JP4894125B2 - 永久磁石同期電動機の位置決め方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、永久磁石同期電動機の位置決め方法であって、特に、位置・速度検出器を使用しない速度制御との間で制御モード切換えを伴う制御系に活用できる位置決め方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
速度制御、位置決め等のモードの異なった制御を動作領域に応じて切換え利用するモード切換え形制御は、広範な動作領域で制御性能を追求するメカトロ機器において、広く採用されている。スピンドルの先端に装着する工具の自動着脱が不可欠な自動工作機械はこの好例であり、電動機の駆動制御においては、速度制御を主眼としながらも、停止を含む低速領域では位置決めへの切換え制御が行われている。この場合の位置決めには、回転子位置を検出する位置検出器が基本的に必要であり、一般に、高速の速度制御にも利用し得る粗い分解能の回転子位置検出器(エンコーダ等)が回転子に装着・利用されている。
【0003】
図10は、スピンドル駆動制御を例に、最近利用が増えている、永久磁石同期電動機に回転子位置検出器を装着しベクトル制御方法を適用した例を、制御方法を装置化し全体構成を概略的にブロック図で示したものである。1は永久磁石同期電動機を、2は回転子位置検出器を、3は電力変換器を、4は電流検出器を、5a、5bは夫々3相2相変換器、2相3相変換器を、6a、6bは共にベクトル回転器を、7は余弦正弦信号発生器を、8は電流制御器を、9は速度制御器を、10は速度検出器を、11は位置制御器を示している。このときの速度制御と位置決めとは、モード切換え形となっている。なお、本図では、簡明性を確保すべく、本発明と関係の深い2行1列(以下、2x1と略記)のベクトル信号を1本の太い信号線で表現している。以下のブロック図表現もこれを踏襲する。
【0004】
本制御系は、モード切換えスイッチSW1をS側(速度制御側)オン、P側(位置決め側)オフとすることにより、速度制御モード(以下、Sモードと略記)に入る。Sモード時には、速度指令が速度制御系に直接印加され、制御系は位置制御器の影響を一切受けない。速度制御器は、速度指令と応答速度の偏差に従がい速度を制御する。このときの回転子速度情報としては、通常、エンコーダ等の回転子位置検出器による位置信号を速度検出器により差分(近似微分)処理して得たものが使用されている。
【0005】
位置決めを行う場合には、ゼロ速近傍でモード切換えスイッチSW1をP側オン、S側オフにし、位置決めモード(以下、Pモードと略記)に入る。位置制御器は、回転子位置指令θと応答位置θとの偏差Δθ=θ−θに従がい、位置θを制御する。位置決め系が安定な場合には、回転子位置検出器による位置検出精度、系のサーボ剛性等に応じ、位置偏差Δθを小さく保持できる。
【0006】
ベクトル制御による従来の駆動制御法においては、図1において既に明示しているように、Sモード、Pモードのいずれにおいても、d軸電流を非正に制御すべく、同指令
Figure 0004894125
である。
【0007】
なお、一般に、スピンドルのように高速回転時の性能を重視する用途の永久磁石同期電動機としては1極対数(2極)のものが、これに装着されるエンコーダ等の回転子位置検出器としては数百〜千(p/r)程度の粗い分解能のものが採用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
永久磁石同期電動機のための従来の駆動制御法を活用するには、上記代表例で説明したように、回転子位置を検出するための回転子位置検出器が必要不可欠である。しかし、エンコーダ等の回転子位置検出器の回転子装着は、以下のような課題を不可避的に発生してきた。
【0009】
第1課題が、電動機システムの信頼性の低下である。エンコーダ等の回転子位置検出器は、電動機本体と比較するならば、その機械的頑健性は著しく低い。すなわち、回転子位置検出器の装着により、電動機システムとしての機械的信頼性を著しく低下させている。回転子位置検出器の装着に起因する電動機システムの頑健性低下は、機械的側面のみならず、回転子位置検出器信号への電源ノイズの混入に見られる電気的側面、更には回転子発熱に遠因する回転子位置検出器の温度上昇に見られる熱的側面においても同様に発生している。このように、エンコーダ等の回転子位置検出器を電動機回転子に装着することにより、電動機システムの信頼性を甚だしく低下させてきた。
【0010】
第2課題が、電動機スペースの増大である。電動機単体での容積にも依存するが、回転子位置検出器を回転子に装着することにより、電動機の軸方向への容積が数パーセントから数十パーセント増大する。
【0011】
第3課題が、回転子位置検出器動作用の電源線、検出信号を受けるための信号線の配線と配線のためのスペースの確保である。当然のことながら、回転子位置検出器を動作させ、これから回転子の位置情報を得るには、このための配線が必要である。しかも、信号線と言えども、上述の機械的・電気的・熱的信頼性の低下を極力回避すべく、電動機本体を駆動するための電力線並みに頑健につくることが一般に要求される。結果的には、電動機1機につき本来の電力線とほぼ同等なサイズの信号線の配線、更にはこのためのスペースが必要となる。
【0012】
第4課題が、各種コストの増大である。小形電動機においては、製造時において既に回転子位置検出器のコストが電動機本体より高くなることさえある。回転子位置検出器に付随した配線のコストも、小形電動機では無視できない。更には、信頼性の低下に対応するための保守コストの増大も必然的に発生する。こうした各種コストは、電動機の使用個数に応じ、増大する。特に保守コストは個数に応じて指数的に増大する特性をもつ。
【0013】
一層の高速化が求められている位置決め機能付きスピンドル系等においては、第1課題における機械的信頼性が特に問題となっている。高速化に応じ、より頑健な粗い分解能の回転子位置検出器を採用してはいるが、検出系の総合的信頼性確保のため、高速化を制限せざるを得ないのが実状である。第1課題を含む上記4課題は回転子位置検出器に直接あるいは間接的に起因したものである。したがって、回転子位置検出器を必要としない所謂センサレス制御方法が確立されれば、必然的に解決される。センサレスベクトル制御方法に関しては、トルク制御モード、Sモードで利用可能な種々の方法が近年確立されつつある。ごく最近の成果としては、次の文献(1)
(1)S.Shinnaka:“Frequency−Hybrid Vector Control with Monotonously−Increasing−Region Strategy for Sensorless Synchronous Motor Drive”,Trans.of IEEJapan,120−D,11,pp.1369−1375(2000)及び平成13年電気学会産業応用部門大会講演論文集(講演期間:平成13年8月22日〜24日)、第3巻、R14電動機制御2(PM電動機センサレス)に報告された10件がある。しかし残念ながら、これらを含む従来のセンサレスベクトル制御方法はPモードの利用を想定しおらず、これに使用できるものではない。
【0014】
本発明は上記背景の下になされたものであり、その目的は、永久磁石同期電動機のためのエンコーダ等の回転子位置検出器を必要としない位置決め方法を、特に、位置・速度検出器を使用しない速度制御との間で制御モード切換えを伴う制御系に活用できる位置決め方法を新規に提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明による位置決め方法は、回転子位置決めのために永久磁石同期電動機へ印加すべき固定子電圧を、2軸直交固定座標系上の電圧ベクトルとして捕らえ、該電圧ベクトルの2成分を、回転子位置指令の余弦値、正弦値に比例させて発生することを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1記載の永久磁石同期電動機の位置決め方法であって、該電圧ベクトルの発生・印加を担う電力変換器への電圧指令ベクトルの2成分を、該回転子位置指令の余弦値、正弦値に比例させることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1記載の永久磁石同期電動機の位置決め方法であって、該電圧ベクトルを発生・印加するためのフィードバック電流制御系を構成し、該電流制御系の該座標系上での電流指令ベクトルの2成分を、該回転子位置指令の余弦値、正弦値に比例させることを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1、請求項2及び請求項3記載の永久磁石同期電動機の位置決め方法であって、該電圧ベクトルの発生・印加すべき時期を、回転子速度の推定値が予め定めた値内に収まること、回転子位置と該回転子位置指令との偏差の推定値が予め定めた値内に収まることの少なくともいずれか1つを条件として、決定することを特徴とする。
【0019】
次に本発明の作用について説明する。ここで考える永久磁石同期電動機としては、図10において従来制御方法の説明に際し利用した1極対数の電動機とする。図1に示したように、u、v、w相の固定子巻線(+側)の中心を各相軸とする場合、基軸α軸(+側)をu相軸(+側)に、これと直交するβ軸(+側)を副軸(+側)に選定した2軸直交固定座標系を考える。本座標系では、基軸から副軸の方向を正方向とする。また、回転子永久磁石のN極が、ある瞬時、基軸に対しその中心を角度θをもって位置しているものとし、この位置θを回転子位置とする。上記の定義は、電動機の駆動制御に関し従来より広く採用されているものである。なお、以降で定義する2成分からなる2x1ベクトル信号は、特に断らない限り本座標系上で定義されているものとする。
【0020】
電動機固定子に鎖交する磁束φ(2x1ベクトル)は、空隙磁束分布が正弦波的であるとする場合には、2x2鏡行列Q(θ)1個を用い(1)〜(6)式のようにモデル化することができる。
<同期電動機の磁束数学モデル>
【数1】
Figure 0004894125
【数2】
Figure 0004894125
【数3】
Figure 0004894125
【数4】
Figure 0004894125
【数5】
Figure 0004894125
ここに、記号sは微分演算子を、iは固定子の電流ベクトル(2x1ベクトル)を、Φは回転子永久磁石による磁束強度を、ω2mは回転子の角速度を示している。
また、インダクタンスL,Lは、いわゆるdqインダクタンスL,Lと(6)式の関係を有している。
【数6】
Figure 0004894125
【0021】
永久磁石同期電動機の電気磁気的動特性は、状態量のダイナミックスを記述した回路方程式、トルク発生の関係を記述したトルク発生式、エネギー伝達の関係を記述したエネギー伝達式の、整合性のとれた3基本式により表現することができる。これは、上の磁束モデルを考慮すると、次の(7)〜(8)式で与えられる。
<同期電動機(電磁系)の数学モデル>
回路方程式(第1基本式)
【数7】
Figure 0004894125
トルク発生式(第2基本式)
【数8】
Figure 0004894125
Figure 0004894125
エネルギー伝達式(第3基本式)
【数9】
Figure 0004894125
ここに、νは電動機に印加された固定子の電圧ベクトル(2x1ベクトル)、Rは固定子抵抗、τは回転子発生トルク、Jは次の交代行列である。
【数10】
Figure 0004894125
【0022】
減速・停止あるいは加速の動作に入った永久磁石同期電動機の機械的ダイナミックス(以下、機械的観点からの本系を機械系と略記)は、主たる抗力を摩擦力とした次の1次式でモデル化することができる。
<同期電動機(機械系)の数学モデル>
【数11】
Figure 0004894125
ここに、J,F,Dは、電動機内発生のトルクτにより駆動される機械系の慣性モーメント、トルクに抗するクーロン摩擦及び粘性摩擦係数である。
【0023】
請求項1による本発明は、上記数学モデルを用いて明示した電動機自体の特性を活用したものであり、回転子を静止させたい位置(すなわち、位置決めにおける回転子位置指令)をθとし、この余弦値、正弦値からなる2x1単位ベクトルu(・)を(12)式のように定義すると、
【数12】
Figure 0004894125
Pモードにおいて電圧ベクトルνを回転子位置指令θを用い以下のように制御しようとするものである。
【数13】
Figure 0004894125
【0024】
回転子が停止あるいはこれに準ずる低速で回転している状態では、次の関係が成立するので、
【数14】
Figure 0004894125
第1基本式より次式が成立する。
【数15】
Figure 0004894125
(13)、(15)式は、実質的に次式を意味する。
【数16】
Figure 0004894125
固定子の電流ベクトルiが(16)式の状態にある場合には、数学モデル第2基本式たるトルク発生式より、次の関係が成立する。
【数17】
Figure 0004894125
ここに、Δθは次式で定義された位置偏差である。
【数18】
Figure 0004894125
【0025】
(17)式により表現されたトルク発生特性を、参考までに、以下の条件下で図2に示す。
【数19】
Figure 0004894125
【0026】
(17)式及び図2より理解されるように、位置偏差と発生トルクの間には、一般に以下の関係が成立する。
【数20】
Figure 0004894125
(20)式の関係は、従来の回転子位置検出器を用いた位置決め系の関係と基本的に同一であり(図10参照)、位置θにある回転子を回転子位置指令θへ向かわせるようにトルクτが発生することを意味する。
【0027】
この回転子を指令位置の近傍に保持できるか否かは、サーボ剛性に大きく依存する。本発明による位置決め系は、次のサーボ剛性Kを有する。
【数21】
Figure 0004894125
(21)式により表現されたサーボ剛性特性を、(19)式の条件で、図3に示す。同図は、上より順次Rφ=0,−0.05,−0.1,−0.13の特性を示している。これより、次の(22)式の範囲においては、位置偏差ゼロΔθ=0点で単峰をもつサーボ剛性が得られることが分かる。
【数22】
Figure 0004894125
単峰特性のサーボ剛性は、本発明の位置決め法によれば、回転子を指令位置近傍に保持できる、ひいては所期の位置決めが可能であることを意味している。
【0028】
応用に即した所望の剛性を確保するには、(21)式が示すように電流レベルを、ひいては(15)、(16)式が示すように電圧レベルを調整すればよい。以上の説明より既に明白なように、請求項1の発明によれば、電動機元来の電磁的特性により、位置検出器を用いることなく、いわゆるセンサレスで、回転子位置決めを行うことができると言う作用が得られる。
【0029】
次に本発明の請求項2の作用について説明する。請求項2の発明は、Pモード時の回転子位置指令θに応じた電圧ベクトルνの発生・印加は、(13)式に
Figure 0004894125
イードフォワード的に印加することを求めるものである。
【数23】
Figure 0004894125
電力変換器が指令通りの電圧を発生し得る場合には、(23)式により、(13)式に示したPモード所要の電圧の発生・印加が問題なく実現できる。すなわち、請求項2の発明によれば、適切な電力変換器を通じて、請求項1の作用に関して説明した回転子位置決め所要の電圧を平易に発生・印加できると言う作用が得られる。
【0030】
次に本発明の請求項3の作用について説明する。請求項3の発明は、Pモード時の回転子位置指令θに応じた電圧ベクトルνの発生・印加のためのフィード
Figure 0004894125
以下のように生成しようとするものである。
【数24】
Figure 0004894125
Figure 0004894125
力変換器が必ずしも指令通りの電圧を発生し得ない状況においても、フィードバック電流制御系の作用により、Pモードのための(16)式の電流関係、(13)式の電圧関係が確保される。以上の説明より既に明白なように、請求項3の発明によれば、電力変換器が必ずしも理想的な応答をしない場合にも、請求項1の作用に関して説明した回転子位置決め所要の電圧を発生・印加できると言う作用が得られる。
【0031】
次に本発明の請求項4の作用について説明する。請求項4の発明は、減速時のSモード等のPモード以外のモードからPモードへの切換えタイミングを指定するルールを示したものである。SモードからPモードへ切換えの例を用いてその作用を説明する。本発明の切換え条件を具体化した次式を考える。
【数25】
Figure 0004894125
Figure 0004894125
る位置偏差の推定値である。すなわち、
【数26】
Figure 0004894125
また、ωsp,Δθspは設計者に選定が委ねられた設計パラメータである。
【0032】
(25a)式を満足している状態では、ωspを適切に小さく選定してしておけば、十分に減速した状態でPモードへ入ることができ、本モードでは迅速な位置整定が可能となる。一方で、(25b)式における設計パメータΔθspをπ/2以下に選定する場合には、図2に示した位置決めトルク発生の線形性の高い領域を、また、図3に示したサーボ剛性の高い領域を、Pモード切換え直後から利用することになり、振動の少ない整定特性が期待できる。以上の説明より既に明白なように、請求項4の発明によれば、Pモードでは、迅速な、振動の少ない位置整定が可能となると言う作用が得られ、ひいては請求項1、請求項2及び請求項3による作用の有用性を更に高めることができるようになる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の位置決め法の実施形態例として、これを活用したPモード時の位置決め系の基本構造を図4に示す。図10を用いて説明した従来の位置決め法による構造に対する、本構造の基本的な違いは、回転子位置検出器2が撤去され、更にはこれを利用したフィードバック位置決めループが存在しない点にある。同一機器番号を付してある機器に関しては、基本的には図10に示した従来制御法に基づくものと同一であり、その動作原理も従来法と同一である。Pモード時の構成であるので、速度制御関連の機器は明示していない。新たに追加した機器は、余弦正弦信号発生器12である。これは余弦正弦信号発生器7と同一のものである。
【0034】
図4の実施形態例では、Pモードのためのフィードバック電流制御系の構成に際し、位置決め系の構成自由度を確保すべく、回転子位置指令θを次のように2種の回転子位
Figure 0004894125
【数27】
Figure 0004894125
本実施形態例で示した構造の妥当性は以下のように説明される。(27)式を電流指令
Figure 0004894125
【数28】
Figure 0004894125
ただし、
【数29】
Figure 0004894125
【数30】
Figure 0004894125
分して与えることができることが明らかである。図4の構造は、(28)式の関係を具体化したものである。
【0035】
当然のことながら、回転子位置指令θを次の(31)、(32)式のように指定よい。
【数31】
Figure 0004894125
【数32】
Figure 0004894125
【0036】
反対に、回転子位置指令θを次の(33)〜(36)式のように指定よい。
【数33】
Figure 0004894125
【数34】
Figure 0004894125
ただし、
【数35】
Figure 0004894125
【数36】
Figure 0004894125
【0037】
次に、本発明の効果ひいては有用性を確認すべく遂行した実験の1例を示す。供試電動機は、高速回転用の多摩川精機(株)製310(W)、1極対数、円筒形同期電動機(TS4201)である。本電動機の特性概要を表1に示す。
【表1】
Figure 0004894125
【0038】
本電動機には分解能256(p/r)のエンコーダが装着されているが、制御にはもちろん使用していない。これは、計測システム側でエンコーダパルスを4逓倍した後、回転子位置計測に利用した。従って、計測精度は、
2π/1024=0.00613(rad/p)、0.352(degree/p)である。供試電動機回転子には被回転物の慣性モーメント代用として円盤を装着した。
【0039】
1)<定常特性1(サーボ剛性と繰返し精密度)>
本発明の請求項1、請求項2及び請求項3の作用に関連して説明したサーボ剛性特性を実験的に確認すべく、図4の制御系を構成した上で、回転子位置指令
Figure 0004894125
で変化させ、応答の繰返し精密度を調べた。L=0の本供試機においては、サーボ剛性は(21)式が示すように固定子の電流ベクトルの大きさ‖i‖に比例する。
Figure 0004894125
に比例する。繰返し精密度は位置偏差Δθの分散σで評価した。
【0040】
Figure 0004894125
り、位置偏差分散は検出精度内(1パルス相当の変動)にほぼ収斂していることが確認される。これは、同一位置に整定する繰返し精密度は測定可能な0.006(rad)=0.4(degree)=1パルス以内に実質的に収まっていることを、ひいては所要のサーボ剛性が得られていることを意味している。なお、表1に示したように、本電動機の定格電流は4.1(A,rms)である。これは、3相2相変換後の等価電流では、7.1(A、DC)に相当する。
【0041】
2)<定常特性2(機器依存性と正確度)>
本発明の請求項3の作用に関連して説明した3相電力発生を担う電力変換器の特性不均一性、電動機自体の機械的不均一性など、電動機の数学モデル上で考慮されていない諸要素による位置決めへの影響とその抑圧性、特に正確度への影響
Figure 0004894125
+70(degree)の間で変化させ、応答位置θを調べた。正確度は、回転子位置指令θ
Figure 0004894125
【0042】
u相 巻線(+)中心(0(rad)=0 (degree))及びv相巻線(−)中心(−1.05(rad)=−60(degree))では、偏差平均はほぼゼロであったが、w相巻線(−)中心近傍(1.05(rad)=60(degree))では、最大約−0.024(rad)=(−1.4(degree))を確認した。これは、電動機巻線位置の正確度に主に起因した電動機固有のものと思われる。この空間領域(停止すべき位置領域)では図5に示した繰返し精密度を確保できるので、必要ならば、補正特性を事前に用意することにより補正を行うことができる。
【0043】
本偏差平均特性で特色的な点は、θ=±0.52(rad)(±30(degree))前後での極性反転である。この空間領域は、巻線位置に基づくv軸、w軸に直交する領域に当たる(後説明の図7参照)。本領域は、3相電圧発生のための電力変換器スイチングパタンが不連続に変化する特異領域でもある。3相電流の視点から見るならば、電流の極性が変化する特異領域でもある。偏差平均の極性反転はこの特異領域で発生している。
【0044】
図6では全空間領域の約1/3を表示したが、他の空間領域でも同様な特性が確認されている。すなわち、電力変換器スイチングの影響を受けやすい特異領域は、実験的には、次の角度±0.52,±1.57,±2.62(rad)(±30,±90,±150(degree))前後の概ね±0.05(rad)=±3(degree)であった。図7にこの特異領域を示した。電力変換器特性の影響を受けやすい全空間領域の約10%に当たる本領域は、位置決め位置としては利用しない方がよい。この制限空間領域は幸いにも全空間領域のわずか10%であるので位置決め位置の選定には実際的な影響を与えないこと、更には、90%は安定的に繰返し精密度が確保できること、ひいては全般的には請求項3による本発明の効果は大であることを指摘しておく。
【0045】
図8は、本発明の第2実施形態例のための制御系の構成図である。本実施形態例は、PモードとSモードのモード切換え制御を行う実施形態例となっている。本例では、Pモード時の位置決め系の構成としては、回転子位置指令θ
Figure 0004894125
【0046】
図8では、Sモードのために、位置・速度検出器を用いないセンサレスベクトル制御法による速度制御系も合わせて構成している。センサレスベクトル制御法による速度制御系の構成法としては、従来より種々の方法が提案されており、ここではその1つである文献(1)のものを活用した。図8における電源角周波数生成器13がこのための機器である。電源角周波数生成器13は、電圧、電流情報を得てこれから所要の電源角周波数を生成し出力している。極対数1同期電動機を対象した本例では、電源角周波数は
Figure 0004894125
に通して得ている。
【0047】
図8では、Sモードでは切替SW1、2は共にS側がオン、P側がオフであり、Pモードの影響を受けないようになっている。一方、PモードではSW1、2は共にS側がオフ、P側がオンであり、Sモードの影響を受けないようになってい
Figure 0004894125
このd軸電流指令の極性は、図10に示した従来法と真反対である点を指摘しておく。
【0048】
3)<過渡特性>
本発明の請求項4の作用に関連して説明したモード切換えの特性を確認すべく行った実験結果の1例を示す。実験には、前述の供試電動機に対し図8の制御系を構成し、速度指令、回転子位置指令として各々以下を用意した。
【数37】
Figure 0004894125
【数38】
Figure 0004894125
SモードからPモードへの切換え時期を決定する(25a)、(25b)式は併用して活用するものとし、このための設計パラメータは、次のように選定した。
【数39】
Figure 0004894125
【数40】
Figure 0004894125
(25a)式のための速度推定値としては、電源角周波数発生器13の出力信号を活用することも可能であるが、これと同等の速度指令を活用した。位置偏差の
Figure 0004894125
必要である。これは、既に説明したように、積分器14の出力信号として利用可能である。また、Pモード時のd軸電流指令は、定格電流の約25%である次式とした。すなわち、
【数41】
Figure 0004894125
なお、PモードからSモードのモード切換えは、本実験に関しては次式を条件とした。
【数42】
Figure 0004894125
【0049】
図9に典型的な応答例を示す。図中にタイムスケール0.2(s)を明示した。同図の上部は、速度指令と同応答(位相が進んでいる方が指令)、下部は速度応答に対応した位置応答を示している。高速回転時の位置応答は、一見±π(rad)に到達しないで折り返しているように見えるが、これは単なる表示上の問題に過ぎない。すなわち、離散時間的なサンプリングを活用した表示における、サンプリング周波数以上の急激な位置変動によるものである。同一方向への位置変化は、対応の速度応答より明らかである。
【0050】
同図では、SモードからPモードへ切換わった点をP点で、また、PモードからSモードへ切換わった点をS点で表示している。図より明らかなように、P点直後で回転子は指令位置θ=0へ向けて加速され、指令位置を通過後すなわちオーバーシュートを起した後、振動を起すことなく指令位置へ一気に整定している。減速の速度指令に依存しないP点直後の加速は、Pモードに入り電流制御系が速度指令と何らの関係ない電流指令を受けたことによる。応答は繰返し安定的に達成されており、回転子位置検出器を利用した応答に匹敵する良好なものである。ひいては、本発明の請求項4による作用及び同効果の有用性を示すものである。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明より明白なように、本発明は以下の効果を奏する。特に、請求項1の本発明によれば、電動機元来の電磁的特性により、回転子位置決めを行うことができると言う作用が得られ、この結果、回転子位置検出器を必要としない位置決め制御系の構成が可能となると言う効果が得られる。ひいては、回転子位置検出器に付随して発生した種々の課題を解決できるという効果が得られる。
【0052】
請求項2の本発明によれば、適切な電力変換器を通じて、回転子位置決め所要の電圧を平易に発生・印加できると言う作用が得られ、この結果、請求項1の効果を平易に達成できると言う効果が得られる。
【0053】
請求項3の本発明によれば、電力変換器が必ずしも理想的な応答をしない場合にも、回転子位置決め所要の電圧を発生・印加できると言う作用が得られ、この結果、請求項1の効果を通常の電力変換器を通じて達成できると言う効果が得られる。
【0054】
Pモード以外のモードからPモードへの切換えタイミングを指定するルールを示した請求項4の本発明によれば、Pモードでは、迅速な、振動の少ない位置整定が可能となると言う作用が得られ、この結果、請求項1、請求項2及び請求項3による効果を一層有用なものとすることができると言う効果が得られる。
【0055】
以上述べた本発明による効果は、実施形態例に関連して既に説明したように、実験的に確認されている。
【0056】
【図面の簡単な説明】
【図1】3相3軸座標系と2軸直交固定座標系と回転子位置(N極位置)との関係を示す図。
【図2】電動機自体による、位置偏差に対する発生トルク特性を示す図。
【図3】電動機自体によるサーボ剛性の特性を示す図。
【図4】1実施形態例における位置決め装置の基本構成を示すブロック図。
【図5】電流指令に対する繰返し精密度の1特性例を示す図。
【図6】位置指令に対する繰返し正確度の1特性例を示す図。
【図7】位置指令の回避が望まれる空間領域を示す図。
【図8】Sモードとのモード切換えが可能な1実施形態例における位置決め装置の基本構成を示すブロック図。
【図9】SモードからPモード突入時の過渡応答例を示す図。
【図10】従来のPモード・Sモードのモード切換え形制御装置の概略構成を示すブロック図。
【符号の説明】
1 永久磁石同期電動機
2 回転子位置検出器
3 電力変換器
4 電流検出器
5a 3相2相変換器
5b 2相3相変換器
6a ベクトル回転器
6b ベクトル回転器
7 余弦正弦信号発生器
8 電流制御器
9 速度制御器
10 速度検出器
11 位置制御器
12 余弦正弦信号発生器
13 電源角周波数発生器
14 積分器

Claims (4)

  1. 回転子位置決めのために永久磁石同期電動機へ印加すべき固定子電圧を、2軸直交固定座標系上の電圧ベクトルとして捕らえ、該電圧ベクトルの2成分を、回転子位置指令の余弦値、正弦値に比例させて発生することを特徴とする永久磁石同期電動機の位置決め方法。
  2. 該電圧ベクトルの発生・印加を担う電力変換器への電圧指令ベクトルの2成分を、該回転子位置指令の余弦値、正弦値に比例させることを特徴とする請求項1記載の永久磁石同期電動機の位置決め方法。
  3. 該電圧ベクトルを発生・印加するためのフィードバック電流制御系を構成し、該電流制御系の該座標系上での電流指令ベクトルの2成分を、該回転子位置指令の余弦値、正弦値に比例させることを特徴とする請求項1記載の永久磁石同期電動機の位置決め方法。
  4. 該電圧ベクトルの発生・印加すべき時期を、回転子速度の推定値が予め定めた値内に収まること、回転子位置と該回転子位置指令との偏差の推定値が予め定めた値内に収まることの少なくともいずれか1つを条件として、決定することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の永久磁石同期電動機の位置決め方法。
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