JP2003104713A - 非晶質シリカの製造方法 - Google Patents

非晶質シリカの製造方法

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JP2003104713A JP2001300924A JP2001300924A JP2003104713A JP 2003104713 A JP2003104713 A JP 2003104713A JP 2001300924 A JP2001300924 A JP 2001300924A JP 2001300924 A JP2001300924 A JP 2001300924A JP 2003104713 A JP2003104713 A JP 2003104713A
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calcium silicate
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Toshifumi Teramura
敏史 寺村
Noribumi Isu
紀文 井須
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Kenzai Gijutsu Kenkyusho KK
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Clion Co Ltd
Kenzai Gijutsu Kenkyusho KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 珪酸カルシウム系化合物から、短時間かつ少
ない処理工数のもとに、元の外形を保持した非晶質シリ
カを高分解率で効率的に製造する方法の提供。 【解決手段】 珪酸カルシウム系化合物を出発物質と
し、この珪酸カルシウム系化合物(固形分)と、濃度を
5〜50重量%に調整した酢酸水溶液(溶媒)とを、溶
媒/固形分の重量比が10〜50となるように混合した
混合液を、炭酸ガス圧1〜50MPa、温度70〜30
0℃の条件下で超臨界流体処理し、固体として析出する
非晶質シリカを回収する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ウォラストナイト
に代表される珪酸カルシウム系化合物を出発物質として
非晶質シリカを効率的に製造する方法、さらに詳しく
は、低結晶性から高結晶性までの珪酸カルシウム系化合
物から、短時間かつ少ない処理工数のもとに、元の繊
維、板状、粒子状の結晶形状を保持した非晶質シリカを
高分解率で効率的に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】非晶質シリカは、建築用あるいは土木資
材などの分野における添加剤や補強繊維として、あるい
は触媒担体や吸着剤として広く利用されている。
【0003】そして、このような非晶質シリカは、一般
に、珪酸ナトリウム水溶液を塩酸や硫酸などの無機酸で
中和し、得られた沈殿物を洗浄・乾燥することにより製
造されているが、この方法により得られる非晶質シリカ
は不規則または球状の形状からなり、製造方法や処理方
法によってその粒度が異なっている。
【0004】一方、珪酸カルシウム系化合物を出発物質
として、元の結晶形状を保持した非晶質シリカを製造す
る方法の従来例としては、(1)珪酸カルシウム系化合
物を酸性溶液中で処理する方法(特開昭61−6118
号公報、特開平10−323559号公報)、(2)炭
酸ガスと珪酸カルシウム系化合物とを反応させた後に酸
処理する方法(特公昭51−14809号公報、特開平
9−255323号公報)、および(3)表面張力低減
剤の存在下で前記(1)または(2)の処理を行う方法
(特開2000−34118号公報)などが知られてい
る。
【0005】これらの従来法は、いずれも主に石灰質原
料粉と珪酸質原料粉とを混合し、水熱反応によって生成
させた珪酸カルシウム系化合物を出発物質に用いてお
り、その場合の珪酸カルシウム系化合物の一次粒子は、
長さ1〜500μm程度、厚さ50オングストローム〜
約1μm程度、比表面積50〜400m2 /g程度の非
常に微細な結晶であり、これらの方法により、天然ウォ
ラストナイトのような長さ1mm以上、厚さ約10μm
以上という結晶性が非常に高い珪酸カルシウム系化合物
を処理することは困難であった。
【0006】また、上記の方法のなかでも、酸によって
珪酸カルシウム系化合物からカルシウム成分を溶脱させ
る場合には、元の結晶形状が崩壊しやすいという問題が
あるばかりか、処理後のカルシウムを含む酸を中和する
工程を余分に必要とし、工程的に繁雑であるという問題
もあった。
【0007】そこで、特許第2989580号には、天
然産ウォラストナイトを出発原料とし、これを炭酸ガス
または弱酸でpHを3〜6に調整する方法が提案されて
いる。しかし、この方法では、処理するウォラストナイ
トの繊維長さが長くなると、炭酸化に要する時間が長く
なるという問題があり、比表面積が10m2 /g以下の
非晶質シリカ繊維を得るためには、脱カルシウム処理を
して得られる繊維状非晶質シリカを、さらに800〜1
100℃で熱処理をする必要があることから、工程数が
多くなりコストアップを免れないという問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従
来技術における問題点の解決を課題として検討した結果
達成されたものである。
【0009】したがって、本発明の目的は、低結晶性か
ら高結晶性までの珪酸カルシウム系化合物から、短時間
かつ少ない処理工数のもとに、元の結晶形状を保持した
非晶質シリカを高分解率で効率的に製造する方法を提供
することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を達成するために鋭意検討した結果、酢酸の存在下に
炭酸ガスを超臨界流体とする超臨界流体処理を行うこと
により、結晶性が高い珪酸カルシウムを出発原料とする
場合であっても、短時間の処理で容易に元の結晶形状を
保った非晶質シリカが得られ、かつ、溶液中に溶脱した
カルシウム成分を処理後の反応系から加圧状態で排出す
ることにより、容易に非晶質シリカとカルシウム成分を
分離することができ、従来の技術では炭酸化の後に酸洗
浄を行っていた工程を大幅に短縮ないし省略できること
を見出し、本発明に到達した。
【0011】すなわち、本発明は、珪酸カルシウム系化
合物を出発物質とし、この珪酸カルシウム系化合物(固
形分)と、濃度を5〜50重量%に調整した酢酸水溶液
(溶媒)とを、溶媒/固形分の重量比が10〜50とな
るように混合分散させたスラリーを、炭酸ガス圧1〜5
0MPa、温度70〜300℃の条件下で超臨界流体処
理し、固体として析出する非晶質シリカを回収すること
を特徴とする非晶質シリカの製造方法を提供するもので
ある。
【0012】なお、本発明の非晶質シリカの製造方法に
おいては、前記混合液中の酢酸のモル数が珪酸カルシウ
ム系化合物中のCaOのモル数の2〜4倍であること、
前記珪酸カルシウム系化合物が高結晶性の化合物、特に
ウォラストナイトであること、前記超臨界流体処理をオ
ートクレーブを用いて行なうこと、および前記超臨界流
体処理を終了した後の反応系から、溶液部分を加圧状態
で排出して、この溶液部分に含まれる酢酸カルシウムを
分離析出させると共に、前記反応系に残留した固体状の
非晶質シリカを反応系から回収することが、いずれも好
ましい条件であり、これらの条件を適用することによ
り、さらに好ましい効果の取得を期待することができ
る。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の構成および効果
についてさらに詳細に説明する。
【0014】本発明の非晶質シリカの製造方法において
出発物質として用いる珪酸カルシウム系化合物の代表例
としては、天然産のウォラストナイトが挙げられるが、
その他にも、珪酸質原料と石灰質原料から水熱合成して
得られる合成珪酸カルシウム、すなわちトバモライト、
ゾノトライト、ジャイロライト、フォシャジャイト、ジ
ェナイト、ヒレブランダイト、トラスコタイト、および
α−ダイカルシウムシリケートハイドレートなども用い
ることができる。また、建築材料として用いられている
珪酸カルシウム材料、すなわち軽量気泡コンクリート
(ALC)、珪酸カルシウム板、中空押出板、新生瓦、
および保温材などを用いることもでき、これらの廃材な
どの産業廃棄物を利用することにより、リサイクルの観
点からの好ましい結果を実現することができる。
【0015】また、本発明に用いることができる珪酸カ
ルシウム系化合物の1次粒子の大きさには特に制限はな
いが、合成および建築材料用の珪酸カルシウム系化合物
の1次粒子は、通常、長さ1〜500μm程度、厚さ5
0オングストローム〜約1μm程度、比表面積50〜4
00m2 /g程度の非常に微細で高い比表面積を持つ場
合が多いことから、反応性が高く処理速度の点でも有利
である。
【0016】出発原料が天然ウォラストナイトの場合
は、長さ10μm〜2mm、厚さ約10μm以上、比表
面積1〜10m2 /gの大型結晶を用いることができ
る。そして、これよりも比表面積が小さい大型の結晶で
あっても、本発明の方法によれば比較的短時間で非晶質
シリカを得ることができる。
【0017】また、上記の珪酸カルシウム系化合物は、
スラリー、スラリーの脱水ケーキ、粉末のいずれの形態
でもであってもよいが、酢酸水溶液の濃度と溶媒/固形
分比との調整が容易である点では粉末が好ましい。
【0018】本発明の非晶質シリカの製造方法は、酢酸
水溶液を溶媒、炭酸ガスを超臨界流体とする超臨界流体
処理を基本とするものである。
【0019】本発明における、超臨界流体処理とは、臨
界温度および臨界圧力を超えた状態にある流体、すなわ
ち炭酸ガスにより、不要となる成分であるカルシウム化
合物を選択的に分離する技術である。本発明では、酢酸
が珪酸カルシウム系化合物と化学反応して酢酸カルシウ
ムを生成し、この酢酸カルシウムが酢酸水溶液に溶解す
ると共に、生成する非晶質シリカが固体として析出する
ことになる。
【0020】したがって、超臨界流体処理を終了した後
の反応系から、溶液部分を加圧状態で排出して、この溶
液部分に含まれる酢酸カルシウムを分離析出させると共
に、前記反応系に残留した固体状の非晶質シリカを反応
系から分離回収することにより、ほぼもとの形状を保持
した非晶質シリカを高分解率で得ることができるのであ
る。
【0021】上記超臨界流体処理の反応系としては、密
閉系の反応容器、主としてオートクレーブが使用される
が、密閉系であれば、圧送ポンプと放圧弁とを備えた反
応塔および高圧釜なども使用することができる。
【0022】上記超臨界流体処理の処理条件としては、
珪酸カルシウム系化合物(固形分)と、濃度を5〜50
重量%、好ましくは10〜30重量%に調整した酢酸水
溶液(溶媒)とを、溶媒/固形分の重量比が10〜5
0、好ましくは20〜40となるように混合分散させた
混合液を、炭酸ガス圧1〜50MPa、好ましくは4〜
40MPa、温度70〜300℃、好ましくは120〜
250℃の条件で処理することが重要である。
【0023】使用する酸としては、酢酸以外の酸でも可
能ではあるが、強酸では得られる非晶質シリカの外形が
崩壊するので好ましくない。特に塩酸を使用する場合
は、塩素分によって反応容器(オートクレーブ)の材質
である金属を激しく腐食させるため好ましくない。さら
には、珪酸カルシウム系化合物から溶脱したカルシウム
イオンを溶解する能力が高い酸であることが好ましい。
これは、反応の副産物であるカルシウム塩と非晶質シリ
カを分離する操作が不必要になるためである。したがっ
て、弱酸であると共にカルシウム溶解能力が高く、かつ
取り扱いが容易で、安価な酢酸の使用が最適である。
【0024】酢酸水溶液の酢酸濃度は5〜50重量%の
範囲が好ましく、5重量%未満である場合は反応に長時
間を要するようになり、また50重量%を超えると反応
が急激に起こり、珪酸カルシウム系化合物の外形が崩壊
しやすくなるため好ましくない。酢酸濃度が特に10〜
30重量%の範囲であることが、反応速度と得られる非
晶質シリカの外形の保持性の観点からさらに好ましい。
【0025】溶媒/固形分の重量比は10〜50の範囲
が好ましく、50を超えると液体の量が多く固形物の量
が少なくなり、また10未満では粘度が高くなり反応が
不均質になると共に、反応により溶脱する酢酸カルシウ
ムが析出しやすくなって、非晶質シリカとの分離操作が
必要になるため好ましくない。溶媒/固形分の重量比が
特に20〜40の範囲であることが、反応の均質性と反
応速度、ならびにカルシウムと非晶質シリカとの分離の
しやすさの点でさらに好ましい。
【0026】なお、酢酸水溶液の酢酸濃度と溶媒/固形
分の重量比から、添加する酢酸のモル数が求められる
が、この酢酸のモル数は処理する珪酸カルシウム系化合
物中のCaOモル数の2〜4倍とすることが好ましい。
酢酸モル数が2倍未満の場合は、珪酸カルシウム系化合
物が完全に分解せずに残存すると共に、溶脱したカルシ
ウムから生成する酢酸カルシウムが非晶質シリカ上に析
出しやすくなるという好ましくない傾向を生じる。ま
た、酢酸モル数が4倍を越える場合は、非晶質シリカは
得られるが、反応後の溶液中に酢酸成分が過剰に残存す
ることから、中和工程が必要となるため好ましくない。
【0027】次に、上記の割合で酢酸水溶液と珪酸カル
シウム系化合物とを混合分散させた混合液を、反応容
器、好ましくはオートクレーブに充填し、炭酸ガスで1
〜50MPaの範囲の圧力に加圧し、70〜300℃の
範囲の温度で超臨界流体処理する。
【0028】ここで、炭酸ガスの圧力は、高圧であるほ
ど反応速度が大きくなることから、可能な限り高圧で処
理を行なうことが好ましいが、あまりに高圧にする場合
には、装置設備ならびにそのコストが大きくなるため、
通常は40MPaまでとすることが好ましい。また、1
MPa未満の炭酸ガス圧では、反応に長時間を必要とす
るため好ましくない。
【0029】加熱温度は70〜300℃が好ましく、7
0℃未満では反応速度が小さくなり、また300℃を越
える場合は反応速度はさらに大きくなるものの、装置設
備のコストが大きくなるため、いずれの場合も好ましく
ない。反応速度および反応装置のバランスから120〜
250℃の範囲の処理温度であることがさらに好まし
い。
【0030】処理時間は30分から30時間が好ましい
が、用いる珪酸カルシウム系化合物の結晶性によって処
理時間が異なる。例えば、結晶性が低いC−S−Hの場
合は30分以内で反応が終了するが、結晶性が高い天然
ウォラストナイトを用いる場合は炭酸ガス圧、処理温
度、溶媒/固形分の重量比、および酢酸/CaOモル比
の各条件によっては5〜30時間の処理が必要である。
これは、珪酸カルシウム系化合物の結晶性が高い場合は
反応性に乏しく、さらに結晶表面から内部まで反応が進
みにくいことによるものと考えられる。
【0031】超臨界流体処理が終了した後は、加圧条件
下で反応容器内の液体を分離する。このためには反応容
器に液体取り出し口を設置しておく必要がある。例え
ば、オートクレーブ下部に珪酸カルシウム系化合物が通
過しない網などを設置しておくことにより、液体を最下
部に設置した液体取り出し口からバルブの開閉によって
取り出すことができる。
【0032】このようにして反応容器から取り出した液
体を、そのまま噴霧乾燥すれば酢酸カルシウムの微粒子
が得られ、噴霧用のノズル形状や流速を変えることによ
って、分離析出する微粒子の大きさや形状を制御するこ
とができる。また、液体をそのまま蒸発乾固することも
可能である。オートクレーブ内の液体を完全に取り出す
には、炭酸ガスや圧縮空気などの加圧気体を用いること
が好ましい。
【0033】そして、反応容器に残留した固体状物を分
離回収することにより、元の結晶形状をほぼ保持した非
晶質シリカを高分解率で容易に得ることができ、得られ
る非晶質シリカには液体の付着がほとんどないため、洗
浄などの工程を省略してそのまま実用に供することが可
能である。また、反応容器から取り出した液体から回収
された酢酸カルシウムも、洗浄などの工程を経ることな
く、そのまま所望の用途に供することができる。
【0034】かくして、本発明の製造方法により効率的
に得られた非晶質シリカは、出発物質の形状をほぼ保持
したものであり、高純度珪酸質原料として、建築用ある
いは土木資材などの分野における添加剤や補強繊維の用
途、あるいは触媒担体や吸着剤の用途などに広く利用す
ることができる。
【0035】
【実施例】以下に、実施例および比較例を挙げて、本発
明の構成・効果をさらに説明する。
【0036】[実施例1]シリカ原料と石灰原料とをC
a/Siモル比で1に調整した混合粉末に対して、重量
比で20倍になるように水を加えて混合、撹拌したスラ
リーを、210℃で10時間オートクレーブ中で撹拌し
ながら水熱反応を行い、ゾノトライトスラリーを得た。
【0037】このスラリーを乾燥させ、窒素吸着法によ
り分散粒子の比表面積を測定した結果51.4m2 /g
の値を得た。また、電子顕微鏡で観察すると、長さ1〜
20μm、幅0.01〜1μm、厚さ約1μmの針状結
晶が球状の2次粒子を形成していた。
【0038】次に、この乾燥粉体に対して、溶媒/固形
分の重量比が20、酢酸/CaOモル比が3.4となる
ように、酢酸水溶液を添加し撹拌することにより混合液
を調製した。
【0039】次いで、上記の混合液をオートクレーブに
入れ炭酸ガスを圧送し、炭酸ガス圧29MPa、温度1
20℃の条件で10分間超臨界流体処理を行った。
【0040】その後、オートクレーブ内部の溶液を、オ
ートクレーブに取り付けた液体取り出し口から溶液用の
配管を通して、かつ別の配管から炭酸ガスで加圧しなが
ら、完全に取り出すと共に、溶液用の配管先端に取り付
けたノズルから噴出させることにより、粉体を分離析出
させた。
【0041】オートクレーブ内に残った固体は、X線回
折から非晶質シリカであり、前記の溶液から得た粉体は
酢酸カルシウムであることがわかった。
【0042】このように、ゾノトライトを短時間の超臨
界流体処理処理で完全に分解すると共に、カルシウム成
分を分離することができた。
【0043】得られた非晶質シリカのX線回折から求め
た分解率は100%であり、比表面積が130m2 /g
で、電子顕微鏡観察により元の形状をほぼ保持している
ことが確認できた。
【0044】[実施例2]天然ウォラストナイトを粉砕
分級して比表面積3.9m2 /gの粉体を得た。この粉
体を電子顕微鏡で観察すると、長さ10μm〜1mm、
幅1〜30μm、厚さ10〜20μmの針状結晶であっ
た。
【0045】次に、この乾燥粉体に対して、溶媒/固形
分の重量比が20、酢酸/CaOモル比が3.9となる
ように、酢酸水溶液を添加し撹拌することにより混合液
を調製した。
【0046】次いで、上記の混合液を実施例1と同様の
オートクレーブに入れ、炭酸ガス圧40MPa、温度1
20℃の条件で20時間超臨界流体処理を行った。
【0047】その後、オートクレーブ内部の溶液を、オ
ートクレーブに取り付けた液体取り出し口から溶液用の
配管を通して、かつ別の配管から炭酸ガスで加圧しなが
ら、完全に取り出すと共に、溶液用の配管先端に取り付
けたノズルから噴出させることにより、粉体を分離析出
させた。
【0048】オートクレーブ内に残った固体は、X線回
折から非晶質シリカであり、前記の溶液から得た粉体は
酢酸カルシウムであることがわかった。
【0049】このように、ウォラストナイトを短時間の
オートクレーブ処理で完全に分解すると共に、カルシウ
ム成分を分離することができた。
【0050】すなわち、本実施例によれば、天然ウォラ
ストナイトのような大型の結晶であっても、超臨界流体
処理処理により完全に分解できると共に、カルシウム成
分を分離することができた。
【0051】そして、得られた非晶質シリカのX線回折
から求めた分解率は100%であり、比表面積が7.5
2 /gで、電子顕微鏡観察により元の形状をほぼ保持
していることが確認できた。
【0052】[実施例3]実施例2と同じ天然ウォラス
トナイト用い、その乾燥粉体に対して、溶媒/固形分の
重量比が10、酢酸/CaOモル比が2となるように、
酢酸水溶液を添加し撹拌することにより混合液を調製し
た。
【0053】次いで、上記の混合液を実施例1と同様の
オートクレーブに供し、炭酸ガス圧17MPa、温度2
00℃の条件で20時間超臨界流体処理を行った。
【0054】その後、オートクレーブ内部の溶液を、オ
ートクレーブに取り付けた液体取り出し口から溶液用の
配管を通して、かつ別の配管から炭酸ガスで加圧しなが
ら、完全に取り出すと共に、溶液用の配管先端に取り付
けたノズルから噴出させることにより、粉体を分離析出
させた。
【0055】オートクレーブ内に残った固体は、X線回
折から非晶質シリカであり、前記の溶液から得た粉体は
酢酸カルシウムであることがわかった。
【0056】このように、ウォラストナイトを短時間の
オートクレーブ処理で完全に分解すると共に、カルシウ
ム成分を分離することができた。
【0057】そして、得られた非晶質シリカのX線回折
から求めた分解率は100%であり、比表面積が7.2
2 /gで、電子顕微鏡観察により元の形状をほぼ保持
していることが確認できた。
【0058】[比較例1]実施例2と同じ天然ウォラス
トナイト用い、その乾燥粉体に対して、溶媒/固形分の
重量比が10となるように、溶媒として水を添加し撹拌
することにより混合液を調製した。
【0059】次いで、上記の混合液を実施例1と同様の
オートクレーブに入れ、炭酸ガス圧15MPa、温度2
00℃の条件で40時間超臨界流体処理を行った。
【0060】その後、オートクレーブ内部の溶液を、オ
ートクレーブの最下部に取り付けた液体取り出し口から
溶液用の配管を通して、かつ別の配管から炭酸ガスで加
圧しながら、完全に取り出すと共に、溶液用の配管先端
に取り付けたノズルから噴出させることにより、粉体を
分離析出させた。
【0061】オートクレーブ内に残った固体は、X線回
折から未反応のウォラストナイトと、非晶質シリカと、
炭酸カルシウムとが共存したものであり、ウォラストナ
イトのX線回折から求めた分解率は76%であった。ま
た、溶液から得られた粉体は炭酸カルシウムであること
がわかった。
【0062】このように、炭酸ガスと水だけからなる反
応系では、天然ウォラストナイトのような大型結晶は分
解できないばかりか、カルシウム成分の分離も不十分で
あった。
【0063】また、オートクレーブ内の固体は、比表面
積が2.1m2 /gであり、電子顕微鏡観察により観察
したところ、一部分解したウォラストナイトの表面に炭
酸カルシウム粒子が付着していることが確認できた。
【0064】[比較例2]実施例2と同じ天然ウォラス
トナイト用い、この乾燥粉体に対して、溶媒/固形分の
重量比が10、酢酸/CaOモル比が2となるように、
酢酸水溶液を添加し撹拌することにより混合液を調製し
た。
【0065】次いで、上記の混合液を実施例1と同様の
オートクレーブに入れ、炭酸ガスを供することなく、温
度60℃で40時間反応を行った。その後、容器中のス
ラリーを濾過し、固体を分離した。
【0066】得られた固体は、X線回折から未反応のウ
ォラストナイトと、非晶質シリカと、酢酸カルシウムと
が共存したものであり、ウォラストナイトのX線回折か
ら求めた分解率は71%であった。
【0067】このように、酢酸水溶液だけからなる反応
系では、天然ウォラストナイトのような大型結晶は完全
に分解できないばかりか、カルシウム成分の分離も不十
分であった。
【0068】また、オートクレーブ内の固体は、比表面
積が2.5m2 /gであり、電子顕微鏡観察により観察
したところ、一部分解したウォラストナイトの表面に酢
酸カルシウム粒子が付着していることが確認できた。
【0069】[比較例3]実施例2と同じ天然ウォラス
トナイト用い、この乾燥粉体に対して、溶媒/固形分の
重量比が10、酢酸/CaOモル比が2となるように、
酢酸水溶液を添加し撹拌することにより混合液を調製し
た。
【0070】次いで、上記の混合液を実施例1と同様の
オートクレーブに入れ、炭酸ガスを供することなく、蒸
気圧1.6MPa、温度200℃で40時間反応を行っ
た。その後、容器中のスラリーを濾過し、固体を分離し
た。
【0071】得られた固体は、X線回折から未反応のウ
ォラストナイトと、非晶質シリカと、酢酸カルシウムと
が共存したものであり、ウォラストナイトのX線回折か
ら求めた分解率は53%であった。
【0072】このように、酢酸水溶液だけからなる高温
度の反応系にあっては、天然ウォラストナイトのような
大型結晶は完全に分解できないばかりか、カルシウム成
分の分離も不十分であった。
【0073】また、オートクレーブ内の固体は、比表面
積が2.8m2 /gであり、電子顕微鏡観察により観察
したところ、一部分解したウォラストナイトの表面に酢
酸カルシウム粒子が付着していることが確認できた。
【0074】[比較例4]実施例2と同じ天然ウォラス
トナイト用い、その乾燥粉体に対して、溶媒/固形分の
重量比が10、酢酸/CaOモル比が2となるように、
酢酸水溶液を添加し撹拌することにより混合液を調製し
た。
【0075】次いで、上記の混合液を実施例1と同様の
オートクレーブに入れ、炭酸ガス圧5MPa、温度60
℃の条件で40時間超臨界流体処理を行った。
【0076】その後、オートクレーブ内部の溶液を、オ
ートクレーブに取り付けた液体取り出し口から溶液用の
配管を通して、かつ別の配管から炭酸ガスで加圧しなが
ら、完全に取り出すと共に、溶液用の配管先端に取り付
けたノズルから噴出させることにより、粉体を分離析出
させた。
【0077】オートクレーブ内に残った固体は、X線回
折から未反応のウォラストナイトと、非晶質シリカと、
酢酸カルシウムとが共存したものであり、ウォラストナ
イトのX線回折から求めた分解率は76%であった。ま
た、溶液から得た粉体は酢酸カルシウムであることがわ
かった。
【0078】このように、炭酸ガス加圧下で酢酸と天然
ウォラストナイトのような大型の結晶を反応させたとし
ても、圧力・温度条件を適正に制御しない場合には、ウ
ォラストナイトを完全に分解することはできない。
【0079】また、オートクレーブ内の固体は、比表面
積が5.3m2 /gであり、電子顕微鏡観察により観察
したところ、一部分解したウォラストナイトの表面に酢
酸カルシウム粒子が付着していることが確認できた。
【0080】以上の実施例1〜3および比較例1〜4の
処理条件および処理結果を表1にとりまとめた。
【表1】
【0081】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
結晶性の非常に高い天然ウォラストナイトをはじめとす
る珪酸カルシウムを出発物質として、短時間かつ少ない
処理工数のもとに、元の形状を保持した非晶質シリカを
高分解率で効率的に得ることができると共に、溶脱した
カルシウムを分離することができる。
【0082】そして、本発明の方法により得られた非晶
質シリカは、建築用あるいは土木資材などの分野におけ
る添加剤や補強繊維の用途、あるいは触媒担体や吸着剤
の用途などに、新たな高純度珪酸質原料として広く利用
することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G072 AA25 BB13 GG01 GG03 HH23 JJ12 KK17 LL17 MM01 NN06 RR01 RR12 UU07 UU11 UU17

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 珪酸カルシウム系化合物を出発物質と
    し、この珪酸カルシウム系化合物(固形分)と、濃度を
    5〜50重量%に調整した酢酸水溶液(溶媒)とを、溶
    媒/固形分の重量比が10〜50となるように混合した
    混合液を、炭酸ガス圧1〜50MPa、温度70〜30
    0℃の条件下で超臨界流体処理し、固体として析出する
    非晶質シリカを回収することを特徴とする非晶質シリカ
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記混合液中の酢酸のモル数が、珪酸カ
    ルシウム系化合物中のCaOのモル数の2〜4倍である
    ことを特徴とする請求項1記載の非晶質シリカの製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記珪酸カルシウム系化合物が高結晶性
    の化合物であることを特徴とする請求項1または2記載
    の非晶質シリカの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記珪酸カルシウム系化合物がウォラス
    トナイトであることを特徴とする請求項3記載の非晶質
    シリカの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記超臨界流体処理をオートクレーブを
    用いて行なうことを特徴とする請求項1〜4のいずれか
    1項記載の非晶質シリカの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記超臨界流体処理を終了した後の反応
    系から、溶液部分を加圧状態で排出して、この溶液部分
    に含まれる酢酸カルシウムを分離析出させると共に、前
    記反応系に残留した固体状の非晶質シリカを反応系から
    回収することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項
    記載の非晶質シリカの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009001447A (ja) * 2007-06-21 2009-01-08 National Institute Of Advanced Industrial & Technology シリカ多孔質体およびその製造方法、並びにその利用

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