JP2003034665A - 光学活性アルコールの製造方法 - Google Patents

光学活性アルコールの製造方法

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JP2003034665A JP2002082865A JP2002082865A JP2003034665A JP 2003034665 A JP2003034665 A JP 2003034665A JP 2002082865 A JP2002082865 A JP 2002082865A JP 2002082865 A JP2002082865 A JP 2002082865A JP 2003034665 A JP2003034665 A JP 2003034665A
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    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C67/00Preparation of carboxylic acid esters
    • C07C67/30Preparation of carboxylic acid esters by modifying the acid moiety of the ester, such modification not being an introduction of an ester group
    • C07C67/31Preparation of carboxylic acid esters by modifying the acid moiety of the ester, such modification not being an introduction of an ester group by introduction of functional groups containing oxygen only in singly bound form

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 β−ケトエステル類を不斉水素化し、光学活
性アルコール類を高い光学純度で得ることのできる新規
な製造方法を提供する。 【解決手段】式(I)で表されるβ−ケトエステル類
を、光学活性ルテニウム−ジアミン錯体の存在下に水素
移動反応を行うことを特徴とする式(III): (式中、*は不斉炭素原子を示し、R1はC1〜C10の直鎖
または分岐していてもよいパーフルオロアルキル基また
はパークロロアルキル基を示し、R2はC1〜C8の低級アル
キル基または置換基を有していてもよいベンジル基を示
す。)で表される光学活性アルコールの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する利用分野】本発明は、β−ケトエステル
類を光学活性触媒存在下に不斉還元することを特徴とす
る光学活性アルコール類の実用に優れた新規な製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、光学活性4,4,4−トリフ
ルオロまたは4,4,4−トリクロロ−3−ヒドロキシ
ブタン酸エステル類を合成する方法としては、1)ラセ
ミ混合物である4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロ
キシブタン酸エステルを原料として、リパーゼを用い
て、エステル基を選択的に酵素的加水分解を行うことに
より、加水分解されなかった(R)エナンチオマーを抽
出することで光学活性4,4,4−トリフルオロ−3−
ヒドロキシブタン酸エステルを得る方法(特開平8-2
89799)、2)ラセミ混合物である4,4,4−ト
リフルオロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルのヒドロ
キシ基をアセチル化した後、リパーゼを用いて酵素的加
水分解を行って、加水分解された(R)エナンチオマー
を得る方法(J. Org. Chem., Vol.63, 8058-80
61頁(1998))、3)光学活性4,4,4−トリフ
ルオロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルエステルとアル
コールとの反応をスルホン酸誘導体のアンモニウム塩の
存在下に行って、エステル交換することにより光学活性
4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタン酸エス
テル類を得る方法(特開平3-151348)、4)4,
4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸エステル類
または4,4,4−トリクロロ−3−オキソブタン酸エス
テル類をパン酵母(baker’s yeast)を用いて還元して
光学活性4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタ
ン酸エステル類または4,4,4−トリクロロ−3−ヒド
ロキシブタン酸エステル類を得る方法(Tetrahedron As
ymmetry, Vol.9, 285-292頁(1997))、
5)ラセミ混合物である4,4,4−トリフルオロ−3−
ヒドロキシブタン酸エステルとビニルエステル類を微生
物由来の酵素または小麦芽由来の酵素を用いて不斉エス
テル交換反応を行って、光学活性4,4,4−トリフルオ
ロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを得る方法(特開
平5-219986)、6)4,4,4−トリフルオロ−
3−オキソブタン酸エステル類を光学活性化合物を担持
したニッケル触媒の存在下に水素化反応させて、光学活
性4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタン酸エ
ステルを得る方法(特開平9-268146)、7)4,
4,4−トリクロロ−3−オキソブタン酸エステル類を
光学活性Ru−BINAP触媒を用いて不斉水素化し
て、光学活性4,4,4−トリクロロ−3−ヒドロキシブ
タン酸エステルを得る方法(特開昭63-31084
7)、8)ラセミ混合物である4,4,4−トリフルオロ
−3−ヒドロキシブタン酸エステル類と無水酢酸との反
応をリパーゼを用いて行い、未反応の4,4,4−トリフ
ルオロ−3−ヒドロキシブタン酸エステル類を光学活性
体として得る方法(特開平3-254694)等が知ら
れている。
【0003】しかしながら、上記光学活性アルコールの
合成方法のうち、酵素を用いる合成方法は操作並びに工
程管理が煩雑で、反応基質の種類に制約があり、しか
も、絶対配置を有するアルコール類は特定のものに限ら
れる、ラセミ混合物である4,4,4−トリフルオロ−3
−ヒドロキシブタン酸エステル誘導体を反応基質に用い
た場合は、望む立体を持つ光学活性4,4,4−トリフル
オロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルの収率は50%
以下である、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタ
ン酸エステル類または4,4,4−トリクロロ−3−オキ
ソブタン酸エステル類をパン酵母(baker’s yeast)を
用いて還元した場合には得られる4,4,4−トリフルオ
ロ−3−ヒドロキシブタン酸エステル類または4,4,4
−トリクロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステル類の光
学純度が低い、光学活性化合物を担持したニッケル触媒
や光学活性Ru−BINAP触媒を用いた不斉水素化で
得られる4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタ
ン酸エステル類または4,4,4−トリクロロ−3−ヒド
ロキシブタン酸エステル類の光学純度が不充分である、
といった問題点があった。特に、医薬品や機能性材料の
分野においては、特定の絶対配置のものを光学純度良く
得ることが重要であり、上記方法による問題点を解決す
る必要があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、簡便
な操作で、3−パーフルオロアルキル−3−オキソプロ
ピオン酸エステル類または3−トリクロロアルキル−3
−オキソプロピオン酸エステル類等のβ−ケトエステル
類を不斉水素化し、所望する絶対配置の光学活性アルコ
ール類を高い光学純度で得ることのできる新規な製造方
法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】このような背景のもと、
本発明者らは鋭意研究を行った結果、4,4,4−トリフ
ルオロ−3−オキソブタン酸エステル類または4,4,4
−トリクロロ−3−オキソブタン酸エステル類等の一般
式(I)で表されるβ−ケトエステル類を、一般式(I
I)で表される光学活性ルテニウム−ジアミン錯体の存
在下に水素移動型不斉還元することにより、対応する光
学活性アルコールが高い光学純度で得られることを見い
出し、さらに検討を重ねて、本発明を完成した。これま
でに、一般式(II)で表される光学活性ルテニウム−
ジアミン錯体を用いてカルボニル化合物を不斉水素移動
型還元し、光学活性ヒドロキシ化合物を得る方法は知ら
れている(特開平10-236986、J. Am. Chem. So
c., Vol.118,2521-2522頁(199
6))。しかし、これらはアセチレン結合を持つカルボ
ニル化合物を不斉水素移動型還元してアセチレン結合を
持つ光学活性アルコール類を製造する方法やアリールア
ルキルケトン等のカルボニル化合物を不斉水素移動型還
元し、光学活性ヒドロキシ化合物を得る方法であり、特
開平10-236986にはβ−ケト酸誘導体について
記述はあるものの、具体例の記述はなく、β−ケト酸誘
導体の例としてアセト酢酸エステルを一般式(II)で
表される光学活性ルテニウム−ジアミン錯体を用いて不
斉還元したところ、還元反応は進行しなかった。しかし
ながら、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸
エステル類または4,4,4−トリクロロ−3−オキソブ
タン酸エステル類を一般式(II)で表される光学活性
ルテニウム−ジアミン錯体の存在下に水素移動型不斉還
元した場合、対応する光学活性アルコールが高い光学純
度で得られることを見い出し、さらに鋭意検討を行っ
て、本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明は、(1)一般式
(I):
【化4】 (式中、RはC〜C10の直鎖または分岐していて
もよいパーフルオロアルキル基またはパークロロアルキ
ル基を示し、RはC〜Cの低級アルキル基または
置換基を有していてもよいベンジル基を示す。)で表さ
れるβ−ケトエステル類を、一般式(II):
【化5】 (式中、*は不斉炭素原子を示し、R、Rは同一ま
たは互いに異なって、アルキル基またはアルキル基を有
していてもよいフェニル基もしくはシクロアルキル基、
あるいはRおよびRが隣接する炭素原子と一緒にな
って非置換またはアルキル基で置換された脂環式環を形
成することを示し、Rはメタンスルホニル基;トリフ
ルオロメタンスルホニル基;アルキル基、アルコキシ基
もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン
スルホニル基もしくはナフチル基;カンファースルホニ
ル基;アルコキシカルボニル基;またはアルキル基で置
換していてもよいベンゾイル基を示し、Rは水素原子
またはアルキル基を示し、Arはアルキル基で置換され
ていてもよい芳香族化合物を示し、Xはハロゲン原子を
示す。)で表される光学活性ルテニウム−ジアミン錯体
の存在下に水素移動反応を行うことを特徴とする一般式
(III):
【化6】 (式中、R、Rは前記と同意義。)で表される光学
活性アルコールの製造方法、(2)RがC〜C
直鎖または分岐していてもよいパーフルオロアルキル基
またはパークロロアルキル基であることを特徴とする前
記(1)に記載の光学活性アルコールの製造方法、
(3)光学活性ルテニウム−ジアミン錯体(II)のR
、Rがフェニル基、Rが水素原子、Xが塩素原子
である前記(1)または(2)に記載の光学活性アルコ
ールの製造方法、(4)光学活性ルテニウム−ジアミン
錯体(II)のArがp−シメン、ベンゼン、メシチレ
ンである前記(1)または(2)に記載の光学活性アル
コールの製造方法、(5)水素供与性物質の存在下に反
応を行うことを特徴とする前記(1)〜(4)に記載の
光学活性アルコールの製造方法、に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明に用いられるβ−ケトエス
テル類としては、一般式(I)に沿って説明すると、式
中のRはC〜C10の直鎖または分岐していてもよ
いパーフルオロアルキル基またはパークロロアルキル基
であり、より具体的には、ペンタフルオロエチル基、ヘ
プタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウン
デカフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル
基、ペンタデカフルオロヘプチル基、トリフルオロメチ
ル基、もしくはトリクロロメチル基等が挙げられる。R
は、具体的に、C〜Cアルキル基、例えば、メチ
ル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n
−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、
n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、n
−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基等や、
置換基を有していてもよいベンジル基、例えば、ベンジ
ル基、p−メチルベンジル基、p−メトキシベンジル
基、または、p−ニトロベンジル基等が挙げられる。特
に、C〜Cアルキル基、すなわちメチル基、エチル
基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、
sec−ブチル基、またはtert−ブチル基が好まし
い。
【0008】本発明に使用される光学活性ルテニウム−
ジアミン錯体については、一般式(II)に沿って説明
すると、式中R、Rは同一または互いに異なっても
よく、アルキル基またはアルキル基またはアルコキ
シ基を置換基として有していてもよいフェニル基もしく
はシクロアルキル基であるか、もしくはRおよびR
が隣接する炭素原子と一緒になって非置換またはアル
キル基で置換された脂環式環を形成する。より詳しく
は、R、Rはそれぞれ、例えばアルキル基(好まし
くはC〜C−アルキル基)であって、直鎖または枝
分れのアルキル基であってよい。RおよびRとして
は、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、
イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、s
ec−ブチル基、またはtert−ブチル基が例示され
る。より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル
基またはイソプロピル基である。RおよびRが隣接
する炭素原子と一緒になって非置換またはアルキル基で
置換された脂環式環を形成する場合、C〜C員環で
あってよく、これを置換してもよいアルキル基は、例え
ばC〜C−アルキル基であってよく、具体的には、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル
基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル
基、またはtert−ブチル基等でよく、特にメチル基
の場合が好ましい。RおよびRがアルキル基または
アルコキシ基を有していてもよいフェニル基としてのR
およびRは、具体的には、フェニル、o−、m−ま
たはp−トリル基、o−、m−またはp−アニシル基が
挙げられる。より好ましい具体例は、RおよびR
それぞれフェニルであるか、RおよびRが合わさっ
てテトラメチレン基(−(CH−)を表す場合で
ある。
【0009】Rはメタンスルホニル基、トリフル
オロメタンスルホニル基、アルキル基(例えばC
アルキル基)、アルコキシ基(例えばC〜C
ルコキシ基)、もしくはハロゲン原子で置換されていて
もよいベンゼンスルホニル基もしくはナフチル基、カ
ンファースルホニル基、アルコキシカルボニル基、ま
たはアルキル基(例えば、C〜Cアルキル基)で
置換されていてもよいベンゾイル基を示す。C〜C
アルキル基、C〜Cアルコキシ基もしくはハロゲン
原子で置換していてもよいベンゼンスルホニル基として
のRは、具体的には、ベンゼンスルホニル、o−、m
−またはp−トルエンスルホニル、o−、m−またはp
−エチルベンゼンスルホニル、o−、m−またはp−イ
ソプロピルベンゼンスルホニル、o−、m−またはp−
tert−ブチルベンゼンスルホニル、o−、m−また
はp−メトキシベンゼンスルホニル、o−、m−または
p−エトキシベンゼンスルホニル、o−、m−またはp
−クロルベンゼンスルホニル、p−フルオロベンゼンス
ルホニル、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルま
たは2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル等
であり、より好ましくはベンゼンスルホニルまたはp−
トルエンスルホニルである。C〜Cアルコキシカル
ボニル基としてのRは、具体的にはメトキシカルボニ
ル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニ
ル、またはtert-ブトキシカルボニル等であり、よ
り好ましくは、メトキシカルボニルまたはtert-ブ
トキシカルボニルである。C〜Cアルキル基で置換
されていてもよいベンゾイル基としてのRは、具体的
には、ベンゾイル、o−、m−またはp−メチルベンゾ
イル、o−、m−またはp−エチルベンゾイル、o−、
m−またはp−イソプロピルベンゾイル、またはo−、
m−またはp−tert−ブチルベンゾイル等であり、
より好ましくは、ベンゾイルまたはp−メチルベンゾイ
ルである。最も好ましい具体例においては、Rはメタ
ンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、ベンゼ
ンスルホニル、またはp−トルエンスルホニルである。
【0010】水素原子、またはアルキル基(例えばC
〜Cアルキル基)を表すRは具体的には水素、メチ
ル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチ
ル、sec−ブチル、またはtert−ブチル等であ
り、より好ましくは水素またはメチルである。さらに、
光学活性ルテニウム−ジアミン錯体(II)の中で、A
rで示されるアルキル基(好ましくはC〜Cアルキ
ル基)で置換されていてもよい芳香族化合物とは、例え
ばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサ
メチルベンゼン、エチルベンゼン、tert−ブチルベ
ンゼン、p−シメン、クメン等が挙げられる。好ましく
はベンゼン、メシチレン、またはp−シメンである。
【0011】この発明における前記光学活性ルテニウム
−ジアミン錯体の使用量は、反応容器の大きさ、経済性
によっても異なるが、反応基質である一般式(I)に対
してモル比で約1/10〜1/10,000程度用いる
ことができ、好ましくは約1/100〜1/5,000
程度である。
【0012】本発明には、通常、水素供与性物質を反応
系内に存在させるのが好ましい。この発明における水素
移動型還元による光学活性ヒドロキシ化合物の製造に用
いる水素供与性化合物は、有機または無機化合物であっ
て、反応系内で、例えば熱的作用によって、あるいは触
媒作用によって、水素を供与できる化合物ならばどのよ
うなものでもよい。水素供与性化合物については、特に
その種類に限定は無いが、好ましいものとしては、ギ酸
またはその塩、例えば、ギ酸とアミンの組み合わせから
なるもの、ヒドロキノンあるいは亜リン酸等がある。な
かでもギ酸またはギ酸とアミンとの組み合わせからなる
ものが好ましい。アミンとしてはトリメチルアミン、ト
リエチルアミン等が挙げられる。ギ酸またはギ酸とアミ
ンの組み合わせからなるものを水素源として用いる場合
は、溶媒を用いなくてもよい。本反応で反応を阻害しな
い限り、どのような溶媒でも使用可能である。溶媒とし
て、具体的には、例えば、メタノール、エタノール等の
アルコール化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合
物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪酸エ
ステル化合物、ジクロロメタン等のハロゲン化合物、ヘ
キサン、ヘプタンなどの脂肪族化合物、テトラヒドロフ
ラン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、ジメチル
スルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドあるいは
アセトニトリル等の有機化合物を用いることができる。
【0013】反応温度は、約−20〜100℃程度とす
ることができるが、経済性を考慮して、より実際的には
約25〜40℃程度の室温付近で反応を実施することが
できる。
【0014】反応時間は反応基質濃度、触媒濃度、温度
等の反応条件によって異なるが、数分から100時間程
度で反応は終了する。
【0015】本発明方法によって、一般式(III)で
表される化合物が高い光学純度で得られる。例えば、式
(I)の化合物がCF−CO−CH-COOR
示される場合に、式(II)の化合物が(R,R)であ
る場合は、式(III)で表される目的物が(R)−
(+)体で得られる。
【0016】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はこれらの実施例により限定されるもの
ではない。実施例に用いた光学活性ルテニウム−ジアミ
ン錯体は特開平10−130289またはJ. Am. Chem.
Soc., Vol.118, 2521-2522頁(199
6))に示された方法より調製した。また、実施例に用
いた4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸メチ
ル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸エチ
ル、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸イソ
プロピルおよび4,4,4−トリクロロ−3−オキソブタ
ン酸エチルは市販品(東京化成工業(株)品)を用い
た。また、3−オキソ−4,4,5,5,6,6,7,
7,8,8,9,9,10,10,10−ペンタデカフ
ルオロデカン酸メチルは文献(J.Fluorine Chem.,Vol.
20,187−202頁(1982))記載の方法によ
り合成した。さらに、化学純度、転化率および光学純度
は以下に示す機械、方法により求められた。また、実施
例、参考例において、Tsはトルエンスルホニル基を示
す。
【0017】化学純度および転化率: ガスクロマトグラフ:GC 353B(GL Scie
nce社製) カラム:TC−5HT(0.25mm×30m)(GL
Science社製)Injection Temperature:130
℃ Detector Temperature :150℃ Initial Temperature :50℃ Final Temperature :120℃ Rate :3.0℃/min 光学純度: ガスクロマトグラフ:5890 SERIES II(H
EWLETT PACKARD社製) カラム:ChiralDex−B−TA (0.25mm
×30m)(Astec社製) Injection Temperature:180℃ Detector Temperature :200℃ Initial Temperature :50℃ Final Temperature :120℃ Rate :3.0℃/min
【0018】〔参考例1〕アセト酢酸メチル(1.00
g)を、ギ酸−トリエチルアミンの混合物(5:2)
(モル比)(5mL)および光学活性ルテニウム−ジア
ミン錯体RuCl[(1R,2R)−p−TsNHCH(C6H5)CH(C6H5)NH2]
(p−cymene)(11mg)をテトラヒドロフラン(5m
L)に溶解した溶液に加え、35℃にて21時間撹拌を
行った後に、反応液をガスクロマトグラフで分析したと
ころ、反応の進行は見られなかった。
【0019】〔参考例2〕ギ酸−トリエチルアミンの混
合物(5:2)(モル比)(5mL)及び、光学活性ル
テニウム−ジアミン錯体RuCl[(1R,2R)−p−TsNHCH(C
6H5)CH(C6H5)NH2](p−cymene)(7.7mg)をテトラ
ヒドロフラン(5mL)に溶解した溶液に4−クロロア
セト酢酸エチル(1.00g)を加え、35℃にて1
9.5時間撹拌を行った後に、ガスクロマトグラフを測
定したところ、転化率は52%であった。
【0020】〔実施例1〕テトラヒドロフラン(25m
L)に、ギ酸−トリエチルアミンの混合物(5:2)
(モル比)(50mL)およびRuCl[(1R,2R)−p−TsNHC
H(C6H5)CH(C6H5)NH2](p−cymene)(70.1mg)を溶
解した溶液を35℃にて撹拌し、これに4,4,4−トリ
フルオロ−3−オキソブタン酸エチル(10.0g)を
テトラヒドロフラン(25mL)に溶解した溶液を30
分かけて滴下した。この反応液を同温度にて21時間撹
拌したところ、ヒドロキシ体への転化率は100%であ
った。反応液をエバポレーターを用いて減圧濃縮した
後、得られた濃縮物に水(20mL)と酢酸エチル(4
0mL)を加え、撹拌しながら飽和炭酸ナトリウム水溶
液をpH≧7になるまで加えた。分液を行い、酢酸エチ
ル層を分離した後、水層はさらに酢酸エチル(25m
L)で抽出を行い、先の酢酸エチル層と合わせて濃縮を
行った。得られた濃縮物を減圧蒸留(88〜89℃/2
660Pa)して光学活性4,4,4−トリフルオロ−3
−ヒドロキシブタン酸エチル(8.96g:収率88.
6%)を得た。得られた光学活性4,4,4−トリフルオ
ロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルの光学純度を上記の
条件で測定したところ94.2%eeであった。
【0021】〔実施例2〕アセトニトリル(10mL)
に、ギ酸−トリエチルアミンの混合物(5:2)(モル
比)(5mL)、RuCl[(1R,2R)−p−TsNHCH(C6H5)CH(C6
H5)NH2](p−cymene)(7mg)および4,4,4−トリフ
ルオロ−3−オキソブタン酸エチル(1.0g)を加
え、35℃にて15時間撹拌した後、エバポレーターを
用いて減圧濃縮した。得られた濃縮物に水(10mL)
と酢酸エチル(10mL)を加え、撹拌しながら飽和炭
酸ナトリウム水溶液をpH≧7になるまで加えた後、分
液を行った。得られた酢酸エチル層を濃縮し、光学活性
4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタン酸エチ
ルを得た。上記の条件で、光学純度および転化率を測定
したところ、それぞれ95.0%ee、99.9%であ
った。
【0022】〔実施例3〕4−プロパノール(10m
L)に、ギ酸−トリエチルアミンの混合物(5:2)
(モル比)(5mL)、RuCl[(1R,2R)−p−TsNHCH(C
6H5)CH(C6H5)NH2](p−cymene)(7mg)および4,4,
4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸エチル(1.0
g)を加え、35℃にて15時間撹拌した後、エバポレ
ーターを用いて減圧濃縮した。得られた濃縮物に水(1
0mL)と酢酸エチル(10mL)を加え、撹拌しなが
ら飽和炭酸ナトリウム水溶液をpH≧7になるまで加え
た後、分液を行った。得られた酢酸エチル層を濃縮し、
光学活性4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタ
ン酸エチルを得た。上記の条件で、光学純度および転化
率を測定したところ、それぞれ94.8%ee、99.
9%であった。
【0023】〔実施例4〕メタノール(6mL)に、ギ
酸−トリエチルアミンの混合物(5:2)(モル比)
(5mL)、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタ
ン酸メチル(1.0g)およびRuCl[(1R,2R)−p−TsNHC
H(C6H5)CH(C6H5)NH2](p−cymene)(7.5mg)を加
え、35℃にて15時間撹拌した後、エバポレーターを
用いて減圧濃縮した。得られた濃縮物に水(10mL)
と酢酸エチル(10mL)を加え、撹拌しながら飽和炭
酸ナトリウム水溶液をpH≧7になるまで加えた後、分
液を行った。得られた酢酸エチル層を濃縮し、光学活性
4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタン酸メチ
ルを得た。上記の条件で、光学純度および転化率を測定
したところ、それぞれ94.6%ee、100%であっ
た。
【0024】〔実施例5〕RuCl[(1R,2R)−p−TsNHCH(C6
H5)CH(C6H5)NH2](p−cymene)(7.5mg)、ギ酸−ト
リエチルアミンの混合物(5:2)(モル比)(5m
L)および4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタ
ン酸メチル(1.0g)をテトラヒドロフラン(6m
L)に溶解し、35℃にて15時間撹拌した。エバポレ
ーターを用いて減圧濃縮した。得られた濃縮物に水(1
0mL)と酢酸エチル(10mL)を加え、撹拌しなが
ら飽和炭酸ナトリウム水溶液をpH≧7になるまで加え
た後、分液を行った。得られた酢酸エチル層を濃縮し、
光学活性4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタ
ン酸メチルを得た。上記の条件で、光学純度および転化
率を測定したところ、それぞれ96.4%ee、100
%であった。
【0025】〔実施例6〕実施例5で用いた溶媒のテト
ラヒドロフランをトルエンにかえて、同じ反応条件下で
反応を行ったところ、光学純度および転化率は、それぞ
れ96.1%ee、74.5%であった。
【0026】〔実施例7〕RuCl[(1R,2R)−p−TsNHCH(C6
H5)CH(C6H5)NH2](p−cymene)(6.4mg)、ギ酸−ト
リエチルアミンの混合物(5:2)(モル比)(5m
L)および4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタ
ン酸イソプロピル(1.0g)をテトラヒドロフラン
(6mL)に溶解し、35℃にて15時間撹拌した。エ
バポレーターを用いて減圧濃縮した。得られた濃縮物に
水(10mL)と酢酸エチル(10mL)を加え、撹拌
しながら飽和炭酸ナトリウム水溶液をpH≧7になるま
で加えた後、分液を行った。得られた酢酸エチル層を濃
縮し、光学活性4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキ
シブタン酸イソプロピルを得た。上記の条件で、光学純
度および転化率を測定したところ、それぞれ96.2%
ee、100%であった。
【0027】〔実施例8〕実施例7で用いた溶媒のテト
ラヒドロフランを酢酸エチルにかえて、同じ反応条件下
で反応を行ったところ、光学純度および転化率は、それ
ぞれ96.1%ee、100%であった。
【0028】〔実施例9〕実施例7で用いた溶媒のテト
ラヒドロフランをメタノールにかえて、同じ反応条件下
で反応を行ったところ、光学純度および転化率は、それ
ぞれ95.9%ee、99.8%であった。
【0029】〔実施例10〕実施例7で用いた4,4,
4−トリフルオロ−3−オキソブタン酸イソプロピル
(1.0g)にかえて、4,4,4−トリクロロ−3−
オキソブタン酸エチル(1.0g)を用いて、同じ反応
条件下で反応を行ったところ、光学純度および転化率
は、それぞれ97.2%ee、95.2%であった。
【0030】〔実施例11〕テトラヒドロフラン(1.
25mL)にギ酸−トリエチルアミンの混合物(5:
2)(モル比)(2.5mL)、RuCl[(1R,2R)−p−TsN
HCH(C6H5)CH(C6H5)NH2](p−cymene)(6.8mg)およ
び3−オキソ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,
8,9,9,10,10,10−ペンタデカフルオロデ
カン酸メチル(0.50g)を加え,35℃にて17時
間攪拌を行ったところ、ヒドロキシ体への転化率は9
8.8%であった。反応液をエバポレーターを用いて減
圧濃縮した後、得られた濃縮物に水(1mL)とジエチ
ルエーテル(2mL)を加え、攪拌しながら飽和炭酸ナ
トリウム水溶液をpH≧7になるまで加えた。分液を行
い、ジエチルエーテル層を分離した後、水層はさらにジ
エチルエーテル(5mL)で抽出を行い、先のジエチル
エーテル層と合わせて濃縮を行った。得られた濃縮物を
減圧蒸留(65℃/53Pa)して光学活性3−ヒドロ
キシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,
9,10,10,10−ペンタデカフルオロデカン酸メ
チル(0.22g:収率43.8%)を得た。得られた
光学活性3−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,
7,7,8,8,9,9,10,10,10−ペンタデ
カフルオロデカン酸メチルをトリフルオロアセチル化し
て光学純度を上記条件で測定したところ91.6%ee
であった。 H−NMR(500MHz:CDCl)δ=2.6
−2.75(2H,m)3.68(3H,s)3.78
(1H,brs)4.5−4.65(1H,m)
【0031】
【発明の効果】本発明の光学活性アルコールの製造方法
を用いれば、光学純度が高い光学活性アルコールが、簡
便に高収率で得ることができるので、医薬品や機能性材
料の分野において非常に有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4H006 AA02 AC41 AC81 BA23 BA37 BA43 BA46 BM10 BM71 BM72 BN10 4H039 CA60 CB20

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I): 【化1】 (式中、RはC〜C10の直鎖または分岐していて
    もよいパーフルオロアルキル基またはパークロロアルキ
    ル基を示し、RはC〜Cの低級アルキル基または
    置換基を有していてもよいベンジル基を示す。)で表さ
    れるβ−ケトエステル類を、一般式(II): 【化2】 (式中、*は不斉炭素原子を示し、R、Rは同一ま
    たは互いに異なって、アルキル基またはアルキル基を有
    していてもよいフェニル基もしくはシクロアルキル基、
    あるいはRおよびRが隣接する炭素原子と一緒にな
    って非置換またはアルキル基で置換された脂環式環を形
    成することを示し、Rはメタンスルホニル基;トリフ
    ルオロメタンスルホニル基;アルキル基、アルコキシ基
    もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン
    スルホニル基もしくはナフチル基;カンファースルホニ
    ル基;アルコキシカルボニル基;またはアルキル基で置
    換していてもよいベンゾイル基を示し、Rは水素原子
    またはアルキル基を示し、Arはアルキル基で置換され
    ていてもよい芳香族化合物を示し、Xはハロゲン原子を
    示す。)で表される光学活性ルテニウム−ジアミン錯体
    の存在下に水素移動反応を行うことを特徴とする一般式
    (III): 【化3】 (式中、R、Rは前記と同意義。)で表される光学
    活性アルコールの製造方法。
  2. 【請求項2】 RがC〜Cの直鎖または分岐して
    いてもよいパーフルオロアルキル基またはパークロロア
    ルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の光学
    活性アルコールの製造方法。
  3. 【請求項3】 光学活性ルテニウム−ジアミン錯体(I
    I)のR、Rがフェニル基、Rが水素原子、Xが
    塩素原子である請求項1または2に記載の光学活性アル
    コールの製造方法。
  4. 【請求項4】 光学活性ルテニウム−ジアミン錯体(I
    I)のArがp−シメン、ベンゼン、メシチレンである
    請求項1または2に記載の光学活性アルコールの製造方
    法。
  5. 【請求項5】 水素供与性物質の存在下に反応を行うこ
    とを特徴とする請求項1〜4に記載の光学活性アルコー
    ルの製造方法。
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