JP2003065198A - 水力機械 - Google Patents

水力機械

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Abstract

(57)【要約】 【課題】ランナ運転中に発生するキャビテーションを抑
制するとともに、製作面および保守点検面でもその作業
の容易化を図る水力機械を提供する。 【解決手段】本発明に係る水力機械は、周方向に沿って
長翼12と短翼13を交互に配置する中間翼付ランナ1
4を備えた水力機械において、短翼13の出口縁辺15
は、出口縁辺15とバンド11との交点と中間翼付ラン
ナ14の回転中心を通る短翼低部側仮想線19が出口縁
辺21とクラウン10との交点と中間翼付ランナ14の
回転中心を通る短翼頂部側仮想線25よりも中間翼付ラ
ンナ14の回転軸18に垂直な投影面上で短翼13の出
口側になるように設けてなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ランナの周方向に
配置する長翼の間に短翼を配置する水力機械に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、水力機械、例えばフランシス形ポ
ンプ水車は、図12に示すように、ランナ1に、その周
方向に向って等間隔にランナベーン2を配置している。
【0003】このようなランナベーン2の配置に対し、
最近では、流れの整流効果による水車部分負荷特性の改
善およびポンプ流れにおける滑りの減少に伴うポンプ特
性の改善を目的として、例えば図13に示すように、長
翼3と短翼4を周方向に交互に配置する、いわゆる中間
翼付ランナ5が提案されている。
【0004】また、この種のランナには、例えば特開昭
60−50274号公報が知られている。このランナ
は、等角度間隔の内周側ランナベーンの外周側に、内周
側ランナベーンの整数倍となっている外周側ランナベー
ンを持つ構造になっている。
【0005】また、この種と同じ別のランナには、例え
ば特開昭57−126566号公報が知られている。こ
のランナは、ランナクラウンとランナバンドとの間の入
口側流路に複数枚のランナベーンを円周方向に予め定め
られたピッチで配置し、ランナベーンの翼長よりも短
く、かつランナベーンとほぼ平行な1枚以上の中間ベー
ンを配置したものである。
【0006】このようなランナでは、従来のベーン枚数
の少ないランナにおける入口側の3次元的な水流の乱れ
を抑制することができ、また、ベーン1枚当たりの翼負
荷を少なくさせるとともに、整流効果を向上させて翼負
圧面の圧力低下を防ぎ、動力水から動力への変換効率お
よびキャビテーション性能向上を図ることができるよう
になっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図13に示
した長翼3と短翼4を交互に配置する中間翼付ランナ5
は、短翼4が長翼3に対して翼長が短いことを除けば長
翼3とほぼ同じ形状であると考えられる。このため、図
14に示すように、長翼3と短翼4では翼長が異なり、
翼面まわりの循環の強さΓa,Γbも異なる。すなわ
ち、長翼3と短翼4では、作用面の圧力と反作用面の圧
力との差によって決定される翼負荷が異なるため、翼面
周りに生じる渦度分布が異なる。したがって、ランナへ
流入する水流Wの流れが同一であっても、翼近傍の局所
的な水流W1,W2の翼への流入角度αa,αbは長翼
3と短翼4によって当然異なる。特に、短翼では翼長が
短いために作用面に十分な圧力が作用しないことが考え
られ、これによって循環Γbが弱くなるために短翼4の
入口近傍での局所的な水流W2の流入角度αbが長翼3
の入口近傍での局所的な水流W1の流入角度αaよりも
小さくなることが考えられる。そして翼への流入角度が
小さい場合、作用面側の翼入口近傍でキャビテーション
CAVが発生し易くなり、これが著しい場合、翼入口で
大きな流れの剥離が生じ、性能低下の原因にもなりう
る。
【0008】図15は従来の中間翼付きランナ5をラン
ナ出口下方側から鉛直上向きに見たものである。なお、
以下で単に「ランナ入口」もしくは「ランナ出口」等と
記すときは水車運転時の入口、出口をそれぞれ示すもの
とする。すなわち、「ランナ入口側」、「ランナ出口
側」はポンプ運転時にはそれぞれ水流の出口側、入口側
となる。中間翼付きランナ5の短翼4のクラウン6側と
バンド7側を繋ぐ出口縁辺8aは、長翼3の出口縁辺8
bと同様に、内周側から外周側に中間翼付きランナ5の
回転中心となる回転軸9の中心Oから放射状に延びてい
る。このため、短翼4の翼長は、クラウン6側からバン
ド7側にかけて長翼3に対して一律短くなっている。つ
まり、長翼3と短翼4のそれぞれの出口縁辺8a,8b
の延長線は図15における中心Oで角度θをもって交わ
るように構成されており、換言すれば、中間翼付ランナ
5の回転軸に垂直な投影面上では、中間翼付きランナ5
の回転中心と長翼3、短翼4出口のクラウン6側端部と
を結んだ直線上にそれぞれの翼の出口縁辺8a,8bが
配置されている。この場合、長翼3の翼長に対する短翼
4の翼長の比は、クラウン6側よりもバンド7側の方が
小さくなる。短翼4の翼長は、相対的にクラウン6側よ
りもバンド7側で短くなり、このことによって水車運転
時には、特にバンド7側では図14で示した短翼入口部
でのキャビテーションCAVが発生しやすくなる。また
ポンプ運転時には、短翼4の翼長が相対的に短いために
長翼3のバンド7側でかなりの負荷がかかる。
【0009】また、従来、フランシス形ポンプ水車ラン
ナは、強度面、製作面およびコストの観点から、その翼
厚は入口側から出口側まで等肉厚になっている。これに
合わせて中間翼付ランナ5の短翼4も長翼3と同じ等肉
厚構造になっていることもある。通常のランナよりも翼
の枚数が多くなる中間翼付ランナ5では、翼枚数の増加
や等翼肉厚構造に伴って翼間流路が狭くなる。翼間流路
が狭くなると、最高効率点よりも過負荷側で運転を行う
際には水の流速が大きくなることによって摩擦増加等に
よって効率が低下する、いわゆる水車過負荷側特性の低
下が起き、また流路の狭まりにより製作面・保守点検面
で、その作業性に種々不都合・不具合を来している。
【0010】本発明は、このような事情に基づいてなさ
れたもので、ランナの運転中に発生するキャビテーショ
ンを抑制するとともに、製作面および保守点検面でもそ
の作業の容易化を図る水力機械を提供することを目的と
する。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る水力機械
は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載した
ように、周方向に沿って長翼と短翼を交互に配置する中
間翼付ランナを備えた水力機械において、前記短翼の出
口縁辺は、該出口縁辺とバンドとの交点と前記中間翼付
ランナの回転中心を通る短翼低部側仮想線が該出口縁辺
とクラウンとの交点と前記中間翼付ランナの回転中心を
通る短翼頂部側仮想線よりも前記中間翼付ランナの回転
軸に垂直な投影面上で前記短翼の出口側になるように設
けてなるものである。
【0012】また、本発明に係る水力機械は、上述の目
的を達成するために、請求項2に記載したように、周方
向に沿って長翼と短翼を交互に配置する中間翼付ランナ
を備えた水力機械において、前記長翼の出口縁辺は、該
出口縁辺とバンドとの交点と前記中間翼付ランナの回転
中心を通る長翼低部側仮想線が該出口縁辺とクラウンと
の交点と前記中間翼付ランナの回転中心を通る長翼頂部
側仮想線よりも前記中間翼付ランナの回転軸に垂直な投
影面上で前記長翼の出口側になるように設けてなるもの
である。
【0013】また、本発明に係る水力機械は、上述の目
的を達成するために、請求項3に記載したように、周方
向に沿って長翼と短翼とを交互に配置する中間翼付ラン
ナを備えた水力機械において、前記短翼の翼厚みが最大
となる位置を、前記短翼の入口から出口のまでの翼長の
半分よりも前記入口側に設定したものである。
【0014】また、本発明に係る水力機械は、上述の目
的を達成するために、請求項4に記載したように、周方
向に沿って長翼と短翼とを交互に配置する中間翼付ラン
ナを備えた水力機械において、前記短翼の翼厚みを、前
記短翼と該短翼の作用面側に隣り合う長翼との重なり間
において、該長翼の翼厚みよりも小さく形成したもので
ある。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る水力機械の実
施形態を図面および図面に付した符号を引用して説明す
る。
【0016】図1および図2は、フランシス形ポンプ水
車を一例に採った本発明に係る水力機械の第1実施形態
を示す概略図である。なお、図1は、本発明に係る水力
機械における中間翼付ランナを示す概略半分子午断面部
分図である。また、図2は、図1のA矢視方向から見た
一部切欠部分図である。
【0017】本実施形態に係る水力機械、例えばフラン
シス形ポンプ水車は、両端をクラウン10とバンド11
で支持させ、その周方向に向って長翼12と短翼13を
交互に配置した中間翼付ランナ14になっている。
【0018】この中間翼付ランナ14は、短翼13にお
ける出口縁辺15のバンド11側およびクラウン10側
のそれぞれの交点を16,17としたとき、バンド11
側の交点17の位置が短翼13の出口側に移動されてお
り、バンド11側の交点17と回転軸(主軸)18の中
心Oとを結ぶ短翼低部側仮想線20がクラウン10側の
交点16と回転軸18の中心Oとを結ぶ短翼頂部側仮想
線19よりも、回転軸に垂直な投影面上で角度θaだけ
短翼13の出口側になるように構成されている。
【0019】すなわち、本実施形態では図2に示すよう
に、この中間翼付ランナ14をランナ出口下方側から鉛
直上向きに見た場合、短翼13の出口縁辺15は、ラン
ナ14の中心から放射状に配置されておらず、出口縁辺
15の延長線が回転軸18の中心Oを通らないようにな
っている。そして、この出口縁辺15はそのクラウン1
0側の端部となる交点16側よりも、バンド11側の端
部となる交点17側が短翼13の出口側に張り出した形
状となっており、図15に示した従来の中間翼付ランナ
5と比較して、短翼13のバンド11側が長くなってい
る。
【0020】図3は、図15に示す従来の中間翼付ラン
ナ5の短翼4と長翼3について、その水車運転時のバン
ド7側での翼回りの圧力分布を示すグラフである。な
お、図中、破線は短翼4の圧力分布を、また、実線は長
翼3の圧力分布を、それぞれ示している。ここで、短翼
4、長翼3に対して、上側にある線がそれぞれ作用面
(すなわち、正圧面)の圧力分布を示しており、下側の
線が反作用面(負圧面)の圧力分布を示している。そし
て、この作用面と反作用面の圧力差を各翼の入口側から
出口側にかけて積分したものがこの位置(バンド7側)
における短翼、長翼それぞれの翼負荷を示していること
になる。
【0021】図3によれば、図15に示す従来の中間翼
付ランナ5を水車運転した場合、バンド7側では、その
入口側で長翼3と短翼4の圧力差が著しく異なる。ま
た、短翼4の入口部では、作用面の圧力が反作用面の圧
力を下回っており、有効な負荷を受けていないことがわ
かる。特に、入口部の作用面側に低圧部が存在するた
め、水車の運転状態の変動によって短翼4の作用面の入
口部にキャビテーションが発生することも考えられ、短
翼4のキャビテーション性能が低下していることがわか
る。
【0022】一方、図4は図1および図2に示した本実
施形態の中間翼付ランナ14について、図3と同様にそ
の長翼12と短翼13の水車運転時のバンド11側での
翼回りの圧力分布を示すグラフである。ここで、図4に
おいても、図3と同様に、実線が長翼12の圧力分布を
示し、破線が短翼13の圧力分布を示している。
【0023】図4と図3とを比較すると、図4では、短
翼13の入口側で作用面と反作用面の圧力差が大きくな
り、長翼12のそれとほぼ同様になっていることがわか
る。また、バンド11側で短翼13の長さが延びたこと
によって翼負荷が増し、逆に長翼12の翼負荷は低減さ
れており、長翼12、短翼13ともほぼ等しい翼負荷で
有効に仕事をしていることがわかる。さらに、長翼12
の翼負荷が低減されていることから、高揚程側(小流
量)でのポンプ運転時に長翼12の出口側(つまり、ポ
ンプ運転時の水流の入口側)でのキャビテーション性能
を改善することもできる。
【0024】また、短翼13が出口側に延長されて、短
翼13の負荷が増したことで、短翼13の入口側で作用
面の圧力が反作用面の圧力を下回るような現象は起こら
なくなっている。これは、短翼13の負荷が増したこと
で短翼13周りの循環が強くなり入口側で水が十分な角
度で流入するようになっているためと考えられ、これに
よって短翼13のキャビテーション特性が良好になって
いる。
【0025】図5は、図15に示した従来の中間翼付ラ
ンナ5と図2に示した本実施形態に係る中間翼付ランナ
14とについて、水車運転時の落差と水車出力による運
転範囲を対比して示した図である。ここで、これらの水
車においては、落差HtminからHtmaxの間で、
その際の最高出力がPtmax以下となるように運転さ
れるものであり、実線および破線で示された曲線は、本
実施形態の中間翼付ランナ14を用いた水車と、図15
として示した従来の中間翼付ランナ5を用いた水車のキ
ャビテーション発生限界をそれぞれ表しており、これら
の線で囲まれた範囲で水車の運転ができることを表して
いる。つまり、図5より明らかなように、本実施形態の
中間翼付ランナ14を用いた水車では、運転可能な全て
の落差に対してキャビテーション発生限界がより低出力
側となっており、運転範囲がより広まっていることが判
る。すなわち上述したように、本実施形態を用いると低
出力の運転であっても十分な翼負荷を中間翼付ランナ1
4の短翼13に与えるため、十分な強さの翼回りの循環
を得ることができ、翼入口での短翼13への水の局所的
な流入角度を大きく取ることができるので、キャビテー
ションを発生させずに短翼13に有効な仕事をさせるこ
とができる。
【0026】さらに、中間翼付ランナ14全体として、
従来の中間翼付ランナとその翼負荷を同一にするなら
ば、翼負荷のバランスを考えると短翼12のクラウン1
0側を従来の中間翼付ランナよりも短くすることもで
き、製作面・保守点検面での作業性を向上させることが
できる。
【0027】なお、図2に示した本実施形態に係る中間
翼付ランナ14では、短翼13の出口縁辺15をバンド
11側からクラウン10側に亘って直線にしているが、
滑らかな曲線にしてもよい。短翼13の出口縁辺15を
滑らかな曲線にし、さらにθaの角度を調整すると、短
翼13の翼負荷を微調整ができ、キャビテーション性能
などを最適に設定することができる。また、このように
すると、長翼12と短翼13とで形成される流路幅がバ
ンド11側からクラウン10側に亘って微調整できるの
で、水車運転時の中間翼付ランナ14の出口流れを均一
化できる利点がある。
【0028】このように、本実施形態は、短翼13の出
口縁辺15のクラウン10側交点17と回転軸18の中
心Oを結ぶ短翼頂部側仮想線19に対して、短翼13の
出口縁辺15のバンド11側交点16と回転軸18の中
心Oを結ぶ短翼低部側仮想線20が、ランナの回転軸に
垂直な投影面上で角度θaだけ短翼13の出口側に張り
出すように短翼13の出口縁辺15を設けているので、
キャビテーション性能を向上させ、長翼12と短翼13
の負荷の均一化を図ることができる。また、このような
構成とすることで、長翼12と短翼13の間の流路幅を
微調整できるので、保守点検等の作業を容易にすること
も可能となる。
【0029】図6は、フランシス形ポンプ水車を一例に
採った本発明に係る水力機械の第2実施形態を示す概略
図である。なお、第1実施形態の構成部品と同一部分に
は同一符号を付す。
【0030】本実施形態に係る水力機械、例えばフラン
シス形ポンプ水車の中間翼付ランナ14は、長翼12に
おける出口縁辺21のバンド11側およびクラウン10
側のそれぞれの交点22,23としたとき、バンド11
側の交点23の位置が長翼12の出口側に移動されてお
り、バンド11側の交点22と回転軸(主軸)18の中
心Oとを結ぶ長翼低部側仮想線24が、クラウン10側
の交点23と回転軸18の中心Oとを結ぶ長翼頂部側仮
想線25よりも、回転軸に垂直な投影面上で角度θbだ
け長翼12の出口側になるように構成されている。
【0031】すなわち、本実施形態では図6に示すよう
に、この中間翼付ランナ14をランナ出口下方がわから
鉛直上向きに見た場合、長翼12の出口縁辺21は、ラ
ンナ14の中心から放射状には配置されておらず、出口
縁辺21の延長線が回転軸18の中心Oを通らないよう
になっている。そして、この出口縁辺21はそのクラウ
ン10側の端部となる交点23側よりも、バンド11側
の端部となる交点22側が長翼12の出口側に張り出し
た形状となっており、図15に示した従来の中間翼付ラ
ンナ5と比較して、長翼12のバンド11側が長くなっ
ている。
【0032】図7は、図15に示す従来の中間翼付ラン
ナ5の長翼3と本実施形態の中間翼付ランナ14の長翼
12と短翼13について、ポンプ運転時のバンド7側で
の翼回りの圧力分布を示すグラフである。なお、図中、
実線は本実施形態を適用した長翼12の圧力分布を、破
線は短翼13の圧力分布を示し、一点鎖線は図15に示
す従来の中間翼付ランナ5の長翼3の圧力分布を示して
いる。ここで、本図においても図3および図4と同様
に、各翼の圧力分布に対して、上側にある線が作用面
(正圧面)の圧力分布を示し、下側にある線が反作用面
(負圧面)の圧力分布を示しており、作用面と反作用面
の圧力差を入口側から出口側まで積分したものがこの位
置(バンド11側)における翼負荷を示していることに
なる。
【0033】図7に示したように、本実施形態の長翼1
2では、従来の長翼よりもバンド11側の翼長が出口側
(ポンプ運転時の水流の入口側)に延長されているため
に、出口部(ポンプ運転時の水流の入口部)での翼負荷
を従来の長翼よりも低減できることがわかる。そしてこ
のことによって、高揚程でのポンプ運転特性を向上させ
ることができ、ポンプ運転時の逆流限界を小流量側に移
行させて運転の安定化を図ることができる。
【0034】図8は、フランシス形ポンプ水車を例に採
った本発明に係る水力機械の第3の実施形態を示す一部
切欠部分断面図である。
【0035】本実施形態に係る中間翼付ランナ14は、
短翼13の翼厚みTbが最大翼厚Tbmaxとなる位置
を短翼13の入口INから出口EXまでの翼長Lの半分
L/2よりも入口IN側に設定したものである。そし
て、短翼13は最大翼厚Tbmaxの位置から入口IN
側、出口EX側に滑らかにその翼厚みTbが減少するよ
うに構成されている。ここで、最大翼厚Tbmaxの位
置から入口IN側にかけては、翼厚みTbを最大翼厚T
bmaxのままとすることもできる。
【0036】長翼12、および短翼13の厚みは、それ
ぞれ作用面と反作用面の圧力差で決まる翼負荷によって
受ける力に耐えられるように決定されるが、短翼13に
作用する翼負荷は長翼12のそれよりも小さくなるた
め、短翼13の翼厚みTbを長翼12の翼厚みと同一に
しなくてもよい場合が多い。そして、このとき、本実施
形態のような構成とすることで、短翼13の出口EX側
において、長翼12と短翼13とで形成される翼間流路
26の幅を広く取ることができる。
【0037】一般に、流路による摩擦損失はその流路を
流れる水の流速の2乗に比例することが知られており、
本実施形態によって翼間流路26の幅を広く取ると翼間
流路26での水の流速が小さくなり、翼間流路26での
摩擦損失を低減することができるので、効率を向上させ
ることができる。
【0038】このように、本実施形態は、中間翼付ラン
ナ14の短翼13の翼厚Tbが最大翼厚Tbmaxとな
る位置を、短翼13の入口INから出口EXまでの翼長
Lの半分L/2よりも入口IN側に設定するので、長翼
12と短翼13とで形成される翼間流路26の幅を広く
することができ、翼間流路26での摩擦損失を低減させ
ることができる。
【0039】図9は、フランシス形ポンプ水車を一例に
採った本発明に係る水力機械の第4の実施形態を示す一
部切欠部分断面図である。
【0040】本実施形態に係る中間翼付ランナ14は、
短翼13と短翼13の作用面側(正圧面側)に隣り合う
長翼12とが翼長方向に重なり合うAからBまでの重な
り間A−Bにおいて、短翼13の翼厚みTbを長翼12
の翼厚みTaよりも小さくなるようにしたものである。
この場合、さらに短翼13の出口EX側に向かってはそ
の翼厚Tbを漸次小さくするとよい。
【0041】このように、本実施形態は、長翼12と短
翼13との翼長方向の重なり間A−Bで短翼13の翼厚
みTbを長翼12の厚みTaよりも小さくして翼間流路
26の幅を広げるので、翼間流路26での摩擦損失を低
減させることができる。さらに翼間流路26の拡大によ
り中間翼付ランナ14の製作時や保守点検時の作業性も
向上する。
【0042】第3の実施形態および第4の実施形態で
は、短翼13の翼厚みTbが最大翼厚Tbmaxとなる
位置から短翼13の出口EXにかけて漸次小さくなるよ
うに構成しているが、短翼13の翼厚みTbの大きさは
次のようするとよい。
【0043】図10は本発明に係る水力機械の第3の実
施形態もしくは第4の実施形態における中間翼付ランナ
14の水車運転時の中央流線上での翼面圧力分布を示す
線図である。また、図11はこの中間翼付ランナ14の
中央流線上の長翼12と短翼13の翼厚みを説明するた
めに用いた一部切欠部分断面図である。
【0044】図10および図11に示したように、長翼
12の入口IN側から距離Lだけ離れた位置における作
用面(正圧面)と反作用面(負圧面)との圧力差ΔPa
と、短翼13の入口IN側から同様に距離Lだけ離れた
位置における同様な圧力差ΔPbとを比較すると、どの
位置においても短翼13の圧力差ΔPbが長翼12の圧
力差ΔPaよりも小さいことがわかる。すなわち、各位
置において短翼13に作用する力は同じ位置で長翼12
に作用する力より小さくなるため、この圧力差ΔPa,
ΔPbと長翼12の翼厚みTaに基づいて短翼13の翼
厚みTbとの間にはある関係が存在する。すなわち、こ
の場合、短翼13の翼厚みTbが例えば次式を満たすと
よい。
【0045】
【数1】 Tb≧α×(ΔPb/ΔPa)×Ta …(1) ここで、αは落差や応力等の強度面から決定される係数
である。
【0046】このようにすると、短翼13の翼厚みTb
が、その翼負荷ΔPbに基づいて最大翼厚Tbmaxと
なる位置から短翼13の出口EXにかけて漸次小さくな
るような形状となる。
【0047】ここで、(1)式を用いて積極的に翼厚み
Tbを決定するのであれば、圧力差ΔPa,ΔPbにつ
いては、ある形状の長翼12、短翼13についての値を
用い、このときの短翼13の形状から(1)式を用いて
翼厚みTbを修正するなどとすれば、よりよい短翼13
の形状を得ることが可能になる。このようにして翼厚み
Tbを積極的に決定しようとする場合、翼厚みTbを修
正することによって圧力差ΔPb,ΔPaも多少変化す
るが、電子計算機を用いた数値シミュレーションによっ
て圧力差ΔPa,ΔPbを求め、これから得られた翼厚
みTbを用いて再度圧力差ΔPa,ΔPbを算出するな
どして反復計算を行い、翼厚みTbを決定すれば最適な
翼形状を得ることも可能となる。
【0048】
【発明の効果】以上の説明のとおり、本発明に係る水力
機械は、中間翼付ランナの長翼と短翼との翼幅を長くす
ることにより、長翼と短翼との翼負荷の差を少なくさせ
ることができ、短翼の水車入口キャビテーションと流れ
の剥離を抑制する一方、長翼のポンプ高揚程運転時、逆
流限界を小流量側に移行させて安定運転を維持すること
ができる。
【0049】また、本発明に係る水力機械は、中間翼付
ランナの長翼と短翼との流路幅を拡げることにより、水
力効率をより一層向上させることができ、さらに製作面
・保守点検面でその作業性を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水力機械における中間翼付ランナ
を示す概略半分子午断面部分図。
【図2】図1のA矢視方向から見た一部切欠部分図。
【図3】従来の中間翼付ランナの長翼および短翼のそれ
ぞれの作用面および反作用面に加わる圧力分布線図。
【図4】本発明に係る水力機械における中間翼付ランナ
の長翼および短翼のそれぞれの作用面および反作用面に
加わる圧力分布線図。
【図5】従来の中間翼付ランナと本発明に係る中間翼付
ランナとの各入口におけるキャビテーション特性を対比
させた線図。
【図6】本発明に係る水力機械の第2実施形態を示す概
略図。
【図7】従来の中間翼付ランナの長翼の作用面および反
作用面に加わる圧力分布と、本発明に係る中間翼付ラン
ナの長翼の作用面および反作用面に加わる圧力分布とを
対比させた線図。
【図8】本発明に係る水力機械の第3実施形態を示す一
部切欠部分断面図。
【図9】本発明に係る水力機械の第4実施形態を示す一
部切欠部分断面図。
【図10】本発明に係る水力機械の第5実施形態におい
て、中間翼付ランナの水車運転時、中央流線上の翼面圧
力分布を示す線図。
【図11】本発明に係る水力機械の第5実施形態におい
て、中間翼付ランナの中央流線上の長翼と短翼の翼厚み
を説明するために用いた一部切欠部分断面図。
【図12】従来の中間翼付ランナを示す概略図。
【図13】従来の中間翼付ランナの入口付近における水
流の流れを説明するために用いた図。
【図14】従来の中間翼付ランナをランナ出口下方側か
ら鉛直上向きに見た図。
【図15】従来のポンプ水車ランナを示す概念図。
【符号の説明】
1 ランナ 2 ランナベーン 3 長翼 4 短翼 5 中間翼付ランナ 6 クラウン 7 バンド 8a,8b 出口縁辺 9 回転軸 10 クラウン 11 バンド 12 長翼 13 短翼 14 中間翼付ランナ 15 出口縁辺 16,17 交点 18 回転軸 19 短翼低部側仮想線 20 長翼低部側仮想線 21 出口縁辺 22,23 交点 24 長翼頂部側仮想線 25 短翼頂部側仮想線 26 流路 27,27a,27b 作用面 28,28a,28b 反作用面 29 入口
フロントページの続き (72)発明者 村山 淳 神奈川県横浜市鶴見区末広町二丁目4番地 株式会社東芝京浜事業所内 Fターム(参考) 3H072 AA07 AA17 BB06 BB20 BB31 BB33 CC44

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 周方向に沿って長翼と短翼を交互に配置
    する中間翼付ランナを備えた水力機械において、前記短
    翼の出口縁辺は、該出口縁辺とバンドとの交点と前記中
    間翼付ランナの回転中心を通る短翼低部側仮想線が該出
    口縁辺とクラウンとの交点と前記中間翼付ランナの回転
    中心を通る短翼頂部側仮想線よりも前記中間翼付ランナ
    の回転軸に垂直な投影面上で前記短翼の出口側になるよ
    うに設けてなることを特徴とする水力機械。
  2. 【請求項2】 周方向に沿って長翼と短翼を交互に配置
    する中間翼付ランナを備えた水力機械において、前記長
    翼の出口縁辺は、該出口縁辺とバンドとの交点と前記中
    間翼付ランナの回転中心を通る長翼低部側仮想線が該出
    口縁辺とクラウンとの交点と前記中間翼付ランナの回転
    中心を通る長翼頂部側仮想線よりも前記中間翼付ランナ
    の回転軸に垂直な投影面上で前記長翼の出口側になるよ
    うに設けてなることを特徴とする水力機械。
  3. 【請求項3】 周方向に沿って長翼と短翼とを交互に配
    置する中間翼付ランナを備えた水力機械において、前記
    短翼の翼厚みが最大となる位置を、前記短翼の入口から
    出口のまでの翼長の半分よりも前記入口側に設定したこ
    とを特徴とする水力機械。
  4. 【請求項4】 周方向に沿って長翼と短翼とを交互に配
    置する中間翼付ランナを備えた水力機械において、前記
    短翼の翼厚みを、前記短翼と該短翼の作用面側に隣り合
    う長翼との重なり間において、該長翼の翼厚みよりも小
    さく形成したことを特徴とする水力機械。
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