JP2003096213A - 易開封性シーラントフィルム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 エチレン系樹脂組成物層表面とヒートシール
された場合の開封強度を一定値以下とすることによりヒ
ートシールが容易で密封性、易開封性を有し、開封時に
糸引き、ケバ立ちが発生せず、かつ、ボイルやレトルト
などの加熱処理に耐える耐熱性、耐油性を有する易開封
性シーラントフィルムを提供すること。 【解決手段】 エチレン系樹脂組成物層表面とヒートシ
ールされた場合の開封強度が８Ｎ／１５ｍｍ以下である
ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ヒートシールが容
易で密封性、易開封性を有するシーラントフィルムに関
し、さらに詳しくは、開封時に糸引き、ケバ立ちが発生
せず、かつ、ボイルやレトルトなどの加熱処理に耐える
耐熱性、耐油性を有する易開封性シーラントフィルムに
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、一般に、食品、薬品、化粧品など
は包装体や容器などで収納されている。これら包装体や
容器は外気の遮断、内容物の飛散、酸化や香りの飛散を
防止している。また、内容物を殺菌するために包装後、
ボイルやレトルトなどの加熱処理が施されている。これ
らの包装体や容器は内面に施されたヒートシール層を熱
融着することで密封する方法が一般的に用いられてい
る。従って、前記の包装体や容器を用いる目的を達する
ためには、このヒートシール層は充分な密封性を有する
ことが必要であり、さらに輸送時などの過程でこのヒー
トシール部が剥がれないようにする必要がある。

【０００３】しかしながら、外気の遮断、内容物の飛
散、酸化や香りの飛散を防止するための過剰なヒートシ
ール強度は、逆に、消費者がその内容物を取り出す際、
手で開封することができず、ナイフや鋏などの器具を使
わなければならないことも少なくなかった。このような
問題点から、外気の遮断、内容物の飛散、酸化や香りの
飛散を防止するために充分な密封性と開封時に手で容易
に開封できるような易開封性を有する易開封性シーラン
トフィルムやそれを用いた包装体及び容器が提案されて
いる。

【０００４】例えば、特開昭５７−１３１５５６号公報
には、ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体
にポリブテン−１をブレンドした層、または低密度ポリ
エチレンにポリプロピレンをブレンドした層をヒートシ
ール層とし、これと加工改善層とを共押出ししてなる、
ポリオレフィン系樹脂層とイージーピール可能なイージ
ーピールフィルムの製造方法について開示されている。
また、特開昭６０−２３９２３８号公報には、アイオノ
マー樹脂にエチレン−プロピレン共重合体をブレンドし
てなるヒートシール層を積層体のヒートシール層として
配してなる、オレフィン系樹脂をヒートシール相手とし
て易開封性ヒートシールが可能な多層包装材について開
示されている。これらは樹脂間の接着強度の低さをもと
に開封時に容易に樹脂が破壊されることにより、易開封
性のシーラントを達成している。ところが、これらは加
工段階で酢酸ビニル成分の劣化が起こり加工性を低下さ
せる懸念があり製造上の制約が大きく、また、開封時に
破壊された各樹脂が糸状になって伸びるいわゆる糸引き
が発生し、見栄えが劣る上に開封面から糸状になった樹
脂が内容物中に混入する恐れもある。

【０００５】また、他の例として特開昭６２−１０９７
６８号公報には、ポリプロピレンの層と、ポリプロピレ
ンを含む厚さ１１μｍ以下のブレンドポリマー層との共
押出しフィルムをシーラント層とした易開封性密封包装
材料について開示されている。しかし、この包装材料
は、ポリプロピレン層に接着力がないため、開封時に両
層間での界面剥離が生じて、均一かつ円滑な開封ができ
ず、しかも剥離面の美観が損なわれ易い、という問題点
がある。また、これまで提案されている易開封性シーラ
ントフィルムの中には耐油性に劣るものもある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
易開封性シーラントフィルムの有する問題点を解決し、
エチレン系樹脂組成物層表面とヒートシールされた場合
の開封強度を一定値以下とすることによりヒートシール
が容易で密封性、易開封性を有し、開封時に糸引き、ケ
バ立ちが発生せず、かつ、ボイルやレトルトなどの加熱
処理に耐える耐熱性、耐油性を有する易開封性シーラン
トフィルムを提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の易開封性シーラントフィルムは、エチレン
系樹脂組成物層表面とヒートシールされた場合の開封強
度が８Ｎ／１５ｍｍ以下であることを特徴とする。

【０００８】ここで、開封強度とは、易開封性シーラン
トフィルムのシーラント面とエチレン系樹脂組成物層表
面とを１７０℃から２３０℃までの範囲の温度でヒート
シールした場合の剥離強度をいう。

【０００９】また、この場合、易開封性シーラントフィ
ルムを、下記（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｃ）の特性を満たし
たプロピレン−エチレンブロック共重合体を主成分とす
るポリプロピレン樹脂組成物からなるものとすることが
できる。 （Ａ）１３５℃テトラリン中で測定した極限粘度
（［η］）が１．７５ｄＬ／ｇ以下 （Ｂ）２０℃キシレン可溶部の極限粘度（［η］ｃｘ
ｓ）が１．５０ｄＬ／ｇ以下 （Ｃ）融点（Ｔｍ）＞１５５℃

【００１０】また、この場合、易開封性シーラントフィ
ルムを、少なくとも２層以上の多層構成からなり、か
つ、少なくとも前記エチレン系樹脂組成物層表面とヒー
トシールされる側にヒートシール層が積層されたものと
することができる。

【００１１】さらにまた、この場合、厚さを２００μｍ
以下とすることができる。

【００１２】上記の構成からなる本発明の易開封性シー
ラントフィルムは、ヒートシールが容易で密封性、易開
封性に優れ、開封時に糸引き、ケバ立ちが発生せず、か
つ、ボイルやレトルトなどの加熱処理に耐える耐熱性、
耐油性を有する。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明の易開封性シーラン
トフィルムの実施の形態を説明する。

【００１４】本発明において、エチレン系樹脂組成物層
は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度
ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・ア
クリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体
などのエチレン系樹脂組成物により形成された層であっ
て、これらは単層のフィルム又は深絞り成形トレイなど
であるほか、共押出し法により積層した層、押出しラミ
ネート法によりポリエチレンイミン層など接着改善層を
形成した上に溶融押出し積層した層であってもよい。実
用的には、低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチ
レンを用いることが多い。このエチレン系樹脂組成物層
の厚みとしては、１００〜５００μｍ程度、好ましくは
１００〜３００μｍ程度であるのが一般的である。

【００１５】本発明の易開封性シーラントフィルムはエ
チレン系樹脂組成物層表面とヒートシールされた場合の
開封強度が８Ｎ／１５ｍｍ以下であり、好ましくは２〜
７Ｎ／１５ｍｍである。開封強度が８Ｎ／１５ｍｍを超
えると手で開封する際易開封感がなくなってしまう。ま
た、開封強度が２Ｎ／１５ｍｍ未満であるとヒートシー
ル部分が簡単に剥がれて、密封性の効果が発揮されにく
くなり、好ましくない。

【００１６】さらには、本発明の易開封性シーラントフ
ィルムは、好ましくは、エチレン系樹脂組成物層表面と
ヒートシールされた場合の開封強度が８Ｎ／１５ｍｍ以
下であって、下記（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｃ）の特性を満
たしたプロピレン−エチレンブロック共重合体を主成分
とするポリプロピレン樹脂組成物から形成されてなるも
のである。 （Ａ）１３５℃テトラリン中で測定した極限粘度
（［η］）が１．７５ｄＬ／ｇ以下 （Ｂ）２０℃キシレン可溶部の極限粘度（［η］ｃｘ
ｓ）が１．５０ｄＬ／ｇ以下 （Ｃ）融点（Ｔｍ）＞１５５℃ ここで、開封強度が８Ｎ／１５ｍｍを超えると手で開封
する際、易開封感がなくなってしまう。

【００１７】また、本発明において用いるプロピレン−
エチレンブロック共重合体を主成分とするポリプロピレ
ン樹脂組成物は、多量のプロピレンと少量のエチレンと
の共重合成分と、少量のプロピレンと多量のエチレンと
の共重合成分とが、ブロック的に共重合したものであ
り、それぞれの共重合体ブロックの分子量は、重合段階
で制御される。一般的には、特開昭５９−１１５３１２
号公報で示されるように、２段階以上の方法によって得
ることができるが、特に、本発明では限定されるもので
はない。

【００１８】本発明において用いるプロピレン−エチレ
ンブロック共重合体を主成分とするポリプロピレン樹脂
組成物は１３５℃テトラリン中で測定した極限粘度
（［η］）が１．７５ｄＬ／ｇ以下、好ましくは１．３
０〜１．７０ｄＬ／ｇである。また、２０℃キシレン可
溶部の極限粘度（［η］ｃｘｓ）が１．５０ｄＬ／ｇ以
下、好ましくは１．１５〜１．４５ｄＬ／ｇである。さ
らに融点（Ｔｍ）は１５５℃を越えることが必要であ
る。一方、１３５℃テトラリン中で測定した極限粘度
（［η］）が１．７５ｄＬ／ｇを越える場合には、得ら
れたフィルムの開封強度が高くなり、良好な易開封性が
得られ難くなり好ましくない。２０℃キシレン可溶部の
極限粘度（［η］ｃｘｓ）が１．５０ｄＬ／ｇを越える
場合も、得られたフィルムの開封強度が高くなり、さら
に、開封時に破壊された各樹脂が糸状になって伸びるい
わゆる糸引きが発生し易く見栄えが劣り好ましくない。
融点が１５５℃以下の場合には、耐熱性が劣り好ましく
ない。

【００１９】本発明において用いるポリプロピレン樹脂
組成物は、ヒートシール層として積層した形でも用いる
ことができ、また、ヒートシール層に積層される層は１
層でも２層以上の複層でもよい。このような場合、各層
との層間剥離強度がエチレン系樹脂組成物層表面とヒー
トシールされた場合の開封強度を上回れば特に限定され
るものではない。積層方法は溶融共押出し法が一般的で
あるが、本発明を逸脱しない限り特に限定されるもので
はない。

【００２０】本発明の易開封性シーラントフィルムの厚
さは、２００μｍ以下であるのが好ましい。厚さが２０
０μｍを越える場合には、適正な易開封性が得られるヒ
ートシール温度が高温になり、その結果適正なヒートシ
ール温度領域が狭くなり、好ましくない。

【００２１】本発明の易開封性シーラントフィルムは合
成樹脂接着層を介して、一方の面に金属箔層及び／又は
熱可塑性樹脂層を積層させて積層体を得ることもでき
る。また、この積層体は合成樹脂層を中心層として設け
その一方の面に金属箔層及び／又は熱可塑性樹脂層を積
層し、他方の面に本発明の易開封性シーラントフィル
ム、又はヒートシール層を積層して得た易開封性シーラ
ントフィルムの場合はヒートシール層の他方の面を貼合
して得られる。積層させる方法としてはドライラミネー
ト、押出しラミネート法などが挙げられる。

【００２２】本発明の易開封性シーラントフィルムは、
エチレン系樹脂組成物層が本体部の表面となる容器の蓋
材としても使用することができる。

【００２３】次に、本発明の易開封性シーラントフィル
ムの製造方法の一例について説明する。まず、本発明の
易開封性シーラントフィルムの製造に用いる樹脂組成物
（以下、ポリプロピレン樹脂組成物を用いた例で説明す
るが、エチレン系樹脂組成物層表面とヒートシールされ
た場合の開封強度が８Ｎ／１５ｍｍ以下であればポリプ
ロピレン樹脂組成物に限定されるものではない）を溶融
押出機に供給し、通常、２１０〜２８０℃の温度で溶融
押出しし、濾過フィルターを経た後、口金からシート状
に成形し、通常２０〜８０℃に調整された金属ドラムに
巻き付け冷却固化し、金属ドラムの速度を調整して、厚
さ２００μｍ以下になるようにして易開封性シーラント
フィルムを得る。

【００２４】また、本発明において易開封性シーラント
フィルムの製造に用いるポリプロピレン樹脂組成物を積
層させる場合は、所定の樹脂組成物を所定の組成比に混
合し、各溶融押出機に供給し、濾過フィルターを経た
後、上記ポリプロピレン樹脂組成物を最外層になるよう
に積層し、口金からシート状に押出し、通常、２０〜８
０℃に調整された金属ドラムに巻き付け冷却固化して、
易開封性シーラントフィルムを得る。

【００２５】なお、本発明の易開封性シーラントフィル
ムの製造に際しては、本発明の効果が損なわれない限り
必要に応じて安定剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤など
の添加剤を加えても差し支えない。

【００２６】以下、実施例によって本発明を具体的に説
明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものでは
ない。なお、本発明において用いた特性値は次の測定法
による。

【００２７】（１）極限粘度（［η］ｄＬ／ｇ） ウベローデ型粘度計を用いて測定した。

【００２８】（２）融点（℃） 示差走査型熱量計（ＤＳＣ）を用いて窒素雰囲気下で１
０℃／分で昇温させて、得られた融解吸収カーブの温度
を融点とした。

【００２９】（３）開封強度（Ｎ／１５ｍｍ） 易開封性シーラントフィルムのシーラント面と三菱樹脂
社製ダイアミロンＭＦ（Ｅ６０７：厚み２００μｍ）の
エチレン系樹脂組成物層表面であるヒートシール面とを
１７０℃から２３０℃まで１０℃毎の温度条件で、圧力
０．３ＭＰａ、加圧・加熱時間２秒でヒートシールした
後、幅１５ｍｍに切り取り、剥離速度２００ｍｍ／分の
速度でヒートシール部の剥離強度を測定した。剥離中の
安定した領域を読み取り、ｎ数は５とし、その平均値を
開封強度とした。

【００３０】（４）糸引き・ケバ立ち 上記（３）で得られた剥離後の剥離界面を観察し以下の
基準で官能評価した。 ○：糸引き・ケバ立ちが起こらない。 ×：糸引き・ケバ立ちが起こる。

【００３１】（５）易開封感 ヒートシール温度を２００℃として他の条件は上記
（３）と同条件でヒートシールした後、幅５０ｍｍに切
り取り任意の剥離方向で剥離した際の抵抗感を官能評価
した。 ○：剥離抵抗が大きくなく易開封感がある。 ×：剥離抵抗が大きく易開封感がない、または剥離不
能。

【００３２】（６）耐熱性 ヒートシール温度を２００℃として他の条件は上記
（３）の条件でヒートシールして、タテ１５０ｍｍ、ヨ
コ１５０ｍｍの袋を製造し、脱気した後１１０℃で３０
分加熱処理した後、袋を開封した際の融着の有無を目視
評価した。 ○：融着が認められなかった。 ×：融着が認められた。

【００３３】

【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を
受けるものではなく、本発明の趣旨に適合しうる範囲で
適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは
いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。

【００３４】（実施例１、２及び３）１３５℃テトラリ
ン中で測定した極限粘度（［η］）が１．５９ｄＬ／
ｇ、２０℃キシレン可溶部の極限粘度（［η］ｃｘｓ）
が１．４１ｄＬ／ｇのプロピレン−エチレンブロック共
重合体を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物を公知
の方法で実施例１では単層で６０μｍを、実施例２では
ポリプロピレン樹脂組成物をヒートシール層に、支持層
として別のポリオレフィン系樹脂組成物（出光石油化学
社製ＩＤＥＭＩＴＵ ＰＰ Ｆ７０４ＮＰ 融点１６１
℃、メルトフローインデックス７．０）を用い、層構成
厚み比１／３になるように積層で６０μｍを、また実施
例３では単層で１５０μｍの易開封性シーラントフィル
ムを各々得た。この易開封性シーラントフィルムをポリ
エチレンテレフタレートフィルム（東洋紡績社製Ｅ５１
００：２５μｍ）とドライラミネートにより貼合し、積
層体を得た。プロピレン−エチレンブロック共重合体を
主成分とするポリプロピレン樹脂組成物の特性とフィル
ムの評価結果を表１に示す。

【００３５】（比較例１〜３）プロピレン−エチレンブ
ロック共重合体を主成分とするポリプロピレン樹脂組成
物の特性が異なる以外は全て前記実施例１に従った。プ
ロピレン−エチレンブロック共重合体を主成分とするポ
リプロピレン樹脂組成物の特性とフィルムの評価結果を
表１に示す。

【００３６】

【表１】

【００３７】

【発明の効果】本発明の易開封性シーラントフィルムに
よれば、ヒートシールが容易で密封性、易開封性に優
れ、開封時に糸引き、ケバ立ちが発生せず、かつ、ボイ
ルやレトルトなどの加熱処理に耐える耐熱性、耐油性を
有する。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 4F071 AA15X AA20X AA75 AA84 AA88 AF45 AF59 AH07 4F100 AK04A AK07 AK07A AK42 AL02A AR00B BA02 BA07 BA15 GB16 JA04A JA06A JL12B JL14 4J002 BP021 GF00 GG00 GJ00

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エチレン系樹脂組成物層表面とヒートシ
   ールされた場合の開封強度が８Ｎ／１５ｍｍ以下である
   ことを特徴とする易開封性シーラントフィルム。
2. 【請求項２】 下記（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｃ）の特性を
   満たしたプロピレン−エチレンブロック共重合体を主成
   分とするポリプロピレン樹脂組成物からなることを特徴
   とする請求項１記載の易開封性シーラントフィルム。 （Ａ）１３５℃テトラリン中で測定した極限粘度
   （［η］）が１．７５ｄＬ／ｇ以下 （Ｂ）２０℃キシレン可溶部の極限粘度（［η］ｃｘ
   ｓ）が１．５０ｄＬ／ｇ以下 （Ｃ）融点（Ｔｍ）＞１５５℃
3. 【請求項３】 少なくとも２層以上の多層構成からな
   り、かつ、少なくとも前記エチレン系樹脂組成物層表面
   とヒートシールされる側にヒートシール層が積層された
   ことを特徴とする請求項１又は２記載の易開封性シーラ
   ントフィルム。
4. 【請求項４】 厚さが２００μｍ以下であることを特徴
   とする請求項１、２又は３記載の易開封性シーラントフ
   ィルム。