JP2003053153A - レーザーによるシリコン同位体の高効率分離・濃縮法 - Google Patents

レーザーによるシリコン同位体の高効率分離・濃縮法

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JP2003053153A JP2001249048A JP2001249048A JP2003053153A JP 2003053153 A JP2003053153 A JP 2003053153A JP 2001249048 A JP2001249048 A JP 2001249048A JP 2001249048 A JP2001249048 A JP 2001249048A JP 2003053153 A JP2003053153 A JP 2003053153A
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carbon dioxide
infrared
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Atsushi Yokoyama
淳 横山
Hironori Oba
弘則 大場
Masafumi Hashimoto
雅史 橋本
Takeyori Shibata
猛順 柴田
Shigeyoshi Arai
重義 荒井
Takeshi Ishii
武 石井
Akio Oya
暁雄 大家
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HIRU RESEARCH KK
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HIRU RESEARCH KK
Japan Atomic Energy Research Institute
Nuclear Development Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 単色レーザー光によるシリコン同位体の分離
・濃縮法には、950cm-1付近の波数のレーザー光の
照射を必要とするが、950cm-1付近の1光子吸収は
どの同位体分子に対しても非常に小さいので、分子が最
初に光子を吸収する効率は極めて悪く、多光子吸収の効
率も悪い。従って、本発明においてはシリコン同位体の
レーザー分離・濃縮法の高効率化をその課題とする。 【解決手段】 レーザーによるSi26で代表されるシ
リコンのハロゲン化物の赤外多光子分解に基づく、28
i、29Si、30Siなどのシリコン同位体の分離・濃縮
において、ハロゲン化物に異なる波長の複数の赤外パル
スレーザー光を同期させて照射することを特徴とする分
離・濃縮の高効率化法を課題解決手段とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコンのハロゲ
ン化物の赤外多光子分解に基づくシリコン同位体のレー
ザー分離・濃縮において、シリコンのハロゲン化物に異
なる波長の複数の赤外パルスレーザー光を同期させて照
射することによって、分離・濃縮される同位体の選択性
および収量の著しい向上をはかる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多数の元素には、放射能を持たない安定
な同位体が存在し、放射線の被曝の恐れがないことから
その利用が拡大しつつある。
【0003】天然のシリコンは28Si、29Siおよび30
Siの3種類の安定同位体から構成されており、われわ
れの周囲にあるシリコン化合物中には、常に28Siが9
2.2%、29Siが4.7%、そして30Siが3.1%
の割合で存在している。
【0004】分離・濃縮されたシリコンの安定同位体
は、すでに様々な分野で利用されると同時に、将来の利
用法に関する提案もなされている。すなわち28Siおよ
30Siは稲への珪素肥料の効果の研究にトレーサーと
して、また30Siは新しい核種の製造に用いられてき
た。一方、29Siは一部の半導体製造の過程においてイ
オン注入に用いられてきた。ここ数年では、高純度28
iの単結晶が高熱伝導性を示すことが実証され、これを
用いたチップは放熱が容易と考えられることから、集積
回路のさらなる高集積化と高速化に寄与するものとして
大きな注目を集めている。また核スピンを持つ29Siを
完全に除いたシリコンの単結晶、すなわち高純度28Si
の単結晶では、添加するリンの磁気的性質を利用した量
子コンピューターのアイデアが提案され関心が高まって
いる。
【0005】このように、シリコンの同位体は、近い将
来様々な分野で大量に利用される状況が生まれつつある
が、その利用の拡大に応ずるためには、同位体の分離・
濃縮の技術の高効率化が必然的な前提となる。
【0006】(レーザー法以外のシリコン同位体の分離
・濃縮法)シリコン同位体の分離・濃縮に関しては古く
から電磁質量分離器を用いる方法がある。しかしこの方
法では、たとえ大型の電磁質量分離器を用いても分離で
きる量が限られており、同位体を安価に大量供給するこ
とは不可能である。
【0007】ロシアでは軍事的核関連施設として開発さ
れた巨大な遠心分離装置を、シリコンの同位体の分離・
濃縮に転用しているが、巨大な遠心分離装置には膨大な
設備費が必要であり、また軍事機密の問題もあり民間で
行なうことは不可能である。
【0008】(レーザーによるシリコン同位体の分離・
濃縮法)シリコン同位体の分離・濃縮に関しては、炭酸
ガスレーザーで誘起されるSi 26の同位体選択的な赤
外多光子分解に基づく方法が開発されている(特許公報
H2-56133; US Patent 4824537; EU Patent 0190758; 特
許公報 H5-80245; S. Arai, H. Kaetsu, and S. Isomur
a, Appl. Phys., B32, 199(1991))。まずその方法の
概要について述べ、次にその問題点を指摘する。
【0009】(Si26の赤外多光子分解)分子に、そ
の赤外吸収帯が存在する領域の強いレーザー光を照射す
ると、個々の分子が数十個にも達する多数の光子を吸収
して分解を起こすことがある。この現象を赤外多光子分
解という。図1はシリコンのフッ化物であるSi26
赤外吸収スペクトルおよび炭酸ガスレーザーの発振線を
示したものである。図に示したようにSi26は、炭酸
ガスレーザーの発振領域にSi−F結合の伸縮振動によ
る赤外吸収帯を持つ。そこで炭酸ガスレーザーの10R
あるいは10Pに属する発振線の一つを取りだし、その
強いパルス光(hν)をSi26に照射すると、個々の
分子が多数の光子を吸収して高振動励起状態となり、次
いでSiF2とSiF4に分解する。これがSi26の赤
外多光子分解である。ただしここでnは分子に吸収され
るレーザー光子の数を表す。
【化1】 Si26 + nhν → SiF2 + SiF4
【0010】分解生成物のうちで、SiF4は安定な気
体分子であるが、他方のSiF2は不安定な分子であ
り、次々に重合して組成が(SiF2mの白色の固体物
質を生成する。ただしここでmは重合するSiF2分子
の数を表す。
【化2】m SiF2 → (SiF2m
【0011】Si26がSiF2とSiF4とに分解する
過程は、約190kJ/molのエネルギーを必要とす
ることが、熱分解の研究より明らかにされている。この
値は、赤外多光子分解を起こした分子には、少なくとも
17個あるいはそれ以上の炭酸ガスレーザーの光子が吸
収されていなければならないことを意味する。
【0012】(吸収スペクトルと同位体シフト)図1に
示したSi26の赤外吸収スペクトルは、赤外分光光度
計で測定されたものである。普通の分光光度計では光の
強度が弱く、吸収は分子が1個の光子を吸収する過程に
対応する。この様な1光子吸収に対応するスペクトル
を、ここでは通常の赤外吸収スペクトルと呼ぶことにす
る。
【0013】Si26の通常の赤外吸収スペクトルにお
いて、Si−Fの伸縮振動に基づく吸収帯ピークの位置
は、28Si−Fでは990cm-1にある。また29Si−
Fでは982cm-130Si−Fでは974cm-1にあ
ると推定される。一般に、異なる同位体の吸収帯の間に
はしばしば同位体シフトと呼ばれるずれが観測される。
図では各同位体吸収帯のピーク間が狭く、吸収帯広がり
が重なっているため28Si−Fを除いたピーク位置の判
別は困難になっている。
【0014】赤外多光子分解では、分解を起こしたSi
26分子は少なくとも17個以上の光子が吸収されてい
る。分子が多数の光子を吸収する過程に対応する多光子
吸収スペクトルは、図1のような通常の1光子吸収した
場合のスペクトルとは異なり、スペクトルピークが長波
長側、波数では低波数側にシフトし、スペクトルの幅も
広くなることが知られている。また1光子吸収スペクト
ルと同じ程度の同位体シフトも存在することが予想さ
れ、事実、実験においても裏付けられている。
【0015】(レーザー法の原理)そこで異なる同位体
を含む分子間にみられる赤外多光子吸収の違いに着目
し、適切な波長のレーザー光を照射して、特定の同位体
を含む分子を選択的に多光子励起し、分解に導くことが
可能となる。その結果、同位体は分解生成物あるいは未
分解原料中に濃縮される。これが赤外多光子分解に基づ
く同位体の分離・濃縮法の原理である。
【0016】(レーザーによるシリコン同位体の分離・
濃縮法の現状)炭酸ガスレーザーの単色のパルス光によ
るSi26の赤外多光子分解は、すでに詳細に研究され
ている(M. Kamioka, S. Arai, Y. Ishikawa, S. Isomu
ra, and N. Takamiya, Chem. Phys. Lett., 119, 357
(1985); M. Kamioka, Y. Ishikawa, H. Kaetsu, S. I
somura, and S. Arai, J. Phys. Chem., 90, 5727(198
6))。その結果によれば、950cm-1付近のパルス
光で分解を誘起すると、気体生成物SiF4あるいは固
体生成物(SiF2m中に29Siおよび30Siが高濃縮
され、一方、未分解のSi26中に28Siが高濃縮され
る。
【0017】この方法は小型の装置で効率良くシリコン
同位体を分離・濃縮できる技術である。すでに連続的な
原料の供給、高出力炭酸ガスレーザーによる照射、連続
的な生成物および未分解原料の回収などの操作を組合
せ、ある規模の分離・濃縮が行なわれている。さらに開
発を進めればシリコン同位体を安価に大量供給すること
が十分可能である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】(従来のレーザー法の
問題点)これまでの研究開発で明らかになったことであ
るが、単色のレーザー光を用いてシリコン同位体の分離
・濃縮を行なう場合には、950cm-1付近の波数のレ
ーザー光を照射する必要がある。これよりもSi26
吸収帯に近い側、すなわち高波数側のレーザー光を照射
すると、分解の収量は増大するが同位体の選択性が激減
する。また低波数側のレーザー光を照射すると、分解の
収量、同位体の選択性共に減少する。しかし950cm
-1付近の1光子吸収は、図1を見れば分かる通りどの同
位体分子に対しても非常に小さい。したがって分子が最
初に光子を吸収する効率は極めて悪く、後続する多光子
吸収の効率も悪いと見なさざるを得ない。
【0019】われわれは将来のシリコン同位体の大規模
な利用に応ずるために、レーザー分離・濃縮法の高効率
化を目指して、鋭意実験・検討の結果、以下に述べる方
法を考案した。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記の問題点を解決する
ために、本発明の一態様においては、波長の異なる複数
の炭酸ガスレーザーのパルス光を同期させてSi26
照射する。具体的には、本発明は、レーザーによるシリ
コンのハロゲン化物の赤外多光子分解に基づく、28
i、29Si、30Siなどのシリコン同位体の分離・濃縮
の高効率化法であって、異なる波長の複数のレーザー源
からレーザー光を発振し;発振されたレーザー光をCa
2結晶板を通過させるか又はレーザー電極の放電電圧
を制御することにより該レーザー光のエネルギーを調節
し;そして前記調節したレーザー光を前記ハロゲン化物
に同期させて照射することを特徴とする分離・濃縮の高
効率化法を課題解決手段とする。本発明は、また、レー
ザーによるシリコンのハロゲン化物の赤外多光子分解に
基づく、28Si、29Si、30Siなどのシリコン同位体
の分離・濃縮の高効率化のための装置であって、前記ハ
ロゲン化物にレーザー光を照射するための異なる波長の
複数のレーザー源;前記レーザー源から発振されるレー
ザー光を通過させることによりそのエネルギーを調節す
るためのCaF2結晶板;その先端にNaCl結晶ある
いはKCl結晶の窓を有し、その内部に封入された前記
ハロゲン化物に該窓を通して入射されるレーザー光を照
射するための反応器;及び、前記複数のレーザー源から
のパルス光を同時に前記反応器を通過するように調節す
るための遅延発生器を備える装置を解決手段とする。
【0021】
【発明の実施の形態】(2波長照射の有効性の説明)S
26のようなやや複雑な分子の赤外多光子吸収では、
最初の数個のレーザー光子を吸収する段階が効率向上の
重要な問題で、その光子を吸収した後の多光子吸収は常
に高い効率を維持できると考えられている。その理由は
複雑であるが、要するに数個の光子を吸収した後は分子
の多数の振動モードに様々なエネルギーを持った状態が
密に生じ、光学遷移と光子エネルギーとの間の不一致が
解消するためである。
【0022】図1の吸収スペクトルを見ると10Rの発
振線がある965〜975cm-1の領域では29Siおよ
30Siを含む同位体分子の吸収が比較的強い。さらに
同位体シフトも大きい。そこでわれわれはまずSi26
に、炭酸ガスレーザー発振線の10Rの1つを選び、そ
の極く弱いパルス光を照射した。続いて別の炭酸ガスレ
ーザー発振線の10Pから1つを選び、その強いパルス
光を照射して赤外多光子分解に導いた。Si26に対す
る10Rの極く弱いパルス光の照射は、初期段階におけ
る1〜3個のレーザー光子の効率的かつ同位体選択的な
吸収による励起を意図し、10Pの強いパルス光の照射
はその後の十数個に及ぶ多光子励起を意図している。
【0023】10Rの発振線のパルス光は極めて弱くす
る必要がある。以前の研究から明らかであるが、仮にこ
のパルス光が必要以上に強く、赤外多光子分解が誘起さ
れると、その分解における同位体の選択性はほとんどな
い。分子1個当たり数個の光子の吸収が同位体選択的に
起こる程度にパルス光の強度を抑えておく必要がある。
パルスごとのレーザー光強度(フルエンス)の調節に
は、CaF2結晶板を使用することができ、また、レン
ズ等の当技術分野において既知のあらゆる適する光学系
を使用することができる。
【0024】10Pの強いパルス光の照射は10Rの弱
いパルス光の照射による効果が残っている間、すなわち
Si26分子が振動励起状態にとどまっている間に行な
われなければならない。ここで本発明において、「同期
させる」とは、一方のパルス光の照射による効果が残っ
ている間、すなわちSi26等のレーザー被射体分子が
該パルス光の照射により振動励起状態にとどまっている
間に他方のパルス光を照射することをいう。
【0025】異なる波長のレーザー光の照射による分離
・濃縮の高効率化の手法は、Si26の990cm-1
近の吸収帯だけにとどまらず、他の吸収帯、例えば82
0cm-1付近の吸収帯による分離・濃縮においても応用
可能である。また化合物もSi26だけに止まらず、例
えばSiF4、SiF3H、SiF3Cl、SiF3Br、
SiF3CH3などで代表される他のシリコンのハロゲン
化物を用いたレーザー同位体分離・濃縮においても応用
可能である。さらに赤外レーザーに関してもCO2(炭
酸ガス)レーザーだけに限定されるものではなく、例え
ば自由電子レーザーを使うことも可能である。本発明に
使用することができるレーザー波長は2種又は3種以上
であってもよく、これら複数のレーザー光の被射体への
入射方向は、同期させて照射するものであれば、あらゆ
る角度、例えば、対向方向、同方向又は直交方向などで
あってもよい。
【0026】
【実施例】(実施例1)詳細な実験条件および実験結果
は、それぞれの実施例および比較例において記載する。
図2に実験装置および実験操作をブロック形式で示し
た。反応器1は内径2.0cmのパイレックス(登録商
標)製ガラス管を十文字に組み合わせた形であり、4つ
のガラス管の先端には、NaCl結晶あるいはKCl結
晶の窓2が、フッ素ゴム製Oリングおよびテフロン(登
録商標)製パッキングを使って完全に気密に取り付けら
れている。NaCl結晶あるいはKCl結晶の窓2は直
径4.0cm、厚さ0.4cmの円盤で、広い範囲の赤
外光を透過する。反応器1のパルスレーザー光3が通過
する方向の長さは10.0cmであり、それに直交する
赤外吸収スペクトルの測定を行なう方向の長さは5.0
cmである。真空排気装置を用いて反応器1を十分に真
空排気した後、原料供給系から2TorrのSi26
反応器1に採取した。図3は質量分析計4で測定した原
料Si26中の質量スペクトルである。Si2628
28SiF628Si29SiF628Si 30SiF629
Si29SiF629Si30SiF630Si30SiF6
6種類の同位体分子から構成される。これらのうち29
29SiF629Si30SiF630Si30SiF6の存
在割合は小さく、質量数151、152および153に
それぞれ28Si28SiF5 +28Si29SiF5 +28Si
30SiF5 +フラグメントイオンの質量スペクトルピーク
が観測される。スペクトルピーク比から28Siは92.
2%、29Siは4.7%、30Siは3.1%となり、天
然の同位体組成比と一致していることが確認できる。
【0027】炭酸ガスレーザーA5は966.23cm
-1の10R(6)線を、また炭酸ガスレーザーB6は9
54.55cm-1の10P(8)線を発振するように設
定した。また金属製の虹彩絞り7を用いて、両方のレー
ザー光3を直径1.5cmの円形にした。炭酸ガスレー
ザーA5と反応器1の間には、適切な枚数のCaF2
晶板8を挿入して、反応器1内の1パルスごとのフルエ
ンスが、0.098J/cm2になるように調節した。C
aF2結晶板8は、直径4cm、厚さ0.2cmの円盤
で、966.23cm-1の赤外光を多少吸収する。した
がってこの結晶板8を挿入するごとに、パルス光のフル
エンスが段階的に減少する。赤外多光子分解の実験で
は、一般にパルスごとの光の強度をフルエンスという量
で表わす。これはレーザー光の単位断面積当りのパルス
エネルギーを示している。すなわちパルスのエネルギー
をパワーメーターで測定し、その値をパルス光の断面積
で割ったものとなる。炭酸ガスレーザーB6からのパル
ス光のフルエンスは、レーザー電極の放電電圧を制御し
て、反応器1内での値が0.76J/cm2となるように
調節した。それぞれのレーザー光3は向かい合った窓か
ら入射し、反応器1内で交差する。また炭酸ガスレーザ
ーA5からのパルス光と炭酸ガスレーザーB6からのパ
ルス光が同時に反応器1を通過するように照射タイミン
グを遅延発生器9で調節した。この実験条件のもとでS
26に、炭酸ガスレーザーA5およびB6からの各5
00パルスを照射した。
【0028】レーザー光照射前および照射後の試料の赤
外吸収スペクトルを精密に測定し、その差から原料Si
26の分解割合を求めた。上記の照射条件のもとで、3
4.7%が分解している。SiF4に対応する赤外吸収
スペクトルの部分では、28SiF429SiF430Si
4などの吸収帯が重なって観測された。赤外吸収スペ
クトル測定後、反応器1中の試料を液体窒素温度で凝縮
させて、蒸留器を含んでなる回収系内に回収した。この
操作で白色の固体生成物(SiF2mは、反応器1の内
壁に付着したままで回収されない。さらに凝縮した試料
を低温で蒸留して生成物SiF4と未分解原料Si26
とに分離した。続いて未分解原料Si2 6を質量分析計
4に導入し、シリコン同位体の組成比をSi25 +に対
応する信号の強度から求めた。図4に示す質量スペクト
ルから同位体組成比を求めると、28Siは99.63
%、29Siは0.36%、30Siは0.01%であっ
た。
【0029】(実施例2)反応器1に2TorrのSi
26を採取した。炭酸ガスレーザーA5は966.23
cm-1の10R(6)線を、また炭酸ガスレーザーB6
は954.55cm-1の10P(8)線を発振するよう
に設定した。さらに炭酸ガスレーザーA5と反応器1の
間に適切な枚数のCaF2結晶板8を挿入し、反応器1
内のフルエンスが約0.098J/cm2になるように調
節した。また炭酸ガスレーザーB6からのパルス光は、
レーザーの放電電圧を制御して反応器1内のフルエンス
が0.76J/cm2となるように調節した。この実験条
件のもとで、Si26に炭酸ガスレーザーA5およびB
6からの各1000パルスを同時に照射した。この実施
例では、Si26に多数のパルスを照射して29Siおよ
30Siを含む分子をほぼ全て分解に導き、未分解原料
Si26中に28Siを高濃縮することを意図している。
【0030】レーザー光照射前後の試料の赤外吸収スペ
クトル差から求めたSi26の分解割合は46.9%で
あった。照射後の試料は低温で蒸留してSiF4とSi2
Fとに分離し、さらにそれぞれについて質量分析を行な
った。分析の結果、図5に示した質量スペクトルから、
未分解原料Si26中の29Siおよび30Siは質量分析
計4ではほとんど認められず、未分解原料中には28Si
がほぼ100%近く濃縮されていることが明らかとなっ
た。
【0031】(比較例1)反応器1に2TorrのSi
26を採取した。この比較例では炭酸ガスレーザーA5
は使用しなかった。したがって1波長のみでのレーザー
照射の実験である。炭酸ガスレーザーB6は954.5
5cm-1の10P(8)線を発振するように設定した。
以前の研究で明らかであるが、この発振線は未分解のS
26中に 28Siを高濃縮する場合に最適な線である。
反応器1内のフルエンスは、レーザーの放電電圧を制御
して1.0J/cm2となるように調節した。この実験条
件のもとでSi26に炭酸ガスレーザーB6からの20
00パルスを照射した。
【0032】レーザー光照射前および照射後の試料の赤
外吸収スペクトル差から、Si26の分解割合を求め
た。割合は35.6%となった。照射後の試料は低温で
蒸留してSiF4とSi26とに分離し、未分解のSi2
6中のシリコン同位体組成比を質量分析計で測定し
た。28Siが99.35%、29Siが0.63%、30
iが0.02%であり、2波長照射の場合と比較する
と、28Siの濃縮度がやや低下している。また照射パル
ス数が2000であることを考慮すると、パルス当たり
の分解効率が大幅に低下している。
【0033】(比較例2)反応器1に2TorrのSi
26を採取した。炭酸ガスレーザーA5は966.23
cm-1の10R(6)線を発振するように設定した。さ
らにレーザーと反応器1との間に適切な枚数のCaF2
結晶板8を挿入して、反応器1内のフルエンスが0.1
J/cm2になるように調節した。この比較例では炭酸ガ
スレーザーB6は使用しなかった。したがって1波長の
みでのレーザー照射の実験である。この実験条件のもと
でSi26に炭酸ガスレーザーA5からの1000パル
スを照射した。
【0034】レーザー光照射前および照射後の試料の赤
外吸収スペクトル差からSiF4の生成量を求めた。S
iF4はごく少量生成されるのみで、このフルエンスで
はSi26の赤外多光子分解がほとんど起こらないこと
が判明した。赤外多光子分解を誘起するには、フルエン
スが高い炭酸ガスレーザーB6からのパルス光の同時照
射が必要である。
【0035】
【発明の効果】実施例1においては、Si26に10R
(6)の弱いパルス光と10P(8)の強いパルス光を
同時に500パルスづつ照射すると、Si26の34.
7%が分解し、残るSi26中の28Siの濃度は99.
63%に達している。実施例2においては、同じ条件で
2つのパルス光を1000パルスずつまで照射すると、
Si26の46.9%が分解し、残るSi26中の28
iの濃度はほぼ100%に達している。比較例1は従来
から行なわれている単一波長照射の例で、Si26に1
0P(8)の強いパルス光を2000パルス照射する
と、Si26の35.6%が分解し、残るSi26中の
28Siの濃度は99.35%に達している。比較例2
は、Si26に10R(6)の弱いパルス光だけを10
00パルス照射しても、Si26の分解はほとんど起こ
らないことを示している。実施例1および2と比較例1
を見れば明らかなように、複数の異なる波長のレーザー
光を同時に照射するシリコン同位体の分離・濃縮法で
は、従来の単一波長のレーザー光のみを用いる場合と比
較して、500パルスすなわち4分の1というはるかに
少ないパルス照射で35%程度の分解が起こり、より高
いレベルの選択性が得られる。さらに1000パルスま
で照射すると、28Siの濃度はほぼ100%に達する。
実施例1と2の比較から認められたことであるが、Si
26の分解は照射パルス数に対して飽和の傾向があり、
分解は初期の段階ほど効率よく進行する。また29Siお
よび30Siの分離・濃縮も初期の段階で効率よく進行す
る。ここで開発した方法はシリコン同位体の分離・濃縮
の高効率化をもたらすもので、大規模なシリコン同位体
利用への道を拓くものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Si26の赤外吸収スペクトルにおける28
i−F、29Si−F、および30Si−Fの伸縮振動によ
る吸収帯、並びに炭酸ガスレーザーの発振線10Rおよ
び10Pの相対強度を示す図である。
【図2】 実験装置および実験操作をブロック形式で示
す図面である。
【符号の説明】
1 反応器 2 窓 3 レーザー光 4 質量分析計 5 炭酸ガスレーザーA 6 炭酸ガスレーザーB 7 虹彩絞り 8 CaF2結晶板 9 遅延発生器
【図3】 質量分析計で測定した原料Si26の天然同
位体組成比を示す質量スペクトルである。
【図4】 実施例1で500パルス照射した後に質量分
析計で測定したSi26の質量スペクトルである。
【図5】 実施例2で1000パルス照射した後に質量
分析計で測定したSi 26の質量スペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横山 淳 茨城県那珂郡東海村白方字白根2番地の4 日本原子力研究所東海研究所内 (72)発明者 大場 弘則 茨城県那珂郡東海村白方字白根2番地の4 日本原子力研究所東海研究所内 (72)発明者 橋本 雅史 茨城県那珂郡東海村白方字白根2番地の4 日本原子力研究所東海研究所内 (72)発明者 柴田 猛順 茨城県那珂郡東海村白方字白根2番地の4 日本原子力研究所東海研究所内 (72)発明者 荒井 重義 東京都豊島区池袋3丁目16番8号103 (72)発明者 石井 武 茨城県那珂郡東海村舟石川622番地12 ニ ュークリア・デベロップメント株式会社内 (72)発明者 大家 暁雄 茨城県那珂郡東海村舟石川622番地12 ニ ュークリア・デベロップメント株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザーによるSi26で代表されるシ
    リコンのハロゲン化物の赤外多光子分解に基づく、28
    i、29Si、30Siなどのシリコン同位体の分離・濃縮
    において、ハロゲン化物に異なる波長の複数の赤外パル
    スレーザー光を同期させて照射することを特徴とする分
    離・濃縮の高効率化法。
  2. 【請求項2】 炭酸ガスレーザーによるSi26の赤外
    多光子分解に基づく、 28Si、29Si、30Siなどのシ
    リコン同位体の分離・濃縮において、Si26に異なる
    波長の複数の炭酸ガスレーザーパルス光を同期させて照
    射することを特徴とする分離・濃縮の高効率化法。
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