JP2003080662A - グラビア印刷の印刷不良防止方法及びグラビア印刷版 - Google Patents

グラビア印刷の印刷不良防止方法及びグラビア印刷版

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JP2003080662A JP2001278837A JP2001278837A JP2003080662A JP 2003080662 A JP2003080662 A JP 2003080662A JP 2001278837 A JP2001278837 A JP 2001278837A JP 2001278837 A JP2001278837 A JP 2001278837A JP 2003080662 A JP2003080662 A JP 2003080662A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 印刷時に生じる線状汚れやかぶりを、低コス
トで防止する方法を提供する。 【解決手段】 グラビア印刷版1表面の有効印刷領域2
内の非画線部4に、インキが転移されない大きさの微小
セル6を形成する構成とし、且つその微小セル6の位置
を、画線部の網点Pと同一配列の仮想網点Q上とし、非
画線部の微小セル6と画線部のセル5とをセルメイク工
程で同時に形成可能としてコストダウンを図る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はグラビア印刷の印刷
不良防止方法及びそれに用いるグラビア印刷版に関し、
特に、被印刷材に印刷方向に生じる線状の汚れや面状に
薄く出る汚れの防止に有効なグラビア印刷の印刷不良防
止方法及びグラビア印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、グラビア印刷に用いるグラビア
印刷版(以下単に版という)は、円筒状の鉄心(シリン
ダ)の外周面に銅メッキ層を形成し、その銅メッキ層の
画線部に多数のセルを形成し、その後、版の耐摩耗性向
上のため、外周全面にクロムメッキ層を形成している。
この版を用いてグラビア印刷を行うには、版にインキを
供給してセル内にインキを満たし、版表面の余剰のイン
キをドクターブレードによってかき落とし、セルの中に
入ったインキを被印刷材に転写するという方法を採って
いる。
【0003】ところが、このグラビア印刷において、版
の非画線部表面のインキをドクターでかき落としている
にもかかわらず、被印刷材の非画線部に対応する部分に
インキが転写し、インキ汚れを生じるという問題があっ
た。このインキ汚れには、種々な種類のものがあり、そ
の代表的なものとして、印刷方向に直線状に10〜30
cm程度の長さで且つ狭い幅(例えば、0.1〜5mm
程度)に比較的濃く生じる、いわゆるツーツー汚れ(以
下線状汚れという)と、面状に薄く出る汚れ(以下かぶ
りという)があった。
【0004】そこで、本出願人はこの線状汚れを防止す
べく検討の結果、グラビア印刷版表面の有効印刷領域内
の非画線部に、円周方向と交差する方向に延びる深さ
0.3μm以下の微小溝を形成することが線状汚れの防
止にきわめて有効であることを見出し、特許を得た(特
許第3022986号公報参照)。しかしながら、この
特許公報に記載の方法にも更に改良すべき点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、上記特許で
は、非画線部に対して微小溝を研磨によって形成してお
り、このため、セルメイク工程の他に、微小溝を形成す
るための研磨工程を必要とし、その分工程が増え、コス
ト高となる。また、研磨によって形成する微小溝の深さ
が深過ぎると、インキが転写して汚れとなり、また、浅
過ぎると線状汚れ防止の効果がなく、このため研磨にス
キルが必要であり、この点からもコスト高となる。更
に、使用によって表面が摩耗すると微小溝の効果が少な
くなるため、比較的短期間で再研磨を行う必要が生じ、
メンテナンスに費用がかかる等の問題があった。
【0006】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
ので、上記特許で必要としていた微小溝形成のための研
磨工程を不要とし、簡単な操作を追加するのみで線状汚
れのみならず、かぶりも防止しうるグラビア印刷の印刷
不良防止方法並びにグラビア印刷版を提供することを目
的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、グラビア印刷
版表面の有効印刷領域内の非画線部に、微小溝を形成す
る代わりに、インキが転移されない大きさの微小セルを
形成する構成とし、しかも、その微小セルの位置を、前
記非画線部に画線部の網点と同一配列の仮想網点を想定
し、その仮想網点上としたものである。このように、非
画線部に、多数の微小セルをきわめて小さいピッチで形
成したことにより、線状汚れ等の印刷不良を防止でき
る。ここで、非画線部に形成した微小セルによる印刷不
良防止の理由は次のように考えられる。第一には、ドク
ターブレードと版面との間に、インキの固形物、ドクタ
ー摩耗粉、被印刷材のかす等の異物がはさまって、その
近傍のインキ掻き取り不良を生じ、線状汚れが発生しそ
うになっても、直ちにその異物がドクターブレードの下
を通過する微小セルに捕捉されてドクターブレードの下
から外れ、これによってインキ掻き取り不良が防止さ
れ、線状汚れが防止される。第二には、非画線部に形成
した微小セルにもインキが満たされるため、版面の非画
線部の潤滑性が良くなり、版面とドクターブレードとの
摩擦抵抗が、画線部、非画線部に係わらず均一になっ
て、局部的なインキ掻き取り不良の発生が抑制され、線
状汚れやかぶりが防止される。第三には、版面とドクタ
ーブレードとの摩擦抵抗が均一になった結果、ドクター
ブレードの摩耗が均一となり、局部的な摩耗拡大による
インキ掻き取り不良が防止され、線状汚れやかぶりが防
止される。
【0008】上記したように、本発明は、非画線部に想
定した仮想網点の上に微小セルを形成するものである
が、その際、微小セルは必ずしも前記した仮想網点の全
部に形成する必要はない。すなわち、微小セルの間隔は
小さい程、異物捕捉確率が増大するため好ましく、従っ
て、全仮想網点上に微小セルを形成することが好ましい
が、製造誤差等によって一部仮想網点上に微小セルが形
成されていなくても、印刷不良防止効果は得られるの
で、支障はない。通常、非画線部の全仮想網点の50%
以上に微小セルを形成すれば良好な印刷不良防止を行う
ことができる。従って、本発明は、仮想網点の全部に微
小セルを形成する場合に限らず、一部の仮想網点上に微
小セルが形成されない場合をも包含するものである。
【0009】本発明は、非画線部に想定した仮想網点の
上に微小セルを形成する構成としたことで、非画線部の
微小セルの形成を、版面に画線部のセルを形成する工程
(セルメイク工程)で同時に行うことができ、このた
め、従来のように、セルメイク工程とは別に、研磨によ
って微小溝を形成する場合に比べて、コストダウンを図
ることができる。また、インキ転移を生じない微小セル
としては、深さが、例えば、4〜5μmというように、
かなり深いものを使用でき、このため、版を長期間使用
しても微小なセルが浅くなって効果がなくなるというこ
とはなく、このため長期間に渡って使用できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を詳細に説明する。図1(a)は本発明の一実
施の形態に係るグラビア印刷版1の概略斜視図である。
版1は、有効印刷領域2内に、画線部3と非画線部4を
有している。図1(b)はその版1の画線部3と非画線
部4を拡大して示す概略断面図であり、図示したよう
に、画線部3には、通常の版と同様に、各網点Pにセル
5が形成されている。一方、非画線部4には、従来と異
なり、多数の微小セル6が形成されている。この微小セ
ル6は、インキが転移されない大きさのものとしてお
り、これにより、微小なセル6内にインキが満たされて
いても、被印刷材にインキが転写されることはなく、従
って、非画線部4にこの微小なセル6を形成しても印刷
画像にはなんら支障はない。微小セル6の形成位置は、
非画線部4に画線部3の網点Pと同一配列の仮想網点Q
を想定し、その仮想網点Q上としている。換言すれば、
非画線部4を画線部とした時の網点となる位置に仮想網
点Qを想定し、その仮想網点Qに微小セル6を形成して
いる。この配列を採用したことにより、セル5と微小セ
ル6が同一配列となるので、微小セル6を画線部のセル
5の形成工程で同時に形成できる(詳細は後述する)。
微小セル6の断面形状は特に限定されず、通常のセルメ
イクによって形成される形状、例えば、図2(a)に示
す、彫刻によって形成される略V字状のもの、図2
(b)に示す、エッチングによって形成される略U字状
のもの等を用いることができる。
【0011】微小セル6の具体的な大きさは、微小セル
6の断面形状によっても異なるが、図2(a)に示すよ
うに、彫刻によって形成した略V字状の場合には、開口
部分の幅Wを8〜16μm程度、深さDを2〜5μmと
することが好ましく、また、図2(b)に示すように、
エッチングによって形成した略U字状の場合には、開口
部分の幅Wを6〜13μm程度、深さDを30μm以下
とすることが好ましい。これらの大きさの微小セル6を
用いることで、微小セル6内のインキの被印刷材への転
写を生じることなく、線状汚れやかぶりの発生を防止で
きる。
【0012】上記したように、微小セル6は画線部の網
点と同一配列の仮想網点Q上に形成されており、セルメ
イク工程で画線部のセル5と一緒に形成される。かくし
て微小セル6の形成コストをきわめて低くすることがで
きる。なお、微小セル6は画線部における通常のセル5
に比べてかなり小さいため、セル5と同一形成方法(例
えば、彫刻、エッチング等)を用いて形成した場合、製
造誤差等によって、必ずしも全数が均等に形成されると
は限らず、きわめて小さいセルとなったり、場合によっ
ては微小セルが形成されない場合もある。例えば、図3
(a)に示すように、規則的に配列されている仮想網点
Qの全部に微小セル6を形成することが好ましいが、全
仮想網点Qに微小セルを形成するように彫刻或いはエッ
チングを行っても、製造誤差等によって、図3(b)に
示すように、一部の仮想網点Q′にはセルが形成されな
い場合がある。このような場合においても、セルが形成
された仮想網点の全仮想網点に対する比率が、50%程
度以上あれば、良好な印刷不良防止効果が得られるの
で、支障はない。
【0013】なお、図1において、版1の有効印刷領域
2以外の領域の構成は任意であり、必要に応じ、異物を
捕捉するための溝、深いセル、微小セル等を形成しても
よい。
【0014】次に、版1の非画線部3に微小セル6を形
成する方法の具体的な例を説明する。図4は彫刻機13
を用いて、彫刻前の版(シリンダの外周面にセル形成用
の銅メッキ層を備えたもの)1Aにセルメイクする場合
の1例を示す概略ブロック線図である。この例では、ま
ず印刷すべき画像データ10を用意し、この画像データ
10に基づいて、通常の製版の場合と同様に、製版デー
タ11を作成する。製版データ11は画像データを加工
して得られるもので、複数の画像データを組み合わせた
り(集版)、一つの画像データを複製し、多面付けにし
たり、色分解したり、印刷に必要なマークを入れたり、
多くのデータ加工が行われる。
【0015】次に製版データ11の各網点の濃度のデー
タを、対応する各網点の大きさに変換加工し、刷版デー
タ12を作成する。ここで、従来は、製版データから刷
版データを作成する際に、製版データ11における各網
点上の濃度(入力)と刷版データにおける各網点の大き
さ(出力)がほぼ比例する刷版出力カーブ、例えば、図
5(a)の直線15を用いていた。なお、従来の刷版出
力カーブでは、製版データにおける濃度と刷版データに
おける網点の大きさは、厳密には比例していないが、こ
こでは簡便のため、比例する直線15にて代用してい
る。また、図5(a)において、A点は画線部の最低濃
度(例えば、1%。なお、図面を分かりやすくするた
め、A点位置を実際の目盛り位置とは異ならせて示して
いる)に対応する点であり、製版データ11の画線部の
濃度はA点以上であり、非画線部では濃度0となってい
る。直線15で示す従来の刷版出力カーブを用いて刷版
データを作成すると、画線部では各網点の大きさは画像
濃度にほぼ比例したものとなり、非画線部では各網点の
大きさは0となる(従って、網点は形成されない)。こ
れに対し、本実施の形態では、刷版出力カーブを、図5
(b)に示すように、画線部の最低濃度よりも少し低い
濃度に対応するB点よりも高濃度側では、従来の直線1
5と同じ特性の直線15aとするが、B点以下では常に
出力がインキ転移されない大きさの微小セルを形成しう
る大きさ(例えば、0.4%程度)となる直線16とす
る。この刷版出力カーブ(直線15a及び16)を用い
ることにより、得られた刷版データ12(図4参照)で
は、画線部3の各網点は、画像濃度に応じた大きさとな
っており、一方、非画線部の各網点(仮想網点)の大き
さは、画像濃度が0であるにもかかわらず、インキ転移
されない大きさの微小セルを形成しうる大きさとなって
いる。このようにして刷版データ12を作成し、その刷
版データ12を彫刻機13に入力することで、未彫刻の
版(シリンダ)1Aに彫刻が施され、彫刻済版(シリン
ダ)1Bが完成する。得られた彫刻済版1Bでは、画線
部3の各網点位置に、製版データ11の画像濃度に応じ
た大きさのセル5(図1参照)が形成され、非画線部4
(画像濃度0)の各網点位置(各仮想網点位置)に、イ
ンキ転移を生じない程度の微小セル6が形成されてい
る。その後、この版1Bの外周面にクロムメッキを施す
ことで、図1に示す版1を作成できる。以上のように、
この実施の形態では、図5(b)のように刷版出力カー
ブをわずかに変更するのみで画線部と非画線部にそれぞ
れ、セル5及び微小セル6を形成することができ、セル
メイク工程においてインキ汚れ防止用の微小セル6を同
時に形成できる。
【0016】上記した実施の形態では、刷版出力カーブ
として、図5(b)に示す直線15a、16を用いてい
るが、使用しうる刷版出力カーブは、これに限定され
ず、製版データの画線部の濃度に対する出力が、その濃
度にほぼ比例するが、非画線部の濃度(濃度0)に対す
る出力は、インキ転移を生じない程度の微小なセルを形
成しうる大きさとなる特性のものであれば、適宜変更可
能である。例えば、図5(c)の直線17を刷版出力カ
ーブとして使用することも可能である。この直線17
は、従来使用している刷版出力カーブ(直線15)から
ずれているため、厳密には画線部における濃度バランス
が再現されないが、そのずれ量はきわめて微々たるもの
であるので、実用上全く問題がなかった。
【0017】図6は彫刻機を用いて版1Aにセルメイク
する場合の別の例を示す概略ブロック線図である。この
例では、画像データ10の他に、全体を、画線部の最低
濃度よりも更に低い濃度で、且つ、インキ転移を生じな
い程度の微小なセルを形成しうる均一濃度、例えば0.
4%濃度とした濃度データ20を用意し、画像データ1
0に濃度データ20を加算して製版データ21を作成す
る。得られた製版データ21は全体的に濃度が0.4%
増加したものとなっている。次に、この製版データ21
から、従来通常に用いられている刷版出力カーブ{図7
に示す直線15、すなわち図5(a)に示す直線15と
同じもの}を用いて刷版データ22を作成する。これに
より、得られた刷版データ22では、画線部3の各網点
は、画像濃度+0.4%に応じた大きさとなっており、
一方、非画線部の各網点(仮想網点)の大きさは、イン
キ転移されない大きさの微小セルを形成しうる大きさと
なっている。このようにして作成した刷版データ22を
彫刻機13に入力することで、未彫刻の版(シリンダ)
1Aに彫刻が施され、彫刻済版(シリンダ)1Cが完成
する。得られた彫刻済版1Cでは、画線部3の各網点位
置に、製版データ11の画像濃度+0.4%に応じた大
きさのセルが形成され、非画線部4(画像濃度0)の各
網点位置(各仮想網点位置)に、インキ転移を生じない
程度の微小セルが形成されている。その後、この版1C
の外周面にクロムメッキを施すことで、図1に示す版1
を作成できる。以上のように、この実施の形態では、製
版データ21を作成する際に、濃度データ20を追加す
ることにより、セルメイク工程において、画線部のセル
形成と同時に、非画線部にインキ汚れ防止用の微小セル
6を同時に形成できる。更に、この実施の形態では、刷
版データ作成時、既存の刷版出力カーブ{図5(a)、
図7の直線15}をそのまま用いることができるので、
刷版出力カーブを変更することが困難な場合に、例え
ば、刷版データに変換する部位が既設の彫刻機に内蔵さ
れていて、それを変更することが困難な場合に、好適で
ある。なお、この実施の形態では、画線部のセルの大き
さが製版データの濃度よりもわずかに(0.4%)大き
くなっており、従って厳密には濃度バランスが違ってい
るが、この濃度差は微々たるものであるので、実用に問
題はなかった。もし、この差を無くしたい場合には、画
像データ10の濃度を予め下げておき、その後、濃度デ
ータ20を加算して製版データ21を作成し、それを用
いて刷版データ22を作成することにより、図5に示す
刷版データ12と同一のデータを得ることができ、これ
を用いることで、版の画線部に濃度に合った大きさのセ
ルを形成できる。
【0018】図8は彫刻機を用いて版1Aに彫刻する場
合の更に他の例を示す概略ブロック線図である。この例
では、まず印刷すべき画像データ10を読み取って非画
線部のみを抽出したマスク30を作成し、そこから非画
線部に、インキ転移を生じない程度の微小セルを形成し
うる濃度のマスク30Aを作成する。次に、マスク30
Aと画像データ10を合成し、製版データ31を作成す
る。この製版データ31から、従来通常に用いられてい
る刷版出力カーブ{図5(a)に示す直線15}を用い
て刷版データ32を作成する。これにより、得られた刷
版データ32は、図4に示す刷版データ12と同じく、
画線部3の各網点は、画像濃度に応じた大きさとなって
おり、一方、非画線部の各網点(仮想網点)の大きさ
は、インキ転移されない大きさの微小セルを形成しうる
大きさとなっている。この刷版データ32を用いて彫刻
機13で版1Aに彫刻することで、図4の実施の形態と
同様に、版1Bを形成でき、セルメイク工程において、
画線部のセル形成と同時に、非画線部にインキ汚れ防止
用の微小セル6を同時に形成できる。また、この実施の
形態でも、図6の実施の形態と同様に、刷版データ作成
時、既存の刷版出力カーブを用いることができ、刷版デ
ータを変更することが困難な場合に好適である。なお、
図8の実施の形態において、画像データ10に対するマ
スクを作成、合成するのは、かえって工程が増える印象
があるが、先に説明した通り、画像データから製版デー
タを生成するには集版、色分解など、数多くの工程が必
要であり、最終段階で、本マスク処理すること自体が製
版データ作成時間に占める割合は極めて小さい。また、
近年の画像デジタル処理技術の進歩により、マスク作
成、合成はますます簡単に実現できるようになった。従
って、マスクの作成、合成はさほどの負担とはならな
い。
【0019】なお、図4、図6、図8に示す実施の形態
では、セルメイクを彫刻機を用いて行う場合を示した
が、本発明はこの場合に限らず、エッチングによる方法
を採用してもよい。その場合には、例えば、彫刻機でセ
ルメイクする代わりに、版表面に形成したフォトレジス
ト膜を刷版データに基づいてレーザ光照射して露光すれ
ばよく、その際に図4の刷版データ12、図6の刷版デ
ータ22、図8の刷版データ32を用いることにより、
画線部のセルメイクと同時に、非画線部にインキ汚れ防
止用の微小セルを形成できる。
【0020】また、上記した実施の形態では、微小セル
の形成のために、通常のセルメイク工程において、
(1)刷版出力カーブの変更による刷版データの変更、
(2)画像データ全体に濃度データを加算して作る製版
データの変更、(3)画像データの非画線部に濃度マス
クを加算して作る製版データの変更、のいずれかの方法
を用いているが、本発明はこれらの方法をそれぞれ単独
で実施する場合に限らず、これらを適宜組み合わせて実
施してもよい。
【0021】以上のようにして作成した版1では、図1
に示すように、非画線部4に多数の微小セル6が形成さ
れているため、版面とドクターブレードの間に異物がは
さまってドクターブレードが部分的に持ち上げられた状
態となっても、版面の微小セル6がドクターブレードの
下を通過する際に、その異物が微小セル6に引っかかっ
て捕捉され、これによってドクターブレードの下から排
出される。これにより、線状汚れの発生が防止される。
また、非画線部4に形成した微小セル6にもインキが満
たされるため、版面の非画線部の潤滑性が良くなり、版
面とドクターブレードとの摩擦抵抗が、画線部、非画線
部に係わらず均一になって、局部的なインキ掻き取り不
良の発生が抑制され、また、それによってドクターブレ
ードの摩耗が均一となり、局部的な摩耗も抑制でき、こ
れらによって、線状汚れやかぶりを防止できる。更に、
非画線部4に形成した微小セル6は、前記した特許第3
022986号公報に記載の微小溝に比べて、深さがか
なり深いため、版1の表面が多少摩耗しても、セル6の
深さはほとんど変化せず、長期間に渡って所定の機能を
発揮する。このため、この版1は長期間に渡って安定し
て使用することができる。従来、印刷動作中に線状汚れ
やかぶり等の印刷不良が発生した時には、版表面をオペ
レータが手作業で研磨しており、このため、表面が摩耗
すると共に画線部のセル5にも研磨の影響がでる。その
ため、版を適当な期間使用した後、再生する場合には、
版表面のクロムメッキ層を除去するのみならず、その下
のセルを形成している銅メッキ層も除去し、銅メッキ層
の形成、セルメイク、クロムメッキ層の形成といった多
くの工程を必要とするが、上記した本発明の実施の形態
に係る版では、線状よごれやかぶりがほとんど発生しな
いので、長期間使用した場合にも、版表面を手作業で研
磨する必要がほとんどなく、このため、版1に形成して
いるセル5や微小セル6がほとんど損傷しない。従っ
て、再生に当たっては、単にクロムメッキ層を除去し、
再度クロムメッキ層を形成する(いわゆるリクロームす
る)のみでよく、再生のための工数を削減してコストダ
ウンを図ることもできる。
【0022】
【実施例】以下、更に具体的な実施例を説明する。グレ
ー、コン、トクアイ、アイ、ムラサキ、アカの6色の印
刷ユニットを備えた印刷機において、各印刷ユニットに
表1に示す版をセットして印刷テストを行った。
【0023】
【表1】
【0024】印刷テストの結果、表2に示す結果を得
た。この表2から明らかなように、非画線部に微小セル
を形成した印刷ユニットでは、リクローム版でもインキ
汚れが発生しておらず、微小セルを形成したことが印刷
不良防止に有効であることが確認できた。また、リクロ
ーム版をも支障なく使用することができることも確認で
きた。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、版表面
の非画線部にインキが転移されない大きさの微小セルを
多数形成したことにより、非画線部に生じがちな線状汚
れやかぶりを防止でき、しかも、微小セルは、従来印刷
不良防止のために形成していた微小溝に比べて深くする
ことが可能であるので、版を長期間使用しても微小なセ
ルが浅くなって効果がなくなるということはなく、この
ため版を長期間に渡って使用できるという効果を有して
いる。また、印刷不良が生じないため、版表面を手作業
で研磨するという必要がなくなり、このため画線部のセ
ルの劣化がなく、版再生時には表面のクロムメッキ層を
更新するのみで再生でき、低コストでの再生が可能とな
るいう効果もある。
【0027】更に、微小セルの形成のためには、通常の
セルメイク工程において、(1)刷版出力カーブの変更
による刷版データの変更、(2)画像データ全体に濃度
データを加算して作る製版データの変更、(3)画像デ
ータの非画線部に濃度マスクを加算して作る製版データ
の変更、のいずれかの方法を単独で適用するか、あるい
はこれらの方法を適宜組み合わせて適用すればよく、こ
れによって、画線部のセルメイクと同時に、非画線部
に、インキが転移されない大きさの微小のセルを形成で
きる。このため、既存の彫刻機、エッチング機によって
微小セルを作り出すことができ、簡単に且つ低コストで
微小セルを形成できる。しかも、従来、印刷不良防止の
ための微小溝形成のために研磨機を用いていたが、本発
明では、既存の彫刻機、エッチング機によって微小セル
を作り出すことができるため、これまでの研磨機を必要
としない。このため、研磨機導入のコスト、研磨工程の
削除ができ、低コスト、短納期で版を作成することがで
きるといった効果も有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係るグラビア印刷
版の概略斜視図 (b)そのグラビア印刷版の画線部と非画線部を拡大し
て示す概略断面図
【図2】(a)、(b)は微小セルの断面形状の例を示
す概略断面図
【図3】(a)、(b)は微小セルの配置例を示す概略
平面図
【図4】微小セル形成工程の1例を示す概略ブロック線
【図5】(a)は通常に使用する刷版出力カーブを示す
グラフ (b)は図4に示す工程で使用する刷版出力カーブを示
すグラフ (c)は図4に示す工程で使用する刷版出力カーブの他
の例を示すグラフ
【図6】微小セル形成工程の他の例を示す概略ブロック
線図
【図7】図6に示す工程で使用する刷版出力カーブを示
すグラフ
【図8】微小セル形成工程の更に他の例を示す概略ブロ
ック線図
【符号の説明】
1 版(グラビア印刷版) 2 有効印刷領域 3 画線部 4 非画線部 5 セル 6 微小セル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 米津 忠 東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内 Fターム(参考) 2H084 AA02 AE03 AE06 BB02 BB16 CC03

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グラビア印刷版表面の有効印刷領域内の
    非画線部に、画線部の網点と同一配列の仮想網点を想定
    し、その仮想網点上に、インキが転移されない大きさの
    微小セルを形成したことを特徴とするグラビア印刷の印
    刷不良防止方法。
  2. 【請求項2】 印刷すべき画像データに基づいて製版デ
    ータを作成し、この製版データを、その製版データの画
    線部の濃度に対する出力は、その濃度にほぼ比例する
    が、非画線部の濃度に対する出力は、インキ転移を生じ
    ない程度の微小なセルを形成しうる大きさとなる特性の
    刷版出力カーブを用いて、網点の大きさに変換加工し
    て、刷版データを作成し、その刷版データを用いてグラ
    ビア印刷版表面にセルメイクすることを特徴とする請求
    項1記載のグラビア印刷の印刷不良防止方法。
  3. 【請求項3】 印刷すべき画像データ全体に、インキ転
    移を生じない程度の微小なセルを形成しうる濃度データ
    を加算し、それに基づいて製版データを作成し、この製
    版データを、製版データの濃度に対する出力がほぼ比例
    した特性の刷版出力カーブを用いて、網点の大きさに変
    換加工して、刷版データを作成し、その刷版データを用
    いてグラビア印刷版表面にセルメイクすることを特徴と
    する請求項1記載のグラビア印刷の印刷不良防止方法。
  4. 【請求項4】 印刷すべき画像データから非画線部を抽
    出し、その非画線部に、インキ転移を生じない程度の微
    小なセルを形成しうる濃度のマスクを作成し、そのマス
    クと前記画像データを合成し、それに基づいて製版デー
    タを作成し、この製版データを、製版データの濃度に対
    する出力がほぼ比例した特性の刷版出力カーブを用い
    て、網点の大きさに変換加工して、刷版データを作成
    し、その刷版データを用いてグラビア印刷版表面にセル
    メイクすることを特徴とする請求項1記載のグラビア印
    刷の印刷不良防止方法。
  5. 【請求項5】 グラビア印刷版表面の非画線部に、画線
    部の網点と同一配列で仮想網点を想定し、その仮想網点
    上に、インキが転移されない大きさの微小なセルを形成
    したことを特徴とするグラビア印刷版。
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