JP2003092924A - 養液栽培による植物栽培方法 - Google Patents

養液栽培による植物栽培方法

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JP2003092924A JP2001289209A JP2001289209A JP2003092924A JP 2003092924 A JP2003092924 A JP 2003092924A JP 2001289209 A JP2001289209 A JP 2001289209A JP 2001289209 A JP2001289209 A JP 2001289209A JP 2003092924 A JP2003092924 A JP 2003092924A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 給液装置を用いた新たな養液栽培による植物
栽培方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 pF1.5〜2.0(−3kPa以上−
9.8kPa以下)の水分域における有効水分量が25
0リットル・m-3以上400リットル・m-3以下であ
り、pF2.0〜3.2(−9.8kPa以上−155
kPa以下)の水分域における有効水分量が30リット
ル・m-3以上である培地を、周辺土壌から隔離された状
態とし、そこに栽培しようとする植物を植え付け、水又
は液肥を供給して栽培することにより、植物が養水分を
過剰に吸収し栄養・生殖生長のバランスを崩すことな
く、適度な水分条件を維持することが可能となる。さら
に適当な培地の容量、高さを設定し、水分センサーを用
いて給液制御することにより、水分ストレス条件を安定
的に維持することが可能で、高糖度トマト等、品質の高
い果実の収量を極力減らすことなく安定的に栽培するこ
とが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に果菜類の野菜
の育成方法に適した養液栽培による植物栽培方法であ
り、さらには特定の水分保持特性を有する培地を土壌と
隔離した栽培用容器、袋等に充填し、水または液肥を自
動的に効率よく供給することにより、品質の高い野菜を
安定的に生産することを可能にする養液栽培による植物
栽培方法である。
【0002】
【従来の技術】現在、主として普及している養液栽培方
式を大別すると、湛液型循環式水耕、NFT、固形培地
耕がある。湛液型循環式水耕には、ベッド内に一定量の
培養液をたたえておき、これを間欠的・多量に強制循
環、あるいは、少量の液を瀑気しながら間欠的に循環、
または、各ベッド交互に、多量に交換させる方式などが
ある。NFTは、緩傾斜をつけたフィルム利用による水
路状のベッドに、上方から培養液を少しずつ流下させ、
タンクに戻して、液を循環させる方法である。これらの
方法は、培地が液相だけで構成され、根の呼吸に必要な
酸素は溶存酸素として供給される。根圏が単純で、根圏
環境の制御がし易いという特徴を持つため葉菜類を中心
とした大規模な植物工場的生産方式に適している。これ
に対して、固形培地耕は礫、ロックウール等の培地を用
いた養液栽培方式で、培地に固相、液相、気相の三相を
有し、最も土耕に近い養液栽培である。用いる培地の種
類によって、無機培地耕と有機培地耕に大別され、無機
培地耕には礫耕、砂耕、籾殻くん炭耕、バーミキュライ
ト耕、パーライト耕、ロックウール耕があり、有機培地
耕はさらに樹皮耕、ヤシ殻耕、ピートモス耕、おがくず
耕、籾殻耕など天然有機物を用いるものとポリウレタン
耕、ポリフェノール耕、ビニロン耕など有機合成物を用
いるものがある。このうち、製鉄時に発生する残渣を用
いるロックウール耕が安価で、保水性があり、化学的に
不活性で培養液の組成にほとんど影響を与えない培地で
ある等の理由から最も普及しており、施設園芸の重要品
目である果菜類、切り花等の栽培に用いられている。
【0003】近年、消費者が野菜に求める品質は多様化
し、色、つや、形等の外観的品質以外に、野菜に含まれ
る栄養的な成分に対し注目するようになってきている。
野菜の内容成分を高める方法としては一般的に水分スト
レスを与える処理がある。例えば高糖度トマトを生産す
る場合、防根シートや、隔離床等により根域を制限し、
さらに節水することで植物に極端な水分ストレスを与え
ることが行われている(農業技術体系;作物栄養V.p
32−36、馬西ら;1996、岡田;1994、特開
平10−127177号公報、特開平9−107827
号公報、特開平8−308406号公報、特開平10−
271924号公報)。
【0004】トマト等で普及が著しいロックウール栽培
では野菜の品質向上を目的に行われている栽培方法とし
ては、例えばトマトの糖度を高めるためには、間断給液
や高塩類処理等、極端な水分ストレスを与えることが一
般的に行われている。しかし、極端な水分ストレスは植
物の根に大きな負担を与え、長期栽培が困難であった
り、尻腐れ等の障害果が多発するため一般的に収量は減
少し不安定となる。
【0005】本発明者らにより提案された養液栽培方法
(特開2001−103857号公報)は、使用する培
地の保水性に特徴があり、易効性水分量(−3kPaで
保持される水分量〜−100kPaで保持される水分
量)を100リットル/m3以上、望ましくは150リ
ットル/m3以上、且つ難効性水分量(−100kPa
で保持される水分量〜−1600kPaで保持される水
分量)を50リットル/m3以上、望ましくは70リッ
トル/m3以上に調整された培地を用いることにより、
植物の蒸散または培地表面からの蒸発によって培地中か
ら水分が奪われた際、培地中の毛管力により急激な乾燥
(−100〜−1600kPa)による乾燥害を防ぐこ
とができる。また、枯死まで至らない程度の適度の水分
ストレス(水分張力:−30〜−50kPa)を容易
に、また安定的に植物に与えることが可能となり、例え
ば高糖度トマトの生産などが可能となるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】固形培地耕で広く使用
されているロックウールは、保水量が多く、そのほとん
どがpF1.5〜2.0(−3kPa以上−9.8kP
a以下)の水分域にほとんど含まれ、pF2.0(−
9.8kPa)以上では毛管連絡が切れ、ほとんど水分
を保持しない特徴を持つ。したがって、一度乾燥してし
まうと、再び灌水しても毛管現象によるマット内の水分
の拡散は期待できないため、栽培期間中は常にマット内
の水分をあるレベル以上に維持する必要がある。しか
し、pF 1.5〜2.0の水分域は植物にとって、養
水分吸収が最も行いやすく、そのため、養水分を過剰に
吸収し栄養生長過多になりやすく、また、過剰に給液さ
れた場合には培地内が過湿となり過湿害を引き起こしや
すい。また、果実の糖度を上げるために植物に水分スト
レスを与える場合には、培地内水分が培地内の空隙に働
く毛管力によって保持される水分域pF2.0〜2.2
以上にすることが必要であるが、これらの培地を用いた
場合にはpF2.0〜2.2以上では有効水分がないた
めに、植物の水分ストレス域に保つことが難しく、節水
処理を行った際には植物に極度の水分ストレスを与えて
しまい、トマトの糖度が高まったとしても収量が減少す
る場合がある(最新養液栽培の手引き;(社)日本施設
園芸協会編)。ロックウール以外にもピートモス、パー
ライト、籾殻くん炭等があるが、いずれも同様な特性を
有している。
【0007】これらを解決する手段として、pF1.8
〜2.7の間で良好な保水性を有し、さらに粒子が崩れ
にくく、従来使用されているロックウール、籾殻くん
炭、ピートモス等と比べ制御性よく水、液肥等を施すこ
とができる、潅水ホースが設けられた栽培用容器に硬質
な多孔質粒子よりなる培地を装入し液肥混入機を使用し
て点滴潅水する栽培方法が提案されている(特開平5−
176642号公報)。糖度の高いトマトやメロンを栽
培する場合には、水分ストレスをかけるために培地内の
pF値を高く維持することが必要であり、例えばpF
2.4前後を維持する場合には、培地がその水分域に有
効水分を保持していることが必要であるとともに、水分
センサーを設置し目的とするpF値を維持するように給
液制御することが必要となる。その際、植物1個体当た
りの培地量や1回当たりの灌水量が重要となる。上記の
点滴潅水する栽培方法では特に培地量、灌水量について
は規定してなく、灌水量によってはpF1.8〜2.4
の水分域を大きく変動することが予想され、比較的糖度
の高いトマトやメロン等を安定的に生産することは難し
い。
【0008】本発明者らにより提案された前記養液栽培
方法では、難有効水分量について規定し、緩衝力の高い
培地としているが、難有効水分域での緩衝力は期待でき
るものの、培地内水分をpF3.2以上の水分域で制御
した場合には、植物にとって極めて強い水分ストレスが
与えられることになり、例えばトマトでは、高糖度のト
マトが収穫できたとしても根の吸収機能、光合成機能等
植物の生理機能に大きなダメージを与えることとなり、
収量が大幅に減少することが予想される。そのため、実
際の生産場面では高糖度によって差別化を目的とした一
部の生産者に受け入れられたとしても一般的な技術には
なりにくい。従って、本発明の目的は、植物が養水分を
過剰に吸収し栄養・生殖生長のバランスを崩すことな
く、適度な水分条件を維持することが可能であり、また
水分ストレス条件を安定的に維持することが可能で、高
糖度トマト等、品質の高い果実の収量を極力減らすこと
なく安定的に栽培することが可能な養液栽培による植物
栽培方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記した養
液栽培による栽培方法を達成することを目的として鋭意
研究した結果、従来使用されている培地に比べ、pF
2.0以下の有効水分量が適度に少なく、かつpF2.
0〜3.2の有効水分量が多い水分保持特性を有する培
地を用いること、さらに適当な培地の容量、高さを設定
し、水分センサーを用いて給液制御して養液栽培を行う
ことにより、上記した目的を達成し得ることを見出し本
発明を完成させた。即ち、本発明は、pF1.5〜2.
0(−3kPa以上−9.8kPa以下)の水分域にお
ける有効水分量が250リットル・m-3以上400リッ
トル・m-3以下であり、pF2.0〜3.2(−9.8
kPa以上−155kPa以下)の水分域における有効
水分量が30リットル・m-3以上である培地を、周辺土
壌から隔離された状態とし、そこに栽培しようとする植
物を植え付け、水又は液肥を供給して栽培することを特
徴とする養液栽培による植物栽培方法である。好ましく
は、本発明は、上記の栽培方法において、培地の容量が
植物一個体当たり4リットル以上6リットル以下であ
り、設置した際、培地底面から上面までの高さが10c
m以上となる植物栽培方法である。また、好ましくは、
本発明は、上記栽培方法において、培地に水分センサー
を設置し、灌水開始点をpF1.5以上3.2以下と
し、設定したpF値に達した際に給液される植物一個体
に対する水又は液肥の給液量が150ミリリットル以上
400ミリリットル以下であり、果菜類を栽培する植物
栽培方法である。また、好ましくは、本発明は、上記栽
培方法において、培地に水分センサーを設置し、灌水開
始点をpF2.4以上3.2以下とし、設定したpF値
に達した際に給液される植物一個体に対する水又は液肥
の給液量が100ミリリットル以上300ミリリットル
以下であり、糖度5%以上のトマト、糖度10%以上の
メロン又は糖度6%以上のイチゴを栽培する植物栽培方
法である。また、好ましくは、本発明は、上記栽培方法
において、培地が、粒径0.1mm以下の粒子が5容量
%以上50容量%以下の浄水場発生土を含む植物栽培方
法である。更に好ましくは、本発明は、上記栽培方法に
おいて、培地が、浄水場発生土、バーク堆肥及びピート
モスからなる植物栽培方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明では、使用する培地は、p
F1.5〜2.0(−3kPa以上−9.8kPa以
下)の水分域における有効水分量が250リットル・m
-3以上400リットル・m-3以下、望ましくは300リ
ットル・m-3以上350リットル・m-3以下であり、か
つpF2.0〜3.2(−9.8kPa以上−50kP
a以下)の水分域における有効水分量が30リットル・
-3以上、好ましくは50リットル・m-3以上である水
分保持特性を有するものである。このような水分保持特
性を有する培地は、従来、固形培地耕用の培地として使
用されているロックウール等に比べ、pF1.5〜2.
0(−3kPa以上−9.8kPa以下)における有効
水分量が少ないために、過剰な給液によって植物が過剰
に養水分を吸収し、植物が栄養生長過多になることが少
ない。さらに、厚層多腐植質黒ボク土において,pF2
以下の領域でガス拡散低下によって根は阻害されること
から(農業技術体系、土壌と根圏 p39〜45)、p
F2.0以下に多量の水分を保持するロックウールでは
過湿によって生育阻害を引き起こす場合がみられる。ま
た、pF2.0〜3.2の水分域における有効水分量が
多いために、給液量の減少によってpF2.0以上にな
っても、培地内水分が急激に低下することがないため、
植物が極端な水分ストレスに曝されることが少ない。例
えば、糖度の高いトマト等、高品質野菜を生産するため
に節水栽培を行うような場合には、ロックウール、籾殻
くん炭等を培地として使用して節水を行った場合には、
ある程度糖度を高めることが可能であるが、pF2.0
以上になると極端に培地内水分が少なくなるために、植
物が極端な水分ストレスにさらされる危険性が高く、あ
る程度糖度を高める効果があるが、収量が極端に低下す
る危険性がある。一方、本発明で用いる上記培地を使用
した場合には、pF2.0以上でも有効水分量が高いた
めに、植物が極端な水分ストレスを受けることなく、安
定的に高いpF値の水分域を維持することができ、収量
をそれほど落とすことなく、尻腐れ果の発生を極力抑え
て、糖度の高いトマトを得ることができる。
【0011】このような水分保持特性を持った培地は、
非有機質系資材と有機質系資材とを適当な割合で混合
し、篩い分けし、得られる培地の水分保持特性を、例え
ば加圧板法(土壌環境分析法、博友社、54〜57頁)
により測定することによって得ることができる。即ち、
pF1.5〜2.0(−3kPa以上−9.8kPa以
下)の範囲及びpF2.0〜3.2(−9.8kPa以
上−55kPa以下)の範囲の加圧下において培地に保
持される水分量をそれぞれ測定して有効水分量を求め、
それぞれの加圧下での有効水分量、即ち、pF1.5〜
2.0の水分域における有効水分量が250リットル・
-3以上400リットル・m-3以下、好ましくは300
リットル・m-3以上350リットル・m-3以下であり、
かつpF2.0〜3.2の水分域における有効水分量が
30リットル・m-3以上、好ましくは50リットル・m
-3以上である水分保持特性を有する培地を選択すること
によって得ることができる。ここで用いる非有機質系資
材としては、例えば、浄水場発生土;森林土壌(赤土、
黒土、マサ土など)、水田土壌、畑土壌等の一般土壌;
ゼオライト、バーミキュライト、パーライト等の無機
物;木片、もみがら、食品汚泥等の植物質資材を炭化し
た炭化物などが挙げられる。これらの非有機質系資材は
それぞれ単独で用いてもよく、これらの2種以上を混合
して用いてもよい。有機質系資材としては、例えば、バ
ーク堆肥、ピートモス、ヤシガラ解砕物、もみがらなど
が挙げられる。本発明の培地に用いる非有機質系資材の
好ましい例としては、浄水場発生土を挙げることができ
る。浄水場発生土は浄水処理過程で発生する沈積泥土
(浄水汚泥)を濃縮脱水した浄水ケーキが望ましい。凝
集剤としてポリ塩化アルミニウムや硫酸アルミニウムを
添加して沈殿処理され、無石灰処理により脱水されたも
のが望ましく、また、加圧法あるいは乾熱法によって得
られる浄水場発生土が好ましい。更には、浄水場発生土
は、目開き6mmの篩を通過し、粒径0.1mm以下の
粒子が通常5容量%以上50容量%以下、好ましくは1
0容量%以上40容量%以下の構成を有するのが望まし
い。あるいは、浄水場発生土は、造粒機とロータリーキ
ルンにより造粒されたものが好ましい。本発明の培地に
おいて浄水場発生土を非有機質系資材として用いる場
合、浄水場発生土を単独で用いても必要に応じて他の非
有機質系資材と組み合わせて用いてもよく、浄水場発生
土と必要に応じて他の非有機系資材と共に有機質系資材
と適当な割合で混合して本発明の好ましい培地が得られ
る。
【0012】他の非有機質系資材である森林土壌(赤
土、黒土、マサ土など)、水田土壌、畑土壌等の一般土
壌;ゼオライト、バーミキュライト、パーライト等の無
機物;木片、もみがら、食品汚泥等の植物質資材を炭化
した炭化物などは、通常培地用に用いられるものをその
まま使用することができる。これらの非有機質系資材
は、通常粒径が10mm以下、好ましくは6mm以下の
ものが望ましい。有機質系資材として用いるバーク堆
肥、ピートモス、ヤシガラ解砕物、もみがらなども、通
常培地用に用いられるものをそのまま使用することがで
きる。これらの有機質系資材は、通常粒径が10mm以
下、好ましくは6mm以下のものが、通常20容量%以
上、好ましくは、60容量%以上の構成を有するものが
望ましい。本発明で使用する培地の好ましい組み合わせ
としては、例えば、浄水場発生土と、バーク堆肥及びピ
ートモスと、更に必要に応じてヤシガラ解砕物及び/又
はもみがらとを用いる組み合わせなどが挙げられる。い
ずれにせよ、浄水場発生土を非有機質系資材の一つとし
て用いるのが好ましい。非有機質系資材と有機質系資材
との混合割合は、容量比で通常5:95〜70:30で
あり、好ましくは、30:70〜60:40である。本
発明で用いる培地には、通常使用されるリン酸肥料、カ
リ肥料、窒素肥料を必要に応じて添加してもよく、植物
病原菌に拮抗性を有する拮抗微生物を添加してもよく、
また培地の物理特性を調整するために必要に応じて土壌
改良剤を添加してもよい。
【0013】本発明で使用する培地は、例えば成形され
た容器あるいは栽培用袋に詰められて周辺土壌から隔離
された状態とされるが、その培地の容量が植物一個体当
たり4リットル以上6リットル以下、好ましくは4.5
リットル以上5.5リットル以下であることが望まし
い。ここで言う培地の容量とは、培地を例えば容器ある
いは袋に通常の方法で詰めて、特に圧力などを架けるこ
となく培地自身の重さで調整された時の培地の容量を指
す。培地を例えば栽培用の袋や容器に詰めて栽培を行う
際には、培地の詰め作業、運搬、設置等に労力を必要と
することから、培地は植物に適したものであることが基
本となるが、それ以外に軽量であり、必要容量が少ない
ことが望ましい。培地容量を植物一個体当たり4リット
ル以上6リットル以下であることにより、培地が有する
物理的緩衝力を失うことなく、設置作業等に支障がない
程度まで、培地を軽量化することができる。
【0014】本発明では培地を周辺土壌から隔離された
状態に置くために、例えば成形された容器あるいは栽培
用袋に培地を詰めた際、培地底面から上面までの高さが
10cm以上であるのが好ましい。この時に培地が占め
る面積は培地の上記した容量等から自ずと決定される。
培地内に含まれる水の多くは重力水によって底面へ移動
し、培地内の水分状態は培地の量および高さによって大
きく左右される。培地に飽和容水量以上の給液を行った
場合には、培地の高さが低いほど、飽水状態である培地
の比率が高くなり、植物は過湿により根が酸欠状態とな
る危険性が高くなる。しかし、培地の高さが10cm以
上と高くなれば、培地容積に対し重力水で下方へ移動す
る水の量が多くなり、すなわち、飽水状態となる培地の
比率が少なくなることから、給液量の増減、天候の変化
によって過剰な給液が行われた場合には、培地内の水分
が直ちに排水され適度な水分域に保つことができ、植物
の生育にとって安定した環境が維持できる。
【0015】本発明では培地に水分センサーを設置し、
灌水開始点をpF1.5以上3.2以下、好ましくはp
F2.0以上3.0以下とし、植物1個体に対して1回
の灌水量を150ミリリットル以上400ミリリットル
以下に設定することで果菜類の野菜を好ましく栽培する
ことができる。ここで使用する水分センサーとしては、
感知部に素焼き、セラミックを使用し、培地のある時点
での保持水分のpF値を測定できるテンシオメーター
(土壌肥料用語事典、農文協、60頁)が使用できる。
水分センサーの設置場所は植物の根域内であり、通常灌
水位置から同心円上に5〜10cmの範囲で、さらに深
さが5cm以上15cm以下の範囲であれば何処でもよ
い。灌水開始点がpF1.5以上3.2以下の範囲で設
定され、1回の灌水量を150ミリリットル以上400
ミリリットル以下に設定することで果菜類の好ましい栽
培が可能となる。生育や収量の調整については設定pF
値、灌水量を設定することにより可能である。上記した
栽培方法を実際に実施するには、まず最初に培地へ潅水
して水又は液肥を飽水状態で供給し、その後、潅水する
ことなく放置し、pF値が設定した値になった時点で一
定量の水又は液肥が潅水により供給され、その後再び放
置し、設定されたpF値に再び達した時点で再度潅水さ
れ、この工程を繰り返して養液栽培による植物栽培が実
施される。
【0016】本発明では上記と同様、培地に水分センサ
ーを設置し、自動給液によって行う栽培系において、灌
水開始点をpF2.4以上3.2以下とし、植物一個体
に対して一回の灌水量を100ミリリットル以上300
ミリリットル以下にすることにより、糖度の高いトマ
ト、メロン、イチゴの好ましい栽培を可能にする。本発
明で用いる培地の特徴として、pF2.0〜3.2の水
分域に含まれる有効水分量が従来使用されるロックウー
ル、パーライト、籾殻くん炭等に比べ多いため、水分セ
ンサーを用い、pF2.4〜3.2の水分域を調整する
ことが可能であり、さらに灌水開始点に達したときに給
液される給液量が一定であるため、設定したpF値を安
定的に維持することが可能である。これにより、トマ
ト、メロン、イチゴ等、水分ストレスによって果実内の
糖度を高め、品質の向上が図れる果菜類野菜を栽培する
場合には、果実内糖度を高める効果があり、さらにpF
値の変動が少なく、極端に強い水分ストレスを受ける場
合が少ないために、収量の低下や尻腐れ果等の障害果の
発生を極力抑えることができる。このような栽培方法に
よって、高められる糖度として、トマトの場合は5%以
上好ましくは6%以上、メロンの場合は10%以上好ま
しくは12%以上、イチゴの場合は6%以上、好ましく
は8%以上である。ここで糖度とはBrix糖度を指
し、可溶性固形物の量を表す単位で、その溶液の屈折率
と等しい屈折率を持つ、20℃のショ糖溶液の重量%濃
度を意味する。上記した栽培方法で適用できる作物とし
ては、水分ストレスにより品質を向上させることができ
る植物であれば、トマトの他にメロン、イチゴ、ナス、
ピーマン等の果菜類に使用することができる。
【0017】本発明の養液栽培による植物栽培を実際に
実施するには、培地を周辺土壌から隔離された状態と
し、そこに栽培しようとする植物を植え付け、水又は液
肥を供給して栽培する、通常の養液栽培により行うこと
ができる。例えば、長さ方向が100〜120cmの防
水シートで本発明で用いる培地を包含し、栽培床を構成
して栽培を行うこともでき、また、防水シート製の容器
又は袋に培地を詰めて栽培を行うこともできる。防水シ
ートは水と根を通さない素材のものが好ましく、ポリオ
レフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン)フィル
ム、フッ素系フィルム、合成樹脂フィルム、防根シー
ト、生分解性プラスティックフィルム等を使用すること
ができる。また、プラスティック、鉄骨、コンクリー
ト、木材等で、上端が広く開口した固定式栽培床を構成
し、これに培地を詰め、栽培床を作成して行うこともで
きる。こうして設置した栽培床内に点滴及び散水方式の
灌水チューブを設置し灌水を行う。灌水を行う際には、
水又は通常の植物栽培に用いる培養液等の液肥のいずれ
を用いてもよい。
【0018】次に実施例に基づいて本発明を更に詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限
されるものではない。
【0019】実施例1 本実施例で用いた培地の組成はピートモス:バーク堆
肥:浄水ケーキ=30:25:45%v/vであり、使用
した浄水ケーキは目開き6mmの篩いを通過し、その内
粒径が0.1mm以下である粒子を約30%v/v含むも
のであった。この培地は、pF1.5〜2.0の水分域
における有効水分量が295リットル・m -3であり、p
F2.0〜3.2の水分域における有効水分量が81リ
ットル・m -3の水分保持特性を有していた。 (1)試験方法 上記の本発明培地の保水性について、他の培地と比較調
査を行った。調査方法は加圧板法により行い、pF1.
5〜3.2までの体積含水率の変化について調査した。
比較例としてロックウール粒状面(細粒)と籾殻くん炭
を使用した。ロックウール粒状面(細粒)と籾殻くん炭
のそれぞれの水分保持特性は、ロックウール粒状面(細
粒)の場合pF1.5〜2.0の水分域における有効水
分量が612リットル・m-3で、pF2.0〜3.2の
水分域における有効水分量が15リットル・m-3であ
り、籾殻くん炭の場合pF1.5〜2.0の水分域にお
ける有効水分量が512リットル・m-3で、pF2.0
〜3.2の水分域における有効水分量が25リットル・
-3であった。
【0020】(2)結果 図1は供試培地のpF値の違いによる体積含水率の変化
を示している。ロックウールと籾殻くん炭の体積含水率
はpF1.5から急激に低下し、pF2.0〜2.4以
上ではほとんど減少がみられなかった。一方、上記の本
発明の培地はpF1.5から1.8までに急激に低下し
たものの、pF1.8以上では緩やかに低下し続けた。
以上から、本発明の培地はpF2.0以下の水分域にお
ける有効水分量は他の培地に比べ比較的少ないが、pF
2.0以上では有効水分量が他の培地に比べ高いことか
ら、過湿状態に長く維持されることがなく、更に、培地
内水分含有量が少なくなる乾燥条件下において、緩やか
に水分を供給することが予想され、物理的緩衝力が高い
ことが明らかとなった。
【0021】実施例2 栽培用培地の形状を検討する際、給液された水分の移動
と水分保持特性と最も関連のある重要な要因として培地
の高さがある。本実施例では本発明の培地を栽培用培地
として使用する際に、適正な高さを検討した。 (1)試験方法 培地に過剰に給液された場合、植物の根が酸欠状態とな
るのを避けるためには、気相率が15〜20%以上確保
されていることが望ましい。本実験ではまず、本発明の
培地の含水率と気相率の関係について求めることとし
た。さらに、培地の適正な高さを求めるため、次の実験
を行った。供試した培地は実施例1と同じものとした。
内径の直径が105mmの塩ビ管を用意し、これを長さ
5cm間隔で切断したものを積み重ねることにより、高
さの異なる円筒形の容器を設定した。これら容器には底
部から培地が洩れないよう網を取り付けた後、本発明培
地を詰めた。次に水を加え飽和状態とし、深さ2〜3c
mの深さまで水を溜めたトレイに培地を詰めた円筒管の
容器を設置し24時間放置した。24時間後個々の容器
をトレイから取り出し、5cm間隔で分断された塩ビ管
をそれぞれ中の培地がこぼれないように取り出し培地の
含水率を求めた。処理は円筒管の高さについて、10、
15、20、25cmを設定した。培地の組成は実施例
1と同様とした。
【0022】(2)結果 図2は、本発明の培地の含水率と気相率の関係について
示している。培地内の気相率は含水率が高まるにつれ低
下し、気相率が20%以上維持するためには、含水率が
60%以下である必要が認められた。図3は円筒管を用
いて実験を行った培地の高さと含水率の関係について示
している。例えば高さ25cmの培地の場合には、その
培地での0〜5cm、5〜10cm、10〜15cm、
15〜20cm及び20〜25cmの高さにおけるそれ
ぞれの培地の含水率を測定してその測定値を図3のグラ
フに示した。すべての処理区について、培地が高くなる
に従い、含水率は低下し、培地高さが高さ0〜5cmで
は63〜65%であったが、5〜10cmでは60%以
下を示した。以上から、本発明の培地を栽培用培地とし
て使用する場合には、過剰に給液され過湿になるのを回
避するために、培地底面から上面までの高さが、10c
m以上にすることが望ましい。
【0023】実施例3 本実施例では、本発明の培地を栽培用として使用する際
に適正な培地量を求めることとした。 (1)試験方法 供試植物はトマト“ハウス桃太郎”を用い、本葉6〜7
枚に展開した苗を培地を詰めたバッグに植え付け、点滴
チューブを配置し給液を行ない、5段果房まで収穫を行
った。供試した培地はピートモス:バーク堆肥:浄水ケ
ーキ=30:20:50%v/vとした。浄水ケーキはリ
ン酸吸収係数が高いことから、生育初期のリン酸欠乏を
回避する意味で、あらかじめリン酸肥料がケーキ1リッ
トルに対してリン酸分として2000mg相当添加して
あるものを使用し、目開き6mmの篩いを通過したもの
を供試した。リン酸肥料はリンスター30を使用した
(リンスターは、リン酸液と苦土石灰など塩基性物質を
反応させて製造される。pHは6.0程度,主成分はリ
ン酸一,二石灰,リン酸一,二苦土などであり,ク溶性
と水溶性のリン酸と苦土を保証する。微細結晶のため,
ク溶性リン酸よりもうすい有機酸に溶ける部分が多い特
徴があり,このためリン酸は溶出しやすいので速効性
で,肥効の持続性もあり,他の肥料とも配合使用できる
ので多くの土壌に適する)。この培地は、pF1.5〜
2.0の水分域における有効水分量が271リットル・
-3であり、pF2.0〜3.2の水分域における有効
水分量が66リットル・m-3の水分保持特性を有してい
た。給液の制御方法は、培地内にテンシオメーター(セ
ラミック式水分センサー:藤原製作所製)を感知部が深
さ10cmになるように設置し、pF2.6を灌水開始
点とし1回の灌水量は灌水量の約10%がバッグ外に排
出されるように設定した。培地量の設定は培地を詰める
袋の容量を変えることにより株あたり2、3、4、5、
6、7、8リットルと設定し、個々の処理について培地
高さが15〜20cmの高さになるように形状を調節し
た。調査はトマトの収穫量、品質の指標としてBrix糖度
を測定した。
【0024】(2)結果 表1は培地容量の違いがトマトの収量、品質および障害
果発生率に及ぼす影響について示している。トマトの収
量は、培地量の増加に伴い増加し、培地量が2および3
リットルでは極端に少なかった。糖度については収量と
負の相関にあり、培地量6リットル以上では6.5%以
上であるのに対して、7および8リットルでは5.0%
以下と低い値となった。ここでBrix糖度とは、可溶
性固形物の量を表す単位で、その溶液の屈折率と等しい
屈折率を持つ、20℃のショ糖溶液の重量%濃度を意味
する。また、尻腐れ発生率については、培地量が少なく
なるに従い高くなり、特に2および3リットルでは35
%以上と極端に高い値となった。以上から、果実の品質
が高く、安定した収穫を得るためには、本発明培地を1
株あたり4リットル以上6リットル以下であることが望
ましい。
【0025】
【表1】
【0026】実施例4 本実施例では実際にトマト、メロン、イチゴを栽培し、
栽培期間中における培地内のpF値の変動を調査すると
ともに、各作物の収量および品質についても調査を行っ
た。 (1)試験方法 供試品種について、トマトは“ハウス桃太郎”、メロン
は“アムス”、イチゴは“女峰”とした。定植適期の苗
を各供試培地が入った10リットル容の栽培用バッグに
2株ずつ定植した。供試培地組成は、ピートモス:もみ
殻堆肥:浄水ケーキ=30:30:40%v/vであり、
浄水ケーキは造粒機とロータリーキルンを用いて造粒さ
れたもので、目開き6mmの篩いを通過したものを使用
した。栽培方法について、トマトは1果房当たり4果に
調整し5段果房まで栽培を行い、メロンは1株1果とし
12〜15節の内、最も良好な側枝を選び着果させた。
イチゴについても常法に従い栽培を行った。反復は一区
10株とした。灌水方法は点滴方式で行い、培地内には
テンシオメーター(セラミック式水分センサー:藤原製
作所製)を感知部が深さ10cmになるように設置し、
pF2.6を灌水開始点とし1回の灌水量を200ミリ
リットルとし自動給液を行った。調査は栽培期間中の培
地内pF値の変動をTDR水分計を用いてモニタリング
し、植物については収量と品質の指標としてBrix糖
度、生理障害である尻腐れ果、奇形果の発生率を調査し
た。
【0027】(2)結果 表2はpF1.5〜2.0、2.0〜3.2における有
効水分量を表している。pF1.5〜2.0において、
本実施例は他の処理区に比べ低く、500リットル・m
-3以下であり、pF2.0〜3.2では他の処理区が、
10リットル・m-3以下であるのに対し、本実施例では
40リットル・m-3以上であった。図4は栽培期間中に
おける各供試培地のpF値の日変化について示してい
る。本実施例は他の処理区に比べpF値の変動が少な
く、設定pF値に近い値で推移した。一方比較例は変動
が大きかった。図4のpF値は、供試培地における体積
含水率とpF値と関係式を求め、これを元にしてTDR
法(農業技術大系、花卉編、第7巻、バラ、509〜5
12頁)で測定して得られた体積含水率をpF値に換算
して得られたものである(TDR法は、電気伝導度を利
用し、土壌等の体積含水率を測定する測定器。TDR
(Time Domain Reflectometry)水分計を使用すれば,
培地にプローブ(ステンレス棒)を埋設することで,培
地環境を攪乱することなく継続的な測定が可能になる。
このセンサーはプローブ周辺の体積含水率を測定する水
分センサーである。したがって,テンシオメーターでは
測定できない低含水率の領域まで測定できる)。表3に
はトマトの栽培結果が示されている。トマトでは、本実
施例は比較例に比べ収量が若干少なかったものの、Br
ixは明らかに高く、品質の高いものが得られた。生理
傷害の発生率について、本実施例は尻腐れ果が若干発生
したが、処理区間では最も少なかった。また、空洞果等
を含む奇形果発生率は本実施例においてほとんどみられ
ず、他区に比べて明らかに少なかった。表4にはメロン
の栽培結果が示されている。メロンでは、果実重は実施
例が比較例に比べ若干低い値であったが、すべての区に
おいて秀品的に問題ない果実が得られた。一方、Bri
x糖度は実施例が比較例に対して3〜4%高い値となり
品質的に高いものが得られた。表4にはイチゴの栽培結
果が示されており、イチゴについても、トマト、メロン
と同様の傾向であった。以上から、本実施例では従来の
培地に比べpF値を安定的に保つことが可能であり、そ
の結果、乾湿の変動による植物への負担を極力軽減でき
るため、Brix値の高い高品質のトマトを収量落とす
ことなく得られることが明らかとなった。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】実施例5 本実施例では、本発明培地をバッグカルチャー用の培地
として用いたトマト栽培において、水分センサーを用い
て灌水制御した場合に、一回当たりの灌水量の違いが栽
培期間中における培地内のpF値の変動および、トマト
の収量、品質に及ぼす影響について調査を行った。 (1)試験方法 制御のプログラムを下記に示す。灌水開始点を設定し、
培地に設置した水分センサーが設定した灌水開始点に達
したら、信号が電磁弁に発信され、灌水が開始される。
その際、給液する量は流量計により制御する。具体的に
は、パルス信号を発信する流量計を使用し、発信される
1パルス当たりの流量を把握すれば、パルス信号をカウ
ンターに送り、カウンター数によって流量を設定し、設
定したカウンター数に達した時点で電磁弁が閉まるよう
に信号が送られる。故に、一回当たりの灌水量を変える
には、カウンター数を変えて制御することができる。灌
水方法は点滴方式で行い、培地内にはテンシオメーター
(セラミック式水分センサー:藤原製作所製)を感知部
が深さ10cmになるように設置し、pF2.6を灌水
開始点とした。1回当たりの灌水量は50、100、1
50、300、450、600ミリリットルとし自動潅
水とした。供試品種はトマト“ハウス桃太郎”とし、子
葉展開後、園芸用培養土を詰めたポットに鉢上げし、本
葉5〜6枚展開時に個々の供試培地をプラスティック製
フィルムシートに包んだ栽培用ベッドに株間が40cm
となるように定植した。供試培地は実施例4と同様に造
粒されたものを用い、ピートモスと1:1の割合で混合
されたものを用いた。個々の培地量はトマト1株当たり
6リットルとなるようにした。1果房当たり4果に調整
し5段果房まで栽培した。反復は一区10株とした。調
査は栽培期間中の培地内pF値の変動をモニタリング
し、植物については収量と品質の指標としてBrix糖
度、生理障害である尻腐れ果、奇形果の発生率を調査し
た。
【0033】(2)結果 図5は栽培期間中のpF値の日変化を示している。この
pF値は、実施例4と同様に、TDR法で測定して得ら
れた体積含水率をpF値に換算して得られたものであ
る。灌水量が300ミリリットルまでは比較的変動が少
なく、設定したpF2.6前後を推移した。一方、45
0、600ミリリットルでは灌水により急激にpF値が
下がり、その後緩やかに上昇した。表6は各処理区の収
量、品質および障害果発生率を示している。収量は50
ミリリットルが最も少なく、300ミリリットルまでは
灌水量の増加に伴い増加し、450ミリリットル以上で
は増加はみられなかった。糖度は50ミリリットルが最
も高く、灌水量の増加に伴い徐々に低下し450、60
0ミリリットルでは5.0%以下となった。障害果の発
生率について、尻腐れ果は50ミリリットルで最も多く
発生し、灌水量が多くなるに従い減少した。また、空洞
果等の奇形果の発生率は灌水量が100から300ミリ
リットルでは10%以下であり、50、450、600
ミリリットルで高い値となった。以上から、本発明培地
を栽培用培地として使用し、水分センサーにより自動灌
水制御を行う栽培において、植物1個体に対して1回当
たりの灌水量を100ミリリットル以上300ミリリッ
トル以下にすることにより高品質の野菜を安定的に栽培
できることが明らかとなった。
【0034】
【表6】
【0035】実施例6 本実施例では、供試培地に浄水場発生土を使用した際
に、浄水場発生土の粒径が培地の有効水分量にどのよう
な影響を及ぼすか調査を行った。 (1)試験方法 供試培地は浄水場発生土とピートモスとバーク堆肥を用
い、浄水場発生土:ピートモス:バーク堆肥=50:3
0:20%v/vの割合で混合した。供試した浄水場発
生土は凝集剤を添加して沈殿処理され、加圧脱水により
発生したものであり、6mmの篩を全通したものを使用
した。処理は浄水場発生土の粒径をさらに調整し、粒径
が0.1mm以下である浄水場発生土が全体の浄水場発
生土に対して0、5、10、20、30、40、50、
60、70%v/vの割合で混合される9処理とした。調
査は供試培地の有効水分量を加圧板法により調査した。 (2)結果 結果を表7に示した。表7から明らかな通り、pF1.
5〜2.0での有効水分量は浄水場発生土の混合割合が
高まるに従い減少し、混合割合が60%、70%では、
200リットル・m-3以下となった。pF2.0〜3.2
では混合割合が0%で15%と低く、混合割合が高まる
に従い徐々に増加した。
【0036】
【表7】
【0037】実施例7 本実施例では、pF2.0以下の水分域において有効水
分量が高いピートモスと、pF2.0以上で有効水分量
が高い浄水場発生土の造粒物を用い、これらの混合比を
変えることで有効水分量の特性に与える影響を調査し、
さらにこれらを栽培用培地としてトマトを栽培し、生
育、品質、障害果の発生率に及ぼす影響について調査し
た。 (1)試験方法 当該造粒物は浄水場発生土を造粒機とロータリーキルン
により公知の方法で造粒されたものを、目開き6mmの
篩いを通過したものを使用した。処理はピートモス:造
粒物=10:0、8:2、6:4、4:6、2:8、1
0:0%v/vの割合で作成した。各処理区は表8に示
した通りである。調査は加圧板法を用い、供試培地のp
F1.5〜2.0、pF2.0〜3.2における有効水分量
を調査した。さらに供試培地を栽培用バッグに詰め、こ
れにトマトを植え付け、給液装置を用いて栽培を行っ
た。培地量は株当たり5リットルとした。給液管理はタ
イマー制御で行い、給液時間はすべての処理区で同じと
し、給液量は個々の処理培地に対して、給液量の約10
%が排出されるように行った。培養液は大塚処方を用い
た。栽培は5段果房上本葉2枚を残して摘心し、1果房
あたり4果で揃えた。調査はトマトの収量、品質の指標
としてBrix糖度、障害果である尻腐れ果、奇形果の
発生率を調査した。
【0038】
【表8】
【0039】(2)結果 各処理区の培地の有効水分量を表9に示した。表9から
明らかな通り、pF1.5〜2.0での有効水分量は造粒
物の割合が増えるに従い、徐々に低下し、pF2.0〜
3.2では増加する傾向がみられた。栽培試験の結果は
表10に示した。表10から明らかな通り、収量は造粒
物の割合が増加するに伴い減少し、Brix糖度は逆に
増加する傾向が見られた。尻腐れ果発生率は、造粒物の
増加に伴い増加し、処理5、6では20%以上となっ
た。奇形果発生率は処理1で高く、その他は極めて低い
値であった。以上から、造粒物の増加に伴い、pF1.
5〜2.0の有効水分量が少なくなるため、水分ストレ
スを受けやすくなり、収量が減少する結果となった。ピ
ートモスのみでは収量が最も高かったものの、糖度が低
く、さらに過剰に養水分を吸収するため、奇形果の多発
を招いた。このため、ピートモスのようなpF1.5〜
2.0の有効水分量が高い培地に対して造粒物を添加す
ることにより、糖度が高い高品質のトマトを得ることが
できるが、造粒物の割合いが80%以上になると、極端
に水が不足しやすくなり、尻腐れ果の多発を招く。故に
品質の高いトマトを安定的に得るにはピートモスに対し
て造粒物が20%以上60%以下であることが望まし
い。
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
【発明の効果】以上の結果から、本発明は土壌と隔離さ
れた容器あるいは袋を用い、水または液肥を与えること
によって植物を育成する栽培系において使用する培地に
特徴を有し、従来使用されている資材に比べ、pF2.
0以下の有効水分量が適度に少なく、かつpF2.0〜
3.2の有効水分量が多い特性を持つことから、植物が
養水分を過剰に吸収し栄養・生殖生長のバランスを崩す
ことなく、適度な水分条件を維持することが可能とな
る。さらに適当な培地の容量、高さを設定し、水分セン
サーを用いて給液制御することにより、特に果菜類の栽
培をマニュアル化することが可能となり、また、従来の
培地素材では制御が不可能な水分ストレス条件を安定的
に維持することが可能で、高糖度トマト等、品質の高い
果実の収量を極力減らすことなく安定的に栽培すること
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、各種培地のpF値の違いによる体積含
水率の変化を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明で用いる培地における含水率と
気相率の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明で用いる培地の高さの違いが培
地の含水率に及ぼす影響を示すグラフである。
【図4】図4は、各種培地のpF値の変化を示すグラフ
である。
【図5】図5は、各種培地のpF値の変化を示すグラフ
である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 pF1.5〜2.0(−3kPa以上−
    9.8kPa以下)の水分域における有効水分量が25
    0リットル・m-3以上400リットル・m-3以下であ
    り、pF2.0〜3.2(−9.8kPa以上−155
    kPa以下)の水分域における有効水分量が30リット
    ル・m-3以上である培地を、周辺土壌から隔離された状
    態とし、そこに栽培しようとする植物を植え付け、水又
    は液肥を供給して栽培することを特徴とする養液栽培に
    よる植物栽培方法。
  2. 【請求項2】 培地の容量が植物一個体当たり4リット
    ル以上6リットル以下であり、設置した際、培地底面か
    ら上面までの高さが10cm以上となる請求項1に記載
    の植物栽培方法。
  3. 【請求項3】 培地に水分センサーを設置し、灌水開始
    点をpF1.5以上3.2以下とし、設定したpF値に
    達した際に給液される植物一個体に対する水又は液肥の
    給液量が150ミリリットル以上400ミリリットル以
    下であり、果菜類を栽培する請求項1又は2に記載の植
    物栽培方法。
  4. 【請求項4】 培地に水分センサーを設置し、灌水開始
    点をpF2.4以上3.2以下とし、設定したpF値に
    達した際に給液される植物一個体に対する水又は液肥の
    給液量が100ミリリットル以上300ミリリットル以
    下であり、糖度5%以上のトマト、メロン又はイチゴを
    栽培する請求項1から3のいずれかに記載の植物栽培方
    法。
  5. 【請求項5】 培地が、粒径0.1mm以下の粒子が5
    容量%以上50容量%以下の浄水場発生土を含む請求項
    1から4のいずれかに記載の植物栽培方法。
  6. 【請求項6】 培地が、浄水場発生土、バーク堆肥及び
    ピートモスからなる請求項5記載の植物栽培方法。
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