JP2003035197A - シリンダヘッド、及びその中子構造、並びに冷却通路の形成方法 - Google Patents

シリンダヘッド、及びその中子構造、並びに冷却通路の形成方法

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JP2003035197A JP2002135874A JP2002135874A JP2003035197A JP 2003035197 A JP2003035197 A JP 2003035197A JP 2002135874 A JP2002135874 A JP 2002135874A JP 2002135874 A JP2002135874 A JP 2002135874A JP 2003035197 A JP2003035197 A JP 2003035197A
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Hiroshi Tada
博 多田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷却液の導入に伴う燃焼室上方での温度分布
の偏りを抑制しつつ燃焼室を効率良く冷却可能なシリン
ダヘッドの冷却技術を提供する。 【解決手段】 燃焼室1a及びこの燃焼室1aに通じる
複数のポート2,3を備えると共に、これらポート2,
3の周囲を通じて燃焼室1a上方に冷却液を循環させる
冷却通路20を備えたシリンダヘッド1であって、冷却
通路20は、ポート2,3と燃焼室1aとの接続部周囲
(例えば、弁間部分)に於いて燃焼室1aから遠ざかる
方向に一部迂曲して形成されていることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリンダヘッドの
冷却技術に関し、より詳細には、内部に冷却通路を備え
たシリンダヘッド、内部に冷却通路を備えたシリンダヘ
ッドを形成するための中子構造、その冷却通路の形成方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車などに搭載される内燃機関、特
に、機関出力を向上させるために過給機を備えた内燃機
関では、その過給に起因して燃焼室が高温高圧に晒され
る。このため燃焼室を構成するシリンダヘッドには、燃
焼室を冷却すべくウォータジャケットが設けられてい
る。
【0003】また、燃焼室の冷却に絡み、排気ポート及
び吸気ポートの間を通じて燃焼室上方に冷却水を導く冷
却水穴を備えたシリンダヘッドもある。このシリンダヘ
ッドとしては、例えば、実開平7−25254号公報に
開示された技術がある。
【0004】上記公報によれば、吸気ポートと排気ポー
トの間にドリル加工によって直線状の冷却水穴を形成
し、熱的に厳しい弁間部分(吸気ポートと排気ポートの
間)に冷却水を導入して、その弁間部分を積極的に冷却
している。また、同公報によれば、この冷却水穴から燃
焼室側に向かって、放電加工による窪み(凹部)を形成
し、より燃焼室に近い位置に冷却水を導けるようにして
いる。つまり、冷却水穴から燃焼室にかけての肉厚を減
らし、燃焼室上方の冷却効率を上げている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
冷却方法では、その窪み内に冷却水が淀み易く、例え
ば、機関停止直後及び低回転運転時等、冷却水の還流率
が低下する状況においては、窪み内部の冷却水が短時間
且つ局所的に昇温する現象が見られた。また、従来の構
造では、燃焼室直上の肉厚が放電加工によって薄肉化さ
れているため、この熱容量の少なさも影響して、さらな
る冷却水の温度上昇を招いていた。つまり、弁間部分の
局所的な冷却によって、燃焼室に歪みを与える虞があ
る。
【0006】また、弁間部分にリセス加工が施されたシ
リンダヘッドでは、その弁間部分において肉厚が減少す
るため、肉厚を確保すべく直線状の冷却水穴を各ポート
から遠ざけて配置する必要がある。従ってこの場合に
は、上記にも増して深い窪みが必要になる。なお、リセ
ス加工とは、弁間部分に形成された鋭角部分を予め切削
しておき、その弁間部分における局所的な加熱を未然に
防止する加工技術である。
【0007】また、上記ではドリル加工で冷却水穴を形
成するため、そのドリル加工にて形成される冷却水穴は
必然的に直線的なものとなる。したがって、複数のポー
トが接続される燃焼室の上方では、その配置に限界が在
る。
【0008】本発明は、上記した技術的背景を考慮しな
されたもので、冷却液の導入に伴う燃焼室上方での温度
分布の偏りを抑制しつつ燃焼室を効率良く冷却可能なシ
リンダヘッドの冷却技術を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記した技術的課題を解
決するため、本発明では以下の手段を採用した。すなわ
ち、本発明のシリンダヘッドは、燃焼室及びこの燃焼室
に通じる複数のポートを備えると共に、これらポートの
周囲を通じて前記燃焼室上方に冷却液を循環させる冷却
通路を備えたシリンダヘッドであって、前記冷却通路
は、前記ポートと燃焼室との接続部周囲に於いて前記燃
焼室から遠ざかる方向に一部迂曲して形成されているこ
とを特徴とする。
【0010】このように構成された本発明のシリンダヘ
ッドでは、ポートの周囲を通じて燃焼室上方に冷却液を
導く冷却通路を備えている。また、冷却通路は、冷却通
路の配置に伴う燃焼室上方での温度分布の偏りを抑制す
べく、ポートと燃焼室との接続部周囲に於いて燃焼室か
ら遠ざかる方向に一部迂曲している。つまり、冷却通路
の配置に伴い肉厚が不足しがちなポートと燃焼室との接
続部周囲において冷却通路を一部迂曲させるため、その
冷却通路と燃焼室との間に十分な肉厚が確保される。よ
って肉厚の不足に起因した接続部周囲の過剰な冷却が抑
制され、また、肉厚の不足に伴う剛性の不足も解消され
る。
【0011】なお、本発明で「冷却通路が一部迂曲す
る」とは、通路全体が迂曲した状態に限られず、通路内
において燃焼室側に面した壁面のみが、通路内部に張り
出した状態をも含む概念である。
【0012】また、前記ポートに関し、前記ポートの開
口端には、このポート内に設けられる弁体の弁座が、該
ポートの開口端からその外方に張り出して形成され、前
記冷却通路は、前記ポートの開口端から張り出した弁座
の近傍で前記燃焼室から遠ざかる方向に迂曲している構
成としてもよい。
【0013】この構成では、弁体の弁座部分すなわちバ
ルブシートの近傍において、燃焼室から遠ざかる方向に
冷却通路を迂曲させている。つまり、直線状の冷却通路
では回避し難いバルブシート近傍での薄肉化が解消さ
れ、以て、肉厚の不足に起因したバルブシート近傍での
過剰冷却と、剛性不足が抑制される。
【0014】また、前記冷却通路に関し、前記冷却通路
は、複数設けられたポートとポートの間を通り、且つ、
そのポート間における幅の狭い箇所で前記燃焼室から遠
ざかる方向に迂曲している構成としてもよい。
【0015】この構成では、ポートとポートの間に冷却
通路を通すため、燃焼室において熱的に厳しいポート間
すなわち弁間部分が積極的に冷却される。また、ポート
間における幅の狭い箇所にて冷却通路が迂曲しているた
め、冷却通路の配置に伴い肉厚が不足がちな弁間部分の
肉厚も十分に確保できる。なお、上記において幅の狭い
部分とは、冷却通路の配置において燃焼室との間に十分
な肉厚を確保しがたい区間に相当する。
【0016】また、前記冷却通路として、前記ポートの
周囲を通じて燃焼室上方に冷却液を導入する導入路と、
その導入路を通じて流れ込んだ冷却液を他のポート周囲
を通じて燃焼室上方より排出する排出路と、を備え、且
つその本数が前記導入路および排出路で異なる場合、前
記本数の少ない流路は、前記本数の多い流路に較べて前
記燃焼室との間における熱の伝達量が減少する流路形状
を備える構成としてもよい。
【0017】この構成では、冷却通路として燃焼室上方
に冷却液を導入する導入路、及び導入路を通じて流れ込
んだ冷却液を燃焼室上方より排出する排出路を備えてい
る。また、その本数が導入路及び排出路で異なる場合、
本数の少ない流路では、冷却水の流量及び流速共に、本
数の少ない流路に較べて増加するため冷却効率が高くな
る。そこで本構成では、冷却効率の差を減少させるべく
本数の少ない流路において冷却効率を減らす流路形状と
し、燃焼室上方での温度分布の偏りを抑制している。な
お、上記で流路形状とは、流路そのものの形状に限られ
ず、流路の配置等をも含む概念である。
【0018】また、その流路形状として、前記本数の少
ない流路は、前記本数の多い流路に較べて燃焼室から遠
い位置を通る流路形状を備える構成としてもよい。つま
り、燃焼室から流路を遠ざけることで冷却効率を調節
し、燃焼室上方での温度分布の偏りを抑制している。
【0019】また、前記本数の少ない流路は、前記本数
の多い流路に較べてその径方向における断面積が大きい
流路形状を備えた構成としてもよい。この構成では、流
路断面の拡張により冷却水の流速を下げ、冷却効率の適
性化を図っている。
【0020】また、前記本数の少ない流路は、前記本数
の多い流路に較べて、燃焼室に対向する表面積が小さい
流路形状を備えた構成としてもよい。この構成では、燃
焼室に対向する表面積すなわち受熱面積を減らし、冷却
効率の適性化を図っている。
【0021】また、本発明は、燃焼室及びこの燃焼室に
通じる複数のポートを備えると共に、これらポートの周
囲を通じて前記燃焼室上方に冷却液を循環させる冷却通
路を備えたシリンダヘッドの中子構造であって、前記ポ
ートの周囲から前記燃焼室上方にかけての冷却通路を形
成する冷却通路用の中子が配置され、この中子は、前記
ポートと燃焼室との接続部周囲に於いて前記燃焼室から
遠ざかる方向に一部迂曲して形成されていることを特徴
とする。
【0022】このように構成されたシリンダヘッドの中
子構造では、ポートの周囲から燃焼室上方にかけて冷却
通路形成用の中子が設けられている。また、この中子
は、ポートと燃焼室との接続部周囲に於いて燃焼室から
遠ざかる方向に一部迂曲しており、肉厚が不足しがちな
ポートと燃焼室との接続部周囲に於いても十分に肉厚を
確保できる。
【0023】また、前記ポートの開口端には、このポー
ト内に設けられる弁体の弁座が、該ポートの開口端から
その外方に張り出して形成され、前記中子は、前記ポー
トの開口端から張り出した弁座の近傍で前記燃焼室から
遠ざかる方向に迂曲している構成としてもよい。
【0024】この構成では、弁体の弁座部分すなわちバ
ルブシートの近傍において中子を迂曲させる。従って、
冷却通路の形成において、肉厚が薄くなりがちなバルブ
シート近傍において、その冷却通路と燃焼室との間に十
分な肉厚を確保できる。
【0025】また、前記中子は、複数設けられたポート
とポートの間を通り、且つ、そのポート間における幅の
狭い箇所で前記燃焼室から遠ざかる方向に迂曲した構成
としてもよい。
【0026】この構成では、ポートとポートの間に中子
が配置されるため、そのポート間に冷却通路が形成され
る。また、ポート間における幅の狭い箇所にて燃焼室か
ら遠ざかる方向に冷却通路が迂曲するため、冷却通路形
成時においてもポート間に十分な肉厚を確保できる。な
お、上記において幅の狭い部分とは、冷却通路形成時に
おいて燃焼室と冷却通路との間に十分な肉厚を確保しが
たい区間に相当する。
【0027】また、前記冷却通路用の中子として、前記
ポートの周囲を通じて燃焼室上方に冷却液を導入する導
入路用の中子と、その導入路用の中子にて形成される流
路を通じて流れ込んだ冷却液を他のポート周囲を通じて
燃焼室上方より排出する排出路用の中子と、を備え、且
つその個数が導入路用の中子及び排出路用の中子で異な
る場合、前記個数の少ない中子は、前記個数の多い中子
に較べて燃焼室との間における熱の伝達量が減少する中
子形状を備える構成としてもよい。
【0028】この構成では、導入路用の中子、及び導入
路用の中子にて冷却通路が形成される。また、その中子
の数が導入路用の中子及び排出路用の中子で異なると
き、冷却通路形成後において、導入路用の中子にて形成
される流路と排出路用の中子にて形成される流路との間
に冷却効率の差が生じるため、本構成では、個数の少な
い中子において、冷却効率が減少する中子形状としてい
る。なお、ここで形状とは、中子そのものの形状に限ら
れず、中子の配置等をも含む概念である。
【0029】また、個数の少ない中子の形状設定にあた
り、個数の少ない中子は、前記個数の多い中子に較べて
燃焼室から遠い位置に配置してもよい。また、個数の多
い中子に較べてその径方向における断面を拡大してもよ
い。また、個数の多い中子に較べて前記燃焼室に対向す
る表面積を減らしてもよい。
【0030】また、本発明は、燃焼室及びこの燃焼室に
通じる複数のポートを備えると共に、これらポートの周
囲を通じて前記燃焼室上方に冷却液を循環させる冷却通
路を備えたシリンダヘッドに対する冷却通路の形成方法
でもあり、前記冷却通路の各箇所は、この冷却通路の配
置に伴う燃焼室上方での温度分布の偏りを抑制すべく前
記燃焼室から受ける熱量に応じてその流路形状が変更さ
れていることを特徴とする。
【0031】なお、上記した種々の内容は、本発明の課
題を逸脱しない範囲において可能な限り組み合わせるこ
とができる。また、上記冷却通路の形成方法には、上記
した種々の形状変更例をその一例として適用できる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るシリンダヘッ
ドの一実施形態について、その製作に用いられる中子の
構造と共に説明する。
【0033】なお、図1はシリンダヘッドのポート間に
設けられた冷却通路20の断面図である。また、図2は
図1のA−A断面である。また、図3〜図5は、本実施
形態に係るシリンダヘッドを製造する際に用いられる中
子の概略図である。また、以下の説明で上方及び下方と
は、図1および図2に殉ずるものであり、シリンダヘッ
ド搭載時の方向を示すものではない。
【0034】本実施の形態に示すシリンダヘッド1は、
ディーゼル機関用のシリンダヘッドであり、図3に示さ
れるように、吸気ポート2用の中子11を2本、及び排
気ポート3用の中子10を2本を、夫々対向した位置に
配設して形成される所謂多バルブ型のシリンダヘッド1
である。
【0035】また、燃焼室1aに面した各ポート2,3
の開口端2a,3aには、ポート2,3内に支持された
弁体4,5(バルブ)の弁座が設けられている。より詳
しくは、各ポートの開口端2a,3aに対し、それぞれ
リング状のバルブシート2b,3bが埋め込まれ、さら
にこのバルブシート2b,3bには、バルブ4,5の当
たり面が形成されている。
【0036】なお、バルブシート2b,3bは、対応し
たポート径に対して十分に大きく、そのバルブシート2
b,3bに形成されるバルブ4,5の当たり面は、夫々
の開口端2a,3aから外方に張り出して形成されてい
る。
【0037】また、本実施の形態では、吸気ポート2の
一方に螺旋状の通路2cが形成されている(図3参
照)。この螺旋状の通路2cは、燃焼室1a内に流入す
る吸気に渦を作り出す、所謂スワール形成用の通路であ
る。
【0038】また、本実施形態に示すシリンダヘッド1
は、ディーゼル機関用のシリンダヘッドであるため、2
本並設される吸気ポート2の間に、急速暖気用のグロー
プラグ(ヒータ)を組み付けるためのプラグ穴6が形成
されている。さらに、このプラグ穴6の下方には、燃料
噴射ノズルが組み込まれるノズル穴7が形成されてい
る。
【0039】そして、これら吸気ポート2及び排気ポー
ト3の周囲には、図5に示すウォータジャケット用の中
子8を用いて、図2に示すウォータジャケット8aが形
成されている。なお、図5は、シリンダヘッド1の下面
側からそのウォータジャケット用の中子8を見た状態で
あり、図の手前が排気側に相当する。即ち、図5の手前
側に開口した穴10aに、排気ポート3を形成するため
の中子10が挿入される。一方、図の奥手に向かって穿
設された穴11aには、吸気ポート2を形成するための
中子11が挿入される。
【0040】また、本実施形態に示すシリンダヘッド1
は、このウォータジャケット用の中子8に加え、各ポー
ト2,3の周囲を通じて燃焼室1a上方に冷却液を循環
させる冷却通路用の中子13を備えている(図5及び図
3、図4参照)。なお、図4では、説明の便宜を図るた
め排気ポート形成用の中子10を省略して図示してい
る。
【0041】この冷却通路用の中子13は、図3に示さ
れるように、吸気ポート2の側方(図3中右側)を基端
として、該吸気ポート2の周囲を旋回しながら吸気ポー
ト2及び排気ポート3の間に至る第1の流路20aと、
排気ポート3の側方(図3中左側)を基端とし、該排気
ポート3の周囲を旋回しながら吸気ポート2及び排気ポ
ート3の間に至る第2の流路20bと、並設された排気
ポート3間を通り上記第1の流路20a及び第2の流路
20bの双方に接続する第3の流路20cと、を備えて
いる。
【0042】このため本実施の形態に示すシリンダヘッ
ド1には、これら流路20a,20b、20cによって
燃焼室1a上方に冷却通路20が形成される。すなわ
ち、各ポート2,3の周囲から燃焼室1a上方にかけて
冷却通路20が形成されることになる。
【0043】また、各流路20a,20b,20cの端
部は、上記したウォータジャケット8a、若しくはシリ
ンダブロック12側のウォータジャケット12aに連結
されており、機関運転時には、機関本体内の冷却液がこ
れら各流路20a,20b,20c内を循環する。
【0044】なお、図3を参照して詳しく説明すれば、
まず、第1の流路20aは、シリンダブロック12側の
ウォータジャケット12aに接続すべくシリンダヘッド
1下面側に向かって延びている。また、第2の流路20
bは、シリンダヘッド1側のウォータジャケット8aに
接続すべくシリンダヘッド1の上方に延びている。ま
た、第3の流路20cは、シリンダブロック12側のウ
ォータジャケット12aに接続すべくシリンダヘッド1
の下面側に向かって延びている。
【0045】したがって、機関運転時には、第1の流路
20a及び第3の流路20cから流れ込んだ冷却液が、
まず、燃焼室1a直上に流れ込む。また、燃焼室1aの
直上に流れ込んだ冷却液は、第2の流路20bを経て燃
焼室1a上方より排出され、以て燃焼室1aの冷却が行
われる。
【0046】また、本実施の形態では、この冷却通路用
の中子13の各箇所の形状設定にあたり、ポートと燃焼
室1aとの接続部周囲に於いて燃焼室1aから遠ざかる
方向にその中子13を迂曲させている。すなわち、冷却
通路20の造形後(鋳造後)には、ポート間の幅の狭い
区間において、一部が燃焼室1aから遠ざかる方向に迂
曲した冷却通路20が形成される。
【0047】したがって、本実施の形態に示すシリンダ
ヘッド1では、各流路20a,20b、20cの各迂曲
部分Xにおいて、その下方に十分な肉厚が確保される。
すなわち、直線状の冷却通路では、肉厚が不足し易いポ
ート2,3間及びポート3,3間に十分な肉厚を確保で
き、これによってポート2,3間及びポート3,3間と
いった剛性不足を招きやすい弁間部分においても十分な
剛性を確保できる。
【0048】また、同時に、従来の如く直線状の冷却通
路では過剰に冷却されやすい弁間部分においても、本構
成の採用によって十分な肉厚が確保される。よって、燃
焼室1a上方における温度分布が均一化され、温度分布
のバラツキに起因した燃焼室1aの歪みも抑制される。
【0049】さらに、本実施の形態では、冷却通路20
に迂曲部分Xが形成されるため、この迂曲部Xに冷却液
がぶつかり積極的な熱交換がなされる。このため迂曲部
分Xにおいて、多少多めに冷却通路20を持ち上げて
も、その迂曲部分Xにて弁間部分が十分に冷却される。
つまり、冷却通路20を局所的に持ち上げることで、さ
らなる肉厚の確保が可能になり、肉厚の確保、及び冷却
効率の増加といった作用によって、燃焼室1a上方での
温度分布の偏りを効率良く抑制できる。
【0050】また、上記に加え本実施の形態では、第2
の流路20bを形成する中子13の一区間にて、第1の
流路20a、及び第3の流路20cとなる他の区間に較
べ、その一区間全体を燃焼室1aから遠い位置に設けて
いる。すなわち、冷却通路20の造形後(鋳造後)に
は、第1の流路20a及び第3の流路20cに較べ燃焼
室1aから遠い位置に第2の流路20bが形成されるこ
ととなる。
【0051】なお、この理由として、第1の流路20a
及び第3の流路20cの双方から冷却液が流れ込む第2
の流路20bでは、冷却液の流量および流速が共に大き
く、第1の流路20a及び第3の流路20cに較べて冷
却効率が高くなる。つまり、図4における燃焼室1aの
左方では、第2の流路20bの配置に伴い燃焼室1aの
右方(図4中右方)に較べて温度が低くなる。そこで、
本実施の形態では、燃焼室1aとの間における熱の伝達
量を第2の流路20bで減らし、燃焼室1a上方での温
度分布の偏りを抑制している。
【0052】また、上記した肉厚の確保に絡み、この種
のシリンダヘッド1では、燃焼室1aに面した各ポート
2,3の間、即ち弁間部分1bにリセス加工を施す場合
もある。なお、リセス加工とは、弁間部分1bに形成さ
れる鋭角部分を予め切削しておき、該弁間部分1bにお
ける局所的な加熱を未然に防止するための加工である
(図6参照)。
【0053】この点、本実施の形態に示すシリンダヘッ
ド1では、リセス加工の対象となる弁間部分において冷
却通路20が上方へと持ち上げられるため、リセス加工
の追加時においても、その燃焼室内壁面1cと冷却通路
20との間に十分な剛性が確保される(図1参照)。こ
のように本実施形態に示す冷却通路20の形状は、リセ
ス加工に伴う剛性不足などをも回避できるため、リセス
加工が施されるシリンダヘッドにおいて特に有効な冷却
通路形状といえる。
【0054】また、上記に説明した冷却通路20は中子
を用いて形成されるため、シリンダヘッド1の鋳造時に
おいて一括成型が可能である。なお、本実施の形態に示
す中子13は、肉厚が薄くなり易い弁間部分に十分な肉
厚を確保できる為、鋳造後の肉痩せに伴う弁間部分の歪
みも少なく、また、中子13の組み込みにあたりウォー
タジャケット用の中子8及び図示しないウォータジャケ
ト12a用の中子に複数箇所で固定できるため、鋳造に
も適した中子形状と言える。
【0055】なお、上記した説明では、ポート間2,3
またはポート間3,3において流路20を迂曲させてい
るが、勿論、迂曲部分(区間)は、上記した箇所に限ら
れることはない。例えば、ポート2,3の側方など、冷
却通路20下方に十分な肉厚を確保しがたい区間全域に
適用可能である。なお、図3を参照して具体的一例を示
すと、本実施形態においては、吸気ポート2の側方など
に迂曲部分X’をさらに設けるようにしてもよい。
【0056】また、上記した説明では、流路20a,流
路20b,流路20cの計3本で冷却通路20を構成し
ているが、各流路20a,20b,20cの本数及び取
り回しは任意に変更可能である。また、冷却通路20内
における冷却液の循環方向も、所望に応じて変更可能で
ある。
【0057】また、上記した説明では、迂曲部分Xにお
いて流路断面積を変化させることなく冷却通路20を持
ち上げているが、必ずしもその必要はなく、例えば、図
7に示されるように、迂曲部分Xにおいて燃焼室1a側
に面した壁面21のみを、冷却通路20内方に迂曲させ
るようにしてもよい。勿論、この場合においても上記同
様の効果が発揮される。
【0058】また、上記では、第2の流路20bの配置
に伴う燃焼室1a左方(図4中右方)の過剰な冷却を回
避するため第2の流路20b全体を燃焼室1aから遠ざ
けているが、例えば、図8に示されるように第1の流路
20a及び第2の流路20cの流路断面に較べて第2の
流路20bの流路断面を拡大した場合、また、図9に示
されるように燃焼室1aに対向する表面積を減らした場
合などにおいても冷却効率の調節は可能である。また、
上記した各構成は、勿論、組み合わせ可能である。
【0059】さらに、本実施の形態では、冷却液の排出
路たる第2の流路20bにおいて冷却効率を調節してい
るが、冷却液の導入路に相当する第1の流路20a及び
第3の流路20c側でその本数が少ない場合には、その
導入路側で、第2の流路20bに適用した各種構成を適
用することもできる。
【0060】また、上記した説明では、ディーゼル機関
用のシリンダヘッド1を例にあげ、本発明を説明した
が、勿論、本発明の適用範囲は、ディーゼル機関にとど
まらず、ガソリン機関などにおいても適用可能なもので
ある。
【0061】このように本発明に示すシリンダヘッドの
冷却技術では、冷却通路20の各箇所において、その冷
却通路20の配置に伴う燃焼室1a上方での温度分布の
偏りを抑制するように、その燃焼室1aから受ける熱量
に応じて流路形状を変更している。
【0062】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、冷却液の
導入に伴う燃焼室上方での温度分布の偏りを抑制しつつ
燃焼室を効率良く冷却可能なシリンダヘッドの冷却技術
を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態に係るシリンダヘッドのポート
間に設けられた流路の断面図。
【図2】 図1のA−A断面を示す断面図。
【図3】 本実施の形態に係るシリンダヘッドを製造す
る際に用いられる中子の構造を説明するための図。
【図4】 本実施の形態に係るシリンダヘッドを製造す
る際に用いられる中子の構造を説明するための図。
【図5】 ポート周囲にウォータジャケットを形成する
際に用いられる中子の構造を説明するための図。
【図6】 リセス加工を説明するための説明図。
【図7】 本実施形態に係る冷却通路の変形例を示す
図。
【図8】 第2の流路に係る形状変更例を示す図。
【図9】 第2の流路に係る形状変更例を示す図。
【符号の説明】
1 シリンダヘッド 1a 燃焼室 1b 弁間部分 1c シリンダヘッドの内壁面 2 吸気ポート 2a 開口端 2b バルブシート 2c スワール形成用の通路 3 排気ポート 3a 開口端 3b バルブシート 4,5 弁体(バルブ) 6 プラグ穴 7 ノズル穴 8 中子 8a ウォータジャケット 10 排気ポート形成用の中子 10a 穴 11 吸気ポート形成用の中子 11a 穴 12 シリンダブロック 12a ウォータジャケット 13 冷却通路形成用の中子 20 冷却通路 20a 第1の流路 20b 第2の流路 20c 第3の流路 21 壁面 X 迂曲部分 X’ 迂曲部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02F 1/38 F02F 1/38 A 1/40 1/40 A Fターム(参考) 3G024 AA01 AA05 AA09 AA11 AA14 AA15 AA16 BA01 BA02 CA02 CA05 DA01 DA02 DA06 DA08 FA00 FA01 FA03 FA04 GA02 GA04 4E093 QB05

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】燃焼室及びこの燃焼室に通じる複数のポー
    トを備えると共に、これらポートの周囲を通じて前記燃
    焼室上方に冷却液を循環させる冷却通路を備えたシリン
    ダヘッドであって、 前記冷却通路は、前記ポートと燃焼室との接続部周囲に
    於いて前記燃焼室から遠ざかる方向に一部迂曲して形成
    されていることを特徴とするシリンダヘッド。
  2. 【請求項2】前記ポートの開口端には、このポート内に
    設けられる弁体の弁座が、該ポートの開口端からその外
    方に張り出して形成され、 前記冷却通路は、前記ポートの開口端から張り出した弁
    座の近傍で前記燃焼室から遠ざかる方向に迂曲している
    ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッド。
  3. 【請求項3】前記冷却通路は、複数設けられたポートと
    ポートの間を通り、且つ、そのポート間における幅の狭
    い箇所で前記燃焼室から遠ざかる方向に迂曲しているこ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダヘッ
    ド。
  4. 【請求項4】前記冷却通路として、前記ポートの周囲を
    通じて燃焼室上方に冷却液を導入する導入路と、その導
    入路を通じて流れ込んだ冷却液を他のポート周囲を通じ
    て燃焼室上方より排出する排出路と、を備え、且つその
    本数が前記導入路および排出路で異なる場合、 前記本数の少ない流路は、前記本数の多い流路に較べて
    前記燃焼室との間における熱の伝達量が減少する流路形
    状を備えることを特徴とする請求項1から3の何れかに
    記載のシリンダヘッド。
  5. 【請求項5】前記本数の少ない流路は、前記本数の多い
    流路に較べて燃焼室から遠い位置を通る流路形状を備え
    ることを特徴とする請求項4に記載のシリンダヘッド。
  6. 【請求項6】前記本数の少ない流路は、前記本数の多い
    流路に較べてその径方向における断面積が大きい流路形
    状を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載のシ
    リンダヘッド。
  7. 【請求項7】前記本数の少ない流路は、前記本数の多い
    流路に較べて、燃焼室に対向する表面積が小さい流路形
    状を備えることを特徴とする請求項4から6の何れかに
    記載のシリンダヘッド。
  8. 【請求項8】燃焼室及びこの燃焼室に通じる複数のポー
    トを備えると共に、これらポートの周囲を通じて前記燃
    焼室上方に冷却液を循環させる冷却通路を備えたシリン
    ダヘッドの中子構造であって、 前記ポートの周囲から前記燃焼室上方にかけての冷却通
    路を形成する冷却通路用の中子が配置され、この中子
    は、前記ポートと燃焼室との接続部周囲に於いて前記燃
    焼室から遠ざかる方向に一部迂曲して形成されているこ
    とを特徴とするシリンダヘッドの中子構造。
  9. 【請求項9】前記ポートの開口端には、このポート内に
    設けられる弁体の弁座が、該ポートの開口端からその外
    方に張り出して形成され、 前記中子は、前記ポートの開口端から張り出した弁座の
    近傍で前記燃焼室から遠ざかる方向に迂曲していること
    を特徴とする請求項8に記載のシリンダヘッドの中子構
    造。
  10. 【請求項10】前記中子は、複数設けられたポートとポ
    ートの間を通り、且つ、そのポート間における幅の狭い
    箇所で前記燃焼室から遠ざかる方向に迂曲していること
    を特徴とする請求項8又は9に記載のシリンダヘッドの
    中子構造。
  11. 【請求項11】前記冷却通路用の中子として、前記ポー
    トの周囲を通じて燃焼室上方に冷却液を導入する導入路
    用の中子と、その導入路用の中子にて形成される流路を
    通じて流れ込んだ冷却液を他のポート周囲を通じて燃焼
    室上方より排出する排出路用の中子と、を備え、且つそ
    の個数が導入路用の中子及び排出路用の中子で異なる場
    合、 前記個数の少ない中子は、前記個数の多い中子に較べて
    燃焼室との間における熱の伝達量が減少する中子形状を
    備えることを特徴とする請求項8から10の何れかに記
    載のシリンダヘッドの中子構造。
  12. 【請求項12】前記個数の少ない中子は、前記個数の多
    い中子に較べて燃焼室から遠い位置に配置されているこ
    とを特徴とする請求項11に記載のシリンダヘッドの中
    子構造。
  13. 【請求項13】前記個数の少ない中子は、前記個数の多
    い中子に較べてその径方向における断面が拡大されてい
    ることを特徴とする請求項11又は12に記載のシリン
    ダヘッドの中子構造。
  14. 【請求項14】前記個数の少ない中子は、前記個数の多
    い中子に較べて前記燃焼室に対向する表面積が減らされ
    ていることを特徴とする請求項11から13の何れかに
    記載のシリンダヘッドの中子構造。
  15. 【請求項15】燃焼室及びこの燃焼室に通じる複数のポ
    ートを備えると共に、これらポートの周囲を通じて前記
    燃焼室上方に冷却液を循環させる冷却通路を備えたシリ
    ンダヘッドに対する冷却通路の形成方法であって、 前記冷却通路の各箇所は、この冷却通路の配置に伴う燃
    焼室上方での温度分布の偏りを抑制すべく前記燃焼室か
    ら受ける熱量に応じてその流路形状が変更されているこ
    とを特徴とするシリンダヘッドに対する冷却通路の形成
    方法。
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