
ルの実効的な長さ、すなわち、発熱ヒータ118のイン
クと接触するヒータ面の最上面からインク吐出ノズル1
24の吐出端までの距離を40μm以下とすることがで
き、気泡の発生によってインク液滴を吐出させる際の気
泡の最大成長高さが40μm以下となる。従って、気泡
の発生によってインク液滴を吐出させる際、この気泡に
よってインクをインク液滴として吐出すべきインクと残
留するインクとに分断し、吐出すべきインクをインク液
滴として吐出させることができ、しかも、インクのスプ
ラッシュを発生させない。
【0028】さらに、インク吐出ノズル124の入り口
端(発熱ヒータ118側の端)の形状は、この入り口端
の形状を発熱ヒータ118のヒータ面に投影した場合、
発熱ヒータのヒータ面の形状である薄膜抵抗体120の
形状に内包されるのが好ましい。すなわち、インク吐出
ノズル124の入り口端が一定の径の円形状を成し、薄
膜抵抗体120が正方形形状を成す場合、この円形状
は、薄膜抵抗体120の正方形形状に内包される。例え
ば、インク吐出ノズル124の入り口端が直径15μm
の円形状であり、薄膜抵抗体120は、この円形状を内
包する20μm×20μmの正方形形状である。このよ
うに、インク吐出ノズル124の入り口端の形状と、発
熱ヒータのヒータ面の形状との関係を設定することで、
気泡の発生によってインク液滴を吐出させる際、気泡の
膨張によってインクをインク液滴として吐出すべきイン
クと残留するインクとに確実に分断して、吐出すべきイ
ンクをインク液滴として吐出させることができる。
【0029】このような発熱ヒータ118やインク吐出
ノズル124は、基板102上に形成される。基板10
2は、熱伝導率が15(W/m/K)以下の材料からな
る。熱伝導率が略150(W/m/K)のシリコン(S
i)は本発明における基板材料から除かれる。熱伝導率
が15(W/m/K)以下の基板材料としては、例え
ば、アモルファス材料、より具体的には、石英ガラスや
無アルカリガラス等のセラミック材料が挙げられ、ま
た、ポリイミドやアラミド等の耐熱性高分子樹脂材料も
挙げられる。また、合金であっても、熱伝導率が15
(W/m/K)以下のものであればよい。例えば、熱伝
導率が11〜14(W/m/K)であるインコロイ80
0、インコネル600、インコネル750、ハステロイ
C、ニモニック90等のNi系、Ti系合金材料も含ま
れる。(インコロイおよびインコネルはインコ社の商標
である。)
【0030】基板102の厚さは、アモルファス材料や
合金材料では100μm以上、高分子樹脂材料では10
μm以上であることが、基板102面上に発熱ヒータ1
18やインク吐出ノズル124を形成し加工する操作性
の点から好ましい。
【0031】伝熱層104は、Cu、Al、Si等の金
属材料や、Mo、W、Rh、Mg、ダイヤモンドライク
カーボン単体やこれらの合金の材料から選択され、厚さ
が10μm以上である。伝熱層104は、公知のPVD
法やCVD法によって形成される。あるいは、金属箔の
ラミネートによって形成され、基板102と伝熱層10
4の間に、高分子接着層が形成されてもよい。さらに、
基板102がガラス板の場合、バルク状のシリコンを陽
極接合により接合し、接合されたバルク状のシリコンを
所望の厚さまで研磨して伝熱層104を形成してもよ
い。なお、伝熱層104の熱伝導率は、100(W/m
/K)以上であるのが好ましい。
【0032】このような伝熱層104は、発熱ヒータ1
18の形成された基板の表面からこの表面と反対の基板
の裏面まで、基板102の端部を回り込むように繋がっ
て形成される。ここで、裏面にはペルチェ素子からなる
放熱部126が形成されている。発熱ヒータ118位置
直下の伝熱層104と放熱部126までの距離は、例え
ば2mm以下、好ましくは、1mm以下である。一方、
基板102の裏面には、発熱ヒータ118から伝熱層1
04によって伝えられた熱を、電流を流すことによって
熱を能動的に吸収するペルチェ素子が設けられ放熱部1
26を形成する。なお、放熱部126は、ペルチェ素子
の替わりに、熱を受動的に放熱する放熱フィンを用いて
外気に放熱してもよいし、また、インク流路114に供
給されるインクとの熱交換により熱をインクに放熱して
もよい。なお、基板102は、発熱ヒータ118の形成
された表面と反対の裏面に放熱部126が設けられ、基
板102の表面と裏面とを貫通し、表面の伝熱層104
と裏面の放熱部126とを繋ぐ伝熱部材が設けられた構
成であってもよい。さらに、放熱部126は、基板10
2の表面に設けられてもよい。このような伝熱層104
を介した熱の放熱については後述する。
【0033】なお、伝熱層104の厚さを10μm以上
とするのは、図4に示すように、発熱ヒータ118から
発生した熱はインクの気泡の発生に消費される一方、残
りの熱Qは発熱ヒータ118から熱絶縁層106を介し
て基板102側方向に流れるが、この基板102側方向
に流れた熱Qを、放熱部126に向かって傾く温度勾配
に沿って効率よくかつ積極的に伝熱させるためである。
【0034】従来のインクジェットヘッド、すなわち、
シリコン基板の上に絶縁層、その上に発熱抵抗体の形成
されたヘッド構造では、シリコン基板の厚さ方向に熱が
効率よく流れて放熱されるため、シリコン基板や発熱ヒ
ータが過度に蓄熱することがなく、長時間インク液滴を
吐出させることができるが、これはシリコン基板の表面
から裏面に向けて熱が伝熱する際の熱抵抗Rが比較的低
いからである。
【0035】一般に、熱抵抗Rは、伝熱する材料の熱伝
導率をλ、熱流束の断面積をS、伝熱する長さをLとす
ると、熱抵抗Rは下記式(1)で表される。 R = (1/λ)・(L/S) (1) ここで、シリコン基板の上に絶縁層、その上に発熱ヒー
タを形成する発熱抵抗体が形成された従来のインクジェ
ットヘッドの場合、上述したように、熱は発熱ヒータか
ら絶縁層を通りシリコン基板側に流れ、続いて、その厚
さ方向および幅方向に効率良く流れると考えることがで
きる。そこで、本発明者は、シリコン基板の熱伝導率λ
が高く、シリコン基板の厚さが厚いので、シリコン基板
内の幅方向の流れの熱抵抗Rが、発熱ヒータからシリコ
ン基板側への熱の流れの熱抵抗Rより小さいと考えら
れ、第1次近似的には、熱は発熱ヒータから絶縁層を通
り直下のシリコン基板側に流れるもの(律速)と近似で
きるということを知見した。従って、この従来のインク
ジェットヘッドの場合、上記式(1)の熱流速の断面積
Sは、発熱ヒータの面積(発熱抵抗体の電極層に覆われ
ていない露出部分)で近似でき、伝熱長さLは、シリコ
ン基板の厚さで近似でき、例えば600npi(ノズル
/インチ)の線密度の従来のインクジェットヘッドの場
合、熱流速の断面積Sは、概ね、20〜40μm2 、伝
熱長さLは、概ね、600〜650μmと近似できると
いうことを、本発明者は知見した。なお、シリコン基板
内の幅方向の流れでは、熱流速の断面積Sは、発熱ヒー
タの幅方向に沿ったシリコン基板の断面積(ヒータサイ
ズとシリコン基板の厚みとの積)で、伝熱長さLは、概
略、シリコン基板内の幅方向の長さの半分で近似できる
ということも、本発明者は知見した。このような従来の
インクジェットヘッドは、本発明に用いられる基板10
2に比べて熱伝導率λが高いシリコン基板が用いられて
いるため、熱抵抗Rが比較的低く、シリコン基板内を熱
が幅方向に効率よく流れて放熱されるため、シリコン基
板や発熱ヒータの周辺が過度に熱せられることがなく、
長時間インク液滴を吐出させることができると考えるこ
とができる。しかし、上述した特開2001−1915
29号公報の、ソーダ石灰ガラス基板の上層に厚さが1
〜2μmのアルミニウムや銅や金等の熱伝導率の高い金
属のヒートシンク層、その上層に絶縁層、その上層に発
熱ヒータを有するインクジェットヘッドでは、熱抵抗R
が高い。この理由について、本発明者は、このインクジ
ェットヘッドの場合、ガラス基板の熱伝導率λが低く、
ガラス基板への放熱が期待できないため、熱は発熱ヒー
タから絶縁層を通りヒートシンク層を流れることになる
が、ヒートシンク層の厚さが薄いため、発熱ヒータから
ヒートシンク層への熱の流れの熱抵抗Rより、ヒートシ
ンク層内の幅方向の流れ(律速)の熱抵抗Rが問題とな
り、その結果、ヒートシンク層の厚みの薄さによる熱抵
抗Rの高さが問題となるからであるということを知見し
た。
【0036】その結果、本発明者は、上述したような伝
熱層104の熱の流れる方向を積極的に利用すること
で、すなわち、伝熱層104の熱の流れる方向を伝熱層
の面方向(図中水平方向)にすることで、発熱ヒータの
幅方向に沿った伝熱層104の断面積S(発熱ヒータ1
18の幅方向のサイズと伝熱層104の厚みとの積)を
大きくすることができることに着目し、伝熱層104の
厚さを10μm以上とすることが必要であることを見い
だしたのである。
【0037】一方、熱絶縁層106は、熱伝導率が0.
1〜10(W/m/K)の範囲の絶縁材料からなり、厚
さが0.5〜10μmである。より好ましくは、厚さが
1〜2μmであるのがよい。例えば、熱伝導率が1.4
(W/m/K)で、厚さが1μmの酸化ケイ素(SiO
2 )が例示される。その他に、Si窒化物(Si
3 4 )あるいはSi炭化物(SiC)、あるいポリイ
ミド樹脂材料が用いられてもよい。熱絶縁層106は、
発熱ヒータ118で発生した熱を効率よくインクの加熱
に用いて気泡を発生させるように、伝熱層104側への
伝熱をある程度防ぐとともに、電気的絶縁を行うために
用いられる。
【0038】また、インクジェットヘッド52は、発熱
ヒータ118を選択し駆動する制御回路128が設けら
れる。制御回路128は、図5に示すように、発熱ヒー
タ118が形成された同一の基板102上に形成され
る。すなわち、熱絶縁層106の上層に多結晶シリコン
層130,134が形成され、これらの多結晶シリコン
層130,134によってFETが形成されることによ
て制御回路128が形成される。
【0039】FETの形成は、多結晶シリコン層13
0,134が公知のCVD法を用いて熱絶縁層106の
上に厚さ0.02〜0.5μmで形成され、その後、ボ
ロン(B)やリン(P)原子の公知の熱拡散や公知のイ
オン注入によってp型あるいはn型のドーピング処理が
施され、FETのドレインおよびソースが形成される。
そして、公知のマスキング、エッチング処理によって所
定のパターンに加工される。さらに、この多結晶シリコ
ン層130の上層にSiO2 等の酸化層132を介し
て、別の多結晶シリコン層134が上述と同様の方法で
形成されドーピング処理され、FETのゲートが形成さ
れる。このようなFETのドレインは、ゲートに印加さ
れるパルス信号に応じて電極層110aにドレイン電流
を流し、薄膜抵抗体120を発熱させる。このような多
結晶シリコン層130,134は、形成温度が比較的低
い(略500〜600℃)低温多結晶シリコンによって
形成されるのが好ましい。ヘッド構造100は以上のよ
うに構成される。
【0040】このようなヘッド構造100は、制御回路
128の駆動によって薄膜導体電極122から薄膜抵抗
体120に電流が流れて発熱し、108 (K/秒)以上
の加熱速度でインクを加熱して気泡を発生させ、この気
泡の膨張力によってインク液滴をインク吐出ノズル12
4から吐出させる。薄膜抵抗体120で発生した熱は、
インクの沸騰のために供給される一方、残りの熱は、基
板102方向に伝導し、熱絶縁層106を介して伝熱層
104に至る。伝熱層104は、伝熱層104から伝熱
された熱を放熱する放熱部126に接続されるので、発
熱ヒータ118から放熱部126に至る伝熱層104に
は、温度勾配が形成される。従って、熱絶縁層106か
ら基板102に対して垂直方向に伝熱された熱流は、図
4に示すように、基板102の基板水平方向に向きを変
え、伝熱層104の温度勾配に沿って放熱部126に向
かって熱が流れる。
【0041】ここで、伝熱層104は、伝熱層104の
温度勾配に沿って流れる熱の熱抵抗Rが低下するよう
に、所定の厚さ以上であることを必要とする。すなわ
ち、発熱ヒータ118の周辺の温度の上昇を抑制するに
は、上記式(1)における断面積Sを所定値以上にして
熱抵抗Rを小さくし、伝熱を迅速に行うことが重要であ
る。ここで、熱は伝熱層104の温度勾配に沿って流れ
るので、断面積Sは発熱ヒータ118の薄膜抵抗体12
0のサイズと伝熱層104の厚さによって規定される。
そして、伝熱層104の厚さは、インクの吐出周波数を
10kHz以上、より好ましくは20kHz以上とする
ためには、後述する実施例によって、10μm以上であ
ることが必要である。
【0042】図6は、図2に示す放熱部126で放熱す
る形態と異なるインクジェットヘッドの形態の一例を示
し、基板上に形成される発熱抵抗体、この発熱抵抗体に
電圧を付与する電極層、この電極層に付与する電圧を制
御する制御部および伝熱層の配置を説明する図である。
図6に示す基板、発熱抵抗体、電極層、制御部および伝
熱層は、図2および図5に示す基板102、発熱抵抗体
120、電極層110a,110b、制御部128およ
び伝熱層104と同様の構成を成し、同様の機能を有す
るため同一の符号で記して説明は省略する。
【0043】基板102には、複数の発熱抵抗体120
が、図中左右方向に一列で等間隔で配列されており、各
発熱抵抗体120の上方(図6における紙面上方)に、
図示されないインク吐出ノズル124が各発熱抵抗体1
20に対応して配置されている。電極層110bは各発
熱抵抗体120の共通電極として配線されており、電極
層110aは制御回路128と接続され、各発熱抵抗体
120が個別に発熱するように配線されている。各発熱
抵抗体120の下層には、図示されない熱絶縁層が、さ
らにこの下層には伝熱層104が設けられている。な
お、伝熱層104は、所定の数の発熱抵抗体120毎に
発熱抵抗体120の共通した下層として形成され、各伝
熱層104毎に制御部128の上方を横断して、各伝熱
層104毎に設けられた放熱部126に導かれている。
なお、伝熱層104の横断部分には、図示されない熱絶
縁層が制御部128と伝熱層104の中間に形成され、
伝熱層104の熱が制御部128に伝熱しないように構
成されている。放熱部126は、基板102の端に設け
られ、外気に熱が放熱するように構成されている。
【0044】このような構成により、発熱抵抗体120
から図示されない熱絶縁層を介して基板102に対して
垂直方向に伝熱された熱流は、基板102の基板水平方
向に向きを変え、伝熱層104の温度勾配に沿って、制
御部128を横断して放熱部126に向かって熱が流れ
る。この場合においても、効率よく熱を流すため、伝熱
層104の厚さを10μm以上とする。伝熱層104
は、基板102に設けられたすべての発熱抵抗体120
に共通した層ではなく、複数の発熱抵抗体120毎に形
成され、複数の発熱抵抗体120からの熱をまとめ、1
本の配線のように制御部128を横断して各放熱部12
6に接続した配線パターン状の層となっている。これに
より、一方向に延在した長尺状の基板102によってヘ
ッドが構成されている場合、基板102の長辺側に放熱
部126を設け、この放熱部126に向けて配線パター
ン状の伝熱層104を引き出すことで、配線距離を短く
することができ、効率よく伝熱を行わせることができ
る。特に、伝熱層104を発熱抵抗体120に共通した
層として制御部128を横断させる場合に比べて、制御
部128の動作への熱による悪影響を低減し、伝熱層1
04自身の剥がれや基板102の反りを低減することが
できる。伝熱層104は、複数の発熱抵抗体120毎に
配線パターン状に形成されたものであるが、各発熱抵抗
体個別に配線パターン状の伝熱層が形成されてもよい。
【0045】図7(a)および(b)は、図2および図
6に示す放熱部126で放熱する形態と異なるインクジ
ェットヘッドの形態の一例を示し、基板上に形成される
発熱抵抗体、この発熱抵抗体に電圧を付与する電極層、
この電極層に付与する電圧を制御する制御部および伝熱
層の配置を説明する図である。図7における基板、発熱
抵抗体、電極層、制御部および伝熱層は、図2および図
6に示す基板102、発熱抵抗体120、電極層110
a,110b、制御部128および伝熱層104と同様
の構成を成し、同様の機能を有するため同一の符号で記
して説明を省略する。
【0046】図7(a)および(b)に示すように、基
板102には、吐出したインクの容量分を円滑に供給す
るように共通インク溝136が発熱抵抗体120の配列
に沿って形成されており、この共通インク溝136の溝
底面には、基板102を貫通する貫通孔138が間欠的
に形成されている。なお、共通インク溝136の両側
に、発熱抵抗体120、電極層110a、110b、制
御部128および伝熱層104が、同一の構成で対称に
形成されている。貫通孔138は、発熱抵抗体120に
形成された基板面の側(表側)と反対側(裏側)の面に
設けられたインク供給管140とを連通する構成となっ
ている。このインク供給管140は、図示されないイン
クタンクに接続されている。したがって、貫通孔138
および共通インク溝136では、インクタンクからイン
クが供給され、吐出したインクの容量分がインク流路に
向かって供給される。
【0047】伝熱層104は、発熱抵抗体120の下層
の位置から共通インク溝136および貫通孔138に向
けて配線パターン状に引き出されている。一方、貫通孔
138には、伝熱層104からの伝熱を裏面側に設けら
れた放熱部126に伝熱するための伝熱部材142が貫
通孔138に沿って設けられ、伝熱層104と放熱部1
26とを繋ぐように設けられている。放熱部126は、
インク管供給管140内のインクと直接、あるいは、図
示されない保護層を介して放熱するように、放熱フィン
等を用いてインクへの放熱面が大きく設けられて構成さ
れ、インクタンクから供給されるインクに向けて放熱さ
れる。また、貫通孔138に設けられた伝熱部材142
から、貫通孔138を通り共通インク溝136に向かっ
て流れるインクに向けて放熱してもよい。
【0048】このような構成においても、発熱抵抗体1
20から図示されない熱絶縁層を介して基板102に対
して垂直方向に伝熱された熱流は、基板102の基板水
平方向に向きを変え、伝熱層104の温度勾配に沿っ
て、貫通孔138に設けられた伝熱部材142を介して
放熱部126に向かって熱が流れる。この場合、効率よ
く熱を流すため、伝熱層104の厚さを10μm以上と
するのが好ましい。なお、放熱部126は、インク供給
管140内のインクに向けて放熱するが、本発明におい
ては、少なくとも、インクが吐出前に温められて、イン
クの吐出に効果的に作用する限りは、インクに向けて放
熱する放熱部126の位置は特に制限されない。
【0049】(実施例)図2に示すヘッド構造100を
作製し、伝熱層104の厚さを種々変化させながら、イ
ンク液滴の連続吐出時間を調べた。基板102は、無ア
ルカリガラスとした。薄膜抵抗体120は、Ta−Si
−O3元合金を抵抗材料として用い、ヒータ面は20×
20μmの正方形形状、厚さを0.1μmとし、インク
と接触する表層に略0.01μmの自己酸化被膜を形成
させた。インク吐出ノズル124の断面形状は、直径が
15μmの円形状とした。熱絶縁層106は、厚さが1
μmのSiO2 を絶縁材料として用い、伝熱層104は
基板102に銅箔をラミネートして形成した。なお、放
熱部126は、上述したペルチェ素子を用いて熱を吸収
させた。
【0050】インク液滴の吐出は、薄膜抵抗体120の
パルス通電時間を3μ秒として、10kHzのインク吐
出周波数で連続吐出させ連続吐出時間を調べた。なお、
連続吐出の観測時間は、20分とし、連続吐出が見られ
なくなるまでのインク液滴の連続吐出時間を計測した。
なお、伝熱層104の厚さを、それぞれ、20μm、1
0μm、5μm、2μmとし、インク吐出ノズルの密度
が600npi相当のヘッド構造100を作製し、さら
に、伝熱層104および熱絶縁層106のない、インク
吐出ノズルの密度が600npi相当のヘッド構造も作
製して、インク液滴の連続吐出時間を調べた。
【0051】
【表1】
【0052】上記表より、伝熱層104の厚さは、10
μm以上の場合いずれも観測中に良好に吐出した。これ
より、伝熱層104の厚さは10μm以上であることが
必要である。
【0053】このように、熱伝導率が15(W/m/
K)以下の基板を用いたインクジェットヘッドでは、基
板と発熱ヒータとの中間に10μm以上の厚さの伝熱層
を設けることで、インク液滴の吐出を良好に行うことが
できる。特に、インク液滴の吐出のために発熱エネルギ
ーの省力化を促進するには、インクと接触する薄膜抵抗
体の表層に、電気絶縁性があるとともに耐キャビテーシ
ョン性にも優れた自己酸化被膜が形成されるTa−Si
−O三元合金を、薄膜抵抗体120の抵抗材料として用
いることが好ましい。上記例は、基板102に対してイ
ンク液滴を略垂直方向に吐出させるトップシュータ方式
であるが、本発明のインクジェットヘッドは、基板に対
してインク液滴を略水平方向に吐出させるサイドシュー
タ方式であってもよい。
【0054】以上、本発明のインクジェットヘッドおよ
びインクジェットプリンタについて詳細に説明したが、
本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸
脱しない範囲において、各種の改良および変更を行って
もよいのはもちろんである。
【0055】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
熱伝導率が15(W/m/K)以下の基板を用いたイン
クジェットヘッドにおいて、10μm以上の厚さの伝熱
層を基板と発熱ヒータとの中間に設けることにより、ま
たは、伝熱層をインクに放熱する放熱部に接続すること
により、インク液滴の連続吐出の場合も、発熱ヒータの
周辺の温度上昇を抑制することができ、プリント印刷時
の印刷速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明のインクジェットプリンタの
一例の概略の構成を説明する図であり、(b)はその斜
視図である。
【図2】 本発明のインクジェットヘッドの一例の概略
の断面を示す断面図である。
【図3】 本発明のインクジェットヘッドの他の例の要
部の断面を示す断面図である。
【図4】 図2に示すインクジェットヘッドにおける熱
の流れを説明する図である。
【図5】 本発明のインクジェットヘッドの一例の別の
構成部分の概略の断面を示す断面図である。
【図6】 本発明のインクジェットヘッドの他の例にお
ける各層の配置を説明する図である。
【図7】 (a)は本発明のインクジェットヘッドの他
の例における各層の配置を説明する図であり、(b)は
(a)に示す貫通孔近傍の断面図である。
【符号の説明】
10 プリンタ 12 記録部 14 供給部 16 プレヒート部 18 排出部 50 記録ヘッド部 52 インクジェットヘッド 54 記録制御部 56 インクタンク 58 記録媒体搬送部 100 ヘッド構造 102 基板 104 伝熱層 106 熱絶縁層 108 抵抗層 110,110a,110b 電極層 112 隔壁層 114 インク流路 116 ノズルプレート 118 発熱ヒータ 120 薄膜抵抗体 122 薄膜導体電極 124 インク吐出ノズル 126 放熱部 128 制御回路 130,134 多結晶シリコン層 132 酸化層 136 インク共通溝 138 貫通孔 140 インク供給孔

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】インク液滴をインク吐出ノズルから記録媒
    体に吐出するインクジェットヘッドであって、 熱伝導率が15(W/m/K)以下の基板上に10μm
    以上の厚さの伝熱層およびこの伝熱層と隣接する上層に
    熱絶縁層が設けられるとともに、 この熱絶縁層の隣接する上層に、インクの一部を沸騰さ
    せて気泡を発生させ、この気泡の膨張により、インク液
    滴をインク吐出ノズルから吐出させる薄膜抵抗体とこの
    薄膜抵抗体に通電するための薄膜導体電極とを有する発
    熱ヒータが設けられたことを特徴とするインクジェット
    ヘッド。
  2. 【請求項2】前記伝熱層は、Cu、AlおよびSiの中
    から選択された金属で形成されたことを特徴とする請求
    項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 【請求項3】前記伝熱層は、前記発熱ヒータの形成され
    た基板の表面からこの表面と反対側の、前記基板の裏面
    まで、この基板の端部を回り込むように繋がって形成さ
    れ、この基板の裏面に、前記発熱ヒータから前記伝熱層
    によって伝えられた熱を放熱する放熱部が設けられたこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェッ
    トヘッド。
  4. 【請求項4】前記基板は、前記発熱ヒータの形成された
    表面と反対側の裏面に、放熱部が設けられ、 前記基板の表面と裏面とを貫通し、前記表面の前記伝熱
    層と前記裏面の放熱部とを繋ぐ伝熱部材が設けられたこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェッ
    トヘッド。
  5. 【請求項5】前記熱絶縁層は、熱伝導率が0.1〜10
    (W/m/K)であることを特徴とする請求項1〜4の
    いずれかに記載のインクジェットヘッド。
  6. 【請求項6】前記熱絶縁層は、Si酸化物、Si窒化物
    あるいはSi炭化物、あるいはポリイミド樹脂材料から
    なることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の
    インクジェットヘッド。
  7. 【請求項7】前記薄膜抵抗体は、Ta金属を組成物とし
    て含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載
    のインクジェットヘッド。
  8. 【請求項8】前記薄膜抵抗体は、Ta−Si−O三元合
    金を抵抗材料として用いたことを特徴とする請求項7に
    記載のインクジェットヘッド。
  9. 【請求項9】前記発熱ヒータは、その厚さが1μm以下
    の保護層が前記薄膜抵抗体の上層に形成されたことを特
    徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェッ
    トヘッド。
  10. 【請求項10】前記インク吐出ノズルは、前記インク吐
    出ノズルの入り口端が基板上に形成された前記薄膜抵抗
    体と対向するように配置され、このインク吐出ノズルか
    らインク液滴が基板に対して略垂直方向に吐出すること
    を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインクジ
    ェットヘッド。
  11. 【請求項11】前記発熱ヒータのヒータ面から前記イン
    ク吐出ノズルの吐出端までの距離は40μm以下であ
    り、 前記インク吐出ノズルの入り口端の形状は、前記発熱ヒ
    ータのヒータ面に投影した場合、前記発熱ヒータのヒー
    タ面の形状に内包されることを特徴とする請求項10に
    記載のインクジェットヘッド。
  12. 【請求項12】請求項1〜11のいずれかに記載のイン
    クジェットヘッドであって、 前記発熱ヒータの駆動を制御する制御回路が、前記基板
    上に形成された多結晶シリコン層によって形成されたこ
    とを特徴とするインクジェットヘッド。
  13. 【請求項13】インク液滴をインク吐出ノズルから記録
    媒体に吐出するインクジェットヘッドであって、 熱伝導率が15(W/m/K)以下の基板上に伝熱層お
    よびこの伝熱層と隣接する上層に熱絶縁層が設けられる
    とともに、 この熱絶縁層の隣接する上層に、インクの一部を沸騰さ
    せて気泡を発生させ、この気泡の膨張により、インク液
    滴をインク吐出ノズルから吐出させる薄膜抵抗体とこの
    薄膜抵抗体に通電するための薄膜導体電極とを有する発
    熱ヒータが設けられ、 前記伝熱層が、インクの吐出のために供給されるインク
    に対して放熱する放熱部と接続されたことを特徴とする
    インクジェットヘッド。
  14. 【請求項14】前記伝熱層の上層に、前記発熱ヒータが
    複数個並列して設けられ、 前記伝熱層は、この複数の発熱ヒータからの熱をまとめ
    て前記放熱部に向けて伝熱する配線パターンを成してい
    ることを特徴とする請求項13に記載のインクジェット
    ヘッド。
  15. 【請求項15】前記放熱部は、前記発熱ヒータが形成さ
    れた表面と反対側の裏面に設けられ、前記基板の表面と
    裏面とを貫通し、前記表面の前記伝熱層と前記裏面の放
    熱部とを接続するための伝熱部材が前記基板に設けられ
    たことを特徴とする請求項13または14に記載のイン
    クジェットヘッド。
  16. 【請求項16】前記基板には、インクの吐出のために前
    記基板の裏面から表面に向けてインクを供給するための
    貫通孔が設けられ、 前記伝熱部材は、前記貫通孔に沿って設けられたことを
    特徴とする請求項15に記載のインクジェットヘッド。
  17. 【請求項17】請求項1〜16のいずれかに記載のイン
    クジェットヘッドを用いたことを特徴とするインクジェ
    ットプリンタ。
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