JP2003104933A - グリオキシル酸水溶液、その製造方法およびその保存方法 - Google Patents

グリオキシル酸水溶液、その製造方法およびその保存方法

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JP2003104933A
JP2003104933A JP2001302465A JP2001302465A JP2003104933A JP 2003104933 A JP2003104933 A JP 2003104933A JP 2001302465 A JP2001302465 A JP 2001302465A JP 2001302465 A JP2001302465 A JP 2001302465A JP 2003104933 A JP2003104933 A JP 2003104933A
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aqueous solution
aqueous
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Kimio Ariyoshi
公男 有吉
Hideyuki Baba
英幸 馬場
Masanori Nonoguchi
真則 野々口
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 液中の鉄イオン濃度が非常に低いグリオキシ
ル酸水溶液、そのような水溶液を得るために液中への鉄
イオンの溶出を非常に低く抑えたのグリオキシル酸水溶
液の製造方法、および、製造したグリオキシル酸水溶液
の液中への鉄イオンの溶出を非常に低く抑えたグリオキ
シル酸水溶液の保存方法を提供する。 【解決手段】 本発明にかかるグリオキシル酸水溶液
は、液中の鉄イオン濃度が1〜100ppmである。本
発明にかかるグリオキシル酸水溶液の製造方法は、グリ
オキシル酸を水溶液の状態で得る方法において、前記水
溶液の製造ラインにおける接触面には、前記水溶液への
鉄イオンの溶出が100ppm以下となる材質を使用す
る、ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グリオキシル酸水
溶液およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、従
来に比べて液中の鉄イオン濃度が非常に低いグリオキシ
ル酸水溶液、その製造方法およびその保存方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】グリオキシル酸は、製造上の理由などか
ら、通常、水溶液の状態で製造され、取り扱われる。そ
して、このグリオキシル酸は、化粧品、香料および農薬
等の各種製品の中間原料、各種ポリマーの改質用添加
材、医薬品の原料、医薬修飾剤などとして用いられるこ
とが知られており、なかでも、主として医薬品用途に用
いられることが好ましくその頻度も大きいのが現状であ
る。ところで、上記グリオキシル酸水溶液を製造するに
あたっては、他の化学物質の製造でも見られるように、
製造ラインにおける原料物質や生成物の接触する部分、
つまり、製造時の各種反応容器や、移送容器、貯蔵容
器、移送管およびその他製造ライン中の各種パーツなど
の材質には、ガラスなどのコストが高く、耐衝撃性、耐
熱性、加工性、強度などに劣る材質は用いられず、金属
性であって一般的に製造ライン用とされている材質が使
用されていた。もっとも、ガラス製であれば、化学物質
などに対する耐腐食性や、軽量性、透明度が高いことに
よる内部の視認性などにも優れ、得られる生成物の純度
などにも良好な影響を与え得ると考えられるが、やは
り、上述した欠点を考慮すると、それらを補い得るコス
トの低さ、取り扱い性、耐衝撃性、耐熱性、強度の高
さ、熱伝導性の高さ、加工のし易さなどの利点を有する
金属性の容器およびライニングにするのが妥当であった
からである。しかしながら、グリオキシル酸水溶液の製
造または製造後の保存において、製造ライン中の各種容
器、製造後の貯蔵容器や移送容器や移送用パイプライ
ン、各種ライニング等の材質を上述したような金属性材
質にすると、必然的に、得られるグリオキシル酸水溶液
中に、不純物として各種金属イオンが溶出してしまうこ
とが知られている。なかでも、鉄イオンは溶出の顕著な
ものの1つであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決
しようとする課題は、液中の鉄イオン濃度が非常に低い
グリオキシル酸水溶液、そのような水溶液を得るために
液中への鉄イオンの溶出を非常に低く抑えたのグリオキ
シル酸水溶液の製造方法、および、製造したグリオキシ
ル酸水溶液の液中への鉄イオンの溶出を非常に低く抑え
たグリオキシル酸水溶液の保存方法を提供することにあ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題を解
決するべく鋭意検討を行った。その結果、グリオキシル
酸水溶液中の鉄イオン濃度を低くするためには、グリオ
キシル酸水溶液の製造、移送および貯蔵などの製造ライ
ン中もしくは保存時のの各種接触面に用いる材質に着目
し、上記課題を解決し得る特定の材質を用いることとし
た。また、これと同時に、本発明者は、グリオキシル酸
水溶液中に、各種金属イオンのなかでも鉄イオンが高レ
ベルで溶出している場合は、不要な着色や、純度低下、
最終製品の価値低下などの問題が顕著となるほか、特
に、高純度品が要求される医薬品用途などにおいては、
鉄イオンが、不純物としてグリオキシル酸水溶液中に残
存すると、この鉄イオンの存在によって副反応が生じ
たり、グリオキシル酸が鉄イオンにキレートするため
にグリオキシル酸自身の反応性が低下することによって
該グリオキシル酸水溶液を用いた反応において反応収率
の低下を招いたり、また、グリオキシル酸が酵素を含
む各種触媒に対して拮抗作用を及ぼすために該グリオキ
シル酸水溶液を用いた反応において反応収率の低下や生
産性の低下を招く場合があり、さらに、鉄イオンが最
終製品中まで残存した場合は、グリオキシル酸の鉄塩と
いう不純物として析出することがある、などといった問
題の主要な原因となっていることに気づいた。また、得
られたグリオキシル酸水溶液を原料としてさらに所望の
生成物を得る反応を行うに際し、該水溶液中の鉄イオン
が、目的の反応を阻害したり、副反応を促進してしまう
要因となっていることも発見した。
【0005】そこで、本発明者は、上述のような手段に
よってグリオキシル酸水溶液中の鉄イオン濃度を低下さ
せるとともに、該水溶液中における鉄イオン濃度をどの
程度にコントロールすれば、鉄イオンに起因する上記種
々の問題を解消できるかについて、実験および試行錯誤
を繰り返した。その結果、グリオキシル酸水溶液中の鉄
イオン濃度が下記特定の濃度範囲であれば良いことを見
出し、本発明を完成した。すなわち、本発明にかかるグ
リオキシル酸水溶液は、液中の鉄イオン濃度が1〜10
0ppmである。
【0006】また、本発明にかかるグリオキシル酸水溶
液の製造方法は、グリオキシル酸を水溶液の状態で得る
方法において、前記水溶液の製造ラインにおける接触面
には、前記水溶液への鉄イオンの溶出が100ppm以
下となる材質を使用する、ことを特徴とする。また、本
発明にかかるグリオキシル酸水溶液の保存方法は、グリ
オキシル酸の水溶液を保存する方法において、前記水溶
液の接触する面には、前記水溶液への鉄イオンの溶出が
100ppm以下となる材質を使用する、ことを特徴と
する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかるグリオキシ
ル酸水溶液、グリオキシル酸水溶液の製造方法、およ
び、グリオキシル酸水溶液の保存方法について詳細に説
明する。 〔グリオキシル酸水溶液〕本発明でいうグリオキシル酸
水溶液とは、グリオキシル酸および/またはグリオキシ
ル酸水和物が水に溶解した状態のものである。本発明に
おけるグリオキシル酸水溶液は、液中の鉄イオン濃度が
100ppm以下である。
【0008】本発明にかかるグリオキシル酸水溶液は
(以下、本発明のグリオキシル酸水溶液と称すことがあ
る。)、液中の鉄イオン濃度が1〜100ppmである
ことを特徴とする。好ましくは、液中の鉄イオン濃度が
2〜50ppmであり、より好ましくは、液中の鉄イオ
ン濃度が3〜30ppmである。このように、液中の鉄
イオン濃度が100ppm以下であることにより、高純
度品が要求される医薬品用途においても問題なく使用で
き、また、鉄イオンに由来する着色も低減できる。さら
に、当該グリオキシル酸を原料としてさらに反応を行う
際、含有する鉄イオンの存在による反応の阻害や副反応
の促進も抑制できる。また、用いた製造装置や容器の材
質により、上述のように水溶液の着色などの品質悪化の
原因となる鉄イオンを含んでしまう場合であっても、液
中の鉄イオン濃度が1ppm以上かつ100ppm以下
であれば上記効果を得ることができる。
【0009】本発明のグリオキシル酸水溶液は、上述の
ように、水溶液中の鉄イオン濃度が100ppm以下の
グリオキシル酸水溶液であるが、このように100pp
m以下であるのは、該グリオキシル酸水溶液の製造時や
製造後においても、さらにその後に移送および/または
貯蔵を行う場合にもいえるとする。すなわち、本発明の
グリオキシル酸水溶液は、製造、貯蔵および移送などの
任意の操作まで行ったグリオキシル酸水溶液であり、そ
の液中の鉄イオン濃度が100ppm以下である水溶液
である。本発明のグリオキシル酸水溶液の製造方法は特
に限定されないが、製造用の反応容器としては、化学成
分としてモリブデンの含有量が3重量%よりも大きく、
かつ、クロムおよび/または銅の合計含有量が20重量
%よりも大きいステンレス鋼を材質とする容器を用いる
ことが好ましい。より好ましくは、化学成分としてモリ
ブデンの含有量が3重量%よりも大きく、かつ、クロム
および/または銅の合計含有量が20重量%よりも大き
くなっているうえ、さらに、上記クロムの含有量が20
重量%より大きい、あるいは、上記銅の含有量が2.5
重量%よりも大きいステンレス鋼を材質とする容器であ
る。さらにより好ましくは、オーステナイト・フェライ
ト二相系のステンレス鋼、具体的には、特に限定はされ
ないが、SUS329J1(JIS規格品)、SUS3
29J2L(JIS規格品)およびNAS64(日本冶
金工業社製の商品名)などのステンレス鋼、または、化
学成分としてモリブデンの含有量が3重量%以上、か
つ、銅の含有量が2.5重量%以上であるオーステナイ
ト系のステンレス鋼、具体的には、特に限定はされない
が、NAS155N(日本冶金工業社製の商品名)など
のステンレス鋼を材質とする容器である。上記化学成分
について、モリブデンの含有量が3重量%以下の場合や
クロムおよび/または銅の合計含有量が20重量%以下
の場合は、グリオキシル酸水溶液中の鉄イオン濃度が上
昇し、上記本発明のグリオキシル酸水溶液が得られない
おそれがある。
【0010】また、本発明のグリオキシル酸水溶液につ
いて、例えば、製造したグリオキシル酸水溶液を製造後
に移送したり貯蔵したりする際には、その移送用容器あ
るいは貯蔵用容器もしくは移送用パイプラインなどとし
ては、上述した製造用の反応容器と同様の化学成分を保
持しているものが好ましい。移送用容器あるいは貯蔵用
容器として、上述した化学成分について、モリブデンの
含有量が3重量%以下の場合やクロムおよび/または銅
の合計含有量が20重量%以下の場合は、製造後の移送
や貯蔵中にグリオキシル酸水溶液中の鉄イオン濃度が上
昇し、上記本発明のグリオキシル酸水溶液が得られない
おそれがある。
【0011】このように、本発明のグリオキシル酸水溶
液においては、液中の鉄イオン濃度が100ppm以下
であることにより、高純度品が要求される医薬品用途に
おいても問題なく使用でき、また、鉄イオンに由来する
着色も低減できる。さらに、当該グリオキシル酸を原料
としてさらに反応を行う際、含有する鉄イオンの存在に
よる反応の阻害や副反応の促進も抑制できる。上記貯蔵
用容器あるいは移送用容器もしくは移送用パイプライン
などに移す時点は、製造後すぐでもよいし、製造後に移
送などの別の環境を経由した後でもよい。 〔グリオキシル酸水溶液の製造方法〕本発明にかかるグ
リオキシル酸水溶液の製造方法(以下、本発明の製造方
法と称すことがある。)は、グリオキシル酸を水溶液の
状態で得る方法において、前記水溶液の製造ラインにお
ける接触面には、前記水溶液への鉄イオンの溶出が10
0ppm以下となる材質を使用する。前記材質として
は、特に限定はされないが、例えば、金属製、ガラス
製、各種プラスチック製、陶器、磁器などの材質が挙げ
られ、なかでもコスト面、成形性、取扱い性、熱伝導性
などから金属製の材質が好ましい。
【0012】通常、グリオキシル酸水溶液の製造方法
(合成までの方法)としては、特に限定されるわけでは
ないが、例えば、グリオキザールを硝酸や過酸化水素
などと液相反応させる方法、グリオキザールを、例え
ば、白金またはパラジウムを含む触媒と酸素との存在下
で液相酸化する方法、マレイン酸をオゾンを用いて酸
化する方法、シュウ酸を陰極還元する方法、グリオ
キシル酸エステルを加水分解する方法、グリオキシル
酸エステルヘミアセタールを加水分解する方法などが好
ましく挙げられる。なかでも、グリオキシル酸エステ
ルを加水分解する方法、グリオキシル酸エステルヘミ
アセタールを加水分解する方法が、高純度のグリオキシ
ル酸水溶液を簡単にかつ容易に得ることができるためよ
り好ましい。以下、これらおよびの方法について説
明し、それに続いて本発明の製造方法についてより具体
的に述べることとする。
【0013】上述した、グリオキシル酸エステルを加水
分解することによりグリオキシル酸水溶液を得る方法
(上記の方法)、および、グリオキシル酸エステルヘ
ミアセタールを加水分解することによりグリオキシル酸
を得る方法(上記の方法)については、その処理手段
および条件などは特に限定されるわけではないが、具体
的には、例えば、グリオキシル酸エステルまたはグリオ
キシル酸エステルヘミアセタールを水の共存下で反応蒸
留し加水分解する方法などが好ましく挙げられる。この
方法によれば、グリオキシル酸水溶液を高純度で簡単に
かつ容易に得ることができると共に、副生成物であるア
ルコール(以下、副生アルコールと称することがあ
る。)を容易に系外に留去することができる。
【0014】出発原料として用いるグリオキシル酸エス
テルとしては、特に限定されるものではないが、下記一
般式OHC−COOR1(式中、R1は炭素数1〜4のア
ルキル基を表す)で示される化合物が好ましい。上記R
1で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、特に
限定はされないが、具体的には、メチル基、エチル基、
n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソ
ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基などが挙げ
られ、このうち、生成するグリオキシル酸水溶液と、副
生アルコールとの沸点差が大きくなり易く、それゆえ該
副生アルコールを容易に留去することができる等の観点
から、メチル基がより好ましい。
【0015】上記グリオキシル酸エステルは、工業的に
有用で、得られるグリオキシル酸の分離が容易である。
グリオキシル酸エステルとしては、特に限定はされない
が、具体的には、グリオキシル酸メチル、グリオキシル
酸エチル、グリオキシル酸n−プロピル、グリオキシル
酸イソプロピル、グリオキシル酸n−ブチル、グリオキ
シル酸イソブチル、グリオキシル酸sec−ブチル、グ
リオキシル酸t−ブチルなどが挙げられ、なかでも、グ
リオキシル酸メチルが特に好ましい。グリオキシル酸エ
ステルは、市販品を用いるのが簡便ではあるが、工業的
には従来公知の製造方法、例えば、エチレングリコール
を酸素(分子状酸素)、および金属銀等の触媒の存在下
で気相酸化(酸化的脱水素)することによりグリオキザ
ールを得た後、このグリオキザールと、アルコールまた
はオレフィンとを、酸素(分子状酸素)、およびリン含
有無機酸化物を含む触媒の存在下で気相酸化(酸化的エ
ステル化)する方法等によって製造することが好まし
い。この方法によれば、グリオキザールからグリオキシ
ル酸エステルを一旦生成した後、グリオキシル酸水溶液
を得るので、グリオキザールから直接的にグリオキシル
酸水溶液を得る従来の方法と比較して、例えばシュウ酸
等の副生成物の生成を抑制することができる。これによ
り、より一層高純度のグリオキシル酸水溶液を簡単にか
つ安価に製造することができる。なお、グリオキシル酸
エステルの製造方法は、特に限定されるものではない。
【0016】また、例えば上記方法によって得られるグ
リオキシル酸エステルは、そのまま出発原料として用い
ることができるが、より高純度のグリオキシル酸水溶液
を製造するには、水以外の不純物が可能な限り少なくな
るように、粗グリオキシル酸エステルを、種々の手法に
よって精製することがより好ましい。具体的には、例え
ば、グリオキシル酸エステルがグリオキシル酸メチルで
ある場合には、粗グリオキシル酸メチルを粗蒸留した
後、共沸脱水蒸留によって水を留去し、さらに精留する
ことによって精製グリオキシル酸メチルを得る手法を採
用することができる。
【0017】出発原料として用いるグリオキシル酸エス
テルヘミアセタールとしては、特に限定されるものでは
ないが、下記一般式 HO−CH(OR2)−COOR3 (式中、R2およびR3は炭素数1〜4のアルキル基を表
す)で示される化合物が好ましい。上記R2およびR3
表される炭素数1〜4のアルキル基としては、特に限定
はされないが、具体的には、メチル基、エチル基、n−
プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチ
ル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が挙げられ、こ
のうち、生成するグリオキシル酸水溶液と、副生アルコ
ールとの沸点差が大きくなり易く、それゆえ該副生アル
コールを容易に留去することができる等の観点から、メ
チル基がより好ましい。
【0018】上記グリオキシル酸エステルヘミアセター
ルとしては、特に限定されるわけではないが、具体的に
は、例えば、グリオキシル酸メチルエステルヘミアセタ
ール、グリオキシル酸エチルエステルヘミアセタール、
グリオキシル酸n−プロピルエステルヘミアセタール、
グリオキシル酸イソプロピルエステルヘミアセタール、
グリオキシル酸n−ブチルエステルヘミアセタール、グ
リオキシル酸sec−ブチルエステルヘミアセタール、
グリオキシル酸t−ブチルエステルヘミアセタール挙げ
られ、なかでも、グリオキシル酸メチルエステルヘミア
セタールが好ましく挙げられ、特に好ましくは、グリオ
キシル酸メチルエステルメチルヘミアセタールが挙げら
れる。
【0019】水とグリオキシル酸エステルまたはグリオ
キシル酸エステルヘミアセタールとのモル比(水/グリ
オキシル酸エステル)は、反応蒸留の反応条件等に応じ
て決定すればよく、特に限定されるものではないが、具
体的には、1/1〜20/1の範囲内、より好ましくは
3/1〜10/1の範囲内とすればよい。グリオキシル
酸エステルの加水分解は、下記反応式: OHC−COOR1 + H2O ←→ OHC−COOH
+ R1OH (式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を表す)で示
される平衡反応である。
【0020】また、グリオキシル酸エステルメチルヘミ
アセタールの加水分解は、下記反応式: HO−CH(OR2)−COOR3 + 2H2O ←→ O
HC−COOH +R2OH +R3OH (式中、R2、R3は炭素数1〜4のアルキル基を表す)
で示される平衡反応である。従って、副生アルコールを
系外に除去することにより、平衡が生成系側に偏って加
水分解が進行し、グリオキシル酸が生成が促進される。
【0021】上記の製法においては、上記加水分解を
より一層促進させるために、必要に応じて、酸の存在下
で反応蒸留することもできる。上記の製法を実施する
ための反応蒸留装置としては、装置内に気相部が存在
し、生成した副生アルコール(低沸点成分)が該気相部
へ連続的に分離・除去され得る構造を備えていればよ
い。該反応蒸留装置としては、例えば、一般的に用いら
れている各種蒸留装置、より具体的には、1段または多
段式蒸留塔等の、回分式(バッチ式)蒸留装置または連
続式蒸留装置が好ましいが、特に限定はされない。つま
り、グリオキシル酸エステルの反応蒸留は、必要に応じ
て、連続的に実施することができる。
【0022】反応蒸留における反応条件は、グリオキシ
ル酸エステルおよびグリオキシル酸エステルヘミアセタ
ールの特性に応じて設定すればよく、特に限定されるも
のではないが、反応温度については、副生アルコールの
沸点以上、かつ、水の沸点を大幅に越えない程度にする
ことが望ましく、一般的には、蒸留塔の塔底温度が70
〜130℃となるように操作することが望ましい。反応
温度が副生アルコールの沸点未満である場合には、該副
生アルコールを効率的に留去することができない。一
方、反応温度が水の沸点を大幅に越える場合には、過度
に水が留去されてしまうので、反応蒸留を効率的に実施
することができない。また、グリオキシル酸エステルお
よびグリオキシル酸エステルヘミアセタールやグリオキ
シル酸の分解反応等の副反応を引き起こすおそれがあ
る。また、反応時間は用いる蒸留塔の形式に応じて適宜
設定されるが、通常、30分〜10時間である。
【0023】以上のように、上記のグリオキシル酸水
溶液の製法は、グリオキシル酸エステルおよびグリオキ
シル酸エステルヘミアセタールを水の共存下で反応蒸留
する方法である。つまり、グリオキシル酸エステルおよ
びグリオキシル酸エステルヘミアセタールを加水分解す
ることによってグリオキシル酸水溶液を得るので、副生
成物が実質的に副生アルコールだけである。そして、該
副生アルコールを留去するので、グリオキシル酸水溶液
の分離・精製を容易に行うことができる。上記の方法に
より、高純度のグリオキシル酸水溶液が得られる。即
ち、高純度のグリオキシル酸水溶液を簡単にかつ安価に
製造することができる。
【0024】本発明の製造方法では、得られるグリオキ
シル酸水溶液への鉄イオンの溶出を100ppm以下に
することができ、好ましくは50ppm、より好ましく
は30ppmにすることができる。このように、得られ
るグリオキシル酸水溶液への鉄イオンの溶出を100p
pm以下にすることによって、グリオキシル酸水溶液を
高純度品が要求される医薬品用途においても問題なく使
用することができ、また、鉄イオンに起因する着色も低
減できる。さらに、当該グリオキシル酸を原料として反
応を行う場合、含有する鉄イオンの存在により反応の阻
害や副反応の促進を抑制することができる。
【0025】本発明の製造方法においては、得られるグ
リオキシル酸水溶液中への鉄イオンの溶出を上述のよう
にするために、グリオキシル酸水溶液の製造ラインにお
いて、原料物質、中間体および生成物などの接触する面
には、特定の材質を使用する。上記特定の材質として
は、上述のように、金属製の材質が好ましい。上記特定
の金属製の材質としては、特に限定はされないが、化学
成分としてモリブデンの含有量が3重量%よりも大き
く、かつ、クロムおよび/または銅の合計含有量が20
重量%よりも大きいステンレス鋼が好ましい。より好ま
しくは、化学成分としてモリブデンの含有量が3重量%
よりも大きく、かつ、クロムおよび/または銅の合計含
有量が20重量%よりも大きくなっているうえ、さら
に、上記クロムの含有量が20重量%より大きい、ある
いは、上記銅の含有量が2.5重量%よりも大きいステ
ンレス鋼である。さらにより好ましくは、オーステナイ
ト・フェライト二相系のステンレス鋼、具体的には、特
に限定はされないが、SUS329J1(JIS規格
品)、SUS329J2L(JIS規格品)およびNA
S64(日本冶金工業社製の商品名)などのステンレス
鋼、または、化学成分としてモリブデンの含有量が3重
量%以上、かつ、銅の含有量が2.5重量%以上である
オーステナイト系のステンレス鋼、具体的には、特に限
定はされないが、NAS155N(日本冶金工業社製の
商品)などのステンレス鋼である。上記化学成分につい
て、モリブデンの含有量が3重量%以下の場合やクロム
および/または銅の合計含有量が20重量%以下の場合
は、グリオキシル酸水溶液中への鉄イオンの溶出が増加
し、グリオキシル酸水溶液の鉄イオン濃度が100pp
mを超えることとなってしまうおそれがある。
【0026】本発明の製造方法においては、上記製造ラ
インとは、単にグリオキシル酸水溶液を合成し終えるま
でのラインおよびその際使用する容器や装置などのみに
は限らず、合成されたグリオキシル酸水溶液をさらに移
送したり貯蔵したり等するラインおよびその際に用いる
容器や装置なども含むとしてもよく、すなわち、グリオ
キシル酸水溶液の合成およびその取り扱いに関するすべ
てのラインおよびその際使用する装置等まで含むとして
もよいとする。つまり、本発明の製造方法は、グリオキ
シル酸水溶液を合成するまでの工程いう方法であっても
よいし、これに加えて、さらに合成したグリオキシル酸
水溶液を移送したり貯蔵したりなどして取り扱う工程ま
でも含む方法としてもよいし、グリオキシル酸水溶液を
移送したり貯蔵したりするなどの合成後の工程のみをい
う方法としてもよく、特に限定されるわけではないが、
本発明の製造方法をどのように規定した場合であって
も、規定した工程を完了した時点でのグリオキシル酸水
溶液への鉄イオンの溶出が100ppm以下となるよう
にすることが必要である。
【0027】本発明の製造方法においては、製造ライン
における接触面には上記特定の金属製の材質を使用する
が、実際に接触し得る全ての部分に上記特定の金属製の
材質を使用しなければならないというわけではなく、部
分的に使用する形態でもよいとし、特に限定はされない
が、上述のように本発明の製造方法として規定した工程
を完了した時点でのグリオキシル酸水溶液に溶出してい
る鉄イオン濃度が100ppm以下となるように設定、
設計することが必要である。本発明の製造方法において
は、任意のタイミングで、容器や装置内に析出した固形
分(鉄原子含有固形分)を除去すること、および/また
は、容器や装置内の原料成分および/またはグリオキシ
ル酸水溶液などに溶出している鉄イオン分を除去するこ
とによって、鉄イオンそのものおよび/または鉄イオン
溶出増加の要因となる固形分(鉄原子含有固形分)など
を低減させる操作・工程を取り入れてもよい。析出した
固形分(鉄原子含有固形分)を除去する場合は、ろ過、
圧搾、沈降、脱液、浮上分離、遠心分離、膜分離などに
よって行うことが好ましいが、特にこれらに限定はされ
ない。また、溶出している鉄イオン分を除去する場合
は、イオン交換樹脂やキレート樹脂により鉄イオンを吸
着分離する、または、キレート剤添加により溶液中に固
体塩を析出させ前述の固液分離法により分離する、など
によって行うことが好ましいが、特にこれらに限定はさ
れない。上記2種の除去操作・工程は、どちらか一方の
みを行ってもよいが、両方とも行うことがより好まし
い。
【0028】上記除去操作・工程よれば、鉄イオンの溶
出をより低く抑えたグリオキシル酸水溶液が得られる。
特に限定されるわけではないが、具体的には、本発明の
製造方法が、グリオキシル酸水溶液を製造した後さらに
移送および/または貯蔵までの工程を含むものである場
合に、例えば製造後の段階で上記除去操作を取り入れる
こととすると、その後の移送や貯蔵の工程ではより長時
間安定して所望の鉄イオン濃度を確保することができる
こととなる。また、本発明の製造方法が、グリオキシル
酸水溶液の移送および/または貯蔵の工程を含むもので
ある場合では、例えば全ての工程の前段階として上記除
去操作を取り入れることとすると、その後の移送や貯蔵
の工程においてはより長時間安定して所望の鉄イオン濃
度を確保することができるほか、従来一般の製造(合
成)方法で得られたため鉄イオン濃度が非常に高くなっ
ているグリオキシル酸水溶液を取り扱わなければならな
い場合であっても、一旦鉄イオン濃度を十分低いレベル
にしてから取り扱うことができるため、最終的に本発明
の効果を達成することができる。また、グリオキシル酸
水溶液を製造した後さらに移送および/または貯蔵まで
の工程を含む該水溶液の製造方法において、製造工程が
従来一般の製造方法であるため製造後のグリオキシル酸
水溶液の鉄イオン濃度が非常に高い場合であっても、製
造後に上記除去操作を取り入れれば、その後の移送およ
び/または貯蔵の完了時には所望の鉄イオン濃度レベル
を確保することができることから、このような複数の取
り扱いや工程を組み合わせて含めた製造方法も本発明の
製造方法に含むことができる。
【0029】本発明の製造方法により得られるグリオキ
シル酸水溶液(グリオキシル酸)は、反応性に富み、従
来と同様に工業的に非常に有用な化合物で、その用途と
しては従来一般的に知られている様々な用途に用いるこ
とができ、かつ、従来より優れた効果でより有用な生産
物を得ることができる。具体的には、例えば、化粧品、
香料および農薬等の各種製品の中間原料、各種ポリマー
の改質用添加剤、医薬品の原料、医薬修飾剤などとして
使用することができる。 〔グリオキシル酸水溶液の保存方法〕本発明にかかるグ
リオキシル酸水溶液の保存方法(以下、本発明の保存方
法と称すことがある。)は、グリオキシル酸の水溶液を
保存する方法において、前記水溶液の接触する面には、
前記水溶液への鉄イオンの溶出が100ppm以下とな
る材質を使用する。前記材質としては、特に限定はされ
ないが、例えば、金属製、ガラス製、各種プラスチック
製、陶器、磁器などが挙げられ、なかでもコスト面、成
形性、取り扱い性、熱伝導性などから金属製の材質が好
ましい。
【0030】本発明の保存方法とは、上記本発明の製造
方法等により水溶液の状態で得られたグリオキシル酸
を、例えば、製造後に固定容器にて一旦貯蔵しておく場
合や、製造後もしくは貯蔵後に移送用の容器にて他の場
所に移動させる場合や、製造後に一旦貯蔵したあとその
容器から移送用のパイプラインなどを経て他の容器へ移
送する場合や、上記移送用の容器にて他の場所へ移動さ
せた後この移送用容器から目的の容器などへ移送用のパ
イプラインなどを経て移す場合、などにおいて取り扱う
方法、すなわち、上記各種場合などにおけるグリオキシ
ル酸液の取り扱い方法である。よって、上記水溶液の接
触する面とは、これら各種場合に使用する容器やパイプ
ラインなどにおいて、取り扱い上、グリオキシル酸水溶
液が接触する面をいうとする。
【0031】本発明の保存方法では、得られるグリオキ
シル酸水溶液への鉄イオンの溶出を100ppm以下に
することができ、好ましくは50ppm、より好ましく
は30ppmにすることができる。このように、得られ
るグリオキシル酸水溶液への鉄イオンの溶出を100p
pm以下にすることによって、グリオキシル酸水溶液を
高純度品が要求される医薬品用途においても問題なく使
用することができ、また、鉄イオンに起因する着色も低
減できる。さらに、当該グリオキシル酸を原料として反
応を行う場合、含有する鉄イオンの存在により反応の阻
害や副反応の促進を抑制することができる。
【0032】本発明の保存方法においては、得られるグ
リオキシル酸水溶液中への鉄イオンの溶出を上述のよう
にするために、上記グリオキシル酸水溶液の接触する面
には、特定の材質を使用する。上記特定の材質として
は、上述のように、金属製の材質が好ましい。上記特定
の金属製の材質としては、特に限定はされないが、化学
成分としてモリブデンの含有量が3重量%よりも大き
く、かつ、クロムおよび/または銅の合計含有量が20
重量%よりも大きいステンレス鋼が好ましい。より好ま
しくは、化学成分としてモリブデンの含有量が3重量%
よりも大きく、かつ、クロムおよび/または銅の合計含
有量が20重量%よりも大きくなっているうえ、さら
に、上記クロムの含有量が20重量%より大きい、ある
いは、上記銅の含有量が2.5重量%よりも大きいステ
ンレス鋼である。さらにより好ましくは、オーステナイ
ト・フェライト二相系のステンレス鋼、具体的には、特
に限定はされないが、SUS329J1(JIS規格
品)、SUS329J2L(JIS規格品)およびNA
S64(日本冶金工業社製の商品名)などのステンレス
鋼、または、化学成分としてモリブデンの含有量が3重
量%以上、かつ、銅の含有量が2.5重量%以上である
オーステナイト系のステンレス鋼、具体的には、特に限
定はされないが、NAS155N(日本冶金工業社製の
商品名)などのステンレス鋼である。上記化学成分につ
いて、モリブデンの含有量が3重量%以下の場合やクロ
ムおよび/または銅の合計含有量が20重量%以下の場
合は、グリオキシル酸水溶液中への鉄イオンの溶出が増
加し、グリオキシル酸水溶液の鉄イオン濃度が100p
pmを超えることとなってしまうおそれがある。
【0033】本発明の保存方法においては、グリオキシ
ルキシル酸水溶液の取り扱いとしては、上述のように各
種場合の形態があり、特に限定されるわけではないが、
本発明の保存方法をどのような取り扱いの形態として規
定した場合であっても、規定した取り扱いを完了した時
点でのグリオキシル酸水溶液への鉄イオンの溶出が10
0ppm以下となるようにすることが必要である。本発
明の保存方法においては、グリオキシル酸水溶液の接触
する面には上記特定の金属製の材質を使用するが、実際
に接触し得る全ての部分に上記特定の金属製の材質を使
用しなければならないというわけではなく、部分的に使
用する形態でもよいとし、特に限定はされないが、上述
のように本発明の保存方法として規定した取り扱いを完
了した時点でのグリオキシル酸水溶液に溶出している鉄
イオン濃度が100ppm以下となるように設定、設計
することが必要である。
【0034】本発明の保存方法においては、任意のタイ
ミングで、容器や装置内に析出した固形分(鉄原子含有
固形分)を除去すること、および/または、容器や装置
内の原料成分および/またはグリオキシル酸水溶液など
に溶出している鉄イオン分を除去することによって、鉄
イオンそのものおよび/または鉄イオン溶出増加の要因
となる固形分(鉄原子含有固形分)などを低減させる操
作・工程を取り入れてもよい。析出した固形分(鉄原子
含有固形分)を除去する場合は、ろ過、圧搾、沈降、脱
液、浮上分離、遠心分離、膜分離などによって行うこと
が好ましいが、特にこれらに限定はされない。また、溶
出している鉄イオン分を除去する場合は、イオン交換樹
脂やキレート樹脂により鉄イオンを吸着分離する、また
は、キレート剤添加により溶液中に固体塩を析出させ前
述の固液分離法により分離する、などによって行うこと
が好ましいが、特にこれらに限定はされない。上記2種
の除去操作・工程は、どちらか一方のみを行ってもよい
が、両方とも行うことがより好ましい。
【0035】上記除去操作・工程よれば、鉄イオンの溶
出をより低く抑えたグリオキシル酸水溶液が得られる。
特に限定されるわけではないが、具体的には、本発明の
保存方法が、グリオキシル酸水溶液を貯蔵および/また
は移送する取り扱い方法である場合に、例えば、取り扱
いを開始する段階で上記除去操作を取り入れることとす
ると、その後の移送や貯蔵ではより長時間安定して所望
の鉄イオン濃度を確保することができることとなる。ま
た、本発明の保存方法が、グリオキシル酸水溶液の貯蔵
および/または移送する取り扱い方法である場合では、
例えば全ての取り扱いの前段階として上記除去操作を取
り入れることとすると、その後の移送や貯蔵においては
より長時間安定して所望の鉄イオン濃度を確保すること
ができるほか、従来一般の製造(合成)方法で得られた
ため鉄イオン濃度が非常に高くなっているグリオキシル
酸水溶液を取り扱わなければならない場合であっても、
一旦鉄イオン濃度を十分低いレベルにしてから取り扱う
ことができるため、最終的に本発明の効果を達成するこ
とができる。また、本発明の保存方法により、グリオキ
シル酸水溶液を保存した後、さらに、従来一般の保存方
法で取り扱ったためグリオキシル酸水溶液の鉄イオン濃
度が非常に高くなった場合であっても、その従来型の取
り扱いの後に上記除去操作を取り入れれば、その後は所
望の鉄イオン濃度レベルを確保することができることか
ら、このような複数の取り扱い形態を組み合わせて含め
た保存方法も本発明の製造方法に含むことができる。
【0036】本発明の保存方法により得られるグリオキ
シル酸水溶液(グリオキシル酸)は、反応性に富み、従
来と同様に工業的に非常に有用な化合物で、その用途と
しては従来一般的に知られている様々な用途に用いるこ
とができ、かつ、従来より優れた効果でより有用な生産
物を得ることができる。具体的には、例えば、化粧品、
香料および農薬等の各種製品の中間原料、各種ポリマー
の改質用添加剤、医薬品の原料、医薬修飾剤などとして
使用することができる。
【0037】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によ
り何ら限定されるものではない。 −製造例− 〔グリオキシル酸メチルの製造〕まず、出発原料として
グリオキシル酸メチルを合成した。詳しくは、エチレン
グリコールを触媒の存在下に酸化してグリオキザールを
一旦合成した後、このグリオキザールにメタノールを加
えて触媒の存在下に酸化エステル化により粗グリオキシ
ル酸メチルを合成し、さらに、この粗グリオキシル酸メ
チルを蒸留することによって、(精製)グリオキシル酸
メチルを合成した。
【0038】すなわち、触媒として金属銀を充填した断
熱型反応器に、予め気化させたエチレングリコールと、
空気および窒素ガスと、を混合してなる原料ガスを、連
続的に供給して気相酸化(酸化的脱水素)することによ
り、グリオキザールを含む反応ガスを得た。次に、リン
酸鉄および酸化チタンからなる触媒を充填した熱交換型
反応器に、上記反応ガス、予め気化させたメタノールお
よび空気を混合してなる混合ガスを、連続的に供給して
気相酸化(酸化的エステル化)することにより、グリオ
キシル酸メチルを含む反応ガスを得た。上述した両方の
気相酸化は、ともに連続的に実施した。そして、該反応
ガスを凝集・捕集することにより、グリオキシル酸メチ
ル、メタノール、水、グリコール酸メチルおよびホルム
アルデヒドからなる粗グリオキシル酸メチル溶液を得
た。エチレングリコールを基準としたグリオキシル酸メ
チルの収率は62%であった。
【0039】次いで、上記粗グリオキシル酸メチル溶液
を粗蒸留して、軽沸点成分(メチルアルコール、水、ホ
ルムアルデヒド)の大部分を留去した。粗蒸留した後の
グリオキシル酸メチル溶液の組成を、ガスクロマトグラ
フィー(島津製作所社製、製品名:ガスクロマトグラフ
GC−17A(ただし、検出器は水素炎イオン化(FI
D)を使用))および高速液体クロマトグラフィー(カ
ラムは、昭和電工社製、製品名:Shodex Rsp
ak KC−811;検出器は、島津製作所社製の示唆
屈折計、製品名:RID−6A;移動相は、過塩素酸
0.1%水溶液)を共に用いて分析したところ、グリオ
キシル酸メチル47.5重量%、メタノール22.5重
量%、水17.4重量%、グリコール酸メチル7.3重
量%、ホルムアルデヒド5.3重量%であった。続い
て、この溶液(缶出液)に、酢酸n−プロピル(共沸
剤)を添加し、共沸脱水蒸留によって残りの水を留去
し、さらに精留することによって、精製グリオキシル酸
メチルを得た。得られたグリオキシル酸メチルの組成に
ついて、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、製
品名:ガスクロマトグラフGC−17A(ただし、検出
器は水素炎イオン化(FID)を使用))および高速液
体クロマトグラフィー(カラムは、昭和電工社製、製品
名:Shodex Rspak KC−811;検出器
は、島津製作所社製の示唆屈折計、製品名:RID−6
A;移動相は、過塩素酸0.1%水溶液)を共に用いて
分析した結果、グリオキシル酸メチル99.8重量%、
水0.2重量%であった。また、含まれる鉄イオン濃度
を、ICP発光分析装置(セイコー電子工業(株)製、
装置名:SPS4000)により調べた結果、鉄イオン
濃度は0.6ppmであった。
【0040】−実施例1− 製造例で得られたグリオキシル酸メチルを原料として、
反応蒸留によりグリオキシル酸水溶液を合成した。用い
た装置は、ニッケル6.4重量%、クロム24.9重量
%、モリブデン3.2重量%の組成からなるオーステナ
イト・フェライト二相系のステンレス鋼製のセパラブル
フラスコ(内容積300ミリリットル)にビグルー分留
管を接続し、さらに該分留管の上部には冷却器を備えた
分留頭を設けた蒸留装置を使用した。上記セパラブルフ
ラスコ内にグリオキシル酸メチル156gおよび水15
5gを仕込み、内圧は常圧にしてフラスコを加熱させて
反応を開始し、分留頭から水および副生物であるメタノ
ールを留出させながら、フラスコ内のグリオキシル酸メ
チルが完全にグリオキシル酸に加水分解するまで反応蒸
留を行った。反応時間は6時間であった。この間、フラ
スコ内の液体温度を85℃から100℃へと徐々に上昇
させた。反応終了後に、フラスコ内を観察したが、内壁
には固形分の堆積は見られなかった。得られたグリオキ
シル酸水溶液の組成を、ガスクロマトグラフィー(島津
製作所社製、製品名:ガスクロマトグラフGC−17A
(ただし、検出器は水素炎イオン化(FID)を使
用))および高速液体クロマトグラフィー(カラムは、
昭和電工社製、製品名:Shodex Rspak KC
−811;検出器は、島津製作所社製の示唆屈折計、製
品名:RID−6A;移動相は、過塩素酸0.1%水溶
液)を共に用いて分析したところ、グリオキシル酸4
9.2重量%、メタノール0.3重量%、水50.5重
量%であった。また、含まれる鉄イオン濃度をICP発
光分析装置(セイコー電子工業(株)製、装置名:SP
S4000)により分析した結果、鉄イオン濃度は3.
3ppmであった。さらに得られたグリオキシル酸水溶
液の液色は淡黄色で、色相見本との目視による比較によ
り調べたハーゼン値(色相)は50であった。
【0041】−実施例2− 実施例1で得られたグリオキシル酸水溶液(鉄イオン濃
度3.3ppm)を、ニッケル6.4重量%、クロム2
4.9重量%、モリブデン3.2重量%の組成からなる
オーステナイト・フェライト二相系のステンレス鋼製の
セパラブルフラスコ(内容積300ミリリットル)にジ
ムロート冷却管を接続した装置に入れた後、上記セパラ
ブルフラスコ内を加熱してフラスコ内の温度を90℃に
達してから100時間経過後、フラスコ内を観察した
が、フラスコの底には固形分の沈殿は見られなかった。
その際に、液相の組成をガスクロマトグラフィー(島津
製作所社製、製品名:ガスクロマトグラフGC−17A
(ただし、検出器は水素炎イオン化(FID)を使
用))および高速液体クロマトグラフィー(カラムは、
昭和電工社製、製品名:Shodex Rspak KC
−811;検出器は、島津製作所社製の示唆屈折計、製
品名:RID−6A;移動相は、過塩素酸0.1%水溶
液)を共に用いて分析したところ、グリオキシル酸4
9.0重量%、シュウ酸0.5重量%、水50.5重量
%であった。また、含まれる鉄イオン濃度をICP発光
分析装置(セイコー電子工業(株)製、装置名:SPS
4000)により分析した結果、鉄イオン濃度は13.
2ppmであった。さらに、得られたグリオキシル酸水
溶液の液色は淡黄色で、色相見本との目視による比較に
より調べたハーゼン値(色相)は150であった。
【0042】−実施例3− 製造例で得られたグリオキシル酸メチルを原料として、
反応蒸留によりグリオキシル酸水溶液を合成した。セパ
ラブルフラスコを、ニッケル12.1重量%、クロム1
7.3重量%、モリブデン2.1重量%の組成からなる
オーステナイト系のステンレス鋼(SUS316)製の
セパラブルフラスコ(内容積300ミリリットル)にし
た以外は、実施例1と同様の装置を使用した。上記セパ
ラブルフラスコ内にグリオキシル酸メチル156gおよ
び水155gを仕込み、内圧は常圧にしてフラスコを加
熱させて反応を開始し、分留頭から水および副生物であ
るメタノールを留出させながら、フラスコ内のグリオキ
シル酸メチルが完全にグリオキシル酸に加水分解するま
で反応蒸留を行った。反応時間は6時間であった。この
間、フラスコ内の液体温度を85℃から100℃へと徐
々に上昇させた。反応終了後に、フラスコ内を観察する
と、フラスコ内壁には板状の固形分の付着が見られた。
得られたグリオキシル酸水溶液の組成を、ガスクロマト
グラフィー(島津製作所社製、製品名:ガスクロマトグ
ラフGC−17A(ただし、検出器は水素炎イオン化
(FID)を使用))および高速液体クロマトグラフィ
ー(カラムは、昭和電工社製、製品名:Shodex
Rspak KC−811;検出器は、島津製作所社製
の示唆屈折計、製品名:RID−6A;移動相は、過塩
素酸0.1%水溶液)を共に用いて分析したところ、グ
リオキシル酸48.7重量%、メタノール0.2重量
%、シュウ酸0.6重量%、水50.5重量%であっ
た。また、含まれる鉄イオン濃度をICP発光分析装置
(セイコー電子工業(株)製、装置名:SPS400
0)により分析した結果、鉄イオン濃度は110ppm
であった。さらに、得られたグリオキシル酸水溶液の液
色は淡褐色で、色相見本との目視による比較により調べ
たハーゼン値(色相)は300であった。
【0043】続いて、フラスコ内からグリオキシル酸水
溶液を取り出し、固形分をヌッチェを用いて水流アスピ
レーターによる減圧濾過によって取り除き、さらに濾液
をイオン交換樹脂(ダウケミカル社製、製品名:DOW
EX)に通して溶け込んでいる鉄イオンを除去した。鉄
イオン除去後のグリオキシル酸水溶液に含まれる鉄イオ
ン濃度をICP発光分析装置(セイコー電子工業(株)
製、装置名:SPS4000)により分析した結果、鉄
イオン濃度は0.8ppmであった。上記鉄イオン除去
後の、グリオキシル酸水溶液を、ニッケル6.4重量
%、クロム24.9重量%、モリブデン3.2重量%の
組成からなるオーステナイト・フェライト二相系のステ
ンレス鋼製のセパラブルフラスコ(内容積300ミリリ
ットル)にジムロート冷却管を接続した装置に入れた
後、上記セパラブルフラスコ内を加熱してフラスコ内の
温度を90℃に達してから100時間経過後、フラスコ
内を観察したが、フラスコの底には固形分の沈殿は見ら
れなかった。その際に、液相の組成をガスクロマトグラ
フィー(島津製作所社製、製品名:ガスクロマトグラフ
GC−17A(ただし、検出器は水素炎イオン化(FI
D)を使用))および高速液体クロマトグラフィー(カ
ラムは、昭和電工社製、製品名:Shodex Rsp
ak KC−811;検出器は、島津製作所社製の示唆
屈折計、製品名:RID−6A;移動相は、過塩素酸
0.1%水溶液)を共に用いて分析したところ、グリオ
キシル酸49.5重量%、水50.5重量%であった。
また、含まれる鉄イオン濃度をICP発光分析装置(セ
イコー電子工業(株)製、装置名:SPS4000)に
より分析した結果、鉄イオン濃度は12.5ppmであ
った。さらに、得られたグリオキシル酸水溶液の液色は
淡黄色で、色相見本との目視による比較により調べたハ
ーゼン値(色相)は200であった。
【0044】−実施例4− 実施例1で得られたグリオキシル酸水溶液(鉄イオン濃
度3.3ppm)を、ニッケル6.4重量%、クロム2
4.9重量%、モリブデン3.2重量%の組成からなる
オーステナイト・フェライト二相系のステンレス鋼製の
セパラブルフラスコ(内容積300ミリリットル)にジ
ムロート冷却管を接続した装置に入れた後、上記セパラ
ブルフラスコ内をマントルヒーターで加熱して、フラス
コ内の温度を90℃に維持した状態で、兵庫県姫路市か
ら大阪府吹田市まで移送した。移送後、フラスコ内を観
察したが、フラスコの底には固形分の沈殿は見られなか
った。その際に、液相の組成をガスクロマトグラフィー
(島津製作所社製、製品名:ガスクロマトグラフGC−
17A(ただし、検出器は水素炎イオン化(FID)を
使用))および高速液体クロマトグラフィー(カラム
は、昭和電工社製、製品名:Shodex Rspak
KC−811;検出器は、島津製作所社製の示唆屈折
計、製品名:RID−6A;移動相は、過塩素酸0.1
%水溶液)を共に用いて分析したところ、グリオキシル
酸49.1重量%、シュウ酸0.5重量%、水50.4
重量%であった。また、含まれる鉄イオン濃度をICP
発光分析装置(セイコー電子工業(株)製、装置名:S
PS4000)により分析した結果、鉄イオン濃度は1
4.3ppmであった。さらに、得られたグリオキシル
酸水溶液の液色は淡黄色で、色相見本との目視による比
較により調べたハーゼン値(色相)は160であった。
【0045】−実施例5− 製造例で得られたグリオキシル酸メチルを原料として、
反応蒸留によりグリオキシル酸水溶液を合成した。セパ
ラブルフラスコを、ニッケル12.1重量%、クロム1
7.3重量%、モリブデン2.1重量%の組成からなる
オーステナイト系のステンレス鋼(SUS316)製の
セパラブルフラスコ(内容積300ミリリットル)にし
た以外は、実施例1と同様の装置を使用した。上記セパ
ラブルフラスコ内にグリオキシル酸メチル156gおよ
び水155gを仕込み、内圧は常圧にしてフラスコを加
熱させて反応を開始し、分留頭から水および副生物であ
るメタノールを留出させながら、フラスコ内のグリオキ
シル酸メチルが完全にグリオキシル酸に加水分解するま
で反応蒸留を行った。反応時間は6時間であった。この
間、フラスコ内の液体温度を85℃から100℃へと徐
々に上昇させた。反応終了後に、フラスコ内を観察する
と、内壁に板状の固形分の付着が見られた。得られたグ
リオキシル酸水溶液の組成を、ガスクロマトグラフィー
(島津製作所社製、製品名:ガスクロマトグラフGC−
17A(ただし、検出器は水素炎イオン化(FID)を
使用))および高速液体クロマトグラフィー(カラム
は、昭和電工社製、製品名:Shodex Rspak
KC−811;検出器は、島津製作所社製の示唆屈折
計、製品名:RID−6A;移動相は、過塩素酸0.1
%水溶液)を共に用いて分析したところ、グリオキシル
酸48.7重量%、メタノール0.2重量%、シュウ酸
0.6重量%、水50.5重量%であった。また、含ま
れる鉄イオン濃度をICP発光分析装置(セイコー電子
工業(株)製、装置名:SPS4000)により分析し
た結果、鉄イオン濃度は110ppmであった。さら
に、得られたグリオキシル酸水溶液の液色は淡褐色で、
色相見本との目視による比較により調べたハーゼン値
(色相)は300であった。
【0046】続いて、フラスコ内からグリオキシル酸水
溶液を取り出し、固形分をヌッチェを用いて水流アスピ
レーターによる減圧濾過によって取り除き、さらに濾液
をイオン交換樹脂(ダウケミカル社製、製品名:DOW
EX)に通して溶け込んでいる鉄イオンを除去した。鉄
イオン除去後のグリオキシル酸水溶液に含まれる鉄イオ
ン濃度をICP発光分析装置(セイコー電子工業(株)
製、装置名:SPS4000)により分析した結果、鉄
イオン濃度は0.8ppmであった。上記鉄イオン除去
後の、グリオキシル酸水溶液を、ニッケル6.4重量
%、クロム24.9重量%、モリブデン3.2重量%の
組成からなるオーステナイト・フェライト二相系のステ
ンレス鋼製のセパラブルフラスコ(内容積300ミリリ
ットル)にジムロート冷却管を接続した装置に入れた
後、上記セパラブルフラスコ内をマントルヒーターで加
熱して、フラスコ内の温度を90℃に維持した状態で、
兵庫県姫路市から大阪府吹田市まで移送した。移送後、
フラスコの底には固形分の沈殿は見られなかった。その
際に、液相の組成をガスクロマトグラフィー(島津製作
所社製、製品名:ガスクロマトグラフGC−17A(た
だし、検出器は水素炎イオン化(FID)を使用))お
よび高速液体クロマトグラフィー(カラムは、昭和電工
社製、製品名:Shodex Rspak KC−81
1;検出器は、島津製作所社製の示唆屈折計、製品名:
RID−6A;移動相は、過塩素酸0.1%水溶液)を
共に用いて分析したところ、グリオキシル酸49.3重
量%、水50.8重量%であった。また、含まれる鉄イ
オン濃度をICP発光分析装置(セイコー電子工業
(株)製、装置名:SPS4000)により分析した結
果、鉄イオン濃度は13.9ppmであった。さらに、
得られたグリオキシル酸水溶液の液色は淡黄色で、色相
見本との目視による比較により調べたハーゼン値(色
相)は220であった。
【0047】−比較例1− 製造例で得られたグリオキシル酸メチルを原料として、
反応蒸留によりグリオキシル酸水溶液を合成した。用い
た装置は、ニッケル12.1重量%、クロム17.3重
量%、モリブデン2.1重量%の組成からなるオーステ
ナイト系のステンレス鋼(SUS316)製のセパラブ
ルフラスコ(内容積300ミリリットル)にビグルー分
留管を接続し、さらに該分留管の上部には冷却器を備え
た分留頭を設けた蒸留装置を使用した。上記セパラブル
フラスコ内にグリオキシル酸メチル156gおよび水1
55gを仕込み、内圧は常圧にしてフラスコを加熱させ
て反応を開始し、分留頭から水および副生物であるメタ
ノールを留出させながら、フラスコ内のグリオキシル酸
メチルが完全にグリオキシル酸に加水分解するまで反応
蒸留を行った。反応時間は6時間であった。この間、フ
ラスコ内の液体温度を85℃から100℃へと徐々に上
昇させた。反応終了後に、フラスコ内を観察したとこ
ろ、フラスコ内壁には固形分の付着・堆積が見られた。
得られたグリオキシル酸水溶液の組成を、ガスクロマト
グラフィー(島津製作所社製、製品名:ガスクロマトグ
ラフGC−17A(ただし、検出器は水素炎イオン化
(FID)を使用))および高速液体クロマトグラフィ
ー(カラムは、昭和電工社製、製品名:Shodex
Rspak KC−811;検出器は、島津製作所社製
の示唆屈折計、製品名:RID−6A;移動相は、過塩
素酸0.1%水溶液)を共に用いて分析したところ、グ
リオキシル酸48.7重量%、メタノール0.2重量
%、シュウ酸0.6重量%、水50.5重量%であっ
た。また、含まれる鉄イオン濃度をICP発光分析装置
(セイコー電子工業(株)製、装置名:SPS400
0)により分析した結果、鉄イオン濃度は103.6p
pmであった。さらに、得られたグリオキシル酸水溶液
の液色は淡褐色で、色相見本との目視による比較により
調べたハーゼン値(色相)は300であった。
【0048】−比較例2− 実施例1で得られたグリオキシル酸水溶液(鉄イオン濃
度3.3ppm)を、ニッケル12.1重量%、クロム
17.3重量%、モリブデン2.1重量%の組成からな
るオーステナイト系のステンレス鋼(SUS316)製
のセパラブルフラスコ(内容積300ミリリットル)に
ジムロート冷却管を接続した装置に入れた後、上記セパ
ラブルフラスコ内を加熱してフラスコ内の温度を90℃
に達してから100時間経過後、フラスコ内を観察した
ところ、フラスコの底に固形分が沈殿しているのが見ら
れた。その際に、液相の組成をガスクロマトグラフィー
(島津製作所社製、製品名:ガスクロマトグラフGC−
17A(ただし、検出器は水素炎イオン化(FID)を
使用))および高速液体クロマトグラフィー(カラム
は、昭和電工社製、製品名:Shodex Rspak
KC−811;検出器は、島津製作所社製の示唆屈折
計、製品名:RID−6A;移動相は、過塩素酸0.1
%水溶液)を共に用いて分析したところ、グリオキシル
酸38.3重量%、シュウ酸8.9重量%、水52.8
重量%であった。また、含まれる鉄イオン濃度をICP
発光分析装置(セイコー電子工業(株)製、装置名:S
PS4000)により分析した結果、鉄イオン濃度は2
50ppmであった。さらに、得られたグリオキシル酸
水溶液の液色は暗褐色で、色相見本との目視による比較
により調べたハーゼン値(色相)は1000以上であっ
た。
【0049】−比較例3− 実施例1で得られたグリオキシル酸水溶液(鉄イオン濃
度3.3ppm)を、ニッケル12.1重量%、クロム
17.3重量%、モリブデン2.1重量%の組成からな
るオーステナイト系のステンレス鋼(SUS316)製
のセパラブルフラスコ(内容積300ミリリットル)に
ジムロート冷却管を接続した装置に入れた後、上記セパ
ラブルフラスコ内をマントルヒーターで加熱して、フラ
スコ内の温度を90℃に維持した状態で、兵庫県姫路市
から大阪府吹田市まで移送した。移送後、フラスコ内を
観察したところ、フラスコの内壁に板状の固形分の堆積
が見られた。その際に、液相の組成をガスクロマトグラ
フィー(島津製作所社製、製品名:ガスクロマトグラフ
GC−17A(ただし、検出器は水素炎イオン化(FI
D)を使用))および高速液体クロマトグラフィー(カ
ラムは、昭和電工社製、製品名:Shodex Rsp
ak KC−811;検出器は、島津製作所社製の示唆
屈折計、製品名:RID−6A;移動相は、過塩素酸
0.1%水溶液)を共に用いて分析したところ、グリオ
キシル酸38.4重量%、シュウ酸8.9重量%、水5
2.7重量%であった。また、含まれる鉄イオン濃度を
ICP発光分析装置(セイコー電子工業(株)製、装置
名:SPS4000)により分析した結果、鉄イオン濃
度は270ppmであった。さらに、得られたグリオキ
シル酸水溶液の液色は暗褐色で、色相見本との目視によ
る比較により調べたハーゼン値(色相)は1000以上
であった。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、液中の鉄イオン濃度が
非常に低いグリオキシル酸水溶液、そのような水溶液を
得るために液中への鉄イオンの溶出を非常に低く抑えた
のグリオキシル酸水溶液の製造方法、および、製造した
グリオキシル酸水溶液の液中への鉄イオンの溶出を非常
に低く抑えたグリオキシル酸水溶液の保存方法を提供す
る。さらに、上記本発明のグリオキシル酸水溶液は、該
水溶液を原料としてさらに反応を行う場合に、鉄イオン
の存在に起因する反応の阻害や副反応の促進も抑制する
ことができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 59/153 C07C 59/153 (72)発明者 野々口 真則 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内 Fターム(参考) 4H006 AA02 AA05 AC46 BB31 BD83 BE30 BE31 BE32 BQ10 BS10

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液中の鉄イオン濃度が1〜100ppmで
    ある、グリオキシル酸水溶液。
  2. 【請求項2】グリオキシル酸を水溶液の状態で得る方法
    において、 前記水溶液の製造ラインにおける接触面には、前記水溶
    液への鉄イオンの溶出が100ppm以下となる材質を
    使用する、ことを特徴とする、グリオキシル酸水溶液の
    製造方法。
  3. 【請求項3】グリオキシル酸の水溶液を保存する方法に
    おいて、 前記水溶液の接触する面には、前記水溶液への鉄イオン
    の溶出が100ppm以下となる材質を使用する、こと
    を特徴とする、グリオキシル酸水溶液の保存方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7601667B2 (en) 2005-06-20 2009-10-13 Kanto Kagaku Kabushiki Kaisha Sulfonate catalyst and method of producing alcohol compound using the same
JP2019516742A (ja) * 2016-05-25 2019-06-20 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー Mmaから副成物を回収するためのプロセス
CN114062562A (zh) * 2021-11-29 2022-02-18 陕西延长石油(集团)有限责任公司 一种高效液相色谱检测甲醛羰基化反应产物的方法

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JP2019516742A (ja) * 2016-05-25 2019-06-20 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー Mmaから副成物を回収するためのプロセス
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