JP2003051329A - 固体高分子形燃料電池の運転方法 - Google Patents

固体高分子形燃料電池の運転方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】固体高分子電解質膜の含水率が適正に保持され
て、長時間にわたり安定して運転できる運転方法を得
る。 【解決手段】反応ガスの加湿量を相対的に低いレベル
(X1 )に調整して運転し、セル電圧が規定値V1 を下
回ると反応ガスの加湿量を相対的に高いレベル(X2 )
に調整して運転し、セル電圧が規定値V2 を上回れば低
いレベル(X1)に調整して運転する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、固体高分子形燃
料電池の運転方法、特に、反応ガスの加湿方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】固体高分子電解質膜を燃料極と空気極で
挟持してセルが構成される固体高分子形燃料電池におい
て、燃料極に水素を含む燃料ガスを供給し、空気極に酸
素を含む酸化剤ガス(空気)を供給すると、燃料極では
供給された水素が燃料極触媒層中の触媒金属により水素
イオンとなる。生じた水素イオンは燃料極触媒層中の電
解質皮膜から固体高分子電解質膜へと移動し、さらに、
空気極触媒層中の電解質皮膜を通って空気極触媒層中の
触媒金属へと到達し、空気極に供給された酸素と反応し
て水を生成する。この電気化学反応に伴って外部に電気
エネルギーが取出される。
【0003】固体高分子電解質膜および電解質皮膜は湿
潤になるほど高い導電性を示し、含水率が高いほど水素
イオンの移動速度が速くなるので、これらの膜は湿潤に
保持して使用される。固体高分子電解質膜および電解質
皮膜を湿潤に保持する方法としては、燃料ガスおよび/
あるいは酸化剤ガス(空気)を予め加湿してセルへ供給
する方法が一般に採られている。
【0004】図3は、従来の固体高分子形燃料電池の反
応ガスの加湿方法の一例を模式的に示す要部のフロー図
である。図において、1は燃料電池本体を構成する燃料
極、2は同じく燃料電池本体を構成する空気極、3は、
燃料電池本体を所定の運転温度に保持するためにくみ込
まれた冷却機構であり、4は、冷却機構3に冷却水を循
環供給するための冷却システムである。また、5は燃料
極側加湿タンク、6は空気極側加湿タンクで、いずれに
も常に一定量の純水が貯水されている。本構成では、外
部より導入された燃料ガスは、まず燃料極側加湿タンク
5へと送られ、純水中を通過させて十分に加湿させたの
ち燃料極1へ供給される。同様に、空気は、空気極側加
湿タンク6へと送られ、十分に加湿させたのち空気極2
へと供給される。このとき、各ガスの加湿量は各タンク
の貯水の温度を制御することによって調整される。
【0005】図4は、従来の固体高分子形燃料電池の反
応ガスの加湿方法の他の例を模式的に示す要部のフロー
図である。図において、1,2,3は、図3と同じく、
電池本体を構成する燃料極、空気極、冷却機構であり、
4は冷却システムである。本例の特徴は、図3の例で用
いられていた加湿タンク5,6に替わって、水蒸気透過
膜9を備えた加湿装置が使用されていることにある。こ
れらの加湿装置は、ガスを流すガス側空間と加湿水を流
す温水側空間、およびこれら二つの空間を隔てる水蒸気
透過膜9により構成されており、水蒸気透過膜9を通し
て温水側からガス側へと透過する水蒸気によってガス側
空間を流れるガスの加湿が行われる。このとき、ガス側
空間を流れるガスの加湿量は、供給ガスと水蒸気透過膜
9の接触面積により制御される。なお、図4に示した例
では、電池本体の冷却機構3を冷却する冷却水が燃料極
側加湿装置7、空気極側加湿装置8の加湿用温水として
用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、固体高
分子形燃料電池においては、供給ガス、すなわち燃料ガ
スおよび/あるいは酸化剤ガス(空気)を加湿して電極
に供給することによって、固体高分子電解質膜および触
媒層中の電解質皮膜を湿潤に保持して導電性を高め、電
池性能の向上を図っている。しかしながら、このような
方策を講じた固体高分子形燃料電池においても、なお、
以下のごとき難点がある。
【0007】すなわち、供給ガスを加湿して送る方式を
採れば、固体高分子電解質膜および触媒層中の電解質皮
膜が湿潤となり導電性が高くなるので、供給ガスの加湿
量を高めれば高めるほど運転初期のセル電圧が高まる
が、一方、このように供給ガスの加湿量を高めれば、固
体高分子電解質膜および触媒層中の電解質皮膜が含水率
の上昇によって膨潤し、触媒層中の空孔の割合の低下を
もたらすので、運転の継続とともに触媒層中での供給ガ
スの拡散性能が低下し、セル電圧が大きく低下するとい
う問題がある。
【0008】図5は、従来の固体高分子形燃料電池の運
転方法におけるセル電圧の時間変化を示す特性図であ
る。図には、ガス加湿量を高くして運転した場合の特性
Aと、相対的に低いガス加湿量で運転した場合の特性B
が図示されている。図に見られるように、ガス加湿量を
高くして運転した場合(A)には、運転初期のセル電圧
は高くなるが、運転時間の経過とともにセル電圧は大幅
に低下する。これに対して、相対的に低いガス加湿量で
運転した場合(B)には、セル電圧の低下率は低く抑え
られるが、運転初期のセル電圧は低くなる。なお、特性
Bのごとくガス加湿量を低く抑えれば、固体高分子電解
質膜等の膨潤に起因する触媒層中での供給ガスの拡散性
能の低下によりもたらされるセル電圧の低下を生じる危
険性は低く抑えられるが、長時間運転を持続すると固体
高分子電解質膜等の含水率が下がり、導電性が低下し
て、セル電圧が低下する。
【0009】本発明の目的は、上記のごとき従来技術の
難点を克服し、固体高分子電解質膜等の含水率が適正に
保持されて、所定のセル電圧が長時間にわたり安定して
得られる固体高分子形燃料電池の運転方法を提供するこ
とにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明においては、固体高分子電解質膜を燃料極
と空気極で挟持してセルを構成し、燃料極に燃料ガス
を、また空気極に空気を供給して電気化学反応により電
気エネルギーを得る固体高分子形燃料電池の運転方法に
おいて、(1)上記の燃料ガスと空気のうち少なくとも
いずれか一方の加湿量を第1の加湿レベルに調整して運
転し、セルの出力電圧が第1の規定電圧を下回ったと
き、加湿量をより高い第2の加湿レベルに調整して運転
し、さらにセルの出力電圧が第1の規定電圧より高い第
2の規定電圧を上回ったとき、加湿量を再び第1の加湿
レベルに調整して運転することとする。
【0011】(2)あるいは、上記の燃料ガスと空気の
うち少なくともいずれか一方の加湿量を第1の加湿レベ
ルに調整して運転し、セルの出力電圧が第1の規定電圧
を下回ったとき、加湿量をより高い第2の加湿レベルに
調整して運転し、第2の加湿レベルでの運転を規定時間
行ったのち、加湿量を再び第1の加湿レベルに調整して
運転することとする。
【0012】(3)さらに上記の(1)または(2)に
おいて、加湿量の第1の加湿レベルへの調整を、水蒸気
透過膜を透過した水蒸気により加湿する方式の第1の加
湿装置にガスを通流することにより行い、かつ、加湿量
の第2の加湿レベルへの調整を、同じく水蒸気透過膜を
透過した水蒸気により加湿する方式の第2の加湿装置と
第1の加湿装置にガスを直列に通流することにより行う
こととする。
【0013】燃料ガスと空気のうち少なくともいずれか
一方の加湿量を第1の加湿レベルに調整して運転すれ
ば、固体高分子電解質膜および触媒層中の電解質皮膜が
湿潤に保持されて所定のセル電圧が得られる。運転を継
続するとセル電圧は低下するが、上記の(1)または
(2)のごとく、セル電圧が第1の規定電圧を下回った
とき、加湿量をより加湿量の高い第2の加湿レベルに調
整して運転すれば、ガスにより持ち込まれる水分量が増
加し、固体高分子電解質膜および触媒層中の電解質皮膜
の含水率が運転初期と同程度に戻ることによってセル電
圧は回復する。引き続き、上記の(1)のごとく、セル
電圧が第2の規定電圧を上回ったとき加湿量を再び第1
の加湿レベルに調整して運転するか、あるいは上記の
(2)のごとく、第2の加湿レベルでの運転を規定時間
行ったのち、加湿量を再び第1の加湿レベルに下げて運
転することとすれば、固体高分子電解質膜等の膨潤に起
因する触媒層中での供給ガスの拡散性能の低下が回避さ
れ、セル電圧の低下率を小さく抑えて運転することがで
き、このサイクルの継続によって、固体高分子形燃料電
池を長時間安定して運転できることとなる。
【0014】また、上記の(3)のごとく、ガスの加湿
手段として、水蒸気透過膜を透過した水蒸気により加湿
する方式の第1の加湿装置と第2の加湿装置を備え、ガ
スを第1の加湿装置に通流することにより加湿量の第1
の加湿レベルへの調整を行い、ガスを第2の加湿装置と
第1の加湿装置に直列に通流することにより加湿量の第
2の加湿レベルへの調整を行うこととすれば、加湿量の
変更、調整を応答性よく、かつ的確に行うことができ
る。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例を挙げて説
明する。図1は、本発明の固体高分子形燃料電池の運転
方法における反応ガスの加湿方法を示すフロー図であ
る。また、図2は、本実施例におけるガス加湿量とセル
電圧の時間変化を示す特性図である。
【0016】本実施例の固体高分子形燃料電池には、図
1に示したように、燃料電池本体の燃料極1に供給する
燃料ガスの加湿手段として、水蒸気透過膜9を備えた第
1の加湿装置7および同じく水蒸気透過膜9を備えた第
2の加湿装置10が、また、空気極2に供給する酸化剤
ガス(空気) の加湿手段として、水蒸気透過膜9を備え
た第1の加湿装置8および同じく水蒸気透過膜9を備え
た第2の加湿装置11が備えられており、電池本体の冷
却機構3を冷却する冷却システム4の冷却水がこれらの
加湿装置の加湿用温水として用いられている。
【0017】本実施例の運転方法においては、通常運転
時には、図1(a)のごとく、燃料ガス、酸化剤ガス
(空気)ともに、第1の加湿装置7、8のみにより加湿
して、それぞれ燃料極、酸化剤極に供給し、燃料電池の
発生電圧が規定値V1を下回ると、図1(b)のごと
く、燃料ガス、酸化剤ガス(空気)とも、第2の加湿装
置10,11、および第1の加湿装置7、8を通して加
湿量を高くする高加湿運転を行って、燃料極、酸化剤極
に供給する。この高加湿運転により燃料電池の発生電圧
が上昇し、規定値V2 を上回ると、燃料ガス、酸化剤ガ
ス(空気)とも、第2の加湿装置10,11への通流を
停止して、図1(a)のごとき構成に復して通常運転を
行うこととする。
【0018】このように反応ガスの加湿量を切り換えて
固体高分子形燃料電池を運転すれば、図2に見られるご
とく、セル電圧は、通常運転(ガス加湿量X1 )におい
ては緩やかに減少し、規定値V1 を下回ると高加湿運転
(ガス加湿量X2 )への移行とともに急激に上昇、回復
し、規定値V2 を上回るとともに再び通常運転(ガス加
湿量X1 )に復するサイクルを繰り返すこととなる。し
たがって、本運転方法により運転すれば、固体高分子形
燃料電池のセル電圧はV1 とV2 との間に制御され、安
定して運転されることとなる。
【0019】なお、上記の実施例においては、燃料極1
に供給する燃料ガスの加湿手段に第2の加湿装置10を
付加するとともに、空気極2に供給する酸化剤ガス(空
気)の加湿手段にも第2の加湿装置11を付加して通常
運転と高加湿運転を切り換えて運転しているが、燃料ガ
スの加湿手段にのみ第2の加湿装置10を付加して通常
運転と高加湿運転を切り換えて運転することとしてもよ
く、また酸化剤ガス(空気) の加湿手段にのみ第2の加
湿装置11を付加して通常運転と高加湿運転を切り換え
て運転することとしてもよい。
【0020】また、上記の実施例においては、高加湿運
転へ移行したのち、セル電圧が規定値V2 を上回ると再
び通常運転へと復しているが、高加湿運転を規定時間行
ったのち、加湿量を再び第1の加湿レベルに調整して運
転することとしても、セル電圧はV1 以上の電圧に保持
される。このとき、高加湿運転を持続させる規定時間
は、その固体高分子形燃料電池の特性に合わせて選定さ
れるもので、規定時間が長いほどセル電圧の上限値が高
くなる。
【0021】また、上記の実施例においては水蒸気透過
膜9を透過する水蒸気によってガスの加湿を行う方式の
加湿装置が加湿手段としてに用いられているが、この方
式の加湿装置に替えて、図3に示したような純水中を通
過させてガスを加湿する方式の加湿タンクを用いること
としてもよい。なお、この方式においては、加湿タンク
中の温水の温度の切り換えによって通常運転と高加湿運
転の切り換えが行われる。
【0022】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、固体高
分子形燃料電池を、請求項1、あるいは請求項2、さら
には請求項3に記載のごとき方法を用いて運転すること
としたので、運転中のセル電圧の低下が抑制され、所定
のセル電圧が長時間にわたり安定して得られることとな
った。
【0023】したがって、固体高分子形燃料電池を本方
法のごとく運転するよう構成すれば、長時間安定して効
率良く運転できるので、例えば一般家庭用等の定置型電
源としての使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子形燃料電池の運転方法の実
施例における反応ガスの加湿方法を示すフロー図で、
(a)は通常運転時のフロー図、(b)は高加湿運転時
フロー図
【図2】本発明の固体高分子形燃料電池の運転方法の実
施例におけるガス加湿量とセル電圧の時間変化を示す特
性図
【図3】従来の固体高分子形燃料電池の運転方法におけ
る反応ガスの加湿方法の一例を模式的に示すフロー図
【図4】従来の固体高分子形燃料電池の運転方法におけ
る反応ガスの加湿方法の他の例を模式的に示すフロー図
【図5】従来の固体高分子形燃料電池の運転方法におけ
るセル電圧の時間変化を示す特性図
【符号の説明】
1 燃料極 2 空気極 3 冷却機構 4 冷却システム 7 第1の加湿装置(燃料極側) 8 第1の加湿装置(空気極側) 9 水蒸気透過膜 10 第2の加湿装置(燃料極側) 11 第2の加湿装置(空気極側)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固体高分子電解質膜を燃料極と空気極で挟
    持してセルを構成し、燃料極に燃料ガスを、また空気極
    に空気を供給して電気化学反応により電気エネルギーを
    得る固体高分子形燃料電池の運転方法において、 前記の燃料ガスと空気のうち少なくともいずれか一方の
    加湿量を第1の加湿レベルに調整して運転し、前記のセ
    ルの出力電圧が第1の規定電圧を下回ったとき、前記の
    加湿量を第1の加湿レベルより高い第2の加湿レベルに
    調整して運転し、さらに前記のセルの出力電圧が第1の
    規定電圧より高い第2の規定電圧以上となったとき、前
    記の加湿量を再び第1の加湿レベルに調整して運転する
    ことを特徴とする固体高分子形燃料電池の運転方法。
  2. 【請求項2】固体高分子膜電解質膜を燃料極と空気極で
    挟持してセルを構成し、燃料極に燃料ガスを、また空気
    極に空気を供給して電気化学反応により電気エネルギー
    を得る固体高分子形燃料電池の運転方法において、 前記の燃料ガスと空気のうち少なくともいずれか一方の
    加湿量を第1の加湿レベルに調整して運転し、前記のセ
    ルの出力電圧が第1の規定電圧以下となったとき、前記
    の加湿量を第1の加湿レベルより高い第2の加湿レベル
    に調整して運転し、第2の加湿レベルでの運転を規定時
    間行ったのち、前記の加湿量を再び第1の加湿レベルに
    調整して運転することを特徴とする固体高分子形燃料電
    池の運転方法。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の固体高分子形燃
    料電池の運転方法において、加湿量の前記の第1の加湿
    レベルへの調整が、水蒸気透過膜を透過した水蒸気によ
    り加湿する方式の第1の加湿装置に該ガスを通流するこ
    とにより行われ、かつ、加湿量の前記の第2の加湿レベ
    ルへの調整が、同じく水蒸気透過膜を透過した水蒸気に
    より加湿する方式の第2の加湿装置と前記の第1の加湿
    装置に該ガスを直列に通流することにより行われること
    を特徴とする固体高分子形燃料電池の運転方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2007083616A1 (ja) * 2006-01-17 2007-07-26 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. 燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法
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