JP2003073797A - シャドウマスクの酸化処理方法 - Google Patents

シャドウマスクの酸化処理方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】脱落しにくい安定な酸化膜であるFe34(黒
錆)を優先的かつ短時間にシャドウマスクに形成するシ
ャドウマスクの酸化処理方法を提供することを目的とす
る。 【解決手段】シャドウマスクを内径50mmの加熱炉内
に固定し、まず、露点を50℃としたN2ガスを流しつ
つ600℃で15分間加熱処理を行い、さらに、炉内雰
囲気の組成比が、CO/CO2及びH2/H2O値が、
0.01〜1.0になるように、ガス流量をCO2
ス:1.2リットル/分、COガス:0.15リットル
/分、H2ガス:0.05リットル/分及びN2ガス:
7.6リットル/分とし、露点を50℃とした混成ガス
を流しつつ、600℃で15分間加熱処理を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、テレビ、コンピュ
ーター等のディスプレーのブラウン管中に用いられるシ
ャドウマスクの処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シャドウマスクは、金属薄板をエッチン
グすることにより製造されている。金属薄板は、鉄材、
鉄−ニッケル合金材、鉄−ニッケル−コバルト合金材が
用いられている。いずれの場合でも鉄が材料の主成分で
ある為、輸送や保管の際に多湿な環境であったりする
と、錆が生じるという問題がある。鉄の酸化物には、F
23、Fe34、FeO等がある。中でも、Fe23
(赤錆)は、材料との密着力が弱い為、シャドウマスク
がブラウン管に用いられた時に、赤錆がブラウン管内部
で脱落し、シャドウマスク開孔部の目詰まりを起こすこ
とがある。これを防止する為に、Fe23(赤錆)を発
生させない様に、脱落しにくい安定な酸化膜であるFe
34(黒錆)を優先的にシャドウマスクに形成させる対
策(黒化処理)が採択されている。また、シャドウマス
クは、ブラウン管内で不必要な電子を遮る働きを行う
が、この時、シャドウマスクが温度上昇し、熱膨張して
しまい、画像の色ムラを起こすことがある。上記温度上
昇を防止する為に、熱輻射効率の高いFe34(黒錆)
をシャドウマスクに形成させる対策(黒化処理)が採択
されている。
【0003】黒錆(Fe34)の形成方法としては、例
えば、特開昭64−3492号公報に開示されているよ
うに、従来の処理条件として、CO2、COの混合ガス
中で約580℃に加熱すると記載されており、発熱型変
性ガス雰囲気中で500℃を超える温度で加熱するのが
一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記加熱条
件により黒化処理を行うと、黒化膜として要求される熱
輻射率≧0.6を得る為に、50分以上の工業的には長
い処理時間を必要とするという問題を有する。また、混
合ガスの組成によっては、Fe23(赤錆)が発生する
という問題がある。
【0005】本発明は上記問題点に鑑み考案されたもの
で、脱落しにくい安定な酸化膜であるFe34(黒錆)
を優先的かつ短時間にシャドウマスクに形成するシャド
ウマスクの酸化処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に於いて上記課題
を達成するために、まず、請求項1においては、シャド
ウマスクを不活性ガスと水蒸気を含む雰囲気下で加熱処
理する工程と、不活性ガスとH2、H2O、CO及びCO
2を含む雰囲気下で加熱処理する工程とを備えているこ
とを特徴とするシャドウマスクの酸化処理方法としたも
のである。
【0007】また、請求項2においては、前記不活性ガ
スとH2、H2O、CO及びCO2を含む雰囲気でのH2
2O及びCO/CO2値の少なくとも一方が0.01〜
1.0であることを特徴とする請求項1記載のシャドウ
マスクの酸化処理方法としたものである。
【0008】さらにまた、請求項3においては、前記加
熱処理を450℃〜650℃で行うことを特徴とする請
求項1または請求項2記載のシャドウマスクの酸化処理
方法としたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明のシャドウマスクの酸化処
理方法は、シャドウマスクにFe34(黒錆)を優先的
に短時間に形成させる方法で、この技術を利用すること
により、Fe 23(赤錆)を含まない脱落しにくいFe
34(黒錆)からなる黒化膜をシャドウマスク上に優先
的に短時間にできることが判明した。具体的には、シャ
ドウマスクを酸化力の強い不活性ガスと水蒸気を含む雰
囲気下で加熱処理し、Fe23(赤錆)を含むが、短時
間で要求熱輻射率を得る工程と、上記雰囲気中で加熱さ
れたシャドウマスクを、不活性ガスと酸化性ガス及び還
元性ガスを含む雰囲気下で加熱処理することによって、
Fe23 (赤錆)をFe34(黒錆)に変化させ、F
23 (赤錆)を含まない脱落しにくいFe34(黒
錆)のみをシャドウマスク上に優先的に短時間に形成す
る方法である。
【0010】請求項1記載の発明では、まず、シャドウ
マスクを不活性ガスと水蒸気を含む雰囲気下で加熱処理
し、さらに、不活性ガスとH2、H2O、CO及びCO2
を含む雰囲気下で加熱処理することにより、短時間で要
求熱輻射率を有するFe34(黒錆)からなる黒化膜を
シャドウマスク表面に形成するようにしたものである。
【0011】請求項2記載の発明では、上記不活性ガス
とH2、H2O、CO及びCO2を含む雰囲気の組成比で
あるCO/CO2及びH2/H2O値の少なくとも一方が
0.01〜1.0になるようにしたものである。ここ
で、CO/CO2値が0.01未満になると、シャドウ
マスクを加熱した際に、赤錆(Fe23)が発生してし
まう場合があり、1.0以上になると、FeOが発生し
てしまう場合がある。FeOは、化学的に不安定であ
り、Fe23(赤錆)に変化する可能性がある為、Fe
Oが発生した状態は好ましくない。また、H2/H2O値
が0.01未満になると、シャドウマスクを加熱した際
に、Niが酸化してしまう場合があり、1.0以上にな
ると、FeOが発生してしまう場合がある。この様な理
由から、CO/CO2及びH2/H2O値の両方が0.0
1〜1.0であることが更に好ましい。
【0012】請求項3記載の発明では、前記加熱処理を
450℃〜650℃で行うようにしたものである。45
0℃以下の温度では、処理に時間を要することになり、
650℃以上では、FeOが発生してしまう場合があ
る。その為、550℃〜600℃で行うことがより好ま
しい。
【0013】
【実施例】以下実施例により本発明を詳細に説明する。
まず、処理すべきシャドウマスクとして、例えば、Ni
=38%、Si=0.05%、Cr=0.10%、S=
0.003%C=0.010%、P=0.005%、A
l=0.030%、Mn=0.40%(重量比)及び残部
Feの材料組成比からなるシャドウマスクを準備した。
【0014】次に、上記シャドウマスクを内径50mm
の加熱炉内に固定し、まず、露点を50℃としたN2
スを流しつつ600℃で15分間加熱処理を行い、さら
に、炉内雰囲気の組成比が、CO/CO2及びH2/H2
O値が、0.01〜1.0になるように、ガス流量をC
2ガス:1.2リットル/分、COガス:0.15リ
ットル/分、H2ガス:0.05リットル/分及びN2
ス:7.6リットル/分とし、露点を50℃とした混成
ガスを流しつつ、600℃で15分間加熱処理を行っ
た。この混合ガスは、組成比にすると、CO2=11.
8%、H2O=11.8%、CO=1.5%、H2=0.
5%、N2=74.4%というものであった。
【0015】上記実施例で得られたシャドウマスクの黒
化膜の熱輻射率の測定結果を表1に示す。表1からも分
かるように本発明の酸化処理法で形成した黒化膜の熱輻
射率は熱処理時間30分で0.64が得られた。比較例
として、一般的に行われている発熱型変性ガスにて処理
してシャドウマスク表面に形成した黒化膜の熱輻射率の
測定結果も表1に併せて示す。一般的に行われている発
熱型変性ガスによる処理は所望の熱輻射率(0.6以
上)を得るのに50分の処理時間を要した。
【0016】
【表1】
【0017】上記実施例で得られたシャドウマスクの黒
化膜のX線回折による構造解析結果を図1に示す。上記
実施例で得られたシャドウマスクの黒化膜には、Fe2
3(赤錆)の(104)面(2θ=33.151°)
のピークが無く、Fe34(黒錆)の(311)面(2
θ=35.421°)のピーク、Fe34(黒錆)の
(440)面(2θ=62.512°)及びFe3
4(黒錆)の(220)面(2θ=30.093°)の
ピークが存在していることを示している。
【0018】また、Fe34(黒錆)に粘着テープを圧
着した後、Fe34(黒錆)から粘着テープを剥離した
結果Fe34(黒錆)の粘着テープへの付着は見られな
かった。酸化処理で形成されたFe34(黒錆)が脱落
しにくいことが確認された。
【0019】
【発明の効果】本発明のシャドウマスクの酸化処理方法
により、シャドウマスクにFe34(黒錆)からなる黒
化膜を優先的に短時間に形成させることが可能となる。
これにより、Fe23(赤錆)を含まず、脱落しにくい
安定な酸化膜であるFe34(黒錆)を優先的にシャド
ウマスクに形成し、Fe23(赤錆)の粉によるシャド
ウマスクの目詰まりを防止でき、かつ、熱輻射率の要求
を満たしたFe 34(黒錆)からなる黒化膜を従来の6
割程度の時間(30分間)で形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシャドウマスクの酸化処理方法により
形成した黒化膜のX線回折による構造解析結果を示す説
明図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シャドウマスクを不活性ガスと水蒸気を含
    む雰囲気下で加熱処理する工程と、不活性ガスとH2
    2O、CO及びCO2を含む雰囲気下で加熱処理する工
    程とを備えていることを特徴とするシャドウマスクの酸
    化処理方法。
  2. 【請求項2】前記不活性ガスとH2、H2O、CO及びC
    2を含む雰囲気でのH2/H2O及びCO/CO2値の少
    なくとも一方が0.01〜1.0であることを特徴とす
    る請求項1記載のシャドウマスクの酸化処理方法。
  3. 【請求項3】前記加熱処理を450℃〜650℃で行う
    ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のシャド
    ウマスクの酸化処理方法。
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