JP2003146626A - 安定な過炭酸ナトリウム、及びその製造方法 - Google Patents

安定な過炭酸ナトリウム、及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 被覆剤を均一に、しかも効率よく過炭酸ナト
リウム粒子表面に被覆でき、かつ乾燥工程でのエネルギ
ー負荷の少ない、過炭酸ナトリウムの被覆方法を提供す
る。 【構成】 平均粒径が5〜200μの、無水炭酸ナトリウ
ム粉末又は無水硫酸ナトリウム粉末を湿潤過炭酸ナトリ
ウム粒子表面に吸着させ後、該無水化合物を過炭酸ナト
リウム粒子表面に該化合物の水和物の被膜として固定化
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、安定な過炭酸ナト
リウム、およびその製造方法に関する。更に詳細には、
ゼオライトを含有する洗剤に配合するのに好適な過炭酸
ナトリウム、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】過炭酸ナトリウムは、色柄物の漂白にも使
用できること、生地を傷めないこと等のために、単独
で、或いは洗剤に配合されて使用されている酸素系漂白
剤である。過炭酸ナトリウムを配合した洗剤は、洗濯と
同時に漂白を行うことができ、有用であるが、ゼオライ
トが配合された洗剤中では、過炭酸ナトリウムは不安定
であり、分解して有効酸素を失ってしまう。そこで、一
般的には、過炭酸ナトリウム粒子とゼオライトとが直
接、接触しないように、過炭酸ナトリウム粒子をある種
の化合物で被覆することが行われている。例えば、特開
昭59-193999号公報には、過炭酸ナトリウムをメタホウ
酸ソーダと珪酸アルカリ金属塩の水溶液で被覆する方法
が、特開平7-69606号公報には、珪酸塩、硫酸マグネシ
ウム、及びアルカリ金属の硫酸塩の水溶液で被覆する方
法が開示されている。
【0003】これらの被覆方法は、乾燥させた過炭酸ナ
トリウム粒子の表面に、被覆剤水溶液を噴霧、或いは滴
下する方法であるため、(1)被覆剤水溶液が、過炭酸ナ
トリウム粒子表面に多数に存在する微小な空隙から過炭
酸ナトリウム粒子内部に浸透してしまい、粒子表面への
被覆効率が低下するという問題がある。また、(2)一旦
乾燥させた過炭酸ナトリウム粒子に、被覆剤水溶液を噴
霧、或いは滴下するので被覆処理の後、再び乾燥を行わ
なくてはならず、乾燥設備面、及びエネルギー消費面で
問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上記欠
点、即ち、被覆剤を均一に、しかも効率よく過炭酸ナト
リウム粒子表面に被覆でき、かつ乾燥工程でのエネルギ
ー負荷の少ない被覆方法について検討を重ねた結果、特
定の無機化合物の粉末を湿潤過炭酸ナトリウム粒子表面
に塗した後、その無機化合物を水和物として固定化する
ことによって、均一な被膜を効率よく形成させることが
できることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、湿潤過
炭酸ナトリウム粒子と、平均粒径が5〜200μの、無水炭
酸ナトリウム粉末又は無水硫酸ナトリウム粉末とを混合
して、該湿潤過炭酸ナトリウム粒子表面に該無水化合物
粉末を吸着させ、該無水化合物を過炭酸ナトリウム粒子
表面に該化合物の水和物の被膜として固定化することを
特徴とする、安定な過炭酸ナトリウムの製造方法に関す
る。
【0006】また、湿潤過炭酸ナトリウム粒子と、平均
粒径が5〜200μの、無水炭酸ナトリウム粉末又は無水硫
酸ナトリウム粉末とを混合して、該湿潤過炭酸ナトリウ
ム粒子表面に該無水化合物粉末を吸着させた後、該混合
系内に水を噴霧、または滴下して、該無水化合物を過炭
酸ナトリウム粒子表面に該化合物の水和物の被膜として
固定化することを特徴とする、安定な過炭酸ナトリウム
の製造方法に関する。前記湿潤過炭酸ナトリウムの含水
率は5〜20%である。湿潤過炭酸ナトリウム粒子と、無
水炭酸ナトリウム粉末又は無水硫酸ナトリウム粉末の混
合系内に噴霧、または滴下する水は、珪酸塩、又は/及
びマグネシウム塩を溶解、或いは懸濁させて用いること
ができる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明で用いる湿潤過炭酸ナトリ
ウムは、過酸化水素と炭酸ナトリウムとを水溶液中で反
応させた後、脱水機で脱水して得られるものをそのま
ま、或いは含水率を調整して用いることができるが、含
水率5〜20%の湿潤過炭酸ナトリウムを用いることが好
ましい。本発明においては、湿潤過炭酸ナトリウム粒子
と特定粒径の、無水炭酸ナトリウム粉末又は無水硫酸ナ
トリウム粉末とを混合して、該湿潤過炭酸ナトリウム粒
子表面に無水炭酸ナトリウム又は無水硫酸ナトリウムを
吸着させるが、用いる無水炭酸ナトリウム粉末又は無水
硫酸ナトリウム粉末の平均粒径は、好ましくは、5〜200
μであり、より好ましくは、5〜50μである。
【0008】湿潤過炭酸ナトリウム粒子と無水炭酸ナト
リウム粉末又は無水硫酸ナトリウム粉末との混合には、
転動水平式混合機、破砕転動式造粒機、連続混合機等が
使用できるが、転動水平式混合機が良い。噴霧、または
滴下する水に、珪酸塩、又は/及びマグネシウム塩を溶
解、或いは懸濁させて用いることができるが、珪酸塩と
しては、オルト珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウ
ム、メタ珪酸ナトリウム、及び水ガラス1〜3号等の珪
酸塩であり、マグネシウム塩としては、硫酸マグネシウ
ム、塩化マグネシウム等である。更にまた、噴霧、また
は滴下する水に、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-ト
ルエンスルホン酸ナトリウム、m-キシレンスルホン酸ナ
トリウム等の芳香族炭化水素スルホン酸塩、四硼酸ナト
リウム、オクタ硼酸ナトリウム、ペンタ硼酸ナトリウ
ム、メタ硼酸ナトリウム等の硼酸塩等の公知過炭酸ナト
リウム被覆剤を溶解、或いは懸濁させても良い。
【0009】本発明では、湿潤過炭酸ナトリウムと、無
水炭酸ナトリウム粉末又は無水硫酸ナトリウム粉末を添
加、混合するが、該湿潤過炭酸ナトリウムに炭酸ナトリ
ウムの水溶液又は硫酸ナトリウムの水溶液を添加、混合
した場合には、水分過多の状態となり、過炭酸ナトリウ
ム粒子がブロック化し、乾燥自体困難な状態となってし
まう。本発明では過炭酸ナトリウム粒子がブロック化を
起こすことはない。
【0010】本発明の作用機構は明らかでないが、例え
ば、無水炭酸ナトリウムを用いた場合、湿潤過炭酸ナト
リウム粒子表面に吸着した無水炭酸ナトリウムが、湿潤
過炭酸ナトリウム中の水分、或いは系内に噴霧、或いは
滴下される水分と反応し、過炭酸ナトリウム粒子表面に
炭酸ナトリウムの水和物の被膜を形成する際、過炭酸ナ
トリウム粒子表面が該反応で発熱するため、被膜が過炭
酸ナトリウム粒子表面に均一に展開しやすくなると共に
強固に固定化されて、安定な過炭酸ナトリウムを得るこ
とができるものと推定される。
【0011】
【実施例】以下に本発明を実施例で説明する。 (以下の実施例において使用する、湿潤過炭酸ナトリウ
ム)炭酸ナトリウムと過酸化水素とを塩化ナトリウムを
共存させた水溶液中で反応させた後、脱水して、含水率
10%の湿潤過炭酸ナトリウムを得た。
【0012】比較例1 上記の方法で得た、湿潤過炭酸ナトリウムを乾燥して、
有効酸素14.1%、平均粒径550μの過炭酸ナトリウムを
得た。該過炭酸ナトリウムを次に示す試験方法に従っ
て、対ゼオライト安定性を測定したところ、24%であっ
た。
【0013】(対ゼオライト安定性の試験方法)サンプ
ル1.0g(被覆過炭酸ナトリウム0.9gに市販ゼオライト0.
1gを混合したもの)を、50ml容プラスチック容器に入
れ、蓋(ピンポール付き)をして、50℃、70%RHの条件
下に48時間放置した後、有効酸素残存率を次式で求め
た。有効酸素の測定は、過マンガン酸カリウム滴定法を
用いた。 有効酸素残存率(%)=(保存後の有効酸素/保存前の有
効酸素)×100
【0014】実施例1 含水率が10%の湿潤過炭酸ナトリウム5000gと、平均粒
径が100μの無水炭酸ナトリウム500gを転動水平式混合
機(以下の実施例においては、単に混合機という)に入
れ、水118mlを噴霧添加した後、3分間混合した。混合
後、内容物を取り出し、流動層乾燥機で乾燥させ、有効
酸素12.9%、平均粒径643μの過炭酸ナトリウム粒子を
得た。この過炭酸ナトリウムの対ゼオライト安定性は、
67.5%であった。
【0015】実施例2 含水率が10%の湿潤過炭酸ナトリウム5000gと、平均粒
径が20μの無水炭酸ナトリウム500gを混合機に入れ、水
118mlを噴霧添加した後、3分間混合した。混合後、内容
物を取り出し、流動層乾燥機で乾燥させ、有効酸素12.8
%、平均粒径728μの過炭酸ナトリウム粒子を得た。こ
の過炭酸ナトリウムの対ゼオライト安定性は、71%であ
った。
【0016】実施例3 含水率が10%の湿潤過炭酸ナトリウム4986gと、平均粒
径が100μの無水炭酸ナトリウム500gを混合機に入れ、
そこに3号珪酸ナトリウム43.1gを水94mlに溶解してから
添加し、3分間混合した。混合後、内容物を取り出し、
流動層乾燥機で乾燥させ、有効酸素12.8%、平均粒径60
9μの過炭酸ナトリウム粒子を得た。この過炭酸ナトリ
ウムの対ゼオライト安定性は、69.9%であった。
【0017】実施例4 含水率が10%の湿潤過炭酸ナトリウム4986gと、平均粒
径が20μの無水炭酸ナトリウム500gを混合機に入れ、そ
こに3号珪酸ナトリウム43.1gを水94mlに溶解してから添
加し、3分間混合した。混合後、内容物を取り出し、流
動層乾燥機で乾燥させ、有効酸素12.8%、平均粒径699
μの過炭酸ナトリウム粒子を得た。この過炭酸ナトリウ
ムの対ゼオライト安定性は、75.7%であった。
【0018】実施例5 含水率が10%の湿潤過炭酸ナトリウム4986gと、平均粒
径が20μの無水炭酸ナトリウム500gを混合機に入れ、そ
こに硫酸マグネシウム7水塩25.5gを水41mlに溶解し添
加、更に3号珪酸ナトリウム43.1gを水41mlに溶解してか
ら添加し、3分間混合した。混合後、内容物を取り出
し、流動層乾燥機で乾燥させ、有効酸素12.5%、平均粒
径765μの過炭酸ナトリウム粒子を得た。この過炭酸ナ
トリウムの対ゼオライト安定性は、82%であった。
【0019】実施例6 含水率が12%の湿潤過炭酸ナトリウム5000gと、平均粒
径が100μの無水炭酸ナトリウム500gを混合機に入れ、3
分間混合した。混合後、内容物を取り出し、流動層乾燥
機で乾燥させ、有効酸素12.7%、平均粒径650μの過炭
酸ナトリウム粒子を得た。この過炭酸ナトリウムの対ゼ
オライト安定性は、62.5%であった。
【0020】実施例7 含水率が10%の湿潤過炭酸ナトリウム5000gと、平均粒
径が100μの無水硫酸ナトリウム500gを混合機に入れ、
水118mlを噴霧添加した後、3分間混合した。混合後、内
容物を取り出し、流動層乾燥機で乾燥させ、有効酸素1
2.7%、平均粒径705μの過炭酸ナトリウム粒子を得た。
この過炭酸ナトリウムの対ゼオライト安定性は、65%で
あった。
【0021】
【発明の効果】本発明によれば、被覆剤を均一に、しか
も効率よく過炭酸ナトリウム粒子表面に被覆でき、かつ
乾燥工程が1回で済むため、被覆過炭酸ナトリウムの品
質、及び設備面、或いはエネルギー面において有利な過
炭酸ナトリウムの被覆方法となる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 湿潤過炭酸ナトリウム粒子と、平均粒径
    が5〜200μの、無水炭酸ナトリウム粉末又は無水硫酸ナ
    トリウム粉末とを混合して、該湿潤過炭酸ナトリウム粒
    子表面に該無水化合物粉末を吸着させ、該無水化合物を
    過炭酸ナトリウム粒子表面に該化合物の水和物の被膜と
    して固定化することを特徴とする、安定な過炭酸ナトリ
    ウムの製造方法。
  2. 【請求項2】 湿潤過炭酸ナトリウム粒子と、平均粒径
    が5〜200μの、無水炭酸ナトリウム粉末又は無水硫酸ナ
    トリウム粉末とを混合して、該湿潤過炭酸ナトリウム粒
    子表面に該無水化合物粉末を吸着させた後、該混合系内
    に水を噴霧、または滴下して、該無水化合物を過炭酸ナ
    トリウム粒子表面に該化合物の水和物の被膜として固定
    化することを特徴とする、安定な過炭酸ナトリウムの製
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記湿潤過炭酸ナトリウムの含水率が5
    〜20%である請求項1〜2の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項2で噴霧、または滴下する水が、
    珪酸塩、又は/及びマグネシウム塩を含む請求項2の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 湿潤過炭酸ナトリウム粒子と、無水炭酸
    ナトリウム粉末、又は無水硫酸ナトリウム粉末との混合
    を転動水平式混合機で行うことを特徴とする請求項1〜
    2の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかの製造方法によ
    って製造された安定な過炭酸ナトリウム。
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