JP2003094586A - 印刷フィルム - Google Patents

印刷フィルム

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JP2003094586A
JP2003094586A JP2001294303A JP2001294303A JP2003094586A JP 2003094586 A JP2003094586 A JP 2003094586A JP 2001294303 A JP2001294303 A JP 2001294303A JP 2001294303 A JP2001294303 A JP 2001294303A JP 2003094586 A JP2003094586 A JP 2003094586A
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lactic acid
acid
polyester
based polyester
printing ink
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JP2001294303A
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English (en)
Inventor
Akio Toyoda
明男 豊田
Masao Kamikura
正雄 上倉
Akiyuki Imamura
彰志 今村
Takashi Mihara
崇 三原
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DIC Corp
Original Assignee
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02WCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO WASTEWATER TREATMENT OR WASTE MANAGEMENT
    • Y02W90/00Enabling technologies or technologies with a potential or indirect contribution to greenhouse gas [GHG] emissions mitigation
    • Y02W90/10Bio-packaging, e.g. packing containers made from renewable resources or bio-plastics

Abstract

(57)【要約】 【課題】 印刷インキ溶剤で表面加工を行う
際に、印刷インキ溶剤による変形又は膨潤を抑制しつ
つ、印刷インキの密着性が良好で印刷適性に優れ、か
つ、優れた耐衝撃性、柔軟性を有しつつ低ブリードアウ
ト性を有する生分解性の印刷フィルムを提供すること。 【解決手段】 基材層と印刷インキ受容層とから
なる印刷フィルムであって、前記基材層の少なくとも片
面に前記印刷インキ受容層を積層してなり、前記基材層
が、ポリ乳酸と乳酸系ポリエステル(A1)とを含む融
点120℃以上の結晶化された乳酸系ポリエステル組成
物(A)からなり、前記印刷インキ受容層が、軟化点4
0〜110℃の非晶性のポリ乳酸、又はポリ乳酸と乳酸
系ポリエステル(B1)とを含む軟化点40〜110℃
の非晶性の乳酸系ポリエステル組成物(B)からなるこ
とを特徴とする印刷フィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、印刷等の溶剤での
表面加工を必要とする各種の食品、飲料、薬品、雑貨な
どの包装又は収納を目的とした包装材、特に袋、ケース
及び軽量容器等、又は磁気カードなどの被記録材等のシ
ート、フィルム、合成紙等に関し、かつ生分解性を有す
る印刷用基材に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリス
チレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート
等の汎用プラスチックを加工したフィルム、シートは、
耐水性、透明性、強度、熱成形性、低コスト性等に、包
装袋、軽量容器等の様々な分野で利用されている。そし
てこのような汎用プラスチックからなるフィルム、シー
トには、必要事項の表示や意匠性を出すために様々な印
刷が施されている。
【0003】しかし、このような汎用プラスチックの廃
棄物は埋立地不足、景観阻害、海洋生物への脅威及び環
境汚染等の地球的環境問題を引き起こしており、それら
に替わる樹脂として生分解性樹脂、特にポリ乳酸の研究
が進められてきた。しかし、ポリ乳酸は、透明性が高い
ものの硬くて脆く、加工性に劣るという欠点があった。
このためポリ乳酸に様々な可塑剤を添加し柔軟性と耐衝
撃性を付与する研究がなされてきたが、可塑剤の添加に
よりブリードアウトを引き起こしており、柔軟性及び耐
衝撃性を付与しつつブリードアウトを抑制することが切
望されていた。特に、ポリ乳酸からなる製品の物性保証
期間を1年程度に設定してもブリードアウトを抑制し続
けることが切望されていた。
【0004】一方、一般的に印刷を行う場合、トルエ
ン、キシレン、酢酸エチル、アセトン等の炭化水素系の
溶剤を用いて行うことが多い。また、これらの溶剤を用
いてシリカ、タルク等を印刷基材の表面に接着あるいは
密着させ、より高品位な印刷シートを作製することも行
われている。しかし、ポリ乳酸からなる印刷シートの表
面をこれらの溶剤で処理すると、変形、膨潤して外観を
損ね、又は印刷インキなどの密着性が悪くなり、印刷イ
ンキのはく離が起こり外観を損ねていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、印刷インキ溶剤で表面加工を行う際に、印
刷インキ溶剤による変形又は膨潤を抑制しつつ、印刷イ
ンキの密着性が良好で印刷適性に優れ、かつ、優れた耐
衝撃性、柔軟性を有しつつ低ブリードアウト性を有する
生分解性の印刷フィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果、結晶性のポリ乳
酸と乳酸系ポリエステルとを含む乳酸系ポリエステル組
成物を耐印刷インキ溶剤性を示す基材層とし、非晶性の
ポリ乳酸又はポリ乳酸と乳酸系ポリエステルとを含む非
晶性の乳酸系ポリエステル組成物を印刷インキ受容層と
し、該基材層及び印刷インキ受容層を積層させて得られ
る印刷用フィルムが、印刷インキ溶剤による変形及び/
又は膨潤を抑制しつつ、優れた印刷適性を有することを
見出し本発明を完成するに至った。
【0007】即ち、本発明は、基材層と印刷インキ受容
層とからなる印刷フィルムであって、前記基材層の少な
くとも片面に前記印刷インキ受容層を積層してなり、前
記基材層が、ポリ乳酸と乳酸系ポリエステル(A1)と
を含む融点120℃以上の結晶化された乳酸系ポリエス
テル組成物(A)からなり、前記印刷インキ受容層が、
軟化点40〜110℃の非晶性のポリ乳酸、又はポリ乳
酸と乳酸系ポリエステル(B1)とを含む軟化点40〜
110℃の非晶性の乳酸系ポリエステル組成物(B)か
らなることを特徴とする印刷フィルムを提供するもので
ある。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、耐印刷インキ溶剤性の
ある乳酸系ポリエステル組成物(A)からなる基材層の
少なくとも片面に、印刷適性のあるポリ乳酸又は乳酸系
ポリエステル(B)からなる印刷インキ受容層を積層し
た印刷フィルムである。ただし、本発明では、フィルム
とシートを総称してフィルムと記すものとする。
【0009】本発明の基材層は、結晶化された乳酸系ポ
リエステル組成物(A)からなり、印刷インキ、又はコ
ーティング、ラミネート等を行う際に使用される有機溶
剤を用い、表面処理を施しても変形及び/又は膨潤を抑
制することができる、すなわち、良好な耐印刷インキ溶
剤性を有する層である。
【0010】本発明で基材層に使用する乳酸系ポリエス
テル組成物(A)はポリ乳酸と乳酸系ポリエステル(A
1)とを含む乳酸系ポリエステル組成物(A)からな
り、良好な耐インキ溶剤性を得る目的で、結晶化させ
た、融点120℃以上、好ましくは120〜300℃の
ものが用いられる。この目的に適した乳酸系ポリエステ
ル組成物(A)には、該乳酸系ポリエステル組成物の構
成成分であるポリ乳酸及び乳酸系ポリエステル(A1)
中の乳酸成分の光学異性体であるL体とD体の比率(L
/D比)又はD体とL体の比率(D/L比)が、100
/0〜97/3(質量換算)のものが好ましく用いられ
る。このようなL/D比又はD/L比のポリ乳酸及び乳
酸系ポリエステル(A1)を得るためには、例えば後述
する製造方法において原料として上記L/D比又はD/
L比を有する乳酸成分を用い製造すればよい。
【0011】また、本発明に用いる乳酸系ポリエステル
(A1)は、良好な耐衝撃性及び柔軟性を得る目的で、
乳酸単位及びポリエステル単位を質量比で10:90〜
90:10の範囲で有し、重量平均分子量が10,00
0以上で、かつ、ガラス転移温度が60℃以下のポリマ
ーが用いられる。
【0012】一方、印刷インキ受容層は、非晶性のポリ
乳酸、又は非晶性の乳酸系ポリエステル組成物(B)か
らなる。該印刷インキ受容層は前記有機溶剤による表面
処理性を向上させ印刷フィルムとして印刷性を向上させ
ることが可能な、すなわち、優れた印刷適性を有する層
である。該印刷インキ受容層は、例えば印刷インキ溶剤
を用いたインキまたは表面処理剤を強固に印刷フィルム
に密着又は接着させることができ、また、印刷インキ受
容層に該有機溶剤を塗布或いは該有機溶剤により洗浄す
ることにより印刷シートの表面を微細に荒らす事がで
き、これにより例えば、印刷の場合は、基材とインキと
の密着性を向上させ、コーティングの場合はコーティン
グしようとする二次的処理剤の脱落を抑制することがで
きる。
【0013】さら詳しくは、印刷インキ受容層に前記有
機溶剤を塗布、前記有機溶剤で洗浄することにより乳酸
系ポリエステル組成物(B)中の非晶性部分や低分子量
部分を溶剤に溶解させ、表面に微細な凹凸構造、例えば
1μm以上、好ましくは1〜100μmの凹凸構造を設
けることができ、この表面の凹凸により印刷インキ、コ
ーティング、ラミネートなどの密着性を向上させる事が
できる。この際、印刷フィルムは、その外観から凹凸構
造が100μm以下程度であることが望ましい。ただし
ここでいう凹凸構造の寸法は、一つの連続した構造の山
から谷を計測し、平均化したものを指す。
【0014】このような1〜100μmの微細構造を形
成できる溶剤としてはアセトン、トルエン、キシレン、
酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、エチルベ
ンゼン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチル
イソブチルケトン、ジオキサン、メチルイソブチルケト
ン、イソプロピルエーテル、ジクロロメタン、クロロホ
ルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼ
ン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン等が挙げら
れるが、中でも、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸
エチルが好ましい。
【0015】印刷インキ受容層に使用するポリ乳酸、又
は乳酸系ポリエステル組成物(B)は、印刷インキ等の
良好な密着性あるいは接着性を実現させる目的で非結晶
性のものが用いられる。またこの際、印刷インキ受容層
に用いられるポリ乳酸又は乳酸系ポリエステル組成物の
軟化点は、特に限定されるものではないが、好ましくは
40〜110℃、さらに好ましくは40〜100℃を示
すのものが用いられる。
【0016】印刷インキ受容層に使用する非晶性のポリ
乳酸、又は非晶性の乳酸系ポリエステル組成物(B)
は、該目的に適するよう、該非晶性のポリ乳酸中、又は
乳酸系ポリエステル組成物中のポリ乳酸及び乳酸系ポリ
エステル(B1)の乳酸成分のL体とD体の比(L/D
比)が、96/4〜4/96、好ましくは95.5/
4.5〜4.5/95.5、より好ましくは93/7〜
7/93のものが好適に用いられる。このようなL/D
比のポリ乳酸や乳酸系ポリエステル(B1)を得るため
には、例えば後述する製造方法において上記L/D比を
有する乳酸成分を用いて製造すればよい。
【0017】また、本発明に用いる乳酸系ポリエステル
(B1)は、乳酸単位(a)及びポリエステル単位
(b)を重量比で10:90〜90:10の範囲で有
し、重量平均分子量が10,000以上で、かつ、ガラ
ス転移温度が60℃以下のポリマーが用いられる。
【0018】このように上述した乳酸系ポリエステル
(A1)及び乳酸系ポリエステル(B1)(以下、特に
乳酸系ポリエステル(A1)と乳酸系ポリエステル(B
1)とを区別する必要がない場合、単に「乳酸系ポリエ
ステル」と記す場合がある。)は、ポリ乳酸に添加する
ことによって、優れた耐衝撃性と柔軟性を付与すること
ができ、かつブリードアウトを抑制することが可能な添
加剤として用いられるものである。
【0019】ここで、乳酸系ポリエステルの製造法につ
いて説明する。該乳酸系ポリエステルは、乳酸成分
(a)とジカルボン酸(c)及びジオール(d)からな
るポリエステル成分(b)とを質量比で10:90〜9
0:10の範囲で反応させた反応生成物である。
【0020】本発明に用いる乳酸系ポリエステル中の乳
酸単位(a’)は、乳酸成分(a)からなる化学構造単
位を指し、ポリエステル単位(b’)は、同様に、ジカ
ルボン酸(c)及びジオール(d)からなるポリエステ
ル(b)からなる化学構造単位を指す。
【0021】本発明に用いる乳酸系ポリエステル(A
1)は、その重量平均分子量が10,000以上で、か
つ、ガラス転移温度が60℃以下となるように、後述す
るジカルボン酸(c)及びジオール(d)の種類を選択
し、かつ、それらの使用割合及び反応条件を調整するこ
とによって得られる。
【0022】乳酸成分(a)とポリエステル成分(b)
との使用割合は、重量比で、90:10〜10:90の
範囲が好ましく、40:60〜90:10の範囲がさら
に好ましく、50:50〜90:10の範囲がさらによ
り好ましく、50:50〜85:15の範囲がさらに特
に好ましい。
【0023】乳酸成分(a)としては、乳酸、ラクタイ
ド、ポリ乳酸又はポリラクタイドが挙げられる。ラクタ
イドは、乳酸2分子が環状2量化した化合物で、立体異
性体を有するモノマーであり、L−乳酸2分子からなる
L−ラクタイド、D−乳酸2分子からなるD−ラクタイ
ド、及びD−乳酸及びL−乳酸からなるmeso−ラク
タイドが挙げられる。
【0024】L−ラクタイド又はD−ラクタイドのみを
含む共重合体は結晶化し、高融点である。従って、用途
に応じて3種類のラクタイドを上述した割合で組み合わ
せることにより、基材層又はシール層に用いる乳酸系ポ
リエステルとして使用される。
【0025】L−乳酸又はD−乳酸は、一般に80〜9
0%の水溶液で市販されている。本発明においては、市
販の乳酸水溶液を直接用いることができる。ラクタイド
と同様に、L及びD−乳酸の組成比を変えることによ
り、乳酸系ポリエステルの融点、溶融粘性などの諸物性
を調節することができる。
【0026】この際、乳酸成分(a)は、ポリ乳酸又はラ
クタイドを用いることが好ましい。原料としてポリ乳酸
又はラクタイドを用いた場合、得られる乳酸系ポリエス
テルはブロック共重合体となり、透明性の維持に優れ及
び/又はブリードアウトの抑制を向上させつつ、優れた
耐衝撃性を付与することができるためである。
【0027】本発明に用いるポリエステル成分(b)
は、ジカルボン酸(c)及びジオール(d)をエステル反応
させて得られるものである。
【0028】このようなジカルボン酸(c)としては、例
えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン
酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジ
カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸
の如き脂肪族ジカルボン酸;フマル酸の如き不飽和脂肪
族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル
酸、ナフタレンジカルボン酸の如き芳香族ジカルボン酸
などの炭素原子数4〜45のジカルボン酸が挙げられ
る。ただし、ジカルボン酸(c)は、これらに限定される
ものではない。また、これらのジカルボン酸は2種類以
上併用して用いることもできる。
【0029】これらのジカルボン酸(c)の中でも、コハ
ク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、
シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フタル酸、
テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸又は水添ダイ
マー酸の如き不飽和結合を有していても良い炭素原子数
4〜12のジカルボン酸又は不飽和結合を有していても
良い炭素原子数20〜45のジカルボン酸が好ましく挙
げられる。さらに、これらの中でも、炭素原子数20〜
45のダイマー酸を用いた乳酸系ポリエステルからなる
乳酸系ポリエステル組成物は、透明性に優れ、かつ、耐
衝撃性に優れたポリエステル組成物を提供できるため、
炭素原子数20〜45のダイマー酸は特に好ましいもの
として挙げられる。
【0030】ダイマー酸は、炭素原子数12以上の不飽
和脂肪酸の熱2量化反応などによって生成する炭素原子
数24以上のジカルボン酸であれば、特に制限なく使用
することができるが、出発原料となるオレイン酸やトー
ル油脂肪酸は、毒性が低いものが好ましい。熱2量化反
応の反応機構は様々なものが提案されているが、本発明
においては、加熱によるDIels−Alder環化反
応が主な機構であると考えられている、分子内に脂環構
造を含むダイマー酸がより好ましく用いられる。
【0031】このようなダイマー酸には、分子内に不飽
和二重結合を有するものと、水添によって飽和化された
脂肪酸があるが、不飽和又は飽和のいずれのダイマー酸
を用いることもできる。
【0032】ダイマー酸の市販品としては、炭素原子数
18の脂肪族不飽和カルボン酸の2量体(コグニス(Co
gnis)社製のエンポール1061、1062)、炭素原
子数18の脂肪族飽和ダイマー酸の2量体(同社製のエ
ンポール1008など)などが挙げられる。これらの市
販のダイマー酸には、モノマー酸やトリマー酸を若干含
んでいることが多いが、このようなダイマー酸であって
もよい。ダイマー酸の純度は90%以上が好ましく、更
に95%以上のものが好ましい。いずれのダイマー酸成
分も食品包装材料への使用が認められている無毒のもの
が好ましい。
【0033】ジカルボン酸(c)の使用割合は、乳酸系ポ
リエステル成分100重量部に対して10重量部以上用
いることが好ましく、更に30重量部以上有することが
より好ましい。なお、芳香族ジカルボン酸を用いたポリ
エステルは、ガラス転移温度(Tg)が高くなる傾向に
あるので、芳香族ジカルボン酸を用いる場合には、耐衝
撃性、柔軟性の付与効果を損なわない程度の量と材料を
選択することが好ましい。ジカルボン酸(c)の合計量
に対する脂肪族ジカルボン酸の割合は、30〜100重
量%の範囲が好ましい。
【0034】一方、ジオール(d)としては、例えば、エ
チレングリコール、1、3−プロパンジオール、1,4
−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6
−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,
8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,
10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオー
ル、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキ
サンジメタノール、プロピレングリコール、1,3−ブ
タンジオール、1,2−ブタンジオール、ネオペンチル
グリコール、3,3−ジエチル−1,3−プロパンジオ
ール、
【0035】3,3−ジブチル−1,3−プロパンジオ
ール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオ
ール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジ
オール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,
4−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、
1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオー
ル、
【0036】1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキ
サンジオール、n−ブトキシエチレングリコール、シク
ロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ダイ
マージオール、ジエチレングリコール、ジプロピレング
リコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリ
コール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレ
ングリコール、キシリレングリコール、フェニルエチレ
ングリコールなどの炭素原子数2〜45の脂肪族ジオー
ルが挙げられる。これらのジオールは、2種類以上併用
して使用することもできる。
【0037】これらのジオールの中でも、不飽和結合を
有していても良い炭素原子数2〜45の脂肪族ジオール
が好ましく、不飽和結合を有していても良い炭素原子数
2〜12脂肪族ジオール又は不飽和結合を有していても
良い炭素原子数20〜45の脂肪族ジオールが特に好ま
しい。さらに、これらの中でも、炭素原子数20〜45
のダイマージオールを用いたポリエステル成分から誘導
される乳酸系ポリエステルをポリ乳酸に添加すると、透
明性に優れ、かつ、耐衝撃性に優れたポリエステル組成
物を提供できるので、特に好ましい。
【0038】ダイマージオールは、ダイマー酸を還元す
ることによって得られるジオールであり、炭素原子数2
0〜45のものが好ましく、炭素原子数18の脂肪族不
飽和カルボン酸の2量体の還元体、炭素原子数36のダ
イマージオールなどがより好ましい。ダイマージオール
の純度は90%以上が好ましく、更に95%以上が好ま
しい。ダイマー酸とダイマージオールは各々単独で用い
てもよいし、両者を併用してもかまわない。ダイマージ
オールの市販品としては、東亞合成化学社製の炭素原子
数18の脂肪族不飽和カルボン酸の2量体を還元した炭
素原子数36のダイマージオールが挙げられる。
【0039】ジオール(d)の合計量に対する脂肪族ジオ
ールの割合は、30〜100重量%の範囲が好ましい。
また、ジオール(d)の使用割合は、乳酸系ポリエステル
成分100重量部に対して10重量部以上用いることが
好ましく、更に30重量部以上有することがより好まし
い。
【0040】ポリエステル(b)は、液状のものから固
体状のものまであるが、ダイマー酸、ダイマージオー
ル、側鎖を有するプロピレングリコールや1,3−ブタ
ンジオールなどの構成比が高いほど融点や流動点は低く
なる。このため、これらからなるポリエステル(b)を
原料とする乳酸系ポリエステルは、弾性率が低くなり、
ポリ乳酸に、より優れた耐衝撃性、及び柔軟性を付与す
ることができるため好ましい。
【0041】ジカルボン酸(c)及びジオール(d)をエス
テル反応させて得られるポリエステル(b)の重量平均分
子量には、特に制限されるものではないが、2,000
以上であることが好ましく、5,000以上であること
が更に好ましく、10,000〜200,000の範囲
にあることがより好ましく、20,000〜150,0
00の範囲にあることが更に好ましく、20,000〜
100,000の範囲にあることが特に好ましい。
【0042】分子量100,000以上の高分子量のポ
リエステル(b)は、ジカルボン酸(c)及びジオール(d)
をエステル反応させて得られるポリエステルに、さら
に、鎖伸長剤として酸無水物あるいはポリイソシアネー
トを反応させることにより、製造することができる。本
発明で使用するポリエステル成分(e)は、このようにポ
リイソシアネートを鎖伸長剤として用いて得られるポリ
イソシアネート変性ポリエステルをも包含する。
【0043】ポリエステル(b)の製造方法としては、ジ
カルボン酸(c)とジオール(d)とをモル比で1:1〜
1:1.5で窒素雰囲気下にて130℃〜240℃の温
度範囲で1時間に5〜10℃の割合で徐々に昇温させな
がら撹拌して水を留去する。4〜12時間反応後、90
〜0.1KPaで徐々に減圧度を上げながら過剰のジオ
ールを留去する。2〜3時間減圧後、エステル交換触媒
及び酸化防止剤を添加して0.5KPa以下で減圧しな
がら200〜240℃で4〜12時間反応させることに
より、粘性の高いポリエステル(b)を得ることができ
る。
【0044】エステル交換反応時に問題となる着色を低
減させるために、Ti、Sn、Zn、Mg、Al、Z
r、Hf等の金属触媒をポリエステルに対して10〜1
000ppm用いてエステル交換を行い、更に亜リン酸
エステル化合物等の酸化防止剤を10〜1000ppm
添加する方法が好ましい。
【0045】金属触媒としては、例えば、チタンテトラ
イソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオ
キシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチ
ルヘキサン酸スズ、アセチルアセトナート亜鉛、酢酸亜
鉛、酢酸マグネシウム、4塩化ジルコニウム、4塩化ハ
フニウム、4塩化ハフニウムTHF錯体等が挙げられ
る。
【0046】上述の製造方法により得られたポリエステ
ルを、さらに優れた耐衝撃性付与効果を持たせるために
高分子量化されることも、また、溶融粘性低減のために
ポリエステルを分岐状にさせることもできる。
【0047】ポリエステルの高分子量化はポリエステル
を酸無水物又は多価イソシアネート等と従来公知の方法
で反応させればよい。即ち、180℃〜210℃で、ポ
リエステルに酸無水物又は多価イソシアネートを添加
し、カルボン酸無水物の場合は0.5〜0.1KPaの
範囲に減圧しながら、多価イソシアネートの場合は常圧
で、3時間反応を行うことにより高分子量のポリエステ
ル(b)を製造することができる。
【0048】上述した酸無水物としては、1分子内に2
つ以上のカルボキシル基を有する化合物のカルボン酸無
水物である。そのようなカルボン酸無水物としては、例
えば、無水コハク酸、無水シクロヘキサンジカルボン
酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット
酸、ピロメリット酸二無水物などが挙げられる。カルボ
ン酸無水物は、2種以上を併用して用いることもでき
る。
【0049】ポリエステルの高分子量化反応に用いる多
価イソシアネートは、1分子内に2つ以上のイソシアネ
ート基を有する化合物である。得られるウレタン結合含
有ポリエステルが実質上、線状構造を有するものを得る
目的の場合には、2官能性のものが好ましい。
【0050】上述した2官能イソシアネートとしては、
例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−ト
リレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシア
ネート、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソ
シアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,
5−ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシ
アネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネートな
どが挙げられる。これらの2官能イソシアネートは、2
種以上を併用して用いることもできる。
【0051】更にポリエステルを分岐状にするには、多
価イソシアネートとして、3官能性以上のものを用い従
来公知の方法で反応させてもよい。この場合、得られた
ポリマー鎖はスター状になる。このようなものを得る為
にはペンタエリスリトールに2官能性イソシアネートで
修飾したものに代表される、多価アルコールに2官能性
イソシアネートで修飾した化合物が挙げられる。多価イ
ソシアネートとして、数種の多価イソシアネートを併用
することも可能で、少量の3官能性以上のイソシアネー
トを2官能性イソシアネートに併用し、ゲル化させずに
反応し高分子量化させることもできる。
【0052】ポリエステルと、カルボン酸無水物もしく
は多価イソシアネートとの反応は、ジオール(c)とジ
カルボン酸(d)とのエステル重合反応が完結した直後
の反応物にカルボン酸無水物もしくは多価イソシアネー
トを混合し、短時間溶融状態で撹拌して反応させる方
法、或いは重合により得られたポリエステルに改めて添
加し、溶融混合する方法でも良い。
【0053】多価イソシアネートを用いる場合、ポリエ
ステルとイソシアネートの両者を共溶剤に溶解させ、加
熱して反応させる方法が特に好ましい。これにより非常
に均一にポリイソシアネートを脂肪族ポリエステル中に
分散させることが出来る。ポリエステルに酸無水物もし
くは多価イソシアネートを混合、反応させる温度は、通
常70℃〜220℃、好ましくは100℃〜190℃で
ある。
【0054】多価イソシアネートの反応に際しては、
N,N−ジメチルアニリン、オクタン酸錫、2−エチル
ヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、テトライソプ
ロピルチタネート等のエステル重合触媒、或いはウレタ
ン触媒を使用することが好ましい。酸無水物、多価イソ
シアネートの使用量は、ポリエステル(II')の0.0
1重量%〜5重量%が好ましく、更に好ましくは0.1
重量%〜1重量%である。
【0055】ポリエステル合成の際、反応系内に酸素が
入り込むと着色及び分解の原因となり、また不飽和結合
を有する原料を用いる場合はゲル化の原因になりやすい
ので、触媒添加等の減圧を解除する際には、窒素等の不
活性ガスでの置換を十分に行うことが好ましい。
【0056】本発明に用いる乳酸系ポリエステルは、そ
の重量平均分子量が10,000以上のものが好まし
い。さらに、透明性を維持させつつ及び/又はブリード
アウトの抑制を向上させつつ、優れた耐衝撃性を付与す
るためには、重量平均分子量が20,000〜200,
000の範囲のものが好ましく、30,000〜20
0,000の範囲のものがより好ましく、40,000
〜150,000の範囲のものが特に好ましい。
【0057】重量平均分子量が10,000以上であれ
ば十分な可塑効果や衝撃強度を付与することができ、ま
た、樹脂組成物の透明性を低下させることもないため好
ましい。一方、分子量の上限は特にないが、一般的に2
00,000以下であり、使用しやすさから150,0
00以下である。
【0058】乳酸系ポリエステルのガラス転移温度(T
g)は、−70℃〜60℃の範囲が好ましく、−65℃
〜60℃の範囲が特に好ましい。重量平均分子量が1
0,000以上で、かつ、ガラス転移温度を60℃以下
となるように設計した本発明の乳酸系ポリエステル(A
1)及び乳酸系ポリエステル(B1)は、その20℃に
おける貯蔵弾性率(E’)が、2.5GPa以下、好ま
しくは0.1〜2.0GPaのものである。
【0059】本発明の乳酸系ポリエステル(A1)又は
(B1)の具体的な製造方法としては、例えば、(1)
ラクタイドとポリエステル成分(b)とを、重合触媒の
存在下で反応させる方法、(2)乳酸を重縮合してポリ
乳酸を得、該ポリ乳酸をポリエステル成分(b)存在下
で更に脱水、重縮合することによってポリ乳酸−ポリエ
ステルブロック共重合体を得る方法、(3)乳酸又はラ
クタイドから得られたポリ乳酸とポリエステル成分(b)
とをエステル交換触媒の存在下、溶融混練することによ
りポリ乳酸−ポリエステルブロック共重合体を得る方法
などが挙げられる。
【0060】まず、(1)ラクタイドとポリエステル成
分(b)の共重合法について説明する。反応温度はラクタ
イドの着色及び分解を防ぐという点で220℃以下、好
ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下の
反応温度が好ましく、ラクタイドの分解、着色を防ぐた
め、窒素及びアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で反応
を行うことが好ましい。また反応系内の水分の存在は好
ましくない為、脂肪族ポリエステルは十分に乾燥させて
おく必要がある。
【0061】このような条件のもと、ポリエステル
(b)とラクタイドを100℃〜220℃で混合して溶
解する。この際、必要に応じてこれらの合計重量に対し
て1〜30重量部、好ましくは5〜30重量部、より好
ましくは15〜30重量部のトルエン等の非反応性の溶
剤を用いてもよい。更に、窒素、アルゴン等の不活性ガ
ス雰囲気下、140〜220℃で重合触媒(例えば、オ
クタン酸錫)をポリエステル(b)及びラクタイドの合
計量に対して50〜2000ppmを添加する。ポリエ
ステル(b)とラクタイドの仕込み比は、重量比でポリ
エステル(b):ラクタイド=10:90〜90:10
が好ましく、より好ましくは40:60〜90:10、
更により好ましくは50:50〜90:10、特に好ま
しいのは50:50〜85:15である。
【0062】用いる重合触媒としては、一般にエステル
化触媒、開環重合触媒として知られる触媒はいずれも使
用可能であり、例えば、Sn、Ti、Zr、Zn、G
e、Co、Fe、Al、Mn、Hf等のアルコキサイ
ド、酢酸塩、酸化物、塩化物等が挙げられる。これらの
中でも、錫粉末、オクチル酸錫、2−エチルヘキシル酸
錫、ジブチルスズジラウレート、テトライソプロピルチ
タネート、テトラブトキシチタン、チタンオキシアセチ
ルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、鉄
(III)エトキサイド、アルミニウムイソプロポキサイ
ド、アルミニウムアセチルアセトナートは、反応が早い
ので、好ましい。
【0063】次に、(2)乳酸とポリエステル(b)の共
重合法について説明する。乳酸を公知慣用の方法で重縮
合させポリ乳酸を得た後、これにポリエステル(b)を加
え、更に重縮合反応を行うことで乳酸系ポリエステルを
得ることができる。乳酸の重縮合は、様々な技術が開示
されており、それらいずれかの方法で得られるポリ乳酸
で良い。本発明においては、乳酸系ポリエステルの分子
量が1万以上であれば耐衝撃性及び柔軟性の付与効果が
みられるので、ポリ乳酸の分子量は、所望の乳酸系ポリ
エステルの分子量を考慮して、乳酸成分(a)とポリエス
テル成分(b)の仕込み比と、ポリエステル(b)の末端
基数或いは分子量で適宜調整すればよい。なお、ポリ乳
酸が高分子量であるほど、ポリエステル(b)添加後の
共重合反応が短時間で、高分子量の乳酸系ポリエステル
が得られるため好ましい。
【0064】また、ポリ乳酸の分子量をより高める方法
として、乳酸の重縮合時に溶媒を用いても良く、トルエ
ン、キシレン、アニソール、ジフェニルエーテルなど水
を共沸しやすい高沸点溶媒を選択使用することで、溶媒
を水と共沸させ、これを乾燥剤等で脱水留去後、再度溶
媒を反応系内に戻すことで重合を進める方法も可能であ
る。この際上記で挙げた錫粉末等の重合触媒を使用する
と反応が短時間になり更に好ましい。
【0065】乳酸の重縮合から得られたポリ乳酸と、ポ
リエステル(b)とを混合加熱して重縮合を進める際、
仕込量に対して末端基量を調整するために、更にジオー
ルやジカルボン酸を添加してもよい。重縮合の際の反応
条件は、乳酸ブロックの分解、着色を防ぐため、220
℃以下での反応が好ましく、分子量をより増加させるた
めには、上記で挙げた錫粉末、オクタン酸スズ等の重合
触媒を添加して1KPa以下に減圧することが好まし
い。更に、乳酸の重縮合反応時と同様に、溶媒を使用し
た共沸脱水重縮合反応を行うと、より高分子量の乳酸系
ポリエステルが得られより好ましい。
【0066】続いて、(3)乳酸又はラクタイドから得
られたポリ乳酸とポリエステル(b)とをエステル交換
触媒の存在下、溶融混練することによりポリ乳酸−ポリ
エステルブロック共重合体を得る方法について説明す
る。ポリ乳酸と、ポリエステル(b)とを混合加熱し
て、上記で挙げたオクタン酸スズ等の重合触媒存在下に
エステル交換反応を行う。反応条件は、乳酸ブロックの
分解、着色を防ぐため、220℃以下での反応が好まし
く、更に、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行
うことが好ましい。また、ポリ乳酸は、乳酸或いはラク
タイドどちらから得られたものでも構わないが、ポリ乳
酸の分子量が高いほど、高分子量の乳酸系ポリエステル
が得られるため好ましく、ポリ乳酸の分子量としては重
量平均分子量で5万以上が好ましく、より好ましくは1
0万以上、更により好ましくは15万以上である。
【0067】また、ラクタイドは種々の溶剤に可溶であ
るため、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼ
ン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジフェニルエー
テル、クロロベンゼン等の溶媒を用いて溶解させ、上述
の各製造法に供しても良い。ところで、本発明に用いる
乳酸系ポリエステルは、その両末端又は片末端の水酸
基、又はカルボキシル基が、カルボン酸又はアルコール
で封止されていることが好ましい。これは、乳酸系ポリ
エステルの水酸基やカルボン酸が、ブレンド時に母体ポ
リマーの分子量を低下させる恐れがあり、該乳酸系ポリ
エステルの末端を封止しておくことは、この分子量低下
防止に効果があるためである。特に、分子量が1万以下
の乳酸系ポリエステルを用いる場合は、末端基数が多い
ので封止した方が好ましい。
【0068】さらに乳酸系ポリエステルの共重合後に、
溶媒により重合触媒を抽出除去するか、又は触媒失活剤
により重合触媒を失活させることにより、乳酸系ポリエ
ステルの保存安定性を更に向上させることができる。
【0069】溶融混練する際、それらポリ乳酸や乳酸系
ポリエステル中に残存する重合触媒が逆反応し分解促進
する場合があるため、これを防止する為に、これらの製
造の際用いた重合触媒を除去又は失活させておくことが
好ましい。
【0070】重合触媒を除去する具体的方法には、メタ
ノール/塩酸水溶液、アセトン/塩酸水溶液或いはこれ
らの混合液に、乳酸系ポリエステルの樹脂ペレットをつ
け込んだり、乳酸系ポリエステルを溶液状態で上記溶液
に混合してポリマーを沈殿化させながら洗浄するような
方法が挙げられる。このような方法により、微量な残留
モノマーや、オリゴマーなども同時に洗浄除去すること
が可能である。
【0071】また、乳酸系ポリエステルの製造もしくは
製造後に触媒失活剤を添加して重合触媒を失活させるこ
とができる。触媒失活剤は、通常、キレート様の形態で
乳酸系ポリエステル中の重合触媒に付着し乳酸系ポリエ
ステルに含有されるが、更に溶剤洗浄等により除去して
もよい。
【0072】触媒失活剤の添加量は、乳酸系ポリエステ
ルの製造の際に用いる触媒の種類、反応条件によって異
なるが、用いられた重合触媒を失活させる量であれば良
く、乳酸系ポリエステル重合反応終了後のポリマー取り
出し前や混練時に、通常、使用触媒1重量部に対し、
0.001〜10重量部、好ましくは、0.1〜5重量
部、より好ましくは0.5〜3重量部を添加する。また
製造された乳酸系ポリエステルに、触媒失活剤を添加、
混練りしてもよい。
【0073】本発明に用いる触媒失活剤は、特にキレー
ト化剤及び/又は酸性リン酸エステル類が好ましい。キ
レート化剤としては、特に限定されないが、例えば、エ
チレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナト
リウム、しゅう酸、リン酸、ピロリン酸、アリザリン、
アセチルアセトン、ジエチレントリアミン五酢酸、トリ
エチレンテトラミン六酢酸、カテコール、4−t−ブチ
ルカテコール、L(+)−酒石酸、DL−酒石酸、グリ
シン、クロモトロープ酸、ベンゾイルアセトン、クエン
酸、没食子酸、ジメルカプトプロパノール、トリエタノ
ールアミン、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジトルオ
イル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸が挙げられる。
【0074】また、酸性リン酸エステル類は、ヒドロキ
シカルボン酸系ポリエステル中に含有される触媒の金属
イオンと錯体を形成し、触媒活性を失わせ、ポリマー鎖
の切断抑制効果を示す。酸性リン酸エステル類として
は、酸性リン酸エステル、ホスホン酸エステル、アルキ
ルホスホン酸など及びその混合物を指すものである。
【0075】酸性リン酸エステル類としては、例えば、
米国特許第5686540号明細書に挙げられるような
従来公知の酸性リン酸エステル、ホスホン酸エステル、
アルキルホスホン酸等及びその混合物が挙げられる。酸
性リン酸エステル類成分は有機溶剤との溶解性がよいた
め作業性に優れ、乳酸系ポリエステルとの反応性に優
れ、重合触媒の失活に優れた効果を示す。
【0076】上記した何れの乳酸系ポリエステルの製造
方法であっても、共重合反応の重合転化率は特に制限さ
れるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグ
ラフィー(GPC)で重合転化率を測定しながら、16
0〜180℃で、1.5時間以上、好ましくは2.5時
間以上、より好ましくは3時間以上反応させることによ
り、重合添加率が90〜99%に達することが望まし
い。
【0077】本発明の乳酸系ポリエステルは、開環共重
合の場合、通常の反応釜を使用して製造することも可能
であり、これを連続製造に対応したCSTR式の製造装
置を用いることができる。より高粘度のものに関して
は、通常の反応釜を使用した共重合反応では撹拌効率が
低下し、局部加熱による着色や反応率の低下を招く。こ
のような場合には、均一に撹拌され、せん断応力の小さ
いスタティックミキサーの使用が好ましい。
【0078】また、スタティックミキサーのみで本反応
を行うこともできるが、粘度が低い段階では通常の反応
釜を使用し、重合後期の高粘度化する前にスタティック
ミキサーを使用する方法が重合開始剤を均一に混合する
という意味で更に好ましい。乳酸系ポリエステルの室温
における粘弾性は、共重合に用いる脂肪族ポリエステル
を構成するジオールの主鎖の炭素原子数が多いほど軟質
となる。また、ダイマー酸と併用されるジカルボン酸量
が増えるに従い軟質となる。
【0079】次に、本発明に用いるポリ乳酸及び乳酸系
ポリエステル(A1)を含有する乳酸系ポリエステル組
成物(A)又はポリ乳酸及び乳酸系ポリエステル(B
1)を含有する乳酸系ポリエステル組成物(B)(以
下、特に乳酸系ポリエステル組成物(A)と乳酸系ポリ
エステル組成物(B)とを区別する必要がない場合、単
に「乳酸系ポリエステル組成物」と記す場合がある。)
について説明する。
【0080】本発明に用いる乳酸系ポリエステル組成物
に用いるポリ乳酸の重量平均分子量は、特に限定される
ものではないが、一般的に重量平均分子量50,000
以上が好ましく、70,000以上がより好ましく、1
00,000以上が特に好ましく、かつ500,000
以下のものが好ましい。
【0081】本発明に用いる乳酸系ポリエステルを、そ
のままポリ乳酸と混練りしてもよいし、予めポリ乳酸と
高濃度でブレンドしたマスターバッチの状態で用いるこ
ともできる。
【0082】本発明に用いる乳酸系ポリエステル組成物
を構成する乳酸系ポリエステルと、ポリ乳酸の混練比は
本発明の効果が達成する比率であればよく、好ましくは
乳酸系ポリエステル:ポリ乳酸=3:97〜70:30
であり、更に好ましくは5:95〜50:50、特に好
ましくは5:95〜40:60である。この組成比の範
囲内では、ブレンド物の耐熱性、耐衝撃性、ブリードア
ウト性がバランス良く改善される。
【0083】乳酸系ポリエステルとポリ乳酸との混練条
件は、ポリ乳酸の融点以上での混練となるが、本発明に
用いる乳酸系ポリエステルの融点が140℃〜170℃
であることから、180〜200℃前後であることが好
ましい。200℃を大きく超える場合は、ポリ乳酸の分
子量低下をふまえて、混練時間や混練回転数などを調整
する必要がある。
【0084】混練機器は、押し出し機やニーダー、バッ
チ式混練機などが用いられる。また、反応釜中での混練
や、粘性の高い場合はスタティックミキサーを用いたブ
レンドも可能である。溶剤を用いての湿式ブレンドでも
同様なブレンドが可能であるが、溶剤を脱揮する際に
は、高温下で減圧し、ポリマーの分離を防ぐため短時間
で行う方が好ましい。
【0085】本発明に用いる乳酸系ポリエステル組成物
は優れた耐衝撃性を示すことから、基材層又は印刷イン
キ受容層として用いた場合、例えば、250μmの無延
伸フィルムあるいは延伸フィルムで0.2J以上、好ま
しくは0.3〜5Jのすぐれたデュポン衝撃強度を有
し、または、延伸熱セットシートで1J以上、好ましく
は1〜10Jのすぐれたフィルムインパクトを呈する。
【0086】さらに、本発明に用いる乳酸系ポリエステ
ル組成物は優れた柔軟性を示すことから、基材層又は印
刷インキ受容層として用いた場合、JIS−K−719
8、A法に準拠した測定法で20℃で、2.5GPa以
下、好ましくは0.5〜2.5GPaの範囲、より好ま
しくは0.6〜2.4GPaの範囲のすぐれた貯蔵弾性
率(E’)を示し、さらに、本発明の印刷フィルムも上
記と同様測定法で2.5GPa以下、好ましくは0.5
〜2.5GPaの範囲、より好ましくは0.6〜2.4
GPaの範囲の貯蔵弾性率(E’)を示し、すぐれた柔
軟性を有する。
【0087】また、本発明に用いる乳酸系ポリエステル
をポリ乳酸に添加して得られる乳酸系ポリエステル組成
物は優れた透明性を維持することができる。例えば、ポ
リ乳酸100重量部に対し乳酸系ポリエステル30重量
部を添加した厚さ250μmのプレスシートのヘイズ値
は35%以下、より好ましくは1〜30%、さらに好ま
しくは1〜25%である。
【0088】ただし、フィルム又はシートの境目は明確
に区別されていないため、本発明では、総称してフィル
ムと言うものとする。
【0089】本発明に用いる乳酸系ポリエステルを含ん
だ乳酸系ポリエステル組成物はすぐれたブリードアウト
抑制効果を呈し、例えば、10×10cm正方形、25
0μm厚の無延伸及び延伸シートを35℃、湿度80%
の恒温恒湿器に放置したとき、該成形品表面から60日
以上ブリード物が現れない。
【0090】本発明の基材層、又は印刷インキ受容層に
用いられる、ポリ乳酸、又はポリ乳酸と乳酸系ポリエス
テルを含む乳酸系ポリエステル組成物は、良好な生分解
性を有し、海中に投棄された場合でも、加水分解、生分
解等による分解を受ける。このため海水中では数カ月の
間に樹脂としての強度が劣化し、外形を保たないまでに
分解可能である。また、コンポストを用いると、更に短
期間で原形をとどめないまでに生分解され、また焼却し
ても有毒ガスや有毒物質を排出することはない。
【0091】次に、本発明の耐印刷インキ溶剤性のある
基材層の少なくとも片面に印刷適性のある印刷インキ受
容層を積層してなる印刷フィルムについて説明する。本
発明の印刷フィルムの厚みは特に制限されるものではな
いが、積層された状態で厚み5000μm以下の板状の
ものが好ましい。また、基材層の厚みも特に制限される
ものではないが、5〜3000μmが好ましく、強度と
経済性から5〜200μmがより好ましく、さらに5〜
100μmの範囲のものも好ましく用いられる。印刷イ
ンキ受容層の厚みも特に制限されるものではないが、成
膜性の観点から1〜30μmが好ましく、経済性を考慮
するとより好ましくは2〜20μm、更に好ましくは3
〜10μmである。
【0092】本発明の印刷フィルムを構成する基材層と
印刷インキ受容層の層構成比率は基材層/印刷インキ受
容層=99/1〜50/50が好ましい。印刷インキ受
容層の該比率が1を下回ると印刷インキ等の密着性ある
いは溶剤による表面処理性が悪くなる。また溶剤受容層
の該比率が50を越えると印刷用基材の変形、膨潤が大
きくなる。より好ましくは99/1〜60/40であ
り、更に好ましくは99/1〜70/30である。但
し、該層構成比率は印刷フィルムの同一断面の各層の厚
みから算出されるものである。
【0093】次に基材層と印刷インキ受容層の積層方法
についての説明する。まず共押出成膜による作製方法と
しては基材層と印刷インキ受容層とを別個の押出機によ
り溶融・混練しTダイ内あるいはそれ以前のフィードブ
ロック内等で熱溶融した各層を熱融着し、Tダイを通し
て成膜を行う。押出成膜方法及び条件は基本的には先に
述べたところに従う。基材層と印刷インキ受容層の積層
を行うには該共押出成膜方法が効率的に印刷用基材を作
製でき、印刷等に係る溶剤による基材層と印刷インキ受
容層間の層間剥離、膨潤等が避けられ都合が良い。
【0094】基材層と印刷インキ受容層の接着性が悪い
場合には、その中間層に接着層をおいても良い。接着層
に使用する樹脂としてはポリオレフィン等に特殊な官能
器を導入したコポリマー、ブテン系共重合体、ポリエチ
レンイミン、変性セルロース等がよい。接着層の厚みと
しては0.5〜20μmの範囲が好ましい。接着層の厚
みが薄いと基材層と印刷インキ受容層の接着の効果は得
られないし、反対に厚いと経済的ではない。
【0095】溶融押出ラミネートは繰り出し機で送られ
た基材層と押出機からラミネーター用Tダイへ導びかれ
た熱溶融した印刷インキ受容層とを、あるいは繰り出し
機で送られた印刷インキ受容層と押出機からラミネータ
ー用Tダイへ導びかれた熱溶融した基材層とをラミネー
ターで熱融着により接着し積層化する方法である。
【0096】該方法も印刷等に係る溶剤による基材層と
印刷インキ受容層間の層間剥離、膨潤等が避けられ都合
が良い。押出成膜方法及び条件は基本的には先に述べた
ところに従う。基材層と印刷インキ受容層との接着性が
悪い場合には、基材層をラミネーターへ送る前の繰り出
し機から送る原反にコロナ放電処理、フレームプラズマ
処理、クロム酸処理等の化学エッチング処理、オゾン・
紫外線処理等の表面処理、サンドブラスト等の表面凹凸
処理により接着性の向上を行うか、もしくは適当なアン
カーコート剤を選択することにより接着性の向上を行う
ことができる。
【0097】予め作られた基材層と印刷インキ受容層と
を張り合わせるラミネートの方法としては、ウエットラ
ミネート、ドライラミネート等が挙げられる。この場
合、基材層もしくは印刷インキ受容層に接着剤を塗布後
ラミネートする必要がある。ウエットラミネートの場
合、接着剤としてはカゼイン、ゼラチン等の蛋白質系、
澱粉、セルロース誘導体等の含水炭素系、酢酸ビニル、
アクリル酸エステル、アクリル変性の酢酸ビニル、エチ
レン−酢酸ビニル共重合樹脂等の合成樹脂型が挙げられ
る。
【0098】ドライラミネートの場合の接着剤としては
ポリエーテルポリウレタンポリイソシアネート、ポリエ
ステルポリウレタンポリイソシアネート等の末端にイソ
シアネート基を組み込んだような一液反応型や、ポリエ
ステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオー
ル等のポリエステル系樹脂あるいはポリエーテルポリウ
レタンポリオール等のポリエーテル系樹脂の水酸基を持
った主剤とイソシアネート基を持つ硬化剤とを混合して
用いる二液反応型のウレタン系が挙げられる。これら接
着剤の塗布量としては1〜5g/m程度が好ましい。
【0099】溶剤により、印刷用基材の変形及び/又は
過度な膨潤を抑制するために基材層に使用する乳酸系ポ
リエステル組成物(A)を加熱処理を行い結晶化する。
該加熱処理方法の一例として熱セット法を説明する。熱
セットを行う場合、乳酸系ポリエステル組成物(A)か
らなる基材層単独で行っても良く、また基材層と印刷イ
ンキ受容層との積層状態で行っても良い。
【0100】温度、時間については特に限定されない
が、適正な結晶化速度を得るには加熱温度を乳酸系ポリ
マー(A)の結晶化温度(Tc)より40℃低い温度か
ら融点(Tm)未満の範囲とすることが好ましい。中で
も熱セット温度は良好な面状態、良好な耐熱性を得るた
めに結晶化温度(Tc)からそれより40℃高い温度の
範囲が特に好ましい。
【0101】更に熱セット前あるいは同時に延伸処理を
行えば結晶化速度を速められ、5〜30秒程度の短い加
熱処理時間で耐熱性を向上できる。更にこれは配向によ
る結晶化を伴うため、乳酸系ポリマーの良好な透明性を
保持したまま耐熱性を向上できる方法である。
【0102】この延伸処理方法は、特に制限されない
が、乳酸系ポリエステル組成物(A)を溶融押出した直
後、若しくは保存後のフィルムに圧延、縦一軸延伸、横
一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれかによ
り行う。また延伸処理は乳酸系ポリエステル組成物
(A)からなる基材層単独で行っても良く、基材層と印
刷インキ受容層との積層状態で行っても良い。
【0103】この際の加熱温度条件としては、基材層の
ガラス転移温度(Tg)から融点未満が好ましく、特に
ガラス転移温度からガラス転移温度(Tg)より50℃
高い温度範囲が好ましいが、中でも基材層のガラス転移
温度(Tg)より10〜40℃高い温度範囲がフィルム
の面状態が良いことから特に好ましい。延伸倍率として
は面倍率が1.4〜16倍の範囲で面状態、透明性が良
好であるが2〜16倍の範囲が更に好ましい。
【0104】熱セット方法には、強制対流させた空気あ
るいは赤外線ヒーター等の輻射熱で一定時間加熱する方
法、又は熱板、金型、ロール上に一定時間接触させて加
熱する方法が挙げられる。特にテンターと呼ばれる装置
を使用する方法は、加熱した空気を強制対流させ、フィ
ルムに連続的に熱セットを行うことができ、生産性に優
れる。この装置は延伸処理を目的とした装置であるた
め、延伸・熱セットが短時間ででき生産性に優れ、基材
層と印刷インキ受容層を積層した印刷フィルムを効率的
に作製できる。
【0105】本発明の印刷フィルムは、一般家庭での実
用上で問題のない60℃以上の耐熱性を有するものであ
り、動的粘弾性の温度依存性に関する試験法(JIS−
K−7198、A法)で、乳酸系ポリエステル組成物
(A)の融点より20℃低い温度以下での貯蔵弾性率
(E’)の最低値が40MPa以上である。
【0106】40MPaより貯蔵弾性率(E’)が小さ
いと、50〜60℃で良好な弾性を得られず、容器内に
内容物があった場合、その荷重により変形を生じ、内容
物を支えられない。常温使用時の柔軟性も考慮すると貯
蔵弾性率(E’)は最大4,000MPaの範囲に調節
することが好ましい。更には80℃以上の高い耐熱温度
を得る場合には、貯蔵弾性率(E’)は90MPa以上
にすることがより好ましい。
【0107】この動的粘弾性の温度依存性に関する試験
は、昇温速度2℃/分で行う。本発明で言うガラス転移
温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、融点(Tm)はJ
IS−K−7121に規定されるTig、Tpc、Tpmであ
り、昇温速度は10℃/分で行う。ここで言う非晶性の
乳酸系ポリマーとは、JIS−K−7121を使用し、
融点のピークが認められないものを指す。軟化温度の測
定はJIS−K−7206、A法により行うものであ
る。
【0108】また、本発明の印刷フィルムは、基材層又
は印刷インキ受容層に用いられる乳酸系ポリエステル組
成物に由来する優れた耐衝撃性を示す。例えば、基材層
250μm、印刷インキ受容層15μmで構成されるフ
ィルムは、延伸又は無延伸のもので0.2J以上、好ま
しくは0.3〜5Jのすぐれたデュポン衝撃強度を有
し、または、延伸熱セットしたものは1J以上、好まし
くは1〜10Jのすぐれたフィルムインパクトを呈す
る。
【0109】さらに、本発明の印刷フィルムは、基材層
又は印刷インキ受容層に用いられる乳酸系ポリエステル
組成物に由来する優れた柔軟性を示す。例えば、基材層
250μm、シール層15μmで構成されるフィルム
は、JIS−K−7198、A法に準拠した測定法で室
温で、0.5〜3.0GPaの範囲、より好ましくは
0.6〜2.4GPaの範囲のすぐれた貯蔵弾性率
(E’)を示す。
【0110】本発明の印刷フィルムは、基材層に用いら
れる乳酸系ポリエステル組成物(A)又は印刷インキ受
容層に用いられるポリ乳酸又は乳酸系ポリエステル組成
物(B)に由来し、優れたブリードアウト抑制効果を呈
し、特に、延伸フィルム又はシートであっても優れたブ
リードアウト抑制効果を有するため好ましい。例えば、
10×10cm正方形、250μm厚の無延伸、及び3
5μmの延伸シートを35℃、湿度80%の恒温恒湿器
に放置したとき、該成形品表面から60日以上ブリード
物が現れない。
【0111】本発明の印刷フィルムは、印刷インキ受容
層を互いにシール面とすることによって優れたシール強
度が得られる。
【0112】合成紙とは、一般的に、紙の代替として合
成樹脂に紙に類似した外観、性質を持たせたものであ
る。合成紙の作製方法は充填材の添加あるいは、表面処
理による改質等が挙げられる。
【0113】本発明の印刷シートは合成紙として使用す
ることができる。合成紙としての機能を有させるため
に、必要に応じて押出成膜の際等にクレー、タルク、炭
酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリュウム、白色フ
ィラー、フィラー等の充填材を添加することができる。
あるいは機能向上の為にアニオン系、カチオン系等の各
種帯電防止剤等を添加しても良い。さらに印刷インキの
受容性を高める為に、作製した印刷フィルムの印刷イン
キ受容層表面を溶剤を用いて洗い落とし、印刷インキ受
容層に添加したフィラー等の充填材を露出させることも
できる。
【0114】本発明の印刷インキ受容層は溶剤により表
面を洗うことが可能であり、その表面光沢を消失し、面
を微細にあらす事ができる。また更に高品位な合成紙を
作製するため、溶剤を利用して印刷インキ受容層にクレ
ー、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリ
ュウム、白色フィラー、フィラーを強固に密着あるいは
接着させることもできる。更に本発明の印刷フィルムは
耐印刷インキ溶剤性のある乳酸系ポリエステル組成物
(A)からなる基材層を有しているため印刷フィルムの
必要以上の変形あるいは膨潤を抑制することができる。
【0115】ここで包装袋とは一般に用いられている袋
であり、合成樹脂フィルムを折り曲げまたは接着等の方
法によりシールしたもので平面的、場合によっては立体
的な包装材形態である。これを使用した包装の対象とし
ては野菜、菓子、パン等の食品または雑貨あるいは米、
肥料等があるが、ここで得られた印刷フィルムは美麗な
印刷を施すことができ、折り曲げあるいは熱融着してな
る包装袋とした場合、内容物に関する表示を行え、更に
内容物を美麗に見せることができる。
【0116】軽量容器とはフィルムを真空成形、真空圧
空成形、熱板圧空成形あるいは深絞り真空成形等の熱成
形方法を用いて立体的に成形される包装材である。その
形態により本体と蓋またはトレーあるいはフードパッ
ク、ブリスターパック、PTP包装、液体を充填するカ
ップ等がある。軽量容器に包装される対象としては野
菜、畜肉類、惣菜、菓子、パン、揚げ物等の固形物食品
類あるいはゼリー、ジャム、プリン等の充填する食品、
乳製品、ジュース等の飲料、錠剤等の薬品、雑貨等があ
る。本発明の印刷用基材を応用した軽量容器は印刷によ
る容器形状の変形がなく、内容物に関する表示を行え、
更に印刷によっては内容物を美麗に見せることができ
る。
【0117】本発明の印刷フィルムには溶剤を用いた印
刷だけでなくラミネートやコーティング等、他の表面処
理も行うことができる。印刷インキ用または表面処理用
塗布剤中の溶剤はアセトン、トルエン、キシレン、酢酸
エチル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、エチルベンゼ
ン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソ
ブチルケトン、ジオキサン、メチルイソブチルケトン、
イソプロピルエーテル、ジクロロメタン、クロロホル
ム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、
トリクロロベンゼン、クロロナフタレン等の単独あるい
は複合されているものがあげられる。本発明の印刷フィ
ルムは上記溶剤にアルコール成分を全溶剤中の30〜9
5体積%含むもので印刷、あるいは表面処理を行うこと
により、さらに好ましく印刷用基材の変形及び/又は膨
潤を抑えることができる。
【0118】アルコール成分のより好ましい含有量は4
0〜90体積%であり、更に好ましくは50から85体
積%である。アルコール成分としては揮発性に優れ、比
較的粘性が小さく塗布が容易なものが良い。例えばメタ
ノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペン
タノール、ヘキサノール等が挙がられる。
【0119】本発明の印刷フィルムは特に前処理をしな
くても有機溶剤を用いた印刷、コーティング、ラミネー
ト等が行えるが、必要であれば前処理を行っても良い。
該前処理には、例えば酸化、あるいは表面の凹凸化の表
面処理等が挙げられる。酸化による処理の例としてはコ
ロナ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン
・紫外線処理が挙げられる。凹凸の処理の例としてはサ
ンドブラスト処理、比較的高温のトルエン等の溶剤を用
いる溶剤処理が挙げられる。
【0120】本発明で得られた印刷フィルムは、優れた
印刷適性を有し、各種の合成紙、食品、飲料、薬品、雑
貨等の包装または収納を目的とした包装材、特に袋、ケ
ース及び軽量容器に好適に使用できるものである。
【0121】
【実施例】本発明を実施例により詳細に説明するが、本
発明はこれらに限定されるものではない。本実施例にお
ける各測定及び評価は下記方法で行った。
【0122】(1)印刷適性の評価 得られた積層フィルムの溶剤受容層を印刷面とし、バー
コーターにより溶剤を含む印刷インキを速やかに塗布し
た。その後、印刷用基材の変形、膨潤等がないかを目視
により確認した。明らかに変形、膨潤が見られる場合は
×、変形、膨潤が見られないものは○、その間の若干、
変形、膨潤が見られるものを△とした。
【0123】また、インキ塗布後にセロハンテープ接着
剥離によりインキの印刷用基材への密着性を評価した。
インキがセロハンテープに接着し印刷用基材から明らか
に剥離してしまうものは×。インキがセロハンテープに
接着せず、印刷用基材に密着しているものは○、その間
の若干インキが剥離形したものを△とした。
【0124】さらに酢酸エチル/イソプロピルアルコー
ル(体積比40/60)溶剤を溶剤受容層に塗布し、溶
剤塗布による外観変化を評価した。印刷基材表面の光沢
が明らかに失われたものは○、変化ないものは×とし
た。インキは紅色(インキ組成:不揮発分20%、溶剤
80%(溶剤組成:トルエン25%、酢酸エチル10
%、イソプロピルアルコール65%))を使用した。
【0125】(2)熱的物性 樹脂の融点、ガラス転移温度、結晶化温度は、JIS−
K−7121に準拠した方法により求めた。樹脂の軟化
温度は、JIS−K−7206に準拠した方法により求
めた。
【0126】(3)貯蔵弾性率 貯蔵弾性率(E’)の測定は、JIS−K−7198、
A法を使用し20℃での貯蔵弾性率(E’)の測定から
その値を求めた。
【0127】(4)衝撃強度評価 JIS−K−5400のデュポン衝撃強度測定法を用い
て、一定重さの重錘の高さを等間隔に変えて落下させ、
破壊の有無により、得られたシートの50%破壊エネル
ギーを求めた。シートを打突する部位は鋼製であり、半
径6.3mmの滑らかな半球状のものを用いた。(ウエ
シマ製作所社製デュポン衝撃試験機を使用)。
【0128】(5)生分解性 生分解性の評価は、下記の通り行った。即ち、屋外コン
ポスト(容量100リットル)に生ゴミ5kgを入れ、
その上に得られた積層フィルムから切り出した10cm
四方の試験片を置いた。更に5cm程度の厚みの生ゴミ
を載せて1ヶ月後の試験片の状態を目視により評価し
た。尚、この試験は夏期に行った。評価基準は次の通
り。著しく物性の劣化があり、形状の維持が難しいもの
は○。変形、白化はあるが形状を維持しているものは
△。白化、変形等がなく試験開始前の状態を維持してい
るものは×とした。
【0129】(6)ブリードアウト性 ブリードアウト性の測定はフィルム又はシートを、35
℃、湿度80℃に保ったタバイエスペック社製恒温恒湿
器PR−2F中に放置した。毎日フィルムの状態を観察
し、ブリードアウトが始まる日数で評価した。
【0130】<製造例> (製造例1;ポリエステル単位(b−1)の作製)撹拌
器、精留器、ガス導入管を付した1Lフラスコに、セバ
シン酸を100重量部、ジカルボン酸のモル当量に対し
て1.35モル当量のプロピレングリコールを仕込み、
窒素気流下で150℃から1時間に10℃ずつ昇温させ
ながら加熱撹拌した。
【0131】生成する水を留去しながら220℃まで昇
温し、1時間後、エステル交換触媒としてチタンテトラ
ブトキシドモノマーを80ppm添加し、0.1KPa
まで減圧して6時間撹拌した。その結果、ポリエステル
単位として脂肪族ポリエステル(b−1)を得た。ゲル
パーエミーションクロマトグラフィー(GPCと略す
る。東ソー株式会社製HLC−8020、カラム温度4
0℃、テトラギドロフラン溶媒使用。以下同じ。)で測
定した結果、このポリマーの数平均分子量は28,00
0、重量平均分子量は52,000であった。
【0132】(製造例2;ポリエステル単位(b−2)
の作製)撹拌器、精留器、ガス導入管を付した1Lフラ
スコに、コハク酸(以下、SuAと省略する。)100
重量部、ジカルボン酸のモル当量に対して1.35モル
当量のプロピレングリコールを仕込み、窒素気流下で1
50℃から1時間に10℃ずつ昇温させながら加熱撹拌
した。生成する水を留去しながら220℃まで昇温後、
4塩化ハフニウム70ppmを添加し撹拌した。3時間
後、0.1KPaまで減圧して6時間撹拌して、GPC
を用いたポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)
が20,000、重量平均分子量(Mw)が30,00
0のポリエステル単位として脂肪族ポリエステル(b−
2)を得た。
【0133】(製造例3;乳酸系ポリエステル(A1−
1)、(A1−2)の作製)先に作製した脂肪族ポリエ
ステル(b−1)、(b−2)それぞれについて50重
量部とL−ラクタイド50重量部、及びラクタイドと各
ポリエステルの合計量に対してトルエン10重量部とを
セパラブルフラスコに取り、180℃で溶融した。溶液
が均一になってからオクタン酸スズ300ppmを添加
し、180℃で2.5時間撹拌した。
【0134】重合終了後にエチルヘキサン酸ホスフェー
トを600ppm添加し、0.5KPaに減圧、1時間
撹拌、残留ラクタイドを除去した。脂肪族ポリエステル
(b−1)から得られた乳酸系ポリエステル(A1−
1)はGPCで数平均分子量33,000、重量平均分
子量57,000、ガラス転移温度(Tg)53度、脂
肪族ポリエステル(b−2)から得られた乳酸系ポリエ
ステル(A1−2)はGPCで数平均分子量2400
0、重量平均分子量36,000ガラス転移温度(T
g)57℃であった。
【0135】(製造例4;乳酸系ポリエステル(B1−
1)、(B1−2)の作製)先に作製した脂肪族ポリエ
ステル(b−1)、(b−2)それぞれについて50重
量部と、L−ラクタイド45重量部、D−ラクタイド5
重量部及びこれらラクタイドと各ポリエステルの合計量
に対してトルエン10重量部とをセパラブルフラスコに
取り、180℃で溶融した。溶液が均一になってからオ
クタン酸スズ300ppmを添加し、180℃で2.5
時間撹拌した。重合終了後にエチルヘキサン酸ホスフェ
ートを600ppm添加し、0.5KPaに減圧、1時
間撹拌、残留ラクタイドを除去した。脂肪族ポリエステ
ル(b−1)から得られた乳酸系ポリエステル(B1−
1)はGPCで数平均分子量33,000、重量平均分
子量57,000、脂肪族ポリエステル(b−2)から
得られた乳酸系ポリエステル(B1−2)はGPCで数
平均分子量24000、重量平均分子量36,000で
あった。
【0136】(製造例5;ポリ乳酸(P1)の作製)L
−ラクタイドを不活性ガス雰囲気中、温度185℃の条
件下で1時間撹拌後、エステル化触媒としてオクタン酸
錫を0.02重量部加えて8時間反応を行った。この
後、失活剤として酸性リン酸エステル0.04重量部を
加え混練した。得られたポリ乳酸(以下、P1と称す
る)は無色透明な樹脂で、重量平均分子量はGPCの測
定結果から25万、ガラス転移温度(Tg)は59℃、
結晶化温度(Tc)は110℃、融点(Tm)は176
℃であった。
【0137】(製造例6;ポリ乳酸(P2)の作製)L
−ラクタイド70モル%、D−ラクタイド30モル%を
不活性ガス雰囲気中、温度165℃の条件下で1時間撹
拌後、エステル化触媒としてオクタン酸錫を0.02重
量部加えて8時間反応を行った。この後、失活剤として
酸性リン酸エステル0.04重量部を加え混練した。得
られたポリ乳酸(以下、P2と称する)は無色透明な樹
脂で、重量平均分子量はGPCの測定結果から27万、
ガラス転移温度(Tg)は52℃、融点(Tm)は見ら
れなかった。
【0138】<参考例> (参考例1)本発明の乳酸系ポリマー積層体の基材層と
して用いられる乳酸系ポリエステル組成物(A)からな
る単層フィルムについて下記評価試験を行った。
【0139】(乳酸系ポリエステル組成物(A)の評
価)表1に示したポリ乳酸(PLAと称する)と製造例
1で得られた乳酸系ポリエステル(A1−1)を、10
0℃で6時間加熱減圧乾燥し含む乳酸系ポリエステル組
成物(A)を得た。ガラス転移温度、融点、20℃の貯
蔵弾性率(E’)、IZOD衝撃強度を測定し、その結
果を表1にまとめて示した。
【0140】(フィルムのデュポン衝撃値、透明性、ブ
リードアウト開始日数)表1に示したポリ乳酸(PLA
と称する)と乳酸系ポリエステル(A1−1)を、10
0℃で6時間加熱減圧乾燥し含む乳酸系ポリエステル組
成物(A)を得た。この組成物を3.3gと、10cm
×10cmの正方形をくり貫いた厚さ250μmのPE
Tシートを厚さ100μmのPETシートではさみ、1
90℃で加熱溶融しながら20MPaの圧力で1分間プ
レスした。得られたフィルムを10分間水冷プレス機に
かけ、該組成物からなるフィルムを取り出し24時間室
温に放置した。得られた10cm×10cm、厚さ25
0μmのフィルムのデュポン衝撃値、透明性、ブリード
アウト性を測定した。その結果を表1に示す。
【0141】(2軸延伸熱セットフィルム作製)表1に
示したポリ乳酸(PLAと称する)と乳酸系ポリエステ
ル(A1−1)を、100℃で6時間加熱減圧乾燥し含
む乳酸系ポリエステル組成物(A)を得た。この組成物
を小型熱プレスにより、195℃、5MPaの条件で3
分間プレスした後、急冷を行い、200μmフィルム
(縦12cm、横12cm)を作製した後、二軸延伸装
置(岩本製作所製)を用いて、チャック間を10cmと
し、延伸温度条件60℃、延伸速度10mm/秒で逐次
延伸により、縦方向、横方向同倍率の2.5倍で延伸
後、エアーオーブン中で140℃、50秒熱セットし、
厚さ約35μmの2軸延伸熱セットフィルムを得た。こ
のようにして得た2軸延伸熱セットフィルムについて、
デュポン衝撃値、透明性及びブリードアウト性を測定し
た。その結果を表1にまとめて示した。
【0142】(比較参考例1)ポリ乳酸(P1)を用い
て、参考例1と同様の各評価、測定試験を行った。
【0143】(比較参考例2)L−ラクタイド100重
量部に対して脂肪族系ポリエステル(重量平均分子量:
3.5万)、セバシン酸50モル%、プロピレングリコ
ール50モル%)10重量部を加えて、不活性ガスで雰
囲気を置換し、170℃で1時間混合させ、エステル化
触媒としてオクタン酸錫0.02重量部を加えて8時間
反応を行った。この後、失活剤として酸性リン酸エステ
ル0.04重量部を加え混練しポリマー(A’)を得
た。得られたポリマー(A’)の重量平均分子量はGP
Cの測定結果から11万、ガラス転移温度(Tg)は4
9℃、結晶化温度(Tc)は93℃、融点(Tm)は1
62℃であった。このポリマー(A’)について参考例
1と同様の各評価、測定試験を行った。
【0144】
【表1】
【0145】(実施例1〜3)表2に示した基材層とし
て用いるポリ乳酸(PLAと称する)と乳酸系ポリエス
テル(A1)とを含む乳酸系ポリエステル組成物(A)
と、表2に示した印刷インキ受容層として用いるポリ乳
酸、又はポリ乳酸と乳酸系ポリエステル(B1)とを含
む乳酸系ポリエステル組成物(B)を各々、表2に示す
割合でドラムタンブラーを用いてブレンドし、真空乾燥
機を用いて80℃、2時間の真空乾燥を行った。その
後、乳酸系ポリエステル(A)とするブレンド乾燥樹脂
を基材層に、ポリ乳酸(PLAと称する)、又はポリ乳
酸と乳酸系ポリエステル(B1)とを含む乳酸系ポリエ
ステル組成物(B)を印刷インキ受容層にし、共押出機
(田辺プラスチック社製)を使用して基材層(45μ
m)、印刷インキ受容層(5μm)構成の厚み50μm
の印刷フィルムを押出成膜した。
【0146】その後該フィルムを100℃のエアーオー
ブン中で10分間の熱セットした。得られた印刷フィル
ムにおいて次の印刷適性、耐熱性、貯蔵弾性率、透明
性、熱的物性、生分解性、耐衝撃性、ブリードアウト性
の各評価試験を行った。その結果を表1に示す。各印刷
用基材とも良好な印刷適性と生分解性を有した。
【0147】(実施例4、5)表2に示した基材層とし
て用いるポリ乳酸(PLAと称する)と乳酸系ポリエス
テル(A1)とを含む乳酸系ポリエステル組成物(A)
と、表2に示した印刷インキ受容層として用いるポリ乳
酸、又はポリ乳酸と乳酸系ポリエステル(B1)とを含
む乳酸系ポリエステル組成物(B)を各々、表2に示す
割合でドラムタンブラーを用いてブレンドし、真空乾燥
機を用いて80℃、2時間の真空乾燥を行った。その
後、乳酸系ポリエステル(A)とするブレンド乾燥樹脂
を基材層に、ポリ乳酸(PLAと称する)、又はポリ乳
酸と乳酸系ポリエステル(B1)とを含む乳酸系ポリエ
ステル組成物(B)を印刷インキ受容層にし、共押出機
(田辺プラスチック社製)を使用して基材層(180μ
m)、印刷インキ受容層(20μm)構成の厚み200
μmの印刷フィルムを押出成膜した。
【0148】次に単発2軸延伸機(岩本製作所社製)に
より延伸温度65℃、予熱時間5分、延伸速度100%
/分、延伸倍率2×2(縦×横):面倍率4の条件で5
0μmの延伸積層フィルムを作製した。フィルムを30
cm角の枠に挟み固定し、100℃のエアーオーブン中
で20秒、熱セットした。得られた印刷用基材の印刷適
性、生分解性を実施例1〜3で行った方法と同様に評価
した。その結果を表2に示す。各印刷用基材共、良好な
印刷適性と生分解性を有した。
【0149】
【表2】
【0150】(比較例1及び2)表3に示すポリ乳酸
(PLAと称する)と乳酸系ポリエステル(A1)とを
含む乳酸系ポリエステル組成物(A)、ポリ乳酸と乳酸
系ポリエステル(B1)とを含む乳酸系ポリエステル組
成物(B)を、各々表3に示す割合で各々ドラムタンブ
ラーを用いてブレンドし、真空乾燥機を用いて80℃、
2時間の真空乾燥を行った。本比較例では、乳酸系ポリ
エステル組成物(A)を印刷インキ受容層に、非晶性の
乳酸系ポリエステル組成物(B)を基材層となるよう、
共押出機(田辺プラスチック社製)を使用して基材層
(180μm)、シール層(20μm)構成の厚み20
0μmの印刷フィルムを押出成膜した。次に単発2軸延
伸機(岩本製作所社製)により延伸温度65℃、予熱時
間5分、延伸速度100%/分、延伸倍率2×2(縦×
横):面倍率4の条件で50μmの延伸積層フィルムを
作製した。フィルムを30cm角の枠に挟み固定し、1
00℃のエアーオーブン中で20秒、熱セットした。
【0151】得られた印刷用基材の印刷適性、生分解性
を実施例1〜3で行った方法と同様に評価した。その結
果を表2に示す。各印刷用基材の印刷適性の評価におい
て若干変形、膨潤が生じた。また、インキの密着性に劣
り、溶剤塗布による面の変化はなかった。
【0152】(比較例3)表3に示したポリ乳酸(PL
Aと称する)と、乳酸系ポリエステル(A1)とから乳
酸系ポリエステル組成物(A)となる樹脂を表3に示す
割合でドラムタンブラーを用いてブレンドし、真空乾燥
機を用いて80℃、2時間の真空乾燥を行った。その
後、乳酸系ポリエステル組成物(A)を押出機(田辺プ
ラスチック社製)を使用して厚み200μmの単層フィ
ルムを押出成膜した。
【0153】次に単発2軸延伸機(岩本製作所社製)に
より延伸温度65℃、予熱時間5分、延伸速度100%
/分、延伸倍率2×2(縦×横):面倍率4の条件で5
0μmのフィルムを作製した。フィルムを30cm角の
枠に挟み固定し、100℃のエアーオーブン中で20
秒、熱セットした。得られた印刷フィルムの印刷適性、
生分解性を実施例1〜3で行った方法と同様に評価し
た。その結果を表2に示す。印刷用基材片面の印刷適性
の評価において変形、膨潤は生じなかったが、インキの
密着性に劣り、溶剤塗布による面の変化はなかった。
【0154】(比較例4)表3に示したポリ乳酸(PL
Aと称する)と乳酸系ポリエステル(B1)とから非晶
性の乳酸系ポリエステル組成物(B)とする樹脂を、表
3に示す割合でドラムタンブラーを用いてブレンドし、
真空乾燥機を用いて80℃、2時間の真空乾燥を行っ
た。その後、押出機(田辺プラスチック社製)を使用し
て厚み50μmの単層フィルムを押出成膜した。
【0155】フィルムを30cm角の枠に挟み固定し、
100℃のエアーオーブン中で10分間、熱セットし
た。得られた印刷用基材の印刷適性、生分解性を実施例
1〜3で行った方法と同様に評価した。印刷フィルム片
面の印刷適性の評価においてインキの密着性は良好であ
ったが、印刷用基材の変形、膨潤が起こった。溶剤塗布
によりフィルム表面の光沢は失われ、適度に面は荒れ
た。
【0156】
【表3】
【発明の効果】本発明は、印刷等の溶剤での表面加工を
必要とするフィルム、シート、または合成紙に関し、印
刷インキ溶剤による変形又は膨潤を抑制しつつ、印刷イ
ンキの密着性が良好で印刷適性の優れ、かつ、優れた耐
衝撃性、柔軟性を有しつつ低ブリードアウト性を示す生
分解性の印刷フィルムを提供できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三原 崇 千葉県佐倉市大崎台1−27−1−B308 Fターム(参考) 3E064 BA54 BB03 EA06 4F100 AK41A AL05A BA02 BA26 GB15 GB16 JA04A JA04B JA11A JA12B JC00 JD14B JK10 JK13 JK17 YY00A YY00B 4J002 CF18W CF18X GF00 GT00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材層と印刷インキ受容層とからなる印
    刷フィルムであって、前記基材層の少なくとも片面に前
    記印刷インキ受容層を積層してなり、 前記基材層が、ポリ乳酸と乳酸系ポリエステル(A1)
    とを含む融点120℃以上の結晶化された乳酸系ポリエ
    ステル組成物(A)からなり、 前記印刷インキ受容層が、軟化点40〜110℃の非晶
    性のポリ乳酸、又はポリ乳酸と乳酸系ポリエステル(B
    1)とを含む軟化点40〜110℃の非晶性の乳酸系ポ
    リエステル組成物(B)からなることを特徴とする印刷
    フィルム。
  2. 【請求項2】 基材層の乳酸系ポリエステル組成物
    (A)中のポリ乳酸及び乳酸系ポリエステル(A1)の
    乳酸単位のL体とD体の比率(L/D比)又はD体とL
    体の比率(D/L比)が、質量比で100/0〜97/
    3であり、印刷インキ受容層の非晶性のポリ乳酸、又は
    非晶性の乳酸系ポリエステル組成物(B)中のポリ乳酸
    及び乳酸系ポリエステル(B1)の乳酸単位のL体とD
    体の比率(L/D比)が、質量比で96/4〜4/96
    である請求項1に記載の印刷フィルム。
  3. 【請求項3】 乳酸系ポリエステル(A1)が、前記乳
    酸単位とポリエステル単位とを重量比で10:90〜9
    0:10の範囲で有し、重量平均分子量10,000以
    上であり、60℃以下のガラス転移温度である請求項2
    に記載の印刷フィルム。
  4. 【請求項4】 乳酸系ポリエステル(B1)が、前記乳
    酸単位とポリエステル単位とを重量比で10:90〜9
    0:10の範囲で有し、重量平均分子量10,000以
    上であり、60℃以下のガラス転移温度である請求項2
    に記載の印刷フィルム。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1559569A1 (en) 2004-01-30 2005-08-03 Nisshinbo Industries, Inc. Recording material
EP1637336A2 (en) 2004-09-17 2006-03-22 Nisshinbo Industries, Inc. Biodegradable material for recording thereon
EP1693222A1 (en) * 2005-02-17 2006-08-23 Nisshinbo Industries, Inc. Ink jet sheet
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JP2010052305A (ja) * 2008-08-29 2010-03-11 Toppan Cosmo Inc 化粧シート
CN112703227A (zh) * 2018-09-28 2021-04-23 株式会社钟化 树脂组合物及其成形体

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