JP2003093090A - イヌリンの製造方法 - Google Patents

イヌリンの製造方法

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JP2003093090A JP2001293066A JP2001293066A JP2003093090A JP 2003093090 A JP2003093090 A JP 2003093090A JP 2001293066 A JP2001293066 A JP 2001293066A JP 2001293066 A JP2001293066 A JP 2001293066A JP 2003093090 A JP2003093090 A JP 2003093090A
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Tadashi Wada
正 和田
Masahisa Oguchi
真央 大口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 イヌリン合成酵素をスクロースに接触させて
イヌリンを生成するイヌリンの製造方法において、スク
ロースからイヌリンへの収率を高めるとともに、副生さ
れるグルコースを実利用上望ましい物質に変換し得る、
イヌリンの製造方法の提供。 【解決手段】 イヌリン合成酵素をスクロースに接触さ
せてイヌリンを生成するイヌリンの製造方法において、
副生物であるグルコース量を低下させることによってイ
ヌリンの収率を増大させることを特徴とするイヌリンの
製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イヌリン合成酵素
をスクロースに接触させてイヌリンを生成するイヌリン
の製造方法において、副生物であるグルコース量を低下
させることによってイヌリンの収率を増大させることを
特徴とするイヌリンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】イヌリンとは多糖類の一種で、広く自然
界に分布しており、ダリア、キクイモ、オグルマなどの
キク科植物の塊茎やチコリの根などにコロイド状で存在
していることが知られている。その性質は、澱粉とは異
なり温水に溶け、その構造はスクロースのフラクトース
側にD-フラクトフラノースがβ-(2→1)結合で順次脱
水重合したものである。その重合度はフラクトースの鎖
長により異なり、植物由来のイヌリンの場合、8から60
程度とされている。
【0003】イヌリンは、水溶性の難消化性の食物繊維
であるため、ダイエタリーファイバーとして着目されて
おり、さらにビフィズス菌の増殖効果などがあるため、
近年の健康志向ブームとあいまって需要は伸びつつあ
る。従来、イヌリンは主として海外で生産されている。海
外では、チコリやキクイモといった植物を栽培してその
根茎からの搾汁液を乾燥することにより製造され、一般
的な食材として利用されている。一方、わが国において
はそれらの植物の商業的栽培が困難であるため、イヌリ
ンは製造されていない。
【0004】そのため、イヌリンの入手は輸入に頼らざ
るを得ず、価格も国産の類似機能を有する物質よりも高
価であり、産業利用上の障壁となっている。また、植物
由来のイヌリンは、抽出原料が植物であるがゆえに収量
が作柄によって左右され、その上収穫後直ちに抽出を行
わなければ自己消化などによりイヌリン含量が目減りす
るといった問題を有する。
【0005】さらに、植物由来のイヌリンの場合、植物
搾汁液を大雑把に分画した後、噴霧乾燥して商品化した
ものであるため、イヌリンの重合度が植物本来の性質に
左右され、重合度の値の幅が広いイヌリンしか得られ
ず、均一性に欠けるといった課題がある。また、イヌリ
ンの利用上の問題においては、重合度の高い画分、例え
ば、市販されている平均重合度23のイヌリンの場合、水
に対する溶解性が悪く、加熱しなければ溶解しないた
め、実利用において好ましくない状況を引き起こすとい
った課題もある。
【0006】ところで、イヌリンを製造する方法として
は、先述した植物からの抽出以外に、イヌリン合成酵素
を利用して化学的にイヌリン又はイヌリン類似物を製造
する方法がある。例えば、植物から抽出して得られた酵
素を使用してスクロースからイヌリンを生成する方法が
M.Luscherらによって報告されている(FEBE letter 38
5, 39(1996))。この方法は、スクロース:スクロース
1−フルクトシルトランスフェラーゼ(SST)及びβ−
(2→1)フルクタン:β(2→1)フルクタン1−フルク
トシルトランスフェラーゼ(FFT)の2種の酵素の共同
作用によるものである。しかしながら、植物体から酵素
を大量に調製するのは時間と労力を要し、工業規模での
利用は現実的ではない。
【0007】また、微生物の酵素を作用させたイヌリン
類似物の製造方法が報告されている。例えば、アスペル
ギルス・シドウィ(Aspergillus sydowi)の分生胞子又
は菌体処理してイヌリンタイプの構造を有する物質を得
る方法が開示されている(J.Biol.Chem., 43, 171(192
0); Agric.Biol.Chem., 37,(9), 2111, (1973); 特開
昭61-187797; 特開平5-308885)。さらに、アスペルギ
ルス(Aspergillus)属又はフザリウム(Fusarium)属
に属する微生物の産生する酵素がイヌリン類似物を生成
すること、ストレプトコッカス・ミュータンス(Strept
ococcus mutans)に属する微生物の産生する酵素がイヌ
リン類似物を生成することが報告されている(特願昭55
-40193; Acta.Chem.Scand., B28, 589)。しかしなが
ら、これらの微生物によって産生される酵素を用いて生
成される物質は、イヌリン構造に類似した物質ではある
が、植物由来のイヌリンと比べてその分子が巨大である
か、結合形式が異なる物質であり、イヌリンを生成する
方法ではない。
【0008】微生物由来の酵素を利用してイヌリンを生
成する方法としては、本発明者らが出願したPCT/JP01/0
1133に記載の方法がある。これは、スクロースを原料と
して、これに新規イヌリン合成酵素を作用させて比較的
重合度のそろったイヌリンを製造する方法である。この
方法では、微生物由来の酵素を利用してイヌリンを生成
するという目的が達成され、植物から抽出したイヌリン
と比べて比較的均一な平均重合度のイヌリンを得ること
ができた(平均重合度8〜20)。しかしながら、この
反応は平衡反応であり、理論的には、スクロースからイ
ヌリンへの収率は50%であるが、実際には、スクロース
の濃度が反応液組成のおよそ10%にまで低下すると、反
応は見かけ上停止した状態となってそれ以上進行しなく
なり、スクロースからイヌリンへの収率は45〜46%が限
界である。したがって、収率的には必ずしも満足できる
とは言い難い。また、スクロースをイヌリン合成酵素に
接触させるとイヌリンの生成と同時にグルコースが副生
される。そのグルコースはそのまま回収して商業的に活
用できればよいが、現実的には実利用上必ずしも望まし
いとはいえない。さらに、製造後、未消化分のスクロー
スとグルコースを分離・精製する際、効率よく完全に分
離するには時間的な面でロスが大きいという課題もあ
る。
【0009】このため、スクロースからイヌリンへの収
率を高めるとともに、副生物グルコースを有効に処理す
る方法が望まれているが、これまで、このような課題を
解決する方法は報告されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、イヌリン合
成酵素をスクロースに接触させてイヌリンを生成するイ
ヌリンの製造方法において、スクロースからイヌリンへ
の変換効率を高めるとともに、副生されるグルコースを
実利用上有用な物質に変換する方法を提供することを課
題とする。
【0011】
【問題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に鋭意研究を重ねた結果、イヌリン合成酵素をスクロー
スに接触させてイヌリンを生成するイヌリンの製造方法
において、副生物であるグルコース量を低下させること
によってイヌリンの収率を増大させることができること
を見出し、本発明を完成した。
【0012】すなわち、本発明は、以下の(1)〜
(8)を提供する。 (1) イヌリン合成酵素をスクロースに接触させてイ
ヌリンを生成するイヌリンの製造方法において、副生物
であるグルコース量を低下させることによってイヌリン
の収率を増大させることを特徴とするイヌリンの製造方
法。 (2) グルコース量を、酵素反応を用いて別の物質に
変換することを特徴とする、(1)に記載の方法。 (3) グルコースをフラクトースに変換する、(2)
に記載の製造方法。
【0013】(4) グルコースをフラクトースに変換
する酵素がグルコースイソメラーゼである、(3)に記
載の製造方法。 (5) グルコースをグルコン酸に変換する、(2)に
記載の製造方法。 (6) グルコースをグルコン酸に変換する酵素がグル
コースオキシダーゼである、(5)に記載の製造方法。
【0014】(7) さらに、カラターゼを添加するこ
とを特徴とする、(6)に記載の製造方法。 (8) 副生物であるグルコース量の低下を、イヌリン
合成反応が平衡状態に達した段階で行うことを特徴とす
る、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のイヌリンの
製造方法。 (9) イヌリン合成酵素が、スクロースに作用してイ
ヌリンを生成するが、ケストース、マルトース、ラクト
ース、トレハロース、セロビオースには作用しない作用
及び基質特異性を有するものであることを特徴とする
(1)〜(8)のいずれか1項に記載の製造方法。 (10) イヌリン合成酵素が、該酵素を産生する微生
物の培養液若しくは培養菌体、又はその処理物であるこ
とを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の
製造方法。
【0015】
【発明実施の形態】本発明のイヌリンの製造方法につい
て、以下にさらに詳しく説明する。本発明は、イヌリン
合成酵素をスクロースに接触させてイヌリンを生成する
イヌリンの製造方法において、副生物であるグルコース
量を低下させることによってイヌリンの収率を増大させ
ることを特徴とするイヌリンの製造方法である。
【0016】上記において、イヌリン合成酵素を「スク
ロースに接触させる」とは、スクロースを炭素源として
含有する培地等にイヌリン合成酵素を添加し、これらが
反応液中でスクロースを基質としてイヌリンを生成し得
る条件下で反応させることを意味する。
【0017】ここで、イヌリン合成酵素は、スクロース
をイヌリンに変換することができる基質特異性を有する
酵素であればいずれの酵素をも使用することができる。
その一例として、スクロースに作用してイヌリンを生成
するが、ケストース、マルトース、ラクトース、トレハ
ロース、セロビオースには作用しない作用及び基質特異
性を有するイヌリン合成酵素が挙げられる。
【0018】また、イヌリン合成酵素として、該酵素を
産生する微生物の培養液若しくは培養菌体、又はその処
理物も含まれる。ここで、培養菌体とは、適切な条件下
で培養された前記微生物を意味し、生菌であっても凍結
乾燥されていてもよく、あるいはまたアセトンパウダー
等の形態であってもよい。また、培養菌体処理物とは、
本発明の酵素をその機能を失うことなく採取できるもの
であれば特に限定されないが、例えば、上記培養菌体の
破砕物、菌体抽出液、固定化菌体等を意味する。ここ
で、培養菌体の破砕物及び菌体抽出液とは、該菌体を公
知の破砕方法、例えば、超音波破砕法、ダイノミル破砕
法、フレンチプレス破砕法により破砕して得られる物質
及び抽出液を意味する。また、固定化菌体とは、公知の
固定化法、例えば、包括法、担体結合法で前記菌体を固
定化し、必要に応じて架橋したものを意味する。包括法
としては、カラギーナンやアルギン酸等の天然高分子を
用いる方法が挙げられる。
【0019】上記イヌリン合成酵素のうち、スクロース
に作用してイヌリンを生成するが、ケストース、マルト
ース、ラクトース、トレハロース、セロビオースには作
用しない作用及び基質特異性を有するイヌリン合成酵素
微生物から得られるイヌリン合成酵素としては、具体的
には、PCT/JP01/01133に記載されているバチラスsp.217
C-11株(FERM BP-7450)の培養液若しくは培養菌体又は
その処理物から得られるものを用いることができる。
【0020】このバチラス(Bacillus)sp.217C-11株の
培養及び酵素の調整方法について、以下に簡単に説明す
る。培地に添加する炭素源としては、通常使用されるも
のを適当な濃度で使用すればよい。例えば、スクロー
ス、グルコース、フラクトース、マルトースなどの糖質
を単独又は混合して用いることができる。本菌を用い
て、スクロースを基質としてイヌリンを生成させる酵素
を調製する上で、最も好ましい炭素源はスクロースであ
り、これを主炭素源とした液体培地を用いて培養を行う
ことにより該酵素活性は向上する。当然のことながら、
粗糖、廃糖蜜等のスクロース含有物を用いてもよい。
【0021】窒素源としては、ペプトン、肉エキス、酵
母エキス、コーン・スティープ・リカー等の有機窒素源
のほか、硫酸、硝酸、リン酸のアンモニウム塩などの無
機窒素源を単独又は混合して用いることができる。無機
塩類としては、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マ
グネシウム、マンガン、鉄等の硫酸塩、塩酸塩、炭酸
塩、硝酸塩、リン酸塩等をそれぞれ単独で又は組み合わ
せて用いることができる。さらに必要に応じて、アミノ
酸、ビタミンなど通常の培養に用いられる栄養源をなど
も適宜用いることができる。本発明の方法において使用
するのに適した培地としては、スクロース0.5〜2%(w/
v)、ペプトン1%、酵母エキス0.5%、リン酸2カリウム0.
2%を含むpH7〜8の液体培地を用いることが適当である。
【0022】培養は、振とう培養又はジャー・ファーメ
ンターを用いて通気条件下で行うことができる。培地の
pHは6〜9の範囲が好ましく、培養温度は25℃〜37℃の範
囲が好ましく、培養時間は微生物が増殖し得る以上の時
間であればよく、5〜96時間、好ましくは15〜72時間で
ある。
【0023】バチラス(Bacillus)sp.217C-11株を先に
示した培地で培養後、遠心分離により除菌し、その後培
養上清を分画分子量30000の限外濾過膜を用いて濃縮
し、反応用の酵素液として使用することができる。
【0024】なお、バチラス(Bacillus)sp.217C-11株
由来の酵素を含む、スクロースに作用してイヌリンを生
成するが、ケストース、マルトース、ラクトース、トレ
ハロース、セロビオースには作用しない作用及び基質特
異性を有するイヌリン合成酵素は、以下の理化学的性質
を有するものである。
【0025】 分子量:45,000〜50,000 至適温度:40〜50℃ 熱安定性:45℃を越えると徐々に失活し始め、50℃
で70%、60℃で40%の残存活性を示す。 至適pH:7〜8(45℃) pH安定性:pH6以上で安定。
【0026】イヌリン合成酵素の濃度は、反応液中のス
クロース(基質)を十分に利用し得る濃度であればよ
く、例えば、スクロース40〜60%(w/w)の場合、イヌ
リン合成酵素の活性が0.4 unit/ml 反応液となる濃度と
するのが好ましい。
【0027】スクロースの基質としてイヌリンを生成す
るのに適切なpHは、pH 6〜8の範囲の反応液を用いる
のが好ましい。さらに該反応液のpHを保つためにリン酸
緩衝液を用いることもできる。反応時間は、イヌリン合
成酵素の使用量等により適宜変更することができるが、
通常、0.1〜100時間、好ましくは、0.5〜72時間であ
る。得られるイヌリンの分析方法は、一例として、以下
のようにして分析することができる。
【0028】反応液中に生成したイヌリンの分析方法
は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行う。
成分分析は、カラムとして、例えば、信和化工製のULTR
ON PS-80N(8×300mm)を用い、溶媒;水、流速;0.5m
l/min、温度;50℃、検出器として示差屈折計を使用す
る。
【0029】本発明では、イヌリン合成酵素をスクロー
スに接触させてイヌリンを生成するイヌリンの製造方法
において、副生物であるグルコース量を低下させること
によってイヌリンの収率を増大させることができる。
【0030】ここで、「副生物であるグルコース量を低
下させる」ためには、反応系に支障を与えないものであ
って、副生されるグルコース量を低下させることができ
る方法であればいずれの方法をも使用することができ
る。例えば、酵素反応を利用することができる。
【0031】この酵素反応で使用され得る酵素は、基質
のグルコースを別の物質に変換し、反応液中のグルコー
ス濃度を低下させ、反応平衡状態を打破して未反応の原
料スクロースをイヌリン合成方向へと傾かせることによ
ってイヌリンの収率を増大させることのできるものであ
ればいずれのものでも利用できる。具体的には、グルコ
ースをフラクトースに変換する酵素、又は、グルコース
をグルコン酸に変換する酵素がある。
【0032】グルコースをフラクトースに変換する酵素
としては、例えば、グルコースイソメラーゼがあり、ナ
ガセ社製のスイターゼやノボ社製のスウィートザイム等
市販のグルコースイソメラーゼを利用することができ
る。このグルコースイソメラーゼをイヌリン合成の反応
系に添加した場合、イヌリン合成酵素によって原料スク
ロースから徐々に遊離されるグルコースは、グルコース
イソメラーゼによって速やかにフラクトースに変換さ
れ、グルコースイソメラーゼを加えなかった場合の半分
の生成量に低下し、グルコース−フラクトースのほぼ等
量混合物となる。これによって、原料スクロースからイ
ヌリン合成反応の平衡状態が解消されて反応の方向は常
にイヌリン合成側に傾くようになり、平衡状態時に未消
化のまま残存していた8〜10 %の原料スクロースのう
ち、4〜5%分がイヌリン合成に利用されることとなる。そ
の結果、原料スクロースからの反応産物としては、イヌ
リンとグルコース−フラクトース混合液が得られる。グ
ルコース−フラクトース混合液は、イヌリンとの分離操
作の後、異性化糖として利用され得る。
【0033】一方、グルコースをグルコン酸に変換する
酵素としては、例えば、グルコースオキシダーゼがあ
り、ナガセ社製のAN-1、アマノエンザイム社製のハイデ
ラーゼといった市販酵素を利用することができる。この
市販酵素には、グルコースオキシダーゼの他にカタラー
ゼも含まれているため、グルコースオキシダーゼの他に
別途カタラーゼを添加する必要がなく、コストを軽減で
きるという点で非常に好都合である。このグルコースオ
キシダーゼ及びカタラーゼ等をイヌリン合成の反応系に
添加した場合、イヌリン合成酵素によって原料スクロー
スから徐々に遊離されるグルコースが、グルコースオキ
シダーゼ及びカタラーゼ等によって速やかにグルコン酸
に変換され、グルコースは反応液中からほとんど消失す
る。これによって、原料スクロースからイヌリン合成反
応の平衡状態が解消されて反応の方向は常にイヌリン合
成側に傾くようになり、平衡状態時に未消化のまま残存
していた8〜10%の原料スクロースがすべてイヌリン合成
反応の基質として使用されることとなる。その結果、原
料スクロースからの反応産物としては、イヌリンとグル
コン酸(塩)のみが得られる。グルコン酸(塩)は、回
収して、食品添加物、化粧品成分、健康食品、医薬品等
の用途に利用することができる。
【0034】酵素反応等により副生物のグルコース量を
低下させるのは、スクロースにイヌリン合成酵素を接触
させてイヌリンの生成を開始した後であって、スクロー
スからイヌリンへの合成が開始され、スクロースの消費
が反応によってある程度進んだ時期であれば特に限定さ
れないが、特に好ましくは、イヌリン合成酵素反応が平
衡に達した段階である。なお、反応の進行具合について
はHPLCによる成分分析により確認することができる。
【0035】グルコースを別の物質に変換する酵素の添
加量は、これらの酵素がイヌリン合成の反応系に支障を
与えないでグルコース量を低下させる範囲で添加すれば
よい。具体的な酵素添加量は、反応に用いる原料スクロ
ースの濃度にもよるが、固形スクロース当たり、グルコ
ースイソメラーゼ製剤の場合0.1〜2%で十分であり、よ
り好ましくは0.5〜1%の範囲で添加すればよい。グルコー
スオキシダーゼ・カタラーゼ製剤の場合は0.1〜5%で十
分であり、より好ましくは0.5〜2%の範囲で添加すれば
よい。
【0036】さらに、イヌリン合成酵素をスクロースに
接触させてイヌリンを生成するイヌリンの製造方法にお
いて、グルコースをグルコン酸に変換する酵素としてグ
ルコースオキシダーゼ・カタラーゼ製剤を使用する場
合、これらの酵素が酸化酵素であり、反応に酸素が必要
となる。そのため、これらの酵素を用いた反応において
は、反応液中の溶存酸素濃度を高めるために反応液を高
速に攪拌する必要がある。攪拌速度は300〜500rpmが好
ましい。また、溶存酸素濃度は、原料スクロース濃度や
反応温度を調整することによって高めることができる。
すなわち、原料スクロース濃度を60%以下、好ましくは4
0%から25%に調整することによって溶存酸素濃度が高ま
る。反応温度については、温度が高くなるにつれて溶存
酸素濃度が低下するので、45℃前後に設定するのが適当
である。さらに、溶存酸素濃度を高めるためには反応液
へ曝気を行うことが重要であり、1〜2vvmの供給量で実
施するのが適当である。
【0037】イヌリン合成酵素をスクロースに接触させ
てイヌリンを生成するイヌリンの製造方法において、グ
ルコースをグルコン酸に変換する酵素を添加した場合、
反応液のpHの調整を行わないとグルコン酸の生成にとも
なってpHは3以下に低下する。その場合、イヌリン合成反
応も停止してしまうため、反応中に中和剤を適宜投入す
ることによってpHを6〜7に調整することが必要となる。
使用可能な中和剤としては、炭酸カルシウム、水酸化カ
ルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙
げられる。
【0038】生成されたグルコン酸は結晶として回収す
ることができ、その場合、添加した中和剤の塩の形で得
られる。例えば、炭酸カルシウム又は水酸化カルシウム
を使用した場合はグルコン酸カルシウム、水酸化ナトリ
ウムを使用した場合はグルコン酸ナトリウム、水酸化カ
リウムを使用した場合は、グルコン酸カリウムが得られ
る。
【0039】
【実施例】以下に本発明を実施例により具体的に説明す
るが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。 [実施例1]バチラス(Bacillus)sp.217C-11株からの
酵素液の調製 バチラス(Bacillus)sp.217C-11株(FERM BP-7450)
を、スクロース0.5〜2%(w/v)、ペプトン1%、酵母エキ
ス0.5%、リン酸2カリウム0.2%、硫酸マグネシウム0.05%
を含むpH7〜8の液体培地にて30℃で18時間振とう培養し
た。
【0040】次に、その培養上清に固形の硫酸アンモニ
ウムを加え、70%飽和で沈殿する画分を遠心分離機を使
用して集めた。そしてこの沈殿物をpH 7.0の20 mMのリ
ン酸緩衝液に溶解し、透析チューブに入れた後、同緩衝
液で十分に透析して酵素の粗酵素液を得た。次いで、常
法に従って東ソー株式会社製のTSKgel DEAEトヨパール6
50、トヨパールHW55、ファルマシア製のセファクリルS-
300を使用して、該粗酵素液をイオン交換クロマトグラ
フィー及びゲル濾過クロマトグラフィーに供することに
より、本発明のイヌリン合成酵素を精製した。これを反
応用の酵素標品として使用した。
【0041】[実施例2]イヌリン合成酵素をスクロー
スに接触させてイヌリンを生成するイヌリンの製造方法
において、グルコースイソメラーゼを添加した場合の反
応 原料スクロース2g、30u/mlの実施例1で調製したイヌリ
ン合成酵素0.1g、グルコースイソメラーゼ(ナガセ社
製,商品名;スイターゼ)40mg、水2.9gを加えた反応液
を10ml容の試験管に入れ、55℃、攪拌条件下(150strok
es/min)で28時間反応を行った。その結果を表1に示し
た。
【0042】グルコースイソメラーゼを添加しない通常
の反応の場合は、原料スクロースの残存率は約8%であ
ったが、グルコースイソメラーゼを添加した場合はスク
ロースの残存率は4%に減少し、イヌリンの収率も45
%が47%に増加し、反応効率の向上が確認された。ま
た、平均重合度もグルコースイソメラーゼの添加により
高まることが確認された。
【0043】また、グルコースイソメラーゼの作用によ
り、48%のグルコースが消失し、グルコースとフラク
トースの比率はほぼ1:1となり、グルコース−フラクト
ース混合液へのさらなる利用が期待される。
【0044】
【表1】
【0045】[実施例3]イヌリン合成酵素をスクロー
スに接触させてイヌリンを生成するイヌリンの製造方法
において、グルコースオキシダーゼ・カタラーゼ製剤を
添加した場合の反応 750gの原料スクロースに2220gの水、消泡剤(アデカノ
ール)0.1mlを加えた原料液を90℃で30分間殺菌し、42
℃に冷却後、固形炭酸カルシウム90g、濾過滅菌した25u
/mlの実施例1で調製したイヌリン合成酵素36ml、グル
コースオキシダーゼ・カタラーゼ製剤(ナガセ社製,商
品名;AN-1)4gを添加した。この約3kgの反応液を温度4
2℃、攪拌400rpm、通気1.6vvmという条件下で24時間反
応させた。反応終了後、未消化の炭酸カルシウムを濾過
により取り除き、反応産物の成分を調べ、その結果を図
1に示した。なお、対照として、グルコースオキシダーゼ
・カタラーゼ製剤を添加しない場合の反応産物の成分を
図2に示した。図1及び図2から明らかなように、原料
スクロースからのイヌリンの収率は、グルコースオキシ
ダーゼ・カタラーゼ製剤を添加しない場合には45 %程度
であったのに対し、実施例3の製法においては50 %に向
上した。さらに、グルコースがグルコン酸へほぼ完全に
変換されたことによりイヌリン合成反応の平衡が解消さ
れ、通常の反応では8〜10 % 残存する原料スクロースも
ほぼ完全にイヌリン合成のため消費された。その結果、
反応液中に主として生成された物質はイヌリンとグルコ
ン酸のみになった。
【0046】
【発明の効果】本発明により、イヌリン合成酵素をスク
ロースに接触させてイヌリンを生成するイヌリンの製造
方法において、副生物であるグルコース量を低下させる
ことによってイヌリンの収率を増大させることができ
る。また、これまで、イヌリンの製造工程において生じ
ていた反応副生物のグルコースがグルコース−フラクト
ース混合液、グルコン酸等に変換されることによって、
実利用上望ましい物質として回収されることが可能とな
った。さらに、製造後、生成物の分離・精製が効率よく
行われるようになるので経済効果も大きくなり、結果と
して、安価なイヌリンの製造方法を確立することができ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】イヌリンの製造方法において、グルコースオキ
シダーゼ・カタラーゼ製剤を添加した場合の反応液中成
分を示す図である。
【図2】イヌリンの製造方法において、グルコースオキ
シダーゼ・カタラーゼ製剤を添加しない場合の反応液中
成分を示す図である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イヌリン合成酵素をスクロースに接触さ
    せてイヌリンを生成するイヌリンの製造方法において、
    副生物であるグルコース量を低下させることによってイ
    ヌリンの収率を増大させることを特徴とするイヌリンの
    製造方法。
  2. 【請求項2】 グルコース量を、酵素反応を用いて別の
    物質に変換することを特徴とする、請求項1に記載の方
    法。
  3. 【請求項3】 グルコースをフラクトースに変換する、
    請求項2に記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 グルコースをフラクトースに変換する酵
    素がグルコースイソメラーゼである、請求項3に記載の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 グルコースをグルコン酸に変換する、請
    求項2に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 グルコースをグルコン酸に変換する酵素
    がグルコースオキシダーゼである、請求項5に記載の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 さらに、カラターゼを添加することを特
    徴とする、請求項6に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 副生物であるグルコース量の低下を、イ
    ヌリン合成反応が平衡状態に達した段階で行うことを特
    徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のイヌリ
    ンの製造方法。
  9. 【請求項9】 イヌリン合成酵素が、スクロースに作用
    してイヌリンを生成するが、ケストース、マルトース、
    ラクトース、トレハロース、セロビオースには作用しな
    い作用及び基質特異性を有するものであることを特徴と
    する請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 イヌリン合成酵素が、該酵素を産生す
    る微生物の培養液若しくは培養菌体、又はその処理物で
    あることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記
    載の製造方法。
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