JP2003071430A - 汚染土壌の生物化学的浄化方法 - Google Patents

汚染土壌の生物化学的浄化方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 経済的、かつ効率的に原位置で汚染土壌を修
復する汚染土壌の生物化学的浄化方法を提供する。 【解決手段】 汚染土壌1を取り囲むように土中に四角
状に止水壁3を設ける。止水壁3に囲まれた汚染エリア
2において、地表部に位置する非汚染土壌を予め搬出
し、仮置きしておく。汚染エリア2に必要な栄養剤を添
加しながら、前記汚染土壌1と地下水を撹拌装置により
撹拌し、泥土状にするとともに、汚染土壌1内に通気管
を挿入し同時に十分通気する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、経済的、かつ効率
的に原位置で汚染土壌を修復する汚染土壌の生物化学的
浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、毒性化学物質および有害廃棄物の
蓄積に由来する環境汚染物質を減少あるいは除去するた
め、特に微生物を利用するバイオレメディエーション法
が流出油の処理や土壌・地下水汚染の有効な浄化手段の
一つとして注目されている。
【0003】中でも、汚染土壌を浄化する方法として
は、汚染された土壌を原位置で浄化させる原位置バイオ
レメディエーションとして、バイオベンディング、バイ
オスパージング等が例に挙げられる。これらは、土壌や
地下水中に空気を吹き込んで、地中の生物活性を向上さ
せる方法である。
【0004】また、汚染土壌や底泥・汚泥を浄化する方
法として、固相のバイオレメディエーションによる、ラ
ンドファーミング、バイオパイル等が例に挙げられる。
これらは、解放された地表や管理された場所に汚染土壌
を広げ、通気や撹拌により空気を供給し、さらに栄養塩
を添加したり水分の調整などを行いながら処理する方法
である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、バイオベンデ
ィング、バイオスパージング等は原位置で行うため二次
汚染を引き起こすことがなく、掘削コストもかからない
といった利点があるが、確実に汚染土壌の全範囲に通気
されていることを確認し、コントロールすることが困難
である。また、浄化の状況もボーリングを行い、土壌を
採取して調査する必要があり、浄化中は確認用サンプリ
ング井戸からの情報のみで判断するしかなく、汚染土壌
の全範囲の浄化状況を把握することが出来ない。
【0006】一方、ランドファーミング、バイオパイル
等は汚染土壌を掘削し、地表に広げるため、広大なスペ
ースを確保する必要が生じるとともに、汚染土壌の掘削
作業や移動作業により、二次汚染を引き起こす可能性が
懸念される。
【0007】上記事情に鑑み、本発明は、汚染土壌を掘
削・移動することなく、土着の微生物の働きを向上させ
ることにより、原位置で汚染土壌を浄化できる汚染土壌
の生物化学的浄化方法を提供することを目的としてい
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
原位置で汚染された土壌を浄化させる汚染土壌の生物化
学的浄化方法であって、汚染土壌の周りを囲うように不
透水層もしくは汚染深度以深まで止水壁を設ける工程
と、前記汚染土壌の上層に位置する非汚染土壌を搬出す
る工程と、栄養剤を添加しながら前記止水壁内の汚染土
壌を撹拌するとともに、該汚染土壌内に通気する工程と
からなることを特徴としている。
【0009】請求項2記載の発明は、前記止水壁に囲ま
れたエリア内を所定の幅に帯状に分割し、1列置きに施
工することを特徴としている。
【0010】請求項3記載の発明は、油汚染土壌の場合
には前記止水壁に囲まれたエリア内の地下水と汚染土壌
とを撹拌し、泥土状にすることを特徴とする汚染土壌の
生物化学的浄化方法。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る汚染土壌の生
物化学的浄化方法の実施形態について、図1から図4を
用いて説明する。
【0012】本発明の実施の形態において、汚染エリア
2における汚染土壌1は油により汚染された土壌を例示
している。図1に示すように、油による汚染土壌は、飽
和層4と不飽和層5の境目を中心にして、つまり地下水
面上部に集中して存在することが多い。
【0013】また、前記汚染エリア2を囲う止水壁3に
は、矢板が用いられることにより止水されている。な
お、前記止水壁2は、従来より一般的に用いられている
連続地中壁工法や掘削機構等により掘削された壁孔にセ
メント等、止水性の高い充填材を充たしたもの、超薄型
止水壁工法を適用し壁孔の下端部に図示しない止水シー
トを挿入した上でセメントを充填するもの等いずれを用
いても良く、止水性を確保できるものであればこれに限
るものではない。
【0014】さらに、前記汚染エリア2が広域に分布す
る場合には、汚染エリア2を囲う様に設けられた止水壁
3の内部に、仕切止水壁3aを設ける。該仕切止水壁3
aは、図2(c)に示すように、例えば四角状に設けた
止水壁3の内部を2〜10m程度の間隔で帯状に仕切る
ものである。これは、止水壁3に囲まれた汚染エリア2
が広く、後に仕切止水壁3aの外部に配置した重機によ
って、該汚染エリア2の中央部への掘削や撹拌等の作業
を行うことが困難になることを考慮し、汚染エリア2の
内部に重機7を持ち込み、1列置きに掘削や撹拌等の作
業を行えるようにしたものである。なお、前記汚染エリ
ア2を囲う様に設けられた止水壁3は、本実施の形態で
は四角形状としたが、これにこだわるものではなく、汚
染エリア2を確実に囲うことができれる形状であればよ
い。また、止水壁3の内部に設けられる仕切止水壁3a
の配置間隔は、後に用いる掘削機構を有する重機7が通
行できる幅員が確保されていれば、特にこだわるもので
はない。
【0015】このような、汚染土壌の生物化学的浄化方
法を以下に示す。
【0016】まず、第1の工程として図1(a)(b)
に示すように、汚染土壌1の分布位置を確認し、これら
汚染土壌1を取り囲むように図2(a)(b)に示すよ
うに、土中に止水壁3を設ける。該止水壁3は、矢板を
用いて止水壁3を構築している。また、前記止水壁3を
設ける深さは、地盤における不透水層6に達する深さ、
あるいは汚染深度以深までとしている。
【0017】前記汚染エリア2の分布範囲が広域に及ぶ
場合には、汚染エリア2を上方から見た図2(c)に示
すように、先に四角状に設けた止水壁3の内部を2〜1
0m程度の間隔で仕切るように、さらに仕切止水壁3a
を設ける
【0018】次に、第2の工程として図3(a)(b)
に示すように、止水壁3に囲まれた汚染エリア2におい
て、地表部に位置する非汚染土壌8を予め搬出し、仮置
きしておく。なお、汚染エリア2内に仕切止水壁3aを
設けた場合には、汚染エリア2を上方から見た図3
(c)に示すように、一列おきに掘削を行い、列と列の
間は掘削せず、残しておく。
【0019】第3の工程として、図4(a)(b)に示
すように、前記汚染エリア2に窒素やリン等を含む栄養
剤等、微生物活性を向上させるために必要な栄養源を添
加しながら、前記汚染土壌1と地下水を撹拌装置9によ
り撹拌し、泥土状にするとともに、汚染土壌1内に図示
しない通気管もしくは吸水管を挿入し同時に十分通気す
る。このとき、地下水量が過剰と考えられる場合は、必
要に応じて地下水をくみ上げ、汚染土壌1が適切な水分
量となるように調整する。なお、汚染エリア2内に仕切
止水壁3aを設けた場合には、汚染エリア2を上方から
見た図4(c)に示すように、先に掘削した列にのみ同
作業を施し、これらの浄化作業が終了した後に、残され
た列に対して、上述する同じ作業を繰り返す。
【0020】これらの工程を終えた後、適時前記汚染エ
リア2中の酸素濃度を測定し、必要に応じて第3の工程
で設置した通気管もしくは吸水管からの通気、もしくは
バックホー等での撹拌、あるいはこれらの併用による空
気の供給を行い、汚染土壌1内に酸素を十分供給する。
【0021】浄化が完了したら、第4の工程として第2
の工程で仮置きした非汚染土壌8を前記汚染エリア2に
埋め戻す。なお、汚染エリア2内に仕切止水壁3aを設
けた場合には、引き続き作業が残っている列に対して同
じ工程を繰り返す。
【0022】なお、降雨や炎天下により生物による浄化
に支障をきたすと考えられる場合は、その地表面をシー
ト等で覆う。
【0023】上述する方法によれば、前記汚染土壌1を
掘削し、移動して広げることなく、土着の微生物の働き
を向上させることにより、原位置で汚染土壌を浄化する
ことが可能となるとともに、掘削や移動等に掛かるコス
トを低減することが可能となる。また、地表における浄
化でないため、風等による飛散が起こることがなく、二
次汚染の危険も回避できる。
【0024】また、前記重機7を用いて前記汚染エリア
2の撹拌や通気等の工程を実施するため、汚染エリア2
全域に確実に通気、撹拌が行えるとともに、通気管や吸
水管を配置するため、これらを利用して必要に応じてサ
ンプリングを行うことが容易であり、浄化過程の管理を
正確に行うことが出来る。
【0025】また、汚染エリア2が広い場合には、汚染
エリア2内に仕切止水壁3aを設け1列置きに浄化作業
を行えばよく、汚染エリア2の大きさによらず効率的に
浄化作業を行うことが出来る。
【0026】油による前記汚染土壌1には、地下水と汚
染土壌1をそのまま撹拌することにより、生物化学的浄
化法として一般的に用いられているバイオスラリー方式
を適用することができる。
【0027】
【発明の効果】請求項1記載の汚染土壌の生物化学的浄
化方法によれば、原位置で汚染された土壌を浄化させる
汚染土壌の生物化学的浄化方法であって、汚染土壌の周
りを囲うように不透水層あるいは汚染深度以深まで止水
壁を設ける工程と、前記汚染土壌の上層に位置する非汚
染土壌を搬出する工程と、栄養剤を添加しながら前記止
水壁内の汚染土壌を撹拌するとともに、充填通気する工
程とからなることから、汚染土壌を掘削し、移動して広
げることなく、土着の微生物の働きを向上させるため、
原位置で汚染土壌を浄化することが可能となるととも
に、掘削や移動等に掛かるコストを低減することが可能
となる。また、地表における浄化でないため、風等によ
る飛散が起こることがなく、二次汚染の危険も回避でき
る。さらに、重機を用いて汚染エリアの撹拌や通気等の
工程を実施するため、汚染エリア全域に確実に通気、撹
拌が行えるとともに、通気管や吸水管を配置するため、
これらを利用して必要に応じてサンプリングを行うこと
が容易であり、浄化過程の管理を正確に行うことが出来
る。
【0028】請求項2記載の汚染土壌の生物化学的浄化
方法によれば、前記止水壁に囲まれたエリア内を所定の
幅に帯状に分割し、1列置きに施工することから、汚染
エリアの大きさによらず効率的に浄化作業を行うことが
出来る。
【0029】請求項3記載の汚染土壌の生物化学的浄化
方法によれば、油汚染土壌の場合には前記止水壁に囲ま
れたエリア内の地下水と汚染土壌とを撹拌し、泥土状に
することから、生物化学的浄化法として一般的に用いら
れているバイオスラリー方式を適用することが可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る汚染土壌の分布状況を示す図で
ある。
【図2】 本発明に係る汚染土壌の浄化方法の第1の工
程を示す図である。
【図3】 本発明に係る汚染土壌の浄化方法の第2の工
程を示す図である。
【図4】 本発明に係る汚染土壌の浄化方法の第3の工
程を示す図である。
【符号の説明】
1 汚染土壌 2 汚染エリア 3 止水壁 4 飽和層 5 不飽和層 6 不透水層 7 重機 8 非汚染土壌 9 撹拌装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田崎 雅晴 東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設 株式会社内 Fターム(参考) 4B065 AA01X BB40 BC05 BC35 BC50 CA54 4D004 AA41 AB02 AB05 AC07 CA15 CA19 CB03 CC20

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原位置で汚染された土壌を浄化させる汚
    染土壌の生物化学的浄化方法であって汚染土壌の周りを
    囲うように不透水層もしくは汚染深度以深まで止水壁を
    設ける工程と、前記汚染土壌の上層に位置する非汚染土
    壌を搬出する工程と、 栄養剤を添加しながら前記止水壁内の汚染土壌を撹拌す
    るとともに、該汚染土壌内に通気する工程からなること
    を特徴とする汚染土壌の生物化学的浄化方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の汚染土壌の生物化学的浄
    化方法において、前記止水壁に囲まれたエリア内を所定
    の幅に帯状に分割し、1列置きに施工することを特徴と
    する汚染土壌の生物化学的浄化方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の汚染土壌の生物
    化学的浄化方法において、油による汚染土壌は前記止水
    壁に囲まれたエリア内の地下水と汚染土壌とを撹拌し、
    泥土状にすることを特徴とする汚染土壌の生物化学的浄
    化方法。
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