JP2003113446A - 耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼 - Google Patents

耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼

Info

Publication number
JP2003113446A
JP2003113446A JP2001307780A JP2001307780A JP2003113446A JP 2003113446 A JP2003113446 A JP 2003113446A JP 2001307780 A JP2001307780 A JP 2001307780A JP 2001307780 A JP2001307780 A JP 2001307780A JP 2003113446 A JP2003113446 A JP 2003113446A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
less
corrosion resistance
stainless steel
intergranular corrosion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001307780A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4013515B2 (ja
Inventor
Junichiro Hirasawa
淳一郎 平澤
Takumi Ugi
工 宇城
Osamu Furukimi
古君  修
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawasaki Steel Corp filed Critical Kawasaki Steel Corp
Priority to JP2001307780A priority Critical patent/JP4013515B2/ja
Publication of JP2003113446A publication Critical patent/JP2003113446A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4013515B2 publication Critical patent/JP4013515B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
  • Arc Welding In General (AREA)
  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 特に溶接熱影響部の耐粒界腐食性を顕著に改
善した、溶接熱影響部の靭性に優れ、さらに低強度で高
い伸びを持つ、曲げ加工性に優れる、構造用ステンレス
鋼を提供する。 【解決手段】 C:0.02質量%未満、Si:1.0 質量%以
下、Mn:1.5 質量%以下、Al:0.10質量%以下、 Cr:1
1.0質量%以上15.0質量%以下、Ni:0.8 質量%超え3.0
質量%未満、Mo:0.5 質量%以上2.0 質量%以下およ
びN:0.05質量%超え0.10質量%以下を、所定の式を満
足する範囲にて含有する、成分組成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、 従来の溶接構造
用マルテンサイト系ステンレス鋼の代替となるステンレ
ス鋼、 特に溶接および曲げ加工が多用される建築土木用
途に適合する、耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス
鋼に関するものである。
【0002】近年、JIS に規定されたSUS304(18質量%
Cr−8質量%Ni鋼)に代表される、オーステナイト系ス
テンレス鋼を、例えばプールの上屋のような、屋外の人
目に付く部位で裸使用する等、ステンレス鋼の建築骨組
への適用が徐々に拡大している。 しかしながら,SUS304
などのオーステナイト系ステンレス鋼は、 原料コストの
高いNiを通常7〜15質量%程度で含有する、高価な材料
であるため、 よりコストが低く、しかも耐食性に優れた
鋼種が求められている。
【0003】すなわち、オーステナイト系ステンレス鋼
と比較して、Ni含有量が低いためにコストの削減がはか
れるマルテンサイト系ステンレス鋼を、上記オーステナ
イト系ステンレス鋼の代替とすることが検討されてい
る。例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼を建築骨組
等へ適用するには、建築骨組とする際に施される溶接加
工の溶接部における耐食性を改善し、 かつ溶接部以外の
母材の耐食性も優れること、さらに低強度で伸びを高く
して曲げ加工等も容易にすることが、必要になる。
【0004】
【従来の技術】さて、一般に溶接構造用に用いられるマ
ルテンサイト系ステンレス鋼は、Cr含有量が11〜15質量
%であり,SUS430(16質量%Cr含有鋼)や上記SUS304と
比較すると耐食性が不足している。 特に、溶接熱影響部
では、 Crが炭窒化物となって粒界に析出してCr欠乏層が
形成されるため、 このCr欠乏層を起点とした腐食が進行
し易く、特にCr含有量の低いマルチンサイト系ステンレ
ス鋼では、この現象が顕著であり、耐粒界腐食性の低下
が著しい。
【0005】この耐粒界腐食性に関する対策として、 特
公平4−35551 号公報では、C、S、PおよびO等の不
純物元素の含有量を極力低減することにより、 耐食性お
よび加工性をSUS430以上としたステンレス鋼が記載され
ている。 しかし、 鋼の靭性を顕著に向上させるNiの添加
量が十分でないなどの理由により、 溶接熱影響部の靭性
が不足し、 構造物には用いることが出来ない場合があっ
た。
【0006】また、特開平11−302795号公報には、住宅
環境での耐食性、溶接性および溶接部特性に優れた建築
構造用ステンレス鋼が記載されている。この鋼は、耐溶
接割れ性および溶接熱影響部の靭性には優れていたが、
特に注意すべき溶接部の耐粒界腐食性への対応がなされ
ていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明の目
的は、上記の問題を解決し、特に溶接熱影響部の耐粒界
腐食性を顕著に改善した、溶接熱影響部の靭性に優れ、
さらに低強度で高い伸びを持つ、曲げ加工性に優れる、
構造用ステンレス鋼を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記の目的
を達成すべく、ステンレス鋼の成分が,母材の耐食性
(粒界腐食ではなく、孔食あるいは肉厚減少のような均
一な腐食への耐性を指す:以下、同様)および機械的性
質と、溶接部の耐粒界腐食性および靭性に及ぼす影響に
ついて詳細に調査した。その結果、以下の(a)および
(b)を同時に達成することにより、特にCrC の粒界析
出に伴う粒界腐食が顕著に防止されることを新たに見出
した。
【0009】(a)C含有量を極力低減し、 CrC の粒界
析出を減少させる。 すなわち、C含有量の低減は、 溶接
熱影響部の靭性向上および強度を低下させ、加工性を改
善する効果をも示す。 そして、Cの低減に伴うマルテン
サイト生成量の減少はN添加で補う。
【0010】(b)NおよびMoの添加により、Cr炭窒化
物の析出が抑制される結果、CrC の粒界析出が低減す
る。同時に、NおよびMoの添加は、母材の耐食性を改善
させる効果も示す。
【0011】以上の知見を得るに到った実験結果の一例
として、13質量%Cr−0.8 質量%Mn−1.5 質量%Ni−1
質量%Moをベースに、CおよびNの含有量を変えた鋼に
ついて、 溶接熱影響部の耐粒界腐食性を調べた結果につ
いて、図1に示す。 なお、耐粒界腐食性は、板厚3mmの
熱延焼鈍板を酸洗してから、Y308 ワイヤを用いてMIG
による突き合わせ溶接を行い、 余盛を研削した溶接部分
を沸騰硫酸・硫酸銅溶液中に16時間浸漬したのち、 溶接
部に曲げ試験を行って、 溶接熱影響部の粒界腐食の有無
を調べて評価した。 図1に示すように、C含有量が0.02
質量%より低い領域において,N含有量が0.05質量%か
ら0.01質量%の間では、 粒界腐食は見られなかった。
【0012】この発明は、上記の知見に基づいて完成し
たものであり、 その構成は次の通りである。 (i) C:0.02質量%未満、Si:1.0 質量%以下、Mn:1.
5 質量%以下、Al:0.10質量%以下、 Cr:11.0質量%以
上15.0質量%以下、Ni:0.8 質量%超え3.0 質量%未
満、Mo:0.5 質量%以上2.0 質量%以下およびN:0.05
質量%超え0.10質量%以下を、下記式(1) および(2) を
満足する範囲にて含有し、かつP:0.04質量%以下およ
びS:0.01質量%以下に抑制し、残部が実質的にFeおよ
び不可避的不純物の成分組成になることを特徴とする耐
粒界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼。 記 [Cr]+1.5×[Mo]+1.2×[Ni]+ 25×[N] ≧17.0----(1) [Cr]+0.4×[Si]+0.3×[Mo]-0.4×[Mn]-0.7×[Ni]-35 ×[C]-10×[N] ≦12.0 ----(2) ここで、[Cr]、[Mo]、[Ni]、 [N] 、[Si]、[Mn]および
[C] は、 それぞれCr、Mo、Ni、N、Si、MnおよびCの
含有量(質量%)
【0013】(ii)上記(i) に記載の成分組成に、さらに
Cu:2 質量%以下およびCo:2 質量%以下の1種または
2種を含有し、かつ下記式(3) および(4) を満足するこ
とを特徴とする耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス
鋼。 記 [Cr]+1.5×[Mo]+1.2×[Ni]+ 25×[N]+ 0.5×[Cu]+0.3×[Co]≧17.0---(3) [Cr]+0.4×[Si]+0.3×[Mo]-0.4×[Mn]-0.7×[Ni]-0.6×[Cu]- 35×[C] -10 ×[N] ≦12.0---(4) ここで、[Cr]、[Mo]、[Ni]、 [N] 、[Cu]、[Co]、[S
i]、[Mn]および [C]は、 それぞれCr、Mo、Ni、N、C
u、Co、Si、MnおよびCの含有量(質量%)
【0014】(iii) 上記(i) または(ii)において、さら
にTi:0.2 質量%以下、Nb:0.2 質量%以下、V:0.2
質量%以下、Zr:0.2 質量%以下およびTa:0.2 質量%
以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする
耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼。
【0015】(iv)上記(i) ないし(iii) のいずれかにお
いて、さらにB:0.0050質量%以下およびCa:0.0050質
量%以下の1種または2種を含有することを特徴とする
耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼。
【0016】(v) 上記(i) ないし(iv)のいずれかにおい
て、さらにW:0.10質量%以下およびMg:0.01質量%以
下の1種または2種を含有することを特徴とする耐粒界
腐食性に優れた構造用ステンレス鋼。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、この発明のステンレス鋼
(以下、本発明鋼という)について詳細に説明する。 C:0.02質量%未満 本発明鋼において、 Cは、溶接後の冷却中に、 600 〜70
0 ℃付近でCrと結合してCrC となって粒界に析出し、 Cr
欠乏層を形成させるため、 粒界腐食を促進する元素であ
る。 Cの含有量が0.02質量%以上になると、その悪影響
が顕著となると共に、 溶接熱影響部の靭性が低下し、さ
らに強度も高くなり加工性も低下するため、0.02 質量%
未満に限定する。 特に、 耐粒界腐食性の観点からは、 上
限を0.012 質量%とすることが望ましい。
【0018】Si:1.0 質量%以下 Siは、 脱酸剤として必要な元素であるとともに、 鋼の強
度を高める元素である。 しかしながら、その含有量が1.
0 質量%を超えると、鋼を顕著に脆化させて溶接熱影響
部の靭性を低下するばかりでなく、 強度が高くなり加工
性も低下することから、 1.0 質量%を上限とする。 特
に、溶接熱影響部の靭性の観点からは、0.50質量%以下
の含有が望ましい。
【0019】Mn:1.5 質量%以下 Mnは、高温(およそ1000〜1100℃)でのオーステナイト
相生成を促進し、 溶接熱影響部に微細なマルテンサイト
組織を50体積%以上生成させることにより、 構造用ステ
ンレス鋼に要求れる溶接部の靭性を向上させる、効果を
有する。 そのためには、0.5 質量%を超えて添加するこ
とが好ましい。 しかし、過剰に添加すると耐食性を低下
させ、 また鋼の強度を高めて加工性を低下させることか
ら、1.5質量%以下に限定する。 特に、耐食性の観点か
らは、1.0 質量%以下の含有が望ましい。
【0020】Al:0.10質量%以下、 Alは、製鋼上脱酸剤として必要であるが、 過度の添加は
介在物の形成し、 靭性の低下が顕著になるため、0.10質
量%以下に限定する。 特に、溶接熱影響部の靭性確保の
観点からは、0.05質量%以下とすることが好ましい。な
お、脱酸剤として用いるためには、0.01質量%以上で含
有することが好ましい。
【0021】Cr:11.0質量%以上15.0質量%以下 Crは、ステンレス鋼の特徴である耐食性の改善に有効な
元素成分であり、 十分な耐食性および耐粒界腐食性を得
るためには、11.0質量%以上が必要であり、 これを下限
とする。 特に、耐食性の観点から、Crは12.0質量%以上
添加することが好ましい。 一方、Crは鋼の靭性を低下さ
せ、特に15.0質量%を超えて含有すると、靭性の低下が
著しくなるため、15.0質量%を上限とする。特に、靭性
の観点からは、Crを14.0質量%以下とすることが望まし
い。
【0022】Ni:0.8 質量%超え3.0 質量%未満 Niは、 ステンレス鋼の特徴である耐食性を向上させ、 ま
た高温(およそ1000〜1100℃)でのオーステナイト相生
成を促進し、 溶接熱影響部に微細なマルテンサイト組織
を50体積%以上生成させることにより、 構造用ステンレ
ス鋼の特徴である溶接部靭性を向上させる。 この効果を
得るためには、0.8 質量%を超えて添加する必要があ
る。 しかしながら、3.0 質量以上%を添加しても、その
効果が飽和するばかりでなく、 鋼の強度が高くなり加工
性が低下し、 また素材のコストが高くなるため、3.0 質
量%未満の含有とする。
【0023】Mo:0.5 質量%以上2.0 質量%以下 Moは、耐食性の向上に有効な元素であり、十分な耐食性
および耐粒界腐食性の改善効果を得るためには、0.5 質
量%以上の含有が必要である。 一方、2.0 質量%を超え
て含有すると、 その効果が飽和するばかりでなく、 靭性
を低下させ、 また強度が高くなり加工性を低下するた
め、2.0 質量%を上限とする。 特に、耐食性および耐粒
界腐食性の観点からは、1.0 質量%以上で含有すること
が望ましい。
【0024】N:0.05質量%超え0.10質量%以下 Nは、 本発明鋼において特に重要な元素であり、鋼中の
固溶状態のNは、 耐食性を改善させる。 また、 Nの添加
は、CrC の析出を抑制する効果があり、 耐粒界腐食性を
も改善させる。 この効果を得るためには、0.05質量%を
超える含有が必要である。 一方、Nを過度に含有する
と、固溶できなくなったNがCrN として粒界に析出する
ため、 耐粒界腐食性が低下する。 また、Cと同様に溶接
部靭性を低下させ、 さらには強度を高めて加工性を低下
させる。 すなわち、含有量が0.10質量%を超えると、そ
の悪影響が顕著となるため、0.10質量%以下に限定す
る。 特に、 溶接部靭性の観点から、 上限は0.07質量%と
することが望ましい。
【0025】P:0.04質量%以下 Pは、 熱間加工性を顕著に低下させる元素であり、 出来
る限り含有量が低い方が製造性が良好である。 したがっ
て0.04質量%を上限とする。 熱間加工性の観点からは、
含有量を0.02質量%以下にすることが望ましい。 なお、
あまりに低くすると、製鋼のコストの上昇を招くことに
なる。
【0026】S:0.01質量%以下 Sは、 Pと同様に、 含有量が高いと熱間加工性が顕著に
低下するため、上限を0.01質量%とする。 製鋼時の脱S
処理にかかる経済的制限から熱間加工性の観点からは,
含有量を0.003 質量%以下にすることが望ましい。 な
お、あまりに低くすると、製鋼コストの上昇を招くこと
になる。
【0027】また、 本発明鋼では、 上記した基本成分組
成において、上記した式(1) および(2) の2式を満たす
ことが必須となる。すなわち上記(1)式は、 母材の耐食
性に及ぼす各種元素の影響を定式化したものであり、 こ
の左辺が17.0以上であれば,SUS430(16質量%Cr含有
鋼)以上の耐食性が得られる。 母材の耐食性の改善とと
もに、 耐粒界腐食性も改善される。
【0028】また、上記(2)式において、Cr,Si,Moは
いわゆるフェライト生成元素であり、構造用ステンレス
鋼の特徴である高温(およそ1000〜1100℃)でのオース
テナイト相を生じにくくする。 また,Mn、Ni、(Cu)、
CおよびNはオーステナイト生成元素であり、高温での
オーステナイト相を生じやすくする。すなわち、(2)式
の左辺の値が大きいほど高温でのオーステナイト相が生
じにくくなることを意味する。 そして、 発明者らが詳細
に調査した結果、溶接熱影響部の靭性を向上させるに
は、溶接時の入熱による溶接熱影響部の結晶粒の粗大化
を防止し、微細化することが重要である。 そして、上記
(2) 式の左辺の値が12.0以下であれば、高温でのオース
テナイト相から冷却される際のマルテンサイト相への変
態により、溶接熱影響部に微細なマルテンサイト組織が
50体積%以上生じるために、 溶接熱影響部の靭性が顕著
に向上する。
【0029】一方、上記(2) 式の左辺の値が12.0を超え
る場合には、フェライト単相あるいは高温で極少量のオ
ーステナイト相しか生じないため、溶接熱影響部でフェ
ライト粒が粗大化し、靭性が顕著に低下する。以上の知
見により、溶接熱影響部の靭性向上のため、上記(2) 式
の左辺の値を12.0以下に限定した。
【0030】なお、本発明鋼においては、上記した基本
成分に加えて、後述するCuおよびCoの1種または2種を
添加することが可能であり、この場合は、上記した式
(1) および(2) に替えて、上記した式(3) および(4) を
満足することが肝要である。但し、式(3) および(4) に
て表される意義は、上記の式(1) および(2) と同様であ
る。
【0031】本発明鋼においては、上記した基本成分に
加えて、以下の各成分を必要に応じて添加することが可
能である。 Cu:2 質量%以下およびCo:2 質量%以下の1種または
2種 CuおよびCoは、 Moと同様に耐食性の改善に有効な元素で
あるため、 必要に応じて添加する。 十分な耐食性および
耐粒界腐食性の改善効果を得るためには、 それぞれ0.3
質量%以上は添加することが好ましい。一方、それぞれ
2質量%を超えて含有すると、 効果が飽和するばかりで
なく、 靭性および加工性を低下させるため、2質量%を
上限とする。
【0032】Ti,Nb,V,ZrおよびTaの1種または2種
以上をそれぞれ0.2 質量%以下 Ti,Nb,V ,ZrおよびTaは、炭化物を形成しやすい元素
であり, CrC の析出を防止し耐粒界腐食性を改善するた
め、必要に応じて添加する。 しかしながら、0.2 質量%
を超えて添加すると、これらの炭窒化物が粒界に析出す
るようになり、靭性が低下するため、0.2 質量%を上限
とする。なお、Ti,Nb,V ,ZrおよびTaの添加効果は微
量添加によっても得られるから、特に下限を設ける必要
はない。
【0033】B:0.0050質量%以下およびCa:0.0050質
量%以下の1種または2種 BおよびCaは、微量の添加で鋼の熱間加工性を向上する
効果があり、必要に応じて添加する。 しかしながら,0.
0050質量%を超えて添加しても、効果が飽和するばかり
でなく、耐食性が低下するため、0.0050質量%を上限と
する。なお、BおよびCaの添加効果は微量添加によって
も得られるから、特に下限を設ける必要はない。
【0034】W:0.10質量%以下およびMg:0.01質量%
以下の1種または2種 WおよびMgは、鋼の耐食性を改善する効果があり、 必要
に応じて添加する。 しかしながら、WおよびMgはそれぞ
れ0.10質量%および0.01質量以上で含有すると、靭性を
低下させるため、WおよびMgはそれぞれ0.10質量%およ
び0.01質量%以下に限定する。 なお、WおよびMgの添加
効果は微量添加によっても得られるから、特に下限を設
ける必要はない。
【0035】本発明鋼は、上記成分以外は実質的にFeお
よび不可避的不純物からなる。 すなわち、残部にFe以外
にアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素および
遷移金属などが少量含有されることを意味する。これら
の元素の少量の含有は、本発明の効果を何ら妨げるもの
ではない。
【0036】ここで、本発明の鋼を製造する方法は、特
に限定されず、ステンレス鋼の製造の一般に従えばよ
い。例えば、製鋼は、前記基本成分および必要に応じて
添加される成分とを、転炉あるいは電気炉等で溶製し、
VOD (Vacuum Oxygen Decarburization )あるいはAOD
(Argon Oxygen Decarurization )により2次精錬を行
う方法が好適である。溶製した溶鋼は、公知の鋳造方法
にしたがって鋼素材とすることができるが、生産性およ
び品質の観点から、連続鋳造法を適用することが好まし
い。
【0037】次いで、連続鋳造して得られた鋼素材は、
1000〜1250℃に加熱され、熱間圧延により所望の板厚の
熱延板とされる。この熱延板は、必要に応じて、好まし
くは600 〜800 ℃のバッチ式焼鈍を施した後、酸洗等に
より脱スケールされて製品となる。 また、用途によって
は、冷間圧延を施し、700 〜800 ℃の連続焼鈍後に酸洗
を施して、冷延焼鈍板としたのち、薄板製品となる。
【0038】なお、本発明鋼に施す溶接方法としては、
MIG 、MAG およびTIG 等のアーク溶接、スポット溶接、
そしてシーム溶接などがすべて適用可能である。本発明
鋼は,C含有量が十分に低く、 溶接割れが防止されてい
るため、 溶接後の後熱処理が不要で、 溶接ままでも構造
材として十分使用可能であるが、 強度の調整などのため
に、 後熱処理を行っても良い。
【0039】
【実施例】以下、この発明の実施例および比較例を挙
げ、この発明をより具体的に説明する。まず、表1に示
す化学組成を有する50kg鋼塊を真空溶解炉で溶製し、通
常の熱間圧延により厚さ3mmの熱延板とした。その後、
アルゴン雰囲気中にて700 ℃×10時間の加熱処理後徐冷
する、焼なまし熱処理を行ってから、酸洗で脱スケール
を行って供試材とした。 かくして得られた供試材から、
寸法70mm×150mm のサンプルを採取し、JIS Z2371 に準
拠した塩水噴霧試験(SST)を24時間行って試験面の発錆
面率を測定し、耐食性を評価した。
【0040】また、 供試材から採取した試験片に、MIG
突き合わせ溶接(ワイヤY308 ,電流:240A,電圧:19
V,溶接速度:9mm/s,シールドガス:100 %Arを20
リットル/分、 ルートギャップ:1 mm)を行い、 耐粒界
腐食性を調べるため、 溶接部を沸騰硫酸・硫酸鋼溶液中
に入れたのち、 曲げ試験を行って、 溶接熱影響部の粒界
腐食割れの有無を調べた。 試験溶液は,1.8 %H2SO4
6.4 %CuSO4 であり、銅片を試験終了後も残存するよう
に添加した。 なお、試験片は、 図2に示すサイズとし、
溶接余盛を研削したのち、 溶接熱影響部を中心にして、
寸法25mm×70mmを切り出した。 この試験片を試験溶液中
に入れ連続16時間沸騰試験を行ったのち、試験溶液から
取り出し、 溶接熱影響部を中心に曲げ半径3.0mm の180
度曲げを行い、 曲げの外側を拡大鏡で観察し、 粒界腐食
による割れの有無を調べた。
【0041】さらに、 溶接部靭性を評価するため、 図3
に示すサイズとし、 溶接余盛を研削した後、 溶接熱影響
部にノッチ加工を施し、 JIS Z2242に準拠したシャルピ
ー衝撃試験を行い、 0℃でのシャルピー衝撃値を測定し
た。さらにまた、JIS Z2201の13号B形状の試験片を採
取し、 JIS Z2241に準拠した引張試験により、 圧延方向
の破断強度および破断伸びを測定した。以上の測定並び
に評価結果を、表1に併記する。
【0042】なお、塩水噴霧試験の発錆面積率は30%以
下、試験温度0℃での溶接熱影響部のシャルピー衝撃値
(vEO ℃)は50J /cm2 以上、そして破断伸びは28%以
上であれば、 実使用環境における特性に優れ、この発明
で所期する性能が得られていることになる。
【0043】
【表1】
【0044】表1から明らかなように、この発明に従う
ステンレス鋼は、母材の耐食性、 溶接部の耐粒界腐食
性、 さらに溶接熱影響部の靭性が優れていることが分か
る。 また、 強度が低く伸びが高いため、 加工性にも優れ
ている。 比較鋼は、 これらのいずれかの特性が本発明鋼
に比べて劣っている。
【0045】
【発明の効果】以上述べたように、 この発明によれば、
溶接部の耐粒界腐食性が顕著に改善され、 しかも溶接熱
影響部の靭性に優れかつ加工性にも優れた、構造用に適
したステンレス鋼を提供できる。本発明鋼は、 例えば、
溶接が必須であり、 曲げ等の加工性が必要となる、建築
土木構造物にとりわけ適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 MIG 溶接部の粒界腐食試験結果の一例を示す
図である。
【図2】 MIG 溶接部の粒界腐食試験片の形状を示す図
である。
【図3】 MIG 溶接部のシャルピー衝撃試験片の形状を
示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古君 修 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.02質量%未満、 Si:1.0 質量%以下、 Mn:1.5 質量%以下、 Al:0.10質量%以下、 Cr:11.0質量%以上15.0質量%以下、 Ni:0.8 質量%超え3.0 質量%未満、 Mo:0.5 質量%以上2.0 質量%以下および N:0.05質量%超え0.10質量%以下を、下記式(1) およ
    び(2) を満足する範囲にて含有し、かつ P:0.04質量%以下および S:0.01質量%以下 に抑制し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物の成
    分組成になることを特徴とする耐粒界腐食性に優れた構
    造用ステンレス鋼。 記 [Cr]+1.5×[Mo]+1.2×[Ni]+ 25×[N] ≧17.0----(1) [Cr]+0.4×[Si]+0.3×[Mo]-0.4×[Mn]-0.7×[Ni]-35 ×[C]-10×[N] ≦12.0 ----(2) ここで、[Cr]、[Mo]、[Ni]、 [N] 、[Si]、[Mn]および
    [C] は、 それぞれCr、Mo、Ni、N、Si、MnおよびCの
    含有量(質量%)
  2. 【請求項2】請求項1に記載の成分組成に、さらに Cu:2 質量%以下および Co:2 質量%以下 の1種または2種を含有し、かつ下記式(3) および(4)
    を満足することを特徴とする耐粒界腐食性に優れた構造
    用ステンレス鋼。 記 [Cr]+1.5×[Mo]+1.2×[Ni]+ 25×[N]+ 0.5×[Cu]+0.3×[Co]≧17.0---(3) [Cr]+0.4×[Si]+0.3×[Mo]-0.4×[Mn]-0.7×[Ni]-0.6×[Cu]- 35×[C] -10 ×[N] ≦12.0---(4) ここで、[Cr]、[Mo]、[Ni]、 [N] 、[Cu]、[Co]、[S
    i]、[Mn]および [C]は、 それぞれCr、Mo、Ni、N、C
    u、Co、Si、MnおよびCの含有量(質量%)
  3. 【請求項3】請求項1または2において、さらに Ti:0.2 質量%以下、 Nb:0.2 質量%以下、 V:0.2 質量%以下、 Zr:0.2 質量%以下および Ta:0.2 質量%以下 の1種または2種以上を含有することを特徴とする耐粒
    界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼。
  4. 【請求項4】請求項1ないし3のいずれかにおいて、さ
    らに B:0.0050質量%以下および Ca:0.0050質量%以下 の1種または2種を含有することを特徴とする耐粒界腐
    食性に優れた構造用ステンレス鋼。
  5. 【請求項5】請求項1ないし4のいずれかにおいて、さ
    らに W:0.10質量%以下および Mg:0.01質量%以下 の1種または2種を含有することを特徴とする耐粒界腐
    食性に優れた構造用ステンレス鋼。
JP2001307780A 2001-10-03 2001-10-03 耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼 Expired - Fee Related JP4013515B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001307780A JP4013515B2 (ja) 2001-10-03 2001-10-03 耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001307780A JP4013515B2 (ja) 2001-10-03 2001-10-03 耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003113446A true JP2003113446A (ja) 2003-04-18
JP4013515B2 JP4013515B2 (ja) 2007-11-28

Family

ID=19127193

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001307780A Expired - Fee Related JP4013515B2 (ja) 2001-10-03 2001-10-03 耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4013515B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019139017A1 (ja) 2018-01-09 2019-07-18 山陽特殊製鋼株式会社 造形用のステンレス鋼粉末

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019139017A1 (ja) 2018-01-09 2019-07-18 山陽特殊製鋼株式会社 造形用のステンレス鋼粉末
KR20200104288A (ko) 2018-01-09 2020-09-03 산요오도꾸슈세이꼬 가부시키가이샤 조형용 스테인레스강 분말
CN114134427A (zh) * 2018-01-09 2022-03-04 山阳特殊制钢株式会社 造型用的不锈钢粉末
CN114134427B (zh) * 2018-01-09 2023-07-07 山阳特殊制钢株式会社 造型用的不锈钢粉末

Also Published As

Publication number Publication date
JP4013515B2 (ja) 2007-11-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101846759B1 (ko) 강판 및 그 제조 방법
JPWO2019189871A1 (ja) 二相ステンレスクラッド鋼板およびその製造方法
KR102002241B1 (ko) 구조관용 강판, 구조관용 강판의 제조 방법, 및 구조관
JP7005396B2 (ja) 自動車締結部品用フェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板
JP6274370B1 (ja) フェライト系ステンレス鋼板
US7572407B2 (en) Martensitic stainless steel sheet and method for making the same
KR101971772B1 (ko) 대입열 용접용 강판의 제조 방법
US7429302B2 (en) Stainless steel sheet for welded structural components and method for making the same
JP3290595B2 (ja) 靱性、溶接性に優れた高張力厚鋼板の製造方法
JP7223210B2 (ja) 耐疲労特性に優れた析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼板
JP4457492B2 (ja) 加工性と溶接性に優れたステンレス鋼
JP4273457B2 (ja) 穴拡げ加工性に優れた構造用ステンレス鋼板
KR101940427B1 (ko) 페라이트계 스테인리스 강판
JP4192576B2 (ja) マルテンサイト系ステンレス鋼板
EP1378580A1 (en) Structural Fe-Cr steel sheet, manufacturing method thereof, and structural shaped steel
JP4013515B2 (ja) 耐粒界腐食性に優れた構造用ステンレス鋼
JP3975882B2 (ja) 溶接部の加工性並びに靭性に優れた高耐食性低強度ステンレス鋼とその溶接継手
JPH10102212A (ja) 溶接溶け込み性に優れるフェライト系ステンレス鋼板
JP3622246B2 (ja) 強度、靭性及び溶接性に優れた極厚h形鋼の製造方法
JP3933020B2 (ja) すみ肉溶接継手を形成した際の該すみ肉溶接継手の疲労特性及び靱性に優れたステンレス鋼
JP4325243B2 (ja) 耐粒界腐食性及び加工性に優れた溶接構造用ステンレス鋼板
JP7127751B2 (ja) 鋼板およびその製造方法
EP4269627A1 (en) Precipitation-hardened martensitic stainless steel having excellent fatigue-resistance characteristics
JP4385502B2 (ja) 溶接部の加工性及び靭性に優れた溶接管用マルテンサイト系ステンレス鋼
JP2022106590A (ja) 電縫鋼管および電縫鋼管の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040728

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20051227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060131

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060328

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070821

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070903

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100921

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4013515

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100921

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110921

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110921

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120921

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120921

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130921

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees