JP4179265B2 - 光ファイバ母材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
かかる状況下で、本発明は、光ファイバ母材の製造コストを低減することを課題とする。
水分を除去することにより、光ファイバ母材から製造される光ファイバのOH吸収による伝送損失を小さくできる。また、前記光ファイバ母材から光ファイバを製造するときに、水分に由来する気泡が発生することを防ぎ、前記気泡による前記光ファイバの強度の低下を防ぐこともできる。
熱源に対するガラスパイプおよびコアロッドの移動速度が大きすぎると、前記コアロッドと前記ガラスパイプとが一体化する箇所が熱源に向き合う位置を通り過ぎたところに存在することになるが、それでは、前記コアロッドおよび前記ガラスパイプの加熱が不十分で十分に両者が一体化しない、いわゆる潰し残しが生じる。前記(5)に記載の方法では、前記ガラスパイプおよび前記コアロッドが十分に加熱され前記熱源に向かい合う範囲内で一体化するので、潰し残しが生じない。
ここで、比屈折率差が実質的に等しい場合は、例えば、その比屈折率差が−0.1ないし0.1%である場合である。また、前記光ファイバは、第一クラッドに対するコアの比屈折率差を0.3%以上とするので外乱による伝送損失は実用上問題にならない。
これによりコアロッドとガラスパイプとを加熱して一体化するロッドインコラプス時には、ガラスパイプがコアよりも先に軟らかくなり、その表面張力にしたがって縮径してコアに付着していきコアロッドとガラスパイプとの一体化がなされる。このとき、コアは比較的粘度が高いので、変形して非円したり偏心することがない。
この光ファイバ母材はロッドイン界面を挟む部分の比屈折率差が実質的に等しいので、この光ファイバ母材から製造される光ファイバにおいて前記界面は光の伝搬に悪影響を及ぼさない。
この光ファイバ母材から製造される光ファイバはOH基の吸収による伝送損失が小さく、0.5dB/km以下とすることができる。この光ファイバ母材は、コアの径をDc、前記コアロッドの外径をD1としたとき1≦D1/Dc<2であるコアロッドと、外径をD2、内径をd2としたとき7<D2/d2≦30かつD2≧90mmであるガラスパイプとを1回だけロッドインコラプスして製造されるファイバ母材であって、ロッドイン界面は一つしかなく、ガラスパイプにさらにガラス微粒子を堆積させてそのガラス微粒子を透明化させた箇所の界面もない。このような大きさ及び構成の光ファイバ母材でOH基による伝送損失が0.5dB/km以下である光ファイバ母材は、本発明者が知る範囲で、日本国内において公然知られたものではない。
本発明の一形態によればコアの非円もしくは偏心または気泡のない光ファイバ母材が得られ、その光ファイバ母材から製造される光ファイバは、PMDが小さく長距離伝送が可能であり、接続時の損失が小さく、伝送損失が良好である。また、前記光ファイバはカットオフ波長や分散等の特性の長手方向の変動がない。
また、本発明の別の形態によれば、ロッドイン界面にOH基が殆どない光ファイバ母材が得られ、その光ファイバ母材から製造される光ファイバはOH基の吸収による伝送損失が殆どなく、ロッドインコラプスにより製造された光ファイバとしては従来にない光伝送特性の優れたものである。
本発明の光ファイバ母材は、コアの径に対する外径の比がシングルモード伝送可能な範囲の値である。これは、本発明の光ファイバ母材からはシングルモード光ファイバが製造されることを意味する。一般にシングルモード光ファイバはコア径がクラッド径の10分の1程度である。一方、マルチモード光ファイバはコア径がクラッド径の2分の1程度である。光ファイバ母材の場合もコア径とクラッド径の比率は光ファイバと同じである。したがって、コアロッドとガラスパイプとをロッドインコラプスさせてシングルモード光ファイバ用の光ファイバ母材を製造する場合は、同様にしてマルチモード光ファイバ用の光ファイバ母材を製造する場合に比べて、コアロッドに対するガラスパイプの体積比が圧倒的に大きい。したがって、ロッドインコラプスによりシングルモード光ファイバ用の光ファイバ母材を製造する方法に、ロッドインコラプスによりマルチモード光ファイバ用の光ファイバ母材を製造する技術をそのまま流用するのではコアとクラッドとがうまく一体化せず良好な光ファイバ母材を得ることができない。
本発明の光ファイバ母材の製造方法に使用されるコアロッドは、その外径をD1、前記コアロッドに含まれるコアの径をDcとしたとき、1≦D1/Dc<2である。本発明の光ファイバ母材の製造方法に使用されるガラスパイプは、その外径をD2、その内径をd2としたとき、7<D2/d2≦30かつD2≧90mmである。
D1/Dc=1であるとき、コアロッドはコアのみを有し、ガラスパイプがクラッドとなる。
1<D1/Dc<2であるとき、光学的クラッドの一部がコアロッドに含まれる。ガラスパイプは、クラッドとなる。以下、コアロッドに含まれる光学的クラッドを第一クラッドと呼ぶ。
本発明の一実施形態では、コアロッドをガラスパイプに挿入して、前記コアロッドおよび前記ガラスパイプを加熱して一体化するときに、前記コアロッドと前記ガラスパイプとの隙間を減圧する。コアロッドとガラスパイプとを一体化するとき、図2に示すように、まずコアロッド1およびガラスパイプ2の一端を一体化する。それから他端へ向かって一体化していく。このとき通気管8cからガラスパイプ2内の気体を排気して、コアロッド1とガラスパイプ2との隙間を減圧する。例えば、1kPa以下まで減圧する。すると、常圧のときよりもガラスパイプ2の内面の表面張力に対してガラスパイプ2内の気体の抵抗が小さいので、ガラスパイプ2は常圧のときよりも低い温度で縮径してコアロッド1と一体化する。例えば、ガラスパイプ内の気圧が1kPaの場合は、約1250℃でコアロッドとガラスパイプとは一体化する。このとき、コアロッド、ガラスパイプとも粘度が比較的高く、軟らかくなり過ぎていないので、いずれも一体化のときに変形することがなく、コアの非円や偏心がない光ファイバ母材が得られる。そして、その光ファイバ母材から製造される光ファイバのPMDは小さい。
前記隙間のが1kPa以下の減圧雰囲気または露点が−70℃以下である乾燥雰囲気である光ファイバ母材について、さらに前記両端部分で挟まれる部分のコアロッドと前記ガラスパイプとを一体化した後、光ファイバを線引きすると、コアロッドであった部分とガラスパイプであった部分との界面のOH基濃度を低くすることができ、OH基による信号光(波長1.38μm)の伝送損失を0.5dB/km以下とすることができる。
本発明のコアロッドは、純シリカからなるもの、純シリカにGeO2、P2O5、Al2O3やTiO2、Cl等の屈折率を上昇させる添加材が添加されたものが挙げられる。
コアに前記添加材が添加された場合は、1<D1/Dc<2として第一クラッドを設けると、前述のようにロッドインコラプス時に非円、偏心、気泡が生じることがなく好ましい。
ガラスパイプはコアとクラッドとの屈折率差を0.3%以上とする限り、純シリカそのもの、純シリカにフッ素やB2O3の屈折率を下げる添加材を添加したもの、またはGeO2、P2O5、Al2O3やTiO2、Cl等の屈折率を上昇させる添加材が添加されたものが挙げられる。
コアロッドが第一クラッドを有する場合、ガラスパイプの内面近傍の屈折率を前記第一クラッドの屈折率と実質的に等しくする。例えば、ガラスパイプの内面近傍に対する第一クラッドの比屈折率差を−0.1ないし0.1%とする。これにより、製造される光ファイバ母材の光学的クラッドの屈折率を均一にすることができる。この光ファイバ母材から製造される光ファイバのカットオフ波長や波長分散を設計通りの値とできる。ここで、内面近傍とは、例えば、ガラスパイプの内面からその厚さの十分の一までの部分である。前記ガラスパイプの内面の組成が第一クラッドと同じであれば、光学的クラッドの組成を均一にできるので、その光学的クラッドを有する光ファイバは外乱による伝送特性の悪化が小さく、さらに好ましい。
まず、コアロッド1をガラスパイプ2に挿入して両者の中心軸を一致させた状態でコアロッド1を固定治具3で固定する。ガラスパイプの外側に配置した熱源4でガラスパイプ2およびコアロッド1の一端を加熱する。図2に示すように、ガラスパイプ2は加熱されて軟化すると表面張力およびガラスパイプ2の内外圧差により縮径しコアロッド1と一体化し、光ファイバ母材になる。熱源4をガラスパイプ2の一端から他端に向けて図2の矢印の向きに移動させると、ガラスパイプ2とコアロッド1とが一体化する箇所が熱源の移動につれて移動し、ガラスパイプ2とコアロッド1とは全長に亘って一体化されて光ファイバ母材となる。
ロッドインコラプスを行うと、得られた光ファイバ母材の軸方向に垂直な断面にはロッドとパイプとが加熱一体化されて形成される界面(以下ロッドイン界面ともいう)が形成される。
熱源に対する前記ガラスパイプおよびコアロッドの移動速度と熱源の長さとの比が、そのロッドインコラプスにより得られる光ファイバ母材の品質に影響することを、本発明者は見つけた。特に、厚肉かつ大径のガラスパイプを使用するロッドインコラプスにおいては、前記移動速度と熱源の長さとの比を所定の範囲とすることが良品の光ファイバ母材を得るために有効な手段であることを本発明は見つけた。例えば、前記相対移動速度を前記熱源の長さにより決定する。あるいは、前記熱源を複数の発熱部位から構成し、実際に発熱する部位を切り替えることで発熱している熱源の長さを変更することにより、前記比が所定の範囲内の値になるようする。例えば、図3に示すようにコイルの長さをL(mm)、前記移動速度をv(mm/分)とすると、熱源が抵抗加熱式ヒータや誘導加熱式ヒータであれば5≦L/v≦20とする。これにより前記ガラスパイプが受ける熱量が必要十分となるので、ガラスパイプの潰し残しがなく、また、前記ガラスパイプと前記コアロッドとが一体化される箇所の幅がごく短くなるので気泡がロッドイン界面に混入しない。熱源が抵抗加熱型ヒータの場合、熱源の長さはそのヒータの幅であり、熱源が誘導加熱型ヒータの場合、熱源の長さはそのコイルの幅である。
熱源の中心に向き合う位置Pよりも前記ガラスパイプおよび前記コアロッドが前記熱源に対して移動していく側、つまり出口側、図3においては位置Pよりも左側に融着位置Fが存在すると、融着位置Fの幅はガラスパイプ2の長さ方向に広がらず、融着位置Fはほぼ線(図3においては点)となる。この線状の融着位置Fがガラスパイプ2の左端から右端へ移動するので、コアロッド1とガラスパイプ2との界面に気泡が閉じこめられることがない。
本発明者が考察するところではL/D2の好適範囲は0.6≦L/D2≦2である。
ここで、電気炉とは、誘導炉や抵抗炉のように外部から電力供給を受けて、それを熱エネルギーに変換する加熱炉を言う。
電気炉においては当該電気炉に投入する電力Wによりその発熱量が決まる。本発明者は、電気炉に投入する電力Wを、ガラスパイプの径D2と熱源とガラスパイプとの相対移動速度vに応じて、適当な範囲とすることが、厚肉のガラスパイプをロッドインコラプスして品質のよい光ファイバ母材を製造するために有効であることを見いだした。
ガラスパイプに加熱されるべき熱量は電気炉に投入される電力Wで表すことができ、加熱されるべきガラスパイプの体積はD2 2・vに比例する。ガラスパイプの体積あたりの電力が十分でないとガラスパイプの加熱が不十分となり、ガラスパイプの体積あたりの電力が過剰であるとガラスパイプに加えられる熱量が過剰となる。W/(D2 2・v)を一定範囲とするとガラスパイプに加えられる熱量が過不足なくなるので、厚肉のガラスパイプをロッドインコラプスして品質のよい光ファイバ母材を製造することができる。
本発明者が、考察するところではその範囲は、7.0×10−5≦W(kW)/(D2 2(mm2)・v(mm/分))≦7.0×10−4である。
純シリカからなるコアロッドを全体にフッ素が添加されたガラスパイプに挿入して誘導炉により加熱してロッドインコラプスした。コアロッドの外径は10mm、ガラスパイプの内径は12mm、ガラスパイプの外径は140mmとした。ガラスパイプに添加したフッ素の量は、純シリカに対する前記ガラスパイプの比屈折率差が−0.30%となる量である。
予め誘導炉内に熱電対を挿入して炉の中心が1500℃程度になるように加熱して前記誘導炉の中心軸の温度を測定し、その温度分布を求めた。20点の温度の測定値から次式ガウシアン表記で前記誘導炉内の温度分布を近似して求めた。
T(z)=Tmax・exp(z2/72404)…(近似式1)
ここで、zはガラスパイプの軸方向の座標であり、Tmaxは最高温度である。
熱源の長さLは122mmであった。
このときのL/vは6.1、L/D2は0.87、W/(D2 2・v)は3.8×10−4である。この条件にて製造された光ファイバ母材はコア径Dcに対する外径D3の比(D3/Dc)の変動、コア非円率およびコア偏心率は全長に亘って1%以下であった。
この光ファイバ母材を線引して光ファイバを製造した。線引き中の断線なく約1100kmの光ファイバ母材が製造された。この光ファイバは、波長1.55μmにおける伝送損失が0.17dB/kmであり、高品位な光ファイバであった。
コアにGeO2が添加され、コアの周囲に純シリカをつけたコアロッドを純シリカからなるガラスパイプに挿入して、誘導炉により加熱してロッドインコラプスした。コアの外径は8mm、コアロッドの外径は10mm、ガラスパイプの内径は12mm、ガラスパイプの外径は140mmとした。コアに添加したGeO2の量は、純シリカガラスパイプに対する比屈折率差が0.35%となる量である。例1と同様に前記誘導炉内の温度分布を近似して求めた。
T(z)=Tmax・exp(z2/226477)…(近似式2)
熱源の長さLは215mmであった。
このときのL/vは5.4、L/D2は1.5、W/(D2 2・v)は2.1×10−4である。この条件にて製造された光ファイバ母材はコア径Dcに対する外径D3の比(D3/Dc)の変動、コア非円およびコア偏心は全長に亘って1%以下であった。
この光ファイバ母材を線引して光ファイバを製造した。線引き中の断線なく約1150kmの光ファイバ母材が製造された。この光ファイバは、波長1.55μmにおける伝送損失が0.19dB/kmであり、高品位な光ファイバであった。
前記例1同様のコアロッドおよびガラスパイプを使用して、電力Wを130kW、ガラスパイプ表面の最高温度を1800℃、移動速度vを40mm/分とした以外は例1と同様にして光ファイバ母材を製造した。製造された光ファイバ母材の外径は139.8mmであった。
このときのL/vは3.0、L/D2は0.87、W/(D2 2・v)は1.6×10−4である。この条件にて製造された光ファイバ母材はロッドイン界面に気泡が散在していた。Lに対してvが大きすぎ、コアロッドおよびガラスパイプに単位時間当たりに与えられた熱量が小さすぎたために一体化が十分行われなかったことが原因と考えられる。
前記例2同様のコアロッドおよびガラスパイプを使用して、電力Wを170kW、ガラスパイプ表面の最高温度を2000℃、移動速度vを10mm/分とした以外は例2と同様にして光ファイバ母材を製造した。製造された光ファイバ母材の外径は139.8mmであった。
このときのL/vは21.6、L/D2は1.54、W/(D2 2・v)は8.5×10−4である。この条件にて製造された光ファイバ母材はコア非円およびコア偏心1%以上であった。vが小さく、コアロッドに単位時間当たりに与えられた熱量が大きすぎたためにコアロッドが変形したことが原因と考えられる。
本発明の光ファイバ母材では、ロッドイン界面のコア中心からの距離pが1≦p/rc<2であるので、ロッドイン界面がコアと光学的クラッドとの界面であるか、または光学的クラッドの中に観察される。
ベーキング工程の後にコアロッド表面やガラスパイプ内面に再度水分が付着しないように、前記コアロッドおよび前記ガラスパイプの隙間を乾燥気体雰囲気と連結して、または前記隙間の気体を排気して減圧雰囲気として前記コアロッドと前記ガラスパイプとを加熱して一体化する。
熱源4にはヒータやバーナが使用可能である。水分をガラスパイプ外面に与えないという点でヒータやプラズマバーナが好ましい。
加熱範囲はガラスパイプ全長とする。ガラスパイプの両端につけた把持パイプまで加熱することが好ましい。図4に示すように、熱源4の長さがガラスパイプの長さよりも短い場合は、加熱源をガラスパイプおよびコアロッドに対して相対的に移動させるが、いずれを移動させてもよく、両方を速度を違えて移動させてもよい。
図9に示すようにガラスパイプ2とほぼ同じ長さの熱源12を使用して、加熱範囲全体を同時に加熱してもよい。
本発明で使用するコアロッドは、コアロッドの径をD1、コアの径をDcとするとき、1≦D1/Dc<2である。コアロッドはVAD法、OVD法等により製造可能である。
D1/Dc=1のときは、コアロッドが光学的クラッドを有さず、コアのみからなる。
1<D1/Dc<2のときは、コアロッドが光学的クラッドの内側部分となる第一クラッドを有する。コアのみ合成した後、その周囲に光学的クラッドとなるガラス微粒子を堆積させる。VAD法ではコアの周囲に光学的クラッドの一部である第一クラッドを同時に合成することもできる。
透明化したコアロッドを必要に応じて公知の抵抗加熱炉や誘導加熱炉等の加熱手段を用いて所定の径に延伸する。例えば、3ないし30mmの外径に延伸する。約10mmの外径に延伸するのが好ましい。所定の径にされたコアロッドを、モル濃度が0.1重量%から50重量%のフッ化水素水溶液に1時間以上浸し表面の不純物汚染層を除去するのが好ましい。延伸やエッチングを行えば表面粗さを小さくでき、ロッドインコラプス時に気泡が発生することを低減できる。
VAD法またはOVD法でガラスパイプを製造する。体積の大きなガラスパイプを製造する場合は、合成速度の大きなOVD法が好ましい。
その他、上述したVAD法、OVD法以外にも、ゾルゲル法、その他公知の技術により石英系ガラスを製造して、脱水処理して原材料として使用すればよい。
前記により製造したコアロッドおよびガラスパイプはフッ化水素水溶液に浸漬し、洗浄することが望ましい。使用するフッ化水素水溶液は、重量濃度が0.1重量%から50重量%の間であると取り扱いが容易である。浸漬時間は1時間以上とするのが好ましい。
前記で説明したコアロッドとガラスパイプとを加熱一体化して光ファイバ母材を製造する。
コアロッドが第一クラッドを有する場合のコアロッドの偏心率およびガラスパイプの偏心率は0.3%以下であると好ましい。前記コアロッドの偏心率はコア中心と第一クラッド中心との距離をL1、コアロッドの径をD1とすると、L1/D1で表される。ガラスパイプの偏心率は、ガラスパイプの内径中心と外径中心との距離をL2、外径をD2としたとき、L2/D2で表される。
非円率または偏心率が小さなコアロッドまたはガラスパイプをロッドインコラプスすることで、できあがった光ファイバ母材のコアの非円や複屈折率の悪化を抑制でき、その光ファイバ母材から製造される光ファイバのPMDを低減できる。また、コアロッドとガラスパイプを一体化する際に、半径方向(軸に垂直な方向)での溶融状態の不均一性が低減され、コアロッドとガラスパイプの一体化が均一に進み、気泡の発生を抑制することができる。したがって、得られる光ファイバの伝送特性を良好なものとすることができる。コアロッドおよびガラスパイプとも非円率および偏肉率の小さなものを組み合わせるとさらに効果が大きい。
図6に示すように、ガラスパイプ2を把持用パイプ6に融着接続して、把持用パイプ6を把持手段10で把持する。こうしてガラスパイプ2を把持用パイプ6および把持手段10を介してコラプス装置(図示せず)に取りつける。
コアロッド1をガラスパイプ2内に挿入する。コアロッドを挿入する側と反対側の把持用パイプ6にはコネクタ7で通気管8を取り付ける。通気管8からガラスパイプ2内に乾燥ガスを流して、ガラスパイプ2内に大気が混入して大気中の水分がコアロッド1やガラスパイプ2に付着することを防止する。
コアロッド1をガラスパイプ2に挿入し終えると、コアロッドを挿入する側、図6では左側の把持用パイプ6と延長部材9との間に固定治具を押し込んでコアロッド1をガラスパイプ2に対して固定することを完了する。固定治具3を使用することでコアロッド1をガラスパイプ2の中心に固定することができ、線引きした後の光ファイバの非円率または偏心率を小さくできる。
コアロッドの固定後、図6の左側の把持用パイプ6にもコネクタと通気管を取り付ける。コネクタ7で把持用パイプ6を密封するのが好ましい。
乾燥ガスは、水素および水素元素を含む化合物(例えば、H2O、CH3OH)の濃度が1重量ppm以下のガスとする。露点が−70℃以下のガスを使用するのが望ましい。より望ましくは−75℃以下のガスを使用する。ここで露点とは大気圧基準で測定したときのものである。ガス種としては、He、Ar等の不活性ガス、N2、O2ガス等が使用可能である。場合によってはCl2、F2等のハロゲンガス、SOCl2、CH2Cl2、SiF4等のハロゲン原子を含むガスも使用可能である。コアロッドまたはガラスパイプ内に含まれる添加材によっては添加材に含まれる元素と同じ元素を含むSiCl4、GeCl4、PCl3、POCl3、BCl3、BBr3等も使用可能である。また、これらのガスは単独または2種以上からなる混合ガスを用いることも可能である。これによりコアロッドとガラスパイプの界面での不純物、特に水分の残留、混入を効果的に防止することが可能となる。
前述の説明では、ガラスパイプの取り付け後すぐにコアロッドを挿入したが、コアロッドを挿入する前にガラスパイプ内に乾燥ガスを流してガラスパイプ内面を150ないし550℃に加熱することが望ましい。ガラスパイプ内面に物理的に付着している水分が除去される。ガラスパイプと同程度の長さの熱源で全体を加熱してもよく、ガラスパイプよりも短い熱源をガラスパイプに相対的に移動して加熱してもよい。
コアロッド挿入前にガラスパイプ内に乾燥ガスを流して加熱した後、ガラスパイプの内面を気相エッチングするのが好ましい。エッチング処理によりパイプ内面に残留した不純物をより効果的に除去することができる。パイプ内面の異物が減って線引き時の断線や光ファイバの異常点が減少される。エッチングガスにはSF6、NF3、SiF4、CF4、C2F6等のフッ素化合物ガスやF2ガス等が使用可能である。これらの化合物ガスに、ヘリウムやアルゴン等の不活性ガス、N2、O2、更に脱水効果や脱遷移金属効果をもつ化合物ガス、例えばCl原子を含む化合物ガス等をも含む混合ガスでもよい。気相エッチング時にはパイプ内面の温度を1000℃ないし2300℃に加熱する。これら化合物ガスが分解しガラスと反応することでパイプ内面がエッチングされる。エッチングの研削量は10μm以上とするのが好ましい。
前述したように、気相エッチングの前に150ないし550℃にガラスパイプ内面を加熱して物理的に付着している水分を除去しておくことでエッチング時に硫酸等の有毒物質が発生することを抑制できる。
前記の気相エッチング後に、ガラスパイプ内に塩素ガス、酸素ガス、ヘリウムガスおよびそれらを2種以上含む混合ガスを流してガラスパイプ内面を1700℃ないし2300℃に加熱してパイプの内面を平滑化するのが好ましい。これによりガラスパイプを殆ど変形させずに、当該パイプ内面に残留する微小な傷、或いは凹凸部が溶融平滑化され、内面粗さを20μm以下にすることができる。塩素ガスを使用した場合は、ガラスパイプに化学的に付着している水分や当該パイプに残留する遷移金属系不純物を除去でき、気泡の発生防止に特に効果的である。
コアロッドをガラスパイプに挿入した後、コアロッド外面およびガラスパイプ内面を前述したベーキング工程で脱水することにより、その後にロッドインコラプスして得られた光ファイバ母材のロッドインによる界面のOH基濃度を1重量ppm以下とすることができる。これにより本発明に係る光ファイバ母材は、ロッドインコラプスにより得られた光ファイバ母材としては従来になくOH基による伝送損失が低い光ファイバを提供する。ロッドイン界面のOH基濃度を1重量ppm以下とすれば、1.38μmの光の伝送損失を0.50dB/km以下にすることができる。さらにロッドイン界面のOH基濃度を0.6重量ppm以下にすれば、1.38μmの光の伝送損失を0.35dB/km以下にすることができる。
ベーキング工程によりコアロッドおよびガラスパイプ表面の水分を除去した後、図1に示すように、熱源4をガラスパイプ2の一端に向き合う位置に持ってくる。ガラスパイプ2を移動させてもよく、熱源4を移動させてもよい。熱源4を発熱させガラスパイプ2を1800℃ないし2400℃に加熱してその一部を縮径させ、図2に示すように、ガラスパイプの一端を封止する。ガラスパイプ2または把持用パイプ6が封止されるまで通気管8aから乾燥ガスをガラスパイプ2内に供給し、通気管8bからガラスパイプ2内のガスを排出する。乾燥ガスには酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、塩素またはそれらの2種以上からなる混合ガスを使用できる。通気管8aに流量計13や圧力計14を設置してガラスパイプ2内のガスの流量や圧力を測定する。その結果によりガラスパイプ2が完全に封止されたかどうか判断できる。ガラスパイプ2を右から左に流れるガスの流量がゼロになるか、ガラスパイプ2内の気圧の上昇が止まったら把持パイプが完全に封止されたと判断できる。ガラスパイプ2が封止されたときにガラスパイプ2内の気圧が急に高くなってガラスパイプ2が破裂することを防ぐためにバイパス配管16を設けておくのが好ましい。ガラスパイプ2の左端を封止しつつあるときはバイパス配管16に設置したバルブ17を開放し、ガラスパイプ2が完全に封止されても乾燥ガスがバイパス配管16を通るようにする。ガラスパイプ2の封止が終了すればバルブ17を閉じる。
ガラスパイプ2の一端を封止した後、ガラスパイプ2内のサイクルパージを実施することが好ましい。図2に示すように、通気管8aに設置したバルブ15を閉じて、通気管8cに設置したバルブ18を開き通気管8cからガラスパイプ2内を真空引きする。通気管8cに圧力計19を設置しておき、ガラスパイプ2内の気圧を測定する。ガラスパイプ内の気圧が10kPa以下となれば真空引きを停止し、バルブ18を閉じる。そして、バルブ15を開いてガラスパイプ2内に乾燥ガスを送り込み、ガラスパイプ2内の気圧が50kPa以上となるまで乾燥ガスで圧張りする。この真空引きと圧張りの操作を繰り返し、ガラスパイプ2内の雰囲気中に含まれる水素および水素元素を含む化合物の濃度が1重量ppm以下とすることができる。真空引きは1kPa以下となるまで行うことが好ましく、圧張りは100kPa以上となるまで行うことが好ましい。サイクルパージを行うことでベーキング時に除去し切れなかった水素や水素元素を含む化合物あるいはベーキング後にロッドまたはパイプに付着した水分等を除去できる。
ガラスパイプ2が封止されたら、封止された部分から中実化を開始する。コアロッド1およびガラスパイプ2または熱源4を、熱源4がガラスパイプ2に対して図2において左から右へ移動するように、移動させる。コアロッド表面を500ないし1300℃に加熱してコアロッド1とガラスパイプ2とを図2において左から右へ一体化していく。コアロッド1またはガラスパイプ2の端まで両者が一体化されて光ファイバ母材を得る。一体化のときにガラスパイプ2およびコアロッド1をその軸を中心に回転させると、回転によりガラスパイプの外周方向の均熱にすることができ、製造される光ファイバ母材の非円率、偏心率をさらに小さな値とすることができる。ガラスパイプ2およびコアロッド1を回転させる場合は、通気管8a、8b、8cをロータリージョイントを介して取り付ける。
熱源の加熱方式は火炎、抵抗加熱、誘導加熱いずれも可能である。ガラスパイプの周方向の温度分布を均一にすると製造される光ファイバ母材の非円や偏心を防ぐことができる。このためには、熱源が電気炉であることが好ましい。誘導加熱は熱源の温度を変化させるときの応答性にすぐれているので熱源の温度制御の目的には誘導加熱が好ましい。
ガラスパイプ2内に乾燥ガスを供給しながら、ガラスパイプ2内のガスを通気管8cから排気してガラスパイプ2内を減圧する。ガラスパイプ2内を減圧することでガラスパイプ10内のガスの量を減らし、水素ガスや水素原子を含むガスが混入していたとしてもその量を減らすことができる。例えば、ガラスパイプ2内の気圧を10kPa以下にする。更に望ましくは1kPa以下、さらに望ましくは0.1kPa以下とする。
また、減圧排気することによりガラスパイプ内面の表面張力が周方向の各位置で均一に作用するので、コアロッドとガラスパイプとの一体化を均一に進行させることができ、溶着界面に気泡が残留することまたは気泡が発生することを効果的に防止できる。したがって、本発明に係る光ファイバ母材から光ファイバを線引きするときは、断線が気泡が原因となる断線がなく、得られる光ファイバの伝送損失は小さい。
2 ガラスパイプ
3 固定治具
4 熱源
5 光ファイバ母材
6 把持用パイプ
7 コネクタ
8 通気管
9 延長部材
10 把持部材
11 支持棒
12 熱源
13 流量計
14、19 流量計
15、17、18 バルブ
16 バイパス配管
20 誘導加熱式ヒータ
21 コイル
22 サセプター
23a、23b 水分が除去された部分
24 縮径部
25 隙間
Claims (6)
- コアロッドとガラスパイプとを熱源により加熱して一体化して、シングルモード光ファイバ用の光ファイバ母材を製造する方法であって、前記コアロッドに含まれるコアの径をDc、前記コアロッドの外径をD1としたとき、1≦D1/Dc<2であり、前記ガラスパイプの外径をD2、その内径をd2としたとき、7<D2/d2≦30かつD2≧90mmであり、前記コアロッドを前記ガラスパイプに挿入する工程、前記コアロッドおよび前記ガラスパイプを450℃以下の温度に加熱する前段加熱工程と550℃よりも高温に前記コアロッドおよび前記ガラスパイプを加熱する後段加熱工程とからなる前記コアロッド外面および前記ガラスパイプの内面の水分を除去する水分除去工程、ならびに前記コアロッドと前記ガラスパイプとの隙間を乾燥気体雰囲気と連結しながらまたは減圧排気しながら前記コアロッドと前記ガラスパイプとを加熱して一体化する工程を有する光ファイバ母材の製造方法。
- 前記水分除去工程を前記コアロッドと前記ガラスパイプとの隙間を乾燥気体雰囲気と連結しながらまたは減圧排気しながら行う請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記熱源に対して前記ガラスパイプおよび前記コアロッドをそれらの長さ方向に移動させて前記コアロッドと前記ガラスパイプとを一体化し、前記ガラスパイプの移動速度(mm/分)に対する前記熱源の長さ(mm)の比を5以上20以下とする請求項1または2に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記ガラスパイプが前記コアロッドと一体化する箇所が、前記熱源に向き合う範囲内であってかつ前記熱源の中心に向き合う位置よりも出口側に存在する請求項3に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 1200℃における前記コアロッドの平均粘度が同温度における前記ガラスパイプの平均粘度以上である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記コアロッドが純石英ガラスまたは添加材を含んだ石英ガラスからなり、前記ガラスパイプがフッ素添加石英ガラスを主成分とするガラスからなる請求項5に記載の光ファイバ母材の製造方法。
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