JP2003156088A - 湿式摩擦材及びその製造方法 - Google Patents

湿式摩擦材及びその製造方法

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JP2003156088A
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friction
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Hiroki Morozumi
宏喜 両角
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多孔質摩擦材の劣化を防ぎ、摩擦性能の経時
安定性や耐薬品性に優れた湿式摩擦材及びその製造方法
を提供すること。 【解決手段】 多孔質摩擦材上に珪素酸化物被膜を有
し、多孔質摩擦材が有機系繊維補強基材、摩擦調整材及
び結合材を含み、20〜60%の気孔率を有する湿式摩
擦材である。珪素酸化物被膜がポリシラザンを出発原料
として成る。有機系繊維補強基材と摩擦調整材とを抄紙
し、結合材を含浸させ真空乾燥して多孔質摩擦材とし、
ポリシラザン含有溶液に浸漬し乾燥し焼成して、多孔質
摩擦材の表面に珪素酸化物被膜を形成する。焼成工程が
80〜250℃で行う2段階焼成法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、湿式摩擦材及びそ
の製造方法に係り、更に詳細には、油中で使用され、摩
擦特性(いわゆるμ−V特性)の経時安定性を向上さ
せ、且つ耐薬品性(耐酸性又はアルカリ性)を向上させ
た湿式摩擦材及びその製造方法に関する。また、本発明
の湿式摩擦材は、特に自動車、車両及び産業機械用のブ
レーキ、クラッチ、差動装置及び防振装置などに好適に
用いられる。
【0002】
【従来の技術】湿式摩擦材は、通常油中で使用されるこ
とから、大気中で使用される乾式摩擦材に比べ摺動面の
冷却に関し優位であり耐久性に優れている。そのため、
自動車用自動変速機、4輪駆動用差動装置及び産業機械
用ブレーキ等の伝達駆動力発生部品として適用が広がっ
ている。かかる湿式摩擦材は、一般にペーパー摩擦材と
いわれ、有機系繊維基材に熱硬化性樹脂などの結合材を
含浸し硬化させ、摩擦調整材として珪藻土やカシューダ
スト、黒鉛などを加えて得られる。また、湿式摩擦材に
対しては、トルク向上や軽量化といった適用システムの
高度化・高機能化・高寿命化に伴い、システム小型化の
ための摩擦力向上や強度耐久性の向上が求められてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような背景から、
本願出願人は、特開平10−120799号公報に、フ
ッ素化合物を表面に配設した湿式摩擦材を提案した。こ
の湿式摩擦材は、気孔の閉塞現象を回避するのに有効で
あり、特に気孔閉塞を促進するといわれる金属系添加剤
(例えばZn−DTP)を多く含む油での著しい摩擦係
数低下に対し、耐久性が向上されている。
【0004】しかしながら、特開平10−120799
号公報に係る湿式摩擦材は、上述のように摩擦材の気孔
閉塞現象を軽減できるが、金属系添加剤の少ない一般的
な油も含めた自動変速機油において、適用初期の状態か
ら摩擦特性の経時変化を安定化する効果は確認されてい
ない。即ち、自動変速機の益々の高度化に伴い、摩擦特
性そのものの経時安定化が望まれており、摩擦係数やそ
の特性の経時変化を低減することが求められている。
【0005】本願発明者は、摩擦材の経時安定化に着目
し、摩擦材表面における200℃以上の熱履歴も加味し
て、より詳細に上記課題を検討した。その結果、フッ素
化合物被膜と摩擦材との密着性が低くなるケースを確認
し、場合によってはフッ素化合物被膜の一部が脱落する
こと、更にフッ素化合物被膜の効果はより低温下で発現
されるにとどまること、等の問題点を見出した。そこ
で、高温でも安定して摩擦特性の経時安定化を発揮する
材料として、ポリシラザンを出発原料とする珪素酸化物
に着目した。
【0006】本発明は、このような従来技術の有する課
題及び新たな知見に鑑みてなされたものであり、その目
的とするところは、多孔質摩擦材の劣化を防ぎ、摩擦性
能の経時安定性や耐薬品性に優れた湿式摩擦材及びその
製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所望の密着性を確保
した珪素酸化物被膜を多孔質摩擦材の表面に配設するこ
とにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を
完成するに至った。
【0008】即ち、本発明の湿式摩擦材は、多孔質摩擦
材上に珪素酸化物被膜を有する湿式摩擦材であって、上
記多孔質摩擦材が、有機系繊維補強基材、摩擦調整材及
び結合材を含んで成り、20〜60%の気孔率を有する
ことを特徴とする。
【0009】また、本発明の湿式摩擦材の好適形態は、
上記珪素酸化物被膜がポリシラザンを出発原料として成
ることを特徴とする。
【0010】更に、本発明の湿式摩擦材製造方法は、上
記湿式摩擦材を製造する方法であって、有機系繊維補強
基材と摩擦調整材とを混合して抄紙し、これに結合材を
含浸させ真空乾燥して多孔質摩擦材とし、この多孔質摩
擦材を、ポリシラザンを溶質に含む溶液に浸漬し乾燥し
焼成して、該多孔質摩擦材の表面に珪素酸化物被膜を形
成することを特徴とする。
【0011】更にまた、本発明の湿式摩擦材製造方法の
好適形態は、上記焼成工程が、80〜250℃の範囲内
で行う2段階焼成法であることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の湿式摩擦材につい
て詳細に説明する。なお、本明細書において「%」は、
特記しない限り質量百分率を示す。
【0013】上述の如く、本発明の湿式摩擦材は、多孔
質摩擦材上に珪素酸化物被膜を有して成る。このよう
に、珪素酸化物被膜を被覆することで摩擦材の摩擦特性
及び耐薬品性が向上する。
【0014】ここで、上記珪素酸化物被膜は、ポリシラ
ザンを出発原料として構成されることが好ましい。ポリ
シラザンとしては、分子内に少なくともSi−H結合又
はN−H結合を有するものであれば、分子極性や活性化
エネルギーの面から焼成による酸化膜生成反応が安定に
進行するため好適に使用できる。また、ポリシラザン
は、単独での使用に限定されず、他のポリマーとの共重
合体や他の化合物との混合物として使用してもよい。更
に、ポリシラザンには、鎖状構造、環状構造又は架橋構
造を有するもの、及び分子内にこれらの構造を任意の組
合せで有するものがあり、これらポリシラザンを単独又
は混合物として使用できる。ポリシラザンは、以下の一
般式(1)
【0015】
【化1】
【0016】(式中のR1、R2及びR3は、それぞれ
水素もしくは有機基を示す)で表される。
【0017】具体的には、得られる珪素酸化物被膜の硬
さや緻密性からはペルヒドロポリシラザンが望ましく、
この場合は上記一般式(1)のR1、R2及びR3が水
素原子である。また、可撓性からはオルガノポリシラザ
ンが望ましく、この場合は上記一般式(1)のR1及び
R3が水素原子、R2が有機基である。但し、これらに
限定されるものではない。
【0018】また、上記珪素酸化物被膜は、特に低温セ
ラミックス化ポリシラザンを出発原料として成ることが
より好ましい。低温セラミックス化ポリシラザンとは、
上記ポリシラザン又はその変性物に触媒を添加すること
により予め低温化処理したポリシラザンのことをいい、
珪素アルコキシド付加ポリシラザン、グリシドール付加
ポリシラザン、アルコール付加ポリシラザン及び金属カ
ルボン酸付加ポリシラザンなどが例示できる。なお、こ
れらポリシラザンは、具体的には、特開平5−2388
27号公報、特開平6−122852号公報、特開平6
−240208号公報又は特開平6−299118号公
報に記載されている。
【0019】更に、上記珪素酸化物被膜の厚さは、2〜
50nmとすることが好ましい。これは、珪素酸化物被
膜の膜厚限界(クラックを発生しない限界厚さ)は約3
μmといわれているが、湿式摩擦材のような多孔質複合
材料の場合は、その多孔性(気孔物性)が諸性能を担っ
ているため、多孔性(例えば気孔率)を維持したまま表
面を被覆することが求められる。膜厚が上記範囲である
と、気孔物性を変えることなく珪素酸化物被膜を表面に
配設でき、珪素酸化物被膜の効果を発生しながら摩擦材
基材の性能を維持し、経時安定性を向上させることがで
きる。一方、2nm未満では、膜厚が均質でなくその効
果が発揮されないばかりか、被膜の脱離や崩壊によって
性能のばらつきを拡大させてしまうおそれがある。ま
た、50nmを超えると低気孔径側の多孔体部分を閉塞
させてしまうため、摩擦材の気孔率が減少すると共に低
気孔径側の気孔分布を狭めてしまい、結果として多孔性
に影響を及ぼし摩擦材自身の物理特性や摩擦性能を損な
うおそれがある。
【0020】一方、上記多孔質摩擦材は、有機系繊維補
強基材、摩擦調整材及び結合材を含んで成る。これよ
り、使用目的に応じて摩擦材の硬度、摩擦係数などの物
理特性を調整し得る。上記有機系繊維補強基材、摩擦調
整材及び結合材としては、市販品を含め従来公知のもの
を適宜使用できる。例えば、有機系繊維補強基材として
は、リンターパルプ、麻パルプ、木材パルプ、アクリル
繊維、ポリベンズイミダゾール繊維及びポリアミド繊維
等の有機系繊維のみならず、ガラス繊維、炭素繊維、金
属繊維等の無機繊維なども使用できる。また、摩擦調整
材は、珪藻土、グラファイト、硫酸バリウム、炭酸カル
シウム、カシューダスト、二硫化モリブデン、三硫化ア
ンチモン及び酸化鉄等の公知の粒状組成物などが使用で
きる。更に、結合材としては、フェノール樹脂、メラミ
ン樹脂、エポキシ樹脂、シアン酸エステル系樹脂などの
熱硬化性樹脂、及びそれらの変性樹脂、また上記樹脂に
アクリロニトリルブタジエンゴム及びフッ素ゴム等を添
加したものが使用できる。なお、有機系繊維補強基材、
摩擦調整材及び結合材は、得ようとする多孔質摩擦材に
応じて2種類以上を組合せて使用できることは言うまで
もない。
【0021】また、上記多孔質摩擦材は、20〜60%
の気孔率を有する。従来より、粒状シリカは、形状要素
や高い硬さ特性から、摩擦調整材や充填材成分として活
用されていた。これに対して、本発明では、多孔質摩擦
材が上記気孔率を有することにより、湿式摩擦材の多孔
物性(気孔率など)を変えることなく表面に珪素酸化物
被膜が好適な密着性で配設され、摩擦特性が確保され
る。20%未満では、配設された珪素酸化物被膜が多孔
性に影響を及ぼし摩擦材自身の物理特性や摩擦性能を損
なうおそれがあり、60%を超えると、気孔率を維持し
つつ珪素酸化物被膜を表面に配設するのが困難となる。
【0022】次に、本発明の湿式摩擦材の製造方法につ
いて詳細に説明する。かかる製造方法では、まず、有機
系繊維補強基材と摩擦調整材とを混合して抄紙し、これ
に結合材を含浸させ真空乾燥して多孔質摩擦材とする。
その後、この多孔質摩擦材を、ポリシラザンを溶質に含
む溶液に浸漬し乾燥し焼成して、該多孔質摩擦材の表面
に珪素酸化物被膜を形成し、上述の湿式摩擦材を得る。
多孔質摩擦材は、大気中の水分をその多孔内に保持する
傾向が有るが、このように、真空乾燥により被膜生成上
支障となる多孔内の水分が除去された多孔質摩擦材に珪
素酸化物被膜が形成されるので、被膜の均一性が向上す
る。
【0023】ここで、上記ポリシラザンを含む溶液は、
無色透明のポリマーであるポリシラザンを以下の溶剤を
用いて調製することにより得られる。かかる溶剤として
は、一般に脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族
炭化水素等の炭化水素類、ハロゲン化メタン、ハロゲン
化エタン及びハロゲン化ベンゼン等のハロゲン化炭化水
素類、脂肪族エーテル及び脂環式エーテル等のエーテル
類を使用することができる。特に、塩化メチレン、クロ
ロホルム、四塩化炭素及びトリクロロエタン等のハロゲ
ン化炭化水素類、エチルエーテル、イソプロピルエーテ
ル、ブチルエーテル及びジオキサン等のエーテル類、イ
ソヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベ
ンゼン、トルエン、キシレン及びペンタン等の炭化水素
類の溶剤を使用することが望ましい。また、上記溶剤は
必要に応じて2種類以上を混合して使用できる。
【0024】また、通常、低温セラミックス化ポリシラ
ザンで250℃以上の熱入力が膜生成に必要といわれて
いるが、本発明者は、湿式摩擦材の構造や使用環境を考
慮し、好ましい被膜厚さを得るために好適な処理方法を
見出した。即ち、上記多孔質摩擦材を上記ポリシラザン
を含む溶液に浸漬し乾燥した後には、80〜250℃の
範囲内で2段階焼成を行うことが好ましい。例えば、多
孔質摩擦材から溶剤を乾燥する際に、100℃で保持し
たあと250℃まで更に昇温して焼成を行うことができ
る。これより、塗布溶液への浸漬から引上げて、溶剤が
乾燥するまでに取り込まれてしまう水分を焼成工程で効
果的に除去できる。上記温度範囲の上限である250℃
は、多孔質摩擦材自身の含有組成物、特にリンターパル
プの成分であるセルロース繊維等有機系繊維補強基材が
劣化しない上限温度と考えられるため、この温度を超え
ることは好ましくない。また、下限である80℃に満た
ない温度では、溶剤や水分の効果的な除去が困難とな
る。なお、膜形成時の湿度雰囲気は、特に制限されるも
のでなく、大気中でも所望の膜性状を達成できる。
【0025】
【実施例】以下、本発明を従来例、実施例及び比較例に
より更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限
定されるものではない。
【0026】(実施例1)自動変速機用摩擦材として使
用されている湿式摩擦材((株)ダイナックス製D05
26−30)を、真空炉中80℃で60分間乾燥し、m
−キシレン溶剤で調製したプロピオン酸パラジウム付加
ペルヒドロポリシラザン(東燃(株)N−L110)の
5%溶液(ペルヒドロポリシラザンをm−キシレンに溶
解した5%溶液に、ペルヒドロポリシラザン1重量部当
り0.01重量部のプロピオン酸パラジウムを添加し、
大気中20℃で3時間攪拌後、孔径0.1μmのポリ四
フッ化エチレン製フィルタでろ過したもの)に20秒間
浸漬し、引上げてから10分間室温乾燥し、その後マッ
フル炉にて100℃で10分間保持した後、250℃で
60分間焼成し、本実施例の湿式摩擦材を得た。摩擦材
の多孔性を、水銀圧入法による細孔分布特性測定で把握
した。全細孔体積は0.039ml/g(気孔率に換算
すると33.0%、以下同様)、全細孔表面積は0.0
32m/gであった。また、多孔性を示す代替数値と
して、自動変速機用油(日産純正 出光製 マチック
D、以下「ATF」と略す)を用いた4μlあたりの油
浸透秒数を測定したところ、試料8点の平均は52秒、
標準偏差は7秒であった。さらに、せん断強度を測定し
たところ、試料5点の平均は4.18MPa、標準偏差
は0.69MPaであった。なお、上記細孔分布特性の
測定には、オートポア 9520型((株)島津製作所
製)を使用した。また、測定方法は、ASTM D 4
284−92準拠にて、まず、測定用試料を、多板クラ
ッチ等の部品から摩擦材面積1cm相当で切出し、エ
ポキシ樹脂で周囲を封じ、その後、試料重量を測定する
と共に表面積をゼロックス法(コピー投影して面積を求
める)により求めた。次いで、試料を標準セルに入れ、
初期圧力6kPa(約0.9psia、細孔直径約20
0μm)の条件で測定した。更に、せん断強度測定に
は、引張試験機を使用した。測定方法は、まず、測定用
試料を部品から摩擦材面積2cm相当で切出し、摩擦
材が両面張りの際はそのうちの片面を剥ぐ。次いで、摩
擦材面と基材面の双方を治具にそれぞれ貼付け、治具を
速度5mm/minで引張った。
【0027】(実施例2)低温セラミックス化ポリシラ
ザン溶液の濃度を10%とした以外は、実施例1と同様
の操作を繰り返して、本実施例の湿式摩擦材を得た。摩
擦材の多孔性を、水銀圧入法による細孔分布特性で把握
した。全細孔体積は0.037ml/g(気孔率33.
1%)、全細孔表面積は0.033m/gであった。
また、多孔性を示す代替数値として、ATFを用いた4
μlあたりの油浸透秒数を測定したところ、試料8点の
平均は46秒、標準偏差は5秒であった。さらに、せん
断強度を測定したところ、試料5点の平均は4.90M
Pa、標準偏差0.49MPaであった。
【0028】(実施例3)低温セラミックス化ポリシラ
ザン溶液の濃度を20%とした以外は、実施例1と同様
の操作を繰り返して、本実施例の湿式摩擦材を得た。摩
擦材の多孔性を、水銀圧入法による細孔分布特性で把握
した。全細孔体積は0.034ml/g(気孔率29.
5%)、全細孔表面積は0.027m/gであった。
また、多孔性を示す代替数値として、ATFを用いた4
μlあたりの油浸透秒数を測定したところ、試料8点の
平均は60秒、標準偏差は7秒であった。また、せん断
強度を測定したところ、試料5点の平均は6.95MP
a、標準偏差は0.88MPaであった。
【0029】(比較例1)上記湿式摩擦材(D0526
−30)を、比較例1の湿式摩擦材とした。摩擦材の多
孔性を、水銀圧入法による細孔分布特性で把握した。全
細孔体積は0.039ml/g(気孔率33.3%)、
全細孔表面積は0.033m/gであった。また、多
孔性を示す代替数値として、ATFを用いた4μlあた
りの油浸透秒数を測定したところ、試料8点の平均は4
5秒、標準偏差は6秒であった。また、せん断強度を測
定したところ、試料5点の平均は5.08MPa、標準
偏差0.78MPaであった。
【0030】(比較例2)上記湿式摩擦材(D0526
−30)を、真空炉中80℃で60分間乾燥して、比較
例2の湿式摩擦材とした。摩擦材の多孔性を、水銀圧入
法による細孔分布特性で把握した。全細孔体積は0.0
38ml/g(気孔率30.5%)、全細孔表面積は
0.032m/gであった。また、多孔性を示す代替
数値として、ATFを用いた4μlあたりの油浸透秒数
を測定したところ、試料8点の平均は44秒、標準偏差
は7秒であった。また、せん断強度を測定したところ、
試料5点の平均は5.28MPa、標準偏差0.98M
Paであった。
【0031】(比較例3)上記湿式摩擦材(D0526
−30)を、真空炉中80℃で60分間乾燥した後、約
数百nmのPTFE(ポリ四フッ化エチレン)微粒子が
水溶液溶媒に懸濁された混合物に含浸させ、引き上げ
後、常温で約60分真空乾燥してから250℃で約1時
間加熱して、比較例3の湿式摩擦材とした。摩擦材の多
孔性を、水銀圧入法による細孔分布特性で把握した。全
細孔体積は0.037ml/g(気孔率31.0%)、
全細孔表面積は0.030m/gであった。また、多
孔性を示す代替数値として、ATFを用いた4μlあた
りの油浸透秒数を測定したところ、試料8点の平均は6
4秒、標準偏差は8秒であった。また、せん断強度を測
定したところ、試料5点の平均は4.49MPa、標準
偏差は0.78MPaであった。
【0032】(性能評価)上記実施例1〜3及び比較例
1及び2の湿式摩擦材の表面状態に関し、珪素酸化物被
膜に着目した深さ方向分析をXPS(X線光電子分光分
析法、装置:ESCA−5600 PHI製)にて測定
した。図1〜3に実施例1〜3の湿式摩擦材の表面状態
を、図4及び図5に比較例1及び2の湿式摩擦材の表面
状態を、3mm×0.8mm角エリアの深さ方向分析結
果として示す。
【0033】図1〜3より、実施例1〜3の湿式摩擦材
は、表面近傍におけるCの存在割合が低く、SiとOの
存在割合が高いことがわかる。また、その存在割合比か
ら全ての湿式摩擦材の表面近傍でSiO相当の珪素酸
化物の存在が確認できた。これらの結果から、上記実施
例で得られた湿式摩擦材は、多孔質湿式摩擦材の表面に
珪素酸化物被膜を有することが明らかである。なお、3
0〜50nmを超える深さではSi、Oの存在割合が低
くなってほぼ一定値に収束することより、膜厚は2〜5
0nmの範囲であると推定できる。一方、図4及び図5
より、比較例1及び2の湿式摩擦材には、繊維基材に起
因するCが表面から深さ方向に一定の割合で存在してい
ることがわかる。また、真空炉中80℃、60分間乾燥
操作は、図5におけるOの存在割合が図4より僅かに少
ないことから水分除去に寄与していると理解できる。ま
た、比較例3については、フッ素の定量をNMR(核磁
気共鳴吸収分析法)にて実施したところ、摩擦材に対す
るフッ素当量で0.01〜0.5%であった。
【0034】各実施例及び比較例の湿式摩擦材の摩擦特
性をSAE No2摩擦試験機によって測定した。その
際の測定条件は、上記ATFを用いて、初期入力回転数
3000rpm、イナーシャ0.203kg・m、繰
り返しサイクル10000サイクルにて動摩擦係数と静
摩擦係数を測定した。図6に10000サイクルまでの
1200回転時の動摩擦係数推移を示す。各実施例は初
期状態を維持し安定であることが明らかである。これに
対して、各比較例の摩擦係数はサイクルと共に増大して
いることがわかる。また、このときの10000サイク
ル終了後の試料厚さ変化を図7に示す。各実施例、比較
例はともに同等の摩耗量であり、物理特性上、大きな差
異が発生していないと判断できる。
【0035】以上のように、実施例1〜3で得られた湿
式摩擦材は、本発明の範囲に含まれるため、摩擦材自身
の諸性能を維持しつつ、経時安定性を向上させる効果を
有する。これは以下の理由によるものと考えられる。珪
素酸化物は強度特性に優れ、安定且つ不活性であること
から、多孔質湿式摩擦材の表面に該珪素酸化物の被膜を
極薄く(2〜50nm)配設することによって、摩擦材
自身が有する気孔特性を維持したまま、多孔質要素を強
化又は補強でき、結果として摩擦特性の経時安定性が向
上するものと推察される。また、かかる効果以外にも、
珪素酸化物の化学的安定性によって、ATFや各油の成
分又は使用中に生成される酸化生成物等の劣化物から摩
擦材を保護する機能をも有する。特にリンターパルプの
成分であるセルロース繊維等、酸やアルカリに対して弱
い繊維も多く用いられるため、該珪素酸化物被膜は保護
被膜としても有効に機能する。
【0036】以上、本発明を好適実施例により詳細に説
明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、
本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能であ
る。例えば、珪素酸化物被膜は多孔質摩擦材の表面全体
に被覆しても良いし、摩擦性能が必要な摺動部位などに
のみ被覆されていても良い。
【0037】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、所望の密着性を確保した珪素酸化物被膜を多孔質摩
擦材の表面に配設することとしたため、多孔質摩擦材の
劣化を防ぎ、摩擦性能の経時安定性や耐薬品性に優れた
湿式摩擦材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の湿式摩擦材表面の酸化物生成状態分
析結果を示すグラフである。
【図2】実施例2の湿式摩擦材表面の酸化物生成状態分
析結果を示すグラフである。
【図3】実施例3の湿式摩擦材表面の酸化物生成状態分
析結果を示すグラフである。
【図4】比較例1の湿式摩擦材表面の状態分析結果を示
すグラフである。
【図5】比較例2の湿式摩擦材表面の状態分析結果を示
すグラフである。
【図6】摩擦特性の経時変化を示すグラフである。
【図7】摩擦特性を測定した経時後の摩擦材減少値を示
すグラフである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質摩擦材上に珪素酸化物被膜を有す
    る湿式摩擦材であって、 上記多孔質摩擦材が、有機系繊維補強基材、摩擦調整材
    及び結合材を含んで成り、20〜60%の気孔率を有す
    ることを特徴とする湿式摩擦材。
  2. 【請求項2】 上記珪素酸化物被膜の厚さが2〜50n
    mであることを特徴とする請求項1に記載の湿式摩擦
    材。
  3. 【請求項3】 上記珪素酸化物被膜がポリシラザンを出
    発原料として成ることを特徴とする請求項1又は2に記
    載の湿式摩擦材。
  4. 【請求項4】 上記ポリシラザンが低温セラミックス化
    ポリシラザンであることを特徴とする請求項3に記載の
    湿式摩擦材。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1つの項に記載
    の湿式摩擦材を製造する方法であって、 有機系繊維補強基材と摩擦調整材とを混合して抄紙し、
    これに結合材を含浸させ真空乾燥して多孔質摩擦材と
    し、 この多孔質摩擦材を、ポリシラザンを溶質に含む溶液に
    浸漬し乾燥し焼成して、該多孔質摩擦材の表面に珪素酸
    化物被膜を形成することを特徴とする湿式摩擦材製造方
    法。
  6. 【請求項6】 上記焼成工程が、80〜250℃の範囲
    内で行う2段階焼成法であることを特徴とする請求項5
    に記載の湿式摩擦材製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN101994772A (zh) * 2010-11-08 2011-03-30 东营信义汽车配件有限公司 制造轿车刹车片盘片抽真空混料的加工工艺
WO2011078269A1 (ja) * 2009-12-22 2011-06-30 曙ブレーキ工業株式会社 摩擦材及び摩擦材の製造方法

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