JP2003088167A - 永久磁石同期電動機の位置決め方法 - Google Patents

永久磁石同期電動機の位置決め方法

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JP2003088167A JP2001319989A JP2001319989A JP2003088167A JP 2003088167 A JP2003088167 A JP 2003088167A JP 2001319989 A JP2001319989 A JP 2001319989A JP 2001319989 A JP2001319989 A JP 2001319989A JP 2003088167 A JP2003088167 A JP 2003088167A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、永久磁石同期電動機の位置決め方
法であって、特に、位置・速度検出器を使用しない速度
制御との間で制御モード切換えを伴う制御系に活用でき
る位置決め方法を提供するものである。いわゆるセンサ
レスながら、実効1000(p/r)位置検出器を利用
した場合と同等性能の位置決め方法を提供するものであ
る。 【解決手段】 位置決めモード突入条件を満足すると、
SW1及びSW2をS側からP側へ切換え、速度制御モ
ードから位置決めモードへ入る。位置決めモードでは、
固定座標系上で評価した電流指令ベクトルを位置指令の
余弦値、正弦値に比例した形で発生して電流制御を行
い、ひいては電動機へ印加すべき電圧ベクトルを該位置
指令の余弦値、正弦値に比例した形で発生する。該電圧
ベクトルの印加により電動機元来の電磁的特性を作用さ
せ、課題解決の効果を得ている。所要電圧の発生・印加
は、速度制御時に使用したベクトル制御装置3〜8を活
用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、永久磁石同期電動
機の位置決め方法であって、特に、位置・速度検出器を
使用しない速度制御との間で制御モード切換えを伴う制
御系に活用できる位置決め方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】速度制御、位置決め等のモードの異なっ
た制御を動作領域に応じて切換え利用するモード切換え
形制御は、広範な動作領域で制御性能を追求するメカト
ロ機器において、広く採用されている。スピンドルの先
端に装着する工具の自動着脱が不可欠な自動工作機械は
この好例であり、電動機の駆動制御においては、速度制
御を主眼としながらも、停止を含む低速領域では位置決
めへの切換え制御が行われている。この場合の位置決め
には、回転子位置を検出する位置検出器が基本的に必要
であり、一般に、高速の速度制御にも利用し得る粗い分
解能の回転子位置検出器(エンコーダ等)が回転子に装
着・利用されている。
【0003】図10は、スピンドル駆動制御を例に、最
近利用が増えている、永久磁石同期電動機に回転子位置
検出器を装着しベクトル制御方法を適用した例を、制御
方法を装置化し全体構成を概略的にブロック図で示した
ものである。1は永久磁石同期電動機を、2は回転子位
置検出器を、3は電力変換器を、4は電流検出器を、5
a、5bは夫々3相2相変換器、2相3相変換器を、6
a、6bは共にベクトル回転器を、7は余弦正弦信号発
生器を、8は電流制御器を、9は速度制御器を、10は
速度検出器を、11は位置制御器を示している。このと
きの速度制御と位置決めとは、モード切換え形となって
いる。なお、本図では、簡明性を確保すべく、本発明と
関係の深い2行1列(以下、2x1と略記)のベクトル
信号を1本の太い信号線で表現している。以下のブロッ
ク図表現もこれを踏襲する。
【0004】本制御系は、モード切換えスイッチSW1
をS側(速度制御側)オン、P側(位置決め側)オフと
することにより、速度制御モード(以下、Sモードと略
記)に入る。Sモード時には、速度指令が速度制御系に
直接印加され、制御系は位置制御器の影響を一切受けな
い。速度制御器は、速度指令と応答速度の偏差に従がい
速度を制御する。このときの回転子速度情報としては、
通常、エンコーダ等の回転子位置検出器による位置信号
を速度検出器により差分(近似微分)処理して得たもの
が使用されている。
【0005】位置決めを行う場合には、ゼロ速近傍でモ
ード切換えスイッチSW1をP側オン、S側オフにし、
位置決めモード(以下、Pモードと略記)に入る。位置
制御器は、回転子位置指令θと応答位置θとの偏差Δ
θ=θ−θに従がい、位置θを制御する。位置決め系
が安定な場合には、回転子位置検出器による位置検出精
度、系のサーボ剛性等に応じ、位置偏差Δθを小さく保
持できる。
【0006】ベクトル制御による従来の駆動制御法にお
いては、図1において既に明示しているように、Sモー
ド、Pモードのいずれにおいても、d軸電流を非正に制
御すべく、同指令 である。
【0007】なお、一般に、スピンドルのように高速回
転時の性能を重視する用途の永久磁石同期電動機として
は1極対数(2極)のものが、これに装着されるエンコ
ーダ等の回転子位置検出器としては数百〜千(p/r)
程度の粗い分解能のものが採用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】永久磁石同期電動機の
ための従来の駆動制御法を活用するには、上記代表例で
説明したように、回転子位置を検出するための回転子位
置検出器が必要不可欠である。しかし、エンコーダ等の
回転子位置検出器の回転子装着は、以下のような課題を
不可避的に発生してきた。
【0009】第1課題が、電動機システムの信頼性の低
下である。エンコーダ等の回転子位置検出器は、電動機
本体と比較するならば、その機械的頑健性は著しく低
い。すなわち、回転子位置検出器の装着により、電動機
システムとしての機械的信頼性を著しく低下させてい
る。回転子位置検出器の装着に起因する電動機システム
の頑健性低下は、機械的側面のみならず、回転子位置検
出器信号への電源ノイズの混入に見られる電気的側面、
更には回転子発熱に遠因する回転子位置検出器の温度上
昇に見られる熱的側面においても同様に発生している。
このように、エンコーダ等の回転子位置検出器を電動機
回転子に装着することにより、電動機システムの信頼性
を甚だしく低下させてきた。
【0010】第2課題が、電動機スペースの増大であ
る。電動機単体での容積にも依存するが、回転子位置検
出器を回転子に装着することにより、電動機の軸方向へ
の容積が数パーセントから数十パーセント増大する。
【0011】第3課題が、回転子位置検出器動作用の電
源線、検出信号を受けるための信号線の配線と配線のた
めのスペースの確保である。当然のことながら、回転子
位置検出器を動作させ、これから回転子の位置情報を得
るには、このための配線が必要である。しかも、信号線
と言えども、上述の機械的・電気的・熱的信頼性の低下
を極力回避すべく、電動機本体を駆動するための電力線
並みに頑健につくることが一般に要求される。結果的に
は、電動機1機につき本来の電力線とほぼ同等なサイズ
の信号線の配線、更にはこのためのスペースが必要とな
る。
【0012】第4課題が、各種コストの増大である。小
形電動機においては、製造時において既に回転子位置検
出器のコストが電動機本体より高くなることさえある。
回転子位置検出器に付随した配線のコストも、小形電動
機では無視できない。更には、信頼性の低下に対応する
ための保守コストの増大も必然的に発生する。こうした
各種コストは、電動機の使用個数に応じ、増大する。特
に保守コストは個数に応じて指数的に増大する特性をも
つ。
【0013】一層の高速化が求められている位置決め機
能付きスピンドル系等においては、第1課題における機
械的信頼性が特に問題となっている。高速化に応じ、よ
り頑健な粗い分解能の回転子位置検出器を採用してはい
るが、検出系の総合的信頼性確保のため、高速化を制限
せざるを得ないのが実状である。第1課題を含む上記4
課題は回転子位置検出器に直接あるいは間接的に起因し
たものである。したがって、回転子位置検出器を必要と
しない所謂センサレス制御方法が確立されれば、必然的
に解決される。センサレスベクトル制御方法に関して
は、トルク制御モード、Sモードで利用可能な種々の方
法が近年確立されつつある。ごく最近の成果としては、
次の文献(1) (1)S.Shinnaka:“Frequency−
Hybrid Vector Control wit
h Monotonously−Increasing
−Region Strategy for Sens
orless Synchronous Motor
Drive”,Trans.of IEEJapan,
120−D,11,pp.1369−1375(200
0)及び平成13年電気学会産業応用部門大会講演論文
集(講演期間:平成13年8月22日〜24日)、第3
巻、R14電動機制御2(PM電動機センサレス)に報
告された10件がある。しかし残念ながら、これらを含
む従来のセンサレスベクトル制御方法はPモードの利用
を想定しおらず、これに使用できるものではない。
【0014】本発明は上記背景の下になされたものであ
り、その目的は、永久磁石同期電動機のためのエンコー
ダ等の回転子位置検出器を必要としない位置決め方法
を、特に、位置・速度検出器を使用しない速度制御との
間で制御モード切換えを伴う制御系に活用できる位置決
め方法を新規に提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1の発明による位置決め方法は、回転子位置
決めのために永久磁石同期電動機へ印加すべき固定子電
圧を、2軸直交固定座標系上の電圧ベクトルとして捕ら
え、該電圧ベクトルの2成分を、回転子位置指令の余弦
値、正弦値に比例させて発生することを特徴とする。
【0016】請求項2の発明は、請求項1記載の永久磁
石同期電動機の位置決め方法であって、該電圧ベクトル
の発生・印加を担う電力変換器への電圧指令ベクトルの
2成分を、該回転子位置指令の余弦値、正弦値に比例さ
せることを特徴とする。
【0017】請求項3の発明は、請求項1記載の永久磁
石同期電動機の位置決め方法であって、該電圧ベクトル
を発生・印加するためのフィードバック電流制御系を構
成し、該電流制御系の該座標系上での電流指令ベクトル
の2成分を、該回転子位置指令の余弦値、正弦値に比例
させることを特徴とする。
【0018】請求項4の発明は、請求項1、請求項2及
び請求項3記載の永久磁石同期電動機の位置決め方法で
あって、該電圧ベクトルの発生・印加すべき時期を、回
転子速度の推定値が予め定めた値内に収まること、回転
子位置と該回転子位置指令との偏差の推定値が予め定め
た値内に収まることの少なくともいずれか1つを条件と
して、決定することを特徴とする。
【0019】次に本発明の作用について説明する。ここ
で考える永久磁石同期電動機としては、図10において
従来制御方法の説明に際し利用した1極対数の電動機と
する。図1に示したように、u、v、w相の固定子巻線
(+側)の中心を各相軸とする場合、基軸α軸(+側)
をu相軸(+側)に、これと直交するβ軸(+側)を副
軸(+側)に選定した2軸直交固定座標系を考える。本
座標系では、基軸から副軸の方向を正方向とする。ま
た、回転子永久磁石のN極が、ある瞬時、基軸に対しそ
の中心を角度θをもって位置しているものとし、この位
置θを回転子位置とする。上記の定義は、電動機の駆動
制御に関し従来より広く採用されているものである。な
お、以降で定義する2成分からなる2x1ベクトル信号
は、特に断らない限り本座標系上で定義されているもの
とする。
【0020】電動機固定子に鎖交する磁束φ(2x1
ベクトル)は、空隙磁束分布が正弦波的であるとする場
合には、2x2鏡行列Q(θ)1個を用い(1)〜
(6)式のようにモデル化することができる。<同期電
動機の磁束数学モデル>
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】 ここに、記号sは微分演算子を、iは固定子の電流ベ
クトル(2x1ベクトル)を、Φは回転子永久磁石によ
る磁束強度を、ω2mは回転子の角速度を示している。
また、インダクタンスL,Lは、いわゆるdqイン
ダクタンスL,Lと(6)式の関係を有している。
【数6】
【0021】永久磁石同期電動機の電気磁気的動特性
は、状態量のダイナミックスを記述した回路方程式、ト
ルク発生の関係を記述したトルク発生式、エネギー伝達
の関係を記述したエネギー伝達式の、整合性のとれた3
基本式により表現することができる。これは、上の磁束
モデルを考慮すると、次の(7)〜(8)式で与えられ
る。 <同期電動機(電磁系)の数学モデル>回路方程式(第
1基本式)
【数7】 トルク発生式(第2基本式)
【数8】 エネルギー伝達式(第3基本式)
【数9】 ここに、νは電動機に印加された固定子の電圧ベクト
ル(2x1ベクトル)、Rは固定子抵抗、τは回転子
発生トルク、Jは次の交代行列である。
【数10】
【0022】減速・停止あるいは加速の動作に入った永
久磁石同期電動機の機械的ダイナミックス(以下、機械
的観点からの本系を機械系と略記)は、主たる抗力を摩
擦力とした次の1次式でモデル化することができる。 <同期電動機(機械系)の数学モデル>
【数11】 ここに、J,F,Dは、電動機内発生のトルクτによ
り駆動される機械系の慣性モーメント、トルクに抗する
クーロン摩擦及び粘性摩擦係数である。
【0023】請求項1による本発明は、上記数学モデル
を用いて明示した電動機自体の特性を活用したものであ
り、回転子を静止させたい位置(すなわち、位置決めに
おける回転子位置指令)をθとし、この余弦値、正弦
値からなる2x1単位ベクトルu(・)を(12)式の
ように定義すると、
【数12】 Pモードにおいて電圧ベクトルνを回転子位置指令θ
を用い以下のように制御しようとするものである。
【数13】
【0024】回転子が停止あるいはこれに準ずる低速で
回転している状態では、次の関係が成立するので、
【数14】 第1基本式より次式が成立する。
【数15】 (13)、(15)式は、実質的に次式を意味する。
【数16】 固定子の電流ベクトルiが(16)式の状態にある場
合には、数学モデル第2基本式たるトルク発生式より、
次の関係が成立する。
【数17】 ここに、Δθは次式で定義された位置偏差である。
【数18】
【0025】(17)式により表現されたトルク発生特
性を、参考までに、以下の条件下で図2に示す。
【数19】
【0026】(17)式及び図2より理解されるよう
に、位置偏差と発生トルクの間には、一般に以下の関係
が成立する。
【数20】 (20)式の関係は、従来の回転子位置検出器を用いた
位置決め系の関係と基本的に同一であり(図10参
照)、位置θにある回転子を回転子位置指令θへ向か
わせるようにトルクτが発生することを意味する。
【0027】この回転子を指令位置の近傍に保持できる
か否かは、サーボ剛性に大きく依存する。本発明による
位置決め系は、次のサーボ剛性Kを有する。
【数21】 (21)式により表現されたサーボ剛性特性を、(1
9)式の条件で、図3に示す。同図は、上より順次Rφ
=0,−0.05,−0.1,−0.13の特性を示し
ている。これより、次の(22)式の範囲においては、
位置偏差ゼロΔθ=0点で単峰をもつサーボ剛性が得ら
れることが分かる。
【数22】 単峰特性のサーボ剛性は、本発明の位置決め法によれ
ば、回転子を指令位置近傍に保持できる、ひいては所期
の位置決めが可能であることを意味している。
【0028】応用に即した所望の剛性を確保するには、
(21)式が示すように電流レベルを、ひいては(1
5)、(16)式が示すように電圧レベルを調整すれば
よい。以上の説明より既に明白なように、請求項1の発
明によれば、電動機元来の電磁的特性により、位置検出
器を用いることなく、いわゆるセンサレスで、回転子位
置決めを行うことができると言う作用が得られる。
【0029】次に本発明の請求項2の作用について説明
する。請求項2の発明は、Pモード時の回転子位置指令
θに応じた電圧ベクトルνの発生・印加は、(1
3)式に イードフォワード的に印加することを求めるものであ
る。
【数23】 電力変換器が指令通りの電圧を発生し得る場合には、
(23)式により、(13)式に示したPモード所要の
電圧の発生・印加が問題なく実現できる。すなわち、請
求項2の発明によれば、適切な電力変換器を通じて、請
求項1の作用に関して説明した回転子位置決め所要の電
圧を平易に発生・印加できると言う作用が得られる。
【0030】次に本発明の請求項3の作用について説明
する。請求項3の発明は、Pモード時の回転子位置指令
θに応じた電圧ベクトルνの発生・印加のためのフ
ィード 以下のように生成しようとするものである。
【数24】 力変換器が必ずしも指令通りの電圧を発生し得ない状況
においても、フィードバック電流制御系の作用により、
Pモードのための(16)式の電流関係、(13)式の
電圧関係が確保される。以上の説明より既に明白なよう
に、請求項3の発明によれば、電力変換器が必ずしも理
想的な応答をしない場合にも、請求項1の作用に関して
説明した回転子位置決め所要の電圧を発生・印加できる
と言う作用が得られる。
【0031】次に本発明の請求項4の作用について説明
する。請求項4の発明は、減速時のSモード等のPモー
ド以外のモードからPモードへの切換えタイミングを指
定するルールを示したものである。SモードからPモー
ドへ切換えの例を用いてその作用を説明する。本発明の
切換え条件を具体化した次式を考える。
【数25】 る位置偏差の推定値である。すなわち、
【数26】 また、ωsp,Δθspは設計者に選定が委ねられた設
計パラメータである。
【0032】(25a)式を満足している状態では、ω
spを適切に小さく選定してしておけば、十分に減速し
た状態でPモードへ入ることができ、本モードでは迅速
な位置整定が可能となる。一方で、(25b)式におけ
る設計パメータΔθspをπ/2以下に選定する場合に
は、図2に示した位置決めトルク発生の線形性の高い領
域を、また、図3に示したサーボ剛性の高い領域を、P
モード切換え直後から利用することになり、振動の少な
い整定特性が期待できる。以上の説明より既に明白なよ
うに、請求項4の発明によれば、Pモードでは、迅速
な、振動の少ない位置整定が可能となると言う作用が得
られ、ひいては請求項1、請求項2及び請求項3による
作用の有用性を更に高めることができるようになる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本発明の実
施形態を詳細に説明する。本発明の位置決め法の実施形
態例として、これを活用したPモード時の位置決め系の
基本構造を図4に示す。図10を用いて説明した従来の
位置決め法による構造に対する、本構造の基本的な違い
は、回転子位置検出器2が撤去され、更にはこれを利用
したフィードバック位置決めループが存在しない点にあ
る。同一機器番号を付してある機器に関しては、基本的
には図10に示した従来制御法に基づくものと同一であ
り、その動作原理も従来法と同一である。Pモード時の
構成であるので、速度制御関連の機器は明示していな
い。新たに追加した機器は、余弦正弦信号発生器12で
ある。これは余弦正弦信号発生器7と同一のものであ
る。
【0034】図4の実施形態例では、Pモードのための
フィードバック電流制御系の構成に際し、位置決め系の
構成自由度を確保すべく、回転子位置指令θを次のよ
うに2種の回転子位
【数27】 本実施形態例で示した構造の妥当性は以下のように説明
される。(27)式を電流指令
【数28】 ただし、
【数29】
【数30】 分して与えることができることが明らかである。図4の
構造は、(28)式の関係を具体化したものである。
【0035】当然のことながら、回転子位置指令θ
次の(31)、(32)式のように指定よい。
【数31】
【数32】
【0036】反対に、回転子位置指令θを次の(3
3)〜(36)式のように指定よい。
【数33】
【数34】 ただし、
【数35】
【数36】
【0037】次に、本発明の効果ひいては有用性を確認
すべく遂行した実験の1例を示す。供試電動機は、高速
回転用の多摩川精機(株)製310(W)、1極対数、
円筒形同期電動機(TS4201)である。本電動機の
特性概要を表1に示す。
【表1】
【0038】本電動機には分解能256(p/r)のエ
ンコーダが装着されているが、制御にはもちろん使用し
ていない。これは、計測システム側でエンコーダパルス
を4逓倍した後、回転子位置計測に利用した。従って、
計測精度は、2π/1024=0.00613(rad
/p)、0.352(degree/p)である。供試
電動機回転子には被回転物の慣性モーメント代用として
円盤を装着した。
【0039】1)<定常特性1(サーボ剛性と繰返し精
密度)> 本発明の請求項1、請求項2及び請求項3の作用に関連
して説明したサーボ剛性特性を実験的に確認すべく、図
4の制御系を構成した上で、回転子位置指令 で変化させ、応答の繰返し精密度を調べた。L=0の
本供試機においては、サーボ剛性は(21)式が示すよ
うに固定子の電流ベクトルの大きさ‖i‖に比例す
る。 に比例する。繰返し精密度は位置偏差Δθの分散σで評
価した。
【0040】 り、位置偏差分散は検出精度内(1パルス相当の変動)
にほぼ収斂していることが確認される。これは、同一位
置に整定する繰返し精密度は測定可能な0.006(r
ad)=0.4(degree)=1パルス以内に実質
的に収まっていることを、ひいては所要のサーボ剛性が
得られていることを意味している。なお、表1に示した
ように、本電動機の定格電流は4.1(A,rms)で
ある。これは、3相2相変換後の等価電流では、7.1
(A、DC)に相当する。
【0041】2)<定常特性2(機器依存性と正確度)
> 本発明の請求項3の作用に関連して説明した3相電力発
生を担う電力変換器の特性不均一性、電動機自体の機械
的不均一性など、電動機の数学モデル上で考慮されてい
ない諸要素による位置決めへの影響とその抑圧性、特に
正確度への影響 +70(degree)の間で変化させ、応答位置θを
調べた。正確度は、回転子位置指令θ
【0042】u相 巻線(+)中心(0(rad)=0
(degree))及びv相巻線(−)中心(−1.
05(rad)=−60(degree))では、偏差
平均はほぼゼロであったが、w相巻線(−)中心近傍
(1.05(rad)=60(degree))では、
最大約−0.024(rad)=(−1.4(degr
ee))を確認した。これは、電動機巻線位置の正確度
に主に起因した電動機固有のものと思われる。この空間
領域(停止すべき位置領域)では図5に示した繰返し精
密度を確保できるので、必要ならば、補正特性を事前に
用意することにより補正を行うことができる。
【0043】本偏差平均特性で特色的な点は、θ=±
0.52(rad)(±30(degree))前後で
の極性反転である。この空間領域は、巻線位置に基づく
v軸、w軸に直交する領域に当たる(後説明の図7参
照)。本領域は、3相電圧発生のための電力変換器スイ
チングパタンが不連続に変化する特異領域でもある。3
相電流の視点から見るならば、電流の極性が変化する特
異領域でもある。偏差平均の極性反転はこの特異領域で
発生している。
【0044】図6では全空間領域の約1/3を表示した
が、他の空間領域でも同様な特性が確認されている。す
なわち、電力変換器スイチングの影響を受けやすい特異
領域は、実験的には、次の角度±0.52,±1.5
7,±2.62(rad)(±30,±90,±150
(degree))前後の概ね±0.05(rad)=
±3(degree)であった。図7にこの特異領域を
示した。電力変換器特性の影響を受けやすい全空間領域
の約10%に当たる本領域は、位置決め位置としては利
用しない方がよい。この制限空間領域は幸いにも全空間
領域のわずか10%であるので位置決め位置の選定には
実際的な影響を与えないこと、更には、90%は安定的
に繰返し精密度が確保できること、ひいては全般的には
請求項3による本発明の効果は大であることを指摘して
おく。
【0045】図8は、本発明の第2実施形態例のための
制御系の構成図である。本実施形態例は、PモードとS
モードのモード切換え制御を行う実施形態例となってい
る。本例では、Pモード時の位置決め系の構成として
は、回転子位置指令θ
【0046】図8では、Sモードのために、位置・速度
検出器を用いないセンサレスベクトル制御法による速度
制御系も合わせて構成している。センサレスベクトル制
御法による速度制御系の構成法としては、従来より種々
の方法が提案されており、ここではその1つである文献
(1)のものを活用した。図8における電源角周波数生
成器13がこのための機器である。電源角周波数生成器
13は、電圧、電流情報を得てこれから所要の電源角周
波数を生成し出力している。極対数1同期電動機を対象
した本例では、電源角周波数は に通して得ている。
【0047】図8では、Sモードでは切替SW1、2は
共にS側がオン、P側がオフであり、Pモードの影響を
受けないようになっている。一方、PモードではSW
1、2は共にS側がオフ、P側がオンであり、Sモード
の影響を受けないようになってい このd軸電流指令の極性は、図10に示した従来法と真
反対である点を指摘しておく。
【0048】3)<過渡特性> 本発明の請求項4の作用に関連して説明したモード切換
えの特性を確認すべく行った実験結果の1例を示す。実
験には、前述の供試電動機に対し図8の制御系を構成
し、速度指令、回転子位置指令として各々以下を用意し
た。
【数37】
【数38】 SモードからPモードへの切換え時期を決定する(25
a)、(25b)式は併用して活用するものとし、この
ための設計パラメータは、次のように選定した。
【数39】
【数40】 (25a)式のための速度推定値としては、電源角周波
数発生器13の出力信号を活用することも可能である
が、これと同等の速度指令を活用した。位置偏差の 必要である。これは、既に説明したように、積分器14
の出力信号として利用可能である。また、Pモード時の
d軸電流指令は、定格電流の約25%である次式とし
た。すなわち、
【数41】 なお、PモードからSモードのモード切換えは、本実験
に関しては次式を条件とした。
【数42】
【0049】図9に典型的な応答例を示す。図中にタイ
ムスケール0.2(s)を明示した。同図の上部は、速
度指令と同応答(位相が進んでいる方が指令)、下部は
速度応答に対応した位置応答を示している。高速回転時
の位置応答は、一見±π(rad)に到達しないで折り
返しているように見えるが、これは単なる表示上の問題
に過ぎない。すなわち、離散時間的なサンプリングを活
用した表示における、サンプリング周波数以上の急激な
位置変動によるものである。同一方向への位置変化は、
対応の速度応答より明らかである。
【0050】同図では、SモードからPモードへ切換わ
った点をP点で、また、PモードからSモードへ切換わ
った点をS点で表示している。図より明らかなように、
P点直後で回転子は指令位置θ=0へ向けて加速さ
れ、指令位置を通過後すなわちオーバーシュートを起し
た後、振動を起すことなく指令位置へ一気に整定してい
る。減速の速度指令に依存しないP点直後の加速は、P
モードに入り電流制御系が速度指令と何らの関係ない電
流指令を受けたことによる。応答は繰返し安定的に達成
されており、回転子位置検出器を利用した応答に匹敵す
る良好なものである。ひいては、本発明の請求項4によ
る作用及び同効果の有用性を示すものである。
【0051】
【発明の効果】以上の説明より明白なように、本発明は
以下の効果を奏する。特に、請求項1の本発明によれ
ば、電動機元来の電磁的特性により、回転子位置決めを
行うことができると言う作用が得られ、この結果、回転
子位置検出器を必要としない位置決め制御系の構成が可
能となると言う効果が得られる。ひいては、回転子位置
検出器に付随して発生した種々の課題を解決できるとい
う効果が得られる。
【0052】請求項2の本発明によれば、適切な電力変
換器を通じて、回転子位置決め所要の電圧を平易に発生
・印加できると言う作用が得られ、この結果、請求項1
の効果を平易に達成できると言う効果が得られる。
【0053】請求項3の本発明によれば、電力変換器が
必ずしも理想的な応答をしない場合にも、回転子位置決
め所要の電圧を発生・印加できると言う作用が得られ、
この結果、請求項1の効果を通常の電力変換器を通じて
達成できると言う効果が得られる。
【0054】Pモード以外のモードからPモードへの切
換えタイミングを指定するルールを示した請求項4の本
発明によれば、Pモードでは、迅速な、振動の少ない位
置整定が可能となると言う作用が得られ、この結果、請
求項1、請求項2及び請求項3による効果を一層有用な
ものとすることができると言う効果が得られる。
【0055】以上述べた本発明による効果は、実施形態
例に関連して既に説明したように、実験的に確認されて
いる。
【0056】
【図面の簡単な説明】
【図1】3相3軸座標系と2軸直交固定座標系と回転子
位置(N極位置)との関係を示す図。
【図2】電動機自体による、位置偏差に対する発生トル
ク特性を示す図。
【図3】電動機自体によるサーボ剛性の特性を示す図。
【図4】1実施形態例における位置決め装置の基本構成
を示すブロック図。
【図5】電流指令に対する繰返し精密度の1特性例を示
す図。
【図6】位置指令に対する繰返し正確度の1特性例を示
す図。
【図7】位置指令の回避が望まれる空間領域を示す図。
【図8】Sモードとのモード切換えが可能な1実施形態
例における位置決め装置の基本構成を示すブロック図。
【図9】SモードからPモード突入時の過渡応答例を示
す図。
【図10】従来のPモード・Sモードのモード切換え形
制御装置の概略構成を示すブロック図。
【符号の説明】
1 永久磁石同期電動機 2 回転子位置検出器 3 電力変換器 4 電流検出器 5a 3相2相変換器 5b 2相3相変換器 6a ベクトル回転器 6b ベクトル回転器 7 余弦正弦信号発生器 8 電流制御器 9 速度制御器 10 速度検出器 11 位置制御器 12 余弦正弦信号発生器 13 電源角周波数発生器 14 積分器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5H560 AA07 BB12 DA12 DB12 DC12 EB01 XA02 XA04 XA05 XA08 XA13 5H576 AA17 BB06 DD02 DD07 EE01 GG01 GG02 GG04 GG07 HB01 JJ20 LL14 LL22 LL41

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】回転子位置決めのために永久磁石同期電動
    機へ印加すべき固定子電圧を、2軸直交固定座標系上の
    電圧ベクトルとして捕らえ、該電圧ベクトルの2成分
    を、回転子位置指令の余弦値、正弦値に比例させて発生
    することを特徴とする永久磁石同期電動機の位置決め方
    法。
  2. 【請求項2】該電圧ベクトルの発生・印加を担う電力変
    換器への電圧指令ベクトルの2成分を、該回転子位置指
    令の余弦値、正弦値に比例させることを特徴とする請求
    項1記載の永久磁石同期電動機の位置決め方法。
  3. 【請求項3】該電圧ベクトルを発生・印加するためのフ
    ィードバック電流制御系を構成し、該電流制御系の該座
    標系上での電流指令ベクトルの2成分を、該回転子位置
    指令の余弦値、正弦値に比例させることを特徴とする請
    求項1記載の永久磁石同期電動機の位置決め方法。
  4. 【請求項4】該電圧ベクトルの発生・印加すべき時期
    を、回転子速度の推定値が予め定めた値内に収まるこ
    と、回転子位置と該回転子位置指令との偏差の推定値が
    予め定めた値内に収まることの少なくともいずれか1つ
    を条件として、決定することを特徴とする請求項1、請
    求項2、及び請求項3記載の永久磁石同期電動機の位置
    決め方法。
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