JP2003169814A - 咬合堤及び咬合採得用材 - Google Patents

咬合堤及び咬合採得用材

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JP2003169814A JP2001374842A JP2001374842A JP2003169814A JP 2003169814 A JP2003169814 A JP 2003169814A JP 2001374842 A JP2001374842 A JP 2001374842A JP 2001374842 A JP2001374842 A JP 2001374842A JP 2003169814 A JP2003169814 A JP 2003169814A
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秀泰 玉川
Yoshiteru Ogasawara
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Masashi Toyama
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Abstract

(57)【要約】 【課題】個人本来の咬合機能や生理的感覚を再現でき
る、咬合採得を可能とする技術を提供する。 【解決手段】前歯部4と臼歯部6とを有し、臼歯咬合面
部10の少なくとも一部が咬合圧に相当する荷重の負荷
によって変形する量が前歯切縁部4aよりも抑制されて
いる、咬合堤2とする。この咬合堤2によれば、咬合採
得時において、患者本来の咬合機能を発現させることが
できる。最終的に、咬合機能を改善しあるいは本来の咬
合機能を発現させることができる義歯を製作できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、義歯を製造するの
に先立って行われる咬合採得に関連し、個人の本来有す
る咬合(噛み合せ)機能を発現できる義歯を得ることの
できる咬合堤、咬合床、咬合採得用材、咬合採得方法な
どに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、咬合の異常と全身的な症状(頭
痛、肩こり、背中の痛み等)との因果関係が研究されて
きている。例えば、総義歯の調整や口腔内にスプリント
を装着することにより患者の咬合状態を矯正することに
よって、種々の全身症状が改善されたことがこれまでに
も報告されている(例えば、中村昭二「咬合関連症の発
症因子およびその診断と治療」:P.J.A.Occlusion.Heal
th.Vol.1(1995))。
【0003】義歯を作製するには、患者個人の咬合位
置、すなわち、上顎に対する下顎位置を予め決定し、記
録しておく必要がある。そして、決定した上下顎位置に
適合するように人工歯が排列される。総義歯を必要とす
る個人は、咬合させるべき歯が失われているために、歯
の代わりとして、上下顎に適合した咬合床を装着した状
態で、上顎に対する下顎位置を設定し記録する。このよ
うな一連の作業を咬合採得という。咬合床は、このよう
に失われた歯の代わりに、上下顎の位置関係の記録と人
工歯排列の目安となるものであるから、それ自体完成義
歯を予測して製作される。
【0004】咬合床は、基礎床と咬合堤とから形成され
ている。基礎床は、咬合圧に耐え得るだけの剛性を有す
る必要があることから、口腔内温度で変形しない、プラ
スチック、レジン、金属などで形成される。また、咬合
堤は、形状調整や作業性の観点から、通常パラフィンワ
ックスが使用されている。
【0005】このような咬合床を利用して行われる咬合
採得では、下顎位置を咀嚼運動が行われていない通常の
咬合状態時(普通に顎を閉じた通常状態での咬頭嵌合
位:以下「中心咬合位」)において決定することが通常
である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
咬合床を用いる咬合採得では、中心咬合位にて下顎位置
を決定したとしても、この咬合採得に基づいて作製した
義歯では、義歯装着後の歯科医師による咬合調整が非常
に手間がかかっていた。さらに、歯科医師の咬合調整に
よっても、義歯装着者の咀嚼障害、発音障害などを始め
とする各種咬合関連症を防ぐことは困難であった。すな
わち、義歯の装着により義歯装着が本来有する咬合機能
を発現させるような義歯を製作することは非常に困難で
あった。一方、本発明者らは、咬合機能を確保しあるい
は改善することのできる義歯には、義歯全体の咬合時に
おける咬合力のバランス(例えば隣接する臼歯間及び左
右の対応する臼歯間)の重要性、特に、第二小臼歯及び
第一大臼歯(以下、咬合重心ともいう。)における咬合
力バランスが重要であるとして、このような咬合力バラ
ンスを達成できる義歯を、特開平2001−13726
1号公報において開示している。このような義歯を得る
ためにも、従来の咬合採得は不適当であった。
【0007】そこで、本発明の目的は、個人本来の咬合
機能や生理的感覚を再現できる、咬合採得を可能とする
技術を提供することである。すなわち、このような咬合
採得を可能とする、咬合堤、咬合床、咬合採得用材、咬
合採得方法、義歯製作方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々検討
したところ、咬合採得において、中心咬合位における下
顎位置を決定しただけでは、患者本来の咬合機能を発現
させる義歯を得ることが非常に困難であることを見出し
た。さらに、患者本来の咬合機能を発現させるには、咬
合採得時にも、強い咬合状態や咀嚼運動などの、粘膜や
顎関節に負荷がかかった状態を再現することが重要であ
ることを見出した。そして、このような状態を再現でき
る咬合堤などにより、上記した課題が解決でき、最終的
に、咬合機能を改善しあるいは本来の咬合機能を発現さ
せることができる義歯を製作できることを見出し、本発
明を完成した。本発明によれば、以下の手段が提供され
る。
【0009】(1)咬合堤であって、前歯部と臼歯部と
を有し、臼歯咬合面部の少なくとも一部が咬合圧に相当
する荷重の負荷によって変形する量が前歯切縁部よりも
抑制されている、咬合堤。 (2)咬合堤であって、前歯部と臼歯部とを有し、臼歯
咬合面部の少なくとも一部が前歯切縁部よりも高い硬さ
を有する、咬合堤。 (3)咬合堤であって、前歯部と臼歯部とを有し、臼歯
咬合面部の少なくとも一部のビッカース硬さ試験法によ
る硬さ(37℃以下)が0.8Hv以上である、咬合
堤。 (4)咬合堤であって、前歯部と臼歯部とを有し、臼歯
咬合面部の少なくとも一部が、ダンマルおよび/または
融点が60℃以上の融点の石油系ワックスが30wt%
以上のパラフィン含有組成物で形成されている、咬合
堤。 (5)咬合堤であって、前歯部が、口腔内において他の
咬合堤部位よりも変形しやすい材料で形成されている、
(1)〜(4)のいずれかに記載の咬合堤。 (6)前歯部の舌側に1または2以上の凹状部を供え
る、(1)〜(5)のいずれかに記載の咬合堤。 (7)前歯切縁部の高さが、臼歯咬合面部よりも低く設
定されている下顎咬合堤である、(1)〜(6)記載の
咬合堤。 (8)咬合床であって、(1)〜(7)のいずれかに記
載の咬合堤と、基礎床、とを備える、咬合床。 (9)所定位置に配置された上下咬合床の上下に対抗す
る上下咬合堤の臼歯面部間に重層可能に複数枚の剛性シ
ート体を備える、咬合採得用材。 (10)前記複数枚の剛性シート体は回転可能に軸支さ
れている、(9)記載の咬合採得用材。 (11)(8)記載の咬合床を用いる、咬合採得方法。 (12)さらに、(9)あるいは(10)記載の咬合採
得用材を、咬合床の上下に対向する咬合堤の臼歯咬合面
部間に介在させた状態で咬合させる工程を備える、(1
1)記載の咬合採得方法。 (13)義歯の製造方法であって、(8)記載の咬合床
を使用して咬合高径および/または下顎位置を記録する
工程と、この記録位置に基づいて義歯を製造する工程、
とを備える、方法。 (14)義歯の製造方法であって、(8)記載の咬合床
の上下に対向する咬合堤の臼歯咬合面部間に(9)又は
(10)記載の咬合採得用材を介在させた状態で咬合さ
せて咬合高径および/または下顎位置を記録する工程
と、この記録位置に基づいて義歯を製造する工程、とを
備える、方法。
【0010】これらの発明によると、咬合採得時におい
て、臼歯咬合面部において強い咬合や咀嚼時のように筋
肉が機能した状態(粘膜、顎関節に負荷がかかった状
態)を得ることができる。すなわち、本発明の咬合堤
は、上記変形特性などを有しているために、強い咬合圧
や咀嚼運動の力が作用しても、咬合面部の変形が抑制さ
れている。このため、咬合採得時において、筋肉を機能
させて咬合堤の臼歯咬合面部に負荷がかかった状態にお
いて、臼歯部における咬合機能や生理的感覚を発現させ
ることができる。咬合採得時にこのような咬合時の機能
や感覚を再現できることにより、患者個人の本来的に有
する咬合高径や下顎の三次元的位置を容易に決定するこ
とができるようになる。したがって、本発明の咬合堤、
咬合床、咬合採得用材、咬合採得方法によれば咬合採得
時において、臼歯部咬合面部における対抗接触による咬
合機能を発現させることができる。患者固有の咬合や咀
嚼などの咬合機能を改善、あるいは患者本来の咬合機能
を実現できる咬合高径や下顎の三次元位置を決定し記録
することができる。このため、咬合機能を改善あるいは
患者本来の咬合機能を発現させることのできる義歯を容
易に得ることができるようになる。
【0011】また、このような咬合堤の提供によれば、
咬合採得時に、患者の機能的な咬合を確保できる下顎位
置を採得することができるため、この咬合採得に基づい
て作製される義歯においては、咬合調整が容易になり、
あるいは短期間で咬合調整が達成されるようになってい
る。また、義歯装着者における不正咬合障害などが効果
的に抑制される。さらに、このような咬合堤の提供によ
り、顎堤や顎関節の異常、生体の歪みなどを有する個人
においても、咬合採得時に、筋肉が機能した状態での咬
合を再現できる。このため、顎堤の異常などがあって
も、患者固有の有効な咬合採得を実現することができ
る。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。本発明の咬合採得技術は、前歯部と
臼歯部とを有し、臼歯咬合面部の少なくとも一部におい
て、咬合圧に相当する荷重の負荷によって変形する量が
他の咬合堤部位よりも抑制されている咬合堤に特徴を有
する。本発明に係る咬合堤の一形態を図1及び図2に示
す。上顎咬合堤2を図1に示し、下顎咬合堤22を図2
に示す。
【0013】咬合堤2,22は、咬合床の一部を構成す
るものである。一般的には、基礎床(図示せず)に咬合
堤2、22が一体化されて咬合床が構成されている。
【0014】本発明の咬合堤2、22においては、図1
及び図2に示すように、前歯部と臼歯部とを一体に有し
ていることが好ましい。咬合堤2、22は、前歯部4、
24と臼歯部6、26とを別体として構成し、基礎床上
で連結可能に形成することもできる。以下、前歯部4,
24あるいは臼歯部6,26というときは、これらを一
体に有する場合の他、別体として組み合わされる場合も
包含している。
【0015】前歯部4、24は、左右の中切歯、側切
歯、犬歯に相当する領域であり、臼歯部6、26は、左
右の第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯
のうち少なくとも前方の3個の臼歯に相当する領域であ
る。前歯部4,24と臼歯部6、26とを一体に有する
場合、U字状体の屈曲部位を中心に前歯部4、24が形
成され、両方の自由端側に臼歯部6、26が形成されて
いる。基礎床に一体化される前は、一体型咬合堤は、U
字状あるいは馬蹄状に形成されている。また、所定の高
さ(厚み)を有している。また分割型咬合堤では、前歯
部は、半円程度の円弧状体に、臼歯部は、棒状体(断面
方形状あるいは円状)に形成されている。
【0016】咬合堤2、22を構成する材料は特に限定
しない。好ましくは、加熱によって塑性変形可能である
こと、切削加工が可能であること、加熱により密着性を
有すること、のいずれか一つ以上を有する材料を使用す
る。より好ましくは、これらの全てを有する材料を使用
する。したがって、このような特性を充足できる材料で
あれば、好ましく使用することができる。例えば、かか
る材料としては、パラフィンを含有する組成物を挙げる
ことができる。
【0017】パラフィンを含有する組成物は、通常、パ
ラフィンの他、ダンマル、蜜蝋、カルナウバワックス、
樹脂、セレシンなどを1種あるいは2種以上を含むこと
ができる。配合する成分の軟化温度あるいは融点温度と
その配合量により、パラフィン含有組成物の硬さや体温
による塑性変形性、荷重負荷時の変形量を調整すること
ができる。
【0018】本明細書において、所定位置に対向配置さ
れる咬合堤2,22の各臼歯部6,26において、対咬
接触する咬合面8,28を含む部位を咬合面部10、3
0という。本発明の咬合堤2,22においては、咬合面
部10、30の少なくとも一部において、咬合圧に相当
する荷重の負荷によって変形する量が他の咬合堤部位よ
りも抑制されている。咬合面部10、30におけるこの
ような変形抑制により、咬合採得時に咬合面部10、3
0において筋肉が機能させた状態を確保することができ
る。このような変形抑制部位は、臼歯咬合面部10、3
0の少なくとも一部に有していれば足りるが、好ましく
は、臼歯咬合面部10、30を含む臼歯部6、26の少
なくとも表層側(臼歯部の厚みのうち、咬合面からおお
よそ30%以上の範囲とする。)である。これよりも薄
い厚みであると、臼歯部における変形抑制が実現されに
くいからである。より好ましくは、臼歯部6,26の厚
みのうち、咬合面からおおよそ50%以上80%以下で
ある。80%を超えると、基底面側における作業性が低
下するからである。また、変形抑制部位は、臼歯の咬合
面8、28のうち、少なくとも、上顎第二小臼歯近心部
から第一大臼歯近心部(特に舌側咬頭頂部)を含む領域
とそれに対咬する下顎の臼歯部とすることが好ましい。
この領域が、咬合の中心、すなわち、バランスのよい安
定した咬合を得るための重要な対咬接触領域だからであ
る。より好ましくは、第二小臼歯と第一大臼歯とを含む
領域とする。さらに好ましくは、第一小臼歯、第二小臼
歯、及び第一大臼歯を含む領域とする。
【0019】このような変形抑制は、主として咬合面部
の材料組成によって提供することができる。具体的に
は、咬合面部の硬さ、熱可塑性などを調整することによ
って提供することができる。ここで、他の咬合堤部位と
は、前歯部4、24や基底面部12,32を意味してい
る。
【0020】咬合堤のもっとも一般的な材料である、パ
ラフィン含有組成物によってこのような変形抑制を咬合
面部10、30に付与するには、融点が60℃以上の材
料を30wt%以上含有するパラフィン含有組成物を用
いることができる。30wt%未満であると、咬合圧に
相当する荷重に対して変形抑制を実現困難であるからで
ある。融点が60℃以上の材料としては、ダンマルやカ
ルナウバワックスを好ましく使用できる。より好ましく
はダンマルを用いる。カルナウバワックスは、融点が8
0℃以上で95℃以下である。一方、他の咬合堤部位に
おいては、逆にパラフィンを少なくとも70wt%以上
含有するパラフィン含有組成物とする。特に前歯部にお
いてこのような組成とすると、前歯部における変形が相
対的に容易となり、U字状体を開拡したり、閉じたりす
ることを容易に行うことができる。
【0021】また、物性的には、咬合面部10、30の
少なくとも一部は、他の咬合堤部位よりも高い硬さを有
することが好ましい。硬さの比較は、指や爪などを押し
当てた際の触感として把握できるものの他、比較対象部
位よりも高い硬さを有する物体を押し当てた際の外観変
化によって把握できるものであってもよく、また、ビッ
カース硬さ試験等によって検出できるものであってもよ
い。咬合面部の硬さが前歯切縁部よりも高いことによ
り、咬合採得時には、咬合面部10、30を中心とする
咬合採得を実施しやすくなっている。
【0022】また、咬合堤の他の部位の硬さにかかわら
ず、咬合面部10、30のビッカース硬さ試験による硬
さが37℃以下で0.8(Hv)以上であることが好ま
しい。このような硬さは、一般的には、融点が60℃以
上の材料を30wt%以上含有するパラフィン含有組成
物を用いることによって得ることができる。より好まし
くは、同硬さ(37℃以下)が1.0(Hv)以上であ
る。なお、ここで、ビッカース硬さ試験は、JIS Z
2244に記載される方法を採用することもできる。具
体的には、試験片(例えば、1cm×2cm、厚み5〜
7mm程度とすることができる。)を37℃以下(例え
ば、約35℃)の温水中に5分間浸漬して、試験片を試
験温度とした後、HARDNESS TESTING M
ACHINE HM−102(AKASHI製)などの
ビッカース硬さ試験機などを用いて行うことができる。
負荷は、例えば、0.05kg/10秒とすることがで
きる。なお、ビッカース硬さは、試験機に付随する自動
測定手段によって容易に求めることができるが、試験荷
重やくぼみの顕微鏡観察による表面積あるいは対角線の
長さなどから算出することもできる。ビッカース硬さを
求める算出式は当業者においてよく知られた事項であ
る。この場合には、好ましくは、少なくとも基底面部1
2、32は、ビッカース硬さ試験法による硬さ(37℃
以下)が0.7Hv未満であるか、あるいは、パラフィ
ンを少なくとも70wt%以上含有するパラフィン含有
組成物で形成されていることが好ましい。基底面部をこ
のような硬さあるいは組成とすると、咬合面部が硬い
か、あるいは上記組成であっても、咬合床の作製作業
性、及び口腔内での調整時における作業性を確保できる
からである。
【0023】さらに、本咬合堤2、22においては、前
歯部4、24が熱可塑性を有している場合において、前
歯部4、24の舌側(U字状体あるいは円弧状体の屈曲
部内側)に1または2以上の凹状部14、34を備えて
いることが好ましい。咬合堤2、22の前歯部4、24
に凹状部14、34を備えている形態を図2に示す。こ
のような凹状部14、34を有することにより、前歯部
4、24の熱可塑時における変形性を容易に確保でき
る。特に、前歯部4、24が、パラフィンを少なくとも
70wt%以上含有するパラフィン含有組成物で形成さ
れている場合において、有用である。凹状部14、34
の形態は特に限定しないが、U字状体の開閉により装着
性を調整するなどの作業を考慮すれば、厚み方向に沿う
線状の凹状部14、34であることが好ましい。凹状部
14、34は、U字状体の開閉による変形量が大きい箇
所に形成されることが好ましい。例えば、前歯部4、2
4においても、中切歯から側切歯に相当する領域に形成
することが好ましい。また、好ましくは、左右対称に形
成される。なお、前歯部4,24の厚みの全体にわたっ
て凹部が形成される必要はなく、その一部位に形成され
ていればよい。
【0024】さらに、咬合堤22の前歯切縁部24aの
高さが、臼歯部26の咬合面28よりも、下顎咬合堤2
2にあっては低く設定されていることが好ましい。この
ような設定であると、上下咬合床を所定位置に配置して
咬合採得する場合において、前歯部における対咬接触が
回避され、臼歯咬合面28における対咬接触が得られや
すくなる。このような形態は、特に下顎咬合堤22にお
いて好ましい形態である。なお、前歯切縁部24aの高
さは、前歯部24における対咬接触が回避できる程度で
あれば足りる。
【0025】また、本咬合堤の基底面部12、32が、
パラフィンを70wt%以上含有するパラフィン含有組
成物で形成されているか、あるいは、ビッカース硬さ試
験法による硬さ(37℃以下)が0.7Hv未満である
場合には、咬合堤2、22の基礎床への装着作業性、口
腔内で咬合堤2、22の位置調整の作業性が向上され
る。すなわち、基底面部12、32がかかる特性を有し
ていると、好ましい熱可塑性および/または密着性を有
することになるからである。特に、本発明の咬合採得法
では、口腔内での咬合平面の決定作業において、基礎床
との密着性を向上させるために、熱可塑性の高いワック
ス、例えば、熱可塑性(37℃以下で軟化して可塑性を
発現する。)と粘性とを有する調整用ワックスを咬合堤
の基底面と基礎床との間に介在させることができる。こ
の方法によると、咬合平面の決定のために、上顎咬合床
を口腔上顎内面に押し付けるようにして上顎咬合面の位
置調整を行うことができる。すなわち、咬合堤2の咬合
面を軟化したり切削したりする必要がなくなる。またこ
のような加工により咬合面の本来の平面性が維持される
ことになる。したがって、より簡易にかつ正確な咬合平
面の決定が可能となる。
【0026】以上の説明から、本咬合堤は、以下の実施
態様の咬合堤も包含していることが明らかである。 (1)咬合堤であって、前歯部と臼歯部とを有し、臼歯
咬合面部のうち、第二小臼歯近心部から第一大臼歯近心
部を含む領域において、以下の特徴; (a)咬合圧に相当する荷重の負荷によって変形する量
が前歯切縁部よりも抑制されている、(b)前歯切縁部
よりも高い硬さを有する、(c)ビッカース硬さ(37
℃以下)が0.8Hv以上である、及び(d)ダンマル
および/または60℃以上の融点の石油系ワックスの総
量が30wt%以上のパラフィン含有組成物で形成され
ている、のうちいずれか一つ以上を有する咬合堤。 (2)前記前歯部が、以下の特徴; (e)パラフィンを70wt%以上含有するパラフィン
含有組成物で形成されている、及び(f)ビッカース硬
さ試験法による硬さ(37℃以下)が0.7Hv未満で
ある、のうちいずれか1以上を有する、(1)記載の咬
合堤。 (3)前記咬合堤の基底面部が、以下の特徴; (g)パラフィンを70wt%以上含有するパラフィン
含有組成物で形成されている、及び(h)ビッカース硬
さ試験法による硬さ(37℃以下)が0.7Hv未満で
ある、のうちいずれか1以上を有する、(1)又は
(2)記載の咬合堤。
【0027】このように構成される咬合堤は、従来公知
の熱可塑性組成物の成形方法によって製造することがで
きる。あるいは、成形後に、さらに切削加工等により形
状を付与することもできる。本咬合堤に適用できる成形
方法や加工方法は、当業者においてよく知られている。
また、本咬合堤は、従来の基礎床に適用できるので、そ
れ自体単独で提供することもできるが、基礎床と組み合
わせて提供することもできる。
【0028】本発明は、この咬合堤を備えた咬合床とと
もに使用するのに適した咬合採得用材を提供する。本発
明の咬合採得用材40の一例を図3に示す。本発明の咬
合採得用材40は、所定位置に配置された上下咬合床の
咬合堤の上下臼歯面部間に介在させうる複数枚の剛性シ
ート体42を重層可能に備えている。剛性シート体42
は、咬合圧に相当する荷重によって変形しない、すなわ
ち、形状が変化しない、あるいは厚みなどのサイズが変
化しない程度の剛性を有していることが好ましい。この
ような剛性を有する材料は、特に限定しない。このよう
な材料としては、金属、樹脂などを使用できるが、好ま
しくは、アクリル系樹脂、スチロール系樹脂、ポリカー
ボネイト系樹脂である。シート体42の厚みは、好まし
くは約0.2ミリ〜約0.8ミリである。また、各剛性
シート体42の形態は特に限定しないが、口腔に挿入
し、左右の臼歯部の咬合面間に介在させる観点から、細
長い帯状体であることが好ましい。また、その断面形状
も特に限定しないが、重層容易である方形状とすること
が好ましい。なお、対咬する咬合平面が平行でない場合
には、対咬する咬合平面に接する剛性シート体42、す
なわち、積層された剛性シート体42の少なくとも一方
の最表層(最上層の場合もあり最下層の場合もある。通
常は、片側だけである。)の剛性シート体42は、短手
方向に沿う断面が半円状(外側が円弧状となる)である
ことが好ましい。あるいは、かかる断面半円状の剛性シ
ート体42を、最表層に配置可能になっていればよい。
円弧側を対向する咬合堤の咬合平面に向けるようにす
る。すなわち、上顎に固定した場合は、下顎の咬合平面
と接する面が断面円弧状になり、下顎に固定した場合
は、上顎の咬合平面と接する面が断面円弧状となる。
【0029】剛性シート体42は、複数枚が重層可能に
備えられている。重層するという観点からは、剛性シー
ト体42は、おおよそ同一形状に形成されていることが
好ましい。特に、全ての剛性シート体がほぼ同じ厚みを
有することが好ましい。ほぼ同じ厚みを有していると、
重層枚数で厚みを容易に把握し認識できるからである。
さらに、好ましくは、口腔内に挿入し、上下咬合堤間に
配置しやすいような帯状体とする。
【0030】重層可能に備えるためには、どのような形
態が採用されていてもよい。好ましくは、複数枚の剛性
シート体42を重ねた状態で、帯状体の剛性シート体の
長手方向に沿う一端側において軸体44で支持された構
造を採用することができる。この場合、各シート体42
は、軸体44に対して少なくともある範囲で回転可能あ
るいは軸体に沿って移動可能に形成されている。このよ
うに形成すると、シート体42を回転あるいは移動させ
ることで、シート体42を容易に重層しあるいは重層状
態から除去することができて、重層枚数を容易に調整で
きる。軸体44としては、例えば、棒状体の他、リング
やチェーンなどの閉環状体などを採用することができ
る。なお、剛性シート体42は、例えば、10〜20枚
程度が重層可能に構成されている。咬合採得用材40
は、このような軸体44を、各シート体42のほぼ同位
置に設けた孔部に挿入し、全シート体42を貫通させる
ことができる。咬合採得用材40の他の形態としては、
例えば、帯状体の長手方向に沿って各シート体42を隣
接するシート体42に接触させながらずらすことができ
るように構成することもできる。
【0031】本咬合採得用材40は、上下咬合床を所定
位置に配置したとき、すなわち、咬合採得時に、上下に
対向配置される咬合堤の臼歯咬合面間に位置される。そ
して、患者の筋肉を機能させて、あるいは、咬合器によ
り、咬合や咀嚼運動の作用を上下咬合床に付与すること
により、優先的に、臼歯咬合面において上下咬合堤を対
咬接触させることができる。このため、臼歯部における
咬合や生理的感覚を把握するのに適している。したがっ
て、本咬合採得用材40を使用して咬合採得することに
より、患者固有の咬合機能を発現できる下顎の左右上下
位置を記録することができる。また、剛性シート体42
で形成されていることから、咬合圧によって変形せず、
正確に上下咬合堤臼歯部間距離を確保することができ
る。また、剛性シート体42が、重層可能に備えられて
いるために、容易に全体の厚みを調整することができ
て、迅速な咬合採得が可能となっている。
【0032】次に、咬合床の作製と、咬合採得方法につ
いて説明する。 (咬合床の作製)基礎床は、公知の方法によって作製す
ることができる。下顎基礎床と上顎基礎床とをそれぞれ
作製する。続いて、上下基礎床にそれぞれ咬合堤を一体
化して、咬合床とする。本咬合堤を加熱して軟化させた
状態で、作業模型に装着した基礎床に対して、形状を適
合させて配置し、一体化する。形状の適合は、前歯部の
舌側に形成した凹状部を利用することにより容易に行う
ことができる。また、咬合堤の基底面部が所定硬さ以下
であるか、あるいは熱可塑性が高いパラフィン含有組成
物で構成されている場合には、基礎床に対する密着性が
良好であるとともに、位置調整も容易となっている。
【0033】次に、作製した咬合床を用いて咬合採得を
実施する。咬合採得は、上顎咬合床による咬合平面の決
定工程、下顎咬合床の装着による下顎の三次元位置の決
定工程、上下咬合床の固定工程を含み、他に上唇、頬部
の豊隆度の調整などの工程も備えている。まず、上顎咬
合床を装着して、咬合平面を決定する。咬合平面の決定
に際しては、好ましくは、可塑性(熱可塑性でもよい。
好ましくは、37℃以下で軟化して可塑性を発現す
る。)と粘性とを有する調整用ワックスを、咬合堤の基
底面と基礎床との間に介在させる。調整用ワックスは、
上顎咬合堤の基底面と基礎床との全体に注入する必要は
なく、好ましくは2箇所以上、より好ましくは3箇所以
上に箇所に部分的に注入することで、本来の機能を発揮
させることができる。調整用ワックスの可塑性や粘性を
利用して上顎咬合床の位置調整を行う観点から、調整用
ワックスが咬合床と上顎内面との間で変形しても過剰に
口腔内にはみ出さないような程度の量あるいは位置に調
整用ワックスを配置させることが好ましい。なお、調整
用ワックスは、常温または口腔内の温度でより粘性と可
塑性を増大させることができるものであることが好まし
い。
【0034】当該調整用ワックスを、上顎咬合堤の基底
面と基礎床とのに注入などの手法により介在させること
で、この調整用ワックスの可塑性と粘性とを利用して咬
合堤の咬合面の軟化させたり切削したりすることなく、
咬合平面を決定することができる。すなわち、上顎咬合
堤を上顎側に押し付けることにより上顎との一体性をお
およそ維持しながら、上顎咬合面の位置を調整すること
ができる。これにより、咬合面の切削によって、咬合面
の平面性が乱れて、上下の咬合面部がうまく整合しなく
なるような事態を防ぐことができる。また、咬合平面の
微調整も容易となる。
【0035】上顎咬合堤を変位させることにより咬合平
面を構成する上顎咬合堤位置を決定することができた
ら、上顎咬合堤の基底面と上顎基礎床との間に、同じ調
整用ワックスあるいは接着性がより高いワックスを注入
して、上顎を固定することができる。咬合堤の上顎前歯
部の舌側に凹状部を有している場合には、咬合堤の前歯
部を加熱して軟化させれば容易に患者の顎のアーチに合
わせるような再調整が可能となっている。
【0036】咬合平面を決定後、下顎咬合床を装着し、
下顎の三次元位置を決定する。下顎の三次元位置の決定
は、装着された上下咬合床の上下に対向配置された臼歯
面部における咬合状態に基づいて行う。すなわち、咬合
や咀嚼運動に関連する筋肉が機能した状態とさせ、この
ときの臼歯咬合面部における対咬接触状態や、患者の生
理的感覚から中心咬合位ないしは咬合高径を決定する。
特に、第二小臼歯から第一大臼歯にかけての対咬接触、
より好ましくは、第二小臼歯から第一大臼歯の近心部に
おいて対咬接触が得られるようにする。このような対咬
接触状態により咬合採得することにより、個人の咬合機
能を改善させ、あるいは本来の咬合機能を発揮させるこ
とのできる咬合高径や下顎の三次元位置を採得すること
ができる。
【0037】本咬合堤では、臼歯面部の変形量が抑制さ
れるか、硬さが高いか、ビッカース硬さ試験法による硬
さ(37℃以下)が0.8Hv以上か、あるいは、特定
組成を有しているために、咬合採得時に咬合圧がかかっ
ても臼歯面部が変形しにくくなっている(臼歯面位置が
咬合圧によって変化しにくくなっている)。このため、
上記した臼歯咬合面部での咬合採得を正確に行うことが
できる。臼歯面部間で対咬接触状態を確保するには、前
歯部などの対咬接触が阻害要因になる場合があるが、そ
の場合には、下顎前歯部の切縁部を切削などして低くす
ることもできる。あるいは、予め、下顎前歯切縁部が臼
歯咬合面部よりも低く形成されているなど、前歯部での
対咬接触が回避できるように構成されていれば、加工作
業を排除することができる。
【0038】本咬合堤によれば、咬合採得時において、
臼歯咬合面部における対咬接触を有効に実現し、義歯に
おいて機能的咬合を発現させることのできる咬合高径な
らびに下顎の三次元位置を決定することができる。さら
に、本咬合堤に加えて、上下に対抗する咬合堤の左右の
臼歯咬合面間に本咬合採得用材を介在させて、臼歯咬合
面部の対抗接触を本咬合採得用材を介在させて行うこと
もできる。すなわち、臼歯咬合面部間に介在させた状態
で患者が咬合や咀嚼に際して使用する筋肉を機能させ、
剛性シート体の介在させる枚数を左右において種々に変
えていくことで、患者の生理的感覚にもっとも合致した
下顎位置を決定することができる。本咬合採得用材を介
在させると、容易に臼歯咬合面部における対咬接触によ
る咬合採得が可能となるとともに、適切な下顎の三次元
位置を容易にかつ確実に決定することができる。また、
カットして咬合堤に溶着することにより本咬合採得用材
は術者が患者に手を添えたり、患者の口角を左右に広げ
たり、あるいは、口腔内に手を挿入したりすることな
く、患者自身がタッピングを行うことができる。このた
め、患者の咬合感覚を咬合採得時に最大限に引き出すこ
とができる。したがって、咬合採得時に、機能的咬合を
発現させることができる。
【0039】以下、本咬合採得用材を用いた咬合採得の
具体的工程について説明する。下顎位置の決定は、前後
位置の決定、左右の高さ位置の決定、及び水平位置の決
定の順序で行うことができる。前後位置は、本咬合採得
用材を、左右の最奥の臼歯部から順次前歯部へと移動さ
せ、患者が咬合の際に力が入る位置かあるいは気持ちの
よい咬合感覚が得られる位置により求めることができ
る。この位置が、咬合重心の前後位置となる。次いで、
本咬合採得用材を左右同時に噛ませたり、引張すること
で、左右の咬合感覚が同じになるまで、剛性シート体の
枚数を増減させる。これにより、咬合重心の好ましい左
右の高さ位置を決定することができる。すなわち、咬合
高径が決定することができる。さらに、前後位置及び左
右高さ位置が決定した下顎咬合面部に咬合採得用材の位
置をマーキングする。そして、本咬合採得用材の外形を
固定する。すなわち、重層された剛性シート体を接着し
て、厚みを固定する。さらに、本咬合採得用材の外形形
状を、咬合堤(旧義歯の場合もある)に合わせて頬舌径
を加工する。調整した咬合採得用材を、前記マーキング
位置に戻して、患者自身がタッピングしてもっとも咬合
感覚がよい箇所により水平的な位置関係を決めることが
できる。これらの操作により前後位置、左右の高さ位
置、水平位置が決定できたら、その下顎位置を上顎に対
して固定する。すなわち、上下顎の咬合堤を固定する。
【0040】このようにして咬合高径や下顎の三次元位
置を決定したら、上下咬合床を固定して、咬合採得を終
了する。以上のように、本発明によれば、本咬合堤を使
用した咬合採得方法が提供される。また、本発明の咬合
採得方法には、以下の態様が含まれることが明白であ
る。 (1)前歯部と臼歯部とを有し、臼歯咬合面部のうち、
第二小臼歯近心部から第一大臼歯近心部を含む領域にお
いて、以下の特徴; (a)咬合圧に相当する荷重の負荷によって変形する量
が前歯切縁部よりも抑制されている、(b)前歯切縁部
よりも高い硬さを有する、(c)ビッカース硬さ試験法
による硬さ(37℃以下)が0.8Hv以上である、及び
(d)ダンマルおよび/または60℃以上の融点の石油
系ワックスの総量が30wt%以上のパラフィン含有組
成物で形成されている、のうちいずれか一つ以上を有す
る咬合堤を有する咬合床を使用して、臼歯咬合面部にお
ける対咬接触に基づいて、咬合高径および/または下顎
の三次元位置を決定する工程を備える、咬合採得方法。 (2)前歯部と臼歯部とを有し、臼歯咬合面部のうち、
第二小臼歯近心部から第一大臼歯近心部を含む領域にお
いて、以下の特徴; (a)咬合圧に相当する荷重の負荷によって変形する量
が前歯切縁部よりも抑制されている、(b)前歯切縁部
よりも高い硬さを有する、(c)ビッカース硬さ試験法
による硬さ(37℃以下)が0.8Hv以上である、及
び(d)ダンマルおよび/または60℃以上の融点の石
油系ワックスの総量が30wt%以上のパラフィン含有
組成物で形成されている、のうちいずれか一つ以上を有
する咬合堤を有する咬合床を使用して、上下に対抗する
上下咬合堤の臼歯面部間に、複数枚の剛性シート体を重
層し、この剛性シート体の重層枚数を調整することによ
り、下顎の三次元位置を決定する工程を備える、咬合採
得方法。 (3)前記咬合堤は、さらに前記前歯部が、以下の特
徴; (e)パラフィンを70wt%以上含有するパラフィン
含有組成物で形成されている、及び(f)ビッカース硬
さ試験法による硬さ(37℃以下)が0.7Hv未満で
ある、のうちいずれか1以上を有する、(1)又は
(2)のいずれかに記載の方法。 (4)さらに、前記前記咬合堤の基底面部が、以下の特
徴; (g)パラフィンを70wt%以上含有するパラフィン
含有組成物で形成されている、及び(h)ビッカース硬
さ試験法による硬さ(37℃以下)が0.7Hv未満で
ある、のうちいずれか1以上を有する、(1)〜(3)
のいずれかに記載の方法。
【0041】さらに、本発明によれば、本咬合堤ないし
咬合床を用いて咬合採得して得られた記録に基づいて義
歯を作製する義歯の製造方法も提供される。
【0042】以上説明したように、本発明の咬合堤、咬
合床、咬合採得用材、咬合採得方法、義歯の製造方法に
よれば、咬合採得時において、臼歯部咬合面部における
対抗接触による咬合機能を発現させることができる。本
発明は、これらの各種態様をふくむ咬合採得技術を提供
するものである。各態様は、各態様について説明した上
記したいずれの構成を包含することができ、各態様にお
いては、これらの各構成を任意に選択して組み合わせる
こともできる。また、本発明の咬合採得〜義歯製造技術
によれば、歯科医師による咬合調整を極めて簡易に達成
することができる。また、本発明者らが先に創作し、既
に出願し公開されている義歯(特開2001−1372
61号公報)に適用するのにもっとも好ましい咬合採得
技術を提供することができる。さらに、本発明の一連の
咬合採得〜義歯製造技術は、義歯不適合あるいは天然歯
の不正咬合により肩こりや腰痛、眼精疲労などの各種不
快症状を発現する咬合関連症の予防方法及び治療方法に
好ましく適用できる。歯科医師や医師による予防あるい
は治療の過程において、義歯の調製あるいは再調製にお
いて、本発明技術を適用して義歯を製造することによ
り、患者本来の咬合機能を発現させあるいは咬合機能を
改善させて、咬合関連症を予防あるいは治癒させること
ができる。
【0043】
【実施例】以下、本発明を具体例を挙げて説明するが、
本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0044】(咬合堤の作製)図1及び図2に示す形態
の咬合堤の作製例を示す。咬合堤は、上下とも前歯部と
臼歯部とを一体に有する馬蹄状体であった。特に、下顎
咬合堤は、基礎床に一体化された咬合床の状態で口腔内
等にセットされた場合において、前歯切縁部が臼歯部の
咬合面によりも低くなるように形成されている。また、
前歯部の舌側には、複数個の凹状部(本例では、上顎で
は、基底面部側表面から咬合堤の厚み半分程度までの厚
み方向に沿った溝状部に形成されており、下顎では、厚
みの全体にわたる溝状部に形成されている)を備えてい
る。本例では、山八株式会社製パラフィンワックスソフ
トで前歯部と全体(前歯部と臼歯部)の基底面部を形成
し、同社製パラフィンワックススーパーハードで臼歯部
の咬合面部(臼歯部の咬合面側)を形成した。各咬合堤
は、各咬合堤の外形形状に対応するキャビティを有する
成形型に加熱して流動化させたパラフィンワックスを注
入し、冷却することにより作製した。すなわち、各咬合
堤の形状に対応する成形型を構成し、予め、咬合面部に
相当する領域をそれ以外の領域(前歯部全体および臼歯
部の基底面部)と区画しておいて、咬合面部を含む区画
にパラフィンワックススーパーハードを注入し、ある程
度固化させた後、前歯部及び基底面部を含む区画にパラ
フィンソフトを注入し、冷却し、硬化させた。
【0045】得られた各咬合堤は、その臼歯咬合面部に
他の咬合堤部位よりも硬さが高かった。また、各臼歯咬
合面部のビッカース硬さ試験法による硬さ(35℃)を
測定したところ、1.3であった。なお、試験は、試験
片を35℃の温水中に5分間浸漬した後、HARDNE
SS TESTING MACHINE HM−102
(AKASHI製)を用いて、0.05kg/10秒で
負荷をかけて行い、ビッカース硬さを得た。
【0046】この咬合堤を使用して咬合床を作製したと
ころ、容易に患者の顎のアーチ形状に合わせて側方拡大
や縮小が容易能であった。また、基底面部が軟性材料で
あるために、確実に基礎床へ咬合堤を密着させることが
できた。さらに、咬合採得時には、本発明による咬合採
得用材(剛性シート体の寸法:長さ8cm、幅7mm、
厚さ0.2mm)を使用したところ、臼歯咬合面部におけ
る対咬接触による機能的咬合を容易に実現できたので、
咬合高径ならびに下顎の三次元位置を適切かつ正確に決
定することができた。さらに、この咬合採得によって得
られた記録に基づいて義歯を作製したところ、歯科医師
による義歯の咬合調整は極めて簡易に実施でき、患者に
おいて好ましい咬合機能を発現させることができた。
【0047】
【発明の効果】本発明によれば、咬合採得時において、
咬合機能を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における上顎咬合堤の一形態を示す図で
ある。上顎咬合堤を、咬合面が下方を向いた状態で示し
ている。
【図2】本発明における下顎咬合堤の一形態を示す図で
ある。下顎咬合堤を、咬合面が上方を向いた状態で示し
ている。
【図3】本発明における咬合採得用材の一形態を示す図
である。
【符号の説明】
2,22 咬合堤 4、24 前歯部 6、26 臼歯部 8、28 咬合面 10、30 咬合面部 12、32 基底面部 14、34 凹状部 40 咬合採得用材 42 剛性シート体 44 軸体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 遠山 昌志 愛知県蒲郡市西浦町宮新田6 Fターム(参考) 4C052 NN01 4C059 CC14

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】咬合堤であって、前歯部と臼歯部とを有
    し、臼歯咬合面部の少なくとも一部が咬合圧に相当する
    荷重の負荷によって変形する量が前歯切縁部よりも抑制
    されている、咬合堤。
  2. 【請求項2】咬合堤であって、前歯部と臼歯部とを有
    し、臼歯咬合面部の少なくとも一部が前歯切縁部よりも
    高い硬さを有する、咬合堤。
  3. 【請求項3】咬合堤であって、前歯部と臼歯部とを有
    し、臼歯咬合面部の少なくとも一部のビッカース硬さ試
    験法による硬さ(37℃以下)が0.8Hv以上であ
    る、咬合堤。
  4. 【請求項4】咬合堤であって、前歯部と臼歯部とを有
    し、臼歯咬合面部の少なくとも一部が、ダンマルおよび
    /または融点が60℃以上の融点の石油系ワックスが3
    0wt%以上のパラフィン含有組成物で形成されてい
    る、咬合堤。
  5. 【請求項5】咬合堤であって、前歯部が、口腔内におい
    て他の咬合堤部位よりも変形しやすい材料で形成されて
    いる、請求項1〜4のいずれかに記載の咬合堤。
  6. 【請求項6】前歯部の舌側に1または2以上の凹状部を
    供える、請求項1〜5のいずれかに記載の咬合堤。
  7. 【請求項7】前歯切縁部の高さが、臼歯咬合面部よりも
    低く設定されている下顎咬合堤である、請求項1〜6の
    いずれかに記載の咬合堤。
  8. 【請求項8】咬合床であって、 請求項1〜7のいずれかに記載の咬合堤と、 基礎床、とを備える、咬合床。
  9. 【請求項9】所定位置に配置された上下咬合床の上下に
    対抗する上下咬合堤の臼歯面部間に重層可能に複数枚の
    剛性シート体を備える、咬合採得用材。
  10. 【請求項10】前記複数枚の剛性シート体は回転可能に
    軸支されている、請求項9記載の咬合採得用材。
  11. 【請求項11】請求項8記載の咬合床を用いる、咬合採
    得方法。
  12. 【請求項12】さらに、請求項9あるいは10に記載の
    咬合採得用材を、咬合床の上下に対向する咬合堤の臼歯
    咬合面部間に介在させた状態で咬合させる工程を備え
    る、請求項11記載の咬合採得方法。
  13. 【請求項13】義歯の製造方法であって、 請求項8記載の咬合床を使用して咬合高径および/また
    は下顎位置を記録する工程と、 この記録位置に基づいて義歯を製造する工程、とを備え
    る、方法。
  14. 【請求項14】義歯の製造方法であって、 請求項8記載の咬合床の上下に対向する咬合堤の臼歯咬
    合面部間に請求項9又は10記載の咬合採得用材を介在
    させた状態で咬合させて咬合高径および/または下顎位
    置を記録する工程と、 この記録位置に基づいて義歯を製造する工程、とを備え
    る、方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010075652A (ja) * 2008-09-27 2010-04-08 Toshimitsu Nagamura フィギュアや宝飾品等の原型造り用組成物の製造方法
JP2011062473A (ja) * 2009-09-18 2011-03-31 Munetaka Yahada 義歯製作時に使用する臼歯の模擬的立体形状を備えた剛性プレート

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010075652A (ja) * 2008-09-27 2010-04-08 Toshimitsu Nagamura フィギュアや宝飾品等の原型造り用組成物の製造方法
JP2011062473A (ja) * 2009-09-18 2011-03-31 Munetaka Yahada 義歯製作時に使用する臼歯の模擬的立体形状を備えた剛性プレート

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