JP2003095685A - 光ファイバ母材及び製造方法 - Google Patents

光ファイバ母材及び製造方法

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JP2003095685A JP2001282024A JP2001282024A JP2003095685A JP 2003095685 A JP2003095685 A JP 2003095685A JP 2001282024 A JP2001282024 A JP 2001282024A JP 2001282024 A JP2001282024 A JP 2001282024A JP 2003095685 A JP2003095685 A JP 2003095685A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 クラッド部の外径とコア部の外径との倍率が
長手方向に沿って一定化され、光ファイバの製造コスト
を低減可能な光ファイバ母材を提供する。 【解決手段】 先ず、試作ガラスロッドと試作ガラスパ
イプとが用意され(S201)、これらから光ファイバ母
材の試作品が作製される(S202)。そして、光ファイ
バ母材の試作品の長手方向に沿った複数の位置におい
て、屈折率分布が測定される(S203)。この測定の結
果に基づいて、光ファイバ母材製造用のガラスパイプが
有すべき肉厚分布が算出される(S204)。その後、試
作ガラスパイプと形状及び材質がほぼ等しいガラスパイ
プの外周部が研削されて製造用ガラスパイプが作製され
る(S205)。そして、この製造用ガラスパイプと、試
作ガラスロッドと形状及び材質がほぼ等しいガラスロッ
ドとが加熱一体化されて光ファイバ母材が製造される
(S206)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバ、光フ
ァイバを作製するための光ファイバ母材、及び光ファイ
バ母材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ロッドインコラプス法は、ガラスパイプ
内にガラスロッドを挿入し、ガラスロッドが挿入された
ガラスパイプを加熱溶融して一体化することにより光フ
ァイバ母材を作製する方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ロッドインコラプス法
においては、原材料であるガラスパイプ及びガラスロッ
ドを大型化すれば、大型の光ファイバ母材を製造でき
る。しかし、この場合、ガラスロッドが挿入されたガラ
スパイプをほぼ水平に保持して加熱一体化すると、ガラ
スパイプ及びガラスロッドの自重によって光ファイバ母
材が湾曲してしまうという問題がある。特に、ガラスパ
イプ及びガラスロッドが大型であればあるほど、光ファ
イバ母材には大きな湾曲が生じてしまうこととなる。こ
れを防ぐためには、ガラスロッドが挿入されたガラスパ
イプをほぼ鉛直に保持して加熱一体化することが望まし
い。
【0004】しかし、本発明者らが検討した結果、ガラ
スロッドが挿入されたガラスパイプをほぼ鉛直に保持す
れば湾曲の問題は解消されるものの、それでも尚、その
外径とコア部の外径との比が長手方向に沿って一定とな
らないことが分かった。当該比が一定でなければ、作製
される光ファイバの波長分散特性が長手方向に沿って変
化してしまう。そのため、光ファイバから所望の特性を
有する部分だけを切り出して製品にするといった作業を
行なわなければならない。この場合、不要となる部分は
廃棄されることとなるため、製造コストの上昇を招いて
しまう。また、所望の特性を有する部分を見出すための
検査作業、切り出し作業、さらに切り出し後の検査作業
といった不要な工程が増えてしまうため、製造コストが
更に上昇してしまうという問題がある。
【0005】本発明は、上記の事情に鑑みてなされたも
のであり、クラッド部の外径とコア部の外径との倍率が
長手方向に沿って一定化され、光ファイバの製造コスト
を低減可能な光ファイバ母材を提供することを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の一側面に係る光
ファイバ母材の製造方法は、ガラスパイプ内にガラスロ
ッドを挿入し、ガラスパイプ及びガラスロッドを加熱一
体化して光ファイバ母材を製造する方法であって、(1)
試作ガラスロッドを試作ガラスパイプ内に挿入し、(2)
双方を鉛直に保持し加熱一体化して試作光ファイバ母材
を製造し、(3)試作光ファイバ母材の長手方向に沿った
複数の位置において、試作光ファイバ母材の屈折率分布
を測定し、(4)この測定の結果に基づいて、光ファイバ
母材の製造に用いるガラスパイプが有すべき肉厚の長手
方向に沿った変化を算出し、(5)この算出の結果に従っ
て肉厚が変化する製造用ガラスパイプを用意し、(6)試
作ガラスロッドに形状及び材質が実質的に同一なガラス
ロッドを製造用ガラスパイプ内に挿入し、(7)双方を上
記の所定の角度に保持し加熱一体化して光ファイバ母材
を製造することを特徴とする。
【0007】本発明者らは、内部にガラスロッドを有す
るガラスパイプをほぼ鉛直に保って加熱一体化して得た
光ファイバ母材の外径とコア部径との倍率が一定となら
ない原因について鋭意調査研究を行なった。その結果、
その原因は、鉛直に保持されたガラスパイプ及びガラス
ロッドの自重にあることが分かった。すなわち、加熱一
体化時に溶融状態にある部分は、自重による張力によっ
て引き伸ばされる。このとき、引き伸ばされる長さがガ
ラスパイプ及びガラスロッドで等しければ、外径とコア
部径との倍率は一定となり得る。しかし、両者は、形
状、添加物の種類及び濃度等の点で異なるため、引き伸
ばされる長さは必ずしも等しくはならない。このような
理由により、外径とコア部径との倍率には変動が生じる
こととなる。
【0008】上記の製造方法によれば、試作光ファイバ
母材の屈折率分布が測定され、この測定の結果に基づい
てガラスパイプが有すべき肉厚の長手方向に沿った変化
が算出される。そして、この算出の結果に従って肉厚が
変化するガラスパイプが用意される。その後、試作に用
いたガラスロッドと形状及び材質がほぼ等しいガラスロ
ッドと上記のガラスパイプとが加熱一体化されて光ファ
イバ母材が製造される。光ファイバ母材の製造に用いる
ガラスパイプは算出の結果に従って肉厚が変化している
ため、加熱一体化の際、自重により生じるガラスパイプ
の肉厚の変化及びガラスロッド外径の変化に伴う倍率の
長手方向の変動が相殺される。そのため、外径とコア部
径との倍率は均一性が改善される。
【0009】本発明の別の側面に係る光ファイバ母材の
製造方法は、ガラスパイプ内にガラスロッドを挿入し、
前記ガラスパイプ及び前記ガラスロッドを加熱一体化し
て光ファイバ母材を製造する方法であって、(1)試作ガ
ラスロッドを試作ガラスパイプ内に挿入し、(2)双方を
鉛直に保持し加熱一体化して試作光ファイバ母材を製造
し、(3)試作光ファイバ母材の長手方向に沿った複数の
位置において、当該試作光ファイバ母材の屈折率分布を
測定し、(4)この測定の結果に基づいて、光ファイバ母
材の製造に用いるガラスロッドが有すべき外径を算出
し、(5)この算出の結果に従って外径が変化する製造用
ガラスロッドを用意し、(6)試作ガラスパイプに形状及
び材質が実質的に同一なガラスパイプ内に製造用ガラス
ロッドを挿入し、(7)双方を上記の所定の角度に保持し
加熱一体化し光ファイバ母材を製造することを特徴とす
る。
【0010】このようにすれば、光ファイバ母材の製造
に用いるガラスロッドは算出の結果に従って外径が変化
しているため、加熱一体化の際、自重により生じるガラ
スロッドの外径の変化及びガラスパイプの肉厚の変化に
伴う倍率の長手方向の変動が相殺される。そのため、外
径とコア部径との倍率は均一性が改善される。
【0011】本発明の別の側面に係る光ファイバ母材の
製造方法は、ガラスパイプ内にガラスロッドを挿入し、
前記ガラスパイプ及び前記ガラスロッドを加熱一体化し
て光ファイバ母材を製造する方法であって、(1)試作ガ
ラスロッドを試作ガラスパイプ内に挿入し、(2)双方を
鉛直に保持して加熱一体化して試作光ファイバ母材を製
造し、(3)試作光ファイバ母材の長手方向に沿った複数
の位置において、試作光ファイバ母材の屈折率分布を測
定し、(4)この測定の結果に基づいて、光ファイバ母材
の製造に用いるガラスパイプが有すべき肉厚と、光ファ
イバ母材の製造に用いるガラスロッドが有すべき外径
と、を算出し、(5)この算出の結果に従って肉厚が変化
する製造用ガラスパイプと、算出の結果に従って外径が
変化する製造用ガラスロッドとを用意し、(6)製造用ガ
ラスパイプ内に前記製造用ガラスロッドを挿入し、(7)
双方を上記の所定の角度に保持し加熱一体化して光ファ
イバ母材を製造することを特徴とする。
【0012】このようにすれば、光ファイバ母材の製造
に用いるガラスロッドは算出の結果に従って外径が変化
しており、ガラスパイプもまた算出の結果に従って肉厚
が変化しているため、加熱一体化の際、自重により生じ
るガラスロッドの外径の変化及びガラスパイプの肉厚の
変化が相殺され得る。そのため、外径とコア部径との倍
率は均一性が改善される。
【0013】また、試作ガラスパイプに形状及び材質が
実質的に同一なガラスパイプを調達し、このガラスパイ
プの肉厚が上記の算出の結果に従って変化するよう当該
ガラスパイプの外周を研削して製造用ガラスパイプを用
意すると好適である。これにより、肉厚が上記算出の結
果に従って変化する製造用ガラスパイプを用意できる。
【0014】さらに、試作ガラスパイプに形状及び材質
が実質的に同一なガラスパイプを調達し、このガラスパ
イプの肉厚が上記の算出の結果に従って変化するよう当
該ガラスパイプの内面を研削して製造用ガラスパイプを
用意することを特徴としてもよい。このようにしても、
肉厚が上記算出の結果に従って変化する製造用ガラスパ
イプを用意できる。
【0015】また、上記の内面の研削を気相エッチング
により行なうと有用である。さらに、気相エッチングの
際に、試作ガラスパイプに形状及び材質が実質的に同一
なガラスパイプの温度をその長手方向に沿って変化させ
ると好ましい。さらにまた、気相エッチングの際に、試
作ガラスパイプに形状及び材質が実質的に同一なガラス
パイプを熱源により部分的に加熱し、この熱源を当該ガ
ラスパイプの長手方向に沿って移動させ、その移動速度
を長手方向に変化させると好適である。このような方法
によれば、肉厚が上記算出の結果に従って変化する製造
用ガラスパイプを確実に用意できる。
【0016】また、試作ガラスロッドに形状及び材質が
実質的に同一なガラスロッドを調達し、このガラスロッ
ドの外径が上記の算出の結果に従って変化するよう当該
ガラスロッドを延伸して製造用ガラスロッドを用意する
と好ましい。このようにすれば、屈折率が周方向に変化
するガラスロッドであっても、径方向の相対的な屈折率
分布を保持しまま、その外径を変化させることができ
る。さらに、試作ガラスロッドに形状及び材質が実質的
に同一なガラスロッドを調達し、このガラスロッドの外
径が上記の算出の結果に従って変化するよう当該ガラス
ロッドの外周を研削して製造用ガラスロッドを用意する
と有用である。
【0017】本発明に係る光ファイバ母材は、上記の光
ファイバ母材の製造方法により製造され、外径2Dとコ
ア部の外径2dとの倍率2D/2dの変動率が長手方向
に沿う100mmの長さに渡って3%以下であることを
特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る光ファイバ母
材の製造方法の好適な実施形態について図面を参照しな
がら説明する。なお、図面の説明においては、同一の要
素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】光ファイバ母材の製造方法を説明するに先
立ち、この製造方法の実施に好適な光ファイバ母材の製
造装置について説明する。図1は、光ファイバ母材の製
造装置の主要部の一例を示す概略図である。同図におい
て、製造装置1は、ガラスパイプを保持するガラスパイ
プ保持部2、ガラスロッドを保持するガラスロッド保持
部3、及び電気炉4を有する。ガラスパイプ保持部2に
は、ガラスロッド保持部3をガラスパイプ保持部2に固
定するための固定部材5が設けられている。ガラスパイ
プ保持部2及びガラスロッド保持部3は、図示しない駆
動部により上下動及び回転が可能である。駆動部によ
り、ガラスパイプ及びガラスロッドが回転されれば、こ
れらの温度は周方向に均一化される。温度が均一でない
とガラスパイプ又はガラスロッドに湾曲或いは変形が生
じる虞があるが、回転により温度が均一化されるので、
湾曲或いは変形が防止される。また、電気炉4には、電
源(図示せず)が接続されており、電源から電気炉4へ供
給される電力を調整することにより、電気炉4の温度が
制御される。また、製造装置1には、ガス供給系(図示
せず)が設けられており、ガラスパイプ保持部2に保持
されるガラスパイプの内部に所定のガスを供給できる。
【0020】(第1の実施形態)次に、図面を参照しな
がら、第1の実施形態の光ファイバ母材の製造方法につ
いて説明する。図2は、第1の実施形態の光ファイバ母
材の製造方法のフロー図である。この製造方法は主とし
て、光ファイバ母材の試作工程、計測算出工程、製造用
材料作製工程、及び光ファイバ母材製造工程からなる。
このうち、試作工程及び光ファイバ母材製造工程におい
ては、上述の製造装置1が使用される。
【0021】(試作工程)光ファイバ母材の試作品の製
造について説明する。先ず、使用するガラスパイプ(以
下、試作ガラスパイプ)及びガラスロッド(以下、試作ガ
ラスロッド)を用意する(ステップS201)。ここで、
試作ガラスパイプの外径及び内径は長手方向に沿ってほ
ぼ一定である。また、その肉厚は、周方向及び長手方向
のいずれにもほぼ一定である。例えば、試作ガラスパイ
プは、外径67mm直径、内径18mm直径、及び長さ
250mmであってよい。また、試作ガラスパイプは、
1.0mol%程度のフッ素(F)が添加された石英ガラ
スからなると好ましい。試作ガラスロッドについてもま
た、その外径は長手方向に沿ってほぼ一定であり、具体
的には、外径14.5mm直径程度であると好適であ
る。また、試作ガラスロッドは、15mol%程度のG
eO2が添加された石英ガラスからなると好ましい。
【0022】次に、試作ガラスパイプを製造装置1に取
り付け、所定の条件で試作ガラスパイプの内面をエッチ
ングする。これにより、試作ガラスパイプの内面に付着
している不純物が除去されると共に、内面自体が平滑化
される。その後、試作ガラスパイプの内部に試作ガラス
ロッドを挿入する。そして、固定部材5を介して試作ガ
ラスロッドを試作ガラスパイプに対して固定する。これ
により、試作ガラスロッド及び試作ガラスパイプの中心
軸が互いに一致されると共に、加熱一体化中に両者が互
いに移動してしまうのが防がれる。続いて、試作ガラス
ロッド及び試作ガラスパイプの間に例えばCl2ガスを
流しながら、電気炉4により両者を例えば1400℃に
加熱して空焼きを行なう。これにより、試作ガラスロッ
ドの外周に付着する不純物が除去される。
【0023】その後、電気炉4の温度を所定の温度と
し、試作ガラスロッド及び試作ガラスパイプの下部から
両者を加熱一体化する。このとき、試作ガラスパイプの
最大表面温度は、例えば1650℃程度とすることがで
きる。また、試作ガラスロッド及び試作ガラスパイプの
下降速度は、例えば8mm/min程度とすることがで
きる。試作ガラスロッド及び試作ガラスパイプは回転さ
せながら下降させると好ましく、その回転速度は例えば
10rpm程度とすることができる。さらに、試作ガラ
スパイプと試作ガラスロッドとの間隙は、例えば、ゲー
ジ圧にて−3kPa程度に減圧されてよい。さらにま
た、この間隙には、塩素(Cl2)ガス及び酸素(O2)ガス
を流すと好ましく、その流量は、両ガスとも例えば3.
0×105cc/min程度でよい。以上の条件によ
り、試作ガラスパイプと試作ガラスロッドとが加熱一体
化されて光ファイバ母材の試作品が製造される(ステッ
プS202)。
【0024】(計測算出工程)続いて、計測算出工程に
ついて説明する。上述の光ファイバ母材の試作品につい
て、その長手方向に沿った複数の位置において屈折率の
分布を測定する(ステップS203)。この測定には、例
えばプリフォームアナライザといった測定装置を使用で
きる。図3は、光ファイバ母材の試作品の外径2Dが長
手方向に沿ってどのように変化するかを示すグラフであ
る。図4は、当該光ファイバ母材の試作品のコア部径2
d(試作ガラスロッド由来部分)が長手方向に沿ってどの
ように変化するかを示すグラフである。図3及び図4に
おいて、横軸の原点0は、ガラスパイプ及びガラスロッ
ドが製造装置1に取り付けられていたときの上端部であ
る。
【0025】図3から分かるように、外径2Dは、相対
的に上端部で小さく、下端部で大きくなる傾向がある。
本発明者らは、この原因は鉛直保持されたガラスパイプ
及びガラスロッドの自重にあると推測している。すなわ
ち、加熱一体化時に溶融状態にある部分は、自重による
張力によって引き伸ばされる。そして、その自重とは、
溶融状態にある部分より下方にあるガラスロッド及びガ
ラスパイプの重量である。そのため、自重により溶融部
にかかる張力は、鉛直方向上端部において大きく、下端
部において小さい。したがって、ガラスパイプは上端部
でより延ばされ、上端部での外径が小さくなる。以上の
ように考えると、クラッド部の外径が図3に示す通りの
分布となる理由を定性的に説明できる。また、図4に示
す通り、コア部の外径もクラッド部の外径と同様に、上
端部で小さく、下端部で大きくなる。このような変化も
クラッド部の外径変化の理由と同様の理由により生じる
と考えられる。
【0026】図3及び図4の結果から、光ファイバ母材
の試作品の外径2Dとコア部径2dとの倍率2D/2d
が長手方向に沿ってどのように変化しているかを求め
る。その結果を図5に示す。図5から分かるように、倍
率2D/2dは、上端部で小さく、下端部で大きくなる
傾向にある。図6は、倍率2D/2dの長手方向に沿っ
た変化を変動率で示すグラフである。すなわち、{(任
意の位置(I)での倍率2D/2d)−(倍率2D/2d
の平均値)}÷(倍率2D/2dの平均値)×100を
求め、位置(I)に対してプロットして得たグラフであ
る。図6から分かるように、倍率の変動率0に対して±
3%程度の変動が認められる。加熱一体化時に、試作ガ
ラスパイプと試作ガラスロッドとが常に同じ長さだけ引
き伸ばされれば、倍率2D/2dは一定となり得る。し
かし、両者の形状及び添加物が異なるため、引き伸ばさ
れる長さは両者で異なる。そのため、このような倍率変
動が生じる。
【0027】例えば分散補償ファイバや分散シフトファ
イバ等においては、その伝送特性はコア径の変動に大き
な影響を受ける。このような光ファイバを製造する際に
は、本発明者らの知見によれば、光ファイバ母材の倍率
2D/2dの変動率が±1.5%以内(3%以内)の部分
から光ファイバを製造すれば、その光ファイバの伝送特
性をその長手方向に沿ってほぼ一定とできる。この知見
に基づくと、仮に、上記の光ファイバ母材の試作品を線
引きして光ファイバを作製すれば、光学的特性がほぼ一
定となる光ファイバは、当該光ファイバ母材の試作品の
全長の60%程度からしか得られない。つまり、残りの
40%程度に相当する部分は廃棄されることになり、光
ファイバの製造コストの上昇につながってしまう。
【0028】光ファイバ母材の倍率2D/2dの変動を
小さくし、使用可能な長さを増加させるためには、光フ
ァイバ母材製造用のガラスパイプの肉厚が倍率2D/2
dの変動を相殺するように長手方向に沿って変化してい
ればよい。そのように肉厚が変化する製造用ガラスパイ
プを作製する場合、以下の式(1)を利用できる。なお、
以下では、説明の便宜上、製造用ガラスパイプが有すべ
き長手方向に沿った肉厚の変化を肉厚分布と記す。
【数1】 式(1)において、R(L)は、位置Lにおける倍率2D/
2dであり、光ファイバ母材の試作品の測定により得ら
れた値である。Rpは、位置Lにおける倍率2D/2d
の目標値である。D2(L)は製造用ガラスパイプが有す
べき外径であり、その長手方向に沿った位置Lにおける
値である。I2(L)は製造用ガラスパイプが有すべき内
径であり、その長手方向に沿った位置Lにおける値であ
る。a2(L)は製造用ガラスロッドが有すべき外径であ
り、その長手方向の位置Lにおける値である。
【0029】式(1)に倍率2D/2dの目標値Rpと上
記の測定の結果得られたR(L)とを代入すれば、数値計
算によってD2(L)、I2(L)、及びa2(L)を算出でき
る(ステップS204)。なお、D2(L)、I2(L)、及び
2(L)のうちいずれか1つ又は2つを定数としてもよ
い。例えば、I2(L)及びa2(L)を一定とし、D2(L)
のみを変数として製造用ガラスパイプが有すべき外径を
求めるようにしてよい。
【0030】(製造用材料作製工程)続いて、所望の肉
厚分布を有するガラスパイプの作製について説明する。
先ず、製造用ガラスパイプとなるべきガラスパイプを用
意する。このガラスパイプは試作ガラスパイプに形状及
び材質がほぼ等しい。このガラスパイプは、具体的に
は、試作ガラスパイプに対して、外径及び内径の差が1
0%以下であり、軟化点温度の差が200℃以下であ
る。次に、このガラスパイプを例えば数値制御型旋盤と
いった研削装置に取り付ける。そして、上記の式(1)に
基づいた計算データを当該装置の制御部に入力し、この
ガラスパイプの外周部を研削する。以上により、光ファ
イバ母材製造用の製造用ガラスパイプが得られる(ステ
ップS205)。この製造用ガラスパイプの外径の長手
方向に沿った変化(外径分布)を図7に示す。なお、この
分布は式(1)におけるRpを4.51とした計算結果に
基づいたものである。
【0031】(光ファイバ母材製造工程)次に、光ファ
イバ母材製造工程について説明する。先ず、上述の製造
用ガラスパイプを製造装置1に取り付け、所定の条件で
エッチングを行って、内面に付着する不純物を除去する
と共に内面を平滑化する。このエッチングの条件は、試
作工程において行なったエッチングにほぼ同一である。
次に、試作ガラスロッドと形状及び材質がほぼ等しいガ
ラスロッドを用意する。このガラスロッドは、具体的に
は、試作ガラスロッドに対して、外径の差が10%以下
であり、軟化点温度の差が200℃以下である。このガ
ラスロッドを上述の製造用ガラスパイプの内部に挿入す
る。続いて、試作工程において実施した空焼きにほぼ同
一の条件にて空焼きを行なう。その後、ガラスロッドと
製造用ガラスパイプとを加熱一体化する(ステップS2
06)。この加熱一体化の手順及び条件は、試作工程に
おいて採用された手順及び条件にほぼ等しい。これによ
り、製造用ガラスパイプとガラスロッドとが加熱一体化
されて光ファイバ母材が製造される。
【0032】このようにして製造した光ファイバ母材の
屈折率分布を測定し、倍率2D/2dの長手方向に沿っ
た変化を求めた。図8は、製造した光ファイバ母材の倍
率2D/2dの長手方向に沿った変化を示すグラフであ
る。図8から、光ファイバ母材の倍率2D/2dは、例
えば光ファイバ母材の試作品に比べ、遥かに一定化され
ていることが分かる。倍率2D/2dの変動率を求めた
ところ、光ファイバ母材の全長にわたって0.8%以下
であることが分かった。よって、この光ファイバ母材の
全長から光伝送特性がほぼ均一な光ファイバを作製し得
る。
【0033】第1の実施形態による光ファイバ母材の製
造方法においては、先ず、試作ガラスロッドと試作ガラ
スパイプとから光ファイバ母材の試作品が作製される。
そして、光ファイバ母材の試作品の長手方向に沿った複
数の位置において屈折率分布が測定される。この測定の
結果と式(1)とに基づいた計算により、光ファイバ母材
製造用のガラスパイプが有すべき肉厚分布が求められ
る。その後、試作ガラスパイプと形状及び材質がほぼ等
しいガラスパイプの外周部が所定の研削装置により研削
されて製造用ガラスパイプが得られる。そして、この製
造用ガラスパイプと、試作ガラスロッドと形状及び材質
がほぼ等しいガラスロッドとが加熱一体化されて光ファ
イバ母材が製造される。
【0034】以上のように、光ファイバ母材の試作品の
測定結果に基づいて、光ファイバ母材の製造に用いられ
るガラスパイプが有すべき肉厚分布を求め、この肉厚分
布を有する製造用ガラスパイプを用いて光ファイバ母材
を製造するので、倍率2D/2dの変動率が小さい光フ
ァイバ母材が得られる。
【0035】(第2の実施形態)次に、第2の実施形態
による光ファイバ母材の製造方法を説明する。第2の実
施形態は、製造用材料作製工程において気相エッチング
法が採用される以外は、第1の実施形態にほぼ同一であ
る。以下では、製造用材料作製工程を主として説明す
る。
【0036】先ず、第1の実施形態の製造方法と同様に
して、試作製造工程及び計測算出工程が実施される(ス
テップS201〜S204)。これにより、製造用ガラ
スパイプが有すべき肉厚分布が算出される。次に、製造
用ガラスパイプとなるべきガラスパイプを用意する。こ
のガラスパイプは試作ガラスパイプと形状及び材質がほ
ぼ等しい。
【0037】このガラスパイプの内面をエッチングする
ことにより製造用ガラスパイプを作製する。この気相エ
ッチングには製造装置1を使用できる。エッチングの条
件を見出すため、製造装置1を用いて、ガラスパイプの
トラバース速度とエッチング量との関係を調べた。その
結果について説明する。先ず、この予備的な実験のため
のガラスパイプを数本用意した。これらのガラスパイプ
は、外径67mm直径、内径13mm直径、及び長さ2
50mmを有しており、Clが0.5mol%添加され
た石英ガラスからなる。ガラスパイプの1本を製造装置
に取り付け、ガラスパイプの内部に六弗化硫黄(SF6)
ガス及びCl2ガスを流した。これらの流量は、例えば
SF6ガス及びCl2ガスともに300cc/min程度
でよい。なお、SF6ガスの替わりに、C26ガスなど
Fを含むガスを使用できる。
【0038】その後、ガラスパイプをその表面温度が1
500℃程度となるよう加熱するとともに、ガラスパイ
プを1.0mm/minの速度でトラバースさせた。ト
ラバースを数回行なった後、エッチングを終了させ、エ
ッチング後のガラスパイプの内径を測定した。その結
果、トラバース1回当り、内径が3.5mm直径程度増
大することが分かった。続けて、用意したガラスパイプ
の残りを用い、トラバース速度を1.5mm/min、
2.0mm/min、4.0mm/min、及び10.
0mm/minとしてトラバース1回当りの内径の増大
量(エッチング量)を求めた。これらの結果を図9に示
す。同図から、トラバース速度が遅いほど内径増大量が
大きいことが分かる。よって、トラバース速度を調整す
ることにより、ガラスパイプの内径(直径)を調整でき
る。
【0039】以上の結果に基づき、ガラスパイプの内面
をエッチングして製造用ガラスパイプを作製する。すな
わち、製造用ガラスパイプとなるべきガラスパイプを製
造装置1に取り付け、トラバース速度を図10のように
変化させてエッチングを行なう。このとき、ガラスパイ
プの内部に流すガス、及びガラスパイプの温度は、予備
的な実験での条件と同一とできる。図11は、図10に
示すようにトラバース速度を変化させてエッチングを行
なった製造用ガラスパイプの内径が長手方向に沿ってど
のように変化するか(内径分布)を示すグラフである。な
お、この内径の変化は、Rpの値を4.50として算出
した結果に相当する。
【0040】続いて、試作ガラスロッドと形状及び材質
がほぼ等しいガラスロッドを用意し、このガラスロッド
を上記の製造用ガラスパイプの内部に挿入する。その
後、第1の実施形態における光ファイバ母材製造工程に
ほぼ同一の手順により、空焼きと加熱一体化とを行な
う。これにより、光ファイバ母材が得られる。
【0041】この光ファイバ母材の屈折率分布を測定
し、コア部外径2dとクラッド部外径2Dとの倍率2D
/2dの長手方向に沿った変化を求めた。図12は、製
造した光ファイバ母材の倍率2D/2dをその長手方向
にプロットしたグラフである。図12から、第2の実施
形態の光ファイバ母材の製造方法により製造された光フ
ァイバ母材の倍率2D/2dは、十分に一定化されてい
ることが分かる。倍率の変動率を求めたところ、光ファ
イバ母材の全長にわたって0.8%以下であることが分
かった。
【0042】以上のように、第2の実施形態の光ファイ
バ母材の製造方法においては、光ファイバ母材の試作品
の測定結果に基づいて、光ファイバ母材の製造に用いら
れるガラスパイプが有すべき肉厚分布が算出される。そ
して、試作ガラスパイプと形状及び材質がほぼ等しいガ
ラスパイプの内面が気相エッチングされ、所望の肉厚分
布を有する製造用ガラスパイプが作製される。そして、
この製造用ガラスパイプと、試作ガラスロッドと形状及
び材質がほぼ等しいガラスロッドとを用いて光ファイバ
母材を製造するので、倍率2D/2dの変動率が小さい
光ファイバ母材が得られる。
【0043】第2の実施形態では、製造用材料作製工程
においてガラスパイプの内面をエッチングすることによ
り製造用ガラスパイプが作製される。このとき、ガラス
パイプの内面に吸着する不純物が除去されるため、不純
物除去のためのエッチングを敢えて行なう必要はない。
通常、ガラスパイプの内面に吸着する不純物を除去する
ためにガラスパイプの内面のエッチングを行なうが、第
2の実施形態による光ファイバ母材の製造方法ではこの
ようなエッチングは不要である。そのため、製造コスト
を更に低減することができる。
【0044】(第3の実施形態)次に、第3の実施形態
による光ファイバ母材の製造方法を説明する。第3の実
施形態は、気相エッチング法によるエッチングの手順及
び条件が異なる以外は、第2の実施形態にほぼ同一であ
る。以下では、気相エッチングを中心として説明する。
【0045】先ず、第1の実施形態の製造方法と同様に
して、試作製造工程及び計測算出工程が実施される(ス
テップS201〜S204)。次に、製造用ガラスパイ
プとなるべきガラスパイプを用意する。このガラスパイ
プは、試作ガラスパイプと形状及び材質がほぼ等しい。
【0046】次に、このガラスパイプを用いて製造用の
ガラスパイプを作製する工程について説明する。第3の
実施形態においても、第2の実施形態と同様に、製造装
置1を用いてガラスパイプの内面が研削される。ただ
し、第3の実施形態においては、エッチング温度を変化
させることにより所望の肉厚分布を実現する。そのた
め、先ず、エッチング速度のエッチング温度依存性につ
いて調べた。その結果について説明する。先ず、この予
備的な実験のためのガラスパイプを6本用意した。これ
らのガラスパイプは、外径67mm直径、内径13mm
直径、及び長さ250mmを有しており、Clが0.5
mol%添加された石英ガラスからなる。これらのガラ
スパイプのうち1本を製造装置1に取り付け、ガラスパ
イプの内部にSF6ガス及びCl2ガスをそれぞれ300
cc/min流した。その後、ガラスパイプの表面温度
が1550℃程度となるよう加熱するとともに、ガラス
パイプを2.0mm/minの速度でトラバースさせ
た。数回トラバースした後にエッチングを終了させ、エ
ッチング後のガラスパイプの内径を測定した。その結
果、トラバース1回当り、内径が2mm直径程度増加し
たことが分かった。続けて、残りのガラスパイプを用
い、ガラスパイプの表面温度が1350℃、1400
℃、1450℃、1500℃、及び1600℃となるよ
うにして同様にエッチングを行なった。その後、それぞ
れの場合について、トラバース1回当りの内径増加量を
求めた。その結果を図13に示す。同図から、エッチン
グ温度が高いほど、内径の増加量(エッチング量)が大き
いことが分かる。よって、エッチング温度により内径を
調整できる。
【0047】以上の結果に基づき、ガラスパイプの内面
をエッチングし、製造用ガラスパイプを作製する。すな
わち、製造用ガラスパイプとなるべきガラスパイプを製
造装置1に取り付け、ガラスパイプの長手方向に沿った
エッチング温度を図14のように変化させる。このと
き、供給するエッチングガスとその流量は、予備的な実
験のときにほぼ同一とする。これにより、製造用ガラス
パイプが作製される。図15は、図14に示すよう温度
を変化させてエッチングした製造用ガラスパイプの内径
分布を示すグラフである。なお、この内径の変化は、R
pの値を4.52として算出した結果に相当する。
【0048】次に、製造用ガラスパイプの内部に、試作
ガラスロッドと形状及び材質がほぼ等しいガラスロッド
を挿入し、第1の実施形態における光ファイバ母材製造
工程と同様にして、空焼きと加熱一体化とを行なって光
ファイバ母材を得る。この光ファイバ母材の屈折率分布
を測定し、外径2Dとコア部径2dとの倍率2D/2d
の長手方向に沿った変化を求める。図16は、製造した
光ファイバ母材の倍率2D/2dを長手方向にプロット
したグラフである。図16から、第2の実施形態の光フ
ァイバ母材の製造方法により製造された光ファイバ母材
の倍率2D/2dは、十分に一定化されていることが分
かる。倍率の変動率を求めたところ、光ファイバ母材の
全長にわたって1.3%以下であることが分かった。
【0049】以上のように、第3の実施形態の光ファイ
バ母材の製造方法においては、光ファイバ母材の試作品
の測定結果に基づいて、光ファイバ母材の製造に用いら
れるガラスパイプが有すべき肉厚分布が算出される。そ
して、試作ガラスパイプと形状及び材質がほぼ等しいガ
ラスパイプの内面がエッチングされ、所望の肉厚分布を
有する製造用ガラスパイプが作製される。このエッチン
グの際には、ガラスパイプの長手方向に沿って温度を変
化させることによりエッチング速度を調整し、所望の肉
厚分布を実現する。そして、この製造用ガラスパイプと
試作ガラスロッドと形状及び材質がほぼ等しいガラスロ
ッドとを用いて光ファイバ母材を製造するので、倍率2
D/2dの変動率が小さい光ファイバ母材が得られる。
【0050】また、第3の実施形態の光ファイバ母材の
製造方法は、第2の実施形態と同様にガラスパイプの内
面をエッチングして所望の肉厚分布を有する製造用ガラ
スパイプを作製しているため、第2の実施形態と同様、
不純物除去のエッチングの手間を省けるという利点があ
る。
【0051】(第4の実施形態)次に、第4の実施形態
による光ファイバ母材の製造方法を説明する。第4の実
施形態は、製造用材料作製工程において製造用ガラスロ
ッドが作製される以外は、第1の実施形態にほぼ同一で
ある。以下では、製造用材料作製工程を中心として説明
する。
【0052】先ず、第1の実施形態の製造方法と同様に
して、試作製造工程が実施される(ステップS201〜
S202)。次に、計測算出工程において、光ファイバ
母材の製造用のガラスロッドが有すべき外径分布が算出
される。そして、製造用ガラスロッドとなるべきガラス
ロッドを用意する。このガラスロッドは試作ガラスロッ
ドと材質がほぼ等しい。このようなガラスロッドを所定
の加熱方法により加熱、延伸し、長手方向でその外径を
調整することにより、算出の結果得られた外径分布を有
する出発ガラスロッドを作製する。図17は、延伸によ
って作製した製造用ガラスロッドの長手方向の外径を示
すグラフである。なお、ガラスロッドを延伸する際に
は、例えば、酸水素火炎バーナを使用できる。酸水素火
炎バーナを使用した場合は、ガラスロッドの外周にはO
H基を含む層が形成されることとなる。そのため、ガラ
スロッドをガラスパイプ内に挿入する前に、当該層を例
えばHF溶液によるエッチングなどにより除去すると好
ましい。このエッチングを行なう場合には、エッチング
マージンの分だけ試作ガラスロッドよりも太いガラスロ
ッドを用意する必要がある。
【0053】次に、試作ガラスパイプと形状及び材質が
ほぼ等しいガラスパイプを用意する。このガラスパイプ
を製造装置1に取り付け、その内面を第1〜3の実施形
態と同様にエッチングし、不純物を除去すると共に、内
面を平滑化する。エッチング後、ガラスパイプ内に製造
用ガラスロッドを挿入する。そして、第1の実施形態に
おいて説明した光ファイバ母材製造工程を実施すると、
光ファイバ母材が得られる。
【0054】その後、この光ファイバ母材の外径2Dと
コア部径2dとを測定し、倍率2D/2dの長手方向に
沿った変化を求める。図18は、一例として製造した光
ファイバ母材の倍率2D/2dをその長手方向にプロッ
トしたグラフである。図18から、第2の実施形態の光
ファイバ母材の製造方法により製造された光ファイバ母
材の倍率2D/2dは十分に一定化されていることが分
かる。この光ファイバ母材においては、倍率の変動率
は、その全長にわたって0.7%以下であることが分か
った。
【0055】以上のように、第4の実施形態の光ファイ
バ母材の製造方法においては、光ファイバ母材の試作品
の測定結果に基づいて、光ファイバ母材の製造に用いら
れるガラスロッドが有すべき外径分布が算出される。そ
して、この外径分布を有する製造用ガラスロッドが作製
される。そして、試作ガラスロッドと形状及び材質がほ
ぼ等しいガラスパイプと、製造用ガラスロッドとを用い
て光ファイバ母材を製造するので、倍率2D/2dの変
動率が小さい光ファイバ母材が得られる。
【0056】(第5の実施形態)第5の実施形態による
光ファイバ母材の製造方法を説明する。第5の実施形態
は、製造用材料作製工程において製造用ガラスパイプ及
び製造用ガラスロッドが作製される。以下では、製造用
材料作製工程を中心として説明する。
【0057】先ず、第1の実施形態の製造方法と同様に
して、試作製造工程が実施される(ステップS201〜
S202)。次に、計測算出工程において、光ファイバ
母材の製造用のガラスパイプが有すべき肉厚分布と、製
造用のガラスロッドが有すべき外径分布が算出される。
そして、算出の結果に基づいて、製造用のガラスパイプ
が製造される。この製造方法としては、第1の実施形態
において説明したガラスパイプの外周部を研削装置によ
り研削する方法、第2及び第3の実施形態において説明
した内面を気相エッチングする方法のいずれが採用され
てよい。また、上記の算出の結果に基づいて、製造用の
ガラスロッドが製造される。この製造方法は、第4の実
施形態において説明したガラスロッドを加熱延伸する方
法が採用されてよい。
【0058】続いて、製造用のガラスパイプと製造用の
ガラスロッドとから光ファイバ母材が製造される。この
ときの手順は、第1の実施形態において説明した手順と
同一とすることができる。
【0059】以上のように、第5の実施形態の光ファイ
バ母材の製造方法においては、光ファイバ母材の試作品
の測定結果に基づいて、光ファイバ母材の製造に用いら
れるガラスパイプが有すべき肉厚分布と、ガラスロッド
が有すべき外径分布とが算出される。そして、これらの
算出結果に基づいて、製造用のガラスパイプと製造用の
ガラスロッドとが作製される。そして、これらを用いて
光ファイバ母材を製造するので、倍率2D/2dの変動
率が一層小さい光ファイバ母材が得られる。
【0060】(実施例)以下に、実施例を用いて本発明
に係る光ファイバ母材の製造方法を詳細に説明する。ま
た、実施例においては、上記光ファイバ母材の製造方
法、及びこの製造方法により製造された光ファイバ母材
の効果を確認するために、光ファイバ母材を実際に線引
きして光ファイバを製造し、その特性についても調べ
た。
【0061】実施例として製造する光ファイバ母材が有
するべき屈折率分布を図19に示す。同図から分かるよ
うに、実施例において製造する光ファイバ母材は、コア
部と、コア部の外周に設けられた第1のクラッド部と、
第1のクラッド部の外周に設けられた第2のクラッド部
とを有する。コア部の第2のクラッド部に対する比屈折
率差は+1.50%であり、第1のクラッド部の第2の
クラッド部に対する比屈折率差は−0.50%である。
【0062】先ず、コア部となるべき試作ガラスロッド
と、第1のクラッド部となるべき試作用の第1のガラス
パイプを用意した。試作ガラスロッドは、GeO2を含
有する石英ガラスからなり、外径20mm直径及び長さ
250mmを有する。また、GeO2の添加濃度は、試
作ガラスロッドの中心軸で最大であり、その値は15m
ol%であった。また、試作ガラスロッドの純石英ガラ
スに対する比屈折率差Δnは、その中心軸からの距離を
r(r≦a)、半径をaとしたときに、1.5×[1−(r
/a)2](%)で表される関係で近似されるように変化し
ていた。試作用の第1のガラスパイプは、Fを含有する
石英ガラスからなり、外径67mm直径、内径17mm
直径、長さ300mmである。Fの添加濃度は、1.4
mol%であった。
【0063】次に、試作用の第1のガラスパイプを製造
装置1に取り付けた。そして、このガラスパイプの内面
に付着する不純物を除去するとともに、その内面を平滑
化するためにエッチングを行なった。このエッチングの
条件を例示すると、以下の通りである。 〈不純物除去エッチング条件〉 ・SF6ガス流量:300cc/min、 ・Cl2ガス流量:300cc/min、 ・ガラス表面の最高温度:1500℃、 ・ガラスパイプのトラバース速度:3mm/min ガラスパイプのトラバース速度は一定なので、同パイプ
の全長にわたりほぼ同一のエッチング量となった。エッ
チング後、試作ガラスロッドを当該ガラスパイプの内部
に挿入した。そして、固定部材を介して試作ガラスロッ
ドを試作用の第1のガラスパイプに対して固定した。続
いて、以下に示す条件で空焼きを行なった。 〈空焼き条件〉 ・Cl2ガス流量:8.0×105cc/min、 ・ガラス表面の最高温度:1300℃、 ・トラバース速度:8mm/min 続いて、試作ガラスロッド及び試作用の第1のガラスパ
イプを下降させながら加熱一体化した。加熱一体化の条
件を例示すると、以下の通りである。 〈加熱一体化条件〉 ・試作用の第1のガラスパイプの最大表面温度:165
0℃、 ・下降速度:8mm/min、 ・下降時の回転速度:10rpm、 ・排気圧:−3kPa(ゲージ指示値)、 ・雰囲気ガス及び供給流量:Cl2ガス3.0×105
c/min及びO2ガス3.0×105cc/min 以上により、ガラス中間体の試作品を得た。
【0064】次に、ガラス中間体のコア部外径2dとク
ラッド部外径2Dとをプリフォームアナライザを用いて
測定した。続けて、この測定の結果及び式(1)に基づい
た計算により、光ファイバ母材製造用の製造用ガラスパ
イプが有すべき肉厚分布を求めた。
【0065】その後、製造用の第1のガラスパイプとな
るべきガラスパイプを用意した。このガラスパイプは、
試作ガラスパイプと形状及び材質がほぼ等しい。次に、
このガラスパイプを製造装置1に取り付けた。続いて、
トラバース速度を図20に示すように変化させて製造用
の第1のガラスパイプを作製した。ここで、ガラスパイ
プの往復回数は3回とした。また、このとき、SF6
スを300cc/min流し、Cl2ガスを300cc
/min流した。さらに、このときのガラスパイプの表
面温度は最大で1500℃とした。以上により、製造用
の第1のガラスパイプを得た。製造用の第1のガラスパ
イプの内径の変化を図21に示す。
【0066】次に、試作ガラスロッドと形状及び材質が
ほぼ等しいガラスロッドを用意し、このガラスロッドを
製造用の第1のガラスパイプ内に挿入した。固定部材を
介してガラスロッドと製造用の第1のガラスパイプとを
互いに固定した後、上記の空焼き条件に従って空焼きを
行なった。空焼き終了後、製造用の第1のガラスパイプ
とその内部に挿入されたガラスロッドとを加熱一体化
し、ガラス中間体を作製した。このときの加熱一体化の
条件は、上述の加熱一体化条件にほぼ同一とした。
【0067】このようにして作製したガラス中間体の外
径2Dとコア部径2dとの倍率2D/2dをプリフォー
ムアナライザで調べた。図22は、ガラス中間体の倍率
2D/2dがその長手方向に沿ってどのように変化を示
すグラフである。同図に示す通り、倍率2D/2dは長
手方向に沿ってほぼ一定となっており、計算の結果、倍
率2D/2dの変動率は0.6%以下であることが分か
った。
【0068】続いて、上記のガラス中間体を所定のバー
ナで加熱するとともに延伸し、その外径を22mmとし
た。その後、HF溶液を用い、その外径が13.2mm
になるまでエッチングした。これにより、コア部の外径
とクラッド部(後に第1クラッド部となる部分)の外径と
の比を1.98とした。ここで、説明の便宜上、以上の
手順により得られた中間体をガラス中間体Aとする。
【0069】次に、第2クラッド部となるべき第2のガ
ラスパイプが有すべき肉厚分布を算出するため、試作用
の第2のガラスパイプと試作用のガラス中間体とから光
ファイバ母材の試作品を作製した。そこで、先ず、試作
用のガラス中間体を作製した。このガラス中間体は、ガ
ラス中間体Aを作製した手順と同様に作製され、ガラス
中間体Aと形状及び材質がほぼ同一である。便宜上、こ
れをガラス中間体Bとする。また、試作用の第2のガラ
スパイプとして、VAD(Vapor-phase Axial Depositio
n)法により作製され、外径67mm及び内径17mmを
有する石英ガラス製のパイプを用意した。また、第2の
ガラスパイプはClを0.2mol%含有している。こ
のガラス中間体Bと試作用の第2のガラスパイプを用
い、以下のように光ファイバ母材の試作品を作製した。
【0070】試作用の第2のガラスパイプを製造装置1
に取り付け、その内面に付着する不純物を除去するとと
もに内面を平滑化するため、エッチングを行なった。こ
のエッチングの条件は、上記の不純物除去エッチングの
通りとした。このエッチングの後、当該ガラスパイプの
内部にガラス中間体Bを挿入し、両者を加熱一体化して
光ファイバ母材の試作品を作製した。このとき、上記の
加熱一体化条件を採用した。これにより、光ファイバ母
材の試作品を得た。
【0071】次に、この光ファイバ母材の試作品の屈折
率分布を測定し、光ファイバ母材の製造用の第2のガラ
スパイプが有すべき肉厚分布を算出した。そして、算出
の結果に基づき製造用の第2のガラスパイプを作製し
た。製造用の第2のガラスパイプの作製は、試作用の第
2のガラスパイプと形状及び材質がほぼ等しいガラスパ
イプを用意し、その内面を気相エッチングすることによ
り行なった。気相エッチングの際には、製造装置1を用
い、トラバース速度を図23に示すように変化させた。
このように得た光ファイバ母材の製造用の第2のガラス
パイプが有する内径の長手方向に沿った分布を図24に
示す。
【0072】以上のようにして得た製造用の第2のガラ
スパイプを製造装置1に取り付け、このガラスパイプの
内部にガラス中間体Aを挿入し、空焼きを行なった。こ
の条件は、上記の空焼き条件と同一とした。その後、上
記の加熱一体化条件に従って、製造用の第2のガラスパ
イプとガラス中間体Aとを加熱一体化し、光ファイバ母
材中間体を得た。図25は、この光ファイバ母材中間体
が有する倍率2D/2dの長手方向に沿った分布を示す
グラフである。この光ファイバ母材中間体の倍率2D/
2dの変動率は、0.6%程度であった。続いて、第2
クラッド部の外径を更に増加させるため、光ファイバ母
材中間体の外周にClを0.2w%含有するSiO2
形成し、光ファイバ母材とした。このSiO2を形成す
る方法としては、OVD(Outside Vapor Deposition)法
やVAD法といった気相合成法、又は所定のガラスパイ
プを用いたコラプス法が採用され得る。
【0073】この光ファイバ母材の屈折率分布をプリフ
ォームアナライザを用いて測定し、光ファイバ母材の外
径2Dとコア部径2dとの倍率2D/2dを求めた。こ
こで、倍率の最小値は31.09であり、最大値は3
1.30であった。また、その変動率は0.7%程度で
あった。すなわち、倍率2D/2dの変動率が100m
mの長さに渡って3%以下である光ファイバ母材が得ら
れることが分かった。この程度の変動率であれば、光フ
ァイバ母材から製造される光ファイバの長手方向に沿っ
た光学的特性をほぼ一定とすることができる。また、倍
率2D/2dの変動率が1%以下であると更に好まし
い。
【0074】続いて、以上のように得た光ファイバ母材
を線引きし、外径が125μmとなる光ファイバを製造
した。なお、この光ファイバのコア径は4.0μm直径
であり、第1クラッド径は7.9μm直径であった。こ
の光ファイバの波長1550nmにおける伝送特性を測
定した。測定結果を以下に示す。 ・分散(ps/km/nm):−60.8〜−58.4 ・分散スロープ(ps/km/nm2):−0.177
〜−0.170 ・実効断面積Aeff(μm2):19.7〜20.1 ・MFD(μm):5.08〜5.06 ・2mのカットオフ波長(nm):804〜810 ・伝送損失(dB/km):0.268〜0.275 ・PMD(ps/km1/2):0.03〜0.10 これらの結果より、本実施例における光ファイバ母材か
ら、全長に渡って伝送特性がほぼ均一な光ファイバが得
られたことが分かる。すなわち、光ファイバから所望の
特性を有する部分だけを切り出すといった作業は不要で
ある。そのため、所望の特性を有する部分を見出すため
の検査作業、切り出し作業、及び切り出し後の検査作業
などは不要である。そのため、工程が増えてしまうこと
はなく、また、廃棄長を最小限とし得るため、光ファイ
バの製造コストの増加が防止される。
【0075】以上、いくつかの実施形態及び実施例を用
いて本発明に係る光ファイバ母材の製造方法を説明した
が、本発明はこれらに限られることなく、様々な変形が
可能である。また、実施形態及び実施例で示したグラフ
は例示的なものであり、これらに限定されるものではな
い。
【0076】第4の実施形態においては、製造用ガラス
ロッドを延伸することにより、所望の外径分布を有する
製造用ガラスロッドを作製した。このような製造用ガラ
スロッドの作製方法は、コア部がその径方向に対して所
定の屈折率分布を有する場合に特に好適である。コア部
の屈折率分布がほぼ一定な光ファイバ母材を作製する場
合には、添加物濃度がほぼ一定なガラスロッドを用意
し、このガラスロッドを外周研削することにより製造用
ガラスロッドを作製してよい。
【0077】また、上記の実施形態においては、加熱一
体化時にガラスロッドが内部に挿入されたガラスパイプ
を鉛直に保持したが、鉛直方向に対して所定の角度とな
るよう保持されてよい。ここで、所定の角度とは、これ
らに湾曲が生じない程度の角度を意味する。ガラスパイ
プとガラスロッドとが水平に近い状態で保持される場合
には、自重によって、これらが湾曲してしまう。本発明
者らは、湾曲が問題とならない角度について検討を重ね
た結果、鉛直方向に対して0°〜5°の範囲が好適であ
ることを見出した。
【0078】実施例の変形として以下の手順も可能であ
る。すなわち、先ず、試作用の第1のガラスパイプ内に
試作用ガラスロッドを挿入し、双方を鉛直方向に対し所
定の角度に保持して加熱一体化し、試作ガラス中間体を
作製する。この試作ガラス中間体は、試作用の第2のガ
ラスパイプに対するガラスロッドに相当する。この試作
ガラス中間体を試作用の第2のガラスパイプに挿入し、
これらを上記の所定の角度に保持して加熱一体化し、試
作光ファイバ母材を作製する。
【0079】次に、試作光ファイバ母材の長手方向に沿
った複数の位置において、この光ファイバ母材の屈折率
分布を測定する。続いて、この測定の結果に基づいて、
光ファイバ母材の製造に用いるガラスロッドが有すべき
外径、光ファイバ母材の製造に用いる第1及び第2のガ
ラスパイプが有すべき肉厚の分布を算出する。そして、
この算出の結果に従って外径が変化する製造用のガラス
ロッドと、この算出の結果に従って肉厚が変化する製造
用の第1及び第2のガラスパイプとを用意する。
【0080】その後、製造用のガラスパイプを製造用の
第1のガラスパイプに挿入し、これらを上記の所定の角
度に保持して加熱一体化し、ガラス中間体を作製する。
最後に、このガラス中間体を製造用の第2のガラスパイ
プに挿入し、これらを上記の所定の角度に保持して加熱
一体化し、光ファイバ母材を作製する。このようにして
も、製造用のガラスロッド、第1及び第2のガラスパイ
プを所望の形状とし得るため、外径とコア部径との倍率
が全長に渡って略等しい光ファイバ母材を製造できる。
また、上記の実施例の変形に相当する手順は、第1及び
第2のガラスパイプに加えて第3のガラスパイプを用い
る場合にも適用し得る。
【0081】さらに、ガラスパイプの内面の研削は、気
相エッチングに限らず機械加工により行なうこともでき
る。機械加工によっても、その肉厚分布を算出の結果の
通りとできる。
【0082】なお、光ファイバ母材を製造する毎に光フ
ァイバ母材の試作品を製造する必要はないことは当業者
にとって明らかである。仕様が同一な光ファイバ母材を
複数個作製する場合には、始めに一回だけ光ファイバ母
材の試作品を作製しておけば良い。そして、この光ファ
イバ母材の試作品の屈折率分布を測定し、製造用ガラス
パイプ及びガラスロッドが有すべき外径又は内径の長手
方向の分布を算出すれば、この算出の結果に基づいて製
造用ガラスパイプ及びガラスロッドを複数用意できる。
このようにして用意された複数の製造用ガラスパイプ及
びガラスロッドを用いれば、複数個の光ファイバ母材を
製造できる。また、測定の結果又は算出の結果を記憶装
置等に保存しておき、必要に応じて適宜利用するように
してもよい。
【0083】上記の実施形態及び実施例においては、外
径が長手方向に沿ってほぼ一定な試作ガラスロッド、及
び肉厚が長手方向に沿ってほぼ一定な試作ガラスパイプ
を用いたが、必ずしも一定でなくてもよい。例えば製造
上の誤差或いは不具合により長手方向にそって外径変動
が生じてしまったガラスロッドが数本有り、しかも、こ
れらの外径の変動が長手方向にほぼ同一であれば、その
うちの一本を試作ガラスロッドとし、残りを製造用のガ
ラスロッドとして使用できる。本発明に係る光ファイバ
母材の製造方法においては、試作光ファイバ母材の屈折
率分布が測定され、この測定の結果に基づいて製造用の
ガラスパイプが有すべき肉厚分布が算出され、この算出
の結果に基づいて製造用のガラスパイプが用意される。
したがって、用意された製造用のガラスパイプは、試作
ガラスロッドが有する製造上の誤差又は不具合による外
径変動をも相殺可能な肉厚分布を有することができる。
【0084】また、同様の原因により肉厚が長手方向に
沿って不均一となってしまったガラスパイプが数本有
り、しかも、これらの肉厚が長手方向にそってほぼ同一
の分布を有していれば、これらのうち一本を試作ガラス
パイプとし、残りを製造用のガラスパイプとして使用で
きる。すなわち、ガラスロッド又はガラスパイプの製造
時に不具合が生じたとしても、製造されたガラスロッド
又はガラスパイプを廃棄することなく使用し得るため、
光ファイバ母材の製造コストの増加を防止できる。
【0085】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る光フ
ァイバ母材の製造方法によれば、試作光ファイバ母材の
屈折率分布が測定され、この測定の結果に基づいてガラ
スパイプが有すべき肉厚の長手方向に沿った変化が算出
される。そして、この算出の結果に従って肉厚が変化す
るガラスパイプが用意される。その後、試作に用いたガ
ラスロッドと形状及び材質がほぼ等しいなガラスロッド
と上記のガラスパイプとが加熱一体化されて光ファイバ
母材が製造される。光ファイバ母材の製造に用いるガラ
スパイプは算出の結果に従って肉厚が変化しているた
め、加熱一体化の際、自重により生じるガラスパイプの
肉厚の変化が相殺され得る。したがって、クラッド部の
外径とコア部の外径との倍率が長手方向に沿って一定化
され、光ファイバの光伝送特性が均一となる。よって、
光ファイバの製造コストを低減可能な光ファイバ母材が
提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、光ファイバ母材の製造装置の主要部の
一例を示す概略図である。
【図2】図2は、第1の実施形態の光ファイバ母材の製
造方法のフロー図である。
【図3】図3は、光ファイバ母材の試作品の外径2Dが
長手方向に沿ってどのように変化するかを示すグラフで
ある。
【図4】図4は、光ファイバ母材の試作品のコア部径2
dが長手方向に沿ってどのように変化するかを示すグラ
フである。
【図5】図5は、光ファイバ母材の試作品の外径2Dと
コア部外径2dとの倍率2D/2dが長手方向に沿って
どのように変化しているかを示すグラフである。
【図6】図6は、倍率2D/2dの長手方向に沿った変
化を変動率で示すグラフである。
【図7】図7は、製造用ガラスパイプの外径2Dの長手
方向に沿った分布を示すグラフである。
【図8】図8は、製造した光ファイバ母材の倍率2D/
2dをその長手方向に対してプロットしたグラフであ
る。
【図9】図9は、ガラスロッドのエッチング量のトラバ
ース速度依存性を示すグラフである。
【図10】図10は、トラバース速度をガラスロッドの
長手方向に沿ってどのように変化させるかを示すグラフ
である。
【図11】図11は、図10に示すようなトラバース速
度でエッチングした製造用ガラスパイプの内径分布を示
すグラフである。
【図12】図12は、製造した光ファイバ母材の倍率2
D/2dをその長手方向にプロットしたグラフである。
【図13】図13は、エッチング量のエッチング温度依
存性を示すグラフである。
【図14】図14は、ガラスパイプの長手方向に沿った
エッチング温度の分布を示すグラフである。
【図15】図15は、図14に示すよう温度を変化させ
てエッチングした製造用ガラスパイプの内径分布を示す
グラフである。
【図16】図16は、製造した光ファイバ母材の倍率2
D/2dを長手方向にプロットしたグラフである。
【図17】図17は、延伸によって作製した製造用ガラ
スロッドの長手方向の外径を示すグラフである。
【図18】図18は、一例として製造した光ファイバ母
材の倍率2D/2dをその長手方向にプロットしたグラ
フである。
【図19】図19は、実施例として製造する光ファイバ
母材が有すべき屈折率分布を示すグラフである。
【図20】図20は、トラバース速度をガラスロッドの
長手方向に沿ってどのように変化させたかを示すグラフ
である。
【図21】図21は、実施例における製造用ガラスパイ
プの内径の変化を示すグラフである。
【図22】図22は、ガラス中間体の倍率2D/2dが
その長手方向に沿ってどのように変化を示すグラフであ
る。
【図23】図23は、トラバース速度をガラスロッドの
長手方向に沿ってどのように変化させたかを示すグラフ
である。
【図24】図24は、光ファイバ母材の製造用の第2の
ガラスパイプが有する内径の長手方向に沿った分布を示
すグラフである。
【図25】図25は、実施例の光ファイバ母材中間体が
有する倍率2D/2dの長手方向に沿った分布を示すグ
ラフである。
【符号の説明】
1…製造装置、2…ガラスパイプ保持部、3…ガラスロ
ッド保持部、4…電気炉、5…固定部材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大西 正志 神奈川県横浜市栄区田谷町1番地 住友電 気工業株式会社横浜製作所内 Fターム(参考) 4G021 BA03 BA04

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラスパイプ内にガラスロッドを挿入
    し、前記ガラスパイプ及び前記ガラスロッドを加熱一体
    化して光ファイバ母材を製造する方法であって、 試作ガラスロッドを試作ガラスパイプ内に挿入し、双方
    を鉛直に保持し加熱一体化して試作光ファイバ母材を製
    造し、 前記試作光ファイバ母材の長手方向に沿った複数の位置
    において、前記試作光ファイバ母材の屈折率分布を測定
    し、 この測定の結果に基づいて、光ファイバ母材の製造に用
    いるガラスパイプが有すべき肉厚の前記長手方向に沿っ
    た変化を算出し、 この算出の結果に従って肉厚が変化する製造用ガラスパ
    イプを用意し、 前記試作ガラスロッドに形状及び材質が実質的に同一な
    ガラスロッドを前記製造用ガラスパイプ内に挿入し、双
    方を前記所定の角度に保持し加熱一体化して光ファイバ
    母材を製造することを特徴とする光ファイバ母材の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 ガラスパイプ内にガラスロッドを挿入
    し、前記ガラスパイプ及び前記ガラスロッドを加熱一体
    化して光ファイバ母材を製造する方法であって、 試作ガラスロッドを試作ガラスパイプ内に挿入し、双方
    を鉛直に保持し加熱一体化して試作光ファイバ母材を製
    造し、 前記試作光ファイバ母材の長手方向に沿った複数の位置
    において、当該試作光ファイバ母材の屈折率分布を測定
    し、 この測定の結果に基づいて、光ファイバ母材の製造に用
    いるガラスロッドが有すべき外径を算出し、 この算出の結果に従って外径が変化する製造用ガラスロ
    ッドを用意し、 前記試作ガラスパイプに形状及び材質が実質的に同一な
    ガラスパイプ内に前記製造用ガラスロッドを挿入し、双
    方を前記所定の角度に保持し加熱一体化して光ファイバ
    母材を製造することを特徴とする光ファイバ母材の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 ガラスパイプ内にガラスロッドを挿入
    し、前記ガラスパイプ及び前記ガラスロッドを加熱一体
    化して光ファイバ母材を製造する方法であって、 試作ガラスロッドを試作ガラスパイプ内に挿入し、双方
    を鉛直に保持し加熱一体化して試作光ファイバ母材を製
    造し、 前記試作光ファイバ母材の長手方向に沿った複数の位置
    において、前記試作光ファイバ母材の屈折率分布を測定
    し、 この測定の結果に基づいて、光ファイバ母材の製造に用
    いるガラスパイプが有すべき肉厚と、光ファイバ母材の
    製造に用いるガラスロッドが有すべき外径と、を算出
    し、 この算出の結果に従って肉厚が変化する製造用ガラスパ
    イプと、前記算出の結果に従って外径が変化する製造用
    ガラスロッドとを用意し、 前記製造用ガラスパイプ内に前記製造用ガラスロッドを
    挿入し、双方を前記所定の角度に保持して加熱一体化し
    光ファイバ母材を製造することを特徴とする光ファイバ
    母材の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記試作ガラスパイプに形状及び材質が
    実質的に同一なガラスパイプを調達し、 該ガラスパイプの肉厚が前記算出の結果に従って変化す
    るよう該ガラスパイプの外周を研削して前記製造用ガラ
    スパイプを用意することを特徴とする請求項1又は3に
    記載の光ファイバ母材の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記試作ガラスパイプに形状及び材質が
    実質的に同一なガラスパイプを調達し、 該ガラスパイプの肉厚が前記算出の結果に従って変化す
    るよう該ガラスパイプの内面を研削して前記製造用ガラ
    スパイプを用意することを特徴とする請求項1又は3に
    記載の光ファイバ母材の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記内面の研削を気相エッチングにより
    行なうことを特徴とする請求項5記載の光ファイバ母材
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記気相エッチングの際に、前記試作ガ
    ラスパイプに形状及び材質が実質的に同一なガラスパイ
    プの温度をその長手方向に沿って変化させることを特徴
    とする請求項6記載の光ファイバ母材の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記気相エッチングの際に、前記試作ガ
    ラスパイプに形状及び材質が実質的に同一なガラスパイ
    プを熱源により部分的に加熱し、前記熱源を該ガラスパ
    イプの長手方向に沿って移動させ、その移動速度を長手
    方向に変化させることを特徴とする請求項6記載の光フ
    ァイバ母材の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記試作ガラスロッドに形状及び材質が
    実質的に同一なガラスロッドを調達し、該ガラスロッド
    の外径が前記算出の結果に従って変化するよう該ガラス
    ロッドを延伸して前記製造用ガラスロッドを用意するこ
    とを特徴とする請求項2又は3に記載の光ファイバ母材
    の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記試作ガラスロッドに形状及び材質
    が実質的に同一なガラスロッドを調達し、該ガラスロッ
    ドの外径が前記算出の結果に従って変化するよう該ガラ
    スロッドの外周を研削して前記製造用ガラスロッドを用
    意することを特徴とする請求項2又は3に記載の光ファ
    イバ母材の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜3のいずれか一項に記載の
    光ファイバ母材の製造方法により製造され、外径2Dと
    コア部の外径2dとの倍率2D/2dの変動率が長手方
    向に沿う100mmの長さに渡って3%以下であること
    を特徴とする光ファイバ母材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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