JP2003109490A - 電子放出素子、その製造方法、電子源及び画像形成装置 - Google Patents

電子放出素子、その製造方法、電子源及び画像形成装置

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JP2003109490A
JP2003109490A JP2001299846A JP2001299846A JP2003109490A JP 2003109490 A JP2003109490 A JP 2003109490A JP 2001299846 A JP2001299846 A JP 2001299846A JP 2001299846 A JP2001299846 A JP 2001299846A JP 2003109490 A JP2003109490 A JP 2003109490A
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thin film
carbon
electrodes
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Hirokatsu Miyata
浩克 宮田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子放出素子を局所的な有機ガス圧分布の影
響を受けない同一の条件で活性化することで、均一性に
優れた電子放出素子を提供する。 【解決手段】 基板上に形成した一対の電極間に電子放
出部を含む導電性薄膜を有する表面伝導型電子放出素子
において、該基板の表面に細孔内に炭素を担持したメソ
ポーラスシリカ薄膜が設けられている電子放出素子。上
記炭素を担持したメソポーラスシリカ薄膜中の細孔構造
が二次元ヘキサゴナル構造であり、かつ該細孔が前記一
対の電極間の電界の方向に対して平行に配向しているの
が好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表面伝導型電子放出
素子、その製造方法及び該電子放出素子を用いた電子
源、画像形成装置に関し、詳しくは素子特性の均一化の
ための構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子としては大別し
て熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種類
のものが知られている。冷陰極電子放出素子には電界放
出型(以下、「FE型」という。)、金属/絶縁層/金
属型(以下、「MIM型」という。)や表面伝導型電子
放出素子等がある。FE型の例としてはW.P.Dyk
e&W.W.Dolan、“Field emissi
on”、Advancein Electron Ph
ysics、8、89(1956)あるいはC.A.S
pindt,“PHYSICAL Propertie
s of thin−film field emis
sion cathodes withmolybde
nium cones”,J.Appl.Phys.,
47,5248(1976)等に開示されたものが知ら
れている。
【0003】MIM型の例としてはC.A.Mead、
“Operation of Tunnel−Emis
sion Devices”、J.Apply.Phy
s.、32、646(1961)等に開示されたものが
知られている。
【0004】表面伝導型電子放出素子型の例としては、
M.I.Elinson、“Radio Eng. E
lectron Pys.”、10、1290,(19
65)等に開示されたものがある。
【0005】表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成
された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことに
より、電子放出が生ずる現象を利用するものである。こ
の表面伝導型電子放出素子としては、前記エリンソン等
によるSnO2 薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの
[G.Dittmer:”Thin Solid Fi
lms”、9、317(1972)]、In23 /S
nO2 薄膜によるもの[M.Hartwell and
C.G.Fonstad:”IEEE Trans.
ED Conf.”、519(1975)]、カーボ
ン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26巻、第1
号、22頁(1983)]等が報告されている。
【0006】これらの表面伝導型電子放出素子の典型的
な例として前述のM.ハートウェルの素子構成を図7に
模式的に示す。同図において6は基板である。4は導電
性膜で,H型形状のパターンに、スパッタで形成された
金属酸化物薄膜等からなり,後述の通電フォーミングと
呼ばれる通電処理により電子放出部5が形成される。
尚、図中の素子電極間隔Lは、0.5〜1mm、W’
は、0.1mmで設定されている。
【0007】従来、これらの表面伝導型電子放出素子に
おいては、電子放出を行う前に導電性膜4を予め通電フ
ォーミングと呼ばれる通電処理を施すことが一般的であ
った。即ち、通電フォーミングとは前記導電性膜4の両
端に直流電圧あるいは非常にゆっくりとした昇電圧、例
えば1V/分程度を印加通電し、導電性膜を局所的に破
壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態に
した電子放出部5を形成することである。尚、電子放出
部5は導電性膜4の一部に亀裂が発生しその亀裂付近か
ら電子放出が行われる。前記通電フォーミング処理をし
た表面伝導型電子放出素子は、上述導電性膜4に電圧を
印加し、素子に電流を流すことにより、上述電子放出部
5より電子を放出せしめるものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述の表面伝導型電子
放出素子は、構造が単純で製造も容易であることから、
大面積にわたって多数素子を配列形成できる利点があ
る。そこで、この特徴を生かせるようないろいろな応用
が研究されている。例えば、荷電ビーム源、表示装置等
があげられる。多数の表面伝導型電子放出素子を配列形
成した例としては、後述する様に、並列に表面伝導型電
子放出素子を配列し、個々の素子の両端を配線(共通配
線とも呼ぶ)で、それぞれ結線した行を多数行配列した
電子源があげられる(例えば、特開昭64−03133
2号公報、特開平1−283749号公報、特開平12
−257552号公報等)。
【0009】また,特に表示装置等の画像形成装置にお
いては、近年、液晶を用いた平板型表示装置が、CRT
に替わって、普及してきたが、自発光型でないため、バ
ックライトを持たなければならない等の問題点があり、
自発光型の表示装置の開発が、望まれてきた。自発光型
表示装置としては、表面伝導型電子放出素子を多数配置
した電子源と、該電子源より放出された電子によって、
可視光を発光せしめる蛍光体とを組み合わせた表示装置
である画像形成装置があげられる(例えば、米国特許第
5066883号)。
【0010】これら従来の表面伝導型電子放出素子にお
いては、電子放出部を形成するために、導電性膜を通電
処理し、該導電性膜の一部に間隙を形成せしめる工程
(フォーミング工程)を施し、このフォーミングを施し
た素子に対して、活性化工程を施すことによって素子は
より多くの電子を放出するようになる。
【0011】従来の活性化工程は、有機物質のガスを含
有する雰囲気下で、電圧パルスを繰り返し印加すること
で行うもので、この処理により雰囲気中に存在する有機
物質から炭素、或いは炭素化合物が導電性膜の間隙内及
びその周囲の導電性膜上に堆積し、素子電流If、放出
電流Ieが著しく変化して増加するようになり、電子放
出部が形成される。
【0012】しかし、この様な従来の活性化工程を用い
た場合、有機物質のガスを所望の圧力で、均一に導入す
るために比較的長い時間が必要である場合が多く、ま
た、真空容器のサイズ等の条件によっては有機物質の圧
力の均一性に問題があり、素子特性の均一性に問題が生
じる場合があった。
【0013】本発明は、上述した問題に鑑みなされたも
ので、活性化工程に要する時間を短縮し、かつ、全ての
電子放出素子(以下、素子と略記して示す場合もある)
を、局所的な有機ガス圧分布の影響を受けない同一の条
件で活性化することで、均一性に優れた電子放出素子お
よびそれを用いた電子源を提供することを目的とするも
のである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的は、以下の構成
により達成される。即ち、本発明は、基板上に形成した
一対の電極と、該電極間に配置された間隙を有する導電
性膜と、該間隙内に配置された炭素あるいは炭素化合物
とを有する電子放出素子において、該基板の表面に、細
孔内に炭素を担持したメソポーラスシリカ薄膜が設けら
れていることを特徴とする電子放出素子である。
【0015】上記炭素を担持したメソポーラスシリカ薄
膜中の細孔構造が二次元ヘキサゴナル構造であり、かつ
該細孔が前記一対の電極間の電界の方向に対して平行に
配向しているのが好ましい。
【0016】また、本発明は、基板上に形成した一対の
電極と、該電極間に配置された間隙を有する導電性膜
と、該間隙内に配置された炭素あるいは炭素化合物とを
有する電子放出素子の製造方法において、基板の表面に
細孔内に炭素を担持したメソポーラスシリカ薄膜を形成
する工程、該メソポーラスシリカ薄膜上に一対の電極と
導電性膜を設け、該導電性膜に間隔を形成する工程、該
間隔を形成した後に前記導電性膜に電圧を印加する工程
を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法であ
る。
【0017】また、本発明は、上記の電子放出素子を複
数個並列に配置し、結線してなる素子列を少なくとも1
列以上有し、各素子を駆動するための配線がはしご状に
配置されていることを特徴とする電子源である。
【0018】また、本発明は、上記の電子放出素子がX
方向及びY方向に行列状に複数個配され、同じ行に配さ
れた複数の電子放出素子の電極の一方はX方向の配線に
共通に接続され、同じ列に配された複数の電子放出素子
の前記電極の他方はY方向の配線に共通に接続されてい
ることを特徴とする電子源である。
【0019】さらに、本発明は、上記の電子源と、該電
子源から放出される電子線の照射により発光することに
より画像を形成する発光体からなる画像形成部材とを有
する画像形成装置である。
【0020】本発明においてシリカメソ構造体の薄膜の
形成方法は、界面活性剤と細孔壁を構成する物質の前駆
体を含む溶液中に基板を浸漬し基板表面にメソ構造体を
析出させる方法、界面活性剤と細孔壁を構成する物質の
前駆体とを含む溶液を基板上にディップコートする方
法、または界面活性剤と細孔壁を構成する物質の前駆体
を含む溶液を基板上にキャストする方法等の中から適宜
選択される。
【0021】細孔方向が揃ったシリカメソ構造体薄膜
は、基板表面に高分子化合物のラングミュア−ブロジェ
ット膜や、ラビング処理を施した高分子化合物を形成し
た基板を用い、界面活性剤と細孔壁を構成する物質の前
駆体を含む溶液中に基板を浸漬し基板表面にメソ構造体
を析出させる方法によって作製することができるが、こ
れら以外の方法であっても、良好な細孔の配向が達成で
きる手法であれば適用することが可能である。
【0022】これらの方法で作製したメソ構造体薄膜か
ら界面活性剤を除去し、中空のメソ細孔を有するメソポ
ーラス材料の薄膜が得られる。細孔中に界面活性剤を含
んだメソ構造体から界面活性剤を除去する方法として
は、一般的な方法を用いることができる。例えば、焼
成、溶剤による抽出、オゾンによる分解、超臨界状態の
流体による抽出等の方法から、最適なものが選択され
る。
【0023】細孔内に炭素を担持したメソポーラスシリ
カ薄膜が形成された基板は、基板上に作製した上記メソ
ポーラスシリカ薄膜の細孔内に有機物を含浸、または吸
着させた後、不活性または還元性の雰囲気下での焼成等
の手法で炭素化することによって得ることができる。メ
ソポーラスシリカの細孔径は2〜50nmの領域にある
ため、本発明の電子放出素子の基板中では非常に細かい
レベルでのSiO2 と炭素との混合が達成される。ま
た、前述した、配向性二次元ヘキサゴナル構造の細孔を
有するメソポーラスシリカ薄膜を用いれば、ナノメータ
スケールで一方向に配列した炭素ロッドをシリカマトリ
クス内に作製することが可能になる。
【0024】このようにして作製した、炭素を担持した
メソポーラスシリカ薄膜上に、対向する電極、及び導電
性膜を作製し、後述するフォーミング工程、活性化工程
を施すことによって、素子は電子を放出するようにな
る。本発明の素子では、基板に含まれている炭素が活性
化工程の際の炭素源になるため、活性化時に炭素源とな
るガスを導入する必要が無く、従って複数の素子を同時
に活性化する際に問題となる面内での素子特性のばらつ
きは、非常に小さく抑えることが可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の平面
型表面伝導型電子放出素子の構成を示す模式図であり、
図1(a)は平面図、図1(b)は断面図である。図1
において1は細孔内に炭素を担持したメソポーラスシリ
カ薄膜、2と3は素子電極、4は導電性膜、5は電子放
出部、6は基板である。
【0026】細孔内に炭素を担持したメソポーラスシリ
カ薄膜が形成された基板は、基板上に作製したメソポー
ラスシリカ薄膜の細孔内に有機物を含浸、吸着させた
後、該有機物を細孔内で炭素化することによって得るこ
とができる。
【0027】まず、シリカメソ構造体の作成方法につい
て説明する。シリカメソ構造体薄膜の作製法は、溶媒蒸
発法と呼ばれるゾル−ゲル法を応用した手法と、溶液中
に保持した基板上への不均一核発生−核成長に基づく方
法の2つに大別される。
【0028】最初に、溶媒蒸発法による膜形成について
説明する。溶媒蒸発法は、臨界ミセル濃度以下の界面活
性剤と、シリカオリゴマーを含む水溶液やアルコール/
水混合溶液を、スピンコートやディップコートによって
基板上に塗布するもので、コーティング中の溶媒の乾燥
による界面活性剤濃度の上昇に従ってメソ構造が形成さ
れていくものである。この方法は、比較的反応条件が穏
やかなために基板材質の制約が小さく、また短時間で膜
作製が可能である等の利点を有している。しかし、その
一方これらの方法を用いた場合には、膜中での細孔方向
を制御することは難しい。
【0029】スピンコートやディップコートを行うため
の装置は、一般的なものを用いることができ、特に制約
は無いが、場合によっては溶液の温度を制御するための
手段、及びコーティングを行う雰囲気の温度、湿度を制
御するための手段を設ける場合もある。
【0030】例としてディップコーティングを用いたシ
リカメソ構造体の作製方法について説明する。ディップ
コーティングに用いる装置の一例を図2に模式的に示
す。図2において、21は容器、22は基板、23は前
駆体溶液(反応溶液)である。前駆体溶液23は臨界ミ
セル濃度以下の界面活性剤と、シリカオリゴマーを含む
水溶液もしくはアルコール/水混合溶液で、加水分解重
縮合触媒として作用する酸が添加されている。使用する
界面活性剤は、4級アルキルアンモニウムのようなカチ
オン性界面活性剤、ポリエチレンオキシドを親水基とし
て含む非イオン性界面活性剤等が用いられるが、特にこ
れらに限定されるものではない。また、シリカ源として
は、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランのよ
うなアルコキシドが一般的に用いられるが、これらに限
定されるわけではない。使用する界面活性剤分子の長さ
は、目的のメソ構造の細孔径に応じて決められる。ま
た、界面活性剤ミセルの径を大きくするために、メシチ
レンのような添加物を加えても良い。使用する酸も塩
酸、硝酸のような一般的なものを使用することが可能で
ある。シリカメソ構造体薄膜を作製する基板は、ホルダ
ー24を用いてロッド25に固定され、zステージ26
によって上下させる。成膜時、反応溶液23は必要に応
じてヒーター28と熱電対27を用いて所望の温度に制
御される。溶液温度の制御性を向上させるために、容器
全体を不図示の断熱容器に入れることもある。
【0031】次に溶液中に保持した基板上への不均一核
発生−核成長に基づくシリカメソ構造体薄膜作製方法に
ついて説明する。これは、臨界ミセル濃度以下の界面活
性剤と、シリカオリゴマーを含む水溶液中に保持した基
板上に結晶成長のようにシリカメソ構造体が析出するも
のである。この方法においては、一般的に溶液中の酸濃
度が高いために適用可能な基板に制約が生じ、また膜形
成に要する時間が長いものの、広い面積に均一な膜を作
製できる特長を有している。また、溶媒蒸発法によって
形成されたシリカメソ構造体薄膜では、最表面、及び基
板−膜界面では構造秩序性が高いが膜内部では構造が乱
れることがあるが、この不均一核発生−核成長に基づく
方法では完全に膜全体にわたって高秩序のシリカメソ構
造体が形成されるという利点を有している。
【0032】本発明において、この基板上への不均一核
発生−核成長に基づく方法によってシリカメソ構造体薄
膜を形成するのに用いる反応容器は、例えば図3の様な
構成のものである。反応容器の材質は、薬品、特に酸に
対する耐性を有するものであれば特に限定はなく、ポリ
プロピレンやテフロン(登録商標)のようなものを用い
ることができる。反応容器(テフロン(登録商標)容
器)31内には、耐酸性の材質の基板ホルダー(テフロ
ン(登録商標)製基板ホルダー)33が例えば図3の様
に置かれており、耐酸性の基板35はこれを用いて反応
溶液36中に保持される。膜形成中に反応溶液の組成が
変化しないようにシール34と蓋(テフロン(登録商
標)蓋)32を用いる。反応容器は、反応中に圧力がか
かっても破壊されないように、さらにステンレスのよう
な剛性の高い材質の密閉容器(不図示)に入れることも
ある。
【0033】この図において、反応溶液36は界面活性
剤水溶液に塩酸等の酸を混合し、SiO2 の等電点であ
るpH=2以下に調整したものに、シリカ源を混合した
ものである。使用する界面活性剤は、4級アルキルアン
モニウムのようなカチオン性界面活性剤、ポリエチレン
オキシドを親水基として含む非イオン性界面活性剤等が
用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、シリカ源としては、テトラエトキシシランやテト
ラメトキシシランのようなアルコキシドが一般的に用い
られるが、これらに限定されるわけではない。使用する
界面活性剤分子の長さは、目的のメソ構造の細孔径に応
じて決められる。また、界面活性剤ミセルの径を大きく
するために、メシチレンのような添加物を加えても良
い。使用する酸も塩酸、硝酸のような一般的なものを使
用することが可能である。
【0034】基板上に析出する膜の形状や構造は、界面
活性剤、酸、及びシリカ源の濃度に大きく影響されるの
みならず、基板表面の性質によっても影響を受ける。従
って、使用する基板によって反応溶液組成を最適化して
膜形成を行う必要がある。また、良好な膜を得るため
に、基板表面に対して高分子化合物や低分子化合物のコ
ーティングを行うこともある。この様な条件で基板上に
シリカのメソ構造体を析出させることができる。析出さ
せる際の温度には特に制約はなく、室温〜100℃程度
の温度領域において選択される。反応時間は数時間〜数
ヶ月程度で、時間が長いほど厚いシリカメソ構造体薄膜
が得られる。
【0035】この様にして基板上に形成されたシリカメ
ソ構造体薄膜は、純水で洗浄した後に空気中で自然乾燥
させ、最終的なシリカメソ構造体薄膜が得られる。
【0036】この基板上への不均一核発生−核成長に基
づくシリカメソ構造体薄膜作製方法を用いた場合、析出
を起こさせる基板表面に、異方性を有する高分子化合物
薄膜を形成することによって、基板上に析出するシリカ
メソ構造体中の細孔方向を制御することが可能である。
この方法は、本発明者らが考案した方法で、例えば、石
英ガラス上にポリイミドをコーティングして、これに対
して液晶配向に用いられるラビング処理を施した基板を
用いることで、一軸配向性の細孔構造を有するシリカメ
ソ構造体を得ることができる。これについては、“Ch
emistryof Materials”の第12巻
49ページに詳細な記載がなされている。また、ラビン
グを施したポリイミドの代わりにポリイミドのラングミ
ュア−ブロジェット膜を用いても細孔の一軸配向を達成
することが可能で、これについては、“Advance
d Materials”の第11巻1148ページに
記載されている。本発明でも、このような技術を用いて
細孔方向を制御したシリカメソ構造体を基板上に作製す
ることができる。しかし、この基板の表面処理による細
孔方向制御以外の方法であっても、細孔方向を良好に制
御できる方法であれば、本発明に適用することが可能で
ある。
【0037】なお、一軸配向性の細孔構造とは、細孔の
長軸方向が平均的にある単一の方向に揃っていることを
示す。細孔の配向性は、面内X線回折分析を用い、回折
ピーク強度の試料面内回転依存性を測定することによっ
て定量的に評価することが可能であり、この方法は、
“Chemistry of Materials”の
第12巻49ページに詳細な記載がなされている。細孔
の配向分布は、試料面内回転依存プロファイルにおける
ピークの半値幅で代表され、細孔の配向方向は該ピーク
の中心値として与えられる。本発明に用いられる一軸配
向性シリカメソ構造体薄膜中での細孔の配向分布は、好
ましくは配向方向に対してプラスマイナス30°以内、
さらに好ましくはプラスマイナス15°以内である。
【0038】次に、以上のようにして作製されたシリカ
メソ構造体の細孔内から界面活性剤を除去して、メソポ
ーラスシリカ薄膜を作製する方法について説明する。界
面活性剤の除去には、一般的な方法を用いることがで
き、焼成、紫外光照射により発生したオゾンによる酸化
・分解、溶剤による抽出、超臨界状態の流体による抽出
等の中から選択される。例えば、基板が耐熱性のガラス
のような場合には、空気中、550℃で10時間焼成す
ることによって、メソ構造をほとんど破壊することなく
シリカメソ構造体薄膜から完全に界面活性剤を除去し、
メソポーラスシリカ薄膜とすることができる。前述の細
孔方向の制御に用いた基板上の高分子薄膜は、膜厚が非
常に薄いために、基板からメソポーラスシリカ膜を剥離
することなく焼成によって除去することができる。この
場合、下地基板にガラスのような材料を用いると、膜と
基板との間に部分的な結合が形成されるためにメソポー
ラスシリカ薄膜の基板への密着性が非常に良好になる。
【0039】次に、このような方法で作製したメソポー
ラスシリカの細孔中で炭素を作製する。この方法は、例
えば“Journal of the America
nChemical Society”の第122巻1
0712ページに記載されているショ糖と硫酸を用いる
方法や、“Chemical Communicati
ons”の2001年559ページに記載されているジ
ビニルベンゼンを用いる方法などがあるが、これらの手
法以外にも、炭素が良好に形成できる方法であれば適用
することが可能である。
【0040】以上のような手順で基板上に作製した、細
孔内にカーボンを担持したメソポーラスシリカ薄膜上
に、フォトリソグラフィー等の手法によって素子電極を
作製する。対向する素子電極2,3の材料としては、一
般的な導体材料を用いることができる。これは例えば、
Ni,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,C
u,Pd等の金属或いは合金、及びPd,Ag,Au,
RuO2 ,Pd−Ag等の金属或いは金属酸化物とガラ
ス等から構成される印刷導体、In23 −SnO 2
の透明導電体及びポリシリコン等の半導体材料等から適
宜選択することができる。
【0041】素子電極間隔L、素子電極長さW1、導電
性膜4の形状等は、応用される形態等を考慮して、設計
される。素子電極間隔Lは、好ましくは数百nmから数
百μmの範囲とすることができ、より好ましくは、素子
電極間に印加する電圧等を考慮して1μmから100μ
mの範囲である。素子電極長さW1は、電極の抵抗値、
電子放出特性を考慮して数μmから数百μmの範囲であ
る。素子電極2、3の膜厚dは、10nmから1μmの
範囲である。
【0042】次に、この電極間に導電性膜4を形成す
る。導電性膜4の膜厚は、素子電極2、3へのステップ
カバレージ、素子電極2、3間の抵抗値及び後述するフ
ォーミング条件等を考慮して適宜設定されるが、通常は
数百pmから数百nmの範囲とするのが好ましく、より
好ましくは1nmより50nmの範囲とするのが良い。
また、その抵抗値は、Rsが10の2乗から10の7乗
Ωの値である。なお、Rsは、厚さがt、幅がwで長さ
がlの薄膜の抵抗Rを、R=Rs(l/w)とおいたと
きに現われる値で、薄膜材料の抵抗率をρとすると、R
s=ρ/tで表される。
【0043】導電性膜4を構成する材料は、Pd、P
t、Ru、Ag、Au、Ti、In、Cu、Cr、F
e、Zn、Sn、Ta、W、Pb等の金属、PdO、S
nO2 、In23 、PbO、Sb23 等の酸化物、
HfB2 、ZrB2 、LaB6 、CeB6 、YB4 、G
dB4 等の硼化物、TiC、ZrC、HfC、TaC、
SiC、WC等の炭化物、TiN、ZrN、HfN等の
窒化物、Si、Ge等の半導体、カーボン等の中から適
宜選択される。
【0044】尚、図1に示した構成だけでなく、基板1
上に導電性膜4、対向する素子電極2、3の順に積層し
た構成とすることもできる。
【0045】電子放出部5は導電性膜4の一部に形成さ
れた間隙を含む。また、電子放出部5及びその近傍の導
電性膜4には、炭素、あるいは炭素化合物を含む。
【0046】上述の表面伝導型電子放出素子の製造方法
としては様々な方法があるが、その一例を図4に模式的
に示す。以下、図1及び図4を参照しながら製造方法の
一例について説明する。図4においても、図1に示した
部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付
している。
【0047】1)石英基板6上に、界面活性剤とシリカ
オリゴマーとを含む前駆体溶液をディップコートにより
コートし、乾燥させてシリカメソ構造体薄膜を作製す
る。この後、このシリカメソ構造体薄膜を空気中で焼成
し、メソポーラスシリカ薄膜とする。これを硫酸を含ん
だショ糖水溶液に浸漬し、160℃で加熱し、細孔内に
有機物を導入する。さらにこれを真空中900℃で焼成
して、細孔内の有機物を炭化させる。この工程によって
細孔内にカーボンのロッドを担持したメソポーラスシリ
カ薄膜1が形成される。(図4(A))
【0048】2)この上に素子電極材料を堆積した後、
例えばフォトリソグラフィー技術を用いてカーボンを担
持したメソポーラスシリカ薄膜1上に素子電極2、3を
形成する。(図4(B))
【0049】3)素子電極2、3を設けた石英ガラス基
板に、有機金属溶液を塗布して有機金属薄膜を形成す
る。有機金属溶液には、前述の導電性膜の材料の金属を
主元素とする有機金属化合物の溶液を用いることができ
る。有機金属薄膜を加熱焼成処理し、リフトオフ、エッ
チング等によりパターニングし、導電性膜4を形成する
(図4(C))。ここでは、有機金属溶液の塗布法を挙
げて説明したが、導電性膜の形成法はこれに限定される
ものではなく、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆
積法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を
用いることもできる。
【0050】4)続いて、フォーミング処理を施す。フ
ォーミング処理には通電処理法、微細加工技術を用いた
方法等、種々の方法があるが、ここではその一例として
通電処理による方法を説明する。素子電極2、3間に電
源(不図示)を用いて通電を行なうと、導電性膜4の一
部に間隙が形成される。電圧波形はパルス波形が好まし
い。これにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続
的に印加する図5(a)に示した手法と、パルス波高値
を増加させながら電圧パルスを印加する図5(b)に示
した手法とがある。
【0051】図5(a)におけるT1およびT2は、電
圧波形のパルス幅とパルス間隔である。通常、T1は1
マイクロ秒〜10ミリ秒、T2は10マイクロ秒〜10
0ミリ秒の範囲で設定される。三角波の波高値(通電フ
ォーミング時のピーク電圧)は、表面伝導型電子放出素
子の形態に応じて適宜選択される。このような条件のも
と、例えば、数秒から数十分間電圧を印加する。パルス
波形は三角波に限定されるものではなく、矩形波など所
望の波形を採用することができる。
【0052】図5(b)におけるT1、T2は図5
(a)に示したのと同様とすることができる。三角波の
波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば
0.1Vステップ程度ずつ増加させることができる。
【0053】通電フォーミング処理の終了は、パルス間
隔T2中に、導電性膜を局所的に破壊、変形しない程度
の電圧を印加し、電流を測定して検知することができ
る。例えば、0.1V程度の電圧印加により流れる素子
電流を測定し、抵抗値を求めて1Mオーム以上の抵抗を
示した時通電フォーミングを終了させる。
【0054】5)次に、活性化工程と呼ばれる処理を施
す。活性化工程とは、この工程により、活性化工程前に
おける素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化して
増加する工程である。
【0055】本発明の電子放出素子の活性化等を行うた
めの真空装置は、基本特性を測定するための測定評価装
置としての機能をも兼ね備えている、図6に示すような
真空処理装置で、真空中において素子電流If、及び放
出電流Ieを測定できるような構成になっている。
【0056】活性化工程は、本発明の素子の場合、真空
中において素子電極2、3間に電圧を印加する(特に好
ましくは図5に示すようなパルス電圧の印加を繰り返
す)ことで行うことができる。この処理により、炭素あ
るいは炭素化合物が、導電性膜の間隙及びその周囲に形
成され、素子電流If,放出電流Ieが、著しく変化し
て増加するようになり、電子放出部5が形成される(図
4(D))。本発明では、活性化の際に形成される炭素
あるいは炭素化合物は表面のメソポーラスシリカの細孔
内から供給されるために、従来の活性化工程のように有
機物ガス雰囲気を作り出す必要はない。
【0057】本発明の電子放出素子の活性化過程に伴う
素子の形態の変化を電子顕微鏡で調べたところ、活性化
の進行に伴って、フォーミングの際に形成された導電性
膜の間隙部の基板が変質しており、フォーミングで導電
性膜に形成された間隙よりも狭い間隙がメソポーラスシ
リカ膜に形成されていることがわかった。本発明の素子
の活性化に伴う変化については、未だ明らかになってい
ない部分が多いが、基板の一部の形態及び組成が変形し
て、電子放出部により大きな電界が印加されるような構
造になる過程が含まれていると推測している。
【0058】活性化工程の終了判定は、素子電流Ifと
放出電流Ieを測定しながら、適宜行う。なおパルス形
状、パルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設
定される。
【0059】ここで、活性化によって電子放出部5に形
成される炭素あるいは炭素化合物とは、例えばグラファ
イト(いわいるHOPG,PG,GCを包含する。HO
PGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶
粒が20nm程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは
結晶粒が2nm程度になり結晶構造の乱れがさらに大き
くなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファ
スカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファ
イトの微結晶の混合物を指す)である。
【0060】6)このような工程を経て得られた電子放
出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程
は、真空容器内に含まれている有機物質を排気する工程
である。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から
発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、
オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的
には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気
装置を挙げることが出来る。
【0061】前記活性化の工程で、排気装置として油拡
散ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生する
オイル成分に由来する有機ガスを用いた場合は、この成
分の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の有
機成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新た
に堆積しない分圧で1.3×10-6Pa以下が好まし
く、さらには1.3×10-8Pa以下が特に好ましい。
【0062】さらに真空容器内を排気するときには、真
空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子
に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好まし
い。このときの加熱条件は、80〜200℃で5時間以
上が望ましいが、特にこの条件に限るものではなく、真
空容器の大きさや形状、電子放出素子の構成などの諸条
件により適宜選ばれる条件により行う。真空容器内の圧
力は極力低くすることが必要で、1〜3×10-6Pa以
下が好ましく、さらに1.3×10-8Pa以下が特に好
ましい。
【0063】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な
特性を維持することが出来る。
【0064】このような真空雰囲気を採用することによ
り、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、
結果として素子電流If,放出電流Ieが安定する。
【0065】本発明の表面伝導型電子放出素子は、例え
ば、特開平8−321254号公報に記載されているよ
うに、放出電流Ieに関して対する次の(1)〜(3)
の三つの特徴的性質を有する。
【0066】即ち、 (1)本素子はある電圧(しきい値電圧)以上の素子電
圧を印加すると急激に放出電流Ieが増加し、一方しき
い値電圧Vth以下では放出電流Ieがほとんど検出さ
れない。つまり、放出電流Ieに対する明確なしきい値
電圧Vthを持った非線形素子である。 (2)放出電流Ieが素子電圧Vfに単調増加依存する
ため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制御できる。 (3)アノード電極に捕捉される放出電荷は、素子電圧
Vfを印加する時間に依存する。つまり、アノード電極
に捕捉される電荷量は、素子電圧Vfを印加する時間に
より制御できる。
【0067】以上の説明より理解されるように、本発明
の適用可能な表面伝導型電子放出素子は、入力信号に応
じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。こ
の性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成し
た電子源、画像形成装置等、多方面への応用が可能とな
る。
【0068】本発明の電子放出素子の応用例としては、
本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子の複数個を
基板上に配列した、例えば電子源あるいは、画像形成装
置があげられる。
【0069】本発明の表面伝導型電子放出素子の配列に
ついては、種々のものが採用できる。一例として、図8
に示すように、電子放出素子をX方向及びY方向に行列
状に複数個配し、同じ行に配された複数の電子放出素子
の電極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列
に配された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向
の配線に共通に接続するものが挙げられる。このような
ものは所謂単純マトリクス配置である。
【0070】これとは別に、図9に示すように、並列に
配置した多数の電子放出素子の個々を両端で接続し、電
子放出素子の行を多数個配し(行方向と呼ぶ)、この配
線と直交する方向(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子
の上方に配した制御電極(グリッドとも呼ぶ)により、
電子放出素子からの電子を制御駆動するはしご状配置の
ものがある。
【0071】まず単純マトリクス配置について以下に詳
述する。本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子に
ついては、前述したとおり(1)乃至(3)の特性があ
る。即ち、表面伝導型電子放出素子からの放出電子は、
しきい値電圧以上では、対向する素子電極間に印加する
パルス状電圧の波高値と巾で制御できる。一方、しきい
値電圧以下では、殆ど放出されない。この特性によれ
ば、多数の電子放出素子を配置した場合においても、個
々の素子に、パルス状電圧を適宜印加すれれば、入力信
号に応じて、表面伝導型電子放出素子を選択して電子放
出量を制御できる。
【0072】以下この原理に基づき、本発明を適用可能
な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板につい
て、図8を用いて説明する。図8において、81は電子
源基板、82はX方向配線、83はY方向配線である。
84は表面伝導型電子放出素子、85は結線である。
【0073】m本のX方向配線82は,Dx1,Dx2,・
・・Dxmからなり,真空蒸着法,印刷法,スパッタ法等
を用いて形成された導電性金属等で構成することができ
る。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計される。Y方向
配線83は,Dy1,Dy2,・・・Dynのn本の配線より
なり,X方向配線82と同様に形成される。これらm本
のX方向配線82とn本のY方向配線83との間には、
不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に
分離している(m,nは、共に正の整数)。
【0074】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2等で構成
される。例えば、X方向配線82を形成した基板81の
全面或いは一部に所望の形状で形成され,特に,X方向
配線82とY方向配線83の交差部の電位差に耐え得る
ように,膜厚、材料、製法が、適宜設定される。X方向
配線82とY方向配線83は、それぞれ外部端子として
引き出されている。
【0075】表面伝導型電子放出素子84を構成する一
対の電極(不図示)は、m本のX方向配線82とn本の
Y方向配線83と導電性金属等からなる結線85によっ
て電気的に接続されている。
【0076】X方向配線82とY方向配線83を構成す
る材料、結線85を構成する材料及び一対の素子電極を
構成する材料は、その構成元素の一部あるいは全部が同
一であっても、またそれぞれ異なってもよい。これら材
料は、例えば前述の素子電極の材料より適宜選択され
る。素子電極を構成する材料と配線材料が同一である場
合には、素子電極に接続した配線は素子電極ということ
もできる。
【0077】X方向配線82には、X方向に配列した表
面伝導型電子放出素子84の行を選択するための走査信
号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。
一方、Y方向配線83には、Y方向に配列した表面伝導
型電子放出素子84の各列を入力信号に応じて、変調す
るための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電
子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加さ
れる走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0078】上記構成においては、単純なマトリクス配
線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とす
ることができる。
【0079】このような単純マトリクス配置の電子源を
用いて構成した画像形成装置について、図10と図11
を用いて説明する。図10は、画像形成装置の表示パネ
ルの一例を示す模式図であり、図11は、図10の画像
形成装置に使用される蛍光膜の模式図である。
【0080】図10において、81は電子放出素子を複
数配した電子源基板、101は電子源基板81を固定し
たリアプレート、106はガラス基板103の内面に蛍
光膜104とメタルバック105が形成されたフェース
プレートである。102は支持枠であり、該支持枠10
2には、リアプレート101、フェースプレート106
がフリットガラス等を用いて接続されている。108は
外囲器であり、例えば大気中あるいは窒素中で、400
℃〜500℃の温度範囲で10分間以上焼成すること
で、封着して形成される。
【0081】84は、図1に示したような電子放出素子
である。82、83は表面伝導型電子放出素子の一対の
素子電極と接続されたX方向配線及びY方向配線であ
る。
【0082】外囲器108は、上述の如く、フェースプ
レート106、支持枠102、リアプレート101で構
成される。リアプレート101は、主に基板81の強度
を補強する目的で設けられるため、基板81自体で充分
な強度を持つ場合には、別体のリアプレート101は不
要とすることができる。即ち、基板81に直接支持枠1
02を封着し、フェースプレート106、支持枠10
2、及び基板81で外囲器108を形成しても良い。一
方、フェースプレート106とリアプレート101の間
に、スペーサーと呼ばれる不図示の支持体を設置するこ
とにより、大気圧に対して十分な強度を持つ外囲器10
8を形成することもできる。
【0083】図11は蛍光膜を示す模式図である。蛍光
膜104はモノクロームの場合は蛍光体のみで構成する
ことができる。カラー蛍光体の場合は、蛍光体の配列に
より、ブラックストライプ(図11(a))あるいはブ
ラックマトリクス(図11(b))等と呼ばれる黒色導
電材111と蛍光体112から構成することができる。
ブラックストライプ、ブラックマトリクスを設ける目的
は、カラー表示の場合、必要となる三原色蛍光体の各蛍
光体112間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目
立たなくすることと、蛍光膜104における外光反射に
よるコントラストの低下を抑制することにある。黒色導
電材111の材料としては、通常用いられている黒鉛を
主成分とする材料のほか、導電性があり、光の透過及び
反射が少ない材料を用いることができる。
【0084】ガラス基板103に蛍光体を塗布する方法
は、モノクローム、カラーによらず、沈殿法や印刷法等
が採用できる。蛍光膜104の内面側には、通常メタル
バック105が設けられる。メタルバックを設ける目的
は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレー
ト106側に鏡面反射することにより輝度を向上させる
こと、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として
作用させること、外囲器内で発生した負イオンの衝突に
よるダメージから蛍光体を保護すること等である。メタ
ルバックは、蛍光膜作成後、蛍光膜の内面側表面の平滑
化処理(通常「フィルミング」と呼ばれる)を行い、そ
の後Alを真空蒸着等を用いて堆積させることで作製で
きる。
【0085】フェースプレート106にはさらに蛍光膜
104の導電性を高めるため、蛍光膜104の外面側に
透明電極(不図示)を設けても良い。
【0086】前述の封着を行う際、カラーの場合は各色
蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、十分
な位置あわせが不可欠となる。
【0087】図10に示した画像形成装置は、例えば以
下のようにして製造される。外囲器108内は、適宜加
熱しながら、イオンポンプ、ソープションポンプ等のオ
イルを使用しない排気装置により、不図示の排気管を通
じて排気し、10-5Pa程度の真空度の有機物質の十分
に少ない雰囲気にした後、封止がなされる。外囲器10
8の封止後の真空度を維持するために、ゲッター処理を
行うこともできる。これは、外囲器108の封止を行う
直前或いは封止後に、抵抗加熱或いは高周波加熱等を用
いた加熱により、外囲器108内の所定の位置に配され
たゲッター(不図示)を加熱し、蒸着膜を形成する処理
である。ゲッターは通常Ba等が主成分であり、該蒸着
膜の吸着作用により、例えば1×10-5Pa以上の真空
度を維持するものである。ここで、電子放出素子のフォ
ーミング処理以降の工程は適宜設定できる。
【0088】このような構成の画像形成装置において
は、各電子放出素子に、容器外端子D 0x1乃至D0xm、D
0y1乃至D0yn、を介して電圧を印加することにより、電
子放出が生じる。高圧端子107を介してメタルバック
105或いは透明電極(不図示)に高圧を印加し、電子
ビームを加速する。加速された電子は、蛍光膜104に
衝突し、発光が生じて画像が形成される。
【0089】次に、はしご型配置の電子源について図9
を用いて説明する。図9は、はしご型配置の電子源の一
例を示す模式図である。図9において、91は電子源基
板、92は電子放出素子である。93は、電子放出素子
92を接続するための共通配線Dx1〜Dx10であり、こ
れらは外部端子として引き出されている。電子放出素子
92は、基板91上に、X方向に並列に複数個配されて
いる(これを素子行と呼ぶ)。この素子行が複数個配さ
れて、電子源を構成している。各素子行の共通配線間に
駆動電圧を印加することで、各素子行を独立に駆動させ
ることができる。即ち、電子ビームを放出させたい素子
行には、電子放出しきい値以上の電圧を、電子ビームを
放出しない素子行には、電子放出しきい値以下の電圧を
印加する。各素子行間の共通配線Dx2〜Dx9は、例えば
x2、Dx3を同一配線とすることもできる。この配置の
場合には、この配線と直交する方向(列方向と呼ぶ)
で、該電子放出素子の上方に配した制御電極(グリッ
ド)を用いることによって、個々の素子からの電子放出
を制御することができる。
【0090】図12は、はしご型配置の電子源を備えた
画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図で
ある。121はグリッド電極、122は電子が通過する
ための開口、D0x1乃至D0xmは容器外端子、G1乃至Gn
はグリッド電極121と接続された容器外端子である。
91は各素子行間の共通配線を同一配線とした電子源基
板である。図12においては図9、図10に示した部位
と同じ部位には、これらの図に付したのと同一の符号を
付している。ここに示した画像形成装置と図10に示し
た単純マトリクス配置の画像形成装置との大きな違い
は、電子源基板91とフェースプレート106との間に
グリッド電極121を備えているか否かである。
【0091】図12においては、基板91とフェースプ
レート106の間には、グリッド電極121が設けられ
ている。グリッド電極121は、電子放出素子92から
放出された電子ビームを変調するためのものであり、は
しご型配置の素子行と直交して設けられたストライプ状
の電極には、電子ビームを通過させるために、各素子に
対応して1個ずつ円形の開口122が設けられている。
グリッド電極の形状や配置位置は図12に示したものに
限定されるものではない。例えば、開口としてメッシュ
状に多数の通過口を設けることもでき、グリッド電極を
電子放出素子の周囲や近傍に設けることもできる。
【0092】容器外端子D0x1乃至D0xm及び、グリッド
容器外端子G1乃至Gnは、不図示の制御回路と電気的に
接続されている。
【0093】本例の画像形成装置では、素子行を一列ず
つ順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極
列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これ
により、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像
を1ラインずつ表示することができる。
【0094】
【実施例】以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳し
く説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもの
ではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素
の置換や設計変更がなされたものも包含する。
【0095】実施例1 本実施例は、ディップコート法を用いて作製したメソポ
ーラスシリカ薄膜の細孔内にカーボンを担持させ、この
上に電子放出素子を作成した例である。
【0096】本発明の実施例1で作成した素子の基本的
な構成は図1(a)、(b)の平面図、及び断面図に示
した構成と同様である。また、その製造方法は図2に示
したものと基本的に同一である。
【0097】以下、図1、及び図2を用いて本実施例の
素子の構成、及び製造方法を説明する。 工程−1 テトラエトキシシラン(TEOS)、水、塩酸、エタノ
ールをTEOS:H2O:HCl:C25 OH=1:
1:5.0×10-5:4のモル比で含む溶液を調整し、
60℃で90分間攪拌し、TEOSを加水分解させた。
次にこの溶液に非イオン性界面活性剤ポリエチレンオキ
シド10セチルエーテル(C16EO10)を溶解し、さら
に水、塩酸、エタノールを添加し、最終的な溶液組成が
TEOS:H2 O:HCl:C25 OH:C16EO10
=1:3.1:0.0065:20:0.1のモル比に
なるようにした。この溶液を25℃まで放冷し、前駆体
溶液とした。
【0098】アセトン、2−プロパノール、純水で洗浄
し、UV−オゾンアッシャーで表面をクリーニングした
石英ガラス基板を、図2に示す構成のディップコーティ
ング装置を用いて、この前駆体溶液中に浸漬し、一方向
に一定速度で引き上げて、膜を基板上に形成した。ディ
ップコート時の基板の引き上げ速度は3.5mm/mi
nとした。形成した膜は、空気中、室温で12時間乾燥
させ、シリカメソ構造体薄膜を得た。得られたシリカメ
ソ構造体の膜厚は800nmであった。
【0099】作製したシリカメソ構造体薄膜をX線回折
分析で分析した。その結果、面間隔5.20nmの、ヘ
キサゴナル構造の(100)面に帰属される強い回折ピ
ークが確認され、この薄膜がヘキサゴナル構造の細孔構
造を有することが確かめられた。広角の領域には回折ピ
ークが認められないことから、壁を構成するシリカは非
晶質であることがわかった。
【0100】工程−2 このシリカメソ構造体薄膜を2℃/minの昇温速度で
540℃まで昇温し、10時間保持し、界面活性剤の除
去を行った。赤外吸光分析等によって、界面活性剤が完
全に除去されたことが確認された。界面活性剤を除去し
た後のX線回折分析から、ヘキサゴナル構造の細孔構造
はほぼ完全に保持されることが確認され、これによりメ
ソポーラスシリカ薄膜が作製された。このメソポーラス
シリカ薄膜中では、細孔方向はランダムであることが、
面内X線回折分析によって確認された。
【0101】工程−3 10gの純水に2.50gのショ糖と0.28gの硫酸
を溶解した水溶液に、工程−1で作製したメソポーラス
シリカ薄膜を入れ、100℃オーブン中で6時間放置
し、さらに160℃に温度を上げて6時間放置した。こ
れを一度室温に戻して、1.6gのショ糖、0.18g
の硫酸、10gの純水を添加し、再び100℃で6時間
放置し、さらに160℃で6時間放置した。これを室温
に戻し、基板を取り出し、真空中900℃で焼成し、細
孔内にカーボンを担持したメソポーラスシリカ薄膜を石
英ガラス基板上に作製した(図4(A))。
【0102】工程−4 このカーボンを担持したメソポーラスシリカ薄膜を作製
した基板上に厚さ5nmのTi、及び厚さ30nmのP
tを真空蒸着し、フォトリソグラフィーの工程によりそ
れぞれの素子電極パターン2、3を形成した(図4
(B))。この素子電極パターン、及び間隙に、さらに
膜厚3nmのPdO薄膜4をフォトリソグラフィーの工
程により形成した。作成した素子の素子電極間隔Lは1
0μm、素子電極長W1は500μm、素子長W2は1
00μmである(図4(C))。
【0103】工程−5 このようにして作成した素子に対してフォーミング工程
を施し、電子放出部を形成する。これについて説明す
る。フォーミングは、素子の(+)電極と(−)電極間
に通電を行なうことで間隙を形成する通電フォーミング
を用いた。本実施例では、(+)電極をグランドレベル
にし、(−)電極側に負の電圧を印加して行なった。通
電フォーミングに用いた電圧波形は、三角波のパルス
で、パルス幅1ミリ秒、パルス間隔10ミリ秒とし、電
圧を2V/分、0.1Vステップで上昇させた。電圧が
16Vに達したときに素子を流れるオーミックな電流は
ほとんど0となり、フォーミングが終了した。
【0104】工程−6 このようにフォーミングを行なった素子に対して、次に
活性化の工程を施した。本実施例で作成した電子放出素
子の活性化等を行うための真空装置は、前述したよう
に、基本特性を測定するための測定評価装置としての機
能をも兼ね備えている図6の様な真空処理装置で、真空
中において素子電流If、及び放出電流Ieを測定でき
るような構成になっている。
【0105】本実施例では、1.0×10-6Paの真空
中において、±15Vの矩形パルスを連続して印加する
ことで活性化を行なった。本実施例では、(+)電極側
をグランドレベルにしておいて、(−)電極側に電圧パ
ルスを印加した。矩形パルスの幅は1ミリ秒、パルス間
隔は5ミリ秒とし、1パルス毎にパルスの極性を逆転さ
せ、120分間連続印加した。この活性化処理によっ
て、活性化前にはほとんど0であった素子電流Ifは活
性化を行った10素子の平均で2.2mAまで増加した
(図4(D))。120分経過した時点で素子電流の増
加はほとんど止まっており、それ以上パルスを印加し続
けてもほとんど変化はなかった。
【0106】これと同一の素子を10素子作成し、これ
と同一の条件で活性化を行った結果、素子間でのIf
max の値のばらつきは小さいものであった。
【0107】工程−7 活性化を終えた素子は、イオンポンプ、ターボモレキュ
ラーポンプ、及びスクロールポンプを排気装置として用
いた活性化を行ったのと同じ真空容器内で、150℃で
8時間加熱され、有機物質を除去する安定化工程を施し
た。この場合、真空容器全体も加熱を行なった。
【0108】以上のようにして作成した素子について、
素子の電子放出特性を、図6に示した測定評価装置によ
り測定した。素子の評価を行なったのは、安定化を行な
ったのと同じ真空容器内で、真空度は1.0×10-7
aであった。アノード電極64はこの真空容器内に設置
されている。尚、本実施例で用いた真空装置は、所望の
真空度に容器内を保った状態で、素子の評価ができるよ
うに作られている。
【0109】本実施例ではアノード電極と電子放出素子
の距離を4mm、アノード電極の電位を1kVとした。
電子放出特性の測定は、本電子放出素子の(+)と
(−)の電極間に素子電圧Vfを印加し、その際に流れ
る素子電流If、及び放出電流Ieを測定して行なっ
た。
【0110】安定化後の初期における10素子の素子特
性の平均値は、素子電流If=2.0mA、放出電流I
e=2.5μAであり、素子間でのばらつきは5%以内
であった。
【0111】実施例2 本実施例は、基板上への核発生−核成長に基づく析出法
によって、ラビング処理を施したポリイミドを形成した
基板上に、一軸配向性の二次元ヘキサゴナル構造のメソ
チャンネルを有するシリカメソ構造体薄膜を作製し、界
面活性剤除去後にカーボンを担持させ、カーボンロッド
の方向が印加される電界の方向に平行になるように電極
を形成して、電子放出素子を形成した例である。
【0112】工程−1 アセトン、イソプロピルアルコール、及び純水で洗浄
し、オゾン発生装置中で表面をクリーニングした石英ガ
ラス基板にスピンコートによって、ポリアミック酸Aの
NMP溶液をスピンコートにより塗布し、200℃で1
時間焼成して、以下の構造を有するポリイミドAを形成
した。
【0113】
【化1】
【0114】これに対して、表1の条件でラビング処理
を施し、基板として用いた。
【0115】
【表1】
【0116】非イオン性界面活性剤であるポリエチレン
オキシド10セチルエーテル(C16EO10)、テトラエ
トキシシラン(TEOS)、水、塩酸、をC16EO10
TEOS:H2 O:HCl:=1.1:1.25:10
0:3のモル比で含む溶液を調整し、上記ラビング処理
を施した基板を、ポリイミドの面が下向きになるように
この溶液中に保持し、80℃で5日間反応を行い、シリ
カメソ構造体の薄膜を形成した。形成した膜は、純水で
洗浄し、風乾した。得られたシリカメソ構造体の膜厚は
500nmであった。
【0117】作製したシリカメソ構造体薄膜をX線回折
分析で分析した。その結果、面間隔5.05nmの、ヘ
キサゴナル構造の(100)面に帰属される強い回折ピ
ークが確認され、この薄膜がヘキサゴナル構造の細孔構
造を有することが確かめられた。広角の領域には回折ピ
ークが認められないことから、壁を構成するシリカは非
晶質であることがわかった。さらに、この膜中での細孔
の配向を調べるため、面内X線回折分析を行った。その
結果、本発明の膜中において、細孔はラビング方向に直
交する方向に配向しており、配向方向の分布は±6.2
°という非常に狭いものであることが確認された。
【0118】工程−2 このシリカメソ構造体薄膜を2℃/minの昇温速度で
540℃まで昇温し、10時間保持し、界面活性剤の除
去を行った。赤外吸光分析等によって、界面活性剤が完
全に除去されたことが確認された。界面活性剤を除去し
た後のX線回折分析から、ヘキサゴナル構造の細孔構造
はほぼ完全に保持されることが確認され、これによりメ
ソポーラスシリカ薄膜が作製された。
【0119】また、焼成後の膜のX線回折分析、面内X
線回折分析により、ヘキサゴナル構造の細孔構造、及び
一軸配向性は完全に保持されていることが確認された。
【0120】工程−3 10gの純水に2.50gのショ糖と0.28gの硫酸
を溶解した水溶液に、工程−1で作製したメソポーラス
シリカ薄膜を入れ、100℃オーブン中で6時間放置
し、さらに160℃に温度を上げて6時間放置した。こ
れを一度室温に戻して、1.6gのショ糖、0.18g
の硫酸、10gの純水を添加し、再び100℃で6時間
放置し、さらに160℃で6時間放置した。これを室温
に戻し、基板を取り出し、真空中900℃で焼成し、細
孔内にカーボンを担持したメソポーラスシリカ薄膜を石
英ガラス基板上に作製した(図4(A))。
【0121】工程−4 このカーボンを担持したメソポーラスシリカ薄膜を作製
した基板上に厚さ5nmのTi、及び厚さ30nmのP
tを真空蒸着し、フォトリソグラフィーの工程によりそ
れぞれの素子電極パターン2、3を形成した(図4
(B))。この素子電極パターン、及び間隙に、さらに
膜厚3nmのPdO薄膜4をフォトリソグラフィーの工
程により形成した。作成した素子の素子電極間隔Lは1
0μm、素子電極長W1は500μm、素子長W2は1
00μmである(図4(C))。ここで、この対向する
電極は、電極間に印加される電界の方向が、膜中のカー
ボンロッドの方向に平行になるように作製した。
【0122】工程−5 このようにして作成した素子に対して実施例1と同じ条
件でフォーミング工程を施し、間隙を形成する。フォー
ミングの結果、電圧が16.1Vに達したときに素子を
流れるオーミックな電流はほとんど0となり、フォーミ
ングが終了した。
【0123】工程−6 フォーミングを行なった素子に対して、実施例1と同じ
装置を用いて同じ条件で活性化を行った。活性化処理に
よって、活性化前にはほとんど0であった素子電流If
は活性化を行った10素子の平均で2.6mAまで増加
した(図4(D))。120分経過した時点で素子電流
の増加はほとんど止まっており、それ以上パルスを印加
し続けてもほとんど変化はなかった。
【0124】これと同一の素子を10素子作成し、これ
と同一の条件で活性化を行った結果、素子間でのIf
max の値のばらつきは従来の素子に比べ良好であった。
【0125】工程−7 活性化を終えた素子に対して、実施例1と同じ装置を用
いて、同じ条件で安定化工程を施した。
【0126】以上のようにして作成した素子について、
素子の電子放出特性を、実施例1と同じ装置を用いて、
実施例1と同じ条件で測定した。真空度は1.0×10
-7Paであった。安定化後の初期における10素子の素
子特性の平均値は、従来の素子に比べ良好であった。
【0127】本実施例で使用した基板は作成の工程が実
施例1の基板よりもより複雑であるが、作成された素子
中では、カーボンとシリカがナノメータスケールで構造
制御されたものになっている。そのため、活性化の行わ
れる箇所での状態は、素子長ほぼ全体に渡って均一であ
り、それがこのような高い均一性を生んだものであると
本発明者は考察している。
【0128】実施例3 本実施例は、単純マトリクス配線した電子源、及びそれ
を用いた画像形成装置に本発明の素子を用いた例であ
る。実際の画像装置の構成は、図10に示したものと同
様の構造を有しており、素子の数はX方向、Y方向とも
に80個である。使用した基板は、実施例1で作成した
のと同じ手順で作成した、細孔中にカーボンを担持した
メソポーラスシリカ薄膜が表面に形成された石英ガラス
基板である。
【0129】それぞれの素子電極、及び配線は、実施例
1、2で用いたものと同じ5nmTi及び30nmのP
tで、X方向配線とY方向配線の間には絶縁層としてS
iO 2 が設けられている。電子放出部を形成するための
導電性膜としては、実施例1と同じ3nmの膜厚のPd
Oを用いた。これらは全てフォトリソグラフィーの工程
によって作られている。
【0130】80×80個の表面伝導型電子放出素子が
形成されている基板を固定したリアプレート、支持枠、
及び内面に蛍光膜とメタルバックが形成されたフェース
プレートを、フリットガラス等を塗布した後に、窒素中
で420℃で10分間以上焼成することで封着して外囲
器を作成した。封着は完全であり、リーク等はなかっ
た。
【0131】外囲器を形成した後、基板上の80×80
個の素子に対して、まずフォーミングを施した。本実施
例では、フォーミングは、X配線に接続した端子をグラ
ンドレベルに接続し、Y配線にパルス電圧を印加して1
ラインずつ行ったが、フォーミングの方法はこれに限定
されるものではない。フォーミングの際に素子を流れる
電流の測定より、フォーミングはどのラインも均一に、
且つほぼ完全に行われたことが確かめられた。
【0132】フォーミング工程を終えた後、活性化を行
った。活性化は、前述の外囲器を真空排気ラインに接続
し、外囲器内を1.0×10-5Pa以下の真空状態にし
た後、各素子に対して実施例1と同じ条件の、±15
V、パルス幅1ms、パルス間隔5msの矩形波パルス
が印加されるようにして行った。活性化時の端子の接続
はフォーミング時と同じである。活性化によって素子電
流If,及び放出電流Ieは著しく増大した。本実施例
では、素子電流Ifの値がほぼ一定値に達した時点で活
性化を終了させた。活性化終了時の素子電流は、従来の
素子に比べて良好であった。
【0133】この後、パネル全体を200℃に加熱しな
がらイオンポンプ、ターボモレキュラーポンプ、及びス
クロールポンプによって排気し、真空度が1.0×10
-5Paに達した時点で封止した。
【0134】この画像形成装置を駆動周波数60Hzで
単純マトリクス駆動した。駆動は、走査信号、情報信号
ともパルス幅0.1ミリ秒、波高値7Vの矩形波を用い
て行う2値の駆動で、走査信号の印加されるラインの電
子放出部には(−)電極に印加される−7Vの走査信号
パルスの電圧と(+)電極に印加される+7Vの情報信
号パルスの電圧差の14Vが印加されるために電子が放
出され、走査信号の印加されないラインの電子放出部に
はグランドレベルと情報信号パルスの電位差の7Vが印
加されるために電子が放出されないというものである。
なお、アノード電位は1kVとした。この様にして駆動
を行った初期における素子特性は、1ラインあたりの平
均で、素子電流164mA、放出電流245μAであ
り、ライン間のばらつきは標準偏差/平均値の値が、素
子電流については11%、放出電流については13%で
あった。
【0135】実施例4 本実施例は、はしご状配置した電子源、及びそれを用い
た画像形成装置に本発明の素子を用いた例である。実際
の画像装置の構成は、図12に示したものと同様の構造
を有しており、素子の数はX方向、Y方向ともに80個
である。使用した基板は、実施例1で作成したのと同じ
手順で作成した細孔中にカーボンを担持したメソポーラ
スシリカ薄膜が表面に形成された石英ガラス基板であ
る。それぞれの素子電極、及び配線は、実施例1〜3で
用いたものと同じ5nmTi及び30nmのPtで、電
子放出部を形成するための導電性膜としては、実施例1
〜3と同じ3nmの膜厚のPdOを用いた。これらは全
てフォトリソグラフィーの工程によって作られている。
【0136】80×80個の表面伝導型電子放出素子が
形成されている基板を固定したリアプレート、支持枠、
及び内面に蛍光膜とメタルバックが形成されたフェース
プレートを、フリットガラス等を塗布した後に窒素中で
420℃で10分間以上焼成することで封着して外囲器
を作成した。本実施の場合も、封着は完全であり、リー
ク等はなかった。
【0137】外囲器を形成した後、基板上の80×80
個の素子に対して、まずフォーミングを施した。本実施
例では、フォーミングは、奇数列目の配線に接続した端
子をグランドレベルに接続し、偶数列目の配線に接続し
た端子にパルス電圧を印加して1ラインずつ行ったが、
フォーミングの方法はこれに限定されるものではない。
フォーミングの際に素子を流れる電流の測定より、フォ
ーミングはどのラインも均一に、且つほぼ完全に行われ
たことが確かめられた。
【0138】フォーミング工程を終えた後、活性化を行
った。活性化は、実施例3の場合と同様に、前述の外囲
器を真空排気ラインに接続し、外囲器内を1.0×10
-5Pa以下の真空状態にした後、各素子に対して同じ条
件で、±15V、パルス幅1ms、パルス間隔5msの
矩形波パルスが印加されるようにして行った。活性化時
の端子の接続はフォーミング時と同じである。活性化に
よって素子電流If,及び放出電流Ieは著しく増大し
た。本実施例では、素子電流Ifの値がほぼ一定値に達
した時点で活性化を終了させた。活性化終了時の素子電
流は、従来の電子放出素子に比べて良好であった。
【0139】この後、パネル全体を200℃に加熱しな
がらイオンポンプ、ターボモレキュラーポンプ、及びス
クロールポンプによって排気し、真空度が1.0×10
-5Paに達した時点で封止した。
【0140】この画像形成装置を駆動周波数60Hzで
駆動した。駆動は、各行とも、奇数列目の配線に接続し
た端子をグランドレベルに接続し、偶数列目の配線に対
してパルス幅0.1ms、波高値14Vの矩形パルスを
印加して行った。アノード電位は1kVとした。この様
にして駆動を行った初期における素子特性は、従来の電
子放出素子に比べて良好であり、また、均一性も高かっ
た。
【0141】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
細孔内にカーボンを担持させたメソポーラスシリカ薄膜
を基板表面に形成することによって、従来必要であった
活性化に要するガスの導入/排気に要する時間を短縮
し、かつ全ての素子を局所的な有機ガス圧分布の影響を
受けない同一の条件で活性化する電子放出素子を提供す
ることができる。
【0142】また、本発明は、上記の電子放出素子用い
ることにより、全ての素子を局所的な有機ガス圧分布の
影響を受けない同一の条件で活性化することで、均一性
に優れた電子源および画像形成装置を提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平面型表面伝導型電子放出素子の1例
を示す模式図である。
【図2】本発明においてシリカメソ構造体薄膜を作製す
るのに用いるディップコーティング装置の模式図であ
る。
【図3】本発明において基板上への核発生−核成長に基
づいてシリカメソ構造体薄膜を作製するのに用いる反応
容器の模式図である。
【図4】本発明の電子放出素子の作成法方法の一例を示
す模式図である。
【図5】本発明においてフォーミング工程で用いるパル
ス波形の一例を説明する図である。
【図6】本発明において素子の評価に用いる真空容器を
説明する模式図である。
【図7】従来の電子放出素子を説明するための模式図で
ある。
【図8】本発明の単純マトリクス配置の電子源の一例を
示す模式図である。
【図9】本発明のはしご型配置の電子源の一例を示す模
式図である。
【図10】本発明の画像形成装置の表示パネルの一例を
示す模式図である。
【図11】表示パネルにおける蛍光膜の一例を示す模式
図である。
【図12】本発明の画像形成装置の表示パネルの一例を
示す模式図である。
【符号の説明】
1 カーボンを細孔内に担持したメソポーラスシリカ薄
膜 2、3 素子電極 4 導電性膜 5 電子放出部 6 基板 21 容器 22 基板 23 前駆体溶液 24 基板ホルダー 25 ロッド 26 zステージ 27 熱電対 28 ヒーター 31 反応容器 32 蓋 33 基板ホルダー 34 シール(Oリング) 35 基板 36 反応溶液 61 電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電
源 62 素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを
測定するための電流計 63 アノード電極に電圧を印加するための高圧電源 64 素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを
捕捉するためのアノー ド電極 65 真空容器 66 排気ポンプ 67 素子電極間の導電性膜を流れる素子電流Ifを測
定するための電流計 81 電子源基板 82 X方向配線 83 Y方向配線 84 電子放出素子 85 結線 91 電子源基板 92 電子放出素子 93 電子放出素子を配線するための共通配線 101 リアプレート 102 支持枠 103 ガラス基板 104 蛍光膜 105 メタルバック 106 フェースプレート 107 高圧端子 108 外囲器 111 黒色導電材 112 蛍光体 121 グリッド電極 122 電子が通過するための開口

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に形成した一対の電極と、該電極
    間に配置された間隙を有する導電性膜と、該間隙内に配
    置された炭素あるいは炭素化合物とを有する電子放出素
    子において、該基板の表面に、細孔内に炭素を担持した
    メソポーラスシリカ薄膜が設けられていることを特徴と
    する電子放出素子。
  2. 【請求項2】 上記炭素を担持したメソポーラスシリカ
    薄膜中の細孔構造が二次元ヘキサゴナル構造であり、か
    つ該細孔が前記一対の電極間の電界の方向に対して平行
    に配向している請求項1記載の電子放出素子。
  3. 【請求項3】 基板上に形成した一対の電極と、該電極
    間に配置された間隙を有する導電性膜と、該間隙内に配
    置された炭素あるいは炭素化合物とを有する電子放出素
    子の製造方法において、基板の表面に細孔内に炭素を担
    持したメソポーラスシリカ薄膜を形成する工程、該メソ
    ポーラスシリカ薄膜上に一対の電極と導電性膜を設け、
    該導電性膜に間隔を形成する工程、該間隔を形成した後
    に前記導電性膜に電圧を印加する工程を有することを特
    徴とする電子放出素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2記載の電子放出素子を
    複数個並列に配置し、結線してなる素子列を少なくとも
    1列以上有し、各素子を駆動するための配線がはしご状
    に配置されていることを特徴とする電子源。
  5. 【請求項5】 請求項1または2記載の電子放出素子が
    X方向及びY方向に行列状に複数個配され、同じ行に配
    された複数の電子放出素子の電極の一方はX方向の配線
    に共通に接続され、同じ列に配された複数の電子放出素
    子の前記電極の他方はY方向の配線に共通に接続されて
    いることを特徴とする電子源。
  6. 【請求項6】 請求項4または5記載の電子源と、該電
    子源から放出される電子線の照射により発光することに
    より画像を形成する発光体からなる画像形成部材とを有
    する画像形成装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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