JP2003080352A - 連続鋳造鋳片の製造方法 - Google Patents

連続鋳造鋳片の製造方法

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JP2003080352A
JP2003080352A JP2001271433A JP2001271433A JP2003080352A JP 2003080352 A JP2003080352 A JP 2003080352A JP 2001271433 A JP2001271433 A JP 2001271433A JP 2001271433 A JP2001271433 A JP 2001271433A JP 2003080352 A JP2003080352 A JP 2003080352A
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slab
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magnetic field
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Yasuo Kishimoto
康夫 岸本
Kimiharu Yamaguchi
公治 山口
Yukio Takahashi
幸雄 高橋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋳型内部の溶鋼温度の低下に起因した鋳片欠
陥の発生や生産性の低下を招くことなしに、鋳片表層部
における溶質元素の濃度を適切に調整して、鋳片表層部
の溶質元素濃度が均一な鋳片を得る。 【解決手段】 連鋳鋳型内の湯面レベルから鋳造方向に
一定の距離下方の位置において鋳片の厚みを横切る向き
に鋳片全幅にわたり直流磁場帯を印加した状態で、該直
流磁場帯内または該直流磁場帯よりも上部の溶鋼プール
に浸漬ノズルを用いて溶鋼を注入すると共に、該上部の
溶鋼プールに特定の溶質元素を添加することによって上
部プール内の溶鋼の溶質元素濃度を高め、もって鋳片表
層部の溶質元素濃度を調整することからなる連続鋳造鋳
片の製造方法において、上部プール内の溶鋼に特定の溶
質元素を添加するに際し、該溶質元素を含有するワイヤ
を、鋳型上方において加熱手段により加熱溶解した状態
で該溶鋼内に供給する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋳片の内部と比較
して表層部における特定の溶質元素の濃度が高い、傾斜
組成を有する連続鋳造鋳片の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、成分組成が表層部と内部で異
なる鋳片を連続鋳造によって製造する方法が種々提案さ
れている。例えば、特開平7−51801 号公報には、連続
鋳造用の鋳型内へ溶鋼を気体と共に垂直方向に注入し、
この溶鋼注入位置より上部で鋳型内の幅方向全幅にわた
り直流磁場を付与して溶鋼の上昇流を減速し、該直流磁
場の付与位置より上部の溶鋼中に該溶鋼成分とは異種の
合金元素を含むワイヤを添加して、上記注入気体の浮上
撹拌により上部の溶鋼を合金溶鋼として合金鋼の表層を
鋼片表面に形成することからなる複層鋼板の製造方法が
記載されている。
【0003】さらに、特開平8−257692号公報には、メ
ニスカスから一定距離下方において鋳型全幅にわたり直
流磁界を印加して制動域を形成しつつ、その上下にノズ
ル吐出孔を有する浸漬ノズルを用いて一定組成の溶鋼を
注入し、さらにワイヤを用いて合金元素を制動域よりも
上部の溶鋼プール内に連続的に供給しつつ溶鋼注入流に
よる撹拌を行うことによって、表層の合金元素濃度が均
一な複層鋳片を製造する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の方法では、ワイヤを添加することにより、鋳型内の溶
鋼の含熱量を奪うことになるため、鋳型内部の溶鋼温度
が低下し、鋳型内での皮張りなどにより鋳型内部での介
在物やパウダーの欠陥が増加するという問題があった。
また、鋳型内部の溶鋼温度が低下して、溶融温度(融
点)との差が0℃近くになると鋳造が不可能になるた
め、添加できるワイヤ量が制限されるところにも問題を
残していた。
【0005】そこで、特許第3020127 号において、溶鋼
中に添加するワイヤを供給用ピンチロールと溶鋼間で電
気抵抗加熱や高周波加熱によって加熱しつつ添加するこ
とが提案された。しかしながら、発明者は、上記の方法
について、実験により詳細に調査したところ、この方法
によっても、鋳型内の溶鋼の局所的な凝固に起因した鋳
片欠陥の発生を完全には防止できないことが明らかとな
った。
【0006】本発明は、上記の問題を有利に解決するも
ので、鋳型内部の溶鋼温度の低下に起因した鋳片欠陥の
発生や生産性の低下を招くことなしに、鋳片表層部にお
ける溶質元素の濃度を適切に調整することができる、連
続鋳造鋳片の有利な製造方法を提案することを目的とす
る。
【0007】
【課題解決のための手段】すなわち、本発明の要旨構成
は次のとおりである。 1.溶鋼の連続鋳造に際し、連鋳鋳型内の湯面レベルか
ら鋳造方向に一定の距離下方の位置において鋳片の厚み
を横切る向きに鋳片全幅にわたり直流磁場帯を印加した
状態で、該直流磁場帯内または該直流磁場帯よりも上部
の溶鋼プールに浸漬ノズルを用いて溶鋼を注入すると共
に、該直流磁場帯内または該直流磁場帯よりも上部の溶
鋼に特定の溶質元素を添加することにより、上部プール
内の溶鋼について該溶質元素の濃度を高め、もって鋳片
表層部の溶質元素濃度を調整することからなる連続鋳造
鋳片の製造方法において、上部プール内の溶鋼に特定の
溶質元素を添加するに際し、該溶質元素を含有するワイ
ヤを、鋳型上方において加熱手段により加熱溶解した状
態で該溶鋼内に供給することを特徴とする連続鋳造鋳片
の製造方法。
【0008】2.加熱手段によりワイヤを加熱溶解して
溶融金属としたのち、該溶融金属を、保温された経路を
通して鋳型内溶鋼に注入することを特徴とする上記1記
載の連続鋳造鋳片の製造方法。
【0009】3.加熱手段が、高周波誘導加熱であるこ
とを特徴とする上記1または2記載の連続鋳造鋳片の製
造方法。
【0010】4.前記保温された経路を、鋳型上方にお
いて下向きに湾曲させたことを特徴とする上記3記載の
連続鋳造鋳片の製造方法。
【0011】5.ワイヤ径を3〜20mmとし、かつ高周波
誘導加熱における周波数を30〜50 kHzとしたことを特徴
とする上記3〜4のいずれか記載の連続鋳造鋳片の製造
方法。
【0012】6.加熱手段がアーク加熱であることを特
徴とする上記1または2記載の連続鋳造鋳片の製造方
法。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に従い具体的
に説明する。図1に、本発明に従う、鋳型内への溶質元
素の添加要領の一例を模式で示す。図中、番号1はワイ
ヤリール、2は加熱手段としての高周波誘導加熱コイ
ル、3はその周りを保護する磁気シールド材、4は耐火
材からなる溶融金属の導入管、5はその内部に埋め込ん
だ電熱線であり、これら4,5によって溶融金属の供給
経路を形成している。6がワイヤ(この例ではニッケル
線)、6′は加熱溶解後の溶融ニッケル、7が溶鋼であ
る。なお、加熱手段としては、上記した高周波誘導加熱
の他、アーク加熱を利用することもできる。さて、鋳型
内の溶鋼中にワイヤを供給するに際し、まずワイヤリー
ル1からワイヤ6を高周波誘導加熱コイル2に向けて送
給する。そして、この高周波誘導加熱コイル2内を通過
させる間にワイヤ6を加熱溶解したのち、溶鋼7内に供
給するのである。
【0014】しかしながら、加熱溶解後の溶融ニッケル
6′は、そのままでは周囲からの抜熱により半凝固状態
となり、詰まりが生じるおそれがある。従って、溶融ニ
ッケル6′は、溶解後は、電気加熱等により保温された
経路を通して、溶鋼7内に注入することが望ましい。ま
た、ワイヤ6の供給経路は、高周波誘導加熱コイルまで
はどのような経路を採っても良いが、ワイヤ6の加熱溶
解後は速やかに溶鋼7内に供給することが望まれるの
で、溶融ニッケル6′の経路は鋳型上方において下方に
湾曲させた形状とすることが有利である。
【0015】本発明に従い、ワイヤを加熱溶解して溶鋼
に添加することにより、次の利点が期待できる。まず、
添加する溶質元素をワイヤとすることによって、溶質成
分を一定速度で連続的に溶鋼中に添加することが可能に
なる。また、ワイヤを加熱溶解し、溶融状態で供給する
ので溶鋼の局所的な凝固を防止することができる。例え
ば、前述した特開平7−51801 号公報や特開平8−2576
92号公報の技術では、ワイヤを加熱せずに溶鋼中に添加
するので、周囲の溶鋼が冷却されて凝固することが避け
られない。また、ワイヤを加熱して添加する特許第3020
127 号に記載の技術においても周囲の溶鋼が凝固する問
題が発生する。これは、たとえワイヤを加熱して添加し
たとしても、ワイヤが溶鋼中で溶解する際に周囲の溶鋼
から溶解の潜熱を奪うために、溶鋼が凝固してしまうか
らである。しかしながら、本発明によれば、ワイヤは予
め溶解され、液滴ないし液流となって溶鋼中に添加され
るので、上述したような溶解潜熱を周囲の溶鋼から奪う
ということがない。 しかも、液相状態であるが故に溶鋼
中に添加された後に速やかに溶鋼中に拡散するので、鋳
型内溶鋼プール内での溶質元素濃度の分布の均一性を向
上させる効果もある。
【0016】上記の理由から、本発明では、ワイヤを加
熱溶解して溶鋼中に供給することにしたのであるが、ワ
イヤの融点が低い場合は溶解後の溶質元素が溶鋼温度に
到達するまでの顕熱を周囲の溶鋼から奪うことになり、
溶鋼の局所的凝固を招くおそれがある。従って、ワイヤ
の加熱温度は、その融点以上で、かつ1400℃以上程度と
することが一層好ましい。 このように加熱することによ
って、溶鋼の局所的凝固を可及的に防止することが可能
になる。
【0017】次に、加熱手段として高周波誘導加熱を用
いた場合の適正周波数を、ワイヤの溶解速度との関係で
調査した。その結果、周波数を下げ過ぎると表皮深さが
深くなり、磁場の干渉(打ち消し合い)や透過が起こる
ため、加熱効率が低下してしまうことが判明した。ここ
に、発明者らの実験によれば、周波数の下限は 30kHzで
あり,それ未満の周波数ではワイヤの溶解ができなくな
ることが分かった。一方、溶解効率の観点からは、周波
数の上限は特に制限されないが、一般に周波数が高くな
ると電源設備費が急激に高くなる上に、湯面レベル計と
して用いる渦流センサーの信号に干渉するという問題が
生じる。従って周波数の上限は、渦流センサーとの干渉
を避けるために、50kHz 程度とすることが望ましい。
【0018】また、ワイヤ径があまりに細いと、必要な
量を注入するために高速で送給する必要が生じ、高周波
コイルによる加熱帯に滞留する時間が短くなるため、十
分に溶解できないおそれがある。一方、ワイヤ径が太す
ぎると、高周波コイルで中心まで加熱できなくなり、や
はり十分な加熱溶解が望めない。そこで、発明者らは、
この点についても実験したところ、ワイヤを加熱溶解し
ながら十分な量を供給するためには、ワイヤ径は3〜20
mm程度とするのが有効であることが判明した。
【0019】なお、ワイヤの加熱位置については、ワイ
ヤを加熱溶解した後に輸送距離があまりに長いとその間
で温度降下が生じる。従って、ワイヤ加熱位置は、極力
鋳型に近いことが望ましいが、一方で鋳型上方に高周波
コイルを設置するのは、溶鋼からの輻射で高周波誘導加
熱コイルの冷却に悪影響が生じるだけでなく、鋳型内の
溶鋼湯面レベル検出用に設けられている渦流センサーと
の干渉が大きくなるので望ましくない。また、加熱手段
を、鋳型から離した状態で鋳型の上方に設置するのは、
鋳型からタンディッシュまでに大幅な空間距離を採る必
要が生じ、事実上困難である。従って、図1に示したよ
うに、ワイヤリールと鋳型上部との間に加熱手段を設置
し、この加熱手段でワイヤを加熱溶解させた後、電気加
熱等により保温された経路を通して、溶鋼中に注入する
のが好適である。そして、鋳型上部とタンディッシュの
限られた空間にこのような加熱装置を設けるためには、
上記した経路を鋳型の直上で下向き鉛直方向に湾曲させ
ることが有利である。
【0020】さらに、発明者らは、かようなワイヤ供給
を行う際の、好適な溶鋼温度についても調査を行った。
図2に、ワイヤ送給により、27 kg/t のニッケルを溶鋼
内に供給する時のワイヤ供給温度と鋳型内溶鋼温度の降
下量との関係について調べた結果を示す。同図から明ら
かなように、予熱なしでは50℃以上もの溶鋼温度の降下
が生じる。また、予熱を行うことによって温度降下は軽
減できるが、融点である1450℃近くまで加熱したとして
も、溶解熱を補償するために溶鋼温度は20℃近く低下す
る。
【0021】従って、従来、ワイヤ添加によって溶鋼が
凝固しないようにするためには、このような溶鋼の温度
降下を見込んで、鋳型に注入される溶鋼温度を通常より
も高めておく必要があった。 通常、鋼の連続鋳造では、
タンディッシュから鋳型へ至る間の溶鋼温度降下がある
ので、これを見込んでタンディッシュ内溶鋼過熱度(タ
ンディッシュ内溶鋼温度−溶鋼の凝固温度)を20〜70℃
程度として操業することが多いが、上述した従来技術に
よるワイヤ添加を行う時には、さらにこれに加えて20〜
50℃程度温度を高めておく必要があった。このことは、
製鋼炉である転炉や、二次精錬炉であるRH脱ガス装置
やLF等の取鍋精錬炉の負荷を増大させるだけでなく、
取鍋の耐火物の損耗を速めるという問題をもたらしてい
た。さらに、鋳型内にあっては、ワイヤと接する領域以
外の溶鋼の温度が高いために、鋳型内面と接する部分で
の凝固シェルの成長が遅れ、このためにブレークアウト
や、鋳片の変形やバルジングによる操業トラブル、さら
には品質トラブルの発生率が増大するという問題があっ
た。しかしながら、本発明によれば、タンディッシュ内
溶鋼過熱度を通常の操業に比べて特に高めておく必要が
ないので、上記したような精錬負荷の増大や鋳造トラブ
ルおよび品質トラブル等の発生を効果的に防止すること
ができる。
【0022】なお、本発明の実施に際しては、図3に示
すような、下部の吐出孔が単孔で上部の吐出孔が2孔の
浸漬ノズルをそなえる連鋳機を用いるのが好適である。
図中、番号8は鋳型、9は浸漬ノズル、10は磁極であ
り、この磁極10により鋳造の厚み方向に鋳片全幅にわた
って直流磁場帯を印加できるようになっている。そして
11で磁場の高さ中心を示す。また、12は浸漬ノズル9の
下部吐出孔、13a,13b はそれぞれ浸漬ノズル9の上部吐
出孔で、14で下部吐出孔からの噴流を、また15a, 15bで
上部吐出孔13a, 13bからの噴流を示し、16で直流磁場帯
の下部プールから上部プールへの逆流を示す。17は凝固
シェルである。なお、図中、wは鋳型の幅、θ,θ′は
それぞれ浸漬ノズル9の下部、上部の吐出孔12,13の角
度(水平方向を0とした下向さの角度)、hは浸漬ノズ
ル吐出孔下端から磁極の高さ中心までの距離、h′は上
部吐出孔から磁極の高さ中心までの距離である。
【0023】図3に示したところにおいて、浸漬ノズル
9から供給された溶鋼噴流14は一旦磁場帯の下部プール
に流入するが、上部プールへの溶鋼の供給速度を上部プ
ール内で凝固して消費される速度よりも少なくし、一旦
下部プールに流入した溶鋼のうち上部プールでの不足分
だけは自然に再度上部プールに逆流させることにより、
溶鋼の供給速度の制御に関する問題を生じさせない。
【0024】なお、下部プールに供給する溶鋼噴流の周
りに逆流が生じ易いようにするためには、下部吐出孔を
適切な位置に配置することが重要である。そこで、この
点について種々検討した結果、ノズルの位置および吐出
角度と磁場の印加位置について、次の関係を満足させる
のが好ましいことが判明した。 h < (1/2)・w・ tanθ --- (1) 0 <h≦ 0.3 --- (2) ここで、θ:浸漬ノズル吐出孔の下向きの角度(°) w:鋳型の幅方向の長さ(m) h:浸漬ノズル吐出孔の下端から磁極の高さ中心までの
距離(m)
【0025】(1) 式が必要な理由は、この条件を満たさ
ない場合には、噴流が磁場帯を十分に貫通する前に両端
の壁面に衝突してしまい、十分に下部プールからの逆流
を引き起こすことができないからである。また、(2) 式
が必要な理由は、この条件が満たされないと、磁場帯を
貫通する前に噴流が拡散し、やはり逆流を十分に引き起
こすことができないからである。
【0026】一方、上部吐出孔からの溶鋼流は下部プー
ルに流出させないようにする必要があり、そのためには
次式(3) を満足させることが望ましい。また、下部プー
ルから流入する溶鋼を十分に引き込ませるためには、次
式(4) を満たすことが望ましい。 h′> (1/2)・w・tan θ′ --- (3) 0 <h≦ 0.3 --- (4) ここで、θ′:上部吐出孔の下向きの角度(°) w :鋳型の幅方向の長さ(m) h′:上部吐出孔中心から磁極の高さ中心までの距離
(m)
【0027】また、上部吐出孔からの溶鋼の供給速度
は、上下吐出孔からの溶鋼の供給比の変動を考慮して、
上部プールで凝固により消費される速度よりも小さく設
定する必要がある。しかしながら、この溶鋼の供給速度
が上部プールでの溶鋼の消費速度の 0.3倍に満たない場
合には、たとえ上掲(4) 式を満たす条件下であっても、
下部プールから供給される溶鋼や添加された溶質元素を
引き込み両者を混合するのに十分な噴流速度が得られな
い場合がある。従って、上部吐出孔から供給する溶鋼の
供給速度Q′(ton/min) と上方の溶鋼プールにて凝固す
る溶鋼の消費速度Q (ton/min)については、次式(5) の
関係を満足させることが好適である。 0.3・Q≦ Q′≦ 0.9・Q --- (5) ここで、Q′:上部吐出孔から供給する溶鋼の供給速度
(ton /min ) Q :磁極の高さ中心より上方の溶鋼プールにて凝固す
る溶鋼の消費速度( ton /min)
【0028】また、鋳片表層の溶質濃度をより均一にす
るためには,加熱溶解した添加元素を上部吐出孔からの
噴流に引き込まれ易い位置に添加することが好ましい。
さらにこの点について詳しく検討した結果、以下の関係
を満足する条件下で添加することがより有効であること
が判明した。 0 <z ≦0.6 --- (6) ここで、zは、溶質元素の添加位置から磁極の高さ中心
までの距離(m)であり、この添加位置を調整するに
は、電気加熱等により保温した経路をそのまま延ばし
て、溶鋼内に浸漬させる方法を採るのが最も簡便であ
る。
【0029】そして、上記した (1)〜(6) 式を満足する
条件下で操業を行った場合には、鋳片表層部の溶質元素
の濃度が均一な鋳片を、高い歩留りをもって製造できる
ことが究明されたのである。
【0030】なお、通常の連続鋳造で用いられるような
2孔ノズルなどの場合でも、上記(1), (2)の条件を満足
すれば、所望の局所的な流入部位を効果的に生成させる
ことが可能である。また、局所的な流入部位の形成効果
と、ノズル噴流の減衰効果をより一層大きくするために
は、ノズル吐出孔の位置は磁極中心から上方に配置する
ことが好ましい。
【0031】ここに、印加磁場の強さについては、あま
りに小さいと、磁場による制動効果が弱くなって、上部
プールと下部プールの溶鋼が混合するおそれが生じ、一
方、強すぎると上部プール内への流入が強くなり過ぎ、
必要以上の溶鋼が上部プールに供給されることになるた
め、結果として、該流入位置から離れた部位において上
部プールの溶鋼が流出するおそれがあるので、印加磁場
は、上部プールと下部プールの溶鋼の混合や合金元素の
均一溶解不良が発生しない、適切な強さとすることが重
要であり、通常 0.1〜0.5 T程度とするのが好ましい。
また、同様に、ノズルに注入されるArガスの流量が多す
ぎると、上部プールへのArガスの流入が強くなりすぎ、
気泡性欠陥を発生し易くなるため、Arガス流量は 20 リッ
トル/min以下とすることが望ましい。
【0032】さらに、印加する直流磁場帯の幅(高さ方
向)については、あまりに小さいと制動効果が十分でな
く、一方あまりに大きいと磁場を発生させるのに必要な
電源容量あるいはコイルサイズが大きなものとなり、設
備コストが増大するので、磁極の高さ方向の幅で 0.1〜
0.5 m程度とするのが好適である。
【0033】
【実施例】図1に示した連鋳鋳型を用い、次の条件(本
発明の適合例)で、連続鋳造鋳片を製造した。 ・鋳型の内径寸法 長辺(w):0.4 m、 短辺:0.11m ・直流磁場 印加位置(鋳型内湯面レベルから磁極の高さ中心までの
距離)A:0.347 m印加磁場の強さ:0.3 T 磁極高さ:0.15m ・浸漬ノズル ノズル内径:40 mm 上部吐出孔:2孔(孔の大きさ 10×10mm) 吐出角θ′=0°(水平) 下部吐出孔:単孔(孔の大きさ 28 mmφ) 吐出角θ=90°(鉛直下向き) ・下部吐出孔浸漬深さ(鋳型内湯面レベルから下部吐出
孔下端まで):0.34m ・上部吐出孔浸漬深さ(鋳型内湯面レベルから上部吐出
孔中心まで):0.177 m ・下部吐出孔中心から磁極の高さ中心までの距離h :
0.007 m ・上部吐出孔中心から磁極の高さ中心までの距離h′:
0.170 m ・鋳造速度Vc :1.6 m/min (鋳造量:0.49 t/min) ・上部吐出孔からの溶鋼供給速度Q′: 0.76Q (磁極の高さ中心よりも上部で凝固する溶鋼の消費速度
Qの0.76倍) ・溶質元素(純Niワイヤ) 純Niワイヤの供給位置(上部吐出孔から両端方向への水
平距離):0.1 m 純Niワイヤ供給管の鋳型内浸漬位置(上部吐出孔までの
高さ方向の距離):0.12m
【0034】なお、上記の連鋳機における凝固シェルの
成長厚d(m)は次式(7) で与えられることが分かって
いる。 d= 0.022×(L/Vc)0.5 --- (7) ここで、Lは湯面レベルから磁極の高さ中心までの距離
(m)、またVc は鋳造速度(m/min)である。従っ
て、上記(7) 式から、上下プール境界部での凝固シェル
厚さは10.2mm程度であることが分かる。その結果、Q=
0.112 t/min となる。一方Q′については水モデルなど
から全スループットの17.5%であることが分かってお
り、Q′=0.0853 t/minとなる。従って、Q′=0.76Q
となる。なお、鋳造時のタンディッシュ内溶鋼過熱度は
25〜65℃の範囲であった。
【0035】さて、上記した鋳造条件の下で、加熱手段
として、図1に示したような高周波誘導加熱コイル(周
波数:44 kHz、コイル長さ:500 mm)を用い、この高周
波誘導加熱コイルに8mm径のニッケルワイヤを8 m/min
(3.5 kg/min)の速度で送給しつつ加熱溶解しながら、
溶鋼中に供給した。なお、溶解したニッケルは、保温さ
れた経路としてカンタル線または白金線で1450℃以上に
加熱したSi3N4 (+BN) またはAlON(+BN) 等の導入管を通
して鋳型内の溶鋼中に注入した。なお、上記の耐火材
は、耐熱衝撃性に優れ、熱伝導性および濡れ性が低いと
いう観点で決定した。
【0036】実施例2 上記した実施例1と同一の鋳造条件において、加熱手段
として図4に示した構造になるアーク加熱装置を用い
た。図中、番号18は一次電源トランス、19は二次電源ト
ランス、20はタンディッシュ、21は溶鋼側給電回路、22
はワイヤ側給電回路、そして23が浸漬電極である。な
お、このアーク加熱装置を用いる場合も、ワイヤ投入装
置などの幾何学的配置は図1とほぼ同じである。ただ
し、アーク加熱装置を用いる場合、アーク電流・電圧と
ワイヤの送給速度を調整することによって、ワイヤをサ
ブマージ状態(すなわちモールドパウダー層内で溶鋼直
上)で溶解が進行するようにした場合には、高周波加熱
装置において用いた溶解後溶鋼へ供給するまでの保温さ
れた経路は特に設けなくても良い。そうでない場合は、
溶解後の溶融金属の冷却と、溶融金属によるモールドパ
ウダーの溶鋼中への叩き込み防止のために、保温された
経路を通して溶融金属を供給するのが好ましい。さて、
この実施例2では、8mm径のニッケルワイヤを電極を兼
用したワイヤガイドを通じて溶鋼上に供給しながらアー
ク加熱溶解を行った。ワイヤは、パウダー内で溶解しな
がら鋳型内の溶鋼に供給された。なお溶鋼との接地は、
タンディッシュ内耐火物に浸漬電極23を埋め込むことで
行った。
【0037】また、比較のため、上記した適合例と同一
の条件で、ワイヤの加熱溶解を行わない場合についても
実験を行った。しかしながら、この場合には、鋳型内の
溶融温度の低下が激しかったため、ワイヤの供給速度は
1kg/minに制限された。
【0038】本発明の実施例1,2および比較例に従い
得られた鋳片の不良発生状況について調査した結果を図
5に示す。ここで、鋳片の不良発生状況は,鋳片表面の
500μm 以上の大きさの介在物・パウダー性欠陥につい
て観察調査し、その量について実施例1を 1.0としたと
きの相対値で評価した。同図から明らかなように、実施
例1および2はいずれも、比較例に比べて鋳片表層部の
欠陥が大幅に低減している。なお、観察された欠陥は、
パウダーの巻き込みによるパウダー性欠陥やアルミナ性
欠陥であった。比較例では、ワイヤを加熱せずに供給し
たために、未溶融のパウダーの巻き込みが増加したこと
の他、鋳型内温度が低下することにより溶融層厚みが低
下しアルミナのパウダーへの吸収が減少したために、欠
陥が増加したものと考えられる。
【0039】
【発明の効果】かくして、本発明によれば、鋳型内の上
部プールへ多量の合金元素を安定して供給することが可
能となり、その結果、鋳片表層部の溶質元素濃度のばら
つきが極めて少ない、均一な鋳片を、安定して製造する
ことができる。また、本発明によれば、合金元素の添加
によっても、鋳造温度の低下を招くことがないため、鋳
片欠陥の発生や生産性の低下を招くことのない、安定し
た鋳造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 加熱手段として高周波誘導加熱を用いた場合
の、鋳型内への溶質元素の添加要領の一例を示す模式図
である。
【図2】 ニッケルワイヤを供給する際のワイヤ加熱温
度度と鋳型内溶鋼の温度低下量との関係を示した図であ
る。
【図3】 3孔ノズルを用いて,鋳型内に溶鋼を注入す
る要領の一例を示す図である。
【図4】 加熱手段としてアーク加熱を用いた場合の、
鋳型内への溶質元素の添加要領の一例を示す模式図であ
る。
【図5】 鋳片欠陥の発生状況を、実施例1,2と比較
例で比較して示した図である。
【符号の説明】
1 ワイヤリール 2 高周波誘導加熱コイル 3 磁気シールド材 4 耐火材からなる導入管 5 電熱線 6 ワイヤ(ニッケル線) 6′溶融ニッケル 7 溶鋼 8 鋳型 9 浸漬ノズル 10 磁極 11 磁極の高さ中心 12 浸漬ノズルの下部吐出孔 13 浸漬ノズルの上部吐出孔 14 下部吐出孔からの噴流 15 上部吐出孔からの噴流 16 直流磁場帯の下部プールから上部プールへの逆流 17 凝固シェル 18 一次電源トランス 19 二次電源トランス 20 タンディッシュ 21 溶鋼側給電回路 22 ワイヤ側給電回路 23 浸漬電極
フロントページの続き (72)発明者 高橋 幸雄 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4E004 MB08 MB11 MB14 NC01

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶鋼の連続鋳造に際し、連鋳鋳型内の湯
    面レベルから鋳造方向に一定の距離下方の位置において
    鋳片の厚みを横切る向きに鋳片全幅にわたり直流磁場帯
    を印加した状態で、該直流磁場帯内または該直流磁場帯
    よりも上部の溶鋼プールに浸漬ノズルを用いて溶鋼を注
    入すると共に、該直流磁場帯内または該直流磁場帯より
    も上部の溶鋼に特定の溶質元素を添加することにより、
    上部プール内の溶鋼について該溶質元素の濃度を高め、
    もって鋳片表層部の溶質元素濃度を調整することからな
    る連続鋳造鋳片の製造方法において、 上部プール内の溶鋼に特定の溶質元素を添加するに際
    し、該溶質元素を含有するワイヤを、鋳型上方において
    加熱手段により加熱溶解した状態で該溶鋼内に供給する
    ことを特徴とする連続鋳造鋳片の製造方法。
  2. 【請求項2】 加熱手段によりワイヤを加熱溶解して溶
    融金属としたのち、該溶融金属を、保温された経路を通
    して鋳型内溶鋼に注入することを特徴とする請求項1記
    載の連続鋳造鋳片の製造方法。
  3. 【請求項3】 加熱手段が、高周波誘導加熱であること
    を特徴とする請求項1または2記載の連続鋳造鋳片の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 前記保温された経路を、鋳型上方におい
    て下向きに湾曲させたことを特徴とする請求項3記載の
    連続鋳造鋳片の製造方法。
  5. 【請求項5】 ワイヤ径を3〜20mmとし、かつ高周波誘
    導加熱における周波数を30〜50 kHzとしたことを特徴と
    する請求項3〜4のいずれか記載の連続鋳造鋳片の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 加熱手段がアーク加熱であることを特徴
    とする請求項1または2記載の連続鋳造鋳片の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110153382A (zh) * 2019-06-14 2019-08-23 上海交通大学 在线式合金熔配方法与装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110153382A (zh) * 2019-06-14 2019-08-23 上海交通大学 在线式合金熔配方法与装置

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