JP2003089874A - ガスバリヤー膜の製造方法及び装置 - Google Patents

ガスバリヤー膜の製造方法及び装置

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JP2003089874A JP2001285288A JP2001285288A JP2003089874A JP 2003089874 A JP2003089874 A JP 2003089874A JP 2001285288 A JP2001285288 A JP 2001285288A JP 2001285288 A JP2001285288 A JP 2001285288A JP 2003089874 A JP2003089874 A JP 2003089874A
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幸之助 稲川
Toshihiro Zenitani
利宏 銭谷
Naoki Hibino
直樹 日比野
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】ガスバリヤー性に優れたダイヤモンド状炭素膜
(DLC膜)を産業上利用可能な規模で形成する方法及
び装置を提供する。 【解決手段】巻取り式蒸着装置を用いて各種物質の保存
に用いられる容器としてのプラスチックフィルム素材上
にガスバリヤー膜としてダイヤモンド状炭素膜を形成す
るために、排気系を有する真空チャンバー内でプラスチ
ックフィルム素材を移送させる主ローラーに電力を印加
して主ローラーと陽極との間に放電を起こさせ、主ロー
ラー上を移送されるプラスチックフィルム素材の表面近
傍に磁場を掛け、それにより原料ガスの炭化水素ガスを
分解して、プラスチックフィルム素材上に緻密なダイヤ
モンド状炭素膜を50Å〜1000Åの範囲の厚さに形
成することから成る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品、飲料、衛生
品、医療用分野で利用される容器の素材となるプラスチ
ックフィルム上に酸素、水蒸気、二酸化炭素等のガスに
対するバリヤー性に優れたダイヤモンド状炭素膜を形成
する方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の透明ガスバリヤー膜はポリエチレ
ンテレフタレート(PET)の素材上にSiOx(x=
1.5〜1.7)やAlの被膜を生成することに
より形成していた。PET素材のバリヤー性能は、厚さ
12μmのものでは酸素透過率、水蒸気透湿度はフィル
ムメーカーにより多少の違いはあるものの、それぞれ1
40cm/m・day・atm、50g/m・d
ay程度である。これに対してPET素材の上にSiO
x膜やAl膜を形成したものではそれぞれ1〜2
cm/m・day・atm、1〜2g/m・da
y程度に減少し、ガスバリヤー性が発揮される。
【0003】しかし現在では、より長期な保存を可能に
する高性能バリヤー膜が要求されている。具体的には酸
素透過率0.5cm/m・day・atm以下、水
蒸気透湿度0.5g/m・day以下の数値であり、
従来法では解決できていない。
【0004】ところで、一般に摩耗や損傷等から保護す
るために耐久性に優れた被膜としてダイヤモンド状炭素
膜(以下、DLC膜と記載する)が知られている。本発
明ではこのDLC膜のもつガスバリヤー特性に着目し
て、DLC膜をガスバリヤー膜として工業的に利用しよ
うとするものである。
【0005】DLC膜の形成法としては、従来、イオン
ビーム法、高周波プラズマCVD法、スパッタリング法
等種々の方法がしられているが、いずれの手法も成膜速
度が遅いため、食品、飲料、衛生品、医療用分野で利用
される容器の素材となるプラスチックフィルム上にDL
C膜を工業的規模で形成するガスバリヤー膜の製造方法
及び装置としては実用的でない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、上
記のような従来技術のもつ問題点を解決すると共に、S
iOx(x=1.5〜1.7)やAl膜のような
従来のガスバリヤー膜に代るガスバリヤー性に優れたD
LC膜を産業上利用可能な規模で形成する方法及び装置
を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の第1の発明によれば、巻取り式蒸着装置
を用いて各種物質の保存に用いられる容器としてのプラ
スチックフィルム素材上にガスバリヤー膜としてダイヤ
モンド状炭素膜を形成する方法において、排気系を備え
た真空チャンバー内でプラスチックフィルム素材を移送
させる主ローラーに電力を印加して主ローラーと陽極と
の間に放電を起こさせ、主ローラー上を移送されるプラ
スチックフィルム素材の表面近傍に磁場を掛け、それに
より原料ガスの炭化水素ガスを分解して、プラスチック
フィルム素材上に緻密なダイヤモンド状炭素膜を50Å
〜1000Åの範囲の厚さに形成することを特徴として
いる。
【0008】本方法においては主ローラーに印加する電
力は100〜500kHz好ましくは200kHzの低
周波電力であり得る。代りに、主ローラーに印加する電
力は13.56MHzの高周波電力であり得る。また磁
場は、主ローラーの内部に別個に配列した磁気回路によ
り発生され、真空チャンバー内のプラズマを増強するよ
うにされ得る。
【0009】また、本発明の第2の発明によれば、 各
種物質の保存に用いられる容器としてのプラスチックフ
ィルム素材上にガスバリヤー膜としてダイヤモンド状炭
素膜を形成する装置において、排気系を備えた真空チャ
ンバー内にプラスチックフィルム素材を移送するための
主ローラー及び陽極を対向させて設け、主ローラーの内
部には真空チャンバー内のプラズマを増強するための磁
場を主ローラーの近傍に発生する独立して磁気回路を設
け、また主ローラーと陽極との間に放電を起こさせる電
力を主ローラーに印加する電源を設け、プラスチックフ
ィルム素材上に緻密なダイヤモンド状炭素膜を50Å〜
1000Åの範囲の厚さに形成するように構成したこと
を特徴としている。
【0010】本発明による装置において、主ローラーに
電力を印加する電源は100〜500kHz好ましくは
200kHzの低周波電源であり得る。代りに、主ロー
ラーに電力を印加する電源は13.56MHzの高周波
電源であり得る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明
の実施の形態について説明する。図1には本発明を実施
しているマグネトロンプラズマCVD巻取り蒸着装置の
一実施の形態を示している。図1において、1は排気系
(図示していない)に接続される排気口1aを備えた真
空チャンバー、2はプラスチックフィルム素材、3は送
出しローラー、4は中間ローラー、5はエキスパンドロ
ーラー、6は主ローラー、7はエキスパンドローラー、
8は中間ローラー、9は巻取りローラーである。プラス
チックフィルム素材2は、送出しローラー3から、中間
ローラー4及びエキスパンドローラー5を経て、主ロー
ラー6へ移送され、主ローラー6を通った後に、エキス
パンドローラー7及び中間ローラー8を経て、巻取りロ
ーラー9に巻かれるように走行する。
【0012】主ローラー6の内部には、磁石10が多数
対で磁性体ヨーク11上に配置、固定されている。これ
らの磁性体ヨーク11及び磁石10は、主ローラー6が
回転しても、それに伴って回転しないように固定されて
保持されており、従って独立した磁気回路を形成してい
る。主ローラー6には低周波又は高周波電源12が接続
され、100〜500kHz特に好ましくは200kH
zの低周波電力又は13.56MHzの高周波電力が印
加され、陰極として機能する。また、主ローラー6に対
向して陽極13が配置されており、この陽極13は複数
の導入孔を備え、プラスチックフィルム素材2の表面に
原料ガス導入口14を経て原料ガスの炭化水素ガスを導
入する。これにより、高周波放電が維持され、そして磁
石10により、主ローラー6の外部の磁束が存在する所
でマグネトロン放電が起こる。なお,図1において15
はプラスチックフィルム素材の表面を洗浄するためのボ
ンバード室である。
【0013】また、図1の装置において送出しローラー
3、中間ローラー4、8、エキスパンドローラー5、7
及び巻取りローラー9は真空チャンバー1とは電気的に
絶縁されている。図1の装置の主ローラー6すなわち陰
極の背後に磁石10を配置することにより、マグネトロ
ン放電が生じ、これによりプラズマが増強されてDLC
膜の原料となる反応炭化水素ガスの放電分解が強めら
れ、DLC膜の形成速度が著しく大きくなる。
【0014】反応ガスとしての炭化水素ガスの原料とし
ては、飽和炭化水素である直鎖のパラフィン炭化水素、
例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタ
ン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ナノン、デカン、
ウンデカン、ドデカン及びエイコサン等、不飽和炭化水
素、例えば、エチレン、プロピレン、アセチレン及びメ
チルアセチレン等、ならびに、芳香族炭化水素、例え
ば、ベンゼン、トルエン及びナフタレン等が使用され得
る。好ましくは、メタン、エチレン、アセチレン、ベン
ゼン等から選ばれた炭化水素からのガスが使用され得
る。
【0015】DLC膜の改善のために、反応ガスに加え
て、水素、窒素、酸素、アルゴン等のガスを単独に、又
は、これらのガスを混合して、原料ガス導入口を経て又
は別の経路から、同時に導入してもよい。
【0016】また、主ローラーすなわち陰極の背後に配
置する磁石は、永久磁石であっても、電磁石であっても
よい。
【0017】以下、図1に示すマグネトロンプラズマC
VD巻取り蒸着装置を用いて本発明の方法に従ってDL
C膜を形成する実施例について説明する。
【実施例1】主ローラー6の内部に、主ローラー6とは
独立した磁気回路により主ローラー6の近傍に磁場を掛
け、また低周波電源12から主ローラー6に200kM
zの低周波電力を印加して放電を起させ、それにより炭
化水素を分解してプラスチックフィルム素材2上にDL
C膜を形成させた。この場合、プラスチックフィルム素
材2としては厚さ12μmのPETフィルムを用い、放
電用Cガスの圧力は6.7Paにし、印加電力は
0.8kWとし、形成するDLC膜の厚さはフィルム走
行速度と変化させて約30、50、80、100、20
0、400、600、800、1000Åにした。
【0018】こうしてDLC膜を形成した後のPET基
板の酸素透過率を、モコン社製酸素透過率測定装置を用
いて、温度20℃、80%RHの条件で測定した。得ら
れた結果としてのDLC膜厚と酸素透過率との関係を図
2に示す。DLC膜を生成していないPET基板は13
7cm/m・day・atmであるのに対して、D
LC膜を形成したものでは、厚さ30Åで1.1cm
/m・day・atm、厚さ50Åで0.5cm
・day・atm、厚さ80Å以上1000Å以下
で0.3〜0.4cm/m・day・atmであっ
た。
【0019】このように厚さ50Å以上のDLC膜では
0.5cm/m・day・atm以下であり、従来
のSiOx膜やAl膜のものに比べ1/3以下の
小さな値である。なお1000Åより厚いDLC膜で
は、後工程等でストレスが加えられ、緻密で固いDLC
膜にクラックが発生してバリヤー性が劣化する可能性が
あり、またDLC膜は膜厚が増大するほど光線透過率が
減少してくること、及び膜ガ厚くなればなるほど生産効
率が悪くなることから、高性能透明ガスバリヤー膜とし
ての膜厚は50〜1000Åが適切である。
【0020】
【実施例2】実施例1と同様に図1の装置を用い、走行
基板としては厚さ25μmの二軸延伸ポリプロピレン
(OPP)を用い、その他の条件は実施例1と全く同じ
にしてDLC膜を生成した。この場合の酸素透過率は厚
さ約30ÅのDLC膜では1.2cm/m・day
・atmであり、膜厚約50、100、600、100
0Åの場合には酸素透過率は0.4〜0.5cm/m
・day・atmであり、良好なバリヤー性が得られ
た。
【0021】
【実施例3】(3)実施例1と同様に、図1のマグネト
ロンプラズマCVD方式であるが、印加電力の周波数を
13.56MHzの高周波にしてDLC膜を形成した。
圧力、印加電力は実施例1と同じである。1
3.56MHzの場合は200kHzの場合よりも若干
成膜速度が増大するので、PETフィルムの走行速度を
調節して膜厚を制御した。酸素透過率は膜厚約30Åで
1.0cm/m・day・atmであった。膜厚約
50、100、600、1000Åでは酸素透過率は
0.3〜0.5cm/m・day・atmであり、
高性能なバリヤー特性が得られた。
【0022】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明の方法
によれば、排気系を有する真空チャンバー内でプラスチ
ックフィルム素材を移送させる主ローラーに電力を印加
して主ローラーと陽極との間に放電を起こさせ、主ロー
ラー上を移送されるプラスチックフィルム素材の表面近
傍に磁場を掛け、それにより原料ガスの炭化水素ガスを
分解して、プラスチックフィルム素材上に緻密なダイヤ
モンド状炭素膜を50Å〜1000Åの範囲の厚さに形
成することから成っているので、形成された透明ガスバ
リヤー膜は従来から使用されているSiOx膜やAl
膜によるバリヤー膜に比べ酸素透過率で1/3以下
の低い値にできる。水蒸気透湿度についても同様に、1
/3以下にでき、優れたガスバリヤー特性を得ることが
できるようになる。従って、本発明の方法により透明ガ
スバリヤー膜を形成したプラスチックフィルム素材を用
いて食品、飲料、衛生品、医療用分野で利用される容器
を製作することによって、従来品に比べ3倍以上の長期
保存が可能となり得る。
【0023】また、本発明の装置によれば、排気系を備
えた真空チャンバー内にプラスチックフィルム素材を移
送するための主ローラー及び陽極を対向させて設け、主
ローラーの内部には真空チャンバー内のプラズマを増強
するための磁場を主ローラーの近傍に発生する独立して
磁気回路を設け、また主ローラーと陽極との間に放電を
起こさせる電力を主ローラーに印加する電源を設け、プ
ラスチックフィルム素材上に緻密なダイヤモンド状炭素
膜を50Å〜1000Åの範囲の厚さに形成するように
構成しているので、優れたガスバリヤー特性をもつ透明
ガスバリヤー膜を形成したプラスチックフィルム素材を
生産規模で作ることができるようになり、その結果、食
品、飲料、衛生品、医療用分野で利用される高いガスバ
リヤー性を必要とする容器を実用化規模で製造すること
ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるDLC膜の製造装
置の原理図。
【図2】図1に示す装置を用いて形成したDLC膜にお
ける膜厚と酸素透過率との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1:真空チャンバー 2:プラスチックフィルム 3:送出しローラー 4:中間ローラー 5:エキスパンドローラー 6:主ローラー 7:エキスパンドローラー 8:中間ローラー 9:巻取りローラー 10:磁石 11:磁性体ヨーク 12:低周波又は高周波電源 13:陽極 14:ガス導入口 15:ボンバード室
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 日比野 直樹 神奈川県茅ヶ崎市萩園2500番地 株式会社 アルバック内 Fターム(参考) 4K030 AA09 BA28 CA07 CA12 FA03 JA18 KA15 KA34 LA01 LA11

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】巻取り式蒸着装置を用いて各種物質の保存
    に用いられる容器としてのプラスチックフィルム素材上
    にガスバリヤー膜としてダイヤモンド状炭素膜を形成す
    る方法において、排気系を備えた真空チャンバー内でプ
    ラスチックフィルム素材を移送させる主ローラーに電力
    を印加して主ローラーと陽極との間に放電を起こさせ、
    主ローラー上を移送されるプラスチックフィルム素材の
    表面近傍に磁場を掛け、それにより原料ガスの炭化水素
    ガスを分解して、プラスチックフィルム素材上に緻密な
    ダイヤモンド状炭素膜を50Å〜1000Åの範囲の厚
    さに形成することを特徴とするガスバリヤー膜の製造方
    法。
  2. 【請求項2】主ローラーに印加する電力が100〜50
    0kHzの低周波電力である請求項1に記載のガスバリ
    ヤー膜の製造方法。
  3. 【請求項3】主ローラーに印加する電力が13.56M
    Hzの高周波電力である請求項1に記載のガスバリヤー
    膜の製造方法。
  4. 【請求項4】上記磁場が、主ローラーの内部に別個に配
    列した永久磁石又は電磁石により発生され、真空チャン
    バー内のプラズマを増強するようにした請求項1記載の
    ガスバリヤー膜の製造方法。
  5. 【請求項5】各種物質の保存に用いられる容器としての
    プラスチックフィルム素材上にガスバリヤー膜としてダ
    イヤモンド状炭素膜を形成する装置において、 排気系を備えた真空チャンバー内にプラスチックフィル
    ム素材を移送するための主ローラー及び陽極を対向させ
    て設け、主ローラーの内部には真空チャンバー内のプラ
    ズマを増強するための磁場を主ローラーの近傍に発生す
    る独立して磁気回路を設け、また主ローラーと陽極との
    間に放電を起こさせる電力を主ローラーに印加する電源
    を設け、プラスチックフィルム素材上に緻密なダイヤモ
    ンド状炭素膜を50Å〜1000Åの範囲の厚さに形成
    するように構成したことを特徴とするガスバリヤー膜の
    製造装置。
  6. 【請求項6】主ローラーに電力を印加する電源が100
    〜500kHzの低周波電源である請求項5に記載のガ
    スバリヤー膜の製造装置。
  7. 【請求項7】主ローラーに電力を印加する電源が13.
    56MHzの高周波電源である請求項5に記載のガスバ
    リヤー膜の製造装置。
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