JP2003083089A - ガスタービンの性能診断方法 - Google Patents

ガスタービンの性能診断方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 運転中のガスタービンから取得された計測デ
ータ(PWR,CIT,CDP,WGF,TOT,η,
NOx)から、ガスタービンの性能劣化を正確に把握す
ることができるガスタービンの性能診断方法を提供す
る。 【解決手段】(A)ガスタービンの性能指標(I)とし
て、ガスタービン出口温度(TOT)、発電端効率
(η)又は排ガスNOx濃度(NOx)のうち少なくと
も1つを選択し、(B)選択した性能指標を、吸気温
度、圧縮機出口圧力、及びガスタービン出力の変化量と
ノイズ成分により、複数の未知パラメータを含む一次関
数でモデル化し、(C)運転中のガスタービンのガスタ
ービン出力(PWR)、吸気温度(CIT)及び圧縮機
出口圧力(CDP)と選択したガスタービンの性能指標
(I)を所定の時間間隔で連続的に取得し、(D)前記
一次関数モデルの複数の未知パラメータを取得したデー
タを基に重回帰分析により推定し、これにより外的な変
動成分を取り除いた性能指標を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、運転条件が変化す
るガスタービンの性能劣化を監視するガスタービンの性
能診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図6は、ガスタービンのモデル図であ
る。ガスタービンは、圧縮機、燃焼器、タービン、等か
らなる。また、ガスタービン発電設備の場合、ガスター
ビン主要性能データとして、発電端出力(PWR)、吸
気温度(CIT)、圧縮機出口圧力(CDP)、燃料流
量(WGF)、ガスタービン出口温度(TOT)、発電
端効率(η)、排ガスNOx濃度(NOx)、等が通常
単位時間おきに取得され、これらによりガスタービンの
性能が評価される。
【0003】すなわち、従来から、コジェネレーション
設備などに用いられているガスタービンの性能状態を把
握するためにガスタービンの各部に取り付けた計測器か
らの上述した計測データ(PWR,CIT,CDP,W
GF,TOT,η,NOx)をモニタしている。また、
運用中のガスタービンの性能状態を把握する手段とし
て、タービン出口温度(TOT)などをガスタービンの
吸気温度(CIT)で修正し、時系列でグラフ化して性
能状態の推移(トレンド)を調べていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの計測
データは相互に影響しあい、かつガスタービンの実際の
運転条件は常に変化している。そのため、取得された計
測データには吸気温度、大気圧力、等の変化、ガスター
ビンの使用状況の変化(全負荷か部分負荷か)による出
力変化およびノイズなどが含まれており、単に取得した
計測データをプロットしたり、ガスタービン吸気温度の
みの修正(吸気温度の変化分だけを補正する)だけでは
ガスタービンの正確な性能状態を把握することは困難で
あった。
【0005】一方、ガスタービン、蒸気タービンおよび
発電機を一軸に結合した発電プラントの性能劣化を管理
するために、「プラント性能劣化管理方法」(特開平5
−195720号)が開示されている。しかし、この発
明では、ガスタービン出力を軸の発電端出力の計測値か
ら蒸気タービン出力の計算値を減算して求めているにす
ぎないため、ガスタービンの正確な性能状態の把握はで
きなかった。
【0006】本発明は、かかる問題点を解決するために
創案されたものである。すなわち、本発明は、運転中の
ガスタービンから取得された計測データ(PWR,CI
T,CDP,WGF,TOT,η,NOx)から、ガス
タービンの性能劣化を正確に把握することができるガス
タービンの性能診断方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、(A)
ガスタービンの性能指標(I)として、ガスタービン出
口温度(TOT)、発電端効率(η)又は排ガスNOx
濃度(NOx)のうち少なくとも1つを選択し、(B)
選択した性能指標を、吸気温度、圧縮機出口圧力、及び
ガスタービン出力の変化量とノイズ成分により、複数の
未知パラメータを含む一次関数でモデル化し、(C)運
転中のガスタービンのガスタービン出力(PWR)、吸
気温度(CIT)及び圧縮機出口圧力(CDP)と、前
記選択したガスタービンの性能指標を所定の時間間隔で
連続的に取得し、(D)前記一次関数モデルの複数の未
知パラメータを取得したデータを基に重回帰分析により
推定し、これにより外的な変動成分を取り除いた性能指
標を得る、ことを特徴とするガスタービンの性能診断方
法が提供される。
【0008】本発明の好ましい実施形態によれば、前記
ガスタービンの性能指標(I)を式(1)でモデル化す
る。 In−In-1=a×(PWRn−PWRn-1)+b×(CITn−CITn-1)+c× (CDPn−CDPn-1)+d×(Tn−Tn-1)+(Wn−Wn-1)...(1)
【0009】また、ノイズ成分(W)は正規分布に従う
として除去する、ことが好ましい。
【0010】上述した本発明の方法によれば、ガスター
ビン出口温度(TOT)、発電端効率(η)又は排ガス
NOx濃度(NOx)のうち少なくとも1つをガスター
ビンの性能指標(I)とし、これを複数の未知パラメー
タ(a,b,c,d)を含む一次関数でモデル化し、更
に、運転中のガスタービンのガスタービン出力(PW
R)、吸気温度(CIT)及び圧縮機出口圧力(CD
P)と選択したガスタービンの性能指標(I)を所定の
時間間隔で連続的に取得することにより、これらの運転
中のデータを基に、重回帰分析により一次関数モデルの
複数の未知パラメータ(a,b,c,d)を推定するこ
とができる。従って、この推定を加味することにより、
計測データから運用中の出力変動や吸気温度変化や圧力
変化、ノイズなどの外的な変動成分を分離することがで
き、ガスタービンの性能状態を正確に把握することがで
きる。また、このロジックをガスタービンの監視システ
ムに組み込むことで、オンサイトでガスタービン性能状
態/健全性を容易かつ精度よくモニターすることがで
き、故障時の原因究明やオーバーホール(O/H)時期
の予測も可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
を具体的に説明する。図1は、ガスタービンの主要性能
パラメータの時系列変化の例を示す図である。この図に
おいて、横軸は運転時間、縦軸は、運転中のガスタービ
ンの発電端出力(PWR)、吸気温度(CIT)、圧縮
機出口圧力(CDP)、燃料流量(WGF)、ガスター
ビン出口温度(TOT)、発電端効率(η)、排ガスN
Ox濃度(NOx)である。この図に示すように、一般
にガスタービン発電設備の場合、ガスタービン主要性能
データが通常単位時間おき(例えば1時間毎)に取得さ
れ、これを連続的に表示して、ガスタービンの性能を評
価することが従来から行われている。しかし、この場
合、図からもわかるように、これらの計測データは相互
に影響しあい、かつガスタービンの実際の運転条件は常
に変化しているため、この図からガスタービンの性能劣
化を正確に把握することは非常に困難であった。
【0012】図2は、本発明の方法を模式的に示す図で
ある。この図において、(A)は運転中のガスタービン
から得られた計測データ(原データ)、(B)は外的変
数の影響分、(C)はノイズ成分、(D)はトレンド成
分である。(B)(C)(D)をなんらかの手段で正確
に把握することができれば、これらを用いて原データを
修正することにより、外的変数、ノイズ、及びトレンド
の影響を除去して、ガスタービンの性能劣化を正確に把
握することが可能となる。
【0013】図3は、本発明のガスタービンの性能診断
方法を示すフロー図である。この図に示すように、本発
明の方法は、指標選択ステップ(A)、モデル化ステッ
プ(B)、原データ取得ステップ(C)、重回帰分析ス
テップ(D)、ノイズ除去ステップ(E)及びトレンド
表示ステップ(E)からなる。
【0014】指標選択ステップ(A)では、ガスタービ
ンの性能指標Iとして、ガスタービン出口温度(TO
T)、発電端効率(η)又は排ガスNOx濃度(NO
x)のうち少なくとも1つを選択する。TOT、η及び
NOxは、いずれもガスタービンの性能を最もよく表す
指標である。従って、好ましくは、これらすべてを性能
指標として選択するのがよい。
【0015】モデル化ステップ(B)では、選択した性
能指標Iを、吸気温度、圧縮機出口圧力、及びガスター
ビン出力の変化量とノイズ成分により、複数の未知パラ
メータを含む一次関数でモデル化する。この一次関数
は、例えば、以下の式(1)で表すことができる。 In−In-1=a×(PWRn−PWRn-1)+b×(CITn−CITn-1)+c× (CDPn−CDPn-1)+d×(Tn−Tn-1)+(Wn−Wn-1)...(1) ここで、Tは時刻、Wはノイズ成分であり、添字nは性
能データ(原データ)の取得番号(n=1,2,3,
4)である。また、この式でa,b,c,dは、未知の
パラメータである。なお、性能指標Iは、TOT、η及
びNOxのいずれの場合でも、式(1)で表すことがで
きる。
【0016】原データ取得ステップ(C)では、運転中
のガスタービンのガスタービン出力(PWR)、吸気温
度(CIT)及び圧縮機出口圧力(CDP)と、選択し
たガスタービンの性能指標I(TOT、η、NOx)を
所定の時間間隔で連続的に取得する。この時間間隔は、
例えば、0.5hr又は1hrである。なお、この時間
間隔は、必ずしも一定でなくてもよい。
【0017】重回帰分析ステップ(D)では、取得した
データを基に、一次関数モデルの複数の未知パラメータ
を重回帰分析により推定する。すなわち、重回帰分析法
または多変量時系列分析法により、未知のパラメータ
a,b,c,dは、これを一定とみなせる限り、隣接す
る4箇所の時刻における各計測データを用いて、連立方
程式を解くことにより求めることができる。
【0018】なお、長時間にわたってパラメータa,
b,c,dを一定とみなせる場合には、式(1)の代わ
りに式(2)を適用することもできる。 In−I0=a×(PWRn−PWR0)+b×(CITn−CIT0)+c×(CD Pn−CDP0)+d×(Tn−T0)+(Wn−W0)...(2) この場合、添字0は、ガスタービンの任意の安定運転時
を示している。
【0019】更に、ノイズ除去ステップ(E)では、ノ
イズ成分(W)は正規分布に従うとして除去する。この
除去には、周知のノイズ除去用プラグラムを用いること
ができる。
【0020】最後に、トレンド表示ステップ(E)にお
いて、原データから外的変数、ノイズ、及びトレンドの
影響を除去して、CRT等に時系列的に表示することに
より、ガスタービンの性能劣化を正確に把握することが
可能となる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。図4は、
ガスタービンの性能指標Iとして、ガスタービン出口温
度(TOT)を選択した場合の実施例である。この図に
おいて、(A)は原データ、(B)は原データから外的
変数及びノイズの影響を除去した図である。また、
(C)(D)(E)は、外的変数であるPWR,CIT
及びCDPの計測データとその影響分であり、(F)は
ノイズ成分である。なお、各図の横軸は同一の運転時間
であり、各データは同時に取得されている。この図か
ら、原データ(A)のガスタービン出口温度(TOT)
からは、ガスタービンの劣化の判断は困難であるが、こ
れを修正した修正データ(B)からは、修正出口温度が
上昇してきており、ガスタービンの性能が劣化してきて
いることが容易にわかる。
【0022】図5は、ガスタービンの性能指標Iとし
て、発電端効率(η)を選択した場合の実施例である。
この図において、(A)〜(E)は、図4と同様であ
る。この図から、原データ(A)の発電端効率(η)か
らは、ガスタービンの劣化の判断は困難であるが、これ
を修正した修正データ(B)からは、発電端効率が低下
(劣化傾向)にあることが容易にわかる。
【0023】上述したように本発明の方法によれば、ガ
スタービン出口温度(TOT)、発電端効率(η)又は
排ガスNOx濃度(NOx)のうち少なくとも1つをガ
スタービンの性能指標Iとし、これを複数の未知パラメ
ータ(a,b,c,d)を含む一次関数でモデル化し、
更に、運転中のガスタービンのガスタービン出力(PW
R)、吸気温度(CIT)及び圧縮機出口圧力(CD
P)と選択したガスタービンの性能指標(I)を所定の
時間間隔で連続的に取得することにより、これらの運転
中のデータを基に、重回帰分析により一次関数モデルの
複数の未知パラメータ(a,b,c,d)を推定するこ
とができる。従って、この推定を加味することにより、
計測データから運用中の出力変動や吸気温度変化や圧力
変化、ノイズなどの外的な変動成分を分離することがで
き、ガスタービンの性能状態を正確に把握することがで
きる。また、このロジックをガスタービンの監視システ
ムに組み込むことで、オンサイトでガスタービン性能状
態/健全性を容易かつ精度よくモニターすることがで
き、故障時の原因究明やオーバーホール(O/H)時期
の予測も可能となる。
【0024】なお、本発明は上述した実施形態に限定さ
れず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できる
ことは勿論である。
【0025】
【発明の効果】上述したように本発明は、統計的手法
(多変量時系列分析法)を利用し、計測データから外的
な変動成分を分離することでガスタービンの性能状態の
把握精度を向上させるものである。このロジックをコジ
ェネレーション設備の監視システムに組み込むことによ
り、オンサイトでのガスタービン健全性の把握/モニタ
ーを容易に行うことができる。
【0026】従って、本発明のガスタービンの性能診断
方法は、運転中のガスタービンから取得された計測デー
タ(PWR,CIT,CDP,WGF,TOT,η,N
Ox)から、ガスタービンの性能劣化を正確に把握する
ことができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】主要性能パラメータの時系列変化の例を示す図
である。
【図2】本発明の方法を模式的に示す図である。
【図3】本発明のガスタービンの性能診断方法を示すフ
ロー図である。
【図4】TOTに関して本発明の実施例を示す図であ
る。
【図5】ηに関して本発明の実施例を示す図である。
【図6】ガスタービンのモデル図である。
【符号の説明】
a,b,c,d 未知パラメータ、CDP 圧縮機出口
圧力、CIT 吸気温度、I ガスタービンの性能指
標、n 原データの取得番号、PWR ガスタービン出
力、T 時刻、TOT ガスタービン出口温度、W ノ
イズ成分、η 発電端効率

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)ガスタービンの性能指標(I)と
    して、ガスタービン出口温度(TOT)、発電端効率
    (η)又は排ガスNOx濃度(NOx)のうち少なくと
    も1つを選択し、(B)選択した性能指標を、吸気温
    度、圧縮機出口圧力、及びガスタービン出力の変化量と
    ノイズ成分により、複数の未知パラメータを含む一次関
    数でモデル化し、(C)運転中のガスタービンのガスタ
    ービン出力(PWR)、吸気温度(CIT)及び圧縮機
    出口圧力(CDP)と、前記選択したガスタービンの性
    能指標を所定の時間間隔で連続的に取得し、(D)前記
    一次関数モデルの複数の未知パラメータを取得したデー
    タを基に重回帰分析により推定し、 これにより外的な変動成分を取り除いた性能指標を得
    る、ことを特徴とするガスタービンの性能診断方法。
  2. 【請求項2】 前記ガスタービンの性能指標(I)を式
    (1)でモデル化する、ことを特徴とする請求項1に記
    載のガスタービンの性能診断方法。 In−In-1=a×(PWRn−PWRn-1)+b×(CITn−CITn-1)+c× (CDPn−CDPn-1)+d×(Tn−Tn-1)+(Wn−Wn-1)...(1)
  3. 【請求項3】 ノイズ成分(W)は正規分布に従うとし
    て除去する、ことを特徴とする請求項1に記載のガスタ
    ービンの性能診断方法。
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