JP2003128592A - α−オレフィンの低重合方法 - Google Patents

α−オレフィンの低重合方法

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JP2003128592A JP2002226732A JP2002226732A JP2003128592A JP 2003128592 A JP2003128592 A JP 2003128592A JP 2002226732 A JP2002226732 A JP 2002226732A JP 2002226732 A JP2002226732 A JP 2002226732A JP 2003128592 A JP2003128592 A JP 2003128592A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 触媒の活性を保持したまま、高分子量重合体
の生成量を抑制する新規なα−オレフィンの低重合方法
を提供する。 【構成】 クロム−ピロリル結合を含むクロム化合物と
アルキルアルミニウム化合物からなる触媒の存在下、α
−オレフィンを低重合する方法において、クロム化合物
1gに対してアルキルアルミニウム化合物の使用量を2
0mmol以上とするα−オレフィンの低重合方法。 【効果】 α−オレフィン、特にエチレンを低重合させ
て、選択的に三量体を主体とした生成物を高収率で得る
ことができ、かつ、高分子量重合体の生成を抑制するこ
とができるため、多大な工業的利益を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クロム−ピロリル結合
を含むクロム化合物とアルキルアルミニウム化合物から
なる触媒を用いて、α−オレフィン、特にエチレンを低
重合させ、選択的に三量体を主体とした生成物を高収率
で得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、特定のクロム化合物と特定の
有機アルミニウム化合物の組み合わせからなる触媒を用
い、エチレン等のα−オレフィンを低重合することは知
られている。例えば、公告特許公報昭43−18707
では、一般式MXn で表されるCrを含むVIA族の遷移
金属化合物とポリヒドロカルビルアルミニウムオキシド
からなる触媒系により、エチレンから1−ヘキセンとポ
リエチレンを得る方法が記載されており、また、公開特
許公報平3−128904ではクロム塩、金属アミド及
び電子対供与性溶媒の混合物から得られるクロム含有化
合物と、金属アルキル又はルイス酸との組み合わせによ
り得られた触媒を用いて、α−オレフィンを三量化する
方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
うち、前者では、1−ヘキセンと同時に生成するポリエ
チレンの量が多く、ポリエチレンの量を少なくしようと
すると、全体の活性が低下するという問題があり、一
方、後者では、高分子量重合体の生成量は少ないが、触
媒活性が低いという問題がある。
【0004】本発明は、上記のような従来方法の持つ問
題を解決し得る、新規なα−オレフィンの低重合方法を
提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも一
つのクロム−ピロリル結合を持つクロム化合物とアルキ
ルアルミニウム化合物からなる触媒系において、クロム
化合物1gに対してアルキルアルミニウム化合物の使用
量を20mmol以上とすることを特徴とする、α−オ
レフィンの低重合方法に関するものである。
【0006】本発明において使用されるクロム−ピロリ
ル結合を含むクロム化合物とは、少なくとも一つのクロ
ム−ピロリル結合を持つ化合物であり、他の有機基、無
機基を有していて良く、更に、他の金属を含んでいても
よい。また、本発明においては、以下に述べるようなク
ロム−ピロリル結合を持つクロム化合物を製造する方法
により、IA族、IIA族、 IIIB族、及びIVB族の金属
の化合物との混合物としてクロム化合物が得られる場合
があるが、本発明においてはこのような混合物も含めて
クロム化合物と総称する。
【0007】クロム−ピロリル結合を含むクロム化合物
は、例えば、クロム塩及び金属ピロリドを電子供与性溶
媒中で反応させることにより得られる。ここで、クロム
塩は一般式CrXn (式中、Xは同一、又は、相互に異
なる任意の有機又は無機の基であり、nは1ないし6の
整数である。)で表される。nの数としては2,3が好
ましい。有機基としては、炭化水素基、アルコキシ基、
カルボキシル基、β−ジケトナート基及びアミド基等が
挙げられる。有機基の炭素数は通常1〜30であり、炭
化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、ア
リール基、アルキルアリール基、アラルキル基等が挙げ
られる。無機基としては、ハロゲン、硝酸基、硫酸基、
または酸素が挙げられる。好ましくは、クロム塩はハロ
ゲン化物であり、塩化第一クロム、塩化第二クロム、臭
化第一クロム、臭化第二クロム、ヨウ化第一クロム、ヨ
ウ化第二クロム、フッ化第一クロム、フッ化第二クロム
等が挙げられ、特に塩化第一クロム、塩化第二クロムが
好ましい。また、これらのクロム塩と後述の電子供与体
からなる錯体も用いることができる。
【0008】金属ピロリドはピロール、及びピロールの
誘導体から誘導されるものを指し、ピロール誘導体とし
ては2,5−ジメチルピロール、3,4−ジメチルピロ
ール、3,4−ジクロロピロール、2,3,4,5−テ
トラクロロピロール、2−アシルピロール等が挙げら
れ、金属としては水素を含むIA族、IIA族、IIIB
族、及びIVB族から選択される。好ましい金属ピロリド
としては、リチウムピロリド、ナトリウムピロリド、カ
リウムピロリド、セシウムピロリド等が挙げられる。ま
た、金属ピロリドの代わりに、ピロール、およびピロー
ル誘導体そのものを用いてもよい。
【0009】電子供与性溶媒としては、窒素、酸素、リ
ン、及び硫黄含有化合物の中から選択される。窒素含有
化合物としては、ニトリル、アミン、アミドが挙げら
れ、具体的には、アセトニトリル、ピリジン、ジメチル
ピリジン、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムア
ミド、アニリン、ニトロベンゼン、テトラメチルジアミ
ノメタン、ヘキサメチルジシラザン、ピロリドン等が挙
げられる。酸素含有化合物としては、エステル、エーテ
ル、ケトン、アルコール、アルデヒド等が挙げられ、具
体的にはエチルアセテート、メチルアセテート、テトラ
ヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメト
キシエタン、ジグライム、トリグライム、アセトン、メ
チルエチルケトン、メタノール、エタノール、アセトア
ルデヒド等が挙げられる。リン化合物としては、ヘキサ
メチルフォスフォルアミド、ヘキサメチルフォスフォラ
ストリアミド、トリエチルフォスファイト、トリブチル
フォスフィンオキシド、トリエチルフォスフィン等が例
示される。硫黄含有化合物としては、二硫化炭素、ジメ
チルスルフォキシド、テトラメチレンスルフォン、チオ
フェン、ジメチルスルフィド等が例示される。以上の電
子供与体溶媒のなかでは、エーテル類が好ましく、中で
も、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキ
シエタンが好ましい。
【0010】クロム塩と金属ピロリドを電子供与性溶媒
の中で反応させる方法としては、所望の比率でクロム塩
と金属ピロリドを混合し、好ましくは酸素分子の不存在
下、通常は常圧で反応させる。反応温度は任意の温度で
よいが、溶媒の還流下で反応させることが好ましい。反
応時間は、通常は30分から48時間の間である。反応
終了後、ろ過により副生成物を除去した後、過剰の電子
供与性溶媒を除去することが好ましい。電子供与性溶媒
を除去する方法としては、高温または常温下、減圧また
は不活性ガスの流通により留去する方法、あるいはクロ
ム化合物が不溶な電子供与性溶媒以外の溶媒を添加した
後、生成したクロム化合物沈澱をろ別し、更に添加した
溶媒で洗浄して電子供与性溶媒を除去する方法等が挙げ
られる。電子供与体性媒以外の溶媒としては、ペンタ
ン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の直鎖状ま
たは脂環式の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシ
レン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレ
ン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等の鎖状塩素
化炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩
素化芳香族炭化水素等が挙げられるが、直鎖状または脂
環式の飽和炭化水素を用いることが好ましい。
【0011】本発明において使用される少なくとも一つ
のクロム−ピロリル結合を含むクロム化合物を得る他の
方法は、電子供与性溶媒以外の溶媒に可溶のクロム化合
物と金属ピロリドを反応させる方法である。電子供与性
溶媒以外の溶媒としては、上記で電子供与性溶媒を除去
するのに用いられた溶媒が用いられる。電子供与性溶媒
以外の溶媒に可溶のクロム化合物としては、上述のハロ
ゲン化クロムと電子供与体の錯体、例えば、ハロゲン化
クロムのエーテル錯体、エステル錯体、ケトン錯体、ア
ルデヒド錯体、アルコール錯体、アミン錯体、ニトリル
錯体、フォスフィン錯体、チオエーテル錯体等が挙げら
れ、具体的にはCrCl3・3THF,CrCl3 ・3
dioxane,CrCl3 ・(CH3CO2n-C4
9 ),CrCl3 ・(CH3 COC25 ),CrCl3
・3(i−C37 OH),CrCl3 ・3[CH3
(CH23 CH(C25 )CH2 OH],CrCl3
・3Pyridine,CrCl3・2(i−C37
NH2 ),[CrCl3・3MeCN]・MeCN(Me
CN=アセトニトリル),CrCl3・3PPh3 (P
Ph3 =トリフェニルフォスフィン),CrCl2・2
THF,CrCl2 ・2Pyridine,CrCl2
・2[(C252NH ],CrCl2 ・2MeCN
(MeCN=アセトニトリル),CrCl2・2[P
(CH3)2Ph](Ph=フェニル基)等が挙げられ、
また、クロムのβ−ジケトナート塩、クロムのカルボン
酸塩、クロムのカルボニル錯体、クロムの各種シクロペ
ンタジエニル錯体、アルキル錯体、フェニル錯体、具体
的には、Cr[CH3 COCH=C(O−)CH3
3 ,Cr[CH3 (CH23CH(C25 )CO5
3,Cr(CO)6 ,CpCrCl2 (Cp=シクロペ
ンタジエニル基),(Cp*CrClCH32 (Cp*
=ペンタメチルシクロペンタジエニル基),(CH32
CrCl,CrPhCl2 ・THF3 等が挙げられ
る。
【0012】クロム化合物と金属ピロリドを電子供与性
溶媒以外の溶媒中で反応させる方法としては、所望の比
率でクロム化合物と金属ピロリドを混合し、好ましくは
酸素分子の不存在下、通常は常圧で反応させる。反応温
度はクロム化合物と金属ピロリドの種類に応じて、−1
00℃から溶媒の沸点までの温度を用いることができ
る。反応時間は、通常は30分から48時間の間であ
る。
【0013】反応終了後、副生成物を、ろ過により除去
してもよいが、除去せずに反応生成物をそのままα−オ
レフィンの低重合反応に供することができる。また、溶
媒も除去せずに、反応生成物をそのままα−オレフィン
の低重合反応に供することができる。反応溶媒を除去す
る場合は、高温または常温下、減圧または不活性ガスの
流通により留去するか、あるいは、生成したクロム化合
物が不溶の溶媒を添加した後、クロム化合物を含む沈澱
をろ別し、更に添加した溶媒で洗浄することにより、反
応溶媒を除去することができる。
【0014】本発明においては、クロム−ピロリル結合
を持つクロム化合物は、高活性化のために無機酸化物等
の担体に担持して用いることもできるが、その場合、ポ
リマーの生成量が増大する傾向にあるため、好ましく
は、クロム化合物を担体に担持せずに、単にアルキルア
ルミニウム化合物と組み合わせるだけで用いるのがよ
い。即ち、本発明方法によれば、担体への担持という複
雑な手法を用いなくとも、高い触媒活性が得られ、ま
た、担体の使用による総触媒使用量(担体とクロム触
媒、アルキルアルミニウムの合計量)の増大という問題
も生じることがない。
【0015】本発明におけるα−オフレィンの低重合
は、通常、炭化水素溶媒中で行われるが、クロム化合物
の濃度は、溶媒1リットルあたり0.1mg〜5g、好
ましくは1mg〜2g、更に好ましくは1mg〜0.5
gである。本発明においては、以上のようにして得られ
た、少なくとも一つのクロム−ピロリル結合を含むクロ
ム化合物をアルキルアルミニウム化合物と組み合わせる
ことにより、α−オレフィンの低重合を行う。アルキル
アルミニウム化合物としては、下記一般式
【0016】
【化1】 R1 m Al(OR2npq …(1) (式中、R1 及びR2 は、互いに同一であっても異なっ
ていてもよく、炭素数が通常1〜15、好ましくは1〜
8の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表し、0<
m≦3,0≦n<3,0≦p<3,0≦q<3,m+n
+p+q=3である。)で示されるアルキルアルミニウ
ム化合物が好ましく、例えば下記一般式(2)〜(7)
で示されるアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。
【0017】
【化2】 R1 3 Al …(2) (式中、R1 は前記と同じ。)で示されるトリアルキル
アルミニウム化合物、
【0018】
【化3】 R1 m AlX3-m …(3) (式中、R1 は前記と同じ。Xはハロゲン原子を表し、
1.5≦m<3である。)で示されるハロゲン化アルキ
ルアルミニウム化合物、
【0019】
【化4】 R1 m Al(OR23-m …(4) (式中、R1 及びR2 は前記と同じ。0<m<3、好ま
しくは1.5≦m<3である。)で示されるアルコキシ
アルキルアルミニウム化合物、
【0020】
【化5】 R1 m AlH3-m …(5) (式中、R1 は前記と同じ。0<m<3、好ましくは
1.5≦m<3である。)で示される水素化アルキルア
ルミニウム化合物、
【0021】
【化6】 R1 2 Al(OAl)m OAlR1 2 または …(6)
【0022】
【化7】
【0023】(式(6),(7)中、R1 は前記と同
じ。mは0〜30の整数であり特に10以上のものが好
ましい。)で示されるアルミノキサン、具体的には、ト
リエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、
ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジエチルアルミニ
ウムエトキシド、ジエチルアルミニウムヒドリド、メチ
ルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げ
られ、中でもトリアルキルアルミニウムが最も好まし
い。
【0024】本発明においては、通常は溶媒を用いて低
重合反応が実施され、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘ
プタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキ
サン、デカリン等の直鎖状または脂環式の飽和炭化水
素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、
テトラリン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メ
チレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラク
ロロエタン等の鎖状塩素化炭化水素、及びクロロベンゼ
ン、ジクロロベンゼン等の塩素化芳香族炭化水素等が溶
媒として使用される。これらの溶媒のうち、直鎖状また
は脂環式の飽和炭化水素が好ましい。また、反応原料の
α−オレフィンそのもの、あるいは反応の主原料以外の
α−オレフィンを溶媒として用いることもできる。これ
らのα−オレフィンとしては、4から30の炭素数を有
するものが使用されるが、常温で液状のものが特に好ま
しい。 これらの溶媒のうち、特に脂環式炭化水素を用
いることが高活性が得られるという点で好ましい。
【0025】本発明において用いられる原料のα−オレ
フィンは、置換または非置換の2〜30の炭素原子を有
するものである。具体例としては、エチレン、プロピレ
ン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オ
クテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペ
ンテン等が挙げられる。特に、本発明はエチレンの低重
合に好適であり、選択的に1−ヘキセンを高収率で得る
ことができる。
【0026】低重合反応の温度は通常0〜250℃、好
ましくは0〜150℃であり、圧力は常圧乃至250k
g/cm2 であるが、100kg/cm2以下で十分で
ある。反応は回分式、連続式いずれでも実施できる。滞
留時間は、1分〜20時間の範囲であるが、好ましく
は、0.5〜6時間である。本発明においては、クロム
化合物をα−オレフィンおよびアルキルアルミニウム化
合物のいずれとも前もって接触させることなく、α−オ
レフィンをクロム化合物およびアルキルアルミニウム化
合物と接触させるか、あるいは、クロム化合物1gに対
してアルキルアルミニウム化合物の使用量を20mmo
l以上とするかのいずれかを必要とするが、上記の条件
をいずれも満足させた場合に最も大きな効果が得られ
る。
【0027】前者の接触方法を用いる場合、前記のアル
キルアルミニウム化合物のクロム化合物に対する使用量
は5mmol/クロム化合物g以上であればよい。具体
的な接触方法としては、回分型の反応形式の場合では、
溶媒中にアルキルアルミニウム化合物を存在させてお
き、ここにクロム化合物をα−オレフィンと同時に圧入
する方法、あるいは初めにα−オレフィンとアルキルア
ルミニウム化合物を接触させ、これにクロム化合物を圧
入する方法が挙げられ、連続型の反応形式の場合では、
各々の成分を反応槽へ直接独立に供給する方法等が挙げ
られる。本発明の条件下では、アルキルアルミニウム化
合物とα−オレフィンの間の相互作用が小であるので、
以上述べた接触方法は実質的には同一の方法ということ
ができる。
【0028】上記の接触法を採用することにより、活性
の大幅な向上、高分子量重合体の生成抑制等の効果が発
現する。本発明の触媒系においては、クロム化合物とア
ルキルアルミニウム化合物の反応の結果生成する溶媒可
溶の成分が重合活性を持つと推定されるが、クロム化合
物をα−オレフィンおよびアルキルアルミニウム化合物
のいずれとも前もって接触させることなく、α−オレフ
ィンをクロム化合物およびアルキルアルミニウム化合物
と接触させると、存在するα−オレフィンの配位等によ
り生成する活性種が安定化され、活性種の量が増大する
ものと考えられる。一方、α−オレフィンの不存在下で
クロム化合物とアルキルアルミニウム化合物を接触した
後、α−オレフィンを接触させた場合には、上記の理由
で活性種の量が減少することや、α−オレフィンが接触
され重合反応が開始される前に、クロム化合物の適切な
還元度以上に還元が進行することが、活性を低下させる
原因であると考えられる。また、クロム化合物とα−オ
レフィンを予め接触させておいた後、アルキルアルミニ
ウム化合物を接触させる場合も活性が低下するが、この
場合は、クロム化合物がα−オレフィンと前もって接触
することにより、アルキルアルミニウム化合物と反応し
た際、可溶化し難くなるものと推定される。
【0029】上記の接触法を採用しない場合であって
も、アルキルアルミニウム化合物のクロム化合物に対す
る使用量を20mmol/クロム化合物g以上、好まし
くは30mmol/クロム化合物g以上とすることによ
り、ある程度高い低重合活性と三量体選択性を得ること
ができる。アルキルアルミニウム化合物の使用量が20
mmol/クロム化合物gより小さい場合には、三量体
の選択性、および活性が低下する。
【0030】クロム化合物に対するアルキルアルミニウ
ム化合物の使用量を多くすることにより、クロム化合物
の可溶化が促進され活性種の量が増大するので、前述の
接触法を用いない場合でも、ある程度の高い低重合活性
と三量体選択性を得ることができるものと考えられる。
アルキルアルミニウム化合物の使用量の上限については
特に制限はないが、不必要に多量のアルキルアルミニウ
ム化合物を用いても、アルキルアルミニウム化合物あた
りの生成物の収量が低下するのみである。好ましくはア
ルキルアルミニウム化合物の使用量の上限は1,000
mmol/クロム化合物g、更に好ましくは500mm
ol/クロム化合物gである。
【0031】また、本発明のα−オレフィンの低重合に
おいては、反応時に水素を共存させることにより、活
性、三量体選択性の向上が認められ、その効果は本発明
外の条件下で水素を共存させた場合よりも顕著である。
特に、本発明において、低重合反応を脂環式炭化水素溶
媒中で、かつ、水素の存在下で行うことで、活性、三量
体選択性が著しく向上する。本発明における高分子重合
体(常温で炭化水素溶媒に不溶のもの)の生成は、全生
成物の25重量%以下であり、本発明の好ましい方法に
よれば、15重量%以下となり、更に適切な方法を用い
ることで、5重量%以下とすることができる。
【0032】
【実施例】以下に、実施例により本発明を更に具体的に
説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の
実施例に限定されるものではない。
【0033】触媒製造例1(Cr化合物−1の製造) NaH0.815g(20.3mmol)にTHF15
mlを加え、THF5mlに溶解したピロール1.4m
l(20mmol)を滴下した。室温で1時間攪拌した
後、この溶液をTHF20mlに懸濁したCrCl2
1.23g(10mmol)に滴下した。滴下後THF
5mlを加え、20時間加熱還流した。沈澱を濾別した
後、濾液にペンタン100mlを加え、5℃で静置し
た。生成した沈澱を濾別、乾燥し、暗緑色の粉末0.5
06gを得た。この粉末の各元素含有量は以下の通りで
あった。 Cr:19.1%,C:52.3%,H:5.45%,
N:11.6%。
【0034】触媒製造例2(Cr化合物−2の製造) −78℃でn−BuLi/ノルマルヘキサン溶液19m
l(n−BuLi30mmol)にTHF20mlに溶
解したピロール2.1ml(30mmol)を滴下し、
15分間攪拌した。その後室温に戻し、室温で2時間攪
拌を続けた。この溶液にCrCl3 1.58g(10m
mol)を粉末で加えた後、5時間加熱還流を行った。
放冷後生成した沈澱を濾別した後、濾液をドライアップ
して粉末を得た。この粉末中の各元素含有量は以下の通
りであった。 Cr:6.6%,C:69.2%,H:7.3%,N:
15.1%。
【0035】触媒製造例3(Cr化合物ー3の製造) NaH0.79g(16.5mmol)にTHF15m
lを加えTHF5mlに溶解したピロール1.0ml
(15mmol)を滴下した。室温で1時間攪拌した
後、この溶液をTHF25mlに懸濁したCrCl3
0.79g(5mmol)に滴下した。滴下後、20時
間加熱還流した。沈澱を濾別した後、溶媒を留去し、黒
色の粉末1.65gを得た。この粉末の各元素含有量は
以下の通りであった。 Cr:6.5%,C:58.0%,H:6.6%,N:
10.5%。
【0036】実施例1 150℃の乾燥機で加熱乾燥した300ccのオートク
レーブを熱時に組立て、真空窒素置換した。このオート
クレーブには、破裂板を備えた触媒フィード管を取り付
けておいた。ヘプタン50cc、及び、トリエチルアル
ミニウム0.4mmolをオートクレーブ胴側に仕込
み、一方触媒フィード管に、ヘプタン1ccにスラリー
化したクロム化合物−1 10mgを仕込んだ。この時
点ではクロム化合物とトリエチルアルミニウムは接触し
ていない。オートクレーブを80℃に加熱し、80℃で
エチレンを触媒フィード管より導入した。エチレン圧に
より破裂板が破裂し、エチレン、クロム触媒、トリエチ
ルアルミニウムが同時に接触しエチレンの低重合が開始
された。エチレンを全圧が40kg/cm2まで導入
し、以後全圧40kg/cm2を維持して1時間エチレ
ンの低重合を行った。重合熱によりオートクレーブ内温
は90℃となったので、以後反応温度は90℃を維持し
た。1時間後、エタノール圧入により反応を停止し、生
成物をガスクロマトグラフで定量した。結果を表−2に
示す。
【0037】実施例2 実施例1で用いたものと同様のオートクレーブに、同様
にクロム化合物10mg、トリエチルアルミニウム0.
4mmolを仕込んだ。水素を3.5kg/cm 2導入
し、オートクレーブを90℃に加熱した。この時点では
クロム化合物とトリエチルアルミニウムは接触していな
い。次いで、90℃でエチレンを触媒フィード管より導
入した。エチレン圧により破裂板が破裂し、エチレン、
クロム化合物、トリエチルアルミニウムが同時に接触
し、エチレンの重合が開始された。エチレンを全圧が4
0kg/cm2まで導入し、以後全圧40kg/cm2
を維持して0.5時間エチレンの重合を行った。重合熱
によりオートクレーブ内温は110℃となったが冷却
し、以後反応温度は100℃を維持した。0.5時間
後、エタノール圧入により反応を停止し、生成物をガス
クロマトグラフで定量した。結果を表−2に示す。
【0038】実施例3〜7 反応条件を表−1に記載したように変更したこと以外は
実施例1と同様に反応を行なった。結果を表−2に示
す。
【0039】実施例8 オートクレーブ中に初めに、実施例1で用いたクロム化
合物10mg、次にヘプタン50mlを仕込み、次いで
90℃に昇温後、エチレンを35kg/cm2まで導入
した。エチレンの吸収は認められなかったので、ここ
へ、トリエチルアルミニウム0.4mmolを圧入し
た。エチレンの吸収が始まり、30分後エタノール圧入
により反応を停止した。反応温度は90℃を維持した。
結果を表−2に示す。
【0040】実施例9 クロム化合物を製造例3で得られたものに変えたこと以
外は、実施例4と同様にエチレンの低重合を行った。反
応条件を表ー1に、結果を表ー2に示す。
【0041】実施例10 反応溶媒をシクロヘキサンに変えたこと以外は実施例9
と同様にエチレンの低重合を行った。反応条件を表ー1
に、結果を表ー2に示す。
【0042】実施例11 トリエチルアルミニウムの量を0.4mmolとし、水
素を3.5kg/cm2導入したこと以外は実施例10と
同様にエチレンの低重合を行った。反応条件を表ー1
に、結果を表ー2に示す。
【0043】比較例1 トリエチルアルミニウムの量を0.12mmolに変更
したこと以外は実施例8と同様に反応を行った。結果を
表−2に示す。
【0044】比較例2 トリエチルアルミニウムを圧入する前に、水素3.5k
g/cm2 を導入し、全圧を40kg/cm2 としたこ
と以外は比較例1と同様に反応を行った。結果を表−2
に示す。
【0045】比較例3 オートクレーブにヘプタン溶媒中でトリエチルアルミニ
ウムおよびクロム化合物を仕込み、90℃で30分間熱
処理した後、エチレンを導入したこと、および反応温度
を100℃としたこと以外は比較例1と同様に反応を行
なった。結果を表−2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】本発明方法によれば、α−オレフィン、
特にエチレンを低重合させて、選択的に三量体を主体と
した生成物を高収率で得ることができ、かつ、高分子量
重合体の生成を抑制することができるため、多大な工業
的利益を提供する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 押木 俊之 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地 三 菱化成株式会社総合研究所内 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC21 BA09 BA14 BA44 BA47 BA81 BB11 4J128 AA01 AB00 AC42 BA01B BB01B BC15B CB73A DA00 EA01 EB01 EC01 FA02 GB01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロム−ピロリル結合を含むクロム化合
    物とアルキルアルミニウム化合物からなる触媒の存在
    下、α−オレフィンを低重合する方法において、クロム
    化合物1gに対してアルキルアルミニウム化合物の使用
    量を20mmol以上とすることを特徴とするα−オレ
    フィンの低重合方法。
  2. 【請求項2】 低重合反応を脂環式炭化水素溶媒中で行
    うことを特徴とする請求項1に記載のαーオレフィンの
    低重合方法。
  3. 【請求項3】 低重合反応を水素の存在下で行うことを
    特徴とする、請求項1または2に記載のα−オレフィン
    の低重合方法。
  4. 【請求項4】 αーオレフィンがエチレンであり、主生
    成物が1−ヘキセンである請求項1から請求項3のいず
    れか1項に記載のα−オレフィンの低重合方法。
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